説明

燃料遮断弁

【課題】 燃料遮断弁10は、ポリエチレンから形成された燃料タンクFTに溶着されるものであり、部品点数が少なく、簡単な構成であり、しかも優れたシール性を有すること。
【解決手段】 燃料遮断弁10は、ケーシング20と、フロート50と、スプリング55とを備えている。ケーシング20は、蓋体30と、シール部形成体35と、ケーシング本体40とを備え、これらは異なった樹脂材料から形成されている。蓋体30は、タンク上壁FTaに熱溶着可能である変性ポリエチレンであり、シール部形成体35は、変性ポリエチレンに反応接着しかつ上記第1樹脂材料より耐燃料膨潤性に優れる樹脂(例えば、ポリアミド)であり、ケーシング本体40は、ポリアセタールである。ケーシング本体40は、シール部形成体35に溶着しないから、ケーシング20の一端を機械的に連結する支持手段により支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの上部に装着され、燃料タンク内と外部とを接続する接続通路を開閉する燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料遮断弁として、特許文献1などが知られており、図6に示すような構成であった。図6において、燃料遮断弁100は、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに装着されるものであり、ケーシング本体102と、蓋体110と、フロート120と、スプリング(図示省略)と、Oリング140とを備えている。ケーシング本体102は、上壁部103と、この上壁部103の外周部に一体に形成された側壁部104と、側壁部104の下端に取り付けられた底板105とを備え、その内側スペースを弁室102Sとしている。ケーシング本体102の上壁部103の中央部には、上部突出部103bが形成されている。上部突出部103bの外周側壁にはOリング140を収納するための環状凹所103cが形成され、さらにその軸心に弁室102Sに接続される接続通路103dが形成されている。
【0003】
また、上記弁室102Sには、その上部に弁部120aを有するフロート120が収納されている。この弁部120aは、上記接続通路103dを開閉するものである。フロート120は、底板105に載置されているスプリングで支持されている。
【0004】
一方、蓋体110は、ケーシング本体102に組み付けられる蓋本体112と、蓋通路形成部114と、フランジ部115とを備え、これらを一体に形成している。上記蓋本体112には、係合部112aが形成され、この係合部112aにケーシング本体102の上壁部103の被係合部103eが係合している。また、フランジ部115は、その接合端面115aで燃料タンクFTのタンク上壁FTaに熱溶着されている。
【0005】
ところで、ケーシング本体102と、蓋体110と、Oリング140で構成されている燃料遮断弁100において、一層部品点数を減少することが要請されていた。すなわち、Oリング140を使用することは、その取付作業性や耐燃料透過性(シール性)がよくないだけでなく、その部品点数が増え、コストアップの要因になっていた。
【0006】
また、他の燃料遮断弁として、特許文献2の技術が知られている。燃料遮断弁は、燃料タンクのタンク上壁に溶着される蓋体と、蓋体に一体に形成されたケーシングとを備え、ケーシングの上部が蓋体の通路の内壁まで延設されて該内壁を被覆することで、蓋体に機械的に連結して一体化している。すなわち、蓋体は、燃料タンクのタンク上壁に溶着する点を考慮してポリエチレンから、ケーシングは、摺動性などを考慮してポリアセタールやポリアミドなどから形成されている。しかし、蓋体とケーシングとを構成する樹脂材料は、互いに溶着しないことから、機械的に抜止めする構成をとっている。しかし、このような抜止めする構成とするには、複雑な金型構造をとらなければならず、製造が面倒である。また、蓋体とケーシングの間は、溶着していないことから、その間のシール性を十分に高くすることができない。
【0007】
【特許文献1】米国特許5,404,907号
【特許文献2】米国特許5,139,043号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、組付作業を簡略化させるとともに、部品点数が少なく、簡単な構成であり、しかも優れたシール性を有する燃料遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
ポリエチレンから形成された燃料タンクの上部に装着される燃料遮断弁において、
上記燃料タンクの上部に熱溶着される溶着端と、上記燃料タンクの外部に接続される蓋側通路とを有する蓋体と、
上記蓋体の下面に積層された上面部と、上記蓋側通路に接続される接続通路と、該接続通路の開口周縁に形成したシール部とを有するシール部形成体と、
上記蓋体または上記シール部形成体に支持され、上記燃料タンク内と上記接続通路とを連通する弁室を有するケーシング本体と、
上記弁室内に収納され、フロート本体と、該フロート本体の上部に形成され上記シール部に着座する弁部とを有し、上記フロート本体が上記燃料タンク内の燃料の液位に応じて昇降して上記弁部が上記シール部に着離することで上記接続通路を開閉するフロートと、
を備え、
上記蓋体、上記シール部形成体および上記ケーシング本体は、第1ないし第3樹脂材料からそれぞれ形成され、
上記第1樹脂材料は、上記燃料タンクの上部に熱溶着可能でありかつ極性官能基を有する変性ポリエチレンであり、上記第2樹脂材料は、上記変性ポリエチレンに反応接着しかつ上記第1樹脂材料より耐燃料膨潤性に優れる樹脂であり、上記第3樹脂材料は、ポリアセタールであり、
上記蓋体または上記シール部形成体は、上記ケーシング本体の一端を機械的に連結する支持手段により上記ケーシング本体を支持していること、
を特徴とする。
【0010】
本発明にかかる燃料遮断弁のケーシングは、燃料タンク内に連通する弁室を備え、この弁室内に収納されたフロートが燃料タンクの燃料液位に応じて浮力を増減して昇降する。フロートは、浮力により上昇したときに接続通路を閉じて燃料タンクから燃料が流出するのを防止する。
【0011】
また、本発明にかかるケーシングは、蓋体と、シール部形成体と、ケーシング本体とを備え、これらは異なった樹脂材料から形成されている。すなわち、蓋体は、タンク上壁に熱溶着可能である変性ポリエチレンであり、シール部形成体は、変性ポリエチレンに反応接着する樹脂であり、ケーシング本体は、ポリアセタールである。このような樹脂材料を選択することにより、蓋体は、溶着端で燃料タンクのタンク上壁に熱溶着されることで、燃料タンクの上部に装着される。また、シール部形成体を形成する第2樹脂材料は、変性ポリエチレンから形成された蓋体に反応接着するとともに、第1樹脂材料より耐燃料膨潤性に優れているので、シール部の摩耗や燃料膨潤性に伴うシール性の低下が少なく、安定した開閉特性を得ることができる。さらに、ケーシング本体は、ポリアセタールから形成されているので、耐燃料膨潤性および耐摩耗性に優れているから、フロートを安定して摺動させることができる。
【0012】
このように、蓋体とシール部形成体とを互いに反応接着する樹脂材料を用いて一体成形したので、従来の技術で説明した構成と比べて、Oリングなどのシール部材が不要となり、部品点数を減らすことができる。
【0013】
また、ケーシング本体を形成するポリアセタールは、蓋体を形成する変性ポリエチレンおよびシール部形成体を形成する樹脂に溶着しないので、ケーシング本体は、蓋体またはシール部形成体に対して、支持手段によって機械的にこれを堅固かつ簡単に連結している。
【0014】
本発明の好適な態様として、支持手段は、シール部形成体または蓋体のいずれか一方の支持部から、ケーシング本体の側壁から突設された被支持部に係合する手段をとることができる。
【0015】
さらに、本発明の好適な態様として、支持手段の一方を、シール部形成体の下端から突設された支持部で構成する場合には、第2樹脂材料は、第1樹脂材料より機械的強度に優れた樹脂材料により形成することが好ましい。この構成により、支持部は、ケーシング本体を堅固に支持することができる。また、第2樹脂材料として、第1樹脂材料より耐燃料膨潤性に優れた性質に加えて、耐燃料透過性にも優れた性質を有する材料で形成することが好ましい。この構成によれば、蓋体の下面に積層されたシール部形成体が蓋体の第1樹脂材料より耐燃料透過性に優れていることから、燃料タンク外への燃料の透過量を低減することができる。こうした性質を有する第2樹脂材料として、ポリアミド(PA)やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などが適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0017】
(1) 燃料遮断弁10の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる自動車の燃料タンクFTの上部に取り付けられる燃料遮断弁10を示す断面図である。図1において、燃料タンクFTは、その表面がポリエチレンを含む複合樹脂材料から形成されており、そのタンク上壁FTaに取付穴FTcが形成されている。このタンク上壁FTaには、燃料遮断弁10がその下部を取付穴FTcに突入した状態にて取り付けられている。燃料遮断弁10は、給油時に燃料タンクFT内の燃料が所定の液位FL1まで上昇したときに、外部(キャニスタ)への流出を規制するものである。
【0018】
(2) 燃料遮断弁10の各部の構成
次に、燃料遮断弁10の各部の構成について説明する。燃料遮断弁10は、ケーシング20と、ケーシング20の弁室20Sに収納されたフロート50と、フロート50に付勢するスプリング55とを主要な構成として備えている。
【0019】
(2)−1 ケーシング20
ケーシング20は、蓋体30と、シール部形成体35と、ケーシング本体40とを備えており、シール部形成体35とケーシング本体40とにより弁室20Sを形成している。
【0020】
(2)−1−1 蓋体30
図2は燃料遮断弁10を分解して示す断面図である。蓋体30は、蓋本体31と、蓋本体31の中央上部から側方へ向けて突出した管体部32と、蓋本体31の外周に形成されたフランジ部33とを備え、これらを一体に形成している。管体部32内には、蓋側通路32aが形成されており、この蓋側通路32aの一端側が弁室20Sを介して燃料タンクFTに接続され、他端側がキャニスタ側に接続されている。フランジ部33の下端には、燃料タンクFTのタンク上壁FTaに溶着される環状の溶着端33aが形成されている。
【0021】
(2)−1−2 シール部形成体35
シール部形成体35は、蓋本体31の下面に反応接着により一体成形され、蓋本体31による耐燃料透過性をより高めるとともに、ケーシング20を保持するための部材である。シール部形成体35は、蓋本体31の下面に反応接着された上面部36と、上面部36の外周部から下方に突設された支持部37とを備えている。
上面部36の中央部には、上部突出部36aが下方に向けて形成されている。上部突出部36a内には、蓋側通路32aに接続される接続通路36bが貫通しており、その接続通路36bの弁室20S側が円錐状のシール部36cになっている。
支持部37は、ケーシング本体40を支持するための支持手段の一部を構成し、ケーシング本体40の上部を囲むように筒状に突設されている。なお、支持手段の構成については、後述する
【0022】
(2)−1−3 ケーシング本体40
ケーシング本体40は、側壁42と、底部45とを備えたカップ形状であり、その内側が弁室20Sになっている。側壁42には、燃料タンクFTと弁室20Sとを連通する通気孔42aが形成されている。また、底部45の中央部には、弁室20Sと燃料タンクFT内とを連通する連通孔45aが形成されている。したがって、通気孔42aおよび連通孔45aを通じて、燃料タンクFT内が弁室20Sに連通している。また、底部45の中央上部には、環状のスプリング支持部45bが形成されている。このスプリング支持部45bは、フロート50の内側下面との間でスプリング55を支持している。
【0023】
(2)−1−4 ケーシング20の樹脂材料
ケーシング20を構成する蓋体30、シール部形成体35およびケーシング本体40は、それぞれ異なった樹脂材料から形成されている。すなわち、蓋体30は、変性ポリエチレンから形成されている。変性ポリエチレンは、ポリエチレンにマレイン酸などの極性官能基を添加したものであり、ポリエチレン系であることから燃料タンクFTを構成するポリエチレンと熱溶着し、かつマレイン酸などの極性官能基によりポリアミドとの反応接着性を付加したものである。また、変性ポリエチレンは、中密度(0.935以上)の材料の場合には、破断伸びが700%のものであることが引張り破断や伸びの機械的強度の点から好ましい。
シール部形成体35は、ポリアミドから形成されている。ポリアミドは、上述したように、蓋体30のポリエチレンに反応接着により溶着する樹脂材料であり、その機械的強度も大きい性質を有するものである。
蓋体30およびシール部形成体35は、2色成形により一体成形することができ、つまり蓋体30を形成するための変性ポリエチレンを射出した後に、変性ポリエチレンより射出温度の高いポリアミドを射出することで、その溶融樹脂材料の熱によりシール部形成体35を蓋体30に反応接着で一体成形することができる。
ケーシング本体40は、ポリアセタールから形成されている。ポリアセタールは、耐燃料膨潤性に優れ、しかも、摺動性および機械的強度に優れることから、フロート50を円滑に摺動させるとともに耐久性に優れている。
【0024】
(2)−1−5 支持手段
上記支持手段は、シール部形成体35にケーシング本体40を支持するための機構であり、シール部形成体35に形成された支持部37と、ケーシング本体40の側壁42に形成された被支持部43とを備えている。支持部37は、上面部36の外周下面から突設された円筒形状の支持本体37aと、支持本体37aの下端から4カ所下方へ突設された支持脚37bとを備え、各支持脚37bには、係合穴37cが形成されている。
また、被支持部43は、ケーシング本体40の外周上部に、断面L逆字形であり周方向に等間隔で4カ所突設されている。各被支持部43の内側とケーシング本体40の外面との間は、スペースとなっており、このスペースに支持部37の支持脚37bを突入保持している。被支持部43の先端は、係合爪43aになっており、支持部37の係合穴37cに係合することにより、ケーシング本体40がシール部形成体35に支持される。
【0025】
(2)−2 フロート50
フロート50は、弁室20Sに収納されており、上壁51と、その上壁51の外周から下方に形成された筒状の側壁52とを備えた容器形状のフロート本体50Mを備えており、その内側スペースが浮力を生じるための浮力室50Sになっている。また、フロート50の外周部にガイド突条50aがケーシング本体40との摺動性を高めるために複数箇所、上下方向に突設されている。フロート50は、耐燃料油性に優れたポリアセタールから形成されている。
【0026】
(3) 燃料遮断弁10の組立作業
次に、燃料遮断弁10を燃料タンクFTのタンク上壁FTaに装着する作業について説明する。燃料遮断弁10を組み付ける前に、蓋体30をシール部形成体35と一体に2色成形法により一体成形する。その後、ケーシング本体40の弁室20S内にスプリング55およびフロート50を収納し、さらにケーシング本体40の被支持部43のスペースに支持脚37bを挿入し、被支持部43の係合爪43aを支持脚37bの係合穴37cに係合させることにより、ケーシング本体40をシール部形成体35に取り付ける。
【0027】
続いて、蓋体30の溶着端33aの下端を熱板(図示省略)により溶融するとともに、燃料タンクFTの取付穴FTcの周囲に沿って熱板(図示省略)により溶融して溶着部FTd(図1参照)とする。取付穴FTcに、ケーシング20を下部から挿入して、溶着端33aを溶着部FTdに押しつける。これにより、溶着端33aと溶着部FTdとが同じポリエチレン系で形成されているので、冷却固化すると両者が互いに溶着する。このように、蓋体30がタンク上壁FTaに溶着されると、燃料タンクFT内は、外部に対して高いシール性を確保される。
【0028】
(4) 燃料遮断弁10の動作
次に、燃料遮断弁10の動作について説明する。図1に示すように、給油により燃料タンクFT内に燃料が供給されると、燃料タンクFT内の燃料液位の上昇につれて燃料タンクFT内の上部に溜まっていた燃料蒸気は、ケーシング20の通気孔42aおよび連通孔45a、弁室20S、接続通路36b、蓋側通路32aを通じてキャニスタ側へ逃がされる。そして、燃料タンクFT内の燃料液位が所定の液位FL1に達すると、燃料は、底部45の連通孔45aを通じて弁室20Sに流入する。これにより、図3に示すように、フロート50に浮力が生じて上昇し、フロート50の弁部51aがシール部36cに着座して接続通路36bを閉塞するから燃料がキャニスタ側へ流出しない。したがって、燃料タンクFTへの給油の際等に、燃料タンクFTから燃料蒸気を逃がすとともに燃料が燃料タンクFT外へ流出するのを防止することができる。
【0029】
(5) 上記実施例の構成により、以下の効果を奏する。
(5)−1 蓋体30とシール部形成体35とを互いに反応接着する樹脂材料を用いて一体成形したので、従来の技術で説明した構成と比べて、Oリングなどのシール部材が不要となり、部品点数を減らすことができるだけでなく、取付作業性や耐燃料透過性にも優れている。
【0030】
(5)−2 蓋体30は、ポリエチレンより耐燃料透過性に優れたポリアミドから形成されたシール部形成体35によりその下面が覆われ、しかもシール部形成体35と反応接着により一体化しているので、蓋体30を介して燃料タンクFTから外部へ逃げる燃料蒸気量を低減することができる。
【0031】
(5)−3 シール部36cは、耐燃料膨潤性および機械的強度に優れたポリアミドからなるシール部形成体35に形成されているので、摩耗や燃料膨潤性に伴うシール性の低下が少なく、安定した開閉特性を得ることができる。
【0032】
(5)−4 シール部形成体35は、蓋体30に反応接着により強固に連結しており、しかも、従来の技術のように係合爪などを用いて連結する構成でないので、構成を簡単にできる。このようにシール部形成体35と蓋体30とが強固に一体化されているから、両者のガタつきに伴う不具合、つまり、耐衝撃性に対する機械的強度の低下や、燃料遮断弁10の開閉液位の変動を生じることがなく、安定した開閉特性を得ることができる。
【0033】
(5)−5 シール部形成体35は、蓋体30に対して反応接着することで一体化するので、従来の技術で説明したような、複雑な型構造にして抜止めするような構成とする必要もなく、簡単に製造することができる。
【0034】
(5)−6 ケーシング本体40は、ポリアセタールで形成しているので、フロート50との摺動性に優れている。
【0035】
(5)−7 シール部形成体35の支持部37が被支持部43に外から係合支持される構成となっているので、支持部37は、燃料により膨潤すると被支持部43に接触する力が増大し、両者の支持がより強固になり、経年変化によりケーシング本体40がガタツクこともない。したがって、燃料遮断弁10は、上記ガタつきに伴う不具合、つまり、耐衝撃性に対する機械的強度の低下や、燃料遮断弁10の開閉液位の変動を生じることがなく、安定した開閉特性を得ることができる。
【0036】
(6) この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
(6)−1 図4は他の実施例にかかる燃料遮断弁10Bを示す断面図である。本実施例は、蓋体30Bとケーシング本体40Bを保持する支持手段の構成に特徴を有する。支持手段は、蓋本体31Bの下面から下方へ突設された支持部34Bと、ケーシング本体40Bの側壁42Bに形成され支持部34Bに係合する被支持部43Bとを備えている。蓋体30Bの支持部34Bは、タンク上壁FTaの取付穴FTcを通じて燃料タンクFT内に突入しており、ケーシング本体40Bと同様に燃料に晒されて、燃料タンクFT内の燃料により膨潤する。このとき、蓋体30Bは、ケーシング本体40Bより燃料膨潤性が大きい樹脂材料で形成されているので、ケーシング本体40Bより大きく拡張する。この場合において、ケーシング本体40Bに設けた被支持部43Bが、蓋体30Bの支持部34Bの拡張する方向に対向する側から蓋体30Bを保持しているから、蓋体30Bの支持部34Bの膨潤にともなって保持する力を増大する。しかも、蓋体30Bの支持部34Bは、図1の実施例のシール部形成体の樹脂材料(ポリアミドなど)より大きく燃料膨潤する樹脂材料(変性ポリエチレン)で形成されているので、ケーシング本体40Bは、被支持部43Bを介して一層強い力で蓋体30Bに組み付けられてガタつかない。
【0038】
(6)−2 図5はさらに他の実施例にかかる燃料遮断弁10Cを示す断面図である。本実施例は、燃料遮断弁10Cの全体を燃料タンクFT内に配置した構成に特徴を有している。すなわち、燃料タンクFTは、上半部と下半部の2分割で形成され、これを互いに接合することにより構成されている。上半部を構成するタンク上壁FTaの下面に、燃料遮断弁10Cが溶着されている。燃料遮断弁10Cは、ケーシング20Cを構成する蓋体30Cの上部に環状の支持部33Cが形成され、その上端が溶着端33Caになっている。溶着端33Caがタンク上壁FTaの溶着部FTdに溶着されている。このように図1の実施例のように、タンク上壁に形成した取付穴を塞ぐように取り付ける構成に限らず、燃料遮断弁10Cは、いわゆるインタンク式で燃料タンクFTの上部に取り付けられる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例にかかる自動車の燃料タンクの上部に取り付けられる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図2】燃料遮断弁を分解して示す断面図である。
【図3】燃料遮断弁の動作を説明する説明図である。
【図4】他の実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図5】さらに他の実施例にかかる燃料遮断弁を示す断面図である。
【図6】従来の燃料遮断弁を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10...燃料遮断弁
10B...燃料遮断弁
10C...燃料遮断弁
20...ケーシング
20C...ケーシング
20S...弁室
30...蓋体
30B...蓋体
30C...蓋体
31...蓋本体
31B...蓋本体
32...管体部
32a...蓋側通路
33...フランジ部
33C...支持部
33a...溶着端
33Ca...溶着端
34B...支持部
35...シール部形成体
36...上面部
36a...上部突出部
36b...接続通路
36c...シール部
37...支持部
37a...支持本体
37b...支持脚
37c...係合穴
40...ケーシング本体
40B...ケーシング本体
42...側壁
42a...通気孔
42B...側壁
43...被支持部
43B...被支持部
43a...係合爪
45...底部
45a...連通孔
45b...スプリング支持部
50...フロート
50M...フロート本体
50S...浮力室
50a...ガイド突条
51...上壁
51a...弁部
52...側壁
55...スプリング
FT...燃料タンク
FTa...タンク上壁
FTc...タンク取付穴
FTc...取付穴
FTd...溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンから形成された燃料タンク(FT)の上部に装着される燃料遮断弁において、
上記燃料タンク(FT)の上部に熱溶着される環状の溶着端(33a)と、上記燃料タンク(FT)の外部に接続される蓋側通路(32a)とを有する蓋体(30)と、
上記蓋体(30)の下面に積層された上面部(36)と、上記蓋側通路(32a)に接続される接続通路(36b)と、該接続通路(36b)の開口周縁に形成したシール部(36c)とを有するシール部形成体(35)と、
上記蓋体(30)または上記シール部形成体(35)に支持され、上記燃料タンク(FT)内と上記接続通路(36b)とを連通する弁室(20S)を有するケーシング本体(40)と、
上記弁室(20S)内に収納され、フロート本体(50M)と、該フロート本体(50M)の上部に形成され上記シール部(36c)に着座する弁部(51a)とを有し、上記フロート本体(50M)が上記燃料タンク(FT)内の燃料の液位(FL1)に応じて昇降して上記弁部(51a)が上記シール部(36c)に着離することで上記接続通路(36b)を開閉するフロート(50)と、
を備え、
上記蓋体(30)、上記シール部形成体(35)および上記ケーシング本体(40)は、第1ないし第3樹脂材料からそれぞれ形成され、
上記第1樹脂材料は、上記燃料タンク(FT)の上部に熱溶着可能でありかつ極性官能基を有する変性ポリエチレンであり、上記第2樹脂材料は、上記変性ポリエチレンに反応接着しかつ上記第1樹脂材料より耐燃料膨潤性に優れる樹脂であり、上記第3樹脂材料は、ポリアセタールであり、
上記蓋体(30)または上記シール部形成体(35)は、上記ケーシング本体(40)の一端を機械的に連結する支持手段により上記ケーシング本体(40)を支持していること、
を特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記支持手段は、上記蓋体(30B)または上記シール部形成体(35)の下端から突設された支持部(37,34B)と、上記ケーシング本体(40,40B)の側壁(42,42B)から突設され上記支持部(37,34B)に係合する被支持部(43,43B)と、を備えている燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料遮断弁において、
上記シール部形成体(35)の下端から突設された支持部(37)を形成する第2樹脂材料は、第1樹脂材料より機械的強度に優れた樹脂で形成されている燃料遮断弁。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料遮断弁において、
上記第2樹脂材料は、上記第1樹脂材料より耐燃料透過性に優れた樹脂である燃料遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9840(P2006−9840A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184399(P2004−184399)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】