説明

燃料ポンプアセンブリ

【課題】ブラシキャップの下端を空洞内に挿入する際に、空洞の壁に亀裂又は実質的なへこみ及び塑性変形が確実に生じないブラシキャップを提供する。
【解決手段】液体ポンプ10は、コミュテータ36と、ブラシ32と、が設けられた電気モータと、電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリ12と、外殻16と、外殻16により支持されるキャップ30と、ブラシキャップ34と、を有する。キャップ30の内部には各ブラシのためのブラシ通路58が形成され、各ブラシ通路には一以上の壁により画定される空洞62,64が設けられる。ブラシキャップ34には、締まりばめにより空洞内に収容された端部が設けられ、ブラシキャップの端部は、外径が空洞の直径よりも大きく、強度がブラシキャップの端部が空洞内に挿入されたときに空洞の壁に大きな塑性変形を生じさせずに変形する強度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年2月4日に出願された米国仮出願番号61/439,818及び2012年1月27日に出願された米国出願番号13/360,294の優先権の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に盛り込まれる。
【0002】
本発明は電気モータを有する液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
電気モータにより駆動されるポンプは種々の液体を送るために用いられる。いくつかの自動車関連の応用において、電気モータにより駆動されるポンプを用いて燃料タンクから燃料を汲み上げ圧力をかけてエンジンに送る。そのような応用において、自動車内でポンプが原因で生じる電気的干渉を抑制するために無線周波数妨害回路が用いられる。無線周波数妨害回路は、燃料ポンプモータに電力を供給する電気回路と電気的に接続したアセンブリ内に収容される。
【発明の概要】
【0004】
液体ポンプは、電気モータと、該電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、を有する。電気モータは、コミュテータと、該コミュテータと接続した一以上のブラシと、を有する。燃料ポンプの外殻は、少なくとも電気モータの一部及びポンピングアセンブリを囲む。外殻にはキャップが設けられ、キャップの内部には各ブラシ用に形成されたブラシ通路が設けられている。各ブラシ通路は少なくとも一つの壁により画定された空洞を有する。ブラシキャップは締まりばめにより前記空洞内に収容される端部を有する。ブラシキャップの端部の外径は前記空洞の直径よりも大きい。またブラシキャップの端部の強度は、該端部が前記空洞内に取り付けられる際に該空洞の壁に大きな塑性変形が生じないよう変形する強度を有する。
【0005】
燃料ポンプアセンブリは、コミュータ及び該コミュータと接続した一以上のブラシが設けられた電気モータと、前記電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、を有する。電気モータの少なくとも一部とポンピングアセンブリが外殻により囲まれる。この外殻により支持されるキャップには、該キャップの内部に形成された各ブラシ用のブラシ通路と、一以上の外向きに伸びるタブと、が設けられている。キャップに結合された無線周波数妨害(RFI)ボディには一以上の指状部が設けられ、該指状部には、RFIボディがキャップに取り付けられたときに該キャップのタブを収容する開口が設けられている。このキャップのタブは組立体において指状部の一部に押し付けられて組立体においてRFIボディをキャップに保持する。
【0006】
少なくとも一形態において、液体ポンプは、コミュータ及び該コミュータと接続した一以上のブラシが設けられた電気モータと、該電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、を有する。電気モータの少なくとも一部とポンピングアセンブリが外殻により囲まれる。この外殻により支持されるキャップには該キャップの内部に形成された各ブラシ用のブラシ通路が設けられ、該ブラシ通路は少なくとも一つの壁により画定された空洞を有する。キャップには前記空洞のうちの一つと連通する開口がさらに設けられている。ブラシキャップは、前記空洞内に収容された端部を有し、電力を受け取ってこの電力をブラシに供給する。さらにアース用のストラップが設けられ、このアース用のストラップは、前記キャップの開口内に伸びて、該開口に関連する前記空洞内に収容されたブラシキャップと係合する。またアース用のストラップは、外殻まで伸びて、ブラシキャップと外殻とを相互接続する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例に基づく液体ポンプの側面図である。
【図2】図1の液体ポンプの上面図である。
【図3】液体ポンプの断面図である。
【図4】液体ポンプの上側キャップに結合された無線周波数妨害(RFI)ボディの部分断面図である。
【図5】RFIボディの一部と上側キャップの断片的な断面図であり、ブラシキャップを示す。
【図6】上側ボディの一部、及びブラシキャップと液体ポンプの外殻とを相互接続するアース用部品を描写する断片的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施例の詳細を添付の図面を参照して記載する。
【0009】
図1−3は液体ポンプ10を示す。液体ポンプ10には、電気モータ14により駆動されて回転するタービン式ポンプアセンブリ又はインペラポンプアセンブリ12(図3)を有する。当然ながら、例えば容積移送式ポンプアセンブリなどの他の種類のポンプアセンブリを用いてもよい。ポンプ10は、任意の適切な液体、本明細書においては自動車用燃料、を送るために用いられる。本実施例では、ポンプ10を自動車燃料システムに利用して、燃料を加圧して自動車のエンジンに提供する。
【0010】
図3に示すように、モータ14及び関連する構成要素は従来の構造のものでもよく、外殻16によって少なくとも部分的に囲まれる。ポンプアセンブリ12も外殻16によって少なくとも部分的に囲まれてもよく、モータ14の出力軸18がインペラ22と結合することによりインペラ22が回転軸24の周りで回転駆動する。
【0011】
外殻16は、ポンプで送られる液体に使用するのに適した任意の材料で形成される。自動車の燃料ポンプの応用において外殻16は典型的に金属から形成される。外殻16は外殻の下端で上側ポンプボディ26及び下側ポンプボディ28と係合して、上側ポンプボディ26及び下側ポンプボディ28を軸方向及び径方向に保持する。上側ポンプボディ26及び下側ポンプボディ28はインペラ22と共同してポンピングアセンブリを画定する。インペラ22がモータにより回転すると、液体が流入口のなかに流れ、加圧された状態で出口から排出される。本実施例では、出口から排出された加圧された燃料は外殻16内でモータの周囲を流れる。外殻16はその軸方向上端でポンプキャップ30と結合する。ポンプキャップ30はブラシ32、ブラシキャップ34及びブラシを受けるコミュテータ36を囲んで覆う。
【0012】
図3に示すように、ポンプキャップ30は外殻16から軸方向に伸び、外向きに伸びるリング又はフランジ38を有してもよい。外殻16はフランジ38の周りに曲げられ又は巻かれ、あるいはキャップをしっかりと保持するよう形成されてもよい。外殻16をキャップ30の周りに形成することを容易にするために、外殻16のフランジ38の周りの領域の厚さを減少させてもよい。厚さが減少した領域には径方向に伸びる肩部40を設けてもよく、この肩部40に対してフランジ38が配置されることによってキャップ30の軸方向位置が外殻16に対して正確に確実に保持される。キャップ30の下端42はフランジ38の軸方向下側に伸び又はフランジ38を超えて伸びてもよく、これによりキャップ30と外殻16の間の結合がより安定する。
【0013】
キャップ30はフランジ38から伸びる環状の外側壁44を有していてもよく、燃料が外側壁44を介して外側に流れないよう外側壁44は軸方向に伸び且つ周方向に連続している。キャップ30には、減少した直径を有する上側部分46が設けられていてもよく、該上側部分46はキャップの上面48につながる。径方向内側に伸びる肩部50を上側部分への移行位置に設けてもよい。一以上の留め具又はタブ52を、キャップ30の上側部分46から径方向外側に全体的に伸びるよう設けてもよい。各タブ52に傾斜面54を設けてもよく、この傾斜面54は、タブの上面48に最も近い端部においてタブの径方向の寸法が最小となるよう(そして全体的に滑らかに上側部分の側壁と一体化するよう)且つタブの上面から最も遠い端部において上側部分46から外向きに最も遠くまで伸びるよう、径方向に傾斜している。そのような構成によってタブ52の下端に径方向に伸びる停止面56が設けられる。好ましくは、複数の周方向に間隔をあけて配置されたタブ52がキャップ30上に設けられ、これらのタブは軸方向に対して並んで配置されてもよい(即ちこれらのタブはキャップに沿って同じ高さに配置される)。
【0014】
一以上のブラシ通路58をキャップ30内に形成してもよい。示される実施形態では、二個のブラシ通路58がキャップ30内に形成され、各ブラシ通路は全体的に円筒状且つ環状の内壁60により部分的に画定される。ブラシ通路58は、全体的に円筒状であり、メインボア62と、ブラシ通路58の上端付近にカウンターボア64として形成され得る空洞と、を有する。メインボア62からカウンターボア64への移行部分には径方向に伸びる環状の肩部66が形成され、肩部66は各カウンターボア64の軸方向に伸びる側壁68につながる。図4に最も明確に示すように、開口70を、少なくとも一つのカウンターボア64と連通するよう設けてもよい。キャップ30は外殻16の上端を完全に覆うように設けられてもよく、この場合燃料はキャップに形成された主流体出口路72を通ってポンプ10から排出される。図1及び3に示すように主流体出口路72はとげのある外周を有してもよく、これにより該外周への液体ホースの固定が容易となる。キャップ30は、ポンプで送られる液体に対する使用に適した種々の重合体を含む任意の適切な材料から形成されてもよい。
【0015】
組立体において、モータ用のブラシ32がブラシ通路58内に配置されコミュテータ36と接触するよう付勢される。分路線74がブラシ32からカウンターボア64の領域を通って全体的に軸方向に伸びる。各分路線74は、ブラシと反対側の端部において、分離して設けられたブラシキャップ34と電気接続する。
【0016】
各ブラシキャップ34は金属から形成され、各分路線74に半田付け又は接続されてもよい。分路線74をブラシキャップ34に接続することを容易にするために、各ブラシキャップ34に開口78を有する比較的狭い上端76を設けてもよい。この開口78内で半田又は他のコネクタを分路線と連通させることにより分路線74をブラシキャップ34に結合してもよい。狭い上端76は拡張中間部80につながり、拡張中間部80はさらに拡張した拡張下端82につながり、これによりブラシキャップ34に階段状の側壁が形成される。各ブラシキャップ34の下端の寸法は、カウンターボア64内で所望の固定及び保持が達成されるよう設計され、以下により詳しく記載する。ブラシキャップが対応する各カウンターボア内に完全に取り付けられたときに、ブラシキャップの底縁が肩部66と係合するよう構成される。
【0017】
第二ボディ84をキャップ30(第一ボディ)に結合してもよい。第二ボディ84は、ブラシキャップとモータの電気回路の他部品と電気的に接続したRFI回路(図示せず)を収容してもよい。本明細書では第二ボディ84をRFIボディと呼ぶ。RFIボディ84に側壁86と複数の指状部88とを設けてもよい。図1−5に示すように、各指状部88は、指状部の下端92から軸方向に間隔をあけて設けられた開口90を有してもよい。一つの指状部88は、キャップ30上の各タブ52のために設けられ、各タブ52と並ぶように配置されている。好ましくは、指状部88の径方向内側面間の距離は、タブ52の最外部分間の最大距離よりも小さい。即ち、RFIボディ84をキャップ30上に固定するためには、指状部88の下端92が軸方向に動くにつれタブ52を超えてタブ52が指状部88の開口90内に収容されるまで、指状部88が外側に曲がらなければならない。この後に、指状部88を構成する材料の弾力性によって指状部88がその通常の曲がっていない状態に戻ることにより、各指状部88の下端92がタブ52の停止面56よりも軸方向下側となるとともに停止面56と径方向に重なる。これにより、指状部88がタブ52から十分外側に離されない限り、RFIボディ84がキャップ30から外れることが防止される。このようにして、同様の樹脂部品同士の結合に従来使用されている超音波溶接などの溶接を必要とすることなく、RFIボディ84が確実に機械的にキャップ30に結合される。本実施例では独立した指状部が間隔をあけて設けられているものの、RFIボディは、代替的に、タブと並んだ開口を有する全体的に連続した側壁又は裾部を有していてもよい。
【0018】
また、RFIボディに留め具又はタブを設け、キャップ30にRFIボディの留め具を収容する穴を設けてもよい。つまり留め具又はタブ及び関連する開口又は穴の位置は逆でもよく、あるいはRFIボディ及びキャップはそれぞれ留め具又はタブ及び開口又は穴を混合して有してもよい。留め具及びタブは、互いに接合する機械的接続構造を有する。このようにして、RFIボディ及びキャップは共同して一以上の相互接合する対又はセットを有し(即ちセットとは、一以上の留め具と留め具を収容する一以上の穴とを指す)、これによりRFIボディとキャップがスナップ式固定によって結合される。
【0019】
RFIボディ84に、組立体においてキャップの上面48上に横たわり且つ支えられてもよい径方向に伸びる表面94を設けてもよい。さらに、RFIボディ84に、組立体においてキャップ30のブラシ通路58と並ぶ一対のブラシキャップ通路96を設けてもよい。また、別個の型打ち金属製リング98を、各ブラシキャップ通路96内に圧入又は配置してもよい。各リング98は環状に形成されてもよく、ブラシキャップ通路96内に圧入又は成形された径方向外側に伸びたフランジを有してもよい。リングに軸方向に伸びた部分を設けてもよく、この軸方向に伸びた部分の内径は、ブラシキャップ34の中間部分80(又は他の近接部分)の上に配置又は圧入されるよう設計された寸法を有する。示される実施形態において、各ブラシキャップ34は少なくとも部分的に別個の各ブラシキャップ96内に伸びるとともにリング98と係合する。このようにして、リング98は、ブラシ32と主端子100(図1及び2)間の電気流路の一部を形成し、電力はリング98を介して電気モータに供給される。カバー102をブラシキャップ通路96の上端内に嵌めてもよく、これにより通路58、96内への混入物質の進入が抑制又は防止される。
【0020】
図1−3に示すように、ブラシキャップ34は全体的に薄い壁であり且つ内部が空洞の金属部品でもよい。各ブラシキャップ34の拡張下端82は、全体的に環状でもよく、キャップ30のカウンターボア64内に圧入又は配置されてもよい。一実施形態において、ブラシキャップ34の下端82はカウンターボア64内に圧入されることにより接着剤又は他のコネクタ/接続要素を用いることなく摩擦によってカウンターボア64内に保持される。より確実にブラシキャップ34をキャップ30内に摩擦によって保持するために、ブラシキャップ34の下端の外径はカウンターボア64の内径よりも大きく形成される。したがって、ブラシキャップ34の下端がカウンターボア64内に挿入されると、ブラシキャップ34及びカウンターボア64の壁のうちの一つ又は両方が曲がり又は変形して、ブラシキャップ34の大きな外径を有する下端が収容される。カウンターボア64の領域内でのキャップ30の壁68の強度は、キャップ30を構成する材料の種類及び壁68の厚さに関係する。ブラシキャップ34の下端82の強度は材料の種類と厚さに関係する。
【0021】
カウンターボア64内にブラシキャップ34を挿入するために必要な力(挿入力)は、1)カウンターボアの壁68の強度の関数(壁の剛性及び厚さの関数)、2)ブラシキャップ34の下端82の強度の関数(材料の強度及び厚さの関数)、及び3)ブラシキャップの外径とカウンターボアの直径の寸法の差(この差が大きいほどブラシキャップの挿入に必要な力が大きい)の関数である。この挿入力は、ブラシキャップの下端に圧縮力を生じさせるとともに、カウンターボアの壁に拡張力を生じさせてカウンターボアを拡大させる。もし、カウンターボア内にブラシキャップを挿入するのに必要な力が過度に大きい場合、カウンターボアの壁が大きくへこむ、塑性変形する又は裂ける。もし、カウンターボア内にブラシキャップを挿入するのに必要な力が過度に小さい場合、カウンターボア内にブラシキャップを保持する力が比較的小さくなる。
【0022】
所定の厚さ及び強度を有する壁により与えられた寸法のカウンターボアを有するキャップにおいて、もし、ブラシキャップの強度が過度に大きくブラシキャップの下端が曲げ若しくは変形に対して非常に強い耐性を有する場合又はブラシキャップの下端の強度がカウンターボアに対して過度に大きい場合、ブラシキャップの挿入に必要とされる比較的大きな力によって、カウンターボアの壁に好ましくない塑性変形又は割れ、あるいは破損が生じる。反対に、ブラシキャップの下端の強度が過度に弱く形成された場合又はブラシキャップの下端が過度に小さい場合、ブラシキャップの挿入がかなり緩くなり、カウンターボアから外れてブラシキャップをカウンターボア内に保持する力が比較的小さくなる。つまり、摩擦による保持が不十分となり、燃料ポンプの使用中にブラシキャップ34、分路線74及びブラシ32を確実に連続的に相互接続できなくなる。
【0023】
したがって、少なくとも一つの実施形態において、ブラシキャップの下端をカウンターボア内に挿入する際に、カウンターボアの壁に亀裂又は実質的なへこみ及び塑性変形が確実に生じないよう、十分小さな挿入力でブラシキャップの下端がへこむ又は塑性変形するよう、ブラシキャップの下端が設計されている。つまり、ブラシキャップの外径とカウンターボアの内径の寸法の差、及びブラシキャップの下端の強度及び変形に対する耐性は、カウンターボア内にブラシキャップを挿入するのに必要な力が、カウンターボアの壁の弾性限界より小さく且つブラシキャップの塑性限界より大きくなるよう、選択される。キャップを構成する材料の弾性力は、ブラシキャップに対して内向きに作用するとともにブラシキャップをカウンターボア内に保持する反作用を与える。塑性変形によりカウンターボアの寸法と合致するブラシキャップを用いることにより、部品の寸法の許容な誤差及びばらつきを考慮に入れても、カウンターボアの壁に与えられる最大の力は制限され、壁68がへこまず又は破損せずに持ちこたえられる最大の力より小さくなるよう維持される。
【0024】
このような構成により、望ましいことに、容易に伸長、ストレッチ又は圧縮を生じることのない、また本明細書に記載したような締まりばめを用いたときに亀裂又は破損を生じる傾向がある比較的堅いプラスチック材料を用いることが可能となる。このような亀裂又は破損は、ブラシキャップがプラスチック部品内に挿入されたときに生じる傾向がある。これらの材料を用いた場合、挿入されたブラシキャップの外径はカウンターボアの内径とより厳密に一致し、この理由は、カウンターボアの拡張が比較的小さくても、ブラシキャップに作用してブラシキャップを保持する反作用の力が比較的大きいからである。剛性がより小さなより延性のある材料を用いた場合、ブラシキャップの外径はカウンターボアよりもいくぶん大きくなければならず、これにより挿入に必要な十分な力が確保されるとともに、カウンターボアからブラシキャップに作用しブラシキャップを保持するための十分な反作用の力が確保される。
【0025】
一実施形態において、ブラシキャップ34の下端82の外径は、カウンターボア64又はブラシキャップの下端が収容される他の孔の内径より2%から5%大きい。ブラシキャップの変形が生じると、この接続点における最大の接触(interference)は、プラスチック部品30を構成する材料の伸び限界よりも大きく設計することができる。加えて、プラスチック部品の壁の厚さは、挿入されたブラシキャップに十分な応力を生じさせるのに十分な厚さでなければならず、これによりブラシキャップの挿入後に外径の寸法の変更を助けて正味の寸法がプラスチック部品の亀裂又は破損が生じ得る寸法よりも小さくすることができる。例えば、伸び限界が2%であるプラスチック材料において、ブラシキャップ34の下端82は、キャップ30を大きく塑性変形させることなくカウンターボア64(又は他の孔)の内径より2%よりも大きい。これにより、ブラシキャップ34とキャップ30の接続を保持するよう、キャップ30の弾性変形及び結果として得られるブラシキャップ34の圧縮力が維持される。一形態において、プラスチックは、Chevron Phillips Chemical Companyから販売されているXTEL(登録商標)プラスチックでもよく、高温を用いる応用に使用可能で且つ伸び限界が約2%である堅いプラスチックでもよい。ブラシキャップは真ちゅうから形成されてもよく、ブラシキャップの壁の厚さは約0.5mmでもよい。
【0026】
図3、4及び6に示すように、ブラシキャップ36と外殻16又他の適切な電気接地部品との間に伸びる接地素子104を設けてもよい。液体ポンプ10及び/又は該液体ポンプ10の外殻16は、したがってポンプと接続した又はポンプを収容する他の部品を介して接地されてもよい。液体ポンプ10の接地は、自動車燃料を汲みあげるポンプなどの特定の応用において望ましい。
【0027】
接地素子104は金属製のワイヤ又はストラップでもよい。ストラップ104は柔軟性と弾力性を有してもよく、液体ポンプ10内の隣接した部品の周囲又は間に配線又は収容される。示される実施形態において、ストラップ104の第一端106は、隣接するブラシ通路58を画定する内壁60を介して、キャップ30内に形成された開口70内に収容される。ストラップ104の第一端106は、屈曲して又は角を有してもよく、これにより、キャップ30の上端46の内面及び内壁60と摩擦により係合する。このような構成により、キャップ30を外殻16上に取り付ける際にストラップ104がキャップ30から分離せずにキャップ30上に保持されることを助ける。また、屈曲した第一端106は、ストラップ104が開口70内に十分伸びて隣接するブラシキャップ34上に係合し且つのしかかることを助ける。つまり、屈曲した第一端106はバネの様な効果を与え、これによりストラップ104の一部を付勢して外側壁44から遠ざけるとともにブラシキャップ34に近づけて係合させる。ストラップ104は外側壁44と内壁60の間に伸びてもよく(あるいは、一方若しくは両方の壁にスロットを設けてもよく、又は壁の間に間隙を設けてもよい)、さらにストラップ104の第二端108が外殻16と係合しているキャップ30の下端42の周囲に伸びてもよい。
【0028】
上記したように、示される実施形態において、ストラップ104の少なくとも一部が外殻16と係合する。この実施形態では、ストラップ104はキャップ30の下端42の周囲で曲がって下端42の外面に沿ってフランジ38まで伸びる。図6に最も明確に示すように、組立体においてストラップ104の第二端108の部分はフランジ38と外殻16上に形成された肩部との間に伸びて閉じ込められてもよい。このようにすることで、ストラップ104と外殻16の係合が確保されポンプ10の耐用年数にわたって維持される。当然ながら、ストラップ104は肩部40から離れた位置、例えばフランジ38の下側の外殻16とキャップ30の下端42の間の領域(図面上の位置であって、当然ながらポンプは異なる方向に向けられてもよい)で外殻16と係合してもよい。
【0029】
接地ストラップ104は安価で製造が容易な任意の形状及び寸法のワイヤでもよい。一形態ではストラップは断面が四角形でもよい。ストラップ104は組み立てが容易であり、一度取り付けられるとその位置を維持する。ストラップはキャップ30内に形成又は一体化して成形されてなくともよい。その代わり、ストラップは、取り付けの前段階で予め形成されても又は曲げられてもよく、取り付け中にまずキャップ30の下端42の周囲に収容された後に、単純に、ストラップ104の第一端106が外側壁44と内壁60との間から開口70内に挿入されてもよい。ストラップは他の部品や接着剤などの助けを必要とせずにこの取り付けられた位置に維持される。また、ストラップ104は、ポンプ内部の端子組立体などの回路の別の部分又は他の部分に組み込まれる必要もない。これにより、インサート成型ストラップ又は回路の他の部分に物理的に汲み込まれたストラップと比べて、他のポンプ部品及びその組立体の製造が容易になる。
【0030】
ストラップ104は、外殻16にブラシキャップ34を電気接続することに加え、ポンプ10の放出されたRFIの痕跡の正味の量を改善し、これによりポンプのモータと他の部品との干渉が低減される。さらに、接地ストラップ104により外殻16の正味の電位が下がることで静電気が外殻又はポンプの外装に蓄積されることが回避される。最後に、開示された接地配置は、外殻16の極性を負の極性に変える。極性が負の場合、少なくとも自動車用燃料などの特定の液体(例えば、無鉛燃料又はエタノール系燃料)において、外殻16の浸食の速度は、極性が負でない場合に比べて大幅に遅くなる。
【0031】
本明細書に開示される本発明の形態は好ましい実施形態であるが、他の多くの形態も可能である。本明細書は、本発明の可能な等価又は修正された形態を全て記載することは意図していない。本明細書で使用される用語は単に説明のためのものであり、限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。「上側」、「下側」、「径方向」及び「軸方向」などの関連用語は、単に説明を目的として使用され、参照する図面に示された装置の向きを参照して記載される。装置は他の向きでも使用することができ、その場合、関連用語は正確ではないがその方向を記述する他の関連用語に置き換えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コミュテータと、該コミュテータと接続した一以上のブラシと、が設けられた電気モータと、
前記電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、
前記電気モータの少なくとも一部及び前記ポンピングアセンブリを囲む外殻と、
前記外殻により支持されるキャップと、
ブラシキャップと、
を有する液体ポンプであって、
前記キャップの内部には各ブラシのためのブラシ通路が形成され、
前記各ブラシ通路には一以上の壁により画定される空洞が設けられ、
前記ブラシキャップには、締まりばめにより前記空洞内に収容された端部が設けられ、
前記ブラシキャップの端部は、外径が前記空洞の直径よりも大きく、強度が前記ブラシキャップの端部が前記空洞内に挿入されたときに前記空洞の壁に大きな塑性変形を生じさせずに変形する強度である
ことを特徴とする液体ポンプ。
【請求項2】
前記ブラシキャップの外径が、前記空洞の内径よりも、前記空洞が形成された材料の伸び限界を上回る量だけ大きいことを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項3】
前記空洞が形成された材料の伸び限界が2%以下であり、前記ブラシキャップの外径が、前記空洞の内径よりも2%を上回る量だけ大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体ポンプ。
【請求項4】
前記空洞に収容された前記ブラシキャップの端部が塑性変形していることを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項5】
前記キャップがプラスチックで構成され、前記ブラシキャップが金属で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項6】
前記キャップには、一以上の機械接続構造と、該キャップに結合された無線周波数妨害ボディと、が設けられ、
前記無線周波数妨害ボディには、前記キャップの機械接続構造と接合するよう構成された一以上の機械接続構造が設けられ、これにより前記無線周波数妨害ボディが前記キャップに組み付けられたときに前記無線周波数妨害ボディが前記キャップとスナップ式に接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項7】
前記無線周波数妨害ボディには、前記キャップに前記無線周波数妨害ボディが結合されたときに前記ブラシキャップと係合する金属製部品が設けられ、これにより前記金属製部品が前記ブラシキャップと電気接続することを特徴とする請求項6に記載の液体ポンプ。
【請求項8】
前記液体ポンプには接地ストラップがさらに設けられ、
前記接地ストラップは、前記キャップ内の開口内に伸びて前記ブラシキャップと係合するとともに前記外殻に伸びて前記ブラシキャップと前記外殻を電気接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体ポンプ。
【請求項9】
コミュテータと、該コミュテータと接続した一以上のブラシと、が設けられた電気モータと、
前記電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、
前記電気モータの少なくとも一部及び前記ポンピングアセンブリを囲む外殻と、
前記外殻により支持されるキャップと、
前記キャップに結合された無線周波数妨害ボディと、
を有する液体ポンプアセンブリであって、
前記キャップの内部には各ブラシのためのブラシ通路が形成され、
前記キャップには、一以上の機械接続構造設けられ、
前記無線周波数妨害ボディには、前記キャップの機械接続構造と接合するよう構成された一以上の機械接続構造が設けられ、これにより前記無線周波数妨害ボディが前記キャップに組み付けられたときに、組立体において前記無線周波数妨害ボディが前記キャップに保持される
ことを特徴とする液体ポンプアセンブリ。
【請求項10】
前記キャップの機械接続構造は、径方向に傾斜した面が設けられた一以上の外向きに伸びるタブを有し、
前記無線周波数妨害ボディは、内部に開口が設けられた指状部を有し、
前記タブは、前記指状部の開口が前記タブを通過して該タブが前記開口内に収容されて前記無線周波数妨害ボディが前記キャップに結合されるときに、前記指状部が径方向外側に動くよう構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体ポンプアセンブリ。
【請求項11】
前記キャップには、前記ブラシと電気接続したブラシキャップが設けられ、
前記無線周波数妨害ボディには、該無線周波数妨害ボディが前記キャップに結合されたときに前記ブラシキャップと係合する金属製部品が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体ポンプアセンブリ。
【請求項12】
前記金属製部品は、形状が環状であり、前記ブラシキャップの少なくとも一部を囲むよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載の液体ポンプアセンブリ。
【請求項13】
前記液体ポンプアセンブリが接地ストラップをさらに有し、
前記接地ストラップは、前記金属製部品及び前記ブラシキャップのうちの少なくとも一つと、前記外殻と、と係合するよう構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体ポンプアセンブリ。
【請求項14】
コミュテータと、該コミュテータと接続した一以上のブラシと、が設けられた電気モータと、
前記電気モータにより駆動されるポンピングアセンブリと、
前記電気モータの少なくとも一部及び前記ポンピングアセンブリを囲む外殻と、
前記外殻により支持されるキャップと、
ブラシキャップと、
接地ストラップと、
を有する液体ポンプであって、
前記キャップには、開口と、該キャップの内部に形成された各ブラシのためのブラシ通路と、が設けられ、
前記各ブラシ通路は一以上の壁により画定される空洞を有し、該空洞のうちの一つが前記キャップの開口と連通し、
前記ブラシキャップには、前記空洞内に収容された端部が設けられ、
前記ブラシキャップは電力を受け取って該電力を前記ブラシに供給するよう構成され、
前記接地ストラップは、前記キャップの開口内に伸びて該開口と関連する前記空洞内に収容された前記ブラシキャップと係合するとともに、前記外殻まで伸びて前記ブラシキャップと前記外殻を電気接続するよう構成されている
ことを特徴とする液体ポンプ。
【請求項15】
前記接地ストラップは、前記接地ストラップの第一端に隣接する前記ブラシキャップと係合し、該第一端は前記キャップとも係合しており、
前記接地ストラップの第一端が曲げられており、これにより前記接地ストラップの一部を付勢して前記キャップから遠ざけるとともに前記ブラシキャップと係合させるよう構成されている
することを特徴とする請求項14に記載の液体ポンプ。
【請求項16】
前記接地ストラップの一部が前記キャップと前記外殻との間に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の液体ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−165637(P2012−165637A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21433(P2012−21433)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(502429154)ティーアイ グループ オートモーティヴ システムズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (39)
【Fターム(参考)】