説明

熱間押出用加熱炉

【課題】 耐火材の損傷劣化防止、寿命延長を図るビレットの低周波誘導加熱による熱間押出用加熱炉を提供する。
【解決手段】 熱間押出用ビレットを加熱するための加熱炉において、加熱炉インダクションヒータ内にセラミックス製の耐火材を配設することを特徴とする熱間押出用加熱炉。上記のセラミックス耐火材として、SiC−SiO2 系セラミックス材であることを特徴とする熱間押出用加熱炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間押出用加熱炉の耐火材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、継目無鋼管の製造方法の1つである熱間押出において、押出用ビレットを加熱するための加熱炉がある。この加熱炉には誘導電流を利用したインダクションヒータがある。例えば特開昭62−290089号公報に開示されているように、加熱炉入口に棒鋼片挿入装置を有する高周波誘導加熱炉において、棒鋼片を連続挿入加熱するに際して、最後端の棒鋼片が挿入された後炉の長さに相当する非導電性耐火材料からなるダミーバーを挿入する棒鋼片の高周波誘導加熱方法は提案されている。
【特許文献1】特開昭62−290089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1は、加熱炉入口に棒鋼片挿入装置を有するプッシャ式の高周波誘導加熱炉において、棒鋼片を連続挿入加熱するに際し、最後端に非導電性耐火材料からなるダミーバーを挿入し、熱効率の向上を図った高周波誘導加熱方法にある。この方法は確かに最後端の棒鋼片の高周波誘導加熱が終わっても、戻し材を無くして熱効率を改善した棒鋼片の高周波誘導加熱方法ではある。しかし、この特許文献での棒鋼片の加熱は高周波誘導加熱ではあるが、低周波誘導加熱炉の耐火物の損傷劣化に関しての解決手段については何らの開示もされていない。
【0004】
一方、上述した低周波誘導加熱炉の耐火物は、従来から粘土状のものを乾燥させ固めたものを使用しているが、強度がないために、部分的に損傷・剥離が発生し再三修理を行う必要があった。また、加熱材であるビレットに剥離した耐火材が付着し、ビレット押出時に品質上の悪影響を及ぼしていた。そのためビレットと耐火材の直接接触を防ぐため、図4に示すように、加熱炉内の耐火材とビレット間にステンレス製(以下、SUS製という。)のガイドプレートを挿入する場合がある。
【0005】
すなわち、従来は耐火材として粘土状のライニング材をコイル内側へ塗り、乾燥させて使用されていた。図4は、従来のライニング材を使用した低周波誘導加熱炉を示す図である。この図4に示すように、加熱炉1はこの加熱炉内に耐火材からなるライニング材2と加熱ビレット3間にSUS製のガイドプレート4を挿入した構造の外側に巻線コイル5を配線し、その外側に巻線水冷管6を配設し、巻線水冷管6に水供給口7から水を供給して水冷する。一方、加熱ビレット3の両端にはフラックスダイバータ8を配設し、加熱ビレット3の両端を押さえながら加熱する構造となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したような従来のライニングが使用されている低周波誘導加熱炉での耐火物の損傷劣化を防止し寿命延長を図る課題に対して、発明者らは鋭意開発を進めた結果、従来のSUS製のガイドプレートを廃止し、粘土状のライニング材に替わり、あらかじめ焼結・成型したセラミックス製の耐火材を使用することで、耐火材の損傷劣化防止、寿命延長を図るビレットの低周波誘導加熱による熱間押出用加熱炉を提供するものである。
【0007】
その発明の要旨とするところは、
(1)熱間押出用ビレットを加熱するための加熱炉において、加熱炉インダクションヒータ内にセラミックス製の耐火材を配設することを特徴とする熱間押出用加熱炉。
(2)前記(1)に記載のセラミックス耐火材として、SiC−SiO2 系セラミックス材であることを特徴とする熱間押出用加熱炉にある。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、本発明による低周波誘導加熱による熱間押出用加熱炉により、従来、耐火材の補修回数が1台当たり1回/3ケ月の周期で耐火材の損傷部分の補修をしていたものが、本発明により1回/2年の周期で耐火材の全面補修で済み、かつ製品外面疵の発生率を低下することが可能となり歩留り向上を図ることができる等極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る低周波誘導加熱炉を示す図である。この図1に示すように、加熱炉1内に従来から使用していた加熱炉インダクションヒータのコイル内側に塗っていた耐火材からなるライニング材2と加熱ビレット3間にSUS製のガイドプレート4を挿入した構造を剥がし、セラミック筒状体9を挿入できるようなコイル内を装備するために、図2に示すような所定の形状に成型した後、保温性向上と巻線コイル5との直接接触を避けるために、外面へ断熱材を巻付け巻線コイル5内へセラミック筒状体9を挿入する。これにより、従来方法でのライニング材とビレット間に挿入していたガイドプレート4が本発明によるセラミックの筒とすることでガイドプレート4を不要とすることができる。
【0010】
その他の構造は、図4に示した従来の低周波誘導加熱炉と代わりはなく、加熱炉1はこの加熱炉内に予め焼結・焼成したセラミック製の耐火材の外側に巻線コイル5を配線し、その外側に巻線水冷管6を配設し、巻線水冷管6に水供給口7から水を供給して水冷する。一方、加熱ビレット3の両端にはフラックスダイバータ8を配設し、加熱ビレット3の両端を押さえながら加熱する構造からなる。
【0011】
本発明に係るセラミック材料としては、SiC−SiO2 系が良く、そのセラミック成分としては、SiC含有量が75〜95%のものが良く、安全最高使用温度1500℃以下とした。しかも、このSiC−SiO2 系セラミック材は強固で、極めて硬く、1500℃における再加熱収縮や膨張は認められず、常温耐圧強度は49.0MPa以上を有する。また、SiC−SiO2 系セラミック材は熱伝導率が高いので、温度差がつきににく、熱膨張率が小さいので熱衝撃抵抗性が他のセラミック材料に比較して大きい特性を持っている。ただ、低周波誘導加熱炉としての耐火材として、安全最高使用温度1500℃を得るものであれば、特に、このセラミック材料に限定するものではない。
【0012】
上記セラミック筒状体の製造として、例えばSiC−SiO2 系セラミック材の場合、SiCの粒度の最大径を3〜4mmとした粒度配合を行ったものに、所定の耐熱温度を得られるようなSiO2 を主成分としたガラスを生成するようにSiO2 および金属酸化物を調合したものを添加し混練後、所定の寸法に成形を行い、約1400℃で焼成を行い、使用する筒状体の寸法としては、外径130〜250mm、厚さ8〜15mm、長さ500〜1500mmである。
【0013】
上述したようなセラミック材料を用いて、そのセラミック材料をセラミック筒状体に成形した後、焼成して安全最高使用温度1500℃以下のセラミック筒状体を得る。このセラミック筒状体を、従来から使用していた加熱炉インダクションヒータのコイル内側に塗っていた耐火材からなるライニング材2と加熱ビレット3間にSUS製のガイドプレート4を挿入した構造を剥がし、保温性向上と巻線コイル5との直接接触を避けるために、外面へ断熱材を巻付け巻線コイル5内へセラミック筒状体9を挿入した。そのセラミック筒状体を使用した結果を図3に示す。
【0014】
図3は、製品外面疵の発生率を示す図である。この図に示すように、製品外面疵の発生率は従来方法での製品外面疵の発生率7.03%に対し、本発明の場合は5.93%と低く、本発明により製品外面疵の発生率の低下を図ることが分かる。これにより製品の歩留り向上、生産性の向上を図ることが可能となった。
【0015】
上述したように、従来方法では、耐火材の補修が頻繁に行われるため、それによる補修コスト・労力がかかっていた。補修を行うかどうかの判定は、作業者が目視点検で行う。点検時に耐火材が約φ50以上剥離・損傷している場合は耐火材の全面補修、約φ50未満剥離・損傷している場合は部分補修を行う。全面補修周期は、従来方法では1台あたり1回/3ケ月かかっているので、本発明では1回/2年へと延長される。
【0016】
一方、耐火材の剥離・損傷により、破片がビレットへ付着し、押出製品に悪影響を及ぼしていた。さらには、ガイドプレートの溶損により、破片がビレットへ付着し、押出製品に悪影響を及ぼし、その結果、図3に示すような製品外面疵の発生の原因となっていた。これに対し、本発明を実施することにより、補修コストの低減と製品外面疵の発生率の低下により、製品の歩留り向上、生産性の向上を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る低周波誘導加熱炉を示す図である。
【図2】本発明に係るセラミック単体を示す図である。
【図3】製品外面疵の発生率を示す図である。
【図4】従来のライニング材を使用した低周波誘導加熱炉を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 加熱炉
2 ライニング材
3 加熱ビレット
4 ガイドプレート
5 巻線コイル
6 巻線水冷管
7 水供給口
8 フラックスダイバータ
9 セラミック筒状体


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間押出用ビレットを加熱するための加熱炉において、加熱炉インダクションヒータ内にセラミックス製の耐火材を配設することを特徴とする熱間押出用加熱炉。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス耐火材として、SiC−SiO2 系セラミックス材であることを特徴とする熱間押出用加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−7791(P2008−7791A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176042(P2006−176042)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【出願人】(000143617)株式会社黒松電機製作所 (3)
【Fターム(参考)】