説明

熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜

【課題】 平坦性、耐熱性に特に優れ、耐溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラスなどの下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性、耐光性においても優れた硬化膜及びこの硬化膜を与える樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 特定の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤、さらに好ましくは溶媒を含む熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、それを加熱、硬化することにより得られる硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子などの素子の製造工程中には、有機溶媒、酸、アルカリ溶液などの種々の薬品処理がなされたり、スパッタリングにより配線電極を成膜する際に、表面が局部的に高温に加熱されたりすることがある。そのため、各種の素子の表面の劣化、損傷、変質を防止する目的で表面保護膜が設けられる場合がある。これらの保護膜には、上記のような製造工程中の各種処理に耐えることができる諸特性が要求される。具体的には、耐熱性、耐溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラスなどの下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性、平坦性、長期に亘って着色などの変質がおこらない耐光性などが要求される。また、特に近年、液晶表示素子の高視野角化、高速応答化、高精細化などの高性能化が進むなか、カラーフィルター保護膜として用いられる場合には、平坦化特性が向上した材料、及び、スパッタリング工程、焼成工程など、各種の高温に加熱される工程において、デ・ガス(揮発分)の少ない高耐熱性の材料が望まれている。
【0003】
これらの優れた特性を有する保護膜材料としては、シリコン含有ポリアミド酸組成物(特許文献1参照)、ポリエステルアミド酸組成物(特許文献2参照)がある。シリコン含有ポリアミド酸組成物は、平坦性に関しては非常に優れた材料であるが、耐熱性が不十分であり、耐アルカリ性に劣るという欠点があり、ポリエステルアミド酸組成物は、平坦性及び耐熱性が不十分であるという欠点があった。したがって、いずれの材料も保護膜材料としては、耐熱性、平坦性、及びその他諸特性を十分に満足させるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−291150号公報
【特許文献2】特開2005−105264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記状況の下、例えば、耐溶媒性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラスなどの下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性、耐光性に優れる樹脂組成物が求められている。また、特に、平坦性、耐熱性に優れた硬化膜及びこの硬化膜を与える樹脂組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく種々検討した結果、特定の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤、さらに好ましくは溶媒を含む熱硬化性樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜により、上記目的を達することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下の構成を有する。
【0006】
[1] 式(1)の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂が式(2-1)で表される化合物を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルコール残基、R2、R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキルである。)
【0007】
[2] エポキシ樹脂が、式(2-1)で表される化合物、または、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物である、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化4】

【0008】
[3] 式(1)の構成単位を有するポリマーが、酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体及びアルコールから得られるポリマーである、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0009】
[4] 酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーがマレイン酸無水物である、上記[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0010】
[5] 他のラジカル重合性モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選ばれる1種以上である、上記[3]又は[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
[6] 他のラジカル重合性モノマーがスチレンである、上記[3]又は[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
[7] アルコールが1価アルコールである、上記[3]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0013】
[8] 1価アルコールが、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンから選択される1種以上である、上記[7]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0014】
[9] 1価アルコールがシクロヘキシルアルコールである、上記[7]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0015】
[10] 式(1)の構成単位を有するポリマーの重量平均分子量が1,000〜5,000である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0016】
[11] エポキシ硬化剤が、トリメリット酸無水物及びヘキサヒドロトリメリット酸無水物から選択される1種以上である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
[12] ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、及び乳酸エチルから選択される1種以上の溶媒を含む、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0018】
[13] 式(1)の構成単位を有するポリマーが、マレイン酸無水物とスチレンとの共重合体にシクロヘキシルアルコールを反応させて得られる、重量平均分子量が1,000〜5,000のポリマーであり、
エポキシ樹脂が、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物であり、
エポキシ硬化剤が、トリメリット酸無水物であり、
さらに、溶媒として、3−メトキシプロピオン酸メチル及びジエチレングリコールメチルエチルエーテルから選択される1種以上を含む、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0019】
[14] 上記[1]〜[13]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
【0020】
[15] 上記[14]に記載の硬化膜を保護膜として用いたカラーフィルター。
【0021】
[16] 上記[14]に記載の硬化膜を保護膜として用いたLED発光体。
【0022】
[17] 上記[15]に記載のカラーフィルターを用いた液晶表示素子。
【0023】
[18] 上記[15]に記載のカラーフィルターを用いた固体撮像素子。
【発明の効果】
【0024】
本発明の好ましい態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、平坦性及び耐熱性において特に優れており、カラー液晶表示素子のカラーフィルター保護膜として用いた場合、表示品位、及び信頼性を向上させることができる。また、本発明の好ましい態様に係る熱硬化性樹脂組成物を加熱することによって得られる硬化膜は、透明性、耐薬品性、密着性及び耐スパッタ性においてもバランスのとれたものであり、非常に実用性の高いものである。特に、染色法、顔料分散法、電着法及び印刷法により製造されたカラーフィルターの保護膜として有用である。また、各種光学材料の保護膜及び透明絶縁膜としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、式(1)の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤、さらに好ましくは溶媒を含む熱硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂が式(2-1)で表される化合物を含む、熱硬化性樹脂組成物である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは溶媒を含むが、溶媒を含まなくてもよい。すなわち、熱硬化性樹脂組成物の各構成成分を製造する際には、通常、溶媒を使用して行われるが、この溶剤をそのまま残してハンドリング性等を考慮した液状やゲル状の熱硬化性樹脂組成物としてもよいし、この溶剤を除去して運搬性などを考慮した固形状の組成物としてもよい。また、溶媒は、各構成成分の製造時に使用されるものに限定されず、他の溶媒であってもよい。
【0026】
1.1 式(1)の構成単位を有するポリマー
式(1)の構成単位を有するポリマーは、本構成単位を有していれば特に限定されず、ポリマー中に他の構成単位を含んでいてもよい。
式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルコール残基であり、好ましくは炭素数2〜15のアルコール残基であり、より好ましくは炭素数3〜12のアルコール残基であり、さらに好ましくは炭素数3〜8のアルコール残基である。具体的には、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又は3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどのアルコールの残基が挙げられる。
式(1)中、R2、R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキルである。炭素数1〜5のアルキルとしては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はヘプチルなどが挙げられる。
【0027】
本ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜5,000の範囲であると得られる硬化膜の耐熱性、平坦性がともに良好なので好ましく、1,000〜4,000であるとより好ましく、1,000〜3,000であるとさらに好ましい。本ポリマーの酸価は、20〜500の範囲であると得られる塗膜の硬度が高いので好ましく、50〜400であるとより好ましく、100〜300であるとさらに好ましい。
【0028】
本ポリマーとしては、酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体及びアルコールから得られるポリマーであることが好ましい。
酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体の組成比(モル)は、1:1〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:4であると得られる硬化膜の耐熱性が良好であるのでより好ましい。アルコールは、「酸無水物基を有するラジカル重合性モノマー」における酸無水物基の50〜100モル%と反応していることが好ましく、70〜100モル%であると得られる硬化膜の耐熱性が良好であるのでより好ましい。
【0029】
本ポリマーの具体例として、川原油化(株)製、SMA17352を挙げることができる。
【0030】
本ポリマーは、本発明の熱硬化性樹脂組成物から溶媒を除いた固形分中に、10〜60重量%含まれることが好ましく、15〜55重量%含まれることがより好ましく、20〜50重量%含まれることがさらに好ましい。
【0031】
1.1.1 酸無水物基を有するラジカル重合性モノマー
酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーとしては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、又はシトラコン酸無水物などを挙げることができる。特にマレイン酸無水物を使用すると得られる硬化膜の耐熱性が高いので好ましい。
【0032】
1.1.2 他のラジカル重合性モノマー
他のラジカル重合性モノマーとしては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−オキシランシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、又は3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、得られる硬化膜の耐熱性が高いことから、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、又はスチレンが好ましい。特に各種溶媒への相溶性に優れたスチレンが好ましい。
【0034】
1.1.3 アルコール
式(1)の構成単位を有するポリマーを構成するアルコールとしては、1価アルコールが好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、又は3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン等を挙げることができる。
【0035】
これらの中でも、各種溶媒への溶解性が高いことからイソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又は3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好ましい。特に得られる硬化膜の耐熱性に優れたシクロヘキシルアルコールが好ましい。
【0036】
1.2 エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、式(2-1)で表される化合物を含むものであれば特に限定されないが、式(2-1)で表される化合物、または、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物であることが好ましい。本エポキシ樹脂を使用すると、得られる硬化膜の平坦性と耐熱性のバランスがよい。
【0037】
なお、式(2-1)で表される化合物は、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパンである。また、式(2-2)で表される化合物は、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノールである。
【0038】
式(2-1)で表される化合物は、TECHMORE VG3101(商品名;三井化学(株)製)として市販され、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物は、TECHMORE VG3101L(商品名;三井化学(株)製)として市販されている。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、他のエポキシ樹脂が含まれていてもよい。他のエポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂全体の50重量%以下で使用することが好ましく、より好ましくは40重量%以下の使用であり、さらに好ましくは30重量%以下の使用である。
【0040】
他のエポキシ樹脂の好ましい例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエ−テル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、又は環式脂肪族エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0041】
具体的には、グリシジルエ−テル型エポキシ樹脂としては、EPPN−501H、502H(商品名;日本化薬(株)製)、JER 1032H60(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)など、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、JER 157S65、157S70(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)など、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPPN−201(商品名;日本化薬(株)製)、JER 152、154(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製)など、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EOCN−102S、103S、104S、1020(商品名;日本化薬(株)製)などを挙げることができる。
【0042】
エポキシ樹脂は、本発明の熱硬化性樹脂組成物から溶媒を除いた固形分中に、30〜80重量%含まれることが好ましく、35〜75重量%含まれることがより好ましく、40〜70重量%含まれることがさらに好ましい。これらの含有量にすると、得られる硬化膜の耐熱性が良好となる。
【0043】
1.3 エポキシ硬化剤
エポキシ硬化剤は、例えば、得られる硬化膜の平坦性、耐薬品性を向上させるために、添加される。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、又は触媒型硬化剤などが挙げられるが、着色及び耐熱性の点から酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0044】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、又はトリメリット酸無水物などを挙げることができる。これらのなかでも耐熱性と溶媒に対する溶解性のバランスの点からトリメリット酸無水物、又はヘキサヒドロトリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0045】
エポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し10〜200重量部使用することが好ましく、15〜150重量部使用することがより好ましく、20〜100重量部であると得られる硬化膜の耐熱性が良好であるのでさらに好ましい。
【0046】
1.4 溶媒
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、例えば、各種基板への塗布性を向上させるために、溶媒を含有させることが好ましい。溶媒の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、又はN,N−ジメチルアセトアミドを挙げることができる。
【0047】
これらの中でもジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、又は乳酸エチルを含有させると、熱硬化性樹脂組成物の塗布均一性が高いので好ましい。
【0048】
本発明に用いられる溶媒は単独、または2種以上の混合溶媒として使用できる。また、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる溶媒全体の30重量%以下の割合であれば、上記溶媒以外に他の溶媒を混合して用いることもできる。
【0049】
溶媒は、熱硬化性樹脂組成物中に、40〜92重量%含まれることが好ましく、50〜90重量%含まれることがより好ましく、60〜88重量%であると熱硬化性樹脂組成物の塗布均一性が高いのでさらに好ましい。
【0050】
1.5 その他の添加剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外の他の成分を含有してもよい。このような他の成分として、カップリング剤、界面活性剤、又は酸化防止剤などが挙げられる。
【0051】
カップリング剤は、例えば、下地基板との密着性を向上させるために使用するものであり、上記熱硬化性樹脂組成物の固形分100重量部(該樹脂組成物から溶媒を除いた残りの成分)に対し10重量部以下添加して用いられる。
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系及びチタネート系の化合物を用いることができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系、並びにテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系を挙げることができる。これらのなかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0052】
界面活性剤は、例えば、下地基板への濡れ性、レベリング性、または塗布性を向上させるために使用するものであり、上記熱硬化性樹脂組成物100重量部に対し0.01〜1重量部添加して用いられる。
界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、又はフッ素系界面活性剤などが用いられる。具体的には、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、又はByk−370(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのシリコン系、Byk−354、ByK−358、又はByk−361(商品名;ビック・ケミー(株)製)などのアクリル系、DFX−18、フタージェント250、又はフタージェント251(商品名;ネオス(株)製)を挙げることができる。
【0053】
酸化防止剤は、例えば、透明性の向上、硬化膜が高温にさらされた場合の黄変を防止するために使用するものであり、上記熱硬化性樹脂組成物の固形分100重量部(該樹脂組成物から溶媒を除いた残りの成分)に対し0.1〜3重量部添加して用いられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系、又はヒンダードフェノール系などが用いられる。具体的には、IRGAFOS XP40、IRGAFOS XP60、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、又はIRGANOX 1520L(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0054】
2.熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、式(1)の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤、さらに好ましくは溶媒を混合し、目的とする特性によっては、さらにカップリング剤、界面活性剤、及び酸化防止剤などを必要により選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0055】
上記のようにして調製された、熱硬化性樹脂組成物を、基板表面に塗布し、例えば加熱などにより溶媒を除去すると、塗膜を形成することができる。基板表面への熱硬化性樹脂組成物の塗布は、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、及びスリットコート法など従来から公知の方法により塗膜を形成することができる。次いでこの塗膜はホットプレート、またはオーブンなどで加熱(プリベーク)される。加熱条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常70〜120℃で、オーブンなら5〜15分間、ホットプレートなら1〜5分間である。その後、塗膜を硬化させるために180〜250℃、好ましくは200〜250℃で、オーブンなら30〜90分間、ホットプレートなら5〜30分間加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0056】
このようにして得られた硬化膜は、加熱時において、式(1)の構成単位を有するポリマーのカルボン酸がエポキシ樹脂と反応して高分子量化、及びエポキシ樹脂が硬化し高分子量化しているため、非常に強靭であり、透明性、耐熱性、耐薬品性、平坦性、密着性及び耐スパッタ性に優れている。したがって、本発明の硬化膜は、カラーフィルター用の保護膜として用いると効果的であり、このカラーフィルターを用いて、液晶表示素子や固体撮像素子を製造することができる。また、本発明の硬化膜は、カラーフィルター用の保護膜以外にも、TFTと透明電極間に形成される透明絶縁膜や透明電極と配向膜間に形成される透明絶縁膜として用いると効果的である。さらに、本発明の硬化膜は、LED発光体の保護膜として用いても効果的である。
【実施例】
【0057】
本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。以下に、実施例及び比較例に使用する略号を示す。
【0058】
ポリマー1:SMA17352(川原油化(株)製)
スチレン・マレイン酸無水物共重合体のシクロヘキシルアルコール変性物
ポリマー2:SMA1000(川原油化(株)製)
スチレン・マレイン酸無水物共重合体
【0059】
エポキシ樹脂1:TECHMORE VG3101L(三井化学(株)製)
式(2-1)で表される化合物と式(2-2)で表される化合物との混合物
エポキシ樹脂2:エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
【0060】
エポキシ硬化剤1:トリメリット酸無水物
【0061】
シランカップリング剤1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
酸化防止剤1:IRGANOX 1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
界面活性剤1:Byk−344(ビック・ケミー(株)製)
【0062】
溶媒1:3−メトキシプロピオン酸メチル
溶媒2:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
【0063】
表1の組成に基づいて、実施例1〜3及び比較例1,2に係る熱硬化性樹脂組成物を調製した。次に、この熱硬化性樹脂組成物をガラス基板上及びカラーフィルター基板上に700rpmで10秒間スピンコートした後、ホットプレート上で80℃で3分間プリベークして塗膜を形成させた。その後、オーブンで、230℃で30分間加熱することにより塗膜を硬化させ、膜厚1.5μmの硬化膜を得た。
このようにして得られた硬化膜について、平坦性、耐熱性、透明性、耐薬品性、密着性及び耐スパッタ性について特性を評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
[平坦性の評価方法]
得られた硬化膜付きカラーフィルター基板の硬化膜表面の段差を段差・表面あらさ・微細形状測定装置(商品名;P−15「highly sensitive surface profiler」、KLA TENCOR(株)製)を用いて測定した。ブラックマトリクスを含むR、G、B画素間での段差の最大値(以下、最大段差と略記)が0.2μm未満である場合を○、0.2μm以上である場合を×とした。また、使用したカラーフィルター基板は、最大段差約1.1μmの樹脂ブラックマトリクスを用いた顔料分散カラーフィルター(以下、CFと略記)である。
【0066】
[耐熱性1の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板を250℃で1時間再加熱した後、加熱前の膜厚に対する加熱後の残膜率(加熱後の残膜率=加熱後の膜厚/加熱前の膜厚)、及び加熱後の400nmでの透過率を測定した。加熱後の残膜率が95%以上であり、かつ、加熱後の400nmでの透過率が95%以上の場合を○とした。加熱後の残膜率が95%未満、または、加熱後の400nmでの透過率が95%未満の場合を×とした。
【0067】
[耐熱性2の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板より硬化膜を削り取り、示差熱熱重量同時測定装置(商品名;TG/DTA6200、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)により以下の条件で硬化膜の1%重量減少温度を測定した。1%重量減少温度が、290℃以上を○とし、290℃未満を×とした。
・温度条件 25℃→(昇温速度10℃/min)→350℃
・100℃の重量を基準(100%)とし、それより1%重量が減少する温度を1%重量減少温度とした。
【0068】
[透明性の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板において、分光光度計(商品名;MICRO COLOR ANALYZER TC−1800M、(有)東京電色技術センター製)により硬化膜のみの光の波長400nmでの透過率を測定した。透過率が95%以上の場合を○、95%未満の場合を×とした。
【0069】
[耐薬品性の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板に、5重量%水酸化ナトリウム水溶液に60℃で10分間浸漬処理(以下、NaOH処理と略記)、36%塩酸/60%硝酸/水=40/20/40からなる混合液(重量比)に50℃で3分間浸漬処理(以下、酸処理と略記)、N−メチル−2−ピロリドン中に50℃で30分間浸漬処理(以下、NMP処理と略記)、γ−ブチロラクトン中に50℃で30分間浸漬処理(以下、GBL処理と略記)、イソプロピルアルコール中に50℃で30分間浸漬処理(以下、IPA処理と略記)、超純水中に50℃で30分間浸漬処理(以下、純水処理と略記)を別々に施した後、各処理前の膜厚に対する各処理後の残膜率(各処理後の残膜率=各処理後の膜厚/各処理前の膜厚)及び各処理前後の透過率を測定した。各処理後の残膜率が95%以上であり、かつ、各処理後の400nmでの透過率が95%以上の場合を○とした。各処理後の残膜率が95%未満、または、各処理後の透過率が95%未満の場合を×とした。
【0070】
[密着性の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板について、温度=120℃、湿度=100%、及び圧力=0.2MPaという条件で24時間プレッシャークッカーテスト(以下、PCT処理と略記する)を行った後、硬化膜のテープ剥離によるゴバン目試験(JIS−K−5400)を行い、残存数を数えた。残存数/100が、100/100である場合を○、99/100以下である場合を×とした。
【0071】
[耐スパッタ性の評価方法]
得られた硬化膜付きガラス基板において、10Ω/cm2の抵抗値が得られるように、スパッタにより200℃でITO膜を硬化膜上に形成し、室温に戻したときの、ITO膜のシワ発生の有無を目視により観察した。シワがない場合を○、シワが発生した場合を×とした。
【0072】
【表2】

【0073】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜3の硬化膜は、平坦性、耐熱性に優れており、さらに透明性、耐薬品性、密着性及び耐スパッタ性の全ての点においてバランスがとれていることが分かる。一方、比較例1のエポキシ樹脂を変更した硬化膜は、耐熱性、耐スパッタ性が劣り、比較例2のポリマーを変更した硬化膜は、平坦性、耐薬品性、密着性が劣るというものであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の熱硬化樹脂組成物より得られた硬化膜は、耐スパッタ性及び透明性など光学材料としての特性にも優れている点から、カラーフィルター、LED発光素子及び受光素子などの各種光学材料などの保護膜、並びに、TFTと透明電極間及び透明電極と配向膜間に形成される透明絶縁膜として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の構成単位を有するポリマー、エポキシ樹脂、及びエポキシ硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂が式(2-1)で表される化合物を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルコール残基、R2、R3はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜5のアルキルである。)
【請求項2】
エポキシ樹脂が、式(2-1)で表される化合物、または、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
式(1)の構成単位を有するポリマーが、酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体及びアルコールから得られるポリマーである、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーがマレイン酸無水物である、請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
他のラジカル重合性モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選ばれる1種以上である、請求項3又は4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
他のラジカル重合性モノマーがスチレンである、請求項3又は4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
アルコールが1価アルコールである、請求項3〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
1価アルコールが、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンから選択される1種以上である、請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
1価アルコールがシクロヘキシルアルコールである、請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
式(1)の構成単位を有するポリマーの重量平均分子量が1,000〜5,000である、請求項1〜9のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ硬化剤が、トリメリット酸無水物及びヘキサヒドロトリメリット酸無水物から選択される1種以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、及び乳酸エチルから選択される1種以上の溶媒を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
式(1)の構成単位を有するポリマーが、マレイン酸無水物とスチレンとの共重合体にシクロヘキシルアルコールを反応させて得られる、重量平均分子量が1,000〜5,000のポリマーであり、
エポキシ樹脂が、式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物の混合物であり、
エポキシ硬化剤が、トリメリット酸無水物であり、
さらに、溶媒として、3−メトキシプロピオン酸メチル及びジエチレングリコールメチルエチルエーテルから選択される1種以上を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化膜を保護膜として用いたカラーフィルター。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化膜を保護膜として用いたLED発光体。
【請求項17】
請求項15に記載のカラーフィルターを用いた液晶表示素子。
【請求項18】
請求項15に記載のカラーフィルターを用いた固体撮像素子。

【公開番号】特開2009−144025(P2009−144025A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321549(P2007−321549)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】