説明

熱硬化性樹脂の注型成形方法及び注型成形用金型

【課題】均熱性に優れ、外観上のムラ及び機械物性の分布が発生しない良好な成形品を作製しうる注型成形用金型を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂を加熱して硬化させ所望の形状に成形するための注型成形用金型において、熱硬化性樹脂が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材と、該一対の金型表面部材の外側に配置され、輻射線を放出可能であり、上記輻射線により上記一対の金型表面部材を介して上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源と、上記一対の金型表面部材の外側面に配置され、上記輻射熱源からの輻射線を吸収する輻射線吸収手段と、を設け、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率を、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂の注型成形に関し、より詳細には、輻射熱を利用して熱硬化性樹脂を硬化させる注型成形に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の注型成形においては、図9に示すように、例えば金型表面部材100の裏側に温調媒体101を流すための管102がハンダ付けなどの方法により金型表面部材100に接触して配置され、その後、補強のためにセメント104などで管102が埋設されたものが用いられている。成形時に、管102の中に金型温度以上の温調媒体101を流下させ、金型表面部材100と接触する熱硬化性樹脂103に熱を与えることによって硬化反応を起こし成形品を得ることができる。
【0003】
ところで、注型成形において成形サイクルを短縮するためには、樹脂を注入した後の金型表面温度上昇の時間短縮が必要である。しかしながら、管102がセメント104等に埋設された注型成形用金型では、金型部材が大きな熱容量を有していること、金型部材と温調媒体を流す管との接触面積が小さいこと、温調媒体自体が熱容量を有していることにより、金型の加熱に時間を要し成形サイクルを短縮することができないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決しうるものとして、例えば特許文献1には、溶融合成樹脂材料の注入を受ける金型を真空雰囲気中に保持する釜であって内部に赤外線あるいは遠赤外線の発生源を配置した真空加熱注型釜が開示されている。
【0005】
当該真空加熱注型釜では、金型と共に釜内に配置された赤外線あるいは遠赤外線の発生源が、その輻射熱によって、釜を介することなく、直接的に金型を加熱することができることから熱効率が高まり、上述の、金型の加熱に時間を要し成形サイクルを短縮することができないという問題を解決しうる。
【0006】
また、特許文献2にも、金型の加熱方法として、コイルによる誘導加熱方式、ヒータによる伝熱、ハロゲンランプなどによる光加熱が挙げられており、これらの方式によれば、セメント等の熱容量が大きな材料を用いないことから、特許文献1と同様、上述した問題を解決しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−25377号公報
【特許文献2】特開2009−73166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の真空加熱注型釜及び成形装置では、例えばハロゲンヒータのような輻射熱源からエネルギーが放射状に拡散するため、照射場所によって、輻射線の、金型への照射角度が異なり、均熱性が得られないという問題があった。この場合、熱硬化性樹脂の加熱にムラが生じ、成形中の樹脂温度に不均一な分布が発生し,硬化のタイミングが一致しない。このため、外観上のムラが発生したり、硬化度のムラにより、機械物性に不均一な分布が発生(例えば部分的に弱くなるなど)するという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、均熱性に優れ、外観上のムラ及び機械物性の不均一な分布が発生しない良好な成形品を作製しうる注型成形用金型及び熱硬化性樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る注型成形用金型は、熱硬化性樹脂を加熱して硬化させ所望の形状に成形するための注型成形用金型であって、
熱硬化性樹脂が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材と、
該一対の金型表面部材の外側に配置され、輻射線を放出可能であり、上記輻射線により上記一対の金型表面部材を介して上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源と、
上記一対の金型表面部材の外側面に配置され、上記輻射熱源からの輻射線を吸収する輻射線吸収手段と、を備え、
上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定されたことを特徴とする。
かかる構成によれば、熱硬化性樹脂の加熱にムラが生じず、硬化のタイミングを一致させることができる。そのため、外観上のムラを防止することができ、硬化度のムラにより、機械物性に不均一な分布が発生することを防止することができる。
ここで、単位面積あたりの面積平均放射率(以下単に面積平均放射率と称することもある)とは、ある温度の物質表面から放射されるエネルギー量と、同温度の完全黒体から放射されるエネルギー量と、の比率の、全波長についての積分平均値を、面積1平方メートルについて積分し面積1平方メートルで除して平均値をとったものを意味する。
【0011】
本発明の好ましい態様では、上記輻射熱源はハロゲンヒータである。ハロゲンヒータは、エネルギーの立ち上がりが速いので、加熱時間を短くすることができ成形サイクルを短縮することができる。
【0012】
本発明に係る注型成形用金型は、さらに、輻射熱源からの輻射線を反射する輻射線反射手段を有し、
該輻射線反射手段は、断面が放物線状である曲面を有し、その開口端が、上記輻射線吸収手段の裏側表面に向けられ、上記輻射熱源が上記放物線状の曲面の焦点に位置するよう配置されたことを特徴とする。
かかる構成によれば、輻射熱源から放出された輻射線を該輻射線反射手段により反射させて輻射線吸収手段に照射させることができ、加熱効率を上げることができる。また、当該輻射線反射手段は、断面が放物線状である曲面を有し、その開口端が、上記輻射線吸収手段の裏側表面に向けられ、上記輻射熱源が上記放物線状の曲面の焦点に位置するよう配置されているため、輻射熱源から放出された輻射線を当該輻射線反射手段により反射させることによって平行光とすることができ、より均一な加熱を実現することができる。
【0013】
好ましい態様では、上記輻射線吸収手段は、放射率の異なる少なくとも2種類の被覆材からなり、該被覆材が、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列されたことを特徴とする。かかる構成によれば、単位面積あたりの面積平均放射率の所望の分布を輻射線吸収手段に容易に付与することができる。また、上記輻射線吸収手段は、1種類の被覆材を含み、該被覆材により被覆された面積と該被覆材で被覆されていない面積との面積比が上記所定の面積比となるよう配列されたものであっても良い。すなわち、上記輻射線吸収手段は、同じ放射率を有する1種類の被覆材を含み、該被覆材が存する部分と該被覆材が存しない部分とを有し、該被覆材が、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列されたものであってもよい。
【0014】
本発明に係る注型成形用金型は、さらに、上記金型表面部材近傍、具体的には上記金型表面部材の表側表面若しくは裏側表面(若しくは輻射線吸収手段の裏側表面)又は上記熱硬化性樹脂が注入される一対の金型表面部材間に温度計測手段を有していてもよく、該温度計測手段により、上記熱硬化性樹脂の温度を測定し該温度に従って上記輻射熱源の出力が制御されることを特徴とする。ここで、金型表面部材の表側表面とは、対向する一対の金型表面部材の対向する内側表面を意味し、裏側表面とは、対向する一対の金型表面部材の外側表面を意味する。
かかる構成によれば、例えば輻射熱源の表面温度が樹脂発火点以下となるよう輻射熱源の出力を制御することができる。仮に揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマーが輻射熱源の発熱部分付近まで侵入できないように輻射熱源が閉空間で覆われている場合であっても当該制御により防爆を図ることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、上記輻射熱源の温度は、揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマー発火点以下に設定される。かかる構成によれば、揮発性のある樹脂のモノマーが輻射熱源の発熱部分付近まで侵入した場合でも、輻射熱源の表面温度が樹脂発火点以下に設定されているため、当該モノマーが発火せず、防爆を図ることができる。
【0016】
ある好適な態様では、上記輻射熱源の発熱部分が、上記輻射線吸収手段の裏側表面を含む閉空間内に配置される。かかる構成によれば、上記閉空間を構成する密閉された壁部により、熱硬化性樹脂の揮発されたモノマーが、輻射熱源の発熱部分に近づくことを防止することができ、そのため防爆を図ることができる。
【0017】
また、上記態様において、上記閉空間内に大気圧以上の圧縮気体が封入されていることが好ましい。かかる構成によれば、仮に閉空間を構成する壁部に隙間があったとしても、揮発されたモノマーが上記隙間から侵入することを防止することができる。よって、揮発されたモノマーが、輻射熱源に近づくことがなく防爆を図ることができる。
【0018】
本発明に係る注型成形用金型は、さらに、上記閉空間内の圧力を検出する圧力検出手段及び該圧力検出手段に接続された電源制御手段を有していてもよく、
上記電源制御手段は、上記輻射熱源に接続され、上記閉空間内の圧力が大気圧以下若しくは大気圧以上の所定の圧力以下となった場合、上記輻射熱源への電力供給を遮断する。かかる構成によれば、揮発されたモノマーが閉空間の隙間から侵入し輻射熱源の発熱部分に近づいたとしても、当該輻射熱源への電力供給が遮断されるため防爆を図ることができる。
【0019】
本発明に係る注型成形用金型は、さらに、上記輻射線吸収手段の裏側表面に補強構造体を備えていてもよい。かかる構成によれば、一対の金型表面部材間に注入された樹脂から受ける応力(注入応力、型締圧力及び樹脂の膨張・収縮圧力)による表面部材の歪みを抑えることができる。上記補強構造体は、注入された樹脂から受ける上記応力による表面部材の歪みを2mm以下に抑え、かつ、輻射線吸収手段の裏側表面を補強構造体が覆い隠す面積の、輻射線吸収手段全体の面積に対する割合が10%以下であることが好ましい。
【0020】
また、上記補強構造体に加えて又はこれに替えて、ハニカム構造体を有することが好ましい。かかる構成によれば、容積当たりの材料の量を小さくすることができるため、強度に対する熱容量を低減することができる。
【0021】
また、本発明は、液状の熱硬化性樹脂を金型に注入し該金型を加熱して上記熱硬化性樹脂を硬化させ所望の形状の成形品を得る熱硬化性樹脂成形品の製造方法において、
熱硬化性樹脂が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材と、該一対の金型表面部材の外側に配置され、輻射線を放出可能であり、上記輻射線により上記一対の金型表面部材を介して上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源と、を有する注型成形用金型を準備する工程と、輻射線吸収手段を上記金型表面部材上に設け、該輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう設定する工程と、上記一対の金型表面部材間に熱硬化性樹脂を注入する工程と、上記輻射熱源により、上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる工程と、を有する熱硬化性樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
かかる構成によれば、均熱性を向上させることができるため、外観上のムラ及び機械物性の分布が発生しない良好な成形品を作製することができる。
【0022】
本発明の好ましい態様では、上記輻射熱源はハロゲンヒータである。ハロゲンヒータは、エネルギーの立ち上がりが速いので、加熱時間を短くすることができ成形サイクルを短縮することができる。
【0023】
本発明に係る熱硬化性樹脂成形品の製造方法は、断面が放物線状である輻射線反射手段を、その開口端が上記輻射線吸収手段の裏側表面に向くように、かつ、上記輻射熱源が上記放物線状の曲面の焦点に位置するように配置することを特徴とする。かかる構成によれば、輻射熱源から放射状に放出された輻射線を当該輻射線反射手段により平行光とすることができ、より均一な加熱を実現することができる。
【0024】
ある好ましい態様では、上記輻射線吸収手段が、放射率の異なる少なくとも2種類の被覆材からなり、該被覆材を、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列させる。かかる構成によれば、単位面積あたりの面積平均放射率の所望の分布を輻射線吸収手段に容易に付与することができる。
【0025】
また、ある好適な態様においては、上記金型表面部材近傍、具体的には上記金型表面部材の表側表面若しくは裏側表面(若しくは輻射線吸収手段の裏側表面)又は上記熱硬化性樹脂が注入される一対の金型表面部材間に温度計測手段を設置し、該温度計測手段により、上記熱硬化性樹脂の温度を測定し該温度に従って上記輻射熱源の出力を制御してもよい。かかる構成によれば、例えば輻射熱源の表面温度が樹脂発火点以下となるよう輻射熱源の出力を制御することができる。仮に揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマーが輻射熱源の発熱部分付近まで侵入できないように輻射熱源が閉空間で覆われている場合であっても当該制御により防爆を図ることができる。
【0026】
本発明の好ましい態様では、上記輻射熱源の温度を、揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマー発火点以下に設定する。かかる構成によれば、揮発性のある樹脂のモノマーが輻射熱源の発熱部分付近まで侵入した場合でも、輻射熱源の表面温度が樹脂発火点以下に設定されているため、当該モノマーが発火せず、防爆を図ることができる。
【0027】
ある好適な態様では、上記輻射熱源の発熱部分を、上記輻射線吸収手段の裏側表面を含む閉空間内に配置する。かかる構成によれば、上記閉空間を構成する密閉された壁部により、熱硬化性樹脂の揮発されたモノマーが輻射熱源の発熱部分に近づくことを防止することができ、そのため防爆を図ることができる。
【0028】
また、上記態様において、上記閉空間内に大気圧以上の圧縮気体を封入することが好ましい。かかる構成によれば、仮に閉空間を構成する壁部に隙間があったとしても、揮発されたモノマーが、輻射熱源に近づくことがなく防爆を図ることができる。
【0029】
ある好適な態様では、上記閉空間内の圧力を検出する圧力検出手段及び該圧力検出手段に接続された電源制御手段を設置し、
上記電源制御手段を、上記輻射熱源に接続し、上記閉空間内の圧力が大気圧以下若しくは大気圧以上の所定の圧力以下となった場合、上記輻射熱源への電力供給を遮断してもよい。かかる構成によれば、揮発されたモノマーが閉空間の隙間から侵入し輻射熱源の発熱部分に近づいたとしても、当該輻射熱源への電力供給が遮断されるため防爆を図ることができる。
【0030】
本発明に係る熱硬化性樹脂成形品の製造方法では、上記輻射線吸収手段の裏側表面に補強構造体を設けてもよい。かかる構成によれば、一対の金型表面部材間に注入された樹脂から受ける応力(注入応力、型締圧力及び樹脂の膨張・収縮圧力)による表面部材の歪みを抑えることができる。上記補強構造体は、注入された樹脂から受ける上記応力による表面部材の歪みを2mm以下に抑え、かつ、輻射線吸収手段の裏側表面を補強構造体が覆い隠す面積の、輻射線吸収手段全体の面積に対する割合が10%以下であることが好ましい。
【0031】
また、上記補強構造体に加えて又はこれに替えて、ハニカム構造体を設けることが好ましい。かかる構成によれば、容積当たりの材料の量を小さくすることができるため、強度に対する熱容量を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定されるため、均熱性に優れ、外観上のムラ及び機械物性の不均一な分布が発生しない良好な成形品を作製しうる注型成形用金型及び熱硬化性樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施の形態1に係る注型成形用金型1の概略的な断面図である。
【図2】図2(a)は、輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率の分布を概念的に示したものであり、図2(b)は、輻射線吸収手段の特定位置における単位面積あたりの面積平均放射率及び加熱温度を示したものである。
【図3】図3(a)〜(c)は、放射率の異なる3種類の被覆材を示している。
【図4】図4は、実施の形態1の別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。
【図6】図6は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。
【図7】図7は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。
【図8】図8は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。
【図9】図9は、従来の注型成形用金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態を、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す形態は、本発明の技術的思想を具体化するための熱硬化性樹脂成形品の製造方法及び注型成形用金型を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単に例示するにすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張している場合があり得ることに留意されたい。
【0035】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る注型成形用金型1の概略的な断面図を図1に示す。本実施の形態1に係る注型成形用金型1は、熱硬化性樹脂2を加熱して硬化させ所望の形状に成形するための注型成形用金型1であって、
熱硬化性樹脂2が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材3と、
一対の金型表面部材3の外側に配置され、輻射線4を放出可能であり、輻射線4により一対の金型表面部材3を介して熱硬化性樹脂2を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源5と、
一対の金型表面部材3の外側面に配置され、輻射熱源5からの輻射線4を吸収する輻射線吸収手段6と、を備え、
輻射線吸収手段6の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、輻射熱源5からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定されている。
【0036】
通常、輻射熱源5から輻射エネルギーが放射状に拡散するため、輻射線4の照射場所によって、輻射線4の、金型表面部材3への照射角度が異なり、輻射熱源5から遠い表面においては加熱温度が低くなり、輻射熱源から近い表面においては加熱温度が高くなり、均熱性が得られない。
【0037】
輻射熱源5から遠い表面において輻射線4をより多く吸収し、輻射熱源5から近い表面において輻射線4をあまり吸収しないように、一対の金型表面部材3上に配置した輻射線吸収手段6の表面上のある点における単位面積あたりの面積平均放射率を、輻射熱源5からの輻射の照射強度に応じて設定すれば、輻射熱源5から遠い表面における加熱温度と、輻射熱源5から近い表面における加熱温度とを略同じにすることができ、均熱性を得ることができる。これにより、外観上のムラ及び機械物性の不均一な分布が発生しない良好な成形品を作製することができる。
【0038】
図2(a)は、輻射線吸収手段6の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率の分布を概念的に示したものである。輻射熱源5から遠い位置、すなわち輻射熱源5と輻射熱源5との間の中間の位置においては単位面積あたりの面積平均放射率は高く設定され、輻射熱源5から近い位置、すなわち輻射熱源5の真下の位置においては該面積平均放射率は低く設定されている。図2(a)において、該面積平均放射率が高い部分では密に示され、該面積平均放射率が低い部分は祖に示されている。
【0039】
図2(b)は、輻射線吸収手段の特定位置における単位面積あたりの面積平均放射率及び加熱温度を示したものである。縦軸(左)に単位面積あたりの面積平均放射率を、縦軸(右)に金型表面部材の加熱温度を、横軸に輻射線吸収手段上の位置を示す。図2(b)に示すように、輻射熱源5から遠い位置において単位面積あたりの面積平均放射率を高く設定し輻射熱源5から近い位置において単位面積あたりの面積平均放射率を低く設定し、単位面積あたりの面積平均放射率に所定の分布(例えばサインカーブ)を付与する。輻射熱源5からの輻射線強度は、輻射熱源5から遠い位置において最も弱く、輻射熱源5から近い位置において最も強くなるような分布を有する。そのため、輻射熱源5から遠い位置においては、輻射熱源5の照射強度は弱いが輻射線吸収手段の単位面積あたりの面積平均放射率は高く、一方、輻射熱源5から近い位置においては、輻射熱源5の輻射強度は強いが輻射線吸収手段の単位面積あたりの面積平均放射率は低く、そのため両位置において加熱温度は略同じになる。そのため、加熱温度を一様にすることができる。
【0040】
単位面積あたりの面積平均放射率に分布を付与する方法としては、如何なる方法を用いてもよいが、例えば、輻射線吸収手段6を、放射率の異なる少なくとも2種類の被覆材から構成し、該被覆材を輻射線吸収手段6の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が輻射熱源5からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列させることが挙げられる。具体的には、黒体塗料の濃度を変えることにより、輻射線吸収手段6の単位面積あたりの面積平均放射率を変更する。
【0041】
別の態様では、被覆材の表面状態によって輻射線吸収手段6の単位面積あたりの面積平均放射率を変更する。すなわち、輻射熱源5から遠い位置においては、熱を良く吸収するよう表面に傷を多く設けた被覆材を配置し、輻射熱源5から近い位置においては、熱をあまり吸収しないよう表面を研磨し輻射線を反射するようにした被覆材を配置する。これにより、輻射熱源5から遠い位置においてはより熱を吸収し、輻射熱源5から近い位置においてはあまり熱を吸収しないため、金型表面部材全体に亘って均一に加熱することができる。
【0042】
以下、放射率に分布を持たせる手法として、例えば、黒体塗料を塗布した被覆材を該被覆材で被覆された面積と該被覆材で被覆されていない面積とが所定の面積比となるよう配列させる手法について説明する。図3(a)は、被覆材で被覆されていないものを、図3(b)は、被覆材で被覆された面積と被覆材で被覆されていない面積との面積比が1:1となるように配列させたものを、図3(c)は、該面積比が10:1となるように配列させたものを示している。輻射熱源5から近い位置においては、図3(a)に示したものを配置し、輻射熱源5から遠い位置においては、図3(c)に示したものを配置し、その中間の位置においては、図3(b)に示したものを配置することにより、放射率に上記したような所望の分布を持たせることができる。このため、金型表面部材の加熱温度を一様に設定することができる。
【0043】
上記においては、輻射線吸収手段6として、被覆材を用いた態様について説明しているが、必ずしも被覆材を用いる必要はなく例えば黒体塗料を直接金型表面部材3に上述のような分布を持たせて塗布しても良いし、金型表面部材3の表面状態を上述のような分布を持たせて変化させてもよい。この場合、黒体塗料及び金型表面部材に設けられた傷が輻射線吸収手段6に相当する。
【0044】
図4は、実施の形態1の別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。当該態様に係る注型成形用金型1は、輻射熱源5からの輻射線4を反射する輻射線反射手段11をさらに備える。輻射線反射手段11は、図4に示すように、断面が放物線状である曲面を有し、その開口端12が、輻射線吸収手段6の外側面に向けられ、輻射熱源5が放物線状の曲面の焦点に位置するよう配置されている。
【0045】
放物線形状は平行な線を反射し、焦点に光を集めることができることが良く知られている。図4に示すように、輻射熱源(例えばハロゲンヒータ)の背面に断面が放物線等の曲線からなる反射板を設けることにより、表面部材裏側への輻射熱流束の分布を制御することができる。
【0046】
また、輻射熱源5からの輻射線4を反射する輻射線反射手段11をさらに備えるため、輻射熱源5から輻射線反射手段6と反対方向に放出された輻射線4を輻射線反射手段11により反射させて輻射線吸収手段6に照射させることができ、加熱効率を上げることができる。さらに、輻射線反射手段11は、断面が放物線状である曲面を有し、その開口端12が、輻射線吸収手段6に向けられ、輻射熱源5が上記放物線状の曲面の焦点に位置するよう配置されているため、輻射熱源5から放射状に放出された輻射線4を輻射線反射手段11により平行光とすることができ、より均一な加熱を実現することができる。
【0047】
本実施の形態1に係る注型成形用金型において、輻射線反射手段11の材料としては、表面の反射率が高い材料が望ましく、例示すれば、例えばアルミニウムの基材表面に高純度アルミニウムの真空蒸着を施しさらに透明な酸化膜を蒸着して増反射処理を行ったもの(アラノッド(ALANOD)社製MIRO(反射率95%))が挙げられる。
【0048】
本実施の形態1に係る注型成形用金型1において、輻射熱源5としては、ハロゲンヒータ、シースヒータ、セラミックヒータなどを用いることができる。好適には、輻射熱源5はハロゲンヒータである。ハロゲンヒータは、エネルギーの立ち上がりが速いので、加熱時間を短くすることができ成形サイクルを短縮することができる。
【0049】
図5は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型1の断面図である。当該態様においては、さらに、温度計測手段21が、金型表面部材3の表側表面22若しくは裏側表面23(若しくは輻射線吸収手段6の裏側表面24)又は熱硬化性樹脂2が注入される一対の金型表面部材3間に設けられている。温度計測手段21に、電源制御手段(電源制御コントローラ)25が電気的に接続され、電源制御コントローラ25に輻射熱源5が電気的に接続されている。温度計測手段21により、熱硬化性樹脂2の温度を計測し、該温度が高すぎる場合は、電源制御コントローラ25により輻射熱源5から発せられる輻射線量を低減し、該温度が低すぎる場合は、輻射線量を上昇させる。このようにして、温度計測手段21により、熱硬化性樹脂2の温度をフィードバックして輻射熱源5の出力を制御する。
【0050】
かかる構成によれば、揮発性のある樹脂のモノマーが輻射熱源5付近まで侵入しうる場合等、輻射熱源5の表面温度が樹脂発火点以下となるよう輻射熱源5の出力を制御することができる。仮に揮発性のある樹脂のモノマーが輻射熱源付近まで侵入できないように輻射熱源5が閉空間で覆われている場合であっても当該制御により防爆を図ることができる。
【0051】
本実施の形態1に係る注型成形用金型1において、温度計測手段21として、熱電対を用いることができる。
【0052】
本実施の形態1に係る注型成形用金型1において、フィードバック制御として、PID制御、PI制御を用いることができる。好適には、フィードバック制御としてはPID制御である。
【0053】
図6は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型の断面図である。当該態様では、図6に示すように、さらに輻射線吸収手段6の裏側表面24を含む閉空間31が形成されており、輻射熱源5の発熱部分が閉空間31内に設置されている。閉空間31は、輻射線吸収手段6の裏側表面24と、輻射線吸収手段6の外縁部から略垂直に設けられた4つの壁部32と、4つの壁部32の端部に、輻射線吸収手段6の裏側表面24と対向して設けられた壁部33と、により囲繞されている。閉空間31は、完全に密閉されていることが好ましい。壁部32、33は如何なる材料で構成されていても良い。
【0054】
輻射熱源5の発熱部分を閉空間31内に設置することで、揮発した樹脂のモノマーを輻射熱源5の発熱部分周辺に侵入させないようにすることができ、これにより、防爆を図ることができる。
【0055】
さらに別の態様として、閉空間31に大気圧以上の圧縮気体を封入する。閉空間31を形成する壁部32、33及び輻射線吸収手段6の裏側表面24に隙間が発生した場合でも閉空間31から大気中へのみ気体の流れを制限することができ、熱硬化性樹脂2の揮発されたモノマーが、上記隙間から閉空間31内へ侵入することを防止することができる。よって、揮発されたモノマーが、閉空間31内に配置された輻射熱源5の発熱部分に近づくことがなく防爆を図ることができる。
【0056】
さらに別の態様として、閉空間31内に閉空間31内の圧力を検知する圧力検知手段34を設けてもよい。このような圧力検知手段34としては、圧力センサが挙げられる。閉空間31内の圧力を圧力検出手段34により検知し、大気圧以下若しくは大気圧以上の所定の圧力以下となった際に、輻射熱源5への電力供給を遮断するインターロックを設けると安全性が高まる。ここで、大気圧以上の所定の圧力とは、ヒータがオフになってからヒータ温度が低下していく曲線と、容器のリークによって圧力が低下していく曲線とを描いた際に、容器内の圧力が正圧を維持していられる時間内にヒータ温度が安全な温度以下の温度まで下がるような圧力、すなわち、容器内の圧力が当該大気圧以上の所定の圧力から大気圧まで低下する時間内にヒータ温度がモノマー発火点以下の温度まで下がるような圧力を意味する。
【0057】
圧縮される気体としては、空気、窒素、二酸化炭素を例示することができる。好適には、該気体は空気である。圧縮空気は費用が掛らないため、好適に用いられる。
【0058】
図7は、本実施の形態1のさらに別の態様に係る注型成形用金型1の断面図である。当該態様では、図7に示すように、さらに、輻射線吸収手段6の裏側表面24に一又は複数の補強構造体41が設けられている。かかる構成によれば、注入された樹脂から受ける応力(注入圧力、型締圧力及び樹脂の膨張・収縮圧力)による金型表面部材3の歪みを抑えることができる。補強構造体41は、注入された熱硬化性樹脂2から受ける応力による金型表面部材3の歪みを2mm以下に抑え、かつ、輻射線4を吸収する輻射線吸収手段6の裏面を補強構造体41が覆い隠す面積の、輻射線吸収手段6全体の面積に対する割合が10%以下であることが好ましい。
【0059】
別の態様としては、図8に示すように、注型成形用金型1は、補強構造体41に加えて又はこれに替えて、ハニカム構造体51を有する。具体的には、輻射線吸収手段6の外側にハニカム構造体51を設ける。ハニカム構造体51は、図8に示すように、断面が略正六角形であり同じ高さを有する六角柱52を複数含み、一の六角柱52の周りに6つの他の六角柱52が、上記一の六角柱52の辺と他の六角柱52の辺が一致するようかつ隣接する他の六角柱52の一辺同士が一致するように当接させて配置され密に配置されてなる。ハニカム構造体51上に、断面形状が矩形である補強構造体41を設け、さらに、補強構造体41間に輻射熱源5を配置する。かかる構成によれば、ハニカム構造体51は、容積当たりの材料の量を低減することができるため、強度に対する熱容量を低減することができる。
【0060】
本実施の形態1に係る注型成形用金型1によれば、輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、輻射熱源5からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定されているため、金型表面部材3を略均一に加熱することができる。これにより、熱硬化性樹脂2の加熱にムラが生じず、硬化のタイミングを一致させることができる。そのため、外観上のムラを防止することができ,硬化度のムラにより、機械物性に不均一な分布が発生することを防止することができる。
【0061】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る熱硬化性樹脂成形品の製造方法を詳細に説明する。本実施の形態2に係る熱硬化性樹脂成形品の製造方法においては、まず、一対の金型表面部材を作製する。一対の金型表面部材の作製方法としては如何なる方法を用いても良く、電鋳法(例えばニッケル電鋳)を例示することができる。例えばニッケル電鋳法による方法について例示する。まず、任意の形状を有する不導体母型を作製し、該母型表面に導電膜を形成することにより該不導体母型表面を導体化する。つづいて、導電膜に電着処理を行い導電膜上に所定厚以上の金属を電着させ、該金属を導電膜から分離する。これにより、母型の表面形状が転写された金属を得ることができる。同様の形状を有する2つの金属を上記のようにして形成し、一対の金型表面部材とする。つづいて、一対の金型表面部材の外側に輻射熱源を設ける。金型表面部材の裏側面を含むように、金型表面部材の裏面と、該金型表面部材の外縁部から略垂直に設けられた4つの壁部と、該4つの壁部の端部に上記金型表面部材の裏面と対向して設けられた壁部と、により閉空間を形成してもよい。さらに、実施の形態1に示した構成を注型成形用金型に組み込んでも良い。
【0062】
つづいて、輻射線吸収手段を上記金型表面部材上に設ける。一対の金型表面部材が略均一に加熱されるよう、該輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率を、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう設定し、輻射線吸収手段に放射率の分布を持たせる。輻射線吸収手段に所望の分布を持たせる手段としては、如何なる手段を用いることができるが、好ましくは、黒体塗料を輻射熱源5からの輻射線の単位面積あたりの照射強度に従って濃度差を設けて塗布することである。すなわち、上記発生源から遠い金型部材表面においては、黒体塗料を多く塗布した被覆材を配置し、上記発生源から近い金型部材表面においては、黒体塗料を少なく塗布した被覆材を配置する。
【0063】
つづいて、一対の金型表面部材間に熱硬化性樹脂を注入する。熱硬化性樹脂としては、如何なるものを用いても良く、好適には、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂を用いることができる。
【0064】
最後に、輻射熱源により、上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させ、成形品を離型する。
【0065】
本実施の形態2に係る熱硬化性樹脂成形品の製造方法によれば、輻射線吸収手段6の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率を、輻射熱源5からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定するため、金型表面部材3を略均一に加熱することができる。これにより、熱硬化性樹脂2の加熱にムラが生じず、硬化のタイミングを一致させることができる。そのため、外観上のムラ及び機械物性の分布が発生しない良好な成形品を作製することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 注型成形用金型
2 熱硬化性樹脂
3 一対の金型表面部材
4 輻射線
5 輻射熱源
6 輻射線吸収手段
11 輻射線反射手段
12 開口端
21 温度計測手段
22 金型表面部材の表側表面
23 金型表面部材の裏側表面
24 輻射線吸収手段の裏側表面
25 電源制御コントローラ
31 閉空間
32、33 壁部
34 圧力検出手段
41 補強構造体
51 ハニカム構造体
52 六角柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を加熱して硬化させ所望の形状に成形するための注型成形用金型であって、
熱硬化性樹脂が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材と、
該一対の金型表面部材の外側に配置され、輻射線を放出可能であり、上記輻射線により上記一対の金型表面部材を介して上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源と、
上記一対の金型表面部材の外側面に配置され、上記輻射熱源からの輻射線を吸収する輻射線吸収手段と、を備え、
上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低く設定された注型成形用金型。
【請求項2】
上記輻射熱源がハロゲンヒータである請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項3】
さらに、輻射熱源からの輻射線を反射する輻射線反射手段を有し、
該輻射線反射手段は、断面が放物線状である曲面を有し、その開口端が、上記輻射線吸収手段の裏側表面に向けられ、上記輻射熱源が上記放物線状の曲面の焦点に位置するよう配置された請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項4】
上記輻射線吸収手段が、放射率の異なる少なくとも2種類の被覆材からなり、該被覆材が、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列された請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項5】
上記輻射線吸収手段が、同じ放射率を有する1種類の被覆材を含み、該被覆材が存する部分と該被覆材が存しない部分とを有し、該被覆材が、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列された請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項6】
さらに、上記金型表面部材近傍に温度計測手段を有し、
該温度計測手段により上記熱硬化性樹脂の温度を測定し該温度に従って上記輻射熱源の出力が制御される請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項7】
上記輻射熱源の温度が、揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマー発火点以下に設定された請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項8】
上記輻射熱源の発熱部分が、上記輻射線吸収手段の裏側表面を含む閉空間内に配置された請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項9】
上記閉空間内に大気圧以上の圧縮気体が封入されてなる請求項8記載の注型成形用金型。
【請求項10】
さらに、上記閉空間内の圧力を検出する圧力検出手段及び該圧力検出手段に接続された電源制御手段を有し、
上記電源制御手段は、上記輻射熱源に接続され、上記閉空間内の圧力が大気圧以下若しくは大気圧以上の所定の圧力以下となった場合、上記輻射熱源への電力供給を遮断する請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項11】
さらに、上記輻射線吸収手段の裏側表面に補強構造体を備える請求項1記載の注型成形用金型。
【請求項12】
さらに、ハニカム構造体を備える請求項11記載の注型成形用金型。
【請求項13】
液状の熱硬化性樹脂を金型に注入し該金型を加熱して上記熱硬化性樹脂を硬化させ所望の形状の成形品を得る熱硬化性樹脂成形品の製造方法において、
熱硬化性樹脂が注入される空間が形成されるよう対向して配置された一対の金型表面部材と、該一対の金型表面部材の外側に配置され、輻射線を放出可能であり、上記輻射線により上記一対の金型表面部材を介して上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる少なくとも1つの輻射熱源と、を有する注型成形用金型を準備する工程と、
輻射線吸収手段を上記金型表面部材上に設け、該輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が、上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう設定する工程と、
上記一対の金型表面部材間に熱硬化性樹脂を注入する工程と、
上記輻射熱源により、上記熱硬化性樹脂を加熱し硬化させる工程と、を有する熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
上記輻射熱源がハロゲンヒータである請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項15】
断面が放物線状である輻射線反射手段を、その開口端が上記輻射線吸収手段の裏側表面に向くように、かつ、上記輻射熱源が上記放物線状の曲面の焦点に位置するように配置する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項16】
上記輻射線吸収手段が、放射率の異なる少なくとも2種類の被覆材からなり、該被覆材を、上記輻射線吸収手段の表面上の単位面積あたりの面積平均放射率が上記輻射熱源からの照射強度が小さい程高く、照射強度が大きい程低くなるよう所定の面積比で配列させる請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項17】
上記金型表面部材近傍に温度計測手段を配置し、該温度計測手段により、上記熱硬化性樹脂の温度を測定し該温度に従って輻射熱源の出力を制御する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項18】
上記輻射熱源の温度を、揮発性のある熱硬化性樹脂のモノマー発火点以下に設定する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項19】
上記輻射熱源の発熱部分を、上記輻射線吸収手段の裏側表面を含む閉空間内に配置する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項20】
上記閉空間に大気圧以上の圧縮気体を封入する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項21】
上記閉空間内の圧力を検出する圧力検出手段及び該圧力検出手段に接続された電源制御手段を設置し、
上記電源制御手段を、上記輻射熱源に接続し、上記閉空間内の圧力が大気圧以下若しくは大気圧以上の所定の圧力以下となった場合、上記輻射熱源への電力供給を遮断する請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項22】
上記輻射線吸収手段の裏側表面に補強構造体を設ける請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。
【請求項23】
さらに、ハニカム構造体を設ける請求項13記載の熱硬化性樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−22823(P2013−22823A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159599(P2011−159599)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】