説明

熱線カット組成物、樹脂積層体および樹脂積層体の製造方法

【課題】本発明の目的は、熱線カット性能、透明性及び導電性に優れた熱線カット組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る熱線カット組成物は、導電性ポリマー(a)、アンチモン錫酸化物(ATO)及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる少なくとも一つの金属微粒子(b)、および溶媒(c)を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線カット効果を有する熱線カット組成物に関する。また、その熱線カット組成物を塗布して得られる熱線カット層を有する樹脂積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの観点から、太陽光エネルギーや赤外線光源からの熱線(赤外線)をカットする対策が多数提案されている。特に建築物や車両の窓から室内に照射する太陽光エネルギーから熱線をカットすることにより、快適性の向上や冷房効率の向上が期待できる。
【0003】
従来、透明性を維持しながら熱線をカットする方法としては、アンチモン錫酸化物(ATO)やインジウム錫酸化物(ITO)を含有した組成物を基材に塗布した塗膜を用いることが知られている。ITOやATOは、熱線カット効果に優れるが、溶媒に安定的に分散しにくいため、凝集すると熱線カット効果や透明性が十分に発現しないという課題がある。
【0004】
また、ATO粉とITO粉を保護剤(分散剤)と共にトルエン・エタノールなどの溶媒に分散させ、更に樹脂を配合した塗料が提案されている(特許文献1)。この塗膜は熱線カット効果に優れるが、塗膜の耐擦傷性が低く、車両や建築物の窓への適用は困難である。
【0005】
一方、アクリル樹脂等の透明樹脂は、工業用資材、建築用資材等として広く使用されている。特に近年では、その透明性と耐衝撃性の点から、アクリル樹脂が建築物や車両の窓への使用が検討されている。しかし、他の樹脂と同様に、アクリル樹脂はガラスと比較して柔らかいため、引掻き等による傷が発生し易い場合がある。また、アクリル樹脂は熱線カット性能を全く示さない。
【0006】
そのため、耐擦傷性と熱線カット性能の両方を満足させ、さらに、導電性にも優れる塗膜を機材上に形成できる、生産性に優れる方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2007−154152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱線カット性能、透明性、導電性に優れた熱線カット組成物を提供することにある。また、該熱線カット組成物を用いた、熱線カット性能、導電性、透明性及び耐擦傷性に優れた樹脂積層体を提供することにある。さらに、該樹脂積層体の生産性に優れた製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、これらの課題を解決するため鋭意研究をした結果、導電性ポリマーを共存させることにより、ATOやITO等の金属微粒子を溶媒に分散化または可溶化でき、透明性、導電性、耐擦傷性及び熱線カット性能に優れる塗膜を形成できることを見出だし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第一は、導電性ポリマー(a)、アンチモン錫酸化物(ATO)及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる少なくとも一つの金属微粒子(b)、並びに溶媒(c)を含有する熱線カット組成物である。
【0010】
本発明の熱線カット組成物は、さらにカーボンナノチューブ(d)又は高分子化合物(f)を含有させることで、その性能の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の第二は、樹脂基材の少なくとも片面に、前記熱線カット組成物を塗布して得られる熱線カット層を有し、さらに該熱線カット層の上に硬化性混合物が硬化されてなる硬化層を有する樹脂積層体である。
【0012】
前記硬化層において、光照射または加熱によって硬化された硬化層であることによって性能の向上を図ることができる。
【0013】
また、前記樹脂基材の樹脂が、アクリル系樹脂であることによって性能の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の第三は、透明フィルムの少なくとも片面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱線カット組成物を塗布し、常温で放置もしくは加熱処理することによって、前記透明フィルムに熱線カット層が形成された転写フィルムを製造する第1の工程と、該転写フィルムの該熱線カット層を型側とし、硬化性混合物を含む塗料で形成した塗布層を介在させて、前記転写フィルムを型に貼り付ける第2の工程と、前記塗布層中の硬化性混合物を光照射または加熱により硬化させて硬化層とする第3の工程と、前記型上に積層された硬化層および該硬化層に積層された熱線カット層を残して前記透明フィルムを剥がす第4の工程と、前記硬化層および該硬化層上に積層された該熱線カット層を有する前記型を用いて鋳型を作製する第5の工程と、前記鋳型内の前記熱線カット層上に樹脂基材の原料を注入し注型重合を行って樹脂基材を作成する第6の工程と、および、その後、該樹脂基材上に、該熱線カット層と、該硬化層とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第7の工程と、を含む樹脂積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱線カット組成物は、ATOやITOの金属微粒子をその特性を損なうことなく溶媒に分散化または可溶化でき、長期保存において金属微粒子が分離、凝集しない。また、本発明の熱線カット組成物によれば、該組成物を基材に塗布することで、金属微粒子自体の特性を有する塗膜を形成できる。しかも、該塗膜は、熱線カット性能、導電性、透明性、および耐擦傷性に優れる。
【0016】
また、本発明の樹脂積層体は、樹脂基材の少なくとも片面に熱線カット組成物を塗布して得られる熱線カット層を有し、さらに該熱線カット層の上に硬化性混合物の硬化層を有するため、熱線カット性能、耐擦傷性、透明性に優れる。
【0017】
更に、本発明の樹脂積層体の製造方法は、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、樹脂積層体を高い生産性で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
<導電性ポリマー(a)>
本発明の熱線カット組成物は導電性ポリマーを含有することにより、ATOやITO等の金属微粒子の溶解性・分散性が向上し、透明で安定な熱線カット組成物が得られる。また、カーボンナノチューブに対しても有効に溶解・分散させることができる。その結果、本発明の熱線カット組成物を塗布して得られる塗膜の強度、硬度等の物性や熱線カット性能などを向上させることが出来る。
【0020】
本発明で使用される導電性ポリマー(a)は、π共役系高分子であれば特に制限させずに用いることができる。導電性ポリマー(a)の透明性は膜厚に依存するが、全光線透過率30%以上となる厚みで用いることが好ましい。導電性ポリマー(a)としては、例えば、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含む導電性ポリマーを挙げることができる。この中でも特に、チエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、イソチアナフテンを含む骨格を有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。
【0021】
導電性ポリマー(a)の中でも、溶解性、導電性、製膜性などの観点から、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有するπ共役系の水溶性導電性ポリマーあるいはその塩が好ましく用いられる。特に、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有するπ共役系の水溶性導電性ポリマーが好適に用いられる。ここで、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとは、例えば、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する導電性ポリマーが挙げられる。または、例えば、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有する導電性ポリマーが挙げられる。
【0022】
また、スルホン酸及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーは、アンモニウム塩類及び/またはアミン類と反応させることにより、スルホン酸基のアンモニウム塩(−SO3-+)及び/またはカルボキシル基のアンモニウム塩(−COO-+)を有する水溶性導電性ポリマーとしても用いることができる。
【0023】
ここで、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオン(M+)は、下記一般式(1)で示されるものである。
【0024】
【化1】

(式(1)中、R48〜R51は各々独立に水素、炭素数1〜24のアルキル基、フェニル基等のアリール基若しくはベンジル基等のアラルキル基、−R35OH、−CONH2または−NH2であり、R48〜R51のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。
【0025】
スルホン酸及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとしては、例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平01−301714号公報、特開平05−504153号公報、特開平05−503953号公報、特開平04−32848号公報、特開平04−328181号公報、特開平06−145386号公報、特開平06−56987号公報、特開平05−226238号公報、特開平05−178989号公報、特開平06−293828号公報、特開平07−118524号公報、特開平06−32845号公報、特開平06−87949号公報、特開平06−256516号公報、特開平07−41756号公報、特開平07−48436号公報、特開平04−268331号公報、特開平09−59376号公報、特開2000−172384号公報、特開平06−49183号公報、特開平10−60108号公報に示された水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。
【0026】
好ましいスルホン酸及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーは、下記一般式(2)〜(10)から選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、ポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含有する導電性ポリマーである。
【0027】
【化2】

(式(2)中、R1、R2は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R1、R2のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0028】
【化3】

(式(3)中、R3、R4は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R3、R4のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0029】
【化4】

(式(4)中、R5〜R8は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R5〜R8のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0030】
【化5】

(式(5)中、R9〜R13は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R9〜R13のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0031】
【化6】

(式(6)中、R14は、−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R83SO3-+、−COO-+及び−R83COO-+からなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基であり、R83は炭素数1〜24のアルキレン、アリーレンまたはアラルキレン基である。)
【0032】
【化7】

(式(7)中、R52〜R57は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R52〜R57のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。また、Htは、NR82、S、O、Se及びTeよりなる群から選ばれたヘテロ原子基であり、R82は、水素あるいは炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を表す。また、R52〜R57は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよく、このように形成される環状結合鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよい。また、nはヘテロ環と置換基R53〜R56を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0または1〜3の整数である。)
【0033】
【化8】

(式(8)中、R58〜R66は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R58〜R66のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。また、nは置換基R58及びR59を有するベンゼン環と置換基R61〜R64を有するベンゼン環に挟まれた縮合環の数を表し、0または1〜3の整数である。)
【0034】
【化9】

(式(9)中、R67〜R76は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R67〜R76のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。また、nは置換基R67〜R69を有するベンゼン環とベンゾキノン環に挟まれた縮合環の数を表し、0または1〜3の整数である。)
【0035】
【化10】

(式(10)中、R77〜R81は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R77〜R81のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。また、Xa-は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、リン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンであり、aはXのイオン価数を表し、1〜3の整数であり、pはドープ率であり、その値は0.001〜1である。)
【0036】
その他の好ましいスルホン酸及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートも用いられる。この水溶性導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付与されている構造を有している。
【0037】
また、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸アンモニウムまたはその置換アンモニウム塩も好ましく用いられる。この導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸アンモニウム塩基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩が付加されている構造を有している。これらのポリマーは、3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル社製 商品名「Baytron M」)をトルエンスルホン酸鉄(バイエル社製 商品名「Baytron C」)などの酸化剤で重合することにより製造されるポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の付加体、或いはこの付加体をアミン類またはアンモニアと反応させることにより製造することが可能である。また、このポリマーは、バイエル社製 Baytron PまたはBaytron Pとアミン類及び/またはアンモニウム類とを反応させることにより製造することも可能である。
【0038】
以上のスルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーのうち、下記一般式(11)で表される繰り返し単位をポリマー全体の繰り返し単位の総数中に20〜100%含む導電性ポリマーが更に好ましく用いられる。
【0039】
【化11】

(式(11)中、yは0<y<1の任意の数を示し、R15〜R32は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−NO2、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R15〜R32のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0040】
ここで、ポリマーの繰り返し単位の総数に対するスルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する繰り返し単位の含有量が50%以上の導電性ポリマーは、有機溶媒、含水有機溶媒等の溶媒への溶解性が非常に良好なため、好ましく用いられる。スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する繰り返し単位の含有量は、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。
【0041】
また、芳香環に付加する置換基は、導電性及び溶解性の面からアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が好ましく、特にアルコキシ基を有する導電性ポリマーが最も好ましい。これらの組み合わせの中で最も好ましい水溶性導電性ポリマーを下記一般式(12)に示す。
【0042】
【化12】

(式(12)中、R33は、スルホン酸基、カルボキシル基、ならびにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの基であり、そのうち少なくとも一つがスルホン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基のアンモニウム塩及びカルボキシル基のアンモニウム塩からなる群より選ばれた基である。また、R34は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ドデシル基、テトラコシル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘプトキシ基、ヘクソオキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基、テトラコソキシ基)、及びハロゲン基(フルオロ基、クロロ基及びブロモ基)からなる群より選ばれた1つの基である。また、xは0<x<1の任意の数を示し、nは重合度を示し3以上である。)
【0043】
本発明における水溶性導電性ポリマーとしては、化学重合または電解重合などの各種合成法によって得られるポリマーを用いることができる。例えば、本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成方法が適用される。すなわち、下記一般式(13)で表される酸性基置換アニリン、ならびにそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた1つの化合物を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより得られた導電性ポリマーである。
【0044】
【化13】

(式(13)中、R36〜R41は各々独立に、H、−SO3-、−SO3-+、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3-+、−R35SO3H、−OCH3、−CH3、−C25、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R352、−NHCOR35、−OH、−O-、−SR35、−OR35、−OCOR35、−COO-+、−COOH、−R35COOH、−R35COO-+、−COOR35、−COR35、−CHO及び−CNからなる群より選ばれる。ここで、M+はアンモニウムイオンであり、R35は一価の場合は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、二価の場合は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、R36〜R41のうち少なくとも一つが−SO3-、−SO3H、−R35SO3-、−R35SO3H、−COOH、−R35COOH、−SO3-+、−R35SO3-+、−COO-+、及び−R35COO-+からなる群より選ばれた基である。)
【0045】
特に好ましい水溶性導電性ポリマーとしては、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩を、塩基性化合物を含む溶液中で酸化剤により重合させることにより得られた導電性ポリマーが用いられる。
【0046】
また、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーから、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する水溶性導電性ポリマーの合成方法としては、下記一般式(14)で示されるアンモニウム塩類及び/または下記一般式(15)で示されるアミン類とスルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーとを、溶液中で反応させることにより目的とする水溶性導電性ポリマーが容易に得られる。
【0047】
【化14】

(式(14)中、R148〜R151は各々独立に水素、−R35OH、炭素数1〜24のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基、−CONH2または−NH2である。また、R148〜R151のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。また、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。また、XkZ-は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アミド硫酸イオン、亜硫酸イオン、ホスフィン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、フッ化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、吉草酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、酪酸イオン、蟻酸イオン、トリメチル酢酸イオン、ブロモ酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、マロン酸イオン、アスコルビン酸イオン、アニス酸イオン、アントラニル酸イオン、安息香酸イオン、ケイ皮酸イオン、フェニル酢酸イオン、フタル酸イオン、アニリンスルホン酸イオン、チオカルボン酸イオン、メチルスルフィン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンよりなる1〜3価の陰イオン群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンを示す。また、ZはXkのイオン価数であり、1〜3の整数を示し、jは1〜3の整数を示す。)
【0048】
【化15】

(式(15)中、R145〜R147は各々独立に水素、炭素数1〜24(C1〜C24)のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基、−R35OH、−CONH2または−NH2である。また、R145〜R147のうち少なくとも一つが炭素数5以上の基である。なお、R35は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。)
【0049】
好ましいアンモニウム塩類としては、塩化ベンザルコニウム若しくは塩化トリメチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジエチルベンジルアンモニウム若しくは臭化トリエチルベンジルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジエチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、又は水酸化トリメチルベンジルアンモニウムが用いられる。
【0050】
また、好ましいアミン類としては、ベンジルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジ−n−プロピルアニリン、ジ−iso−プロピルアニリン等のアニリン類が用いられる。
【0051】
本発明における導電性ポリマーとしては、その質量平均分子量が、GPCのポリエチレングリコール換算で、2000以上300万以下のものが導電性、成膜性及び膜強度に優れており好ましく用いられ、質量平均分子量3000以上100万以下のものがより好ましく、5000以上50万以下のものがさらに好ましい。
【0052】
導電性ポリマー(a)はそのままでも使用できるが、公知の方法によって酸によるドーピング処理方法を実施して外部ドーパントを付与したものを用いることができる。例えば、酸性溶液中に、導電性ポリマー(a)を含む導電体を浸漬させるなどの処理をすることによりドーピング処理を行うことができる。ドーピング処理に用いる酸性溶液は、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、安息香酸又はこれらの骨格を有する誘導体などの有機酸;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン)スルホン酸、ポリビニル硫酸又はこれらの骨格を有する誘導体などの高分子酸を含む水溶液あるいは水−有機溶媒の混合溶液等が例として挙げられる。これらの無機酸、有機酸、高分子酸はそれぞれ単独で用いても、また2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0053】
<金属微粒子(b)>
本発明に用いられる金属微粒子は、アンチモン錫酸化物(ATO)及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる少なくとも一つの金属微粒子を用いることができる。これらの金属微粒子は、単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0054】
前記金属微粒子は、塗膜の透明性を維持する点で、粒子の平均粒径が300nm以下のものが好ましく、200nm以下のものがより好ましい。
【0055】
<溶媒(c)>
溶媒(c)は、金属微粒子(b)を溶解または分散するものであれば特に限定されないが、水溶性導電性ポリマー(a)を溶解または分散するものであれば更に好ましい。本発明の熱線カット組成物は構成成分として溶媒(c)を含むことにより導電性ポリマー(a)の溶解性や分散性およびATOやITO等の金属微粒子(b)の分散性がより向上し、塗布性、操作性なども向上する。
【0056】
溶媒(c)としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノールが好ましく用いられる。
【0057】
導電性ポリマー(a)の溶解性、金属微粒子(b)の分散性の点で、水または含水有機溶剤がさらに好ましく用いられる。
【0058】
<カーボンナノチューブ(d)>
本発明の熱線カット組成物にはカーボンナノチューブ(d)を添加することができる。カーボンナノチューブ(d)を添加することにより塗膜の熱線カット性能及び導電性を更に向上させることができる。本発明に用いられるカーボンナノチューブ(d)は、特に限定されるものではなく、通常のカーボンナノチューブ、例えば、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、又はこれらがコイル状になったもの等を用いることができる。
【0059】
カーボンナノチューブ(d)について更に詳しく説明する。カーボンナノチューブ(d)としては、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面を丸めた円筒が、単層あるいは複数個入れ子構造になったものであり、nmオーダーの外径の極めて微小な物質が例示される。また、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーンやその頭部に穴が開いたコップ型のナノカーボン物質なども用いることができる。
【0060】
本発明におけるカーボンナノチューブ(d)の製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。
【0061】
これらの製造方法によって得られるカーボンナノチューブ(d)としては、好ましくは単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。更に洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によってより高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現することから、好ましく用いられる。
【0062】
本発明で用いられるカーボンナノチューブ(d)として、フラーレン、金属内包フラーレン、玉葱状フラーレン、カーボンナノファイバー、ピーポッド、気相成長カーボン(VGCF)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子又はケッチェンブラック等を挙げることができる。これらの中でも実用上はカーボンナノチューブ(d)が導電性、透明性の観点より好ましく用いられる。
【0063】
また、カーボンナノチューブ(d)としては、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置等を用いて粉砕しているものや、化学的、物理的処理によって短く切断されているものも用いることができる。
【0064】
<高分子化合物(e)>
本発明の熱線カット組成物には、バインダー樹脂として高分子化合物(e)を添加することができる。高分子化合物(e)を添加することにより塗膜の基材密着性、強度を更に向上させることができる。本発明に用いることができる高分子化合物(e)としては、溶媒(c)に溶解または分散可能であれば特に限定されずに用いることができる。高分子化合物(e)としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類、ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸などのポリアクリルアマイド類、ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸若しくはそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂若しくはこれらの単量体を共重合した樹脂などが用いられる。また、これらの高分子化合物(e)の2種以上を任意の割合で混合したものであってもよい。
【0065】
これら高分子化合物(e)の中でも、導電性ポリマー(a)としてスルホン酸基のアンモニウム塩及び/またはカルボキシル基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマーを用いる場合は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂が溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点で、好ましく用いられ、その中でも特に好ましくはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂のうちの1種または2種以上を混合して使用することが溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点で、好ましい。
【0066】
これら高分子化合物(e)の中でも、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性ポリマーを用いる場合は、水溶性高分子化合物または水系でエマルジョンを形成する高分子化合物が溶媒への溶解性、組成物の安定性、導電性の点で、好ましく用いられ、特に好ましくはアニオン基を有する高分子化合物が用いられる。また、その中でも、水系アクリル樹脂、水系ポリエステル樹脂、水系ウレタン樹脂、水系塩素化ポリオレフィン樹脂および四フッ化エチレン樹脂等の水系フッ素樹脂のうちの1種または2種以上を混合して使用することが好ましい。
【0067】
<塩基性化合物(f)>
本発明の熱線カット組成物には塩基性化合物(f)を添加することができる。塩基性化合物(f)を添加することにより構成成分である導電性ポリマー(a)を脱ドープし、組成物中への溶解をより向上させることができる。また、遊離のスルホン酸基及びカルボキシル基と塩を形成することにより導電性ポリマー(a)の組成物への溶解が特段に向上するとともに、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)の組成物への可溶化あるいは分散化が促進される。
【0068】
塩基性化合物(f)としては、特に限定されるものではないが、例えば、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類やアンモニウム塩類、無機塩基などを例として挙げることができる。
【0069】
塩基性化合物(f)として用いられるアミン類の構造式の例を下記一般式(16)に示す。
【0070】
【化16】

(式(16)中、R245〜R247は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2またはNH2を表す。)
【0071】
塩基性化合物(f)として用いられるアンモニウム塩類の構造式の例を下記式(17)に示す。
【0072】
【化17】

(式(17)中、R248〜R251は各々互いに独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、CH2OH、CH2CH2OH、CONH2またはNH2を表し、X-はOH-、1/2・SO42-、NO3-、1/2CO32-、HCO3-、1/2・(COO)22-、またはR’COO-を表し、R’は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0073】
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モリホリン、ピペラジン若しくはこれらの骨格を有する誘導体又はこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが好ましく用いられる。
【0074】
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン若しくはこれらの骨格を有する誘導体又はこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが好ましく用いられる。
【0075】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムなどの水酸化物塩が好ましく用いられる。
【0076】
塩基性化合物(f)は2種以上を混合して用いても良い。例えば、アミン類とアンモニウム塩類を混合して用いることにより更に導電性を向上させることができる。具体的には、NH3/(NH42CO3、NH3/(NH4)HCO3、NH3/CH3COONH4、NH3/(NH42SO4、N(CH33/CH3COONH4、N(CH33/(NH42SO4などが挙げられる。またこれらの混合比は任意の割合で用いることができるが、アミン類/アンモニウム塩類=1/10〜10/1が好ましい。
【0077】
<界面活性剤(g)>
本発明の熱線カット組成物には、界面活性剤(g)を添加することができる。界面活性剤(g)を加えることにより、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)を更に可溶化あるは分散化させることができるとともに、平坦性、塗布性、熱線カット性及び導電性などを向上させることができる。
【0078】
界面活性剤(g)の具体例としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの塩などのアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪族アミン、第四級アンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム、アルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム)、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などのカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどの非イオン系界面活性剤;およびフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤等が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、界面活性剤は二種以上用いても何らさしつかえない。
【0079】
<熱線カット組成物>
本発明の熱線カット組成物は溶媒(c)を含有する。溶媒(c)を用いることにより溶解性・分散性、塗布性、操作性などが向上する。以下に組成比について説明する。
【0080】
導電性ポリマー(a)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対して導電性ポリマー(a)が0.001〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜30質量部である。導電性ポリマー(a)を0.001質量部以上とすることにより、導電性をより良好にし易く、金属微粒子(b)の可溶化あるは分散化の効率を向上させることができる。一方、50質量部以下とすることにより、より良好な導電性を付与することができ、高粘度化もせずに金属微粒子(b)の可溶化あるいは分散化をより良好にすることができる。
【0081】
金属微粒子(b)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対して金属微粒子(b)が0.0001〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜150質量部である。金属微粒子(b)を0.0001質量部以上とすることにより、金属微粒子(b)が塗膜中に分散して効率よいネットワークが形成し易いため、透明性を維持しつつ熱性カット性能をより良好に発現させることができる。一方、200質量部以下とすることにより、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)の可溶化あるいは分散化の効率をより良好にすることができる。
【0082】
カーボンナノチューブ(d)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対してカーボンナノチューブ(d)が0.0001〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量部である。カーボンナノチューブ(d)を0.0001質量部以上とすることにより、導電性をより良好することができる。一方、20質量部以上とすることにより、カーボンナノチューブ(d)の可溶化あるいは分散化の効率をより良好にすることができる。
【0083】
高分子化合物(e)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対して高分子化合物(e)が0.1〜400質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜300質量部である。高分子化合物(e)を0.1質量部以上とすることにより、成膜性、成形性、強度をより向上させることができる。一方、400質量部以下とすることにより、導電性ポリマー(a)、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)の溶解性あるいは分散性の低下を少なくすることができ、高い熱線カット性能、透明性、導電性を維持することができる。
【0084】
塩基性化合物(f)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対して塩基性化合物(f)が0.00001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.00005〜5質量部である。塩基性化合物(f)をこの範囲にすることにより、導電性ポリマーの溶解性をより良好にすることができ、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)の溶媒(c)への可溶化あるいは分散化が促進され、導電性をより向上することができる。
【0085】
界面活性剤(g)と溶媒(c)の使用割合は、溶媒(c)100質量部に対して界面活性剤(g)が0.0001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部である。界面活性剤(g)を10質量部以下とすることにより、金属微粒子(b)やカーボンナノチューブ(d)の可溶化あるいは分散化の効率をより良好にすることができる。
【0086】
更に本発明の熱線カット組成物には、必要に応じて、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、スリップ剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の公知の各種物質を添加して用いることができる。
【0087】
また、本発明の熱線カット組成物には、その導電性を更に向上させるために導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質等が挙げられる
【0088】
<熱線カット組成物の製造方法>
本発明の熱線カット組成物の成分である導電性ポリマー(a)、金属微粒子(b)、溶媒(c)及び必要によりその他の構成成分を混合する際、超音波、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサーなどの撹拌又は混練装置を用いることができる。特に超音波を照射することが好ましく、超音波照射とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることがより好ましい。
【0089】
超音波照射処理の条件は、特に限定されるものではないが、金属微粒子(b)及び必要によりカーボンナノチューブ(d)を溶媒(c)中に均一に分散あるいは溶解させるだけの十分な超音波の強度と処理時間があればよい。例えば、超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜500ワット/cm2が好ましい。発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、20〜100kHzがより好ましい。また、超音波照射処理の時間は、1分〜48時間が好ましく、より好ましくは5分から48時間である。この後、更にボールミル、ビーズミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置を用いて分散あるいは溶解を徹底化することが望ましい。
【0090】
所定の構成成分を混合する際には、すべての成分を一括添加してもよいし、溶媒(c)のうち、その少量を用いて、濃厚な熱線カット組成物を調製した後、所定の濃度に希釈しても良い。また、溶媒(c)を2種類以上混合して用いる場合には、使用する溶媒(c)のうち1成分以上を用いて、濃厚な熱線カット組成物を調製し、その後、その他の溶媒(d)成分で希釈しても良い。
【0091】
また、超音波照射処理を行う際の熱線カット組成物の温度は、分散性向上の点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
【0092】
<転写フィルム>
転写フィルムは、透明フィルム上に剥離可能な熱線カット層が積層された(仮固定化された状態)構成からなる。より好ましくは、転写フィルムは、転写を容易にするために、透明フィルムと熱線カット層の間に離型層を有する。
【0093】
本発明において、熱線カット組成物を塗布し塗膜を形成する透明フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのフィルムが挙げられる。
【0094】
本発明における熱線カット層は、一般の塗布に用いられる方法によって透明フィルム上の表面に形成される。例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法、エアスプレー、エアレススプレー等のスプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が用いられる。
【0095】
<樹脂積層体、硬化層>
本発明の樹脂積層体は、樹脂基材の少なくとも片面に、前記熱線カット組成物を塗布して得られる熱線カット層を有し、さらに該熱線カット層の上に、硬化性混合物の硬化層を有する樹脂積層体である。
【0096】
まず、硬化層について説明する。
【0097】
硬化層は、樹脂積層体表面の耐擦傷性を向上させるものであり、この耐擦傷性をもたらす各種の硬化性化合物からなる硬化性混合物を膜状に硬化させたものである。硬化性混合物としては、後述する紫外線硬化性混合物のようなラジカル重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランを原料とするシリコーン樹脂など、熱重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物を挙げることができる。これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するか、或いは加熱により硬化するものである。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の硬化性を有する化合物を組み合わせて用いてもよい。場合によっては、ラジカル重合系の硬化性化合物と熱重合系の硬化性化合物とを組み合わせてもよい。なお、硬化性化合物単独で用いる場合も便宜的に「硬化性混合物」という。
【0098】
本発明において、硬化層は紫外線によって硬化された硬化層であることが好ましい。以下、紫外線硬化性混合物を硬化させてなる硬化層を形成する工程について説明する。
【0099】
紫外線硬化性混合物としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物及び光開始剤からなる紫外線硬化性混合物を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0100】
例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。
【0101】
前記の、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールのポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0102】
さらに、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体と、から得られるエステル化物において、多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。多価カルボン酸またはその無水物としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これら各化合物の組合せから、分子中に少なくても2個の(メタ)アクロイリオキシ基を有する化合物が得られる。
【0103】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;ウレタンポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。ここで「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」又は「アクリ」を意味する。
【0104】
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物;などが挙げられる。
【0105】
光開始剤の添加量は、紫外線硬化性混合物100質量%中、紫外線照射による硬化性の観点から0.1質量%以上が好ましく、硬化層の良好な色調を維持する観点から10質量%以下が好ましい。また、前記光開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0106】
硬化性混合物は、該硬化性混合物を含む硬化層形成用の塗料として使用することが好ましい。前記塗料には、必要に応じて、レベリング剤、導電性無機微粒子、導電性を有さない無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分をさらに添加できる。樹脂積層体の透明性の観点から、その添加量は硬化性混合物100質量%中、10質量%以下が好ましい。
【0107】
硬化層としては、その膜厚が1μm〜100μmであることが好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度を有し外観も良好である。より好ましくは、1μm〜30μmである。
【0108】
樹脂基材としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル単位を主構成成分とする共重合体、ポリスチレン、スチレン−メチルメタクリレート共重合体の成形品が挙げられる。透明性、耐候性の観点から、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル単位を主構成成分とする共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのアクリル系樹脂から構成される樹脂基材が好ましい。また、樹脂基材に着色剤や光拡散剤などを添加しても良い。樹脂積層体の厚みは、通常1mm〜15mm程度である。
【0109】
また、この樹脂積層体には、必要に応じて、例えば硬化層の表面に反射防止層などの他の機能層を設けることもできる。例えば、反射防止層を形成する場合、市販の反射防止用塗料を樹脂基材に塗布、乾燥させて形成する方法(湿式法)、あるいは、蒸着法やスパッタリング法などの物理気相堆積法などが挙げられる。また、硬化層の表面は平坦でもマット状でも良い。また防汚膜をさらに積層してもよい。
【0110】
本発明における樹脂基材への熱線カット層、硬化層の積層方法としては、例えば、樹脂基材へ直接熱線カット層、硬化層を順次形成する方法や、熱線カット層、硬化層が予め形成されたフィルムを用いて接着層を介して樹脂基材へ転写する方法等が挙げられる。また、型に予め硬化層、熱線カット層(これらを併せて「熱線カット積層膜」と呼ぶことがある。)を形成した後、注型重合を行い、重合終了後、型から剥離する方法なども挙げられる。特に、転写フィルムにより型へ熱線カット積層膜を形成した後、注型重合を行い、重合終了後、型から剥離する方法が好ましい。転写フィルムは、透明フィルム上に熱線カット組成物を塗布し、常温で放置するもしくは加熱処理することによって形成した熱線カット層が積層された(仮固定化された状態)構成からなる。該熱線カット層は、転写を容易にするために、透明フィルムと熱線カット層の間に離型層を有することが好ましい。
【0111】
<樹脂積層体の製造方法>
本発明の樹脂積層体の製造方法を説明する。まず、第1の工程として、透明フィルムの少なくとも一面に熱線カット組成物を塗布して乾燥することにより、透明フィルム上に熱線カット層が形成された転写フィルムを作製する。次に、第2の工程として転写フィルムの熱線カット層を型側とし、硬化性混合物を含む塗料で形成した塗布層を介在させて、前記転写フィルムを型に貼り付ける。前記硬化性混合物としては、紫外線硬化性混合物が好ましい。以下、紫外線硬化性混合物を硬化させて硬化層とする樹脂積層体の製造方法について説明する。第2の工程で転写フィルムを型に貼付ける方法としては、例えば、型もしくはフィルムに紫外線硬化性混合物を含む塗料を塗布し、ゴムロールで圧着する方法が挙げられる。特に、貼り合わせる際のエアーの巻き込みを防ぐためには、型上に過剰量の紫外線硬化性混合物を含む塗料を塗布し、フィルムを介してゴムロールで過剰な塗料をしごき出しながら貼り付ける方法が好ましい。
【0112】
前記第2の工程で転写フィルムを型に貼り付けた後、第3の工程として、転写フィルムを介して紫外線を照射し、前記塗布層中の紫外線硬化性混合物を硬化させて硬化層とする。この紫外線照射には、紫外線ランプを使用すればよい。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、蛍光紫外線ランプ等が挙げられる。紫外線照射による硬化は、転写フィルムを介して1段階で行っても良いし、あるいは、転写フィルムを介して1段目の硬化を行い(第3の工程)、透明フィルムを剥離し(第4の工程)、その後更に紫外線を照射して2段目の硬化を行うなど、2段階に分けて硬化を実施しても良い。紫外線硬化性混合物以外の硬化性混合物を用いる場合は、例えば、電子線、放射線などのエネルギー線を転写フィルムを介して照射することにより硬化するか、あるいは加熱により硬化すればよい。
【0113】
本発明においては、第3の工程の硬化の後、第4の工程として型上に設けた硬化層上に積層された熱線カット層を残して透明フィルムを剥がす。すなわち転写フィルムの熱線カット層は、型上の硬化層の上に転写されたものとなる。
【0114】
第5の工程として硬化性混合物を硬化させてなる硬化層および該硬化層上に積層された熱線カット層(熱線カット積層膜)を有する前記型を用いて鋳型を作製する。
【0115】
型を構成する部材としては、例えば、鏡面を有するステンレス板、ガラス板もしくは表面に凹凸を有するステンレス板、ガラス板等を使用できる。鋳型の作製は、例えば、2枚の型の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合物、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物等からなる中空形状物をガスケットとしてはさみ込み、クランプで固定して、成形型から構成される鋳型を組立てる等の工程により行うことができる。また、連続的に注型重合(キャスト重合)する方法として、図1に示すような対向して走行する2枚のステンレス製エンドレスベルトを型として、それらエンドレスベルトの間で樹脂原料を注型重合して樹脂板を製造する方法が知られており、これは生産性の
点で最も好ましい方法である。この場合においてはステンレス製エンドレスベルト表面に、例えば硬化層等を予め形成することにより、硬化層を有する樹脂積層体を高い生産性で製造することができる。
【0116】
その方法の例を図2に示す。図2の装置において、エンドレスベルト2上に塗布された紫外線硬化型樹脂を含む塗料16上には、ゴムロール17により、熱線カット層を有する転写フィルム15が圧着される。その後、塗料16は、蛍光紫外線ランプ18及び高圧水銀灯19により硬化されて、熱線カット層と硬化塗膜層とからなる積層機能層20が形成される。
【0117】
その後、積層機能層20上に樹脂原料が供給される。
【0118】
なお、図1の装置において、上下に配置した一対のエンドレスベルト1、2は、それぞれ主プーリ3、4、5、6で張力が与えられ、同一速度で走行する。上下対になったキャリアロール7は、走行するエンドレスベルト1、2を水平に支持し、ベルトの走行方向と直角かつベルト面の垂直方向からベルト面に対して線荷重をかける。
【0119】
注型重合する樹脂原料は、重合性原料注入装置14からエンドレスベルト1、2の間に供給される。エンドレスベルト1、2の両側端部付近は弾力性のある二個のガスケット12でシールされ、これにより鋳型の空間部が形成されている。エンドレスベルト1、2の間に供給された重合性原料は、エンドレスベルト1、2の走行に伴い、第一重合ゾーン8において温水スプレー9による加熱によって重合を開始し、次いで第二重合ゾーン10において遠赤外線ヒーターで加熱されて重合を完結し、冷却ゾーン11で冷却された後、矢印13方向に成形品が取り出される。
【0120】
第一重合ゾーンの重合温度は30℃〜90℃が好ましく、重合時間は10分〜40分程度とすることが好ましい。ただし、この範囲の温度や時間に限定されるものではない。例えば、始めは低温で重合を行い、次いで温度を上昇させて重合を継続させる方法等も用いることができる。その後、第二重合ゾーンにおいて、100℃〜130℃程度の高温条件で10分〜30分加熱して重合を完結させることも好ましい。
【0121】
第5の工程後、第6の工程として前記鋳型に樹脂原料を注入し注型重合を行う。
【0122】
作製した鋳型内部にて、樹脂基材となる樹脂原料の注型重合を行なう際、その樹脂原料としては、従来より知られる各種の原料を使用できる。例えば、アクリル系樹脂を注型重合で製造する場合は、その樹脂原料として、(メタ)アクリル酸のエステル類単独の単量体、またはこれを主成分とする単量体、あるいは、この単量体とこの単量体からなる重合物の混合物を含有するシロップ等を挙げることができる。
【0123】
また、このようなアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸のエステル類の単独重合物、あるいはこれを主な単量体成分とする、共重合物を例示することができる。(メタ)アクリル酸のエステル類としては、メタクリル酸メチルを例示することができる。例えば、メタクリル酸メチルを主な単量体成分として共重合する場合、その他の単量体成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
【0124】
メタクリル酸メチル単量体あるいはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物中に、メタクリル酸メチル単量体あるいはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物の一部重合物を含む場合は、メタクリル酸メチル単量体あるいはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物に前記重合物を溶解させてもよいし、あるいはメタクリル酸メチ
ル単量体あるいはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物を一部重合させてもよい。アクリル系樹脂原料を重合するための開始剤としては一般的に用いられるアゾ系の開始剤、あるいはパーオキサイド系開始剤等が挙げられ、これらの開始剤を用いて公知の方法により注型重合を行う。アクリル系樹脂原料には、その他目的に応じ、離型剤、紫外線
吸収剤、染顔料等を添加することができる。
【0125】
第7の工程として、重合終了後、樹脂基材と、熱線カット層と、硬化層とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する。このようにして得られる樹脂積層体は、型面を転写したものなので異物等による欠陥が無い優れた表面を有し、かつ耐擦傷性や熱線カット性に優れている。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例、比較例で使用した化合物の略称は以下の通りである。
「MMA」:メタクリル酸メチル
「AIBN」:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
「C6DA」:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
「TAS」:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合混合物(大阪有機化学工業(株)製)
「BEE」:ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製)
「IRGACURE184」:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン(株)製)
「IRGACURE819」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製)
「BYK348」:シリコーン系レベリング剤(ビックケミー(株)製)
【0127】
なお、実施例における物性の評価は下記の方法に基づいて行った。
【0128】
<全光線透過率及びヘーズ>
日本電色製HAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7136に示される測定法に準拠して、全光線透過率及びヘーズを測定した。
【0129】
<日射透過率(熱線カット性能)>
JISR3106に示される測定法に準拠して、340〜1800nmの範囲で計算した日射透過率を示す。
【0130】
<表面抵抗値>
表面抵抗値が108Ω以上の場合は二探針法(電極間距離:20mm)を用い、表面抵抗値が107Ω以下の場合は四探針法(各電極間距離:5mm)を用いて、23±2℃、50±5%RH(相対湿度)の条件下で測定した。
【0131】
<耐擦傷性>
擦傷試験の前後におけるヘーズの変化(△ヘーズ)をもって評価した。即ち、#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドを樹脂積層体の硬化層表面上に置き、9.8Nの荷重下で、20mmの距離を100回往復擦傷し、擦傷前と擦傷後のヘーズ値の差を下式(1)より求めた。
[△ヘーズ(%)]=[擦傷後ヘーズ値(%)]−[擦傷前ヘーズ値(%)]・・(1)
【0132】
<異物による外観欠陥の評価>
後述する方法により得られた樹脂積層体中の異物数をカウントした。
○:異物なし。
×:異物が10個以上認められる。
【0133】
<積層体の密着性評価>
クロスカット試験(JIS K5600−5−6)により評価した。
○:硬化層あるいは熱線カット層の樹脂基材からの剥離無し。
×:硬化層あるいは熱線カット層の樹脂基材からの剥離有り。
【0134】
<熱線カット組成物の原料>
金属微粒子(b)としては、スズ含有酸化インジウム粒子を用いた。該スズ含有酸化インジウム粒子は、富士チタン工業社製、商品名:type B−(H)、粒子径:30nm(以下、ITO粒子と記す)である。
【0135】
高分子化合物(d)としては、水系アクリル樹脂エマルションを用いた。該水系アクリル樹脂エマルションは、三菱レイヨン社製、商品名:ダイヤナールMX−1845、樹脂分40質量%である。
【0136】
カーボンナノチューブ(ナノ炭素材料)としては、ナノシル社によりCVD法にて製造された多層カーボンナノチューブ「商品名:NC7000」を用いた。
【0137】
<超音波ホモジナイザー処理条件>
超音波ホモジナイザー処理は、SONIC社製、vibra cellを用い、定格出力:30ワット/cm2、発振周波数:20kHzの条件で実施した。
【0138】
<導電性ポリマー(a)(水溶性導電性ポリマー)の製造>
(製造例1、水溶性導電性ポリマー(A−1))
ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に攪拌溶解し、これにペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、ポリマー粉末15gを得た。この水溶性導電性ポリマー(A−1)の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。
【0139】
[実施例1]
熱線カット組成物1:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、ITO粒子の10質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、熱線カット組成物1を調製した。組成比を表1に示す。
【0140】
上記熱線カット組成物1をガラス基板上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で80℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率、日射透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0141】
[実施例2]
熱線カット組成物2:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、ITO粒子の10質量部、CNTの0.1質量部を、水の100質量部に室温にて混合し、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、熱線カット組成物2を調製した。組成比を表1に示す。
【0142】
上記熱線カット組成物2をガラス基板上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で80℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率、日射透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0143】
[実施例3]
熱線カット組成物3:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、ITO粒子の100質量部、水系アクリル樹脂エマルションの12.5質量部を、水−メタノール(1/1質量比)混合液の100質量部に室温にて混合しさらに、BYK348を0.25質量部添加した後、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、熱線カット組成物3を調製した。組成比を表1に示す。
【0144】
(転写フィルムの作製)
東洋紡製剥離層付25μm厚のPETフィルム(TN100)の剥離層の上に、熱線カット組成物3を4号のバーコーダーを用いて塗布し、80℃にて15分乾燥させることにより、熱線カット層を形成し、熱線カット層付き転写フィルムを得た。熱線カット層の厚みは1μmであった。なお、熱線カット層の厚みは、塗布面積、塗布重量、固形分濃度から算出した。
【0145】
(熱線カット積層膜の作製)
1枚の型となるステンレス(SUS304)板上に、TAS50質量部、C6DA50質量部、BEE1.5質量部からなる紫外線硬化性混合物からなる塗料を塗布した。
【0146】
紫外線硬化性混合物を含む塗膜上に、前記転写フィルムの熱線カット層側を型側に向けて前記転写フィルムを重ね、JIS硬度40°のゴムロールを用い、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みが15μmとなるように過剰な塗料をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させた。尚、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みは、この紫外線硬化性混合物を含む塗料の供給量および展開面積から算出した。次いで、10秒経過後、前記転写フィルムを介して出力40Wの蛍光紫外線ランプ(東芝(株)製、商品名:FL40BL)の下20cmの位置を0.3m/minのスピードで通過させて、紫外線硬化性混合物の硬化を行った。
【0147】
その後、前記転写フィルムを剥離すると、熱線カット層は全て、硬化層へ転写していた。次いで、ステンレス板の前記熱線カット積層膜のある面を上にして、出力9.6kWの高圧水銀灯の下20cmの位置を3.0m/minのスピードで通過させて、硬化層をさらに硬化させ、膜厚が13μmの熱線カット積層膜を得た。尚、熱線カット積層膜の膜厚は、得られた製品の断面の微分干渉顕微鏡写真から測定して求めた。
【0148】
(樹脂積層体の作製)
このようにして形成した熱線カット積層膜を有するステンレス板と、通常のステンレス板を1枚づつ用意し、積層膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した(面積300×300mm)。この鋳型内に、重量平均分子量220000のMMA重合物20質量部とMMA単量体80質量部の混合物100質量部、AIBN0.05質量部、ジオクチルスルフォサクシネートのナトリウム塩0.005質量部からなる樹脂原料を注入し、対向するステンレス板の間隔を2.5mmに調整し、80℃の水浴中で1時間、次いで130℃の空気炉で1時間重合した。その後、冷却して、ステンレス板から、得られた樹脂板を剥離することにより、片面に熱線カット積層膜、すなわち表面に硬化層を、内部に熱線カット層を有する板厚2mmのアクリル樹脂積層体を得た。
【0149】
得られたアクリル樹脂積層体の全光線透過率は82%、ヘーズは0.57%であり、透明性に優れていた。熱線カット性能を評価した結果、日照透過率は48.6%で良好であった。さらに、異物による外観欠陥も無く、良好な外観を有するものであった。
【0150】
さらに、熱線カット積層膜の擦傷後のヘーズ増分は0.0%であり、熱線カット性、耐擦傷性に優れるものであった。また、密着性評価を行った結果、密着性は硬化層あるいは熱線カット層の樹脂基材からの剥離無く、良好であった。結果を表2に示す。
【0151】
[比較例1]
導電性組成物1:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、水系アクリル樹脂エマルジョンの12.5質量部を、水−メタノール(1/1質量比)混合液の100質量部に室温にて混合しさらに、BYK348を0.25質量部添加した後、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、導電性組成物1を調製した。組成比を表1に示す。
【0152】
上記導電性組成物1をガラス基板上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で80℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率、日射透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0153】
[比較例2]
導電性組成物2:
製造例1の水溶性導電性ポリマー(A−1)の1.0質量部、CNTの1.0質量部、水系アクリル樹脂エマルションの12.5質量部を、水−メタノール(1/1質量比)混合液の100質量部に室温にて混合しさらに、BYK348を0.25質量部添加した後、超音波ホモジナイザー処理を1時間施し、導電性組成物2を調製した。組成比を表1に示す。
【0154】
上記導電性組成物2をガラス基板上に適量滴下し、バーコーティング法(バーコーター♯5)にて塗布し、乾燥機で80℃、5分間乾燥させ、塗膜を形成し、外観観察後、表面抵抗値、全光線透過率、日射透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0155】
【表1】

数値は質量部を表す
【0156】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の樹脂積層体は、各種電気機器の銘板、間仕切り等の各種グレージング、CRT、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレイの前面板、建築物や車両の窓等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の製造方法に使用可能なベルト式連続キャスト製板装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の製造方法に使用可能な積層体の形成装置を例示する模式的断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1、2 エンドレスベルト
3、4、5、6 主プーリ
7 キャリアロール
8 第一重合ゾーン
9 温水スプレー
10 第二重合ゾーン
11 冷却ゾーン
12 ガスケット
13 樹脂積層体の取り出し方向
14 重合性原料注入装置
15 転写フィルム
16 紫外線硬化型樹脂を含む塗料
17 ゴムロール
18 蛍光紫外線ランプ
19 高圧水銀灯
20 熱線硬化層積層膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー(a)、アンチモン錫酸化物(ATO)及びインジウム錫酸化物(ITO)から選ばれる少なくとも一つの金属微粒子(b)、並びに溶媒(c)を含有する熱線カット組成物。
【請求項2】
さらに、カーボンナノチューブ(d)を含有する請求項1に記載の熱線カット組成物。
【請求項3】
さらに、高分子化合物(e)を含有する請求項1又は2に記載の熱線カット組成物。
【請求項4】
樹脂基材の少なくとも片面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱線カット組成物を塗布して得られる熱線カット層を有し、さらに該熱線カット層の上に硬化性混合物が硬化されてなる硬化層を有する樹脂積層体。
【請求項5】
前記硬化性混合物は光照射または加熱によって硬化されて前記硬化層となる請求項4に記載の樹脂積層体。
【請求項6】
前記樹脂基材の樹脂はアクリル系樹脂で構成される請求項5又は6に記載の樹脂積層体。
【請求項7】
透明フィルムの少なくとも片面に、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱線カット組成物を塗布し、常温で放置もしくは加熱処理することによって、前記透明フィルムに熱線カット層が形成された転写フィルムを製造する第1の工程と、
該転写フィルムの該熱線カット層を型側とし、硬化性混合物を含む塗料で形成した塗布層を介在させて、前記転写フィルムを型に貼り付ける第2の工程と、
前記塗布層中の硬化性混合物を光照射または加熱により硬化させて硬化層とする第3の工程と、
前記型上に積層された硬化層および該硬化層に積層された熱線カット層を残して前記透明フィルムを剥がす第4の工程と、
前記硬化層および該硬化層上に積層された該熱線カット層を有する前記型を用いて鋳型を作製する第5の工程と、
前記鋳型内の前記熱線カット層上に樹脂基材の原料を注入し注型重合を行って樹脂基材を作成する第6の工程と、
および、その後、該樹脂基材上に、該熱線カット層と、該硬化層とが順次積層された樹脂積層体を鋳型から剥離する第7の工程と、を含む樹脂積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−116517(P2010−116517A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292145(P2008−292145)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】