説明

熱硬化性ポリイミドシリコーン樹脂組成物及びその硬化皮膜

【課題】耐溶剤性に優れると共に、高熱及び高湿等の環境下でも高い接着性を維持する硬化膜を与える樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)フェノール性水酸基と、ケイ素原子に結合したラジカル重合性基を有するポリイミドシリコーン樹脂、
(B)エポキシ樹脂を、成分(A)のフェノール性水酸基1モルに対して、エポキシ基が0.2〜10モルとなる量で、及び
触媒量の(C)有機過酸化物、
を含む、熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性樹脂組成物に関し、特に低温、短時間での熱処理により耐熱性、機械強度、可とう性、耐溶剤性および各種基材への密着性に優れた硬化皮膜が得られるポリイミドシリコーン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は耐熱性が高く、電気絶縁性に優れているので、プリント回線基板、耐熱性接着テープ、電気部品、半導体材料の保護膜、層間絶縁膜等として、広く利用されている。しかし、ポリイミド樹脂は限られた溶剤にしか溶解しないため作業性が悪い場合がある。そこで、種々の有機溶剤に比較的易溶のポリアミック酸を基材に塗布し、高温処理により脱水環化してポリイミド樹脂を得る方法が採られている。ところが、この方法では高温かつ長時間の加熱を必要とするので、基材の熱劣化を起こし易く、一方、加熱が不十分であると、得られる樹脂の構造中にポリアミック酸が残存してしまい、耐湿性、耐腐食性等の低下の原因となる。
【0003】
そこで、ポリアミック酸に代えて、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の溶液を基材に塗布した後、加熱することにより溶剤を揮散させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、これらの有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を用いて得られる樹脂皮膜は、耐溶剤性に劣る。しかし、これらの有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を用いて得られる樹脂皮膜は、耐溶剤性に劣るという欠点を有している。
【0004】
耐溶剤性を高めるために、ポリイミドシリコーン樹脂にフェノール性OH基部分を導入し、エポキシ樹脂と組合わせた硬化性組成物が知られている(特許文献2)。しかし、該ポリイミドシリコーン樹脂は、溶剤への溶解性が十分でなく、また、得られる硬化物の可撓性が不足し、熱又は湿気等により、硬化膜が基材から剥離する傾向がある。そこで、溶剤への溶解性を高めるために、又、弾性率を低下するために、シリコーン部分を多くすると、OH基の割合が少なくなってしまい、硬化後の耐溶剤性が不十分となる。
【特許文献1】特開平2−36232号公報
【特許文献2】特開平10−195278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、耐溶剤性に優れると共に、高熱及び高湿等の環境下でも高い接着性を維持する硬化膜を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリイミドシリコーン樹脂のシリコーン部分に、硬化性の官能基を導入し、架橋構造を形成することによって、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち本発明は、
(A)フェノール性水酸基と、ケイ素原子に結合したラジカル重合性基を有するポリイミドシリコーン樹脂、
(B)エポキシ樹脂を、成分(A)のフェノール性水酸基1モルに対して、エポキシ基が0.2〜10モルとなる量で、及び
触媒量の(C)有機過酸化物、
を含む、熱硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は種々の有機溶剤に可溶な溶液であり、使用時には低温、短時間の加熱処理により容易に溶剤を除去して、硬化皮膜を得ることができる。該硬化皮膜は耐熱性、可撓性、耐溶剤性および各種基材への接着性に優れる。従って種々の部品や基板の保護膜等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基との反応に加えて、(A)ポリイミドシリコーン樹脂中のケイ素原子に結合したラジカル重合性基が、過酸化物重合触媒の存在下で、硬化されることを特徴とする。これにより、低温での速い硬化を達成できる。該ラジカル重合性基としては、ビニル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基等の脂肪族基、及びスチリル基等の芳香族基などを挙げることができる。これらのうち、原料の入手の容易さという観点からビニル基が好ましい。該不飽和基は、ポリイミドシリコーン樹脂のシリコーン部分であれば、いずれの部位に在ってもよい。
【0009】
(C)有機過酸化物としては、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、t-ブチルパーオキシ2−エチルエキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシアセテート等のアルキルパーオキシエステル、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等のモノパーオキシカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,6-ビス(4-t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5ジメチル2,5ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3,-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等が挙げられるが、これらのなかでも、(A)ポリイミド樹脂と良好な相溶性を示すことから、モノパーオキシカーボネートまたはパーオキシジカーボネートが、好ましい。
【0010】
有機過酸化物の配合量は、前記ラジカル重合性基が反応するための触媒量であればよいが、好ましくは(A)ポリイミドシリコーン樹脂100質量部に対し0.1〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。配合量が前記上限値を超えると本発明の組成物の保存安定性が悪化し、硬化物の耐久性が低くなる傾向がある。一方、前記下限値未満であると、硬化物の耐溶剤性が十分でない場合がある。
【0011】
(B)エポキシ樹脂のとしては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールA等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールF等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の環状脂肪族エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジメチルグリシジルフタレート等のグリシジルエステル系樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン系樹脂などが挙げられこれらの1種を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。さらに必要に応じて1分子中にエポキシ基を1つ含む単官能エポキシ化合物を添加しても良い。
【0012】
(B)エポキシ樹脂の量は、そのエポキシ基の量が(A)ポリイミドシリコーン樹脂中のフェノール性OH基1モルに対して0.2〜10モル、好ましくは0.5〜5モルとなる量である。(B)エポキシ樹脂が前記下限値未満では、硬化物の耐溶剤性が十分ではなく、一方、前記上限値を超えては、耐熱性、可撓性が低下する恐れがある。上記配合量は、ポリイミドシリコーン樹脂及びエポキシ樹脂の分子量に依存するが、重量比にすると、ポリイミドシリコーン樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部である。
【0013】
上記エポキシ樹脂とフェノール性OH基との反応を促進させる目的で、硬化促進剤を使用しても良い。硬化促進剤の例としてはトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン等のアミノ化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、好ましくは2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール及び2―メチルイミダゾールである。該硬化促進剤の添加量は、ポリイミドシリコーン樹脂およびエポキシ化合物の総量100質量部に対して10質量部以下であることが、組成物のポットライフの点から、好ましい。
【0014】
フェノール性水酸基は、エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成することができればよいが、上記不飽和基の反応性を立体的に阻害することが無いように、好ましくは、シリコーン部分以外の部分に在る。
【0015】
好ましくは、ポリイミドシリコーン樹脂は下記式(1)で表される3種の繰返し単位からなる。

式(1)は、一種の組成式である。即ち、p、q及びrは、夫々、Xを含む繰返し単位、Yを含む単位、及びZを含む繰返し単位が含まれている割合を示す、1以下の正の数であり、p+q+r=1である。後述するように、Xがフェノール性OH基を有し、Yはケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を有し、硬化物の架橋点を形成し、該硬化物に耐溶剤性を与える。さらにYは、シリコーン構造により、樹脂に溶解性、硬化物の可撓性を与える。これらの観点から、好ましくは、0.15≦p+q≦1.0、及び0.05≦q≦0.9であり、より好ましくは0.2≦p+q≦1.0、及び0.05≦q≦0.8である。
【0016】
式(1)において、X式(2)〜(6)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する二価の基であり、後述する芳香族ジアミンから誘導される。











【0017】
Yは式(7)で表されるケイ素原子に結合したラジカル重合性基を有する二価のシリコーン残基である。


式(7)中のRは、互いに独立に、炭素数1〜8の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基などが挙げられるが、原料の入手が容易な点からメチル基及びフェニル基が好ましい。Rはラジカル重合性基、好ましくはビニル基、である。a及びbは、シロキサン単位の繰り返し数を表す数でり、夫々、1〜100の整数、好ましくは1〜50の整数である。a、bの値が100を超えると、ポリイミドシリコーン樹脂が有機溶剤に対して充分な溶解性を示さなくなる。また、aとbの割合は0.1≦b/a+b≦0.6が好ましく、さらに好ましくは0.2≦b/a+b≦0.6である。bが0.1より小さいと硬化後の耐溶剤性が悪くなり、0.6より多いと耐熱性が悪くなる傾向がある。
【0018】
式(1)中のZは、X及びY以外の二価の基、即ち、フェノール性水酸基及びビニル基を含まない基、であり、慣用のジアミンから誘導される。該ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン、フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等の芳香族ジアミンが挙げられ、これら2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、式(14)で表される芳香族ジアミンが好ましく、式中のBは式(15)、(16)、(17)のいずれかで表わされる基である。





【0019】
式(1)において、Wは4価の有機基であり、好ましい基として、式(8)〜(13)で表される有機基、及びこれら2種以上組み合わせが挙げられる。















【0020】
好ましくは、(A)ポリイミドシリコーン樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、5,000〜150,000であり、より好ましくは20,000〜100,000、最も好ましくは20,000〜50,000である。分子量が前記下限値未満であると、硬化物の耐熱性、耐溶剤性が悪く、一方、前記上限値を超えては溶剤への溶解性が悪くなる傾向がある。
【0021】
また、好ましくは、(A)ポリイミドシリコーン樹脂のフェノール性OH基当量が800g/eq〜5000g/eqであり、より好ましくは800g/eq〜4000g/eqであり、ビニル基当量が200g/eq〜1000g/eqであり、より好ましくは300g/eq〜800g/eq、であり、且つ、OH基とビニル基の合計理論当量が150g/eq〜800g/eq、好ましくは200g/eq〜650g/eqである。これらの当量は、H−NMRにおいて、フェノール性OH及びビニル基のプロトン積分強度と、分子量から半定量的に求めることができる。各当量が前記範囲を外れると、耐溶剤性、可撓性を達成することが困難である。最も好ましくは、既に述べたp、qの範囲内において、上記各当量を有する。
【0022】
ポリイミドシリコーン樹脂は、公知の方法で作ることができる。まず、式(1)のWを誘導するための酸二無水物、Zを誘導するためのジアミン及びYを誘導するためのジアミノポリシロキサンを溶剤中に仕込み、低温、即ち20〜50℃程度で反応させて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を製造する。次に、得られたポリアミック酸の溶液を、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは140〜180℃の温度に昇温し、ポリアミック酸の酸アミドを脱水閉環反応させることにより、ポリイミドシリコーン樹脂の溶液が得られ、この溶液を水、メタノール、エタノール、アセトニトリルといった溶剤に投入して沈殿させ、沈殿物を乾燥することにより、ポリイミドシリコーン樹脂を得ることができる。
【0023】
ここで、テトラカルボン酸二無水物に対するジアミン及びジアミノポリシロキサンの合計の割合は、好ましくはモル比で0.95〜1.05、特に好ましくは0.98〜1.02の範囲である。また、ポリイミドシリコーン樹脂を製造するときに使用される溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。また、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を併用することでイミド化の際に生成する水を共沸により除去しやすくすることも可能である。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なお、ポリイミドシリコーン樹脂の分子量を調整するために、無水フタル酸、アニリン等の一官能基の原料を添加することも可能である。この場合の添加量はポリイミドシリコーン樹脂に対して2モル%以下が好ましい。
【0025】
また、イミド化過程において脱水剤およびイミド化触媒を添加し必要に応じて50℃前後に加熱することにより、イミド化させる方法を用いてもよい。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ジアミン1モルに対して1〜10モルとするのが好ましい。イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることができる。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。
ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方を複数種使用する場合も、反応方法は特に限定されるものではなく、例えば原料を予め全て混合した後に共重縮合させる方法や、用いる2種以上のジアミン又はテトラカルボン酸二無水物を個別に反応させながら順次添加する方法等がある。
【0026】
本発明の組成物は、作業性をよくするために溶剤を加えて、ワニスにして使用しても良い。使用される溶剤は本発明の組成物と相溶性のあるものであればよい。これら好適な溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル類;シクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2−オクタノン、アセトフェノン等のケトン類;酢酸ブチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、好ましくはケトン類、エステル類及びセロソルブ類であり、特に好ましくはシクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−メチル−2−ピロリドンである。これらの溶剤は単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の組成物に添加すべき溶剤の量は、樹脂の溶解性、塗布時の作業性、皮膜の厚さ等を考慮して、通常ポリイミド樹脂濃度が1〜40重量%となる範囲内で使用される。組成物の保存の際には比較的高濃度に調製しておき、使用の際に所望の濃度に希釈してもよい。
【0027】
その他に熱伝導性フィラー、老化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。具体的には粒状アルミナ、粒状シリカ、ヒュームドシリカ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、クレー、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム、およびヒュームド金属酸化物などの無機物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン、カーボンブラック、およびグラファイトなどの有機物が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、基材に塗工後、 150〜 200℃の温度で1〜4時間加熱すれば、溶剤が完全に除去され、かつ硬化できる。
【0029】
実施例
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
ポリイミドシリコーン樹脂の合成
[合成例1]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.8g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、下記式(18)で表されるジアミノシロキサン53.3g(0.06モル)、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル4.3g(0.02モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.2g(0.02モル)をn−メチル−2−ピロリドン100gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じて得られた沈降物を乾燥して、下記式(19−1)、(19−2)、(19−3)で夫々表される繰返し単位からなるポリイミドシリコーン樹脂を得た。




得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、37,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたOH基当量及びビニル基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(a)とする。
【0030】
[合成例2]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物44.4g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、上式(18)で表されるジアミノシロキサン44.4g(0.05モル)、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル6.5g(0.03モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.2g(0.02モル)をn−メチル−2−ピロリドン100gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン 30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じ、得られた沈降物を乾燥して、下記式(20−1)、(20−2)、(20−3)で夫々表される繰返し単位からなるポリイミドシリコーン樹脂を得た。

得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、34,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたOH基当量及びビニル基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(b)とする。
【0031】
[合成例3]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.8g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、下記式(21)で表されるジアミノシロキサン40.9g(0.01モル)、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル4.3g(0.02モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン28.7g(0.07モル)をn−メチル−2−ピロリドン200gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、 150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じ、得られた沈降物を乾燥して、下記式(22−1)、(22−1)、(22−1)で夫々表される繰返し単位からなるポリイミドシリコーン樹脂を得た。





得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、39,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたOH基当量及びビニル基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(c)とする。
【0032】
[合成例4]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.8g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、下記式(23)で表される、ラジカル重合性基を有しないジアミノシロキサン50.4g(0.06モル)、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル4.3g(0.02モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.2g(0.02モル)をn−メチル−2−ピロリドン100gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じ、得られた沈降物を乾燥して、下記式(24−1)、(24−2)、(24−3)で夫々表される繰返し単位からなるポリイミドシリコーン樹脂を得た。





得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、39,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたOH基当量及びビニル基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(d)とする。
【0033】
[合成例5]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.8g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、下記式(25)で表される、ラジカル重合性基を有しないジアミノシロキサン38.0g(0.01モル)、4,4’−(3,3’−ジヒドロキシ)ジアミノビフェニル4.3g(0.02モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン28.7g(0.07モル)をn−メチル−2−ピロリドン200gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じ、得られた沈降物を乾燥して、下記式(26−1)、(26−2)、(26−3)で夫々表される繰返し単位からなるポリイミドシリコーン樹脂を得た。





得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、41,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたOH基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(e)とする。
【0034】
[合成例6]
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物35.8g(0.1モル)およびn−メチル−2−ピロリドン400gを仕込んだ。ついで、下記式(27)で表されるジアミノシロキサン89.0g(0.095モル)および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン2.1g(0.005モル)をn−メチル−2−ピロリドン100gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに室温で10時間攪拌した。つぎに、該フラスコに水分受容器付き還流冷却器を取り付けた後、キシレン30gを加え、150℃に昇温させてその温度を6時間保持したところ、黄褐色の溶液が得られた。こうして得られた溶液を室温(25℃)まで冷却した後、メタノール中に投じ、得られた沈降物を乾燥して、下記式(28−1)、(28−2)で夫々表される繰返し単位からなる、フェノール性水酸基を欠くポリイミドシリコーン樹脂を得た。



得られた樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、未反応のポリアミック酸に基づく吸収は現れず、1,780cm−1および1,720cm−1にイミド基に基づく吸収を確認した。テトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、44,000であった。また、樹脂のH−NMR測定により求めたビニル基当量を表1に示す。この樹脂をポリイミドシリコーン樹脂(f)とする。
【0035】
樹脂組成物の調製
ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、有機過酸化物、イミダゾール化合物及び溶剤を表2に示す配合比率で混合し、各種の樹脂組成物を調製した。なお表2中の部は全て質量部を表す。
【0036】
樹脂組成物の硬化皮膜の形成及びその性能評価
(1)耐溶剤性
上記で得られた各熱硬化性樹脂組成物を、それぞれガラス基板上に厚さ100μm程度になるように塗布し、80℃で30分、さらに180℃で1時間加熱して、硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜を80℃のNメチル2ピロリドン(NM2P)に1時間浸漬した後、皮膜の外観における変化の有無を目視観察した。その結果を表3に示す。
(2)接着性
樹脂組成物を銅基板およびアルミ基板上に塗布し、80℃で30分、さらに180℃で1時間加熱し、樹脂硬化皮膜を形成した。得られた硬化皮膜付きの銅基板およびアルミ基板を、2.1気圧の飽和水蒸気中に168時間放置した後と200℃の乾燥機に1000時間放置した後とについてそれぞれ碁盤目剥離テスト(JISK5400 )を行い、高湿度条件下の接着性及び高温下での接着性を評価し、その結果を表3に示した。なお表3中の数値(分子/分母)は、分画数 100(分母)当たり、剥離しない分画数(分子)を表す。即ち 100/100 の場合は全く剥離せず、0/100 の場合はすべて剥離したことを示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
比較例1及び2は、いずれも脂肪族不飽和基を欠き、その硬化膜は耐溶剤性に劣った。参考例1はエポキシ樹脂を、参考例2は有機過酸化物を、夫々欠き、これらの硬化膜も耐溶剤性に劣った。参考例3は、フェノール性OH基とエポキシ樹脂を欠き、耐熱接着性に劣った。これらに対し、実施例1〜4の組成物の硬化膜は、耐溶剤性、耐熱、耐湿性において優れた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の組成物は、電気部品、半導体材料の保護膜、層間絶縁膜、接着テープとして有用である。特に、比較的耐熱性の低い基材や熱で変質する材料に施与するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール性水酸基と、ケイ素原子に結合したラジカル重合性基を有するポリイミドシリコーン樹脂、
(B)エポキシ樹脂を、成分(A)のフェノール性水酸基1モルに対して、エポキシ基が0.2〜10モルとなる量で、及び
触媒量の(C)有機過酸化物、
を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリイミドシリコーン樹脂が、下記式(1)で表される3種の繰返し単位からなり、5,000〜150,000の重量平均分子量(ポリスチレン換算)を有する、請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。















(式(7)中のRは、互いに独立に、炭素数1〜8の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、Rはラジカル重合性基であり、a及びbは、夫々、1〜100の整数である。)
【請求項3】
ラジカル重合性基が、ビニル基である請求項1または2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
式(1)において、0.15≦p+q≦1.0であり、及び、0.05≦q≦0.9である請求項1〜3のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリイミドシリコーンのOH基当量が、800g/eq〜5000g/eqであり、及びビニル基当量が、200g/eq〜1000g/eqであり、及び、該OH基と該ビニル基の合計当量が150g/eq〜800g/eqであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)有機過酸化物がモノパーオキシカーボネートまたはパーオキシジカーボネートである請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(C)有機過酸化物が(A)ポリイミドシリコーン100質量部に対し、0.1〜5質量部で含まれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を、硬化させてなる皮膜。

【公開番号】特開2009−62435(P2009−62435A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230430(P2007−230430)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】