説明

熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させるための2工程法

窒素酸化物蓄積触媒は、いわゆるリーン運転するエンジンのリーンな排ガス中に含有されている窒素酸化物を除去するために使用される。この窒素酸化物吸蔵触媒は、高い温度での負荷によって走行運転中に熱的老化プロセスに掛けられ、この熱的老化プロセスは、窒素酸化物吸蔵成分ならびに貴金属を含有する触媒活性成分に関する。本発明は、白金と共に触媒活性成分として酸化セリウム含有担持材料上のストロンチウムおよび/またはバリウムの塩基性化合物を含有する、熱的老化プロセスのために失なわれた、窒素酸化物吸蔵触媒の触媒活性を少なくとも部分的再生することができる方法を提供することである。2工程の方法は、熱的老化中に形成されたストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を、白金も含有する担持材料と一緒に、特殊なガス混合物で意図的に処理することによって触媒活性形に再変換することに基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物を吸蔵する化合物を酸化セリウム上に含有する担持材料および触媒活性貴金属としての白金を含有する、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させるための2工程法に関する。
【0002】
窒素酸化物吸蔵触媒は、いわゆるリーン運転するエンジンのリーンな排ガス中に含有されている窒素酸化物を除去するために使用される。この場合、浄化作用は、エンジンのリーン運転期間に窒素酸化物を吸蔵触媒の吸蔵材料により主に硝酸塩の形で吸蔵し、エンジンのそれに引き続くリッチ運転期間に前記の予め生成された硝酸塩を分解し、再び放出される窒素酸化物を吸蔵触媒で還元性排気ガス成分と反応させて、窒素と二酸化炭素と水とに変えることに基づいている。リーン運転するエンジンには、リーンな空気/燃料混合物で運転することができるガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンが属する。前記エンジンの排ガス中にリーン運転期間に含有されている窒素酸化物は、大部分が一酸化窒素からなる。
【0003】
窒素酸化物吸蔵触媒の作動様式はSAEの刊行物SAE950809に詳細に記載されている。それによれば、窒素酸化物吸蔵触媒は、大部分が被覆の形で担持体上に施こされている触媒材料からなる。該触媒材料は、窒素酸化物吸蔵材料と触媒活性成分とを含有する。窒素酸化物吸蔵材料は再び、担持材料上に高分散した形で堆積している本来の窒素酸化物吸蔵成分からなる。
【0004】
吸蔵成分として、主にアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属の塩基性酸化物、しかし殊に酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムが使用され、これらが二酸化窒素と反応して相応する硝酸塩に変わる。これらの材料は空気中で大部分が炭酸塩または水酸化物の形で存在することは、公知である。これらの化合物は、同様に窒素酸化物の吸蔵のために適している。従って、本発明の範囲内で、塩基性の吸蔵酸化物について言及する場合、相応する炭酸塩および水酸化物も含まれる。前記吸蔵成分に適した担体材料は、10m2/gを越える高い表面積を有する熱安定性の金属酸化物であり、これは前記吸蔵成分の高分散性の堆積を可能にする。本発明は、殊に酸化セリウム含有の担持材料を有する吸蔵材料に関する。この吸蔵材料には、ドープされた酸化セリウムおよび特に同様にドープされていてよいセリウム−ジルコニウム混合酸化物が属する。
【0005】
触媒活性成分としては、吸蔵成分とは別に分離された担体材料上に存在することができる、白金族の貴金属が使用される。白金族の金属のための担体材料としては、多くの場合に活性の高い表面積の酸化アルミニウムが使用され、この酸化アルミニウムは、同様にドーピング成分を含有することができる。
【0006】
触媒活性成分の課題は、リーンな排ガス中で、一酸化炭素と炭化水素とを二酸化炭素と水とに変換することである。更に、前記触媒活性成分は、排気ガス中に含まれる一酸化窒素を二酸化窒素に酸化し、それにより前記二酸化窒素は、塩基性吸蔵材料と反応して硝酸塩に変わることができる。形成された硝酸塩は、それに続くエンジンのリッチ運転期間に窒素酸化物に分解され、触媒活性成分により還元剤としての一酸化炭素、水素および炭化水素を使用して水および二酸化炭素の形成下に窒素に還元される。
【0007】
吸蔵触媒は、運転中に一時的に極めて高い排ガス温度に晒され、このことは、触媒の熱的損傷をまねきうる。公知技術水準において、これまで2つの主要な老化効果は、区別されていた:
触媒活性の貴金属成分は、新たに製造された吸蔵触媒中に高分散した形で約2〜15nmの平均粒度で存在する。特に、リーンな排ガス中で廃ガス温度が上昇すると、貴金属クリスタリットの不可逆的な拡大が観察される。この焼結は、触媒活性の明らかな減少に付随して現れる。
【0008】
吸蔵成分は、高い温度で同様に焼結の影響下にあり、それによってこの吸蔵成分の触媒活性表面積は、減少する。更に、担体材料上に堆積された吸蔵成分は、高い温度で窒素酸化物に対してよりいっそう僅かな吸蔵能を有する担体材料と結合することが観察された(SAE Technical Paper 970746および欧州特許出願公開第0982066号明細書A1参照)。例えば、酸化バリウムを酸化セリウム含有担体材料上に吸蔵成分として使用した場合には、バリウムセラート(BaCeO3)が形成されうる。
【0009】
貴金属粒子の焼結は、不可逆的なプロセスであり、または吸蔵成分の焼結も不可逆的なプロセスである。特殊な処理による元来のクリスタリットの拡大の再生、ひいては元来の触媒活性表面の再生は、これまで不可能であると思われた。
【0010】
これに対して、このような老化プロセスの反応生成物が揮発性でない場合には、別の触媒成分と反応して殆んど活性でない化合物に変わることによって、触媒反応プロセスで失われる成分は、原則的に回収されることができる。反応条件が公知であることが前提である場合には、老化反応で生じた生成物は、再び意図的に触媒活性の出発化合物に再変換されることができる。
【0011】
例えば、酸化バリウムBaCeO3は、吸蔵成分として酸化セリウムを基礎とする窒素酸化物吸蔵材料中に含有する窒素酸化物吸蔵触媒の熱的老化中に二酸化窒素、水蒸気および場合によっては二酸化炭素を含有するガス混合物での処理によって300℃〜500℃で再び酸化バリウムおよび酸化セリウムに分解されうる。
【0012】
本出願人のWO 07/009679には、前記プロセスを基礎とする、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させるための方法が記載されている。
【0013】
この場合、"反応"の概念は、窒素酸化物吸蔵触媒に関連して同様に一般に使用されている概念の"再生"とは厳密には区別されている。
【0014】
窒素酸化物は、エンジンのリーン運転期間に吸蔵材料中に硝酸塩の形で吸蔵される。堆積量が増加すると、前記材料の吸蔵能は、減少する。従って、時々、吸蔵材料の再生は、行なわなければならない。このために、エンジンは、短時間、リッチな空気/燃料混合物で運転される。窒素酸化物吸蔵からの相互作用および吸蔵材料の再生から、前記の触媒タイプに対して特性を示す、リーン運転期間およびリッチ運転期間からの循環運転形式が生じ、この場合リーン運転期間は、典型的にはリッチ運転期間に対して5〜50回長い。
【0015】
触媒の反応の概念は、専ら先に熱的老化プロセスで失われた触媒活性の部分的な再生を示す。熱的老化プロセスは、循環運転形式であり、この循環運転形式の構成成分は、再生であり、触媒が高い運転温度に晒されている場合には、常に重なり合っている。再活性化は、標準の走行運転の構成成分ではなく、この再活性化が一般に車両で行われうる場合には、固有の運転状態として車両のエンジン制御によって意図的に導入されかつ調整されなければならない。触媒の再活性は、走行運転以外にも例えばメンテナンス中に行なうことができる。そのために、老化された触媒および再活性化すべき触媒を車両から取り外し、車両とは別の装置中で処置することが必要である。
【0016】
このような再活性化法は、本出願人のWO 07/009679に記載されている。既述したように、この刊行物中に記載された方法で塩基性のストロンチウムまたはバリウム化合物を酸化セリウム含有担体材料上に有し、かつさらに熱的老化によって形成されたストロンチウムおよび/またはバリウム化合物を担体材料、なかんずくストロンチウムセラートおよび/またはバリウムセラートと一緒に含有する熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の触媒活性は、二酸化窒素、水蒸気および場合によっては二酸化炭素を含有するガス混合物での処理によって300℃〜500℃で少なくとも部分的に再生される。
【0017】
WO 07/009679に記載された方法では、触媒活性の貴金属成分の影響下にある老化機構については考慮されていないままである。それというのも、これまで、貴金属に対する主要な老化機構は、粒子の不可逆的な焼結から出発していたからである。従って、本出願人のWO 07/009679では、酸化セリウムを基礎とする熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の部分反応だけを成し遂げることができる。
【0018】
ところで、本発明は、既にWO 07/009679に記載された反応方法を、熱的老化プロセスで損傷を受けた触媒活性成分が少なくとも部分的に反応されるのに十分であるように改善するという課題を基礎とするものであった。
【0019】
この課題の解決は、窒素酸化物吸蔵触媒中に含有されている貴金属に関連して熱的老化プロセスを深く理解することを前提とする。
【0020】
より新しい公知技術水準には、貴金属粒子の焼結は、ひょっとすると窒素酸化物吸蔵成分としてのアルカリ土類金属酸化物での酸化セリウムを基礎とする窒素酸化物吸蔵触媒中での触媒活性成分の不活性化にとって唯一の関連性のある老化機構ではないのではないかという指摘がある。
【0021】
即ち、米国特許第2006/0252638号明細書A1には、希土類元素、アルカリ土類金属元素および貴金属を含有する、改善された熱的老化安定性を有する排ガス触媒の特許保護が請求されており、この場合希土類元素およびアルカリ土類金属元素の一部分は、複合酸化物を形成し、この複合酸化物および貴金属の一部分は、固溶体を形成する。この米国特許明細書には、発明者らが希土類元素としてセリウム、アルカリ土類金属元素としてバリウムおよび貴金属として白金を使用する場合に前記触媒の改善された老化安定性の原因を見出したことが記載されている。それによれば、触媒の改善された老化安定性は、本質的に式(Ba,Pt)CeO3またはBa(Ce,Pt)O3の白金、バリウムおよび酸化セリウムからなる固溶体が形成される可逆性に基づくものである。従って、Ptは、簡単なリーンな排ガス条件下で固溶体の成分である。このPtは、簡単なリッチ雰囲気への移行の際に一部分が複合体から再び溶解され、別々に混合酸化物上に析出される。例えば、三方触媒(Dreiwegekatalysator)の運転の場合に通常であるような、簡単なリッチ条件と簡単なリーン条件との間での急激な変化の場合に、白金は、前記米国特許明細書の記載によれば、活性の形のまま利用することができる。
【0022】
即ち、本明細書中で課された課題の解決に対して、最初に、窒素酸化物吸蔵成分としてのストロンチウムまたはバリウムを有する酸化セリウムを基礎とする窒素酸化物吸蔵触媒中でも貴金属の包接下に三方触媒を形成するのか、これは、如何なる条件下で起こるのか、その結果、窒素酸化物吸蔵活性に如何なる影響を及ぼすのかという疑問を解明することができた。
【0023】
本発明者らの試験は、第1の工程で高い温度で酸素含有の雰囲気中で最初に酸化白金PtO2が形成されることを示した。この酸化白金は、触媒中で或る程度の熱移動度を有し、窒素酸化物吸蔵成分の炭酸バリウムと650〜700℃で次の反応方程式(1)により反応して白金酸バリウムに変わる:
(1)PtO2+BaCO3→BaPtO3+CO2
窒素酸化物吸蔵成分が担持された形で酸化セリウム含有担体材料上に存在する場合には、こうして十分に高い温度で同時反応(2)でバリウムセラートが生じる。
(2)BaCO3+CeO2→BaCeO3+CO2
既に、770℃からの温度で生じる連続反応(3)において、バリウムセラートおよび白金酸バリウムから三元混合酸化物は、生じる:
(3)BaPtO3+BaCeO3→Ba2CePtO6
この工程で生じる化合物は、十分な触媒活性を示さない。
【0024】
本発明の課題は、既述したように、このように損傷を受けた触媒の元来の触媒活性をバリウムおよび白金の返送下に触媒活性状態でできるだけ十分に再生しうる方法を提供することであった。
【0025】
この課題は、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させるための2工程法によって解決され、この場合吸蔵触媒は、白金と共に触媒活性成分として酸化セリウム含有担持材料上の塩基性のストロンチウム化合物またはバリウム化合物、またはストロンチウム化合物およびバリウム化合物を有し、さらに熱的老化によって形成されたストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を担持材料と一緒に白金の包接下に含有する。この方法は、触媒が第1の処理工程で還元剤含有ガス混合物中で100℃〜500℃の温度に加熱され、次に時間的にずれた第2の処理工程で二酸化窒素および水蒸気を含有するガス混合物で300℃〜500℃の温度で処理されることによって特徴付けられる。
【0026】
この処理により、第1の処理工程でバリウムセリウム白金酸塩の分解は、触媒活性の白金の遊離下および酸化バリウムおよびバリウムセラートの形成下に反応方程式(4)に従って行なわれる:
(4)Ba2CePtO6+[Red]→Pt+BaO+BaCeO3+[Red−O2
[Red]=還元剤;[Red−O2]=還元剤+2O2-からの反応生成物
例:[Red]=水素=2H2→[Red−O2]=2H2
第2の反応工程でバリウムセラートの分解は、WO 07/009679に記載の方法と全く同様に行なわれる。
【0027】
白金を第1の処理工程で微粒状の触媒活性の形で熱的老化中に形成された、三元のバリウム、セリウムおよび白金含有酸化物から遊離しうるために、老化された触媒は、適当な還元剤を十分な濃度で含有するガス混合物で処理されなければならない。第2の処理工程でバリウムを窒素酸化物吸蔵化合物に再変換するために、触媒は、少なくとも二酸化窒素および水蒸気を適当な濃度で含有するガス混合物で処理されなければならない。反応に必要とされるガスの種類は、前記方法の2工程性を定める:還元剤と酸化剤として作用する二酸化窒素とがガス混合物中に同時に存在する場合には、反応のために強制的に必要とされる反応体の反応は、互いに有利になるであろう。著しく緩徐に進行する、触媒の反応のために、還元剤または二酸化窒素は、十分には残っていない。そのことから、第1の処理工程および第2の処理工程は、順次に、即ち時間的にずらして進行させなければならないことが判明した。
【0028】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、有利に水素または一酸化炭素またはアンモニアまたは炭化水素、またはこれらの混合物を還元剤として含有する。特に好ましいのは、水素または一酸化炭素、またはこれらの混合物である。還元剤の濃度は、第1の処理工程で使用されるガス混合物が平均的に還元作用を有し、即ち例えば酸素のような酸化性成分よりも多い還元剤を均衡的に含有する。即ち、場合によっては第1の処理工程で使用される排ガスは、リッチでなければならず、即ち空気数λ<1を有していなければならない。第1の処理工程で使用するためには、酸素を含有しないガス混合物が特に好適である。
【0029】
また、第1の処理工程使用される還元剤の種類は、熱的に老化された触媒の第1の部分反応の際に白金の再遊離のために選択される、最適な温度を決定する。
【0030】
好ましくは、第1の処理工程で水素を0.5〜15体積%含有するガス混合物が使用され、この場合触媒は、150℃〜400℃の温度に加熱される。前記ガス混合物は、特に有利に水素3〜15体積%、殊に有利に水素5〜10体積%を含有する。微粒状の触媒活性形の白金の回収は、水素含有雰囲気中で既に比較的低い温度で開始され、次に速度の増加と共に高い温度で進行する。水素含有雰囲気中の触媒は、特に有利に150℃〜350℃、殊に有利に200℃〜300℃に加熱される。第1の処理工程で還元剤としての炭化水素を含有するガス混合物が使用される場合には、少なくとも300℃の温度が必要とされる。好ましくは、触媒は、炭化水素0.1〜15体積%を含有するガス混合物中で第1の処理工程で300℃〜500℃の温度に加熱される。特に好ましくは、ガス混合物は、炭化水素1〜10体積%を含有する。前記ガス混合物が酸素を含有しない場合には、300℃から使用された炭化水素の分解が水素の形成下に生じる。残留酸素含量の場合には、既に若干僅かな温度で一酸化炭素の形成下に炭化水素の同時酸化が生じる。水蒸気が同時に存在する場合には、同様に水性ガスシフト反応の結果として水素の形成が生じ、この水性ガスシフト反応において、一酸化炭素および水蒸気は、二酸化炭素および水素に変換される。このプロセスで生じる成分の一酸化炭素および水素は、固有の還元剤であり、この還元剤は、老化中に生じたバリウム−セリウム白金酸塩から白金を取り戻す。
【0031】
更に、好ましい実施態様において、第1の処理工程で一酸化炭素0.5〜15体積%を含有するガス混合物が使用され、この場合触媒は、150℃〜400℃に加熱される。好ましいのは、なかんずく一酸化炭素5体積%超を有するガス混合物、特に有利に一酸化炭素8〜12体積%を有するガス混合物である。更に、ガス混合物が水蒸気0.5〜15体積%、有利に水蒸気5〜10体積%を含有する場合には、200℃の温度から再び急速な水性ガスシフト反応が起こり、その結果、バリウム−セリウム白金酸塩に対して還元剤として高い効果を有する水素が生じる。このようなガス混合物を使用する場合には、200℃〜400℃の範囲内の温度は、第1の処理工程で優れた反応結果を生じる。
【0032】
反応すべき窒素酸化物吸蔵化合物がリーン運転するエンジンを備えた車両の排ガス浄化装置の成分である場合には、還元剤としてのアンモニアを含有するガス混合物の使用は、第1の処理工程で特に好ましい。これは、殊に排ガス浄化装置が窒素酸化物吸蔵化合物以外に選択的な触媒還元のための触媒およびアンモニアまたはアンモニアに分解する化合物を排ガスストランド中に計量供給する装置を含む場合に該当する。更に、アンモニアは、窒素酸化物吸蔵化合物の前方に配置された計量供給位置を介して第1の処理工程で付加的に排ガスストランド中に導入されることができ、白金の還元のためにBa2CePtO6中で利用されることができる。
【0033】
熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を還元剤含有ガス混合物で第1の処理工程で処理した後、白金は、触媒活性形でBaO含量(または窒素酸化物吸蔵BaO連続生成物の含量、例えばBaCO3またはBa(OH)2)および大量のバリウムセラートと共に存在する。バリウムセラートは、効果的に窒素酸化物を吸蔵する状態にないので、第1の処理工程に第2の処理工程を接続させなければならず、この第2の処理工程中にバリウムセラートは、酸化バリウムおよび酸化セリウムに分解される。この第2の処理工程は、本質的に本出願人のWO 2007/009679に記載された方法に従って行なわれるが、このことに関して、この刊行物の記載は、参考のために引用されたものである。
【0034】
第2の処理工程で触媒は、二酸化窒素および水蒸気を含有するガス混合物を用いて300℃〜500℃の温度で処理される。有利に、ガス混合物は、窒素酸化物0.05〜35体積%を酸素5〜50体積%および水蒸気5〜30体積%と共に含有する。バリウムセラートの特に急速で完全な分解は、第2工程で使用されたガス混合物がさらに二酸化炭素5〜20体積%を含有する場合に達成される。
【0035】
本発明による方法は、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の反応に適しており、この窒素酸化物吸蔵触媒は、リーン運転するエンジンを備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分である。
【0036】
本発明の実施態様によれば、触媒を反応の実施のために車両から取り外すことは、好ましい。この場合、全部で2工程の反応方法は、車両の外側でそのために適した装置中で行なうことができる。同様に、第1の処理工程だけを車両の外側で実施し、他方、第2の処理工程を"オンボード(on board)"でリーン運転するエンジンから一定の運転点で形成された排ガスを使用しながら行なうことが考えられる。
【0037】
触媒を反応の実施のために例えば日常の操作手順のメンテナンス中に車両から取り外した場合には、反応は、例えば適当なガス混合物が貫流する、温度調節された炉内で行なうことができる。必要とされるガス混合物は、ガス圧力容器中で前混合されて使用されることができる。同様に、必要とされるガス混合物は、種々のガス圧力容器中で場合によっては補充されて蒸発器を備えた水容器を通じて装入される成分から、炉に前接続され温度調節されたガス混合物区間で最適な組成で製造されることができる。このような実施態様の利点は、反応に使用されるガス混合物の組成ならびに反応時間を最適に調節することができることにある。即ち、第1の処理工程で使用されるガス混合物が酸素不含であることは、特に好ましい。窒素酸化物吸蔵触媒がリーン運転するエンジンを備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分である場合には、このような酸素不含のガス混合物をエンジンの排ガスによって準備することはできない。それというのも、エンジンによって形成可能な排ガスは、全ての通常の運転点で言うに値する残留酸素含量を有するからである。即ち、車両の外側で(部分)反応の実施が考えられうる。
【0038】
好ましくは、熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒の処理は、反応の実施の際に車両の外側で第1の処理工程で0.2〜12時間継続され、第2の処理工程で0.1〜5時間継続される。
【0039】
反応すべき熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒がリーン運転するエンジンおよび排ガス返送管を備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分である場合には、反応方法は、"オンボード"で車両に対して実施されてもよく、この場合反応に必要とされるガス混合物は、エンジンの排ガスによって形成される。更に、第1の処理工程で使用されるガス混合物は、空気数λ<1を有するリーン運転するエンジンの排ガスであり、第2の処理工程で使用されるガス混合物は、0.02〜2体積%の二酸化窒素含量を有する、リーン運転するエンジンの排ガスである。
【0040】
こうして高い二酸化窒素含量をリーン運転するエンジンの排ガス中で形成させるために、定義された運転点を選択し、当業者に公知の通常補足される、排ガス中の窒素酸化物濃度を上昇させる手段、例えば排ガス返送管のスイッチを切り換え、かつ発火時間を変化させる手段を行なうことができる。更に、排ガス装置が窒素酸化物吸蔵触媒に対して進入流面で言うに値する酸化力を有する少なくとも1つの他の触媒、例えば三方触媒またはディーゼル酸化触媒、または他の窒素酸化物吸蔵触媒を含むことは、好ましい。前記触媒は、リーンな排ガス中で粗製放出の際に過剰量で含まれるNOおよび酸素からNO2を形成させるために使用される。更に、このような触媒は、粗製放出からの一酸化炭素を酸化して二酸化炭素に変えるために使用される。WO 2007/009679の記載と同様に、第2の処理工程で行なわれる、バリウムセラートの分解は、二酸化炭素含有ガス混合物での処理によって400℃を上廻る温度で行なうこともできる。従って、5〜20体積%の二酸化炭素含量を有する排ガスの使用は、殊に好ましい。
【0041】
窒素酸化物吸蔵触媒を第1の処理工程の実施のために車両から取り外し、そのために適した装置中で0.5〜5時間の時間に亘って水素含有ガス混合物を用いて150℃〜400℃、有利に200℃〜350℃で処理し、他方、第2の処理工程を部分的に再生された触媒の再取り付け後にリーン運転するエンジンおよび排ガス返送管を備えた車両の走行運転中に行なう、本発明による方法の実施態様は、特に好ましい。
【0042】
本発明を、次に、幾つかの実施例および図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】新たに製造された状態でおよび熱的老化後に空気中で700℃、800℃、900℃および1000℃で12時間に亘ってCeO2含有粉末触媒上での白金7.7質量%およびBaO15.4質量%のX線粉末回折図(比較例1からのVKI)。
【図2】新たに製造された触媒粉末および熱的に老化された触媒粉末のPt L3−縁部でのフーリエ変換されたEXAFSスペクトル図。部分A(左側)は、CeO2上の白金7.7質量%およびBaO15.4質量%を含有する粉末触媒(VK−1)のEXAFSスペクトルならびにPtO2および白金箔の比較スペクトルを示し;ならびに部分B(右側)は、CeO2上のPt0.8質量%およびBaO16.5質量%を含有する白金貧有の比較触媒のEXAFSスペクトルを示す。
【図3】老化された状態でおよびa)ヘリウム中の水素10体積%で400℃で、b)ヘリウム中の一酸化炭素10体積%で400℃で、およびc)ヘリウム中のプロパン10体積%で500℃での処理後にCeO2上の白金7.7質量%およびBaO15.4質量%を含有する、1000℃で空気中で温度調節された粉末触媒VK−1の粉末回折図。
【図4】新たに製造された粉末と相応する400℃で水素パルスで反応された試料との比較で比較例2、VK−2からの700℃で12時間温度調節された白金貧有の触媒粉末の試料に対するパルス熱重量分析試験の結果を示す線図。
【実施例】
【0044】
比較例1:
この比較例において、最初に白金富有の窒素酸化物吸蔵触媒中で老化効果を試験した。
【0045】
触媒の製造のために、約100m2/gのBET表面積を有する商業的に入手可能な酸化セリウム100gを、"初期湿潤"法により、吸収された溶液量がか焼後にBaO20gの含量に相当するまで酢酸バリウム溶液で含浸した。それぞれの含浸工程の間に粉末を80℃で乾燥させた。最後の含浸後、500℃で5時間のか焼を行なった。こうして得られたBaO/CeO2粉末上に白金を、[Pt(NH32(NO22]溶液での含浸、80℃での乾燥および500℃で5時間の再度のか焼によって施した。
【0046】
完成した触媒粉末は、白金7.7質量%およびBaO15.4質量%を含有していた。
【0047】
老化機構を酸素含有雰囲気中で試験するために、こうして得られた粉末触媒の試料をそれぞれ12時間空気中で温度調節し、この場合700℃、800℃、900℃および1000℃の温度を選択した。熱的に老化された粉末をX線粉末回折法により、新たに製造された触媒粉末との比較のために試験した。相応する回折図は、図1に図示されている。
【0048】
新たな状態で回折図からCu標準反射と共にCeO2および炭酸バリウムにとって典型的な反射を確認することができる。白金は、X線無定形状態で、即ち微粒状に存在する。
【0049】
700℃での温度調節後に、白金の燒結と共に結晶状態(→2ΘでのPt反射=40°)になるまで白金酸バリウムの形成を確認することができる。よりいっそう高い温度でのか焼は、Ba2CePtO6の形成下に老化反応の進行を生じ、この場合第1の中間工程で生じた白金酸バリウムは、再び消滅する。2Θ=40°でのPt反射の消滅は、白金が酸化物材料と完全に反応したことを示す。
【0050】
比較例2:
白金富有粉末触媒中でVK−1を観察した老化プロセスが低い白金濃度の場合でも行われることを証明するために、比較例1に記載された方法により、比較例1で製造された触媒粉末とは白金濃度の点でのみ異なる触媒を製造した。CeO2 100g上にBaO20gおよびPt1gを施した。従って、完成した触媒粉末は、Pt0.8質量%およびBaO16.5質量%を含有していた。
【0051】
こうして得られた触媒粉末VK−2の試料をそれぞれ12時間空気中で温度調節し、この場合には、600℃、700℃、800℃、900℃および1000℃の温度が選択された。熱的に老化された粉末をVK−1の相応する試料と比較するためにEXAFS試験(EXAFS=extended x-ray absorption fine structure;X線吸収分光分析法)で試験した。図2は、フーリエ変換されたEXAFSスペクトルとしての測定結果を示す。部分A(左側)は、PtO2および白金箔のVK−1試料のEXAFSスペクトルならびに新しい材料の比較スペクトルを示す。部分B(右側)は、白金貧有の比較触媒VK−2のEXAFSスペクトルを示す。
【0052】
800℃から2つの試料で観察される、3.6オングストロームおよび4.2オングストロームでの信号は、Ba2CePtO6のペロフスカイト格子中の隣接したバリウム原子およびセリウム原子に対して特性を示す。
【0053】
実施例1
比較例1で製造された白金富有の粉末触媒VK−1の試料を1000℃で12時間、温度調節した。こうして製造された、比較例1からの試験によりBa2CePtO6を含有する、熱的に老化された触媒粉末の試料を、異なる還元処理に掛けた:
a)400℃でヘリウム中の水素10体積%を含有するガス混合物での処理;
b)400℃でヘリウム中の一酸化炭素10体積%を含有するガス混合物での処理;
c)500℃でプロペンC3610体積%を含有するガス混合物での処理。
【0054】
処理後に、試料をX線粉末回折法により試験した。図3は、Ba2CePtO6に対して特性を示す反射が2Θ=30.2°であることにより、範囲2Θ=25〜37°に対する粉末回折図からの一部分を示す。
【0055】
Ba2CePtO6に対して特性を示す反射は、還元処理後に完全に消滅していたことを明らかに判断することができる。更に、図示されていない全体の回折図は、バリウムセラートに対して特性を示す反射強さの増加ならびに炭酸バリウムの反射の新たな発生を示す。
【0056】
実施例2:
老化反応の生成物の影響を試験するために、パルス熱分析試験を実施した。[試験構成および方法に関して、M. Maciejewski, CA. Muller, R. Tschan, W.D. Emmerich, A. Baiker, Thermochim. Acta 295 (1997) 167参照]。
【0057】
新たに製造された粉末と相応する400℃で水素パルスで反応された試料との比較で比較例2、VK−2からの700℃で12時間温度調節された白金貧有の触媒粉末の試料を試験した。
【0058】
この試料をそれぞれの試験の開始時にヘリウムの下で500℃で加熱した。次に、リーンな運転段階のシミュレーションのためにNOおよび酸素から交互に発生するパルスをキャリヤーガス中に注入した。引続き、再生段階をプロペンパルスによって調整した。試験中に評価された熱重量測定曲線は、図4に図示されている。
【0059】
吸蔵段階中に観察された質量変化は、2つの重なり合う効果の結果である:硝酸バリウムの形成および炭酸バリウムの分解。この結果は、全部で3つの試料が選択された反応条件下で比較可能な窒素酸化物吸蔵能を有することを示す。この場合、吸蔵挙動は、決定的には10000ppmで極めて高く選択された窒素酸化物濃度で定められる。
【0060】
老化された材料の反応性の主要な制限は、再生活性の損失から生じる。NOx再生中に、白金は、強制的に必要とされ、窒素酸化物吸蔵触媒の"一掃(Ausraeumen)"は、NOxと還元剤のプロペンとの引続く反応によって進行させておくことができる。貴金属は、熱的老化プロセスのためにもはや触媒活性状態にないので、このプロセスは、老化された触媒中で阻止され、窒素酸化物の再生は、実際に起こらない。
【0061】
水素と反応した触媒は、新たに製造された触媒に殆んど完全に対応する窒素酸化物吸蔵触媒および再生活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させる方法であって、この吸蔵触媒は、白金と共に触媒活性成分として酸化セリウム含有担持材料上の塩基性のストロンチウム化合物またはバリウム化合物、またはストロンチウム化合物およびバリウム化合物を有し、さらに熱的老化によって形成されたストロンチウム化合物および/またはバリウム化合物を担持材料と一緒に白金の包接下に含有し、リーン運転するエンジンを備えた自動車の排ガスを浄化するために使用される、前記の熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させる方法において、
触媒が第1の処理工程で還元剤含有ガス混合物中で100℃〜500℃の温度に加熱され、次に時間的にずれた第2の処理工程で二酸化窒素および水蒸気を含有するガス混合物で300℃〜500℃の温度で処理されることを特徴とする、前記の熱的に老化された窒素酸化物吸蔵触媒を反応させる方法。
【請求項2】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、水素または一酸化炭素またはアンモニアまたは炭化水素またはこれらの混合物を還元剤として含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、水素0.5〜15体積%を含有し、触媒は、150℃〜400℃の温度に加熱される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、炭化水素0.1〜15体積%を含有し、触媒は、300℃〜500℃の温度に加熱される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、一酸化炭素0.5〜15体積%を含有し、触媒は、150℃〜400℃の温度に加熱される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
第1の工程で使用されるガス混合物は、さらに水蒸気0.5〜15体積%を含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第2の処理工程で使用されるガス混合物は、窒素酸化物0.05〜35体積%、酸素5〜50体積%および水蒸気5〜30体積%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第2の工程で使用されるガス混合物は、さらに二酸化炭素5〜20体積%を含有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
窒素酸化物吸蔵触媒は、リーン運転するエンジンを備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分であり、触媒は、反応の実施のために車両から取り外される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、酸素不含である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
触媒の処理は、第1の処理工程で0,2〜12時間継続され、触媒の処理は、第2の処理工程で0.1〜5時間継続される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
窒素酸化物吸蔵触媒は、リーン運転するエンジンおよび排ガス返送管を備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分であり、反応に必要とされるガス混合物は、エンジンの排ガスによって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第1の処理工程で使用されるガス混合物は、空気数λ<1を有するリーン運転するエンジンの排ガスである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第2の処理工程で使用されるガス混合物は、0.02〜2体積%の二酸化窒素含量を有するリーン運転するエンジンの排ガスである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
第2の処理工程で使用されるガス混合物は、5〜20体積%の二酸化窒素含量を有するリーン運転するエンジンの排ガスである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
窒素酸化物吸蔵触媒は、リーン運転するエンジンを備えた車両の排ガス浄化装置の構成成分であり、反応に必要とされるガス混合物は、エンジンの排ガスおよび付加的に排ガスストランド中に導入された成分によって形成される、請求項2記載の方法。
【請求項17】
第1の処理工程で付加的にアンモニアは、排ガスストランド中に導入される、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−527759(P2010−527759A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508765(P2010−508765)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054583
【国際公開番号】WO2008/141875
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】