説明

燃料電池自動車

【課題】燃料電池を搭載した自動車において、外部から燃料電池に液体が流入することを抑制しうる燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】ガス排出口からガス流路を介して燃料電池に液体が流入するおそれがあると推定した場合に、前記ガス流路から排出されるガスの排気圧を高める、または、前記ガス流路の流通を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池を搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を自動車に搭載する場合、強い雨や道路の冠水などによって排気口などの外部から水などの液体が流入することが考えられる。例えば、水が流入すると、燃料電池の構成部材を劣化させたり、反応ガスの供給に不具合を生じさせたりする。下記特許文献1には、排気口を想定される水面よりも高い位置に設けることによって燃料電池システムへの水の流入を防止することが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−319167号公報
【特許文献2】特開2005−241476号公報
【特許文献3】特開2005−11797号公報
【特許文献4】特開平9−107628号公報
【特許文献5】特開2005−69136号公報
【特許文献6】特開2005−153853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排気口を高い位置に設ける構成では、水位や雨量が想定を超えてしまった場合には流入を抑制する効果が失われるため、これのみでは流入抑制は十分ではなかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、外部から燃料電池に液体が流入することを抑制することができる燃料電池自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池自動車であって、
燃料電池に反応ガスを供給するガス供給流路と、前記燃料電池から排出される反応オフガスを流通させるオフガス流路とを含むガス流路と、
前記ガス流路の開口部から、前記ガス流路への液体の流入を推定する推定手段と、
液体の流入が推定される場合に、前記燃料電池への液体の流入を抑制する流入抑制手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記燃料電池に酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に、前記酸化ガス供給手段を継続的に駆動させる、
ことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記ガス排出口からの排気によって液体の流入を抑制するために必要な、ガスの必要排気圧を算出する必要排気圧算出手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に、前記ガス排出口から排出されるオフガスの排気圧が前記必要排気圧以上になるように、酸化ガス供給手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記燃料電池自動車の要求に基づいて発電した場合に前記ガス排出口から排出されるオフガスの排気圧である要求排気圧を算出する要求排気圧算出手段と、
前記燃料電池を加湿する加湿手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合であって前記必要排気圧が前記要求排気圧よりも高い場合に、前記必要排気圧が前記要求排気圧以下である場合よりも、加湿量を増やすように前記加湿手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第3の発明において、
前記燃料電池自動車の要求に基づいて発電した場合に前記ガス排出口から排出されるオフガスの排気圧である要求排気圧を算出する要求排気圧算出手段と、
前記酸化ガス供給手段と前記燃料電池との間で前記供給ガス流路から分岐し、該燃料電池をバイパスして前記オフガス流路に合流するバイパス流路と、
前記酸化ガス供給手段から供給される酸化ガスを前記バイパス流路と前記燃料電池に分配する、バイパス分配手段と、
を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合であって前記必要排気圧が要求排気圧よりも高い場合に、前記酸化ガスの一部が前記バイパス流路を流通するように前記バイパス分配手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第1の発明において、
前記オフガス流路の流通を遮断できる封止弁を備え、
前記流入抑制手段は、流体の流入が推定される場合に、前記オフガス流路の流通を遮断するように前記封止弁を制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記燃料電池に酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段と、
発電の実行の可否を判断する発電可否判断手段と、
前記ガス排出口からの排気によって液体の流入を抑制するために必要な、ガスの必要排気圧を算出する必要排気圧算出手段を備え、
前記流入抑制手段は、発電が可能である場合には、前記オフガス流路の遮断を解除して、前記オフガス流路のガス排出口から前記必要排気圧以上の排気がなされるように前記酸化ガス供給手段を制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、第6または第7の発明において、
前記燃料電池で発電した電力を蓄電可能な蓄電手段を備え、
前記発電可否判断手段は、前記燃料電池自動車からの発電要求および前記蓄電手段の空き容量に基づいて判断を行う、
ことを特徴とする。
【0014】
また、第9の発明は、第1〜第8のいずれかの発明において、
前記ガス流路は、
前記燃料電池で生成された生成水を外部に排出するための排水口と、
排水口における流体の流通を遮断可能な排水口封止弁と、を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に前記排水口封止弁を閉じるように制御をする、
ことを特徴とする。
【0015】
また、第10の発明は、燃料電池自動車であって、
燃料電池と、
路面上の水位を検知する水位検知手段と、
路面上の水位が所定値以上である場合に、前記燃料電池への液体の流入を抑制する、流入抑制手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、液体が外部から燃料電池へ流入することを抑制することができる。
【0017】
第2の発明によれば、ガス排出口から継続的にガスが排気される。当該排気は、ガス排出口から流入しようとする液体を外部に戻す向きに流れているので、ガス排出口から液体が流入することを抑制できる。
【0018】
第3の発明によれば、流入を抑制するために必要な排気圧以上で排気が継続してなされるので、効果的に液体の流入を抑制できる。
【0019】
第4の発明によれば、排気によって流入を抑制した場合に、燃料電池内部が乾燥することを抑制することができる。すなわち、発電要求に対応する酸化ガスよりも、供給手段によって流動される酸化ガスが多い場合には、発電量に比して燃料電池に供給される酸化ガスが多くなる場合がある。その場合には、発電によって生成される水が酸化剤ガスの供給量に対して少ないため燃料電池内部が乾燥しやすいところ、本発明では加湿量を増加させることで乾燥を抑制することができる。
【0020】
第5の発明によれば、排気によって流入を抑制した場合に、燃料電池の乾燥または劣化を抑制することができる。すなわち、発電要求に対応する酸化ガスよりも、供給手段によって流動される酸化ガスが多い場合には、発電量に比して燃料電池に供給される酸化ガスが多くなる場合がある。本発明によればそのような余剰分のガスの少なくとも一部がバイパス流路を流通するため、燃料電池に供給される酸化ガスの量を発電に対応した適切な量に近づけることができるので、燃料電池への負担を軽減することができる。
【0021】
第6の発明によれば、オフガス流路の流通を遮断することで、ガス排出口からの液体の流入を物理的に防止することができる。
【0022】
第7の発明によれば、オフガス流路の流通の遮断と排気による流入の抑制とを使い分けることができるので、発電が実行できないことによって生じる不具合を防止できる。
【0023】
第8の発明によれば、流入を抑制した場合に、動力不足となることを予防することができる。
【0024】
第9の発明によれば、排水口からの液体の流入を防止することができる。
【0025】
第10の発明によれば、路面上の水位が高い場合に流入を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は実施の形態1の燃料電池自動車1の構成を示す図である。図1に示すように燃料電池自動車1は燃料電池10を床下に搭載している。燃料電池10は反応ガスとして空気と水素の供給を受けて発電を行うものである。なお、図1では、空気の供給・排気系についてのみ図示し、水素側は省略した。空気は、車両前方からエアクリーナ17を通って、コンプレッサ18に導入される。そして、コンプレッサ18で加圧されて、ガス供給流路12を通って燃料電池10に供給される。ガス供給流路12には、加湿器20が備えられており、燃料電池10に供給される空気を加湿することで燃料電池の湿度を調整する。空気は、燃料電池内部で発電に利用された後、オフガス流路14を通って車両後方のガス排出口16から外部へ放出される。
【0027】
オフガス流路14は、上流から下流に向けて下降している。そのため、ガス排出口16から液体がオフガス流路14に流入した場合でも、燃料電池10にまで到達することを抑制できる。また、後述するように本実施の形態では排気ガスの流れによって液体の流入を抑制するところ、流入を抑制するために必要とされる排気ガスの圧力を低くすることができる。これによりコンプレッサ18で消費されるエネルギを低減できる。
【0028】
また、オフガス流路14にはマフラ22が設けられている。マフラ22は、オフガス流路14よりも径が大きく、内部に吸音材を保持している。また、マフラ22の下面は、オフガス流路14のうちマフラの直前部分および直後部分の下面よりも低くなっている。これにより、オフガス流路14はその途中に下方に凹む凹部を有することとなる。ガス排出口16から液体が流入した場合、液体はこの凹部(マフラ)に一旦溜まるので、即座に燃料電池10に流入することはない。したがって、液体の流入を抑制するガスの流れが発生する前に、液体がオフガス流路に入ったとしても、燃料電池10にまで到達することはない。すなわち、多少の応答遅れがあっても、燃料電池10への液体の流入を抑制できる。
【0029】
図2は実施の形態1の燃料電池自動車の外部の構成を示す図である。図2に示すように燃料電池自動車1は車両の前方および後方に水位センサ50を備えている。水位センサ50は、車両の下方へ向かって超音波を照射してその反射から路面が冠水している場合にその水位を測定する。
【0030】
図3は実施の形態1の燃料電池自動車に搭載されるシステムを示す略図である。図3に示すように、燃料電池10は空気のほかに水素の供給を受ける。水素は水素タンク24に貯蔵されており、調圧弁26で所定の圧力に調圧されて燃料電池10に供給される。水素は燃料電池10で発電に利用された後、循環流路28を通って水素タンク24からの水素と合流し、再び燃料電池に供給される。循環流路28には燃料電池10で発電に伴って生成された水を外部に放出するための排水口30があり、排水口30にはその流通を遮断可能な排水弁が備えられる。
【0031】
燃料電池10は、空気と水素を受け取って発電する。得られる電力は、自動車の動力であるモータ、その他の補器やバッテリ32などに供給される。ECU34は水位センサ50からの情報などに基づいて、コンプレッサ18や加湿器20を制御する。
【0032】
なお、本実施の形態と請求項記載の発明との関係では、空気が酸化ガスに、コンプレッサ18が酸化ガス供給手段に、バッテリ32が蓄電手段に、水位センサが水位検知手段に、それぞれ対応する。
【0033】
[実施の形態1の具体的処理]
図4は実施の形態1の処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間ごとに実行される。ECU34は、まず、路面上の水位を取得する(S101)。水位は水位センサ50によって測定されたものである。次に取得した水位が所定値以上であるかどうかを判断する(S103)。所定値以下である場合には、流入のおそれはないと考えられるので、通常の燃料電池制御を行う(S105)。
【0034】
ここで、通常の燃料電池制御、すなわち流入が推定されていない場合について説明する。流入が推定されていない場合には、そのときの負荷およびバッテリの残量に基づいて、燃料電池に対する発電要求がなされる。そして、当該発電要求に対応した量の水素および空気が燃料電池10に供給される。供給される空気の量は、発電に必要な酸素の量や発電効率、コンプレッサ18の消費電力などから算出されている。例えば、実際に消費される酸素の2倍の量の酸素が供給されるようにコンプレッサが制御されている。加湿器はそのような条件下においてフラッディングやドライアップを防止できるように加湿条件を制御されている。以下、流入が推定されていない場合の発電条件を通常の発電条件、そのときの加湿モードを通常の加湿モードと呼ぶ。
【0035】
次に、流入が推定される場合の処理について説明する。ステップS103で水位が所定値以上である場合には液体の流入を推定する。その場合、ECU34は、必要排気圧を算出する(S107)。ここで、必要排気圧とは、ガス排出口16から排出されるオフガスの排気圧によって水の流入を抑制する場合に、前記オフガスの排気圧として必要な圧力である。必要排気圧の算出は、ECUに記憶されているマップを用いて行う。当該マップは事前の実験によって、水位とそのときの必要排気圧を対応付けたものである。
【0036】
次に、ECU34は、要求排気圧を算出する(S109)。ここで、要求排気圧は、通常の発電条件において、要求電力に対応する排気ガスの排気圧である。要求排気圧の算出は、ECUに記憶されているマップを用いて行う。当該マップは、要求電力とそれに対応する排気圧を対応付けたものである。
【0037】
次に、ECU34は算出した必要排気圧と要求排気圧とを比較する(S111)。要求排気圧が必要排気圧以上である場合には、通常の燃料電池制御を行う(S105)。この場合、要求電力に基づいた発電を行うことになるので、流入の抑制に必要な排気圧よりも高圧の排気がなされる。したがって、液体の流入を抑制することができる。
【0038】
ステップS111で、必要排気圧のほうが大きい場合には、排気圧が必要排気圧となるようにコンプレッサ18を駆動させる(S113)。このとき、燃料電池では要求電力に対応する発電を行う。すなわち、通常条件での発電に比べて空気の供給量を増やして発電を行う。これによって、流入の抑制に必要な圧力での排気がなされ、流入を抑制できる。
【0039】
また、加湿器13の加湿モードを、通常の加湿モードに比べて加湿量が多くなるように変更する(S115)。この場合、上述のとおり通常の条件での発電に比べて空気の供給量を増やしているので、発電によって生成される水の量に対して燃料電池内を流れる空気の量が多くなっている。そのため燃料電池10は乾燥しやすい状態にあるといえるところ、加湿量が多くなるようにしているので、乾燥を防止または抑制することができる。
【0040】
また、上記処理と並行して、ECU34は、流入が推定されると、排水弁を閉じ、排水口30からの排水を禁止する。これによって、排水口30からの液体の流入も防止できる。
【0041】
なお、本実施の形態では、ステップS101およびS103によって流入推定手段を、ステップS113およびS115によって流入抑制手段を、それぞれ実現している。
【0042】
[実施の形態1の効果]
本実施の形態によれば、液体の流入が推定される場合、ガス排出口16からは、必要排気圧と要求排気圧のうち高い方の排気圧で継続して排気が行われる。そのため、ガス排出口16からは必要排気圧以上の排気がなされているので、ガス排出口16から液体が逆流していくことを抑制できる。結果、燃料電池に液体が流入することを抑制できる。
【0043】
[実施の形態1の変形例1]
図5は実施の形態1の変形例1における処理を示すフローチャートである。実施の形態1と同じ処理をするステップには同じ符号を付してある。本変形例では、ステップS111において必要排気圧のほうが高圧であると判断される場合に、ECU34は発電量を増加させることで通常の発電条件で発電することができるか否かを判断する(S121)。すなわち、空気の供給量の増加に対応して発電量が増加した場合に、当該電力を消費または蓄電によって吸収可能であるかを判断する。
【0044】
本変形例では、要求電力を決定する際には、回生電力を吸収できるようにバッテリに所定の空き容量を残すこととしている。ステップS121では当該空き容量にも蓄電することを許可して、増加した電力を蓄電できるか否かを判断する。
【0045】
増加分を蓄電することができる場合には、発電量を増加させて発電を実行する(S123)。その際、増加分はバッテリに蓄電する。発電量を増加させることができない場合には、実施の形態1と同様に、要求電力分の発電を行って、必要排気圧の排気なされるようにコンプレッサを駆動する(S113)。また、加湿器のモードを、加湿量が多いモードにする(S115)。
【0046】
空気の供給を増やすとコンプレッサ18で消費される電力も多くなるところ、本変形例によれば、コンプレッサの回転数をあげる場合に、なるべく発電で対応するので燃費の点で有利である。また、加湿器のモードを変更することを減らすことができる。
【0047】
[実施の形態1の変形例2]
実施の形態1では水位から必要排気圧を算出し、当該必要排気圧以上の排気が継続してなされるようにしたが、これに限らない。排気が継続してなされていれば、水は排気ガスの流れに逆らって移動しない限り燃料電池に流入することはないため、排気を継続させることである程度の効果が得られる。すなわちコンプレッサ18が停止することを禁止すればよい。例えば、運転状況に対応して間欠的にコンプレッサを停止させるような処理を別途実行している場合には、当該間欠処理を禁止すればよい。また、例えば必要排気圧を、予め定めた値としても良い。この場合には、実施の形態のフローチャートに従えば、ガス排出口16からは前記予め定めた排気圧以上の排気が継続してなされることとなる。必要排気圧を予め定めた値としても良い点については以下に記載する他の実施の形態についても同じである。
【0048】
[実施の形態1の変形例3]
実施の形態1では、超音波の反射を利用した水位センサによって、液体の流入を推定したが、これに限らない。超音波でなく、電波を照射するものでも良く、カメラ等の撮像手段でも良い。撮像手段としては、バックモニタなど運転支援用の車載カメラを併用しても良い。また、図6に記載のようにタイヤの周辺部などをカメラ等の撮像手段で監視するセンサ51でも良い。また、図7に記載のように端子間の電圧を測定するセンサ52でも良い。また、フロート型の水位センサや流量計など、他の既存の水位計でもよい。路面上の水位を測定することができれば足りる。また、図8に示すように走行抵抗に基づいて水位を推定しても良い。すなわち、道路が冠水している場合走行抵抗が上昇すると考えられるので、走行抵抗と水位との関係を求めておけば、水位を推定することができる。具体的には、モータの出力、勾配、車速などから走行抵抗を算出する(S501、S502)。そして、当該走行抵抗から水位を推定する(S503)。
【0049】
また、流入の推定は路面の水位によらないものも考えられる。例えば雨量によって推定しても良い。雨量に基づく推定の方法としては、ワイパーの制御などに用いられる雨量センサや、ワイパーの速度、車載情報端末に送信される天気予報や注意報・警報などの気象情報、などが考えられる。雨量に基づく場合であっても、雨量と流入可能性の関係、および、雨量と必要排気圧との関係を予め求めてマップにしておけばよい。すなわち、流入の推定手段は、液体の流入が推定できれば足りるものである。この点は他の実施の形態についても同様である。
【0050】
[実施の形態1のその他の変形例]
実施の形態1では、ガス排出口16からの流入を抑制する制御と、排水口30からの流入を抑制する制御を、同じ流入推定をトリガーとして実行したが、これに限らない。例えば、排水口30とガス排出口16の高さが異なる場合には、当該高さと推定される水位との関係からそれぞれ流入を推定しても良い。流入してくると考えられる部位ごとに適切な流入推定を行えばよい。また、実施の形態1では、蓄電装置はバッテリとしたがこれには限られず、燃料電池によって発電された電気エネルギを蓄えることができれば足りる。例えば、二次電池のほか、キャパシタを採用しても良い。
【0051】
実施の形態2.
図9は実施の形態2の構成を示す図である。本実施形態の構成は特に記載する部分を除いて実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同じ構成には同じ符号を付してある。実施の形態2の燃料電池自動車は、バイパス流路40を備えている。バイパス流路40はコンプレッサ18と前記燃料電池10との間でガス供給流路12から分岐し、該燃料電池10をバイパスしてオフガス流路14に合流するガス流路である。バイパス流路40には、流通制御弁42が設けられている。ガス供給流路には、バイパス流路との分岐位置よりも下流部分に流通制御弁44が設けられている。なお、流通制御弁42、44は、流路の流通を制限ないし遮断できる弁であり、液体の流入が推定されていない場合には、流通制御弁42は閉状態、44は開状態とされる。この流通制御弁42、44がバイパス分配手段に対応する。
【0052】
図10は実施の形態2の処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間ごとに実行される。図10に示すように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、必要排気圧および要求排気圧を算出し(S107、S109)、その大小を比較する(S111)。そして、要求排気圧が必要排気圧以上である場合には、通常の燃料電池制御にて発電を実行する(S105)。
【0053】
要求排気圧が必要排気圧よりも小さい場合には、燃料電池10では通常の発電条件で、要求電力分の発電をし、バイパス流路40にも空気を流すことで、必要排気圧の排気をする。すなわち、必要排気圧と要求排気圧の差分を、バイパス流路40を流通する空気によって発生させる。ECU34は、そのために必要なコンプレッサ18の回転数および流通制御弁42、44の開度を計算する(S211、S213)。そして、当該コンプレッサの回転数および流通制御弁の開度にて、発電を実行する(S215)。
【0054】
本実施の形態によれば、液体の流入が推定される場合、ガス排出口16からは、必要排気圧と要求排気圧のうち高い方の排気圧で継続して排気が行われる。そのため、ガス排出口16から液体が逆流して、燃料電池に流入することを抑制できる。また、燃料電池10には通常の発電条件で必要な量の空気が供給され、余剰分はバイパス流路40を流れるので、加湿器の制御モードを変更する必要がない。そのため、加湿器を備えていない燃料電池システムにも適用することができる。加湿器を備えていない燃料電池システムにも適用することができる点は、以下に記載する他の実施の形態や変形例についても同じである。さらに、流通制御弁44を閉じることによって、すべての空気をバイパスさせることもでき、燃料電池10に空気を供給せずに必要排気圧による排気を行うこともできる。したがって、発電をせずに排気圧を発生させることができる。
【0055】
[実施の形態2の変形例]
図11は実施の形態2の変形例の処理を示すフローチャートである。実施の形態1、2または実施の形態1の変形例と同じ処理をするステップには同じ符号を付してある。本変形例では、実施の形態1の変形例1と同様に、ECU34が増加分を蓄電することができると判断する場合には、ECU34は発電量を増加させて発電を実行する(S121、S123)。蓄電することができない場合には、実施の形態2と同様に、通常の発電条件で要求電力に対応する量の空気を燃料電池10に供給し、余剰分をバイパスさせることで必要排気圧を発生させる(S211、S213、S215)。
【0056】
空気の供給を増やすとコンプレッサ18で消費される電力も多くなるところ、本変形例によれば、なるべく発電で対応するので燃費が有利である。また、加湿器のモードを変更することを減らすことができる。
【0057】
なお、必要排気圧は所定値としても良い。その場合は、要求電力に対して必要な空気が燃料電池10に供給され、余剰分がパイバス流路40を流通するように、流通制御弁42、44を制御すればよい。
【0058】
実施の形態3.
図12は実施の形態3の構成を示す図である。本実施形態の構成は特に記載する部分を除いて実施の形態と同様であり、実施の形態1と同じ構成には同じ符号を付してある。本実施の形態では、燃料電池車両1はオフガス流路14に封止弁46を備えている。封止弁46は、当該オフガス流路の流通/遮断を切替えることができる弁である。封止弁46の動作はECU34によって制御されており、通常の燃料電池制御下では開状態であり所定の条件下で閉状態とされる。
【0059】
なお、封止弁46は、マフラ22よりもガスの流れ方向上流側(燃料電池側)に備えられている。これによって、ガス排出口16からオフガス流路14に流れ込んだ液体は、封止弁の位置に到達する前に、一旦マフラ22に入る。そのため、応答遅れなどによって、封止弁46が閉状態になるのが遅れたとしても、液体が封止弁よりもガス流れ方向上流側に流入する前に封止弁46を閉状態とすることができる。これによって、燃料電池10に液体が流入することをより確実に防止することができる。
【0060】
図13は実施の形態2の処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間ごとに実行される。図13に示すように、実施の形態3においても実施の形態1と同様に、必要排気圧および要求排気圧を算出し(S107、S109)、その大小を比較する(S111)。そして、要求排気圧が必要排気圧以上である場合には、通常の燃料電池制御にて発電を実行する(S105)。
【0061】
要求排気圧が必要排気圧よりも小さい場合には、コンプレッサ18を停止し(S311)、封止弁46を閉状態とする(S313)。これによってオフガス流路14の流通が遮断される。物理的にオフガス流路14の流通が遮断されるので、オフガス流路14を通って燃料電池10に液体が流入することを防止できる。
【0062】
なお、本実施の形態では、ステップS111で発電可否判断手段を実現しており、要求排気圧が必要排気圧以上である場合に発電可能と判断していることとなる。
【0063】
本実施の形態によれば、水の流入が推定される場合には、オフガス流路14の流通は遮断されるか、水の流入を抑制することができる排気圧で排気がなされるか、のいずれかになる。そのため、液体がガス排出口16から燃料電池10に流入することを抑制することができる。また、要求電力が少ない場合にはコンプレッサ18を停止するので、コンプレッサによって消費される電力を抑制することができる。特に、車両が停止している場合など、発電が必要ない場合に有効である。
【0064】
また、要求排気圧が必要排気圧よりも大きい場合には発電を実行することとしている。要求電力はバッテリの残量にも対応しているので、負荷が小さい場合であってもバッテリの残量が少ない場合には要求電力は増加する。したがって、要求排気圧が高い場合に発電を実行することで、動力がなくなってしまうことを防止できる。
【0065】
[実施の形態3の変形例]
図14は実施の形態3の変形例の処理を示すフローチャートである。実施の形態1、3または実施の形態1の変形例1と同じ処理をするステップには同じ符号を付してある。実施の形態3では要求排気圧のほうが必要排気圧よりも小さい場合、常にコンプレッサを停止することとしたが、これに限らない。本変形例では、実施の形態1の変形例1と同様に、増加分を蓄電することができる場合には、発電量を増加させて発電を実行する(S121、S123)。蓄電することができない場合には、実施の形態3と同様に、コンプレッサ18を停止し(S311)、封止弁46を閉状態とする(S313)。
【0066】
また、実施の形態3においては、要求排気圧と必要排気圧の大小を比較し、要求排気圧のほうが高い場合には発電を実行することとしている。これは自動車の不測の停止を防止する観点から好ましい。しかしながら、これに限られるわけではない。すなわち、流入の危険がある場合に、常に封止弁46を閉じることとしても良い。これにより、液体が燃料電池に流入することは防止できる。
【0067】
また、実施の形態3においては、封止弁46をマフラ22よりも上流側にしたが、封止弁は、燃料電池とガス排出口との流通を遮断できるものであれば足りる。例えば、マフラ22よりも下流側に設けても良い。また、燃料電池10とオフガス流路14との接続部付近に設けられるエアシャットバルブと併用してもよい。
【0068】
実施の形態4.
図15は実施の形態4の構成を示す図である。本実施形態の構成は特に記載する部分を除いて実施の形態1と同様であり、実施の形態1〜3と同じ構成には同じ符号を付してある。燃料電池車両1は、バイパス流路40と、封止弁46と、流通制御弁42、44とを備えている。封止弁46は、バイパス流路40とオフガス流路14とが合流する合流部49よりも下流、かつ、マフラ22よりも上流に設けられる。通常の燃料電池制御では、流通制御弁42は閉状態、流通制御弁44と封止弁46は開状態とされている。封止弁46が合流部49よりも下流にあるので、封止弁46が閉状態にあるときに液体がバイパス流路40へ流れ込むことがない。したがって、バイパス流路を通って燃料電池10へ液体が流入することを防止できる。
【0069】
図16は実施の形態4の具体的処理を示すフローチャートである。この処理は、所定の時間ごとに実行される。図16に示すように、実施の形態4においても実施の形態1と同様に、必要排気圧および要求排気圧を算出し(S107、S109)、その大小を比較する(S111)。そして、要求排気圧が必要排気圧以上である場合には、通常の燃料電池制御にて発電を実行する(S105)。
【0070】
要求排気圧が必要排気圧よりも低圧である場合には、封止弁46を閉じることができるか否かを判断する(S411)。封止弁を閉じることができる場合には、コンプレッサを停止し、封止弁46を閉状態に制御する(S311、S313)。なお、本実施の形態では、少量発電の要求がある場合に封止弁を閉じることができないと判断する。例えば、燃料電池の温度が低く、暖機の必要がある場合に少量発電の要求があるとすることができる。
【0071】
封止弁46を閉じることができない場合には、封止弁46を開状態とし、実施の形態2の変形例と同様に(図11参照)、必要排気圧に対応する発電量を吸収可能か判断する(S121)。可能である場合には必要排気圧に対応する発電を行う(S123)。可能でなければ、必要排気圧で排気できるようにコンプレッサを制御して、余剰分の空気はバイパス流路を流通するように分配弁42、44を制御する(S211、S213、S215)。
【0072】
本実施の形態によれば、液体の流入を抑制できる。また、液体の流入を防止しつつ、少量発電の要求に応えることができる。すなわち、実施の形態3では少量の発電をしながら液体の流入を抑制するのは困難であるが、本実施の形態では少量の発電をしながら、流入を抑制できる。また、発電の必要がないときには封止弁46を閉じるので、コンプレッサ18でエネルギを消費することなく液体の流入を抑制できる。
【0073】
ところで、実施の形態4では、封止弁46による封止の可否は少量発電の要求に基づいて判断したがこれに限らない。例えば、バッテリの空き容量が所定値以下である場合に発電が必要であると判断しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1の水位センサを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1の燃料電池システムの略図である。
【図4】本発明の実施の形態1の制御のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例1の制御のフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例の水位センサを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の変形例の水位センサを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1の変形例の水位推定のフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2の制御のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2の変形例の制御のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3の制御のフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態3の変形例の制御のフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態4の構成を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態4の制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 燃料電池自動車
10 燃料電池
12 ガス供給流路
14 オフガス流路
16 ガス排出口
17 エアクリーナ
18 コンプレッサ
20 加湿器
22 マフラ
24 水素タンク
26 調圧弁
28 循環流路
30 排水口
32 バッテリ
34 ECU
40 バイパス流路
42、44 流通制御弁
46 封止弁
50、51、52 水位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に反応ガスを供給するガス供給流路と、前記燃料電池から排出される反応オフガスを流通させるオフガス流路とを含むガス流路と、
前記ガス流路の開口部から、前記ガス流路への液体の流入を推定する推定手段と、
液体の流入が推定される場合に、前記燃料電池への液体の流入を抑制する流入抑制手段と、
を備える燃料電池自動車。
【請求項2】
前記燃料電池に酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に、前記酸化ガス供給手段を継続的に駆動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項3】
前記オフガス流路のガス排出口からの排気によって液体の流入を抑制するために必要な、ガスの必要排気圧を算出する必要排気圧算出手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に、前記排出口から排出されるオフガスの排気圧が前記必要排気圧以上になるように、酸化ガス供給手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池自動車。
【請求項4】
前記燃料電池自動車の要求に基づいて発電した場合に前記ガス排出口から排出されるオフガスの排気圧である要求排気圧を算出する要求排気圧算出手段と、
前記燃料電池を加湿する加湿手段を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合であって前記必要排気圧が前記要求排気圧よりも高い場合に、前記必要排気圧が前記要求排気圧以下である場合よりも、加湿量を増やすように前記加湿手段を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池自動車。
【請求項5】
前記燃料電池自動車の要求に基づいて発電した場合に前記ガス排出口から排出されるオフガスの排気圧である要求排気圧を算出する要求排気圧算出手段と、
前記酸化ガス供給手段と前記燃料電池との間で前記供給ガス流路から分岐し、該燃料電池をバイパスして前記オフガス流路に合流するバイパス流路と、
前記酸化ガス供給手段から供給される酸化ガスを前記バイパス流路と前記燃料電池に分配する、バイパス分配手段と、
を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合であって前記必要排気圧が要求排気圧よりも高い場合に、前記酸化ガスの一部が前記バイパス流路を流通するように前記バイパス分配手段を制御する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池自動車。
【請求項6】
前記オフガス流路の流通を遮断できる封止弁を備え、
前記流入抑制手段は、流体の流入が推定される場合に、前記オフガス流路の流通を遮断するように前記封止弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項7】
前記燃料電池に酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段と、
発電の実行の可否を判断する発電可否判断手段と、
前記ガス排出口からの排気によって液体の流入を抑制するために必要な、ガスの必要排気圧を算出する必要排気圧算出手段を備え、
前記流入抑制手段は、発電が可能である場合には、前記オフガス流路の遮断を解除して、前記オフガス流路のガス排出口から前記必要排気圧以上の排気がなされるように前記酸化ガス供給手段を制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池自動車。
【請求項8】
前記燃料電池で発電した電力を蓄電可能な蓄電手段を備え、
前記発電可否判断手段は、前記燃料電池自動車からの発電要求および前記蓄電手段の空き容量に基づいて判断を行う、
ことを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の燃料電池自動車。
【請求項9】
前記ガス流路は、
前記燃料電池で生成された生成水を外部に排出するための排水口と、
排水口における流体の流通を遮断可能な排水口封止弁と、を備え、
前記流入抑制手段は、液体の流入が推定される場合に前記排水口封止弁を閉じるように制御をする、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池自動車。
【請求項10】
燃料電池と、
路面上の水位を検知する水位検知手段と、
路面上の水位が所定値以上である場合に、前記燃料電池への液体の流入を抑制する、流入抑制手段と、
を備える燃料電池自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−32513(P2009−32513A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194936(P2007−194936)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】