説明

燃料電池発電装置の水回収方法及び燃料電池発電装置

【課題】改質装置から排出される燃焼排ガスから、溶存する炭酸ガス濃度の低い凝縮水を回収して、脱炭酸装置や水処理装置にかかる負荷を低減させると共に、系内の水自立を維持することが可能な燃料電池発電装置の水回収方法及び燃料電池発電装置を提供する。
【解決手段】改質触媒層3a及び燃焼部3bを有する改質装置3と、燃料電池本体1と、燃焼排ガスラインL12に配置されたドレントラップ21と、ドレントラップ21よりも下流側の燃焼排ガスラインL12に配置された第1熱交換器Q4と、脱炭酸処理器5と、脱炭酸処理した凝縮水を回収する水タンク4とを備え、ドレントラップ21内の高温凝縮水は、脱炭酸処理器5で脱炭酸処理して水タンクに供給させ、第1熱交換器Q4の下流で回収した凝縮水は、水タンク4の水量が所定水量未満のとき、脱炭酸処理器5で脱炭酸処理して水タンク4に供給するように構成されている燃料電池発電装置を用いて水を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質装置から排出される燃焼排ガスから溶存する炭酸ガス濃度の低い凝縮水を回収して、水処理装置にかかる負荷を低減する燃料電池発電装置の水回収方法及び燃料電池発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池本体から排出される燃料電池排ガスや、改質装置の燃焼部から排出される燃焼排ガスは水分を含んでおり、燃料電池発電装置の系内での水自立(外部からの補給水を受けいれることなく運転を継続する状態)を維持するため、これらの排ガスから凝縮水を回収し、水処理装置などで脱イオン処理した後、再利用することが一般的に行われている。そして、水処理装置への負荷を低減させるため、特に炭酸ガスを多く含むガスから回収した凝縮水は、例えば、下記特許文献1〜3に開示されているように、水処理装置での脱イオン処理を行う前に脱炭酸処理を行って、溶存炭酸ガス濃度の低減を図っている。
【特許文献1】特開平9−161833号公報
【特許文献2】特開平11−204127号公報
【特許文献3】特開2008−27587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
改質装置の燃焼部から排出される燃焼排ガスは、炭酸ガス濃度が比較的高く、炭素ガスがほぼ飽和量まで溶存している。このため、燃焼排ガスから回収した凝縮水に対して、脱炭酸処理を施した場合であっても、凝縮水中の炭酸ガス濃度は依然として高く、後段の水処理装置にかかる負荷を十分には低減できなかった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、燃焼排ガスから回収する凝縮水の炭酸ガス濃度を低減して、水処理装置にかかる負荷を低減させると共に、系内の水自立を維持することが可能な燃料電池発電装置の水回収方法及び燃料電池発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池発電装置の水回収方法は、
炭化水素を水蒸気改質して水素含有ガスを生成する改質触媒層及び該改質触媒層に反応熱を供給する燃焼部を有する改質装置と、前記水素含有ガス及び酸化剤ガスとの反応により発電を行う燃料電池本体とを備える燃料電池発電装置の、前記燃焼部より排出される燃焼排ガスから凝縮水を脱炭酸処理した後、水タンクに貯留する燃料電池発電装置の水回収方法であって、
前記凝縮水は、燃焼排ガス流路の上流で、かつ高温の燃焼排ガスから分離した高温凝縮水と、これよりも下流で、かつ低温の燃焼排ガスから分離した低温凝縮水とに分け、
水回収量が余剰の場合は、前記低温凝縮水を優先的に燃料電池発電装置外へ排水する、
ことを特徴とする。
【0006】
燃焼排ガスには、炭酸ガスが含まれているので、燃焼排ガスから回収する凝縮水には、炭酸イオンが比較的高濃度含まれているが、高温の燃焼排ガスに含まれる水分は、低温の燃焼排ガスに含まれる水分に比べ、炭酸ガスの溶解量が少ない。
したがって、本発明の燃料電池発電装置の水回収方法によれば、水回収量が余剰の場合は、低温の燃焼排ガスから分離した低温凝縮水を優先的に燃料電池発電装置外へ排水するようにしたので、極めて炭酸イオン濃度の少ない凝縮水を効率的に回収でき、水処理装置などにかかる負荷や処理時間を低減でき、燃料電池発電装置の運転コストやメンテナンスコストを抑えることができる。
【0007】
本発明の燃料電池発電装置の水回収方法の前記低温凝縮水は、熱交換器で冷却後の燃焼排ガスから分離されるものであることが好ましい。この態様によれば、高温凝縮水を分離した燃焼排ガスから低温凝縮水を効率よく分離させることができる。
【0008】
本発明の燃料電池発電装置の水回収方法は、前記高温凝縮水を大気解放状態にした後、前記脱炭酸処理を行うことが好ましい。この態様によれば、高温凝縮水に含まれる炭酸イオンを大気中に拡散させることができるので、高温凝縮水の脱炭酸効率が向上し、より炭酸イオン濃度の少ない凝縮水を効率よく回収できる。
【0009】
本発明の燃料電池発電装置の水回収方法は、44℃以上の燃焼排ガスから前記高温凝縮水を分離することが好ましい。この態様によれば、炭酸イオンの少ない凝縮水を効率よく回収できる。
【0010】
本発明の燃料電池発電装置の水回収方法は、前記水タンクに貯留した凝縮水を、電気式脱イオン装置、活性炭フィルタ、水処理樹脂、金属除去フィルタ、微粒子除去フィルタから選ばれた1種以上を用いてさらに処理することが好ましい。この態様によれば、凝縮水中の炭酸イオンなどのイオンをほぼ除去することができるので、燃料電池の冷却水や、燃料電池本体に供給する反応ガスの加湿水や、改質装置に供給する加湿水として好適に使用できる。
【0011】
一方、本発明の燃料電池発電装置は、
炭化水素を水蒸気改質して水素含有ガスを生成する改質触媒層及び該改質触媒層に反応熱を供給する燃焼部を有する改質装置と、
前記水素含有ガス及び酸化剤ガスとの反応により発電を行う燃料電池本体と、
前記燃焼部の燃焼排ガス排出口から伸びた燃焼排ガスラインと、
前記燃焼排ガスラインに配置されたドレントラップと、
前記ドレントラップよりも前記燃焼排ガスラインの下流側に配置され前記燃焼排ガスを冷却する第1熱交換器と、
前記ドレントラップで回収した凝縮水と、前記第1熱交換器の下流で回収した凝縮水とを脱炭酸処理する脱炭酸処理器と、
前記脱炭酸処理器で脱炭酸処理した凝縮水を回収する前記水タンクとを備え、
前記第1熱交換器の下流で回収した凝縮水は、前記水タンクの水量が所定水量未満のときにのみ、前記脱炭酸処理器で脱炭酸処理して前記水タンクに供給するように構成されている、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の燃料電池発電装置によれば、ドレントラップでは、高温の燃焼排ガスから凝縮水を分離して回収できる。そして、高温の燃焼排ガスから分離した凝縮水は、炭酸ガス濃度が比較的低い。このため、ドレントラップ内の凝縮水を脱炭酸処理して水タンクに供給させ、水タンクの水量が所定水量未満のときに、第1熱交換器で回収した凝縮水を、脱炭酸処理して前記水タンクに供給するよう構成されているので、極めて炭酸イオン濃度の少ない凝縮水を効率的に水タンクに回収でき、水処理装置などにかかる負荷や処理時間を低減でき、燃料電池発電装置の運転コストやメンテナンスコストを抑えることができる。
【0013】
本発明の燃料電池発電装置は、前記ドレントラップと前記脱炭酸処理器の間に、大気解放型の貯水タンクが配置されていることが好ましい。この態様によれば、大気解放型の貯水タンクにて、ドレントラップで回収した凝縮水に含まれる炭酸イオンを大気中に拡散させることができるので、凝縮水の脱炭酸効率が向上し、より炭酸イオン濃度の少ない凝縮水を水タンクに貯水できる。
【0014】
本発明の燃料電池発電装置の前記ドレントラップは、44℃以上の燃焼排ガスから凝縮水を回収するように燃焼排ガスラインに配置されていることが好ましい。この態様によれば、ドレントラップにて、炭酸イオンの少ない凝縮水を効率よく回収できる。
【0015】
本発明の燃料電池発電装置は、前記改質装置と前記ドレントラップとの間に、予備冷却用の第2熱交換器が配置されていることが好ましい。燃焼排ガスの温度が高すぎるとドレントラップでの凝縮水の回収効率が低下することがあるが、改質装置とドレントラップとの間に、予備冷却用の第2熱交換器を配置することで、燃焼排ガスを低下させて、ドレントラップでの凝縮水の回収効率が向上する。
【0016】
本発明の燃料電池発電装置は、前記第1熱交換器の下流側に凝縮水貯水タンクが配置され、前記水タンク内の水量が所定水量未満の時、前記凝縮水貯水タンク内の凝縮水を、前記脱炭酸処理器を経て前記水タンクに供給するように構成されていることが好ましい。この態様によれば、水タンク内の水量が所定水量未満となったら、低温凝縮水貯水タンクから水タンクに給水でき、速やかに水タンク内の水位を所定水位に保つことができる。
【0017】
本発明の燃料電池発電装置は、前記水タンクの下流側に、電気式脱イオン装置、活性炭フィルタ、水処理樹脂、金属除去フィルタ、微粒子除去フィルタから選ばれた1種以上が配置されていることが好ましい。この態様によれば、凝縮水中の炭酸イオンなどのイオンをほぼ除去することができるので、燃料電池の冷却水や、燃料電池本体に供給する反応ガスの加湿水や、改質装置に供給する改質用水として使用できる。
【0018】
本発明の燃料電池発電装置は、前記水タンクの下流側に、電気式脱イオン装置が配置され、前記電気式脱イオン装置から排出される濃縮排水を、前記凝縮水貯水タンクに還流するように構成されていることが好ましい。この態様によれば、電気式脱イオン装置から排出される濃縮排水を、電気式脱イオン装置にて脱イオン処理することができるので、濃縮水を循環して再利用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炭酸イオン濃度の少ない凝縮水を効率的に回収でき、水処理装置などにかかる負荷や処理時間を低減して、燃料電池発電装置の運転コストやメンテナンスコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の燃料電池発電装置の実施形態を説明する。図1に、本発明の燃料電池発電装置の第一の実施形態の概略構成図を示す。
【0021】
図中の1は、燃料電池本体であって、電解質1cを挟持するアノード電極1a及びカソード電極1bと、これらからなる単位セルの複数個を重ねる毎に配設される冷却管を有する冷却系1dとで構成されている。
【0022】
アノード電極1aの改質ガス供給側は、改質装置3から伸びた改質ガス供給ラインL1が連結している。この改質ガス供給ラインL1には、改質ガス用ドレントラップQ1が配置されており、改質ガス用ドレントラップQ1の凝縮水貯留部からは、改質ガス凝縮水供給ラインL2が伸びて脱炭酸装置5に連結している。
アノード電極1aのアノードオフガス排出側からは、アノードオフガス排出ラインL3が伸びて、改質装置3に併設された燃焼部3bに連結している。このアノードオフガス排出ラインL3には、アノードオフガス用ドレントラップQ2が配置されており、アノードオフガス用ドレントラップQ2の凝縮水貯留部からは、アノードオフガス凝縮水供給ラインL4が伸びて脱炭酸装置5に連結している。
【0023】
カソード電極1bの空気供給側は、空気供給源から伸びた空気供給ラインL5が連結している。この空気供給ラインL5には、加湿器2が配置されている。
カソード電極1bの排空気排出側からは、カソードオフガス排出ラインL6が伸びて、水タンク4に連結している。このカソードオフガス排出ラインL6には、カソードオフガス熱交換器Q3が配置されている。
【0024】
冷却系1dの冷却水供給側は、電池冷却水タンク12から伸びた電池冷却水供給ラインL7が連結している。
冷却系1dの冷却水排出側からは、電池冷却水排出ラインL8が伸びて、電池冷却水タンク12に接続している。
【0025】
改質装置3は、水蒸気改質触媒が充填された改質触媒層3aと、バーナが配置された燃焼部3bとを備え、バーナで燃焼用燃料を燃焼した際に発生する燃焼熱及び燃焼排ガスで前記改質触媒層3aを加熱するように構成されている。
【0026】
改質触媒層3aの改質原料の投入側は、原燃料源から伸びた原燃料供給ラインL9と、電池冷却水タンク12から伸びた改質水供給ラインL10が連結している。
改質触媒層3aの改質ガス吐出側からは、改質ガス供給ラインL1が伸びてアノード電極1aに連結している。
【0027】
燃焼部3bの燃焼燃料導入口側は、アノード電極1aのオフガス排出側から伸びたアノードオフガス排出ラインL3と、燃焼空気源から伸びた燃焼空気供給ラインL11とが接続している。
燃焼部3bの燃焼排ガス排出側からは、燃焼排ガスラインL12が伸びて第二水タンク20と連結している。この燃焼排ガスラインL12には、上流側から、燃焼排ガスドレントラップ21、燃焼排ガス熱交換器Q4が配置されている。燃焼排ガスドレントラップ21の凝縮水貯留部からは、高温凝縮水供給ラインL13が伸びて脱炭酸装置5に連結している。
【0028】
燃焼排ガスドレントラップ21としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、図2、3に示すドレントラップが一例として挙げられる。
【0029】
図2に示すドレントラップは、U字状に屈曲した配管40からなり、配管40の始部41が燃焼排ガスラインL12に接続し、終端部42が下方に向かって伸びる高温凝縮水供給ラインL13に接続している。
【0030】
図3に示すドレントラップは、ハウジング45の上部側壁に、燃焼排ガスラインL12に接続する燃焼排ガス入り口46及び燃焼排ガス出口47が形成されている。また、ハウジング45の底部には、高温凝縮水出口48が形成されており、高温凝縮水供給ラインL13に接続している。そして、高温凝縮水出口48には、フロート49の作用によって機械的に開閉操作される弁50が配置されている。
【0031】
第二水タンク20の下部には、開閉弁V1が介装された低温凝縮水供給ラインL14が伸びて脱炭酸装置5に連結している。また、第二水タンク20には、排気管L15とオーバーフロー配管L16とが配置されている。
【0032】
脱炭酸装置5は、水タンク4の上部に隣接して配設されており、ドレン口6を介して連通している。脱炭酸装置5の上部には、上述した改質ガス凝縮水供給ラインL2、アノードオフガス凝縮水供給ラインL4、高温凝縮水供給ラインL13、低温凝縮水供給ラインL14が接続している。また、脱炭酸装置5からは、脱炭酸用空気排出ラインL17が伸びて、第二水タンク20に連結している。
【0033】
脱炭酸装置5としては特に限定はなく、凝縮水と脱炭酸用空気とを接触させて凝縮水中の炭酸ガスを気中拡散して脱気できるような構成のものが好ましく用いることができる。このような構成の脱気装置としては、SUS等のラッシヒリングが充填された脱気部を備え、該脱気部の上部に凝縮水を供給すると共に、脱気部の下部から脱炭酸用空気を供給し、凝縮水を重力落下させながら脱炭酸用空気と接触させて脱炭酸処理するような構成のものや、例えば、特開2007−323969号に開示されているような、多孔質材料で構成された傾斜板が配置された脱気部を備え、傾斜板の下部側から上部側へ脱炭酸用空気を流通させると共に、傾斜板の上部側から下部側へ向けて凝縮水を流下させて、凝縮水を脱炭酸処理するような構成のものなどが一例として挙げられる。
【0034】
水タンク4には、上述したカソードオフガス排出ラインL6と、電池冷却水タンク12から伸びた電池冷却水オーバフローラインL18が接続している。また、水タンク4の側壁には、タンク水オーバフローラインL19が伸びて、タンク内の水位が一定水位を超えないようにされている。また、水タンク4の下部からは、回収水供給ラインL20が伸びて、電池冷却水タンク12に接続している。この回収水供給ラインL20には、上流側から、回収水ポンプP1、入口フィルタ8、水処理装置10が配置されている。また、水タンク4の内部には、水位センサ7が配置されている。
【0035】
入口フィルタ8としては、水タンク4で回収した回収水に含まれている煤や粉塵等の不純物を除去するものであれば特に限定はなく、金属除去フィルタ、微粒子除去フィルタ等が好ましく挙げられる。
【0036】
水処理装置10としては、水タンク4で回収した回収水を脱イオン処理する装置であれば特に限定はなく、電気式脱イオン装置、金属イオン除去装置、活性炭フィルタ、水処理樹脂(イオン交換樹脂など)などが挙げられる。これらを単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。なかでも、ランニングコストやメンテナンスコストを低減できるという理由から電気式脱イオン装置を使用することが好ましく、電気式脱イオン装置の上流側に金属イオン除去装置を配置し、電気式脱イオン装置の下流側に水処理樹脂を配置することがより好ましい。なお、この実施形態では、水処理装置10として電気式脱イオン装置を用いている。
【0037】
ここで、電気式脱イオン装置とは、電極と、イオン交換膜によって区画された内部にイオン交換樹脂が充填された脱塩室と、脱塩室から移動してくるイオンを受け取る濃縮室と、を備える水処理装置であって、脱塩室に流入したイオンはその親和力、濃度及びイオン強度に基いてイオン交換樹脂と反応し、電位の傾きの方向に樹脂中を移動し、イオン交換膜まで達する。そして、カチオンはカチオン交換膜を透過し、アニオンはアニオン交換膜を透過して、それぞれ濃縮室に移動する。これによって回収水を、脱イオン水と濃縮水に分離することができ、電気式脱イオン装置の脱塩室からは、イオン濃度が低減された脱イオン水を回収でき、電池冷却水タンク12に供給できる。一方、電気式脱イオン装置の濃縮室から排出される濃縮水は、回収水中のイオンが濃縮されて多量に含んでおり、系外に排水すると水自立を維持できなくなる場合があるので、この実施形態では、電気式脱イオン装置の濃縮室から伸びた濃縮水排出ラインL21は、第二水タンク20に連結して、濃縮水を水タンクの上流側に還流するように構成されている。
【0038】
次に、本発明の燃料電池発電装置の作動を含めた、燃料電池発電装置の水回収方法について説明する。
【0039】
改質装置3では、原燃料供給ラインL9から供給される原燃料が、改質水供給ラインL10から供給される改質水と混合して、改質触媒層3aに供給され、水蒸気改質反応により水素に富む改質ガスが生成される。なお、水蒸気改質反応は、吸熱反応であることから、改質装置3の燃焼部3bに、アノードオフガス排出ラインL3からアノードオフガス(燃焼用燃料)と、燃焼空気供給ラインL11から燃焼空気を供給し、これらを燃焼して改質触媒層3aを加熱する。
【0040】
そして、改質装置3で生成された改質ガスは、改質ガス供給ラインL1を通ってアノード電極1aに供給される。改質ガスに含まれる凝縮水は、改質ガス供給ラインL1の途中に配置された改質ガス用ドレントラップQ1にて回収され、改質ガス凝縮水供給ラインL2を通って脱炭酸装置5に供給される。
【0041】
燃料電池本体1では、アノード電極1aに供給された改質ガスと、カソード電極1bに供給された空気とを電解質1cの界面で電気化学反応させて発電し、この発電出力を電力系統に供給する。
【0042】
カソード電極1bから排出されるカソードオフガスは、カソードオフガス熱交換器Q3で冷却されて、カソードオフガス凝縮水とカソードガスと共に、カソードオフガス排出ラインL6を通って水タンク4に供給される。
【0043】
アノード電極1aから排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス排出ラインL3を通って燃焼部3bへと供せられ、燃焼用燃料として用いられる。アノードオフガスに含まれる凝縮水は、アノードオフガス排出ラインL3の途中に配置されたアノードオフガス用ドレントラップQ2にて回収され、アノードオフガス凝縮水供給ラインL4を通って脱炭酸装置5に供給される。
【0044】
また、改質装置3の燃焼部3bから排出される燃焼排ガスからも凝縮水の回収が行われるが、本発明では、燃焼排ガスラインL12の上流で、かつ高温の燃焼排ガスから分離した高温凝縮水と、これよりも下流で、かつ低温の燃焼排ガスから分離した低温凝縮水とに分ける。
【0045】
この実施形態では、改質装置3の燃焼部3bから排出される燃焼排ガスは、まず、燃焼排ガスラインL12の配管からの放熱などによって冷却されて、燃焼排ガス熱交換器Q4の上流側に配置した燃焼排ガスドレントラップ21で凝縮水が回収される。すなわち、燃焼排ガスドレントラップ21で回収された凝縮水が本発明における高温凝縮水である。そして、燃焼排ガスドレントラップ21で回収された凝縮水(以下、「高温凝縮水」と記す)は、高温凝縮水供給ラインL13を通って脱炭酸装置5に送られる。
【0046】
一方、高温凝縮水を分離した燃焼排ガスは、燃焼排ガス熱交換器Q4で熱交換されて、第二水タンク20に供給され、凝縮水は第二水タンク20に回収され、ガス成分は第二タンク20に配設された排気管から系外に排気される。すなわち、第二水タンク20に回収された凝縮水が本発明における低温凝縮水である。そして、第二タンク20内の貯留水(以下、「低温凝縮水」と記す)は、水タンク4内の水位が所定水位を下回った際に、脱炭酸装置5に供給される。この実施形態では、水タンク4の水位が所定水位を下回ったら、低温凝縮水供給ラインに介装された開閉弁V1を開き、水タンク4の水位が所定水位に達するまで供給される。水タンク4の水位は、水位センサ7で検出する。
【0047】
燃焼排ガスには、炭酸ガスが含まれているので、燃焼排ガスから回収する凝縮水には、炭酸イオンが比較的高濃度含まれている。しかしながら、炭酸ガスの溶存量は凝縮水の温度が上昇するに伴い低下するので、高温の燃焼排ガスに含まれる水分は、低温の燃焼排ガスに含まれる水分に比べて炭酸ガスの溶解量が少ない。
【0048】
したがって、燃焼排ガスドレントラップ21で回収した高温凝縮水は、炭酸ガス濃度が低く、水回収量が余剰である定常時は、この燃焼排ガスドレントラップ21で回収した高温凝縮水のみを脱炭酸処理して水タンク4に供給し、水タンク4の水位が所定水位を下回った際のみ、低温の燃焼排ガスから回収した第二水タンク20の低温凝縮水を脱炭酸処理して水タンク4に供給するので、水タンク4内の回収水は極めて炭酸ガス濃度が低く、後段の水処理装置にかかる負荷を大幅に低減できる。
【0049】
本発明において、燃焼排ガスドレントラップ21は、40〜60℃の燃焼排ガスから凝縮水を回収できるように燃焼排ガスラインL12に配置されていることが好ましく、44℃以上かつ55℃以下の燃焼排ガスから凝縮水を回収できるように燃焼排ガスラインL12に配置されていることがより好ましい。換言すると、高温凝縮水は、44℃以上の燃焼排ガスから分離した凝縮水であることが好ましい。44℃以上の燃焼排ガスから分離した凝縮水は、炭酸ガス濃度が低く、後段の水処理装置10にかかる負荷を低減できる。更には、55℃以下の燃焼排ガスから高温凝縮水を回収すれば、高温凝縮水の回収量も高く、ほぼ高温凝縮水のみで系内の水自立を維持することもできる。
【0050】
なお、第二水タンク20に貯留された低温凝縮水は、所定水位を超えると、オーバーフロー配管L16から系外に排水される。また、第二水タンク20内の水位が所定水位を下回ると、燃焼排ガス熱交換器Q4の燃焼排ガスと熱交換する冷媒の流量を増加させる、及び/又は、該冷媒の温度を低下させる処理を行い、低温凝縮水の回収量を増加するように構成されている。
【0051】
そして、水タンク4に回収された凝縮水は、入口フィルタ8にて煤や粉塵等の不純物除去が行われた後、水処理装置10に送られて脱イオン処理がなされ、処理水は、電池冷却水タンク12に送られる。一方、濃縮水は濃縮水排出ラインL21を通って第二水タンク20に還流される。
【0052】
以上のように、本発明によれば、炭酸ガス濃度が高く水質として不利な凝縮水が水タンク4に混入しにくくなるので、凝縮水の純度を維持するために必要な水処理装置12にかかる負荷や処理時間を低減でき、燃料電池発電装置の運転コストやメンテナンスコストを抑えることができる。
【0053】
本発明の燃料電池発電装置の第二の実施形態について、図4を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この実施形態において、上記第一の実施形態との相違点は、改質装置3と燃焼排ガスドレントラップ21との間に、予備冷却用熱交換器Q5が配置されている点である。
【0055】
この実施形態によれば、燃焼部3bから排出される燃焼排ガスは、予備冷却用熱交換器Q5で熱交換されて、一旦温度を低下させてから燃焼排ガスドレントラップ21に導入するので、燃焼排ガスドレントラップ21における高温凝縮水の回収効率が向上する。燃焼部3bから排出される燃焼排ガスの温度が100℃以上である場合特に有効的である。そして、予備冷却用熱交換器Q5では、燃焼排ガスの温度を40〜60℃にすることが好ましい。
【0056】
本発明の燃料電池発電装置の第三の実施形態について、図5を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この実施形態において、上記第一の実施形態との相違点は、燃焼排ガスドレントラップ21と脱炭酸装置5との間に、大気解放型水タンク25が配置されている点である。
【0058】
この実施形態によれば、燃焼排ガスドレントラップ21で回収した高温凝縮水は、大気解放型水タンク25に送られ、ここで大気と接触させた後、脱炭酸装置5に送られる。大気解放型水タンクでは、タンク内の高温凝縮水が大気と接触することで、高温凝縮水中の炭酸ガスが大気中に放出するので、高温凝縮水の炭酸ガス濃度の低減することができ、より炭酸ガス濃度の低い水を水タンクに貯水することができる。
【0059】
本発明の燃料電池発電装置の第四の実施形態について、図6を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一箇所には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この実施形態では、燃焼部3bの燃焼排ガス排出側から伸びた、燃焼排ガスラインL12は、第二脱炭酸装置30と連結している。第二脱炭酸装置30の上部は、上記燃焼排ガスラインL12と、水処理装置10から伸びた濃縮水排出ラインL21が接続している。第二脱炭酸装置30の下部は、脱炭酸装置5の上部から伸びた脱炭酸用排出ラインL17が接続している。第二脱炭酸装置30の上部からは、排気管L22が伸びている。
第二脱炭酸装置30の下部からは、脱炭酸水供給ラインL23が伸びて、水タンク4のタンク水オーバフローラインL19’に連結している。タンク水オーバフローラインL19’は、水タンク4の側壁から略水平方向に伸びた第1略水平部L19aと、この第1略水平部L19aから上方に向かって略垂直に伸びて脱炭酸水供給ラインL23に接続する略垂直部L19bと、略垂直部L19bから分岐して略水平方向に伸びる第2略水平部L19cとで構成されている。
【0061】
この実施形態によれば、水タンク4内の水位が第2略水平部L19cの水位よりも低い場合、脱炭酸水供給ラインL23から、水タンク4内に低温の燃焼排ガスを凝縮して回収した低温凝縮水が流入し、第2略水平部L19cの水位よりも高い場合、第2略水平部L19cを通って第二脱炭酸装置30で回収した凝縮水が系外へ排水されるので、水位センサや開閉弁等を使用しなくても、水タンク内の水位を所定水位となるように維持しつつ、必要量以上の低温凝縮水が水タンク4に混入しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の燃料電池発電装置の第一の実施形態の概略構成図である。
【図2】ドレントラップの一例を示す構成図である。
【図3】ドレントラップの他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の燃料電池発電装置の第二の実施形態の概略構成図である。
【図5】本発明の燃料電池発電装置の第三の実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明の燃料電池発電装置の第四の実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1:燃料電池本体
1a:アノード電極
1b:カソード電極
1c:電解質
1d:冷却系
2:加湿器
3:改質装置
3a:改質触媒層
3b:燃焼部
4:水タンク
5:脱炭酸装置
6:ドレン口
7:水位センサ
8:入口フィルタ
10:水処理装置
12:電池冷却水タンク
20:第二水タンク
21:燃焼排ガスドレントラップ
25:大気解放型水タンク
30:第二脱炭酸装置
L1:改質ガス供給ライン
L2:改質ガス凝縮水供給ライン
L3:アノードオフガス排出ライン
L4:アノードオフガス凝縮水供給ライン
L5:空気供給ライン
L6:カソードオフガス排出ライン
L7:電池冷却水供給ライン
L8:電池冷却水排出ライン
L9:原燃料供給ライン
L10:改質水供給ライン
L11:燃焼空気供給ライン
L12:燃焼排ガスライン
L13:高温凝縮水供給ライン
L14:低温凝縮水供給ライン
L15:排気管
L16:オーバーフロー配管
L17:脱炭酸用空気排出ライン
L18:電池冷却水オーバフローライン
L19,L19’:タンク水オーバフローライン
L20:回収水供給ライン
L21:濃縮水排出ライン
L22:排気管
L23:脱炭酸水供給ライン
P1:回収水ポンプ
Q1:改質ガス用ドレントラップ
Q2:アノードオフガス用ドレントラップ
Q3:カソードオフガス熱交換器
Q4:燃焼排ガス熱交換器
Q5:予備冷却用熱交換器
V1:開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を水蒸気改質して水素含有ガスを生成する改質触媒層及び該改質触媒層に反応熱を供給する燃焼部を有する改質装置と、前記水素含有ガス及び酸化剤ガスとの反応により発電を行う燃料電池本体とを備える燃料電池発電装置の、前記燃焼部より排出される燃焼排ガスから凝縮水を脱炭酸処理した後、水タンクに貯留する燃料電池発電装置の水回収方法であって、
前記凝縮水は、燃焼排ガス流路の上流で、かつ高温の燃焼排ガスから分離した高温凝縮水と、これよりも下流で、かつ低温の燃焼排ガスから分離した低温凝縮水とに分け、
水回収量が余剰の場合は、前記低温凝縮水を優先的に燃料電池発電装置外へ排水する、
ことを特徴とする燃料電池発電装置の水回収方法。
【請求項2】
前記低温凝縮水は、熱交換器で冷却後の燃焼排ガスから分離されるものである請求項1に記載の燃料電池発電装置の水回収方法。
【請求項3】
前記高温凝縮水を大気解放状態にした後、前記脱炭酸処理を行う請求項1又は2に記載の燃料電池発電装置の水回収方法。
【請求項4】
44℃以上の燃焼排ガスから前記高温凝縮水を分離する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置の水回収方法。
【請求項5】
前記水タンクに貯留した凝縮水を、電気式脱イオン装置、活性炭フィルタ、水処理樹脂、金属除去フィルタ、微粒子除去フィルタから選ばれた1種以上を用いてさらに処理する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置の水回収方法。
【請求項6】
炭化水素を水蒸気改質して水素含有ガスを生成する改質触媒層及び該改質触媒層に反応熱を供給する燃焼部を有する改質装置と、
前記水素含有ガス及び酸化剤ガスとの反応により発電を行う燃料電池本体と、
前記燃焼部の燃焼排ガス排出口から伸びた燃焼排ガスラインと、
前記燃焼排ガスラインに配置されたドレントラップと、
前記ドレントラップよりも前記燃焼排ガスラインの下流側に配置され前記燃焼排ガスを冷却する第1熱交換器と、
前記ドレントラップで回収した凝縮水と、前記第1熱交換器の下流で回収した凝縮水とを脱炭酸処理する脱炭酸処理器と、
前記脱炭酸処理器で脱炭酸処理した凝縮水を回収する前記水タンクとを備え、
前記第1熱交換器の下流で回収した凝縮水は、前記水タンクの水量が所定水量未満のときにのみ、前記脱炭酸処理器で脱炭酸処理して前記水タンクに供給するように構成されている、
ことを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項7】
前記ドレントラップと前記脱炭酸処理器の間に、大気解放型の貯水タンクが配置されている、請求項6に記載の燃料電池発電装置。
【請求項8】
前記ドレントラップは、44℃以上の燃焼排ガスから凝縮水を回収するように燃焼排ガスラインに配置されている、請求項6又は7に記載の燃料電池発電装置。
【請求項9】
前記改質装置と前記ドレントラップとの間に、予備冷却用の第2熱交換器が配置されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項10】
前記第1熱交換器の下流側に凝縮水貯水タンクが配置され、前記水タンク内の水量が所定水量未満の時、前記凝縮水貯水タンク内の凝縮水を、前記脱炭酸処理器を経て前記水タンクに供給するように構成されている、請求項6〜9のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項11】
前記水タンクの下流側に、電気式脱イオン装置、活性炭フィルタ、水処理樹脂、金属除去フィルタ、微粒子除去フィルタから選ばれた1種以上が配置されている、請求項6〜10のいずれか1項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項12】
前記前記水タンクの下流側に、電気式脱イオン装置が配置され、
前記電気式脱イオン装置から排出される濃縮排水を、前記凝縮水貯水タンクに還流するように構成されている、請求項10に記載の燃料電池発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−224064(P2009−224064A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64691(P2008−64691)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】