説明

熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、光学部材および光半導体並びにそれらの製法

【課題】屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物を得ることができ、かつ粘度が低い光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物;屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物ならびに光学部材;および、光取り出し効率が高く、かつ寿命が長い光半導体を提供する。
【解決手段】メタクリル系重合体(A)の20〜39.5質量%と、メチルメタクリレート(B)の60〜79.5質量%と、1分子中に2個以上の二重結合を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の0.5〜10質量%とを含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が80℃以下である脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の0.5〜3質量部を含む熱硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、硬化物からなる光学部材および硬化物で封止された光半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の光半導体は、長寿命で省エネルギーである、小型化、軽量化が可能である、という特徴を有するため、様々な光源として実用化されている。今後、蛍光灯等の照明の代替品として、さらなる需要が期待されている。
LEDは、発光素子をほこり、ごみ、衝撃等から保護する目的で、発光素子を透明封止材によって封止した構造を有する。この透明封止材は、発光素子と空気との間の屈折率を緩和し、光取り出し効率を上昇させる役割も担うため、透明封止材の屈折率、透過率等の物性がLEDの外部量子効率に大きく影響する。また、発光素子からは、高エネルギーの光や熱が発せられるため、これらの影響を大きく受ける透明封止材の寿命が、LED自体の寿命になることがある。そのため、透明封止材には光や熱によって変色しないこと、すなわち高い耐光性、耐熱性が要求される。
【0003】
透明封止材としては、エポキシ系封止材、シリコーン系封止材、メタクリル系封止材等が知られている。
エポキシ系封止材は、耐熱性はよいものの、構造中にビスフェノールA等に由来する芳香族環を有するため、短波長領域の光を吸収して劣化し、着色してしまう。その結果、光取り出し効率が低下する。この問題を解決するためには、水添によって芳香族環を脂肪族環にすればよいが、耐熱性が低下してしまう。
シリコーン系封止材のうちジメチルシリコーン系封止材は、耐熱性、耐光性はよいものの、屈折率が低いため、光取り出し効率が低い。最近では、高屈折率タイプのシリコーン系封止材が開発されているが、ジメチルシリコーン系封止材に比べ、耐熱性、耐光性は低下する。また、シリコーン系封止材は、タック性を有するため、表面にほこり等が付着しやすい。さらに、シリコーン系封止材は、他素材との接着性が悪い。
【0004】
透明封止材等の光学部材に用いられるメタクリル系熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、メタクリル系重合体と多官能メタクリレート(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)と熱重合開始剤(パーオキシジカーボネートおよびパーオキシエステル)とを含む組成物が提案されている(特許文献1)。しかし、この組成物は、下記の問題を有する。
(i)多官能メタクリレートの割合が多いため、粘度が高く、発光素子上に組成物を充填する際の作業性が悪い。
(ii)粘度を下げるために単官能(メタ)アクリレートを加えた場合、硬化時に気泡が発生し、硬化物内に気泡が残る。その結果、硬化物の透過性が低下し、光取り出し効率が低下する。一方、気泡の発生を抑えるために硬化時の加熱温度を下げると、未反応のモノマーが硬化物中に多く残存し、耐熱性、耐光性が低下する。
(iii)硬化物が、短波長領域の光や熱によって黄変しやすく、光取り出し効率が低下する。
【特許文献1】特許第4087782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物を得ることができ、かつ粘度が低い光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物;屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物ならびに光学部材;および、光取り出し効率が高く、かつ寿命が長い光半導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物は、メタクリル系重合体(A)の20〜39.5質量%と、メチルメタクリレート(B)の60〜79.5質量%と、下記式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の0.5〜10質量%とを含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が80℃以下である脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の0.5〜3質量部を含むことを特徴とする。
CH=C(R)COO((CHO)OCC(R)=CH (1)
(式中、RはHまたはCHを、mは2〜4の整数を、nは1〜9の整数を示す。)
【0007】
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
本発明の光学部材は、本発明の硬化物からなるものであることを特徴とする。
本発明の光半導体は、本発明の硬化物で発光素子が封止されたものであることを特徴とする。
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物によれば、屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物を得ることができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、粘度が低く、発光素子上への充填時の作業性がよい。
本発明の硬化物および光学部材は、屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い。
本発明の光半導体は、光取り出し効率が高く、かつ寿命が長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物は、メタクリル系重合体(A)とメチルメタクリレート(B)と式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)とを含む樹脂成分に対し、脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)を配合したものである。
【0010】
(メタクリル系重合体(A))
メタクリル系重合体(A)は、メタクリル酸エステルを50質量%以上含むモノマー成分を重合して得られる重合体である。
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、硬化物の屈折率、透明性の点から、メチルメタクリレートが特に好ましい。メタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー成分は、メタクリル酸エステル以外の他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート等。)、アクリル系モノマー(アクリル酸、アクリロイルモルフォリン等。)、メタクリル系モノマー(メタクリル酸、メタクリロイルモルフォリン等。)、ビニル系モノマー(スチレン等。)等が挙げられる。
【0011】
メタクリル系重合体(A)の具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられ、硬化物の透明性、屈折率、耐熱性、耐光性の点から、ポリメチルメタクリレートが特に好ましい。メタクリル系重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その質量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜120,000であることがより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であることによって樹脂組成物の硬化性、強度が向上する。質量平均分子量が200,000以下であることによって作業性が良好となる。
【0012】
メタクリル系重合体(A)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、20〜39.5質量%であり、25〜38質量%が好ましい。メタクリル系重合体(A)の割合が20質量%以上であれば、組成物の硬化時の収縮や硬化物中の気泡の発生が抑制される。メタクリル系重合体(A)の割合が39.5質量%以下であれば、組成物の粘度が低く抑えられる。
【0013】
(メチルメタクリレート(B))
メチルメタクリレート(B)は、組成物の粘度を低く抑える成分であり、また硬化物の透明性、屈折率の向上に寄与する成分である。メチルメタクリレート(B)の代わりに他の単官能(メタ)アクリレートを用いた場合、本発明の効果が十分に得られない。
【0014】
メチルメタクリレート(B)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、60〜79.5質量%であり、61〜74質量%が好ましい。メチルメタクリレート(B)の割合が60質量%以上であれば、組成物の粘度が低く抑えられる。メチルメタクリレート(B)の割合が79.5質量%以下であれば、組成物の硬化時の収縮が抑えられ、また硬化物中の気泡の発生を抑制できる。
【0015】
(式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C))
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
式(1)におけるmが2〜4の整数であることによって、得られた硬化物の耐熱性が良好となる。また、式(1)におけるnが1〜9の整数であることによって、得られた硬化物の硬度が良好となる。
これらのうち、硬化物の耐熱性の点からエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートが最も好ましい。
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)は、組成物の粘度を低く抑えつつ、組成物の硬化性を向上させる成分であり、また硬化物中の気泡の発生を抑制し、耐熱性を向上させる。
【0016】
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、0.5〜10質量%であり、1〜5質量%が好ましい。式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合が0.5質量%以上であれば、組成物の硬化性が良好となり、また硬化物中の気泡の発生を抑制できる。式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合が10質量%以下であれば、硬化物の透明性が良好となる。
【0017】
(他の成分)
樹脂成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系重合体(A)以外の他の樹脂、メチルメタクリレート(B)以外の他の単官能モノマー、式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)以外の他の多官能モノマーを含んでいてもよい。
他の樹脂としては、アクリル系重合体等が挙げられる。他の単官能モノマーとしては、メチルメタクリレート以外のメタクリル酸エステル(エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等。)、アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート等。)、ビニル系モノマー(スチレン等。)等が挙げられる。他の多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
(脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D))
脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)は、R−C(O)O−OC(O)−R(ただし、Rは脂肪族炭化水素基である。)で示される熱重合開始剤である。脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の代わりに他の熱重合開始剤(芳香族系ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート(R’−OC(O)O−OC(O)O−R’)、パーオキシエステル(R’−C(O)O−O−R”)、パーオキシケタール(R’OOC(R”)(R''')OOR’)、ジアルキルパーオキサイド(R’−O−O−R’)、ハイドロパーオキサイド(R’−O−O−H)等。)を用いた場合、硬化物が、短波長領域の光や熱によって黄変しやすくなる。
【0019】
脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の10時間半減期温度は、80℃以下であり、70℃以下が好ましい。10時間半減期温度が80℃以下であれば、比較的低温(60℃以上90℃未満)で行われる第1段階目の硬化時に十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、比較的高温(90〜130℃)で行われる第2段階目の硬化時にモノマー(メチルメタクリレート(B))の蒸発による気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。
【0020】
脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)としては、下記のものが挙げられる。
ジイソブチリルパーオキサイド(日油社製、パーロイルIB、10時間半減期温度:32.7℃(カタログ値))、
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日油社製、パーロイル355、10時間半減期温度:59.4℃(カタログ値))、
ジラウロイルパーオキサイド(日油社製、パーロイルL、10時間半減期温度:61.6℃(カタログ値))、
ジサクシニックアシッドパーオキサイド(日油社製、パーロイルSA、10時間半減期温度:65.9℃(カタログ値))等。
【0021】
脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5〜3質量部であり、0.5〜1.5質量部が好ましい。脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の配合量が0.5質量部以上であれば、組成物の硬化性が良好となり、また硬化物の耐熱性、耐光性が良好となる。脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の配合量が3質量部以下であれば、硬化物の耐熱性、耐光性が良好となる。
【0022】
(他の成分)
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)以外の他の熱重合開始剤、公知の添加剤(可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填材、消泡剤、増粘剤、揺変化剤、レベリング剤等。)等を含んでいてもよい。
【0023】
以上説明した、本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物にあっては、メタクリル系重合体(A)の20〜39.5質量%と、メチルメタクリレート(B)の60〜79.5質量%と、式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の0.5〜10質量%とを含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が80℃以下である脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の0.5〜3質量部を含むため、屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い硬化物を得ることができ、また、粘度が低く、発光素子上への充填時の作業性がよい。
【0024】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し(以下、第1段階目の硬化と記す。)、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱する(以下、第2段階目の硬化と記す。)製造方法によって得られることが好ましい。
【0025】
第1段階目の硬化時の温度が60℃以上であれば、十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、第2段階目の硬化時にモノマー(メチルメタクリレート(B))の気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。第1段階目の硬化時の温度が90℃未満であれば、第1段階目の硬化時にモノマー(メチルメタクリレート(B))の蒸発による気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。
【0026】
第1段階目の硬化時間が0.5時間以上であれば、十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、第2段階目の硬化時にモノマー(メチルメタクリレート(B))の気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。第1段階目の硬化時間が3時間以内であれば、全体の硬化時間を短縮できる。
【0027】
第2段階目の硬化時の温度が90℃以上であれば、残存モノマー、残存硬化剤がほとんど反応し、硬化物に残存しないため、硬化物の耐熱性、耐光性が良好になる。第2段階目の硬化時の温度が130℃以下であれば、熱による硬化物の大きな劣化が起こらない。
【0028】
第2段階目の硬化時間が0.5時間以上であれば、残存モノマーがほとんど反応し、硬化物に残存しないため、硬化物の耐熱性、耐光性が良好になる。第2段階目の硬化時間が3時間以内であれば、全体の硬化時間を短縮できる。
【0029】
以上説明した、本発明の硬化物にあっては、本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱して得られるものであるため、屈折率、透過率、耐光性、耐熱性が高い。
【0030】
<光学部材>
本発明の光学部材は、本発明の硬化物からなるものである。
本発明の光学部材としては、光半導体の透明封止材、光導波路、レンズ、プリズム、光ディスク基板、液晶表示装置用透明基板、バックライト用導光板等が挙げられる。
【0031】
<光半導体>
本発明の光半導体は、本発明の硬化物(透明封止材)で発光素子が封止されたものである。
光半導体としては、発光ダイオード(LED)、フォトダイオード等が挙げられる。
発光素子としては、発光ダイオード素子、フォトダイオード素子等が挙げられる。
本発明の硬化物(透明封止材)は、高い耐光性、耐熱性が要求される白色LED、青色LEDに特に有用である
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例中、「部」は質量部を意味する。
【0033】
(作業性)
B型粘度計を用いて、樹脂成分の粘度を23℃で測定した。樹脂成分の粘度から作業性を下記の基準で評価した。
○:粘度が1500mPa・s以下である。
×:粘度が1500mPa・sより大きい。
【0034】
(気泡の有無)
硬化物を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:硬化物内に気泡がない。
×:硬化物内に気泡がある。
【0035】
(屈折率)
アッベ屈折計(ナトリウムD線(589nm))を用い、樹脂板の屈折率を25℃で測定した。
【0036】
(硬度)
JIS K6253に準じ、タイプDデュロメータを用い、樹脂板の硬度を23℃で測定を行った。
【0037】
(ヘイズ)
JIS K7136に準じ、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−65W型)を用い、樹脂板のヘイズを測定した。
【0038】
(400nmにおける透過率)
分光光度計(日立製作所社製、U−3400)を用いて、樹脂板の透過率を測定し、400nmの透過率を読み取った。
【0039】
(耐熱性)
樹脂板を150℃の空気雰囲気下で96時間静置する耐熱性試験を行った。試験前後の樹脂板のイエローネスインデックス(YI)を色差計(日本電色工業社製、SE2000)を用いて測定し、その差(ΔYI)で耐熱性を表した。YIの測定は、透過モードで行った。
【0040】
(耐光性)
デューパネルウェザーメーター(スガ試験機社製、DPWL−5R)を用いて樹脂板の耐光性試験を行った。系内温度は50℃とし、試験は50時間行った。試験前後の樹脂板のYIを色差計(日本電色工業社製、SE2000)を用いて測定し、その差(ΔYI)で耐光性を表した。YIの測定は、透過モードで行った。
【0041】
(外部量子効率上昇率)
およそ400nmに中心発光波長を持つ、未封止のLED(表面実装型)パッケージを用意した。
透明封止材で封止する前にLEDを積分球内で発光させ、外部量子効率を測定した。
ついで、透明封止材で封止された後にLEDを積分球内で発光させ、外部量子効率を測定した。
測定は、4つのサンプルについて行い、その平均を測定値とした。
封止前後の外部量子効率の比を外部量子効率上昇率とした。外部量子効率上昇率は、下記式(I)で求めた。外部量子効率上昇率は、光取り出し効率の指標となる。
(外部量子効率上昇率)=(封止後の外部量子効率)/(封止前の外部量子効率)×100 ・・・(I)。
【0042】
〔調製例1〕
樹脂成分S−1の調製:
冷却器を備えた容器にメチルメタクリレート(以下、MMAと記す。)の66部、エチレングリコールジメタクリレート(以下、EDMAと記す。)の2部、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと記す。)の0.01部を入れ、撹拌しながらポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、質量平均分子量:40000、以下、PMMAと記す。)の32部を少量ずつ加えた。PMMAを全て加えた後、容器内を60℃に昇温し、温度を維持したまま2時間撹拌した。2時間後、PMMAが完全に溶解したことを確認した。溶液を冷却し、樹脂成分S−1を得た。樹脂成分S−1の作業性を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
〔調製例2〜6〕
樹脂成分S−2〜6の調製:
表1に示す配合量に変更した以外は、調製例1と同様にして樹脂成分S−2〜6を得た。樹脂成分S−2〜6の作業性を評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
〔実施例1〕
樹脂成分S−1の100部に、ジラウロイルパーオキサイド(日油社製、パーロイルL)の1部を加え、完全に溶解し、熱硬化性樹脂組成物を得た。これを脱泡したものを直径8mm、深さ2mmのアルミニウム容器にシリンジを用いて注入した。その後、80℃で1時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、硬化物を得た。硬化物について、気泡の有無を確認した。結果を表2に示す。
また、熱硬化性樹脂組成物を脱泡したものを3mmの隙間を設けたガラスセルに流し込み、セルを密閉した。その後、80℃で1時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、厚さ約3mmの樹脂板を得た。樹脂板について、各各評価、測定を行った。結果を表3に示す。
また、熱硬化性樹脂組成物を脱泡したものを、LEDパッケージ内に充填し、80℃で1時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、透明封止材で封止されたLEDを得た。このLEDを積分球内で発光させ、外部量子効率を測定し、外部量子効率上昇率を求めた。結果を表3に示す。
【0046】
〔実施例2、3〕
樹脂成分を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、気泡の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0047】
〔比較例1〕
熱重合開始剤を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、樹脂板および透明封止材で封止されたLEDを得た。硬化物、樹脂板およびLEDについて、各評価、測定を行った。結果を表2および表3に示す。
【0048】
〔比較例2〕
熱重合開始剤を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、気泡の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0049】
〔比較例3、4〕
樹脂成分を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、気泡の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0050】
〔比較例5〕
比較例5で用いた樹脂成分S−6は、著しく作業性に劣るため、アルミニウム容器にシリンジを用いて注入できない。したがって、評価を行わなかった。
【0051】
〔比較例6〕
水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8000)の100部、テトラヒドロメチル無水フタル酸(ADEKA社製、アデカハードナーEH−3326)の80部、第4級ホスホニウム塩(日本化学工業社製、ヒシコーリンPX−4ET)の1部を混合し、撹拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。これを脱泡したものを3mmの隙間を設けたガラスセルに流し込み、セルを密閉した。その後、100℃で3時間加熱し、さらに140℃で3時間加熱して硬化させ、厚さ約3mmの樹脂板を得た。樹脂板について、各各評価、測定を行った。結果を表3に示す。
また、熱硬化性樹脂組成物を脱泡したものを、LEDパッケージ内に充填し、100℃で3時間加熱し、さらに140℃で3時間加熱して硬化させ、透明封止材で封止されたLEDを得た。このLEDを積分球内で発光させ、外部量子効率を測定し、外部量子効率上昇率を求めた。結果を表3に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表中の略語は下記の通りである。
LPO:ジラウロイルパーオキサイド(日油社製、パーロイルL)、
TCP:ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製、パーロイルTCP、10時間半減期温度:40.8℃、パーオキシジカーボネート系熱重合開始剤)、
PBO:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーブチルO、10時間半減期温度:72.1℃、パーオキシエステル系熱重合開始剤)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物は、光半導体の透明封止材、光導波路、レンズ、プリズム、光ディスク基板、液晶表示装置用透明基板、バックライト用導光板等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル系重合体(A)の20〜39.5質量%と、
メチルメタクリレート(B)の60〜79.5質量%と、
下記式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の0.5〜10質量%と
を含む樹脂成分100質量部に対し、
10時間半減期温度が80℃以下である脂肪族系ジアシルパーオキサイド(D)の0.5〜3質量部を含む熱硬化性樹脂組成物。
CH=C(R)COO((CHO)OCC(R)=CH (1)
(式中、RはHまたはCHを、mは2〜4の整数を、nは1〜9の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化物からなる光学部材。
【請求項4】
請求項2に記載の硬化物で発光素子が封止された光半導体。
【請求項5】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱する硬化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱する光学部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、60℃以上90℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに90〜130℃で0.5〜3時間加熱する半導体封止材の製造方法。

【公開番号】特開2010−31109(P2010−31109A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193401(P2008−193401)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】