説明

熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法

【課題】 乾燥のばらつきを抑制し、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥することができる熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法を得る。
【解決手段】 熱風循環式オートラック乾燥機は、被印刷物を乾燥させるための熱風乾燥部を備えており、熱風乾燥部は、複数のユニットで構成され、各ユニット内は、上領域と下領域とで構成され、各ユニットは、熱源と、ファンと、一対の第1の規制プレートとを備え、各第1の規制プレートは、上領域内において内側縁部が熱源の側面部に取り付けられると共に外側縁部がユニットの内壁と離間された本体プレート部と、本体プレート部の外側縁部からユニットの内壁に沿って下領域内まで伸びた伸長プレート部とでそれぞれ構成され、熱源を加熱させると共にファンを回転駆動させることにより生じた熱風が各第1の規制プレートに規制されながら、上領域側から下領域側へ流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法に関するものであり、特に、印刷紙などの被印刷物の乾燥に適用可能な熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、種々の乾燥機が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
【特許文献1】特開平3−288709号公報
【特許文献2】特開平5−208728号公報
【特許文献3】特開平6−055123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の熱風循環式オートラック乾燥機は、乾燥機の熱風乾燥部内の熱風の循環が不均一であるため、その結果、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥することが困難であった。
【0004】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、乾燥のばらつきを抑制し、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥することができる熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被印刷物を乾燥させるための熱風循環式オートラック乾燥機であって、前記熱風循環式オートラック乾燥機は、前記被印刷物を乾燥させるための熱風乾燥部を備えており、前記熱風乾燥部は、前記被印刷物の移動方向に沿って配置された複数のユニットで構成され、前記各ユニット内は、上領域と下領域とで構成されており、前記各ユニットは、前記上領域内の中央に配置された熱源と、前記熱源の上方に設けられたファンと、前記被印刷物の移動方向に沿って伸び、前記熱源の各側面部に取り付けられた一対の第1の規制プレートとを備え、前記各第1の規制プレートは、前記上領域内において内側縁部が前記熱源の側面部に取り付けられると共に外側縁部が前記ユニットの内壁と離間された本体プレート部と、前記本体プレート部の前記外側縁部から前記ユニットの内壁に沿って前記下領域内まで伸びた伸長プレート部とでそれぞれ構成されており、前記熱源を加熱させると共に前記ファンを回転駆動させることにより生じた熱風が前記各第1の規制プレートに規制されながら、前記上領域側から前記下領域側へ流れることを特徴とする熱風循環式オートラック乾燥機を提供する。
【0006】
また、前記本体プレート部は、前記内側縁部から前記熱源の側面に沿って起立した起立部分と、該起立部分から前記外側縁部まで伸びた傾斜部分とで構成することができる。また、前記伸長プレート部には、通気部分が少なくとも一つ形成することができる。
【0007】
また、前記各ユニットの前記上領域内には、前記熱源、前記ファン及び前記各第1の規制プレートを覆い被さるように配置されたフードを更に備えることができる。また、前記フードは、前記被印刷物の移動方向に沿って伸び、前記被印刷物の移動方向に対して直交する平面内において横断面が逆U字状に形成することができる。
【0008】
また、前記各ユニットは、前記下領域に、前記第1の規制プレートに規制されながら前記上領域側から前記下領域側へ流れた熱風をユニット内の前記被印刷物の下側へ流すための第2の規制手段を備えることができる。
【0009】
さらに、本発明は、請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載の熱風循環式オートラック乾燥機を用いて、被印刷物を乾燥させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乾燥のばらつきを抑制し、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機及びこれを用いた乾燥方法を実施するための最良の形態について図面を参照しながら述べる。図1には、本発明にかかる、印刷紙などの被印刷物を乾燥させるための熱風循環式オートラック乾燥機の概略図を示し、図2には、その縦断面図を示し、図3には、図2で示す線A−Aで切った横断面図を示している。図1及び図2に示すように、本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機1は、印刷紙などの被印刷物を乾燥させるための熱風乾燥部10を上部分に備えた、いわゆるウィケットコンベア型であり、乾燥機1の長手方向の両端側にそれぞれ設けられたスプロケット2に巻回されたコンベアチェーン3が乾燥機1の長手方向に対して直交する幅方向(図2において紙面に対して直交する方向)に並列配置され、この各コンベアチェーン3の外周に、一定間隔で配置された複数のリーフ4が取り付けられており、コンベアチェーン3をモータ等の図示しない駆動手段によって駆動させることにより、各リーフ4が乾燥機1の本体内を、該乾燥機1の設置面に対して垂直な平面内で反転されて循環移動(搬送)されるようになっている。このリーフ4には、グリッパー(図3及び5において符号4aで示す)が設けられており、このグリッパーによって印刷紙などの被印刷物の基端部が把持された状態でリーフ4上に被印刷物100が載せられるようになっている。なお、図3には、グリッパー4aによって印刷紙などの被印刷物の基端部が把持された状態でリーフ4上に載せられた被印刷物100を二点鎖線で示している。
【0012】
熱風循環式オートラック乾燥機1には、その上流側に印刷機(図示せず)が配置されていると共に、その下流側である乾燥機1と印刷機との間にスタッカー(図示せず)が配置されている。熱風循環式オートラック乾燥機1の上流側に配置された印刷機で印刷された被印刷物(図5において符号100で示す)は、印刷機から熱風循環式オートラック乾燥機1の投入部5に搬送され、該投入部5においてリーフ4のグリッパー4aによって被印刷物100の基端部が把持された状態でリーフ4上に載せられる。そして、各リーフ4に保持された被印刷物100は、乾燥機1の上部分の熱風乾燥部10を循環される間に熱風乾燥され、反転部6で反転された後、乾燥機1の下部分を循環される間に冷却される。そして、投入部5の下方位置においてリーフ4のグリッパー(図5において符号4aで示す)が開くことにより被印刷物100の基端部の把持が解除され、その後、被印刷物100は、乾燥機1と印刷機(図示せず)との間に配置されたスタッカー(図示せず)に順次集積される。
【0013】
上述の熱風乾燥部10は、熱風乾燥部10内における被印刷物の移動方向(図2において符号7で示す矢印の方向)に沿って配置された複数のユニット8で構成されており、図示のものは9つのユニット8で構成されている。図3及び図4に示すように、各ユニット8内は、上領域20と下領域21とで構成されている。各ユニット8は、上領域20内の中央に配置された熱源22と、上領域20内においてこの熱源22の上方に設けられたファン23と、熱風乾燥部10内における被印刷物の移動方向(図3において紙面に対して直交する方向)に沿って伸び、熱源22の各側面部に取り付けられた一対の第1の規制プレート24とを備えている。
【0014】
ユニット8内の上領域20と下領域21とを区切る位置には、1つ以上の支持フレーム部材25がユニット8の左内壁と右内壁との間を伸びて各内壁に取り付けられており、この支持フレーム25上に熱源22の基部22aが取り付けられることによって、熱源22が上領域20内の中央に配置されている。ファン23は、熱源22の上方に配置されるように、上領域20内においてユニット8の天井内壁に回転駆動可能に取り付けられている。
【0015】
一対の第1の規制プレート24は、上領域20内において内側縁部26が熱源22の基部22aの側面部に取り付けられると共に外側縁部27がユニット8の内壁と所定の距離だけ離間された本体プレート部30と、本体プレート部30の外側縁部27からユニット8の内壁に沿って下領域21内まで伸びた伸長プレート部31とでそれぞれ構成されている。
【0016】
本体プレート部30は、内側縁部26から熱源22の側面に沿って起立した起立部分30aと、該起立部分30aから外側縁部27まで伸びた傾斜部分30bとで構成されており、図示の傾斜部分30bは、起立部分30aから所定の長さ分だけ平行に伸びた後外側縁部27まで下方に傾斜する形状になっている。一方、伸長プレート部31には、通気部分31aが少なくとも一つ形成されている。図示の伸長プレート部31は、熱風乾燥部10内における被印刷物の移動方向(図3において紙面に対して直交する方向)に沿って形成されたスリット状の通気部分31aを有しているため、伸長プレート部31がこの通気部分31aによって分割されており、伸長プレート部31の分割された一方の下部分は、ユニット8の内壁と所定の距離だけ離間された状態でユニット8の内壁に適宜の手段によって取り付けられている。
【0017】
また、各ユニット8の上領域20内には、熱源22、ファン23及び一対の第1の規制プレート24を覆い被さるように配置されたフード40が設けられている。このフード40は、熱風乾燥部10内における被印刷物の移動方向(図2において符号7で示す矢印の方向)に沿って伸び、この被印刷物の移動方向に対して直交する平面内において横断面が逆U字状に形成されており、ほぼ上領域20内全域に存在している。フード40の両端部は、各第1の規制プレート24の本体プレート部30の外側縁部27とユニット8の内壁との間で、ユニット8の内壁にまたはその近傍に配置されている。
【0018】
各ユニット8の各内壁には、下領域21内において一対の第2の規制手段50が取り付けられている。この一対の第2の規制手段50は、後述するように、第1の規制プレート24に規制されながら上領域20側から下領域21側へ流れた熱風をユニット8内の被印刷物100の下側へ流すことができるように傾斜してユニット8の内壁にそれぞれ取り付けられている。
【0019】
次に、上記実施の形態の動作について説明する。熱源22を加熱させると共にファン23を回転駆動させることにより生じた熱風は、上領域21内において各第1の規制プレート24の本体プレート部30及びフード40に規制され、そして、各第1の規制プレート24の伸長プレート部31とユニット8の内壁とに案内されながら上領域20側から下領域21側へ流れる。そして、上領域20側から下領域21側へ流れた熱風は、伸長プレート部31の下方に位置する第2の規制手段50によって、ユニット8内の被印刷物100の下側へ流れ込み、この被印刷物100の下側へ流れ込んだ熱風は、上方に向かって流れ、熱源22を通って上領域20内へ流れ込むようになっている。この熱風の循環によって、印刷紙などの被印刷物100を均一にかつ良好に乾燥させることができる。
【0020】
ここで従来の熱風循環式オートラック乾燥機における被印刷物の乾燥状態と本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機における被印刷物の乾燥状態を比較してみた。図5には、グリッパー4aによって基端部が把持された状態でリーフ4上に載せられた被印刷物100を示している。図5において紙面に対して直交する方向が、熱風乾燥部10内における被印刷物の移動方向(図2において符号7で示す矢印の方向)である。また、図5に示す被印刷物100の6つの領域(左上領域61、中上領域62、右上領域63、左下領域64、中下領域65、右下領域66)における熱風による温度で本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機における被印刷物の乾燥状態を検討した。検討条件は、熱風乾燥部10内の設定温度を80℃、コンベアチェーン3の速度を24mm/s、ファン23の回転数を1800rpm、サンプリング時間を10秒とした。図6は、そのときの検討結果のグラフである。図6に示すように、熱風乾燥部10内を循環搬送されながら熱風乾燥される被印刷物は、熱風乾燥部10の出口付近では、被印刷物100の6つの領域における温度差が10度以内に安定していることがわかる。これは、乾燥機の熱風乾燥部10内の熱風の循環が均一であることを意味しており、乾燥のばらつきを抑制し、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥していることを意味する。一方、図7には、従来の熱風循環式オートラック乾燥機における被印刷物の乾燥状態を示している。検討条件は本発明における検討条件と同じであるが、被印刷物100の4つの領域(中上領域62、左下領域64、中下領域65、右下領域66)における温度で検討した。図7に示すように、熱風乾燥部10内を循環搬送されながら熱風乾燥される被印刷物は、熱風乾燥部10内の出口付近になっても、被印刷物100の4つの領域における温度差にばらつきがあり、安定していないことがわかる。これは、乾燥機の熱風乾燥部10内の熱風の循環が不均一であることを意味している。この乾燥状態の比較により、本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機は、従来の熱風循環式オートラック乾燥機に比べて、乾燥機の熱風乾燥部10内の熱風の循環が均一であり、乾燥のばらつきを抑制し、印刷紙などの被印刷物を均一にかつ良好に乾燥することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明にかかる熱風循環式オートラック乾燥機の実施の形態を示す概略図である。
【図2】図2は、上記実施の形態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2で示す線A−Aで切った横断面図である。
【図4】図4は、上記実施の形態を示す部分斜視図である。
【図5】図5は、上記実施の形態に適用可能な被印刷物図である。
【図6】図6は、上記実施の形態における被印刷物の乾燥状態を示すグラフである。
【図7】図7は、従来の熱風循環式オートラック乾燥機における被印刷物の乾燥状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 熱風循環式オートラック乾燥機
2 スプロケット
3 コンベアチェーン
4 リーフ
4a グリッパー
5 投入部
6 反転部
8 ユニット
10 熱風乾燥部
20 上領域
21 下領域
22 熱源
22a 基部
23 ファン
24 第1の規制プレート
25 支持フレーム部材
26 内側縁部
27 外側縁部
30 本体プレート部
30a 起立部分
30b 傾斜部分
31 伸長プレート部
31a 通気部分
40 フード
50 第2の規制手段
61 左上領域
62 中上領域
63 右上領域
64 左下領域
65 中下領域
66 右下領域
100 被印刷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を乾燥させるための熱風循環式オートラック乾燥機であって、
前記熱風循環式オートラック乾燥機は、前記被印刷物を乾燥させるための熱風乾燥部を備えており、
前記熱風乾燥部は、前記被印刷物の移動方向に沿って配置された複数のユニットで構成され、
前記各ユニット内は、上領域と下領域とで構成されており、
前記各ユニットは、前記上領域内の中央に配置された熱源と、前記熱源の上方に設けられたファンと、前記被印刷物の移動方向に沿って伸び、前記熱源の各側面部に取り付けられた一対の第1の規制プレートとを備え、
前記各第1の規制プレートは、
前記上領域内において内側縁部が前記熱源の側面部に取り付けられると共に外側縁部が前記ユニットの内壁と離間された本体プレート部と、
前記本体プレート部の前記外側縁部から前記ユニットの内壁に沿って前記下領域内まで伸びた伸長プレート部とでそれぞれ構成されており、
前記熱源を加熱させると共に前記ファンを回転駆動させることにより生じた熱風が前記各第1の規制プレートに規制されながら、前記上領域側から前記下領域側へ流れることを特徴とする熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項2】
前記本体プレート部は、前記内側縁部から前記熱源の側面に沿って起立した起立部分と、該起立部分から前記外側縁部まで伸びた傾斜部分とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項3】
前記伸長プレート部には、通気部分が少なくとも一つ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項4】
前記各ユニットの前記上領域内には、前記熱源、前記ファン及び前記各第1の規制プレートを覆い被さるように配置されたフードを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載の熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項5】
前記フードは、前記被印刷物の移動方向に沿って伸び、前記被印刷物の移動方向に対して直交する平面内において横断面が逆U字状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項6】
前記各ユニットは、前記下領域に、前記第1の規制プレートに規制されながら前記上領域側から前記下領域側へ流れた熱風をユニット内の前記被印刷物の下側へ流すための第2の規制手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載の熱風循環式オートラック乾燥機。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一つに記載の熱風循環式オートラック乾燥機を用いて、被印刷物を乾燥させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−60256(P2010−60256A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229516(P2008−229516)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(392021344)株式会社桜井グラフィックシステムズ (15)
【Fターム(参考)】