説明

燃料消費量評価システム

【課題】簡単な構成にもかかわらず燃料消費量を高精度で算定することができる燃料消費量評価装置を提供することである。
【解決手段】燃料消費量評価システムは、アクセル開度を検知するアクセル開度検知部55と、エンジン駆動走行車両のエンジン回転数を測定回転数として検知する回転数検知部56と、アクセル開度別に作成された、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量と燃料噴射量の変化との相関関係に基づいて、アクセル開度と測定回転数とから所定単位あたりの燃料噴射量を算定する燃料噴射量演算手段と、この燃料噴射量演算手段によって算定された燃料噴射量に基づいて燃費評価を行う燃費評価部54を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動走行車両における走行中の燃料消費量を算定し、評価する燃料消費量評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料消費量を算定して表示する装置としては、従来から、燃料配管に流量センサを取り付けて実際の燃料の流量を測定して燃料消費量を求めるものや、燃料タンクの液面を測定して燃料消費量を求めるものが知られている。しかしながら、燃料配管での短期的な燃料流量を正確に行うための機器はコスト的に高いものとなる。また、燃料タンク内の燃料残量の測定から短期的な燃料消費をある程度の精度をもって算定すること自体が困難である。
【0003】
エンジン駆動走行車両が電子制御式のエンジンを備えている場合にはコモンレールによる燃料噴射量の指示値を通じて、あるいは電子ガバナ制御式のエンジンを備えている場合にはコントロールラックの位置検出を通じて、短期的な燃料消費量を算定することは可能である。例えば、燃料噴射制御装置による燃料噴射量に基づいて燃料消費を正確に測定して表示する技術は、特許文献1から知られており、コントロールラックの位置検出から燃料消費量を算定して表示する燃料消費量表示装置が特許文献2から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−197314号公報(段落番号〔0076〕、図1)
【特許文献2】特開2001−164981号公報(段落番号〔0007−0013〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電子制御式のエンジンや電子ガバナ制御式のエンジンでない、機械式ガバナ方式のエンジンを備えたエンジン駆動走行車両においても、効果的に燃料消費量を算定し、表示等の燃料消費量の評価を行う簡単な構成の燃料消費量評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による燃料消費量評価システムは、エンジン駆動走行車両のエンジン回転数を測定回転数として検知する回転数検知部と、アクセル開度を検知するアクセル開度検知部と、アクセル開度別に作成された、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量と燃料噴射量の変化との相関関係に基づいて、前記アクセル開度と前記測定回転数とから所定単位あたりの燃料噴射量を算定する燃料噴射量演算手段と、前記燃料噴射量演算手段によって算定された前記燃料噴射量に基づいて燃費評価を行う燃費評価部を備えている。
【0007】
本願発明は、無負荷(アイドリング運転)から最大負荷のトルク領域とエンジン回転数との関係をアクセル開度別に測定して得られた特性曲線に基づいて生成された、燃料噴射量とエンジン回転数との間の相関関係を利用することで、アクセル開度とエンジンの測定回転数とから燃料噴射量が推定できるという知見に基づくものである。
従って、予めエンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量と燃料噴射量とのアクセル開度別相関関係を構築し、燃料噴射量演算手段に設定しておけば、前記アクセル開度検知部によって検知されたアクセル開度と前記回転数検知部によって検知された測定回転数とから所定単位あたりの燃料噴射量を算定することができる。このためには、通常の走行車両においては搭載されているアクセル位置センサや回転数検出センサなどの検出信号を利用することができる。そして、この算定された燃料噴射量は、燃料消費量(以下単に燃費と略称する)という形態でモニタでの表示や音声報知といった単純な燃費評価や、予め設定されたルールに従って、エコノミカルな運転(以下単にエコ運転)が実現しているかどうかの運転評価を行うことができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記燃料噴射量演算手段は、前記アクセル開度検知部によって検知されたアクセル開度によって決定される、前記測定回転数と前記所定単位あたりの燃料噴射量との相関関係を設定する演算管理部と、前記演算管理部によって設定された相関関係に基づいて前記測定回転数から前記燃料噴射量を導出する演算実行部とを含むように構成されている。この構成では、アクセル開度毎に異なる前記測定回転数と前記所定単位あたりの燃料噴射量との相関関係は演算管理部によりアクセル開度検知部によって検知されたアクセル開度によって適切に選ばれ設定される。現状のアクセル開度に適合した相関関係が設定されると、演算実行部は設定された相関関係を用いて前記測定回転数から前記燃料噴射量を導出することができる。予めアクセル開度毎の相関関係を作成しておき、運転者による操作によってアクセル開度が調整されると、そのアクセル開度に適合した相関関係が、通常コンピュータプログラムによって構築される燃料噴射量演算手段の内部で設定され、順次入力される測定回転数から所定単位あたりの燃料噴射量が算定される。従って、予めアクセル開度毎の相関関係さえ実験的に作成しておくだけで、アクセル開度や測定回転数の検出信号さえ入力されるようにすれば、直接燃料系統に対するセンサ信号を必要とせずに、燃料消費量を算定し、その算定された燃料消費量に基づき燃費表示等の燃料消費量の評価が行われる。
【0009】
本発明の好適な実施形態として、前記演算管理部によって設定される相関関係を、前記測定回転数を入力としてエンジン一回転当たりの燃料噴射量を前記燃料噴射量として出力とするアクセル開度別関数とし、このアクセル開度別関数が所定のアクセル開度毎に前もって生成して格納されていると、好適である。前記演算管理部によって設定される相関関係がアクセル開度別関数で構成されるので、必要な精度が満たされる間隔で割り当てられたアクセル開度毎に関数、いわゆる数式をプログラム等に組み込んでおけば、検知されたアクセル開度によって用いられる関数が決定され、その関数の入力変数に測定回転数を代入して関数演算するだけで、エンジン一回転当たりの燃料噴射量が得られる。その際、その関数が一次関数であれば、その演算が簡単となるので好都合である。関数の元になる相関関係が一本の直線で表した場合に生じる誤差が無視できない場合、曲線で表す。つまり二次以上の多次関数を用いることになるが、より演算を簡単にするためには、折れ線の直線、つまり複数の領域毎に定義された一次関数の組み合わせからアクセル開度別関数を表すとよい。
【0010】
燃費評価部における、最も簡単な燃費評価形態は、単位時間当たりの燃料消費量の表示や、走行距離当たりの燃料消費量の表示、さらにはそのような燃料消費量から求めた燃費の良否レベル(エコ運転レベル)の表示である。しかしながら、この燃料消費量評価システムが搭載されるエンジン駆動走行車両がエンジン動力によって駆動する作業機を搭載した作業車両である場合、そのより好ましい燃費評価形態は、前記燃料噴射量以外に前記作業機の動作状況を燃費評価ルールの判定条件として用いて行う燃費評価である。作業機がエンジンに与える負荷が大きいときは燃費が悪化するのは当然であるので、作業機による負荷が適正であるかどうか、作業機による負荷に対して燃費が適正であるかどうかといった問いを解決する燃費評価ルールを前記燃費評価部に予め設定しておいて、このルールの結果として総合的な燃費評価を下して、表示すると、作業車両の運転者にとって有益な情報となる。
【0011】
燃費が車速と密接な関係を有することはよく知られているが、運転者はあまり燃費を車速と関連付けて判断せず、単に燃費だけの情報から運転状態を判断する傾向がある。これを避けて、常に燃費と車速を意識した運転を促すため、本発明の好適な実施形態では、前記燃費評価部による燃費評価に関する情報が、前記エンジン駆動走行車両の車速情報とともにモニタに表示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による燃料消費評価システムで採用されている燃料噴射量算定処理の原理を説明する模式図である。
【図2】本発明による車両運転評価システムを搭載したトラクタの斜視図である。
【図3】トラクタの運転部に備えられたステアリングハンドルを含む操縦パネル領域を示す俯瞰図である。
【図4】本発明による車両運転評価システムの概略機能ブロック図である。
【図5】本発明による車両運転評価システムで利用される車両制御ユニットの機能ブロック図である。
【図6】車両制御ユニットにおける制御データの流れと各機能部との関係を示す説明図である。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1を用いて、本発明による燃料消費評価システムで採用されている燃料噴射量算定処理の原理を説明する。図1の(a)は、この燃料消費評価システムの対象となる特定エンジンのエンジン性能曲線が示されている。横軸はエンジン回転数で縦軸はトルクであり、最大負荷の線はエンジン出力軸にエンジンストールを引き起こさない限りでの制動力(ブレーキ)を最大限に与えた場合のエンジン回転数とトルクの関係を示しており、無負荷の線はエンジン出力軸に負荷を与えない場合、いわゆるアイドリング運転時のエンジン回転数とトルクの関係を示している。最大負荷の線と無負荷の線との間を結んでいる線は、0%から100%までの各スロットル開度:Aにおける無負荷時回転数(アイドリング回転数)を規準としてこの状態から負荷をかけることにより低下するエンジン回転数(一般にエンジン回転数ドロップ量と呼ばれる)を示すアクセル開度別特性曲線である。
【0014】
上述した、図1の(a)に示されたエンジン性能曲線の各エンジン運転ポイントでの、トルク値の代りに、エンジン出力軸の一回転あたりの燃料噴射量を縦軸とした燃料噴射量特性曲線が図1の(b)に示されている。燃料噴射量特性曲線は、アクセル開度:A毎に、無負荷時のエンジン回転数を基準回転数として、エンジン出力軸に負荷をかけていくことにより生じるエンジン回転数ドロップ量とその際の燃料噴射量とから、作成することができる。従って、この燃料噴射量特性曲線のパラメータとしてのアクセル開度:Aが決まると、特定のアクセル開度によって規定されている1つの燃料噴射量特性曲線が特定されることになり、その燃料噴射量特性曲線を用いて、その時々のエンジン回転数に応じた一回転あたりの燃料噴射量を導出することができる。
【0015】
燃料噴射量特性曲線を用いて一回転あたりの燃料噴射量を導出することを、図1の(c)に拡大された図表を用いて例示的に説明する。ここでは、アクセルレバー等によって設定され、位置センサなどによって検出されるアクセル開度:Aが90%とする。アクセル開度:Aが90%ということが検知されると、ここでは、エンジン回転数と一回転あたりの燃料噴射量の相関関係をあらわす関数:F [90]が設定される。 []内の添え字はアクセル開度:Aを示しており、関数:F [90] はアクセル開度:Aが90%の燃料噴射量特性曲線を少なくとも近似的に示す関係式である。実用的にはこの関係式:F [A] は、対応する燃料噴射量特性曲線を少なくとも近似的に示している一次関数又は二次関数とすることが好都合であるが、本発明においてそれ以上の高次関数を排除しているわけでない。また、例えば、一次関数(直線式)を採用したとしても、定義域としてのエンジン回転数領域を複数に区分けして、それぞれの区分けされた領域毎に異なる関数(直線式)を割り当てる構成を採用してもよい。この複数の直線群、つまり折れ線によって実際の燃料噴射量特性曲線により近似させることが可能となる。
図1の(c)の説明に戻ると、関数F [90] で示されている燃料噴射量特性曲線の下端位置は、無負荷運転時であり、その運転状態でのエンジン回転数を基準回転数:Nとし、リアルタイムで検出されたエンジン回転数をnとすると、基準回転数と検出エンジン回転数の差であるドロップ量の変化と燃料噴射量の変化が、つまり基準回転数からどの程度エンジンドロップすれば燃料噴射量がどの程度変化するかを燃料噴射量特性曲線から把握することができる。つまり、検出エンジン回転数をn、一回転あたりの燃料噴射量をVとすると、この関数F [90] は次の関係式を導く。
V=F [90] (n)
これにより、検出エンジン回転数:nから燃料噴射量:Vを算定することができる。
【0016】
本発明による、上述した燃料噴射量算定処理の原理を採用した燃料消費評価システムの実施形態を用いて以下に説明する。図2はこの燃料消費評価システムを搭載したトラクタの斜視図である。図3はこのトラクタの運転部に備えられたステアリングハンドルを含む操縦パネル領域を示す俯瞰図である。このトラクタはエンジン1の出力軸10からの動力をトランスミッション2を介して駆動車輪3に伝達するとともに、トラクタ車体に装備された、耕耘作業機などの外部作業機4にもエンジン動力を伝達するものである。このエンジン1は、燃料タンク20から供給される燃料を用いた燃料噴射量を制御することでエンジン回転数を調整する回転制御器11を備えたディーゼルエンジンであり、この回転制御器11はメカ式ガバナータイプである。さらに、この回転制御器11にはエンジン回転数をマニュアル設定するためのアクセルレバー12も接続されており、このアクセルレバー12の操作位置により、アクセル開度の変更、つまりエンジン回転数の変更が行われる。
【0017】
燃料消費評価システムは、実質的には、車両搭載電子制御ユニットの1つである車両制御ユニット5に構築されている。車両制御ユニット5には、本発明に特に関係するセンサとして、アクセル開度を検出するためにアクセルレバー12の操作位置を検出するアクセル開度センサ91と、エンジン出力軸10の回転数をエンジン1の測定回転数として検出する回転数検出センサ92が接続されている。燃料消費評価システムで評価された燃費に関する情報は燃費情報として表示制御ユニット7に送られる。表示制御ユニット7は、受け取った燃費情報から適当な報知形態での報知データを生成する。この報知データが視覚的な報知である視覚化データである場合、表モニタとして機能する液晶ディスプレイを有する表示パネル70に送られ、そこでエンジン回転などとともに燃費評価情報が表示される。
【0018】
車両制御ユニット5には、本発明に特に関する機能部として、アクセル開度を検知するアクセル開度検知部55と、エンジン回転数を測定回転数として検知する回転数検知部56と、アクセル開度と測定回転数とを入力として所定単位あたりの燃料噴射量を算定する燃料噴射量演算手段50と、所定単位あたりの燃料噴射量から燃費評価を行う燃費評価部54が、ソフトウエア又はハードウエアあるいはその両方で構築されている。この実施の形態では、アクセル開度検知部55はアクセル位置センサ91からの信号に基づいて燃料噴射量に影響を及ぼすアクセル開度を検知し、回転数検知部56は回転数検出センサ92からの信号に基づいて測定回転数を検知する。また、特に燃費評価に関係する機能部として、燃料噴射量演算手段50と燃費評価部54が燃費評価モジュールとしてモジュール化されている。燃料噴射量演算手段50は、アクセル開度別に作成された、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量と燃料噴射量の変化との相関関係に基づいて、前記アクセル開度と前記測定回転数とから所定単位あたりの燃料噴射量を算定する。なお、燃料噴射量演算手段50で算定される燃料噴射量の単位としては、エンジン出力軸10の一回転が好適なものとして用いられるが、これに限定されるわけではない。
【0019】
燃料噴射量演算手段50は、アクセル開度検知部55によって検知されたアクセル開度によって、測定回転数と所定単位あたりの燃料噴射量との相関関係を決定するとともにその決定された相関関係を設定する演算管理部51と、演算管理部51によって設定された相関関係に基づいて測定回転数から一回転あたりの燃料噴射量を導出する演算実行部53とを含む。また、この実施形態では測定回転数と一回転あたりの燃料噴射量との相関関係として、測定回転数から一回転あたりの燃料噴射量を導出するアクセル開度毎に作成された関数が用いられる。従って、このアクセル開度毎に作成された関数は関数記憶部52に記憶されており、演算管理部51は使用すべき関数を特定し、その特定された関数を関数記憶部52から読み出して、演算実行部53に与える。
【0020】
燃料噴射量演算手段50によって算定された燃料噴射量から燃費評価を行う燃費評価部54が評価結果として出力する燃費情報には以下に列挙するように種々の形態がある。
(1)単位時間(例えば1時間)当たり燃料消費量(リッター)のモニタ表示情報。
その際、車両の速度(平均速度、作業時速度など)を同時に表示すると、燃費と車速の関係が理解しやすいので、表示制御ユニット7で車速情報を付加すると好適である。
(2)燃料単位量当たりの走行距離のモニタ表示情報。
(3)平均的な燃費との比較に基づいて評価された燃費優劣に応じたエコレベル表示。例えば低い燃費で運転している場合、優良エコ運転としてそのレベルに応じて、例えばニコニコマークなどを表示する。
(4)上述した燃費情報及びエコ運転情報の音声による報知。
(5)ランプ等による、燃費良否の選択的報知。
上記の燃費報知形態のいずれか、または任意の組み合わせを出力するように燃費評価部54を構成することが好ましい。例えば、トラクタの場合、使用している変速段によって道路走行中又は作業機を用いた作業中を認識することができるので、それぞれに適した表示モードのため燃費情報を選択してもよい。
【0021】
次に図6を用いて、上述した燃料消費量評価システムにおける燃費評価の仕組みを説明する。
この燃料消費量評価システムでは、図1を用いた燃料噴射量算定処理の原理説明のところで述べたような燃料噴射量特性曲線をベンチテストのような実験的な測定手法で求めておく。さらに、燃料噴射量特性曲線を構成する、各アクセル開度別の無負荷状態から最大負荷状態まで延びたアクセル開度別燃料噴射量特性曲線に近似する関数を求めて、関数記憶部52に記憶させておく(#01)。この特性曲線は直線であってもよく、また折れ線であってもよい。また、測定に用いられたアクセル開度の間隔より狭い間隔でのアクセル開度別燃料噴射量特性曲線が必要な場合は、補間法を用いて近似的に燃料噴射量特性曲線自体又は関数を生成するとよい。
実際の燃料消費量評価プロセスでは、アクセルレバーの操作位置からアクセル開度検知部55がアクセル開度:Aを決定し、演算管理部51に転送する(#02)。このアクセル開度:Aを受け取った演算管理部51は、そのアクセル開度:Aの値に適合する関数、この例ではA=90%であるので、F(90) を関数記憶部52から読み出し、演算実行部53に設定する(#03)。さらに、エンジン出力軸10の回転数である測定回転数:nを回転数検知部56が決定し、演算実行部53に転送する(#04)。演算実行部53は設定されている関数F(90) に対して測定回転数:nを与えて、式:V=F(90) (n)から一回転当たりの燃料噴射量:Vを算定し、燃費評価部54に燃費評価の判定条件として入力する(#05)。燃費評価部54には、必要に応じて一回転当たりの燃料噴射量以外に車速や変速段や作業機動作状態が判定条件として入力される。
【0022】
燃費評価部54は、一回転当たりの燃料噴射量などの条件入力に基づいて、燃費を評価し、前述したような燃費情報を生成する(#06)。生成された燃費情報がモニタ表示用であれば、その燃費情報は表示制御ユニット7に転送される(#07)。表示制御ユニット7は転送されてきた燃費情報に基づいて、適合する表示イメージを表示パネル70の液晶ディスプレイ部に表示するための表示データを生成して、送出する(#08)。図6の例では、表示パネル70に表示されるイメージは、燃費が良いほどニコニコマークが断続的に増えていく横棒とニコニコマークの組み合わせたもので、この表示により運転者の省エネ運転(エコ運転)を促すことができる。
【0023】
〔別実施の形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のような構成を採用することができる。
(1)上述した実施の形態では、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量とその際に生じる燃料噴射量の変化を測定することで作成可能な相関関係として、エンジン出力軸10の測定回転数から一回転当たりの燃料噴射量を導く測定回転数・燃料噴射量関数をエンジン開度毎に作成し、このエンジン開度別の測定回転数・燃料噴射量関数が関数記憶部52に前もって記憶されていた。このようなエンジン開度別の測定回転数・燃料噴射量関数に代えて、測定回転数とエンジン開度から一回転当たりの燃料噴射量を読み出すことができるテーブルを上記相関関係として作成し、燃料噴射量演算手段50に組み込んでもよい。つまり、この別実施形態では、関数記憶部52を、測定回転数とエンジン開度とを入力、一回転当たりの燃料噴射量を出力とするテーブルとして機能させるのである。
なお、上記相関関係を、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量とその際に生じる燃料噴射量の変化を測定することで作成する代わりに、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量とその際に生じるトルクの変化を測定することで得られるエンジン性能曲線を平行移動や回転といった調整操作をすることを通じて測定回転数と燃料噴射量との関係を表すエンジン開度別の測定回転数・燃料噴射量曲線を作成することも可能である。
(2)上述した実施の形態では、アクセル開度検知部55はアクセル位置センサ91からの信号に基づいてアクセル位置を決定していたが、アクセル位置の検出は種々の位置に設置された別なセンサからの信号に基づいてアクセル位置を決定する構成や、他のECUにおいて決定されたアクセル開度をそのままスルーして燃料噴射量演算手段50に与えるような構成を採用することも可能である。同様に、上述した実施の形態では、回転数検知部56はエンジン出力軸82の回転を検出する回転数検出センサ82からの信号に基づいて測定回転数を決定していたが、エンジン回転する検出は種々の位置に設置された別なセンサからの信号に基づいて測定回転数を決定する構成や、他のECUにおいて決定されたエンジン回転数をそのままスルーして燃料噴射量演算手段50に与えるような構成を採用することも可能である。
(3)上述した実施の形態では、燃費評価部54は、一回転当たりの燃料噴射量を条件入力として、予め設定されたルールに基づいて燃費情報を生成出力していたが、これに代えて、単純に一回転当たりの燃料噴射量を燃費情報として出力する構成とすることや、一回転当たりの燃料噴射量の経時的な挙動を、例えば統計学的に処理して、その処理結果を燃費情報として出力する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、アクセル開度の調整によって出力が制御されるエンジンを備えたエンジン駆動走行車両の燃費を算出する技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:エンジン
10:エンジン出力軸
4:作業機
5:車両制御ユニット
55:アクセル開度検知部
56:回転数検知部
7:表示制御ユニット
70:表示パネル(モニタ)
50:燃費噴射量演算手段
51:演算管理部
52:関数記憶部
53:演算実行部
54:燃費評価部
55:アクセル開度検知部
56:回転数検知部
91:アクセル位置センサ
92:回転数検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動走行車両のエンジン回転数を測定回転数として検知する回転数検知部と、
アクセル開度を検知するアクセル開度検知部と、
アクセル開度別に作成された、エンジン無負荷時のエンジン回転数である基準回転数からのエンジン回転数ドロップ量と燃料噴射量の変化との相関関係に基づいて、前記アクセル開度と前記測定回転数とから所定単位あたりの燃料噴射量を算定する燃料噴射量演算手段と、
前記燃料噴射量演算手段によって算定された前記燃料噴射量に基づいて燃費評価を行う燃費評価部と、
を備えた燃料消費量評価システム。
【請求項2】
前記燃料噴射量演算手段は、前記アクセル開度検知部によって検知されたアクセル開度によって決定される、前記測定回転数と前記所定単位あたりの燃料噴射量との相関関係を設定する演算管理部と、前記演算管理部によって設定された相関関係に基づいて前記測定回転数から前記燃料噴射量を導出する演算実行部とを含む、請求項1に記載の燃料消費量評価システム。
【請求項3】
前記演算管理部によって設定される相関関係を、前記測定回転数を入力としてエンジン一回転当たりの燃料噴射量を前記燃料噴射量として出力とするアクセル開度別関数とし、このアクセル開度別関数が所定のアクセル開度毎に前もって生成して格納されている請求項2に記載の燃料消費量評価システム。
【請求項4】
前記アクセル開度別関数は、複数の領域毎に定義された一次関数の組み合わせからなる請求項3に記載の燃料消費量評価システム。
【請求項5】
前記エンジン駆動走行車両はエンジン動力によって駆動する作業機を搭載した作業車両であり、前記燃費評価部は、前記燃料噴射量以外に前記作業機の動作状況を燃費評価ルールの判定条件として用いている請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料消費量評価システム。
【請求項6】
前記燃費評価部による燃費評価に関する情報が、前記エンジン駆動走行車両の車速情報とともにモニタに表示される請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料消費量評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−144734(P2011−144734A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5284(P2010−5284)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】