説明

燃料噴射器固定具

【課題】粉末金属技術を利用する燃料噴射器固定具の形成法を提供する。
【解決手段】重量百分率で、炭素0.6〜0.9%と、銅1.5〜3.9%と、鉄93.2〜97.9%と、他の元素である残部とを含有する粉末金属材料を成形型内で7.0〜7.1g/cm3の密度に圧密化しかつ温度816〜871℃(1500〜1600°F)で予備焼結して、粉末金属ブランクが形成される。潤滑材により粉末金属ブランクに潤滑性を付与し、少なくとも密度7.3g/cm3に再圧密化した後、温度1121℃(2050°F)で焼結して、最終粉末金属ブランクが形成される。燃料噴射器固定具自体は、ほぼ円筒状の中央部と、中央部から横方向に延伸する第1の翼部と、角度180°だけ第1の翼部から離間して中央部から横方向に延伸する第2の翼部とを有する粉末金属の単一構造体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射器固定具の形成方法、特に、燃料噴射器固定具自体に粉末金属処理法を使用する燃料噴射器固定具の形成方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及び他の内燃機関(エンジン)の燃料噴射器は、燃料噴射器固定具(クランプ、留具又は締具)と呼ばれる取付装置により適所に保持される場合が多い。鋼材鍛造又は焼き流し精密鋳造法(インベストメント鋳造法)により燃料噴射器固定具を製造でき、適切な粉末金属からも同様に製造される燃料噴射器固定具もある。燃料噴射器固定具は、応力印加中に、燃料噴射器を適切に保持しかつ封着できる十分な強度と剛性とを備えなければならない。
【0003】
信頼できる燃料噴射器固定具は、応力又は荷重の印加時に変形可能な構造を備えることが望ましい。燃料噴射器固定具は、損傷も亀裂も発生せずに、弾性限度内で変形できることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、粉末金属法を使用する改良された燃料噴射器固定具の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的は、粉末金属により形成される改良された燃料噴射器固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
粉末金属技術を使用する燃料噴射器固定具の製造方法を提供する。この製造方法は、重量百分率で、炭素0.6〜0.9%と、銅1.5〜3.9%と、鉄93.2〜97.9%と、他の元素である残部とを含有する粉末金属材料を準備する工程を含む粉末金属技術を使用する。成形型(金型)内で密度7.0〜7.1g/cm3に粉末金属材料を圧密化し、その後、温度816〜871℃(1500〜1600°F)で予備焼結して、粉末金属ブランク(半製品)が形成される。次に、粉末金属ブランクは、適切な潤滑材で被覆される。
【0007】
続いて、潤滑材で被覆した粉末金属ブランクを少なくとも密度7.3g/cm3に再圧密化し、その後、温度約1121℃(約2050°F)で焼結して、最終粉末金属ブランクは、燃料噴射器固定具の所望の形状に成形される。
【0008】
圧密化焼結粉末金属により構成される燃料噴射器固定具が提供される。燃料噴射器固定具自体は、中央開口部を形成したほぼ円筒状の中央部を有する単一構造体を有する。第1の翼部は、中央部から横方向に延伸し、第2の翼部は、角度180°だけ第1の翼部から離間して中央部本体から横方向に延伸する。燃料噴射器固定具の中央部は、下面と、中央部と第1の翼部との交差部に隣接して中央部の下面から下方に延伸する第1の支持縁とを備える。第2の支持縁は、中央部と第2の翼部との交差部に隣接して中央部の下面から下方に延伸する。中央部の下面は、第1の支持縁及び第2の支持縁の下端より下方に延伸する。
【0009】
燃料噴射器固定具の第1の翼部と第2の翼部に下方への荷重が加えられると、第1の支持縁と第2の支持縁は、中央部の下面に形成される平面よりも下方に弾性的(弾性をもって)に移動する。第1の支持縁と第2の支持縁は、燃料噴射器の支持体の上面を押圧して、支持体の移動を抑制し、燃料噴射器を内燃機関の適所に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態による燃料噴射器固定具の斜視図
【図2】燃料噴射器固定具に燃料噴射器を装着した本発明の第1の実施の形態による燃料噴射器固定具の側面図
【図3】燃料噴射器を内部に装着した燃料噴射器固定具に下方荷重が加えられた状態を示す本発明の第1の実施の形態による燃料噴射器固定具の側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
粉末冶金技術を使用する燃料噴射器固定具形成方法を提供する。この形成方法は、重量百分率で、炭素0.6〜0.9%と、銅1.5〜3.9%と、鉄93.2〜97.9%と、他の元素である残部とを含有する粉末金属材料を準備する工程を含む。成形型内で粉末金属材料を密度7.0〜7.1g/cm3に圧密化して、燃料噴射器固定具のブランク(半製品)を形成する。次に、圧密化したブランクを温度816〜871℃(1500〜1600°F)で15分間予備焼結し、粉末金属ブランクを形成する。続いて、エチレンビステアラミド(EBS、Ethylene Bi-Stearamide)ワックス等の適切な潤滑材で粉末金属ブランクを被覆する。潤滑材で被覆した粉末金属ブランクを少なくとも密度7.3g/cm3に再圧密化した後、温度約1121℃(約2050°F)で10〜30分間焼結して、最終粉末金属ブランクが形成される。最終粉末金属ブランクは、少なくとも2%の永久歪みも生じずに撓む弾性、柔軟性、延性及び伸びを有する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態による燃料噴射器固定具10を示す。燃料噴射器固定具10は、上記方法により製造される粉末金属により構成される。燃料噴射器固定具10は、軸方向に貫通する開口部を有するほぼ円筒状の中央部14を備える。中央部14は、下面16を有する。
【0013】
第1の翼部18は、中央部14から横方向に延伸し、垂直方向に貫通する軸孔22が第1の翼部18に形成される。また、燃料噴射器固定具10は、角度180°で第1の翼部18から離間して中央部14から横方向に延伸する第2の翼部20を有する。垂直方向に貫通する軸孔24が第2の翼部20にも形成される。
【0014】
更に、中央部14は、下面16と、第1の翼部18と中央部14との交差部に隣接しかつ下面16の一部に沿って下方に延伸する第1の支持縁26とを有する。第2の支持縁28は、第2の翼部20と中央部14との交差部に隣接しかつ下面16の一部に沿って下方に延伸する。
【0015】
図2及び図3に示すように、燃料噴射器30は、燃料噴射器固定具20の中央部14に形成される開口部内に嵌合される。燃料噴射器30は、ほぼ円筒状の下部片32と、ほぼ円筒状の上部片34と、下部片32と上部片34との間に配置される支持体36とにより構成されるほぼ円筒状の細長い構造を備える。燃料噴射器固定具10の中央部14に形成される開口部内には燃料噴射器30の上部片34が嵌合される。
【0016】
燃料噴射器固定具10の第1の翼部18及び第2の翼部20に対し下方荷重が加わらない図2に示す無荷重状態では、燃料噴射器30の支持体36の上面38に燃料噴射器固定具10の中央部14の下部21が接触する。従って、無荷重状態では、第1の支持縁26及び第2の支持縁28は、燃料噴射器30の支持体36の上面38に接触しない。燃料噴射器固定具10の第1の翼部18と第2の翼部20に対し下方荷重が加えられる図3に示す荷重状態では、燃料噴射器固定具10が弾性的に変形し、第1の支持縁26及び第2の支持縁28は、下方に移動して、燃料噴射器支持体36の上面38に接触し又は当接して係止される。下方荷重により燃料噴射器固定具10が弾性的に変形して、約10,000〜23,300N(2250〜5250lbs)の下方荷重が加わると、第1の支持縁26と第2の支持縁28は、それぞれ下方に約0.63〜1.0mm(0.024〜0.040in)の距離移動する。
【符号の説明】
【0017】
(10)・・燃料噴射器固定具、 (14)・・中央部、 (16)・・下面、 (18)・・第1の翼部、 (20)・・第2の翼部、 (26)・・第1の支持縁、 (28)・・第2の支持縁、 (30)・・燃料噴射器、 (38)・・上面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量百分率で、炭素0.6〜0.9%と、銅1.5〜3.9%と、鉄93.2〜97.9%と、他の元素である残部とを含有する粉末金属装入材を準備する工程と、
成形型内で粉末金属装入材を7.0〜7.1g/cm3の密度に一体圧密化し、その後、温度816〜871℃(1500〜1600°F)で予備焼結して、粉末金属ブランクを形成する工程と、
粉末金属ブランクを適切な潤滑材により被覆する工程と、
潤滑材で被覆した粉末金属ブランクを少なくとも密度7.3g/cm3に再圧密化し、その後、温度約1121℃(約2050°F)で焼結して、最終粉末金属ブランクを形成する工程とを含み、
最終粉末金属ブランクは、少なくとも2%の永久歪みを発生しない延性及び伸びを有することを特徴とする燃料噴射器固定具の形成方法。
【請求項2】
温度816〜871℃(1500〜1600°F)で10分間予備焼結する工程を含む請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
温度約1121℃(約2050°F)で10〜30分間焼結する工程を含む請求項1に記載の形成方法。
【請求項4】
エチレンビステアラミド(EBS)ワックスの群から潤滑材を選択する工程を含む請求項1に記載の形成方法。
【請求項5】
重量百分率で、炭素0.6〜0.9%と、銅1.5〜3.9%と、鉄93.2〜97.9%と、他の元素である残部とを含有し、少なくとも密度7.3g/cm3を有する圧密化され焼結された粉末金属により構成され、中央開口部を有するほぼ円筒状の中央部と、中央部から横方向に延伸する第1の翼部と、角度180°で第1の翼部から離間して中央部から横方向に延伸する第2の翼部とを備える単一構造体を有し、
中央部は、下面と、第1の翼部に隣接する中央部の下面から下方に延伸する第1の支持縁と、第2の翼部に隣接する中央部の下面から下方に延伸する第2の支持縁とを備え、
中央部の下面は、第1の支持縁及び第2の支持縁より下方に延伸することを特徴とする燃料噴射器固定具。
【請求項6】
燃料噴射器固定具の第1の翼部及び第2の翼部に対して下方への荷重が加えられると、第1の支持縁及び第2の支持縁は、中央部の下面に形成される平面よりも下方に移動する請求項5に記載の燃料噴射器固定具。
【請求項7】
下方への荷重は、燃料噴射器固定具の弾性限度より小さい請求項6に記載の燃料噴射器固定具。
【請求項8】
燃料噴射器固定具は、内燃機関に取り付けられ、
燃料噴射器固定具の中央部の中央開口部内に装着される燃料噴射器は、燃料噴射器固定具の中央部の下面に対向する上面を有するほぼ平坦な支持体を備え、
燃料噴射器固定具の第1の翼部と第2の翼部に下方荷重が加えられると、第1の支持縁及び第2の支持縁は、弾性的に下方に移動し、燃料噴射器の支持体の上面を抑制する請求項5に記載の燃料噴射器固定具。
【請求項9】
下方への荷重は、10,000〜23,300N(2250〜5250lbs)である請求項8に記載の燃料噴射器固定具。
【請求項10】
第1の支持縁及び第2の支持縁は、弾性的に下方に距離0.63〜1.0mm(0.024〜0.040in)を移動する請求項8に記載の燃料噴射器固定具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−57249(P2012−57249A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120418(P2011−120418)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(507012308)バージェス・ノートン・マニュファクチャリング・カンパニー・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】