説明

熱電対付きウエハ、ウエハ支持ピン、ウエハ支持構造

【課題】温度調整作業の簡便化に寄与する熱電対付きウエハを提供する。
【解決手段】この発明の熱電対付きウエハ10は、ウエハ11の一方面に一対の素線13,14の一端同士を接合した感温部13が固定され、ウエハ11の反対面に一対の素線13,14の他端がそれぞれ接続される一対の電極板15,16が設けられる。そして、一対の電極板15,16に対応してウエハ11に一対のスルホール111、112が設けられ、各素線の他端が各スルホール111、112を通して電極板15、16に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱電対付きウエハ、ウエハ支持ピン、ウエハ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱処理装置は、図3に示すように、熱処理装置内に設置された石英チューブ101内にウエハを収容し、赤外線ランプ102などの加熱手段によりウエハを加熱するように構成される。このような熱処理装置では、熱処理に適したウエハの表面温度が決まっており、加熱手段の出力をその適正な温度に合わせて調節する必要がある。このため、図3に示すように、熱電対付きウエハ200を石英チューブ101内に入れて実際のウエハの表面温度を測定し加熱手段の出力を調整する作業(以下、温度調整作業と称する。)を実施している。温度調整作業が終わると、熱電対付きウエハ200は石英チューブ101の取り出し口101Aを通じて取り出され、未処理のウエハに交換され、調整済みの加熱手段の出力に基づいて熱処理が行われる。取り出し口101Aは蓋103により開閉される。
【0003】
熱電対付きウエハ200は、ウエハ基体201および熱電対を備える。熱電対は、素線203,204を接合した感温部202がウエハ基体201に埋め込まれたものである。素線203,204の他端は、図示しない計測器に接続される。温度調整作業を行う際は、このように長い素線203,204が接続された熱電対付きウエハ200を、石英チューブ101内にセットし、素線203,204を石英チューブ101外に逃がしながら蓋103を閉じる。この作業では、素線203,204が絡まったり、蓋103がきちんと閉まる素線203,204の逃がし位置を誤ると素線が切れたり、石英チューブ101内の気密性が損なわれたりするので、素線の取り扱いが煩雑で不便であった。このため、温度調整作業が非常に手間であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−77041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、温度調整作業の簡便化に寄与する熱電対付きウエハ、ウエハ支持ピン、ウエハ支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の熱電対付きウエハは、ウエハの一方面に一対の素線の一端同士を接合した感温部が固定され、ウエハの反対面に前記一対の素線の他端がそれぞれ接続される一対の電極板が設けられる。そして、一対の電極板に対応して前記ウエハに一対のスルホールが設けられ、前記各素線の他端が該各スルホールを通して前記電極板に接続される。
【0007】
この熱電対付きウエハの構成によると、ウエハの面内領域に熱電対の主要な要素がコンパクトに収まる。また、ウエハの反対面に素線が出ないので、フィンガーで持ち上げてウエハを搬送する際に素線がフィンガーに絡まるおそれがない。したがって、熱電対付きウエハの取り扱いが簡便となる。
【0008】
そして、この発明のウエハ支持ピンは、ウエハを支持するウエハ支持ピンであって、チューブ状に形成されたピン本体に、熱電対用の補償導線が挿通されている。
【0009】
このウエハ支持ピンの構成によると、前記熱電対付きウエハから測定器までの間が補償導線で中継され、補償導線はウエハ支持ピンのピン本体内に挿通される。このため、補償導線が絡まることがない。
【0010】
また、この発明のウエハ支持構造は、上記熱電対付きウエハと、2つの上記ウエハ支持ピンと、を備え、前記ウエハ支持ピンを、その先端が同一水平面に位置するように配置し、前記補償導線が前記電極板と接触するように支持する。
【0011】
このウエハ支持構造によると、ウエハ支持ピンに熱電対付きウエハを支持すれば、電極板を介して熱電対の素線と補償導線が導通し、ウエハ表面温度の測定が可能となる。よって、温度調整作業が簡便となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、熱電対付きウエハの取り扱いが簡便となる。また、この発明によれば、温度調整作業が簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係るウエハ支持構造を示す概略斜視図である。
【図2】図1のウエハ支持部を示す断面図である。
【図3】従来の温度調整作業を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、この発明の実施の形態に係るウエハ支持構造を説明する。ウエハ支持構造は、図1に示すように熱電対付きウエハ10、およびウエハ支持ピン21,22,23を備える。熱電対付きウエハ10は、ウエハ11、素線13,14および電極板15,16を備える。
【0015】
図1に示すように、円盤形のウエハ11の上面(一方面)には熱電対の感温部12が固定される。感温部12は、一対の素線13,14の一端同士を接合した接点部分である。本実施の形態では、感温部12はウエハ11の上面の中心部にU字ピン17を用いて固定されている。なお、U字ピンのような固定具を使用しなくても、例えばセメントなどで接着してもよい。
【0016】
また、ウエハ11の反対面(図では下面)に、一対の電極板15,16が配設される。電極板15,16は、例えば、耐熱性の接着材を用いて取付けられる。本実施の形態では、図2に示すように、ウエハ11の下面の周縁に、電極板15,16の厚みを考慮した凹部113,114を形成しておき、この凹部113,114に電極板15,16を収容している。これによれば、電極板15,16がウエハ11の下面から出っ張らないので、フィンガーで熱電対付きウエハ10を持ち上げる際にフィンガーが電極板15,16に引っかかることがない。
【0017】
電極板15,16の素材は、各々に素線13,14又は後に説明する補償導線と同一であることが望ましく、所要の耐熱性や検温精度を有することが求められる。
【0018】
電極板15,16は、後述するウエハ支持ピン21,22,23によりウエハ11を安定して支持出来るように、間隔を離して配置するのが望ましく、図1に示すように、中心角が120度となるように3点支持する配置とするのが望ましい。
【0019】
一対の電極板15,16に対応してウエハ11に一対のスルホール111,112が設けられる。各素線13,14の他端は、各スルホール111,112を通して電極板15,16に接続される。この接続は、例えば、ワイヤボンディングや溶接などで行われる。なお、スルホール111,112の径は、素線13,14と接しない程度の大きさをもつものとする。
【0020】
なお、本実施の形態の熱電対付きウエハ10では、ウエハ11に設けられる熱電対が1つの場合を説明したが、複数の熱電対を備える構成としても構わない。例えば、ウエハ11の表面温度をきめ細かく測定したいときは、複数の熱電対の感温部がウエハ11の面内領域に分散配置される。
【0021】
素線13,14としては、900℃以上の高温下で使用されるRタイプ熱電対と呼ばれるものを好適に使用出来る。しかし、Rタイプ熱電対は、ウエハ11の素材であるシリコンと反応するので、図2に示すように、素線13,14はウエハ11に接しないように配線する(図2参照。)ことが望ましい。なお、素線13,14を保護管に収めて保護管とともに配線しても良い。
【0022】
上記の熱電対付きウエハ10の構成によると、ウエハ11の面内領域に熱電対の主要な要素がコンパクトに収まる。また、ウエハ11の下面に素線13,14が出ないので、フィンガーで持ち上げてウエハ11を搬送する際に素線13,14がフィンガーに絡まるおそれがない。したがって、熱電対付きウエハ10の取り扱いが簡便となる。
【0023】
また、高価な貴金属製の素線13,14を短く出来るため、材料コストの削減が可能である。
【0024】
ウエハ支持ピン21,22,23は、例えば、図1に示すように、リング状の支持部材20に支持される。ウエハ支持ピン21,22,23は支持部材20と一体に形成しても良いし、別々に形成して後で支持部材20に取付けるようにしても良い。支持部材20は耐熱性を有する材料で作製される。本実施の形態では、3つのウエハ支持ピン21,22,23は支持部材20の円周から中心に向けて120度の中心角で放射状に配置される。これにより、最小のピン本数で安定してウエハ11を支持出来る。
【0025】
このうち、2本のウエハ支持ピン21,22は、チューブ状に形成されたピン本体211,221に、熱電対用の補償導線24,25が挿通された構成である。ピン本体211,221は、先端部が直角に折り曲げられたL字形を呈する。このようなピン本体211,221は、耐熱性の素材、例えば金属製又は石英製の先細のチューブを曲げ加工して作製することが出来る。
【0026】
補償導線24,25の一端は、図2に示すように、ピン本体211,221の先端から若干の長さ分が露出されており、各々電極15,16に当接して電気的に導通するようにされている。また、補償導線24,25の一端に、平面状をなす電極板(「補償導線側電極板」と呼ぶ)を各々取り付け、補償導線側電極板が水平をなすように下側からウエハ支持ピン211,221により支持されるようにし、電極15,16側の各々と補償導線24,25側の各々との接触面積を確保するようにしてもよい。
【0027】
残りの1本のウエハ支持ピン23は、熱電対の接続に使用するものではないので、内部に空洞を有さない棒状のピン本体のみで構成することが可能である。ただし、部品管理を容易にするため、このウエハ支持ピン23として、上記ウエハ支持ピン21,22と同様のチューブ状のピン本体と同一のものを共通で使用しても良い。
【0028】
なお、ウエハ支持ピンの本数は3つに限られず、4本以上でウエハを支持する構成としても良い。この場合、すべてのウエハ支持ピンにチューブ状のピン本体を使用するのが好ましい。なぜなら、熱電対付きウエハ10に熱電対及び電極板が増設されたときでも、増えた分の電極板に対応するウエハ支持ピンのピン本体に補償導線を挿通することにより、複数のポイントでの表面温度計測に容易に対応出来るからである。
【0029】
ウエハ支持ピン21〜23は先端部が鉛直上方を指し、かつその先端が同一水平面を構成するように配設される。これにより、ウエハ支持ピン21〜23に3点支持にて熱電対付きウエハ10を安定して支持出来る。
【0030】
ウエハ支持ピン21〜23に、熱電対付きウエハ10を載置する際、ピン本体の先端から露出する補償導線24,25の一端に電極板15,16が接触するように支持する。これにより、素線13,14と補償導線24,25が電極板15,16を介して導通される。電極板15,16の面積は補償導線24,25の線径に比べるとかなり大きいので位置合わせをシビアに行わなくても、導通が損なわれることはない。
【0031】
本実施の形態によるウエハ支持構造によると、ウエハ支持ピン21〜23に熱電対付きウエハ10を支持すれば、電極板15,16を介して熱電対の素線13,14と補償導線24,25が導通し、ウエハ表面温度の測定が可能となる。よって、温度調整作業が簡便となる。
【0032】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、この発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
10−熱電対付きウエハ
11−ウエハ
12−感温部
13,14−素線
15,16−電極板
21,22−ウエハ支持ピン
211,221−ピン本体
24,25−補償導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの一方面に一対の素線の一端同士を接合した感温部が固定され、ウエハの反対面に前記一対の素線の他端がそれぞれ接続される一対の電極板が設けられ、該一対の電極板に対応して前記ウエハに一対のスルホールが設けられ、前記各素線の他端が該各スルホールを通して前記電極板に接続される熱電対付きウエハ。
【請求項2】
ウエハを支持するウエハ支持ピンであって、
チューブ状に形成されたピン本体に、熱電対用の補償導線が挿通されたウエハ支持ピン。
【請求項3】
請求項1に記載の熱電対付きウエハと、
一対の請求項2に記載のウエハ支持ピンと、
を備え、
前記ウエハ支持ピンを、その先端が同一水平面に位置するように配置し、前記補償導線が前記電極と接触するように前記ウエハ支持ピン上に前記熱電対付きウエハを支持するウエハ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−222259(P2012−222259A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88761(P2011−88761)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】