説明

燃料電池車両

【課題】車室内に水素タンクを設けた燃料電池車両において、その安全性を確保しつつ、車室内の空間を有効に利用できる燃料電池車両を提供すること。
【解決手段】燃料電池車両1は、水素ガスを燃料として駆動力を発生する燃料電池20及び駆動モータ10と、水素ガスを貯蔵する水素タンク30と、水素タンク30の周囲を覆うタンク容器40とを備える。タンク容器40は、水素タンク30を収容した状態で車両の内外を区画する後部パネル72の上部に積載される。後部パネル72のうちタンク容器40が積載されるタンク積載部74、並びに、タンク容器40のうちタンク積載部74に対向するタンク容器下部42には、それぞれ、燃料電池車両1の外部とタンク容器40の内部とを連通する走行風導入口781,422が設けられる。また、タンク容器40のタンク容器上部41には、タンク容器40の内部と燃料電池車両1の外部とを連通する換気口412が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関する。詳しくは、水素ガスを貯蔵する水素タンクを備えた燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料として発電し、この発電した電力を動力源として走行する燃料電池車両には、水素ガスを貯蔵する水素タンクが搭載される。このような燃料電池車両における航続距離は、水素タンクに充填できる水素ガスの量に関わる。したがって、水素タンクの総容量は、出来るだけ大きい方が好ましい。
【0003】
ところで近年では、水素タンクを設ける場所は車外が主流となっている。一方、上述のように燃料電池車両の航続距離を長くすること、すなわち、水素タンクの総容量を出来るだけ大きく確保するためには、車外だけでなく車室内の空間を利用することが好ましい。
【0004】
しかしながら、水素タンクを車室内に設ける場合、その安全性を確保するためには、車外に設ける場合とは異なる装置が必要となる。例えば、水素タンクから水素ガスが漏れた場合を想定する。水素タンクを車室内に設けた場合、漏れた水素ガスが車室内に溜まる虞があるため、漏れた水素ガスを車外に排出するための装置が必要となる。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、水素タンクを箱状の格納ボックス内に収納するとともに、この格納ボックスに、車外に連通した通気パイプを設ける水素タンクの搭載構造が示されている。このような通気パイプで車外と格納ボックス内とを連通することにより、水素タンクから水素ガスが漏れた場合であっても、漏れた水素ガスを車室内に溜めることなく、車外に排出することが可能となる。
【特許文献1】特開2003−118401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1に示された水素タンクの搭載構造では、漏れた水素ガスを積極的に排出する機構を備えていない。このため、漏れた水素ガスが通気パイプを介して車外に排出されず、格納ボックスの内部に滞留してしまい、結果として車室内に水素ガスが溜まってしまう虞がある。
【0007】
そこで、格納ボックスにファンなどの換気装置をさらに設けることにより、格納ボックス内の水素ガスを積極的に排出することも考えられるが、しかしながらこの場合、換気装置を設けるための空間を車室内に確保する必要が生じる。したがって、水素タンクの容量を大きくすることができなくなってしまうため、上述のような水素タンクを車室内に設けることの利点が損なわれてしまう。
【0008】
本発明は、上述した点を考慮してなされたものであり、車室内に水素タンクを設けた燃料電池車両において、その安全性を確保しつつ、車室内の空間を有効に利用できる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃料電池車両(例えば、後述の燃料電池車両1)は、水素ガスを燃料として駆動力を発生する駆動力発生装置(例えば、後述の燃料電池20及び駆動モータ10)と、水素ガスを貯蔵する水素タンク(例えば、後述の水素タンク30)と、前記水素タンクの周囲を覆うタンク容器(例えば、後述のタンク容器40)と、を備える燃料電池車両であって、前記タンク容器は、前記水素タンクを収容した状態で車両の内外を区画するフロアパネル(例えば、後述のフロアパネル70)の上部に積載され、前記フロアパネルのうち前記タンク容器が積載される積載部(例えば、後述のタンク積載部74)、並びに、前記タンク容器のうち前記積載部に対向するタンク容器下部(例えば、後述のタンク容器下部42)には、それぞれ、前記燃料電池車両の外部と前記タンク容器の内部とを連通する走行風導入口(例えば、後述の第1走行風導入口781及び第2走行風導入口422)が設けられ、前記タンク容器の上部(例えば、後述のタンク容器上部41)には、前記タンク容器の内部と前記燃料電池車両の外部とを連通する走行風排出口(例えば、後述の換気口412)が設けられることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、水素タンクをタンク容器に収容し、さらにこのタンク容器をフロアパネルの上部に積載した。すなわち、水素タンクを車室内に設けることにより、水素タンクの総容量を大きくすることができる。
また、フロアパネルの積載部、並びに、この積載部に対向するタンク容器のタンク容器下部に、それぞれ、燃料電池車両の外部とタンク容器の内部とを連通する走行風導入口を形成し、さらにこのタンク容器の上部に、タンク容器の内部と燃料電池車両の外部とを連通する走行風排出口を形成した。これにより、走行風導入口からタンク容器の内部に走行風を導入しながら、このタンク容器の内部に残留するガスを走行風排出口から車外に排出することができる。したがって、水素タンクから水素ガスが漏れた場合であってもタンク容器の内部に水素ガスを溜めることなく車外に積極的に排出することができる。また、この発明によれば、タンク容器の内部を換気するためにファンなどの換気装置を設ける必要もないので、車室内の空間を有効に利用することができる。
【0011】
この場合、前記水素タンクは、水素ガスが充填される高圧容器(例えば、後述の高圧容器31)と、当該高圧容器の一端側に形成された開口部(例えば、後述の開口部32)を密閉する蓋部材(例えば、後述の蓋部材33)と、を含み、前記蓋部材は、前記タンク容器の内部のうち、前記走行風導入口から前記走行風排出口へ流通する外気の流路上に配置されることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、タンク容器の内部のうち、走行風導入口から走行風排出口へ流通する外気の流路上に、水素タンクの蓋部材を配置した。このような水素タンクにおいて、蓋部材は、密閉しにくく、水素ガスが漏れる可能性の最も高い部分である。したがって、水素タンクから水素ガスが漏れた場合であっても、漏れた水素ガスを確実に車外に排出することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0013】
この場合、前記タンク容器は、前記水素タンクの外形に沿った形状であることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、タンク容器の形状を水素タンクの外形に沿ったものにすることで、タンク容器と水素タンクとの間の隙間を出来るだけ小さくし、さらに、タンク容器の大きさを出来るだけ小さくすることができる。またこの場合、タンク容器と水素タンクとの間の隙間を出来るだけ小さくすることにより、タンク容器の内部に残留するガスの量を低減することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0015】
この場合、前記タンク容器下部は下方に向けて凸状に形成されるとともに、その走行風導入口は当該タンク容器下部の最下部近傍に形成され、前記積載部は上方に向けて凹状に形成されるとともに、その走行風導入口は当該積載部の最下部近傍に形成され、前記タンク容器は、前記積載部を囲う略枠状のフレーム(例えば、後述のサブフレーム50)を介して前記フロアパネルに固定されることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、タンク容器下部に略枠状のフレームを取り付け、さらにこのフレームを介してタンク容器を積載部に固定した。これにより、作業性を向上することができる。
【0017】
この場合、前記積載部と前記タンク容器下部との間は、それぞれの走行風導入口の周囲において、シール部材(例えば、後述のシール部材43)により密閉されることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、積載部とタンク容器下部との間は、それぞれの走行風導入口の周囲において、シール部材により密封される。これにより、水素タンクから漏れた水素ガスがフロアパネルとタンク容器との間に溜まるのを防止できる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0019】
この場合、前記タンク容器及び前記フロアパネルの走行風導入口は、それぞれ、車両前方へ向けて傾斜することが好ましい。
【0020】
この発明によれば、タンク容器及びフロアパネルの走行風導入口を、車両前方へ向けて傾斜することにより、走行風をタンク容器の内部にさらに積極的に導入することができる。したがって、タンク容器に水素ガスが滞留するのをさらに抑制し、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0021】
この場合、前記水素タンクは、水素ガスが充填される高圧容器(例えば、後述の高圧容器31)と、その温度が所定温度以上になると開弁し前記高圧容器内の水素ガスを排出する安全弁(例えば、後述の安全弁34)と、を含み、前記タンク容器下部の走行風導入口または前記積載部の走行風導入口の近傍には、当該走行風導入口の一部を覆うとともに、前記安全弁へ外気を誘導するバッフルプレート(例えば、後述のバッフルプレート60,60A)が設けられることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、走行風導入口の近傍に、この走行風導入口の一部を覆うとともに、水素タンクの安全弁へ外気を誘導するバッフルプレートを設けた。このようなバッフルプレートを設けることにより、例えば、燃料電池車両において火災が発生した場合、火炎により加熱された外気を安全弁に誘導し、この安全弁を速やかに開弁することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上することができる。
【0023】
この場合、前記バッフルプレートは、前記タンク容器の走行風導入口の縁部に固定され、前記バッフルプレートと前記縁部との間には、隙間が形成されることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、バッフルプレートをタンク容器の走行風導入口の縁部に固定するとともに、このバッフルプレートと縁部との間に隙間を形成した。これにより、隙間を介して外気をさらに導入することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0025】
この場合、前記バッフルプレートには、その一端側から他端側へ延びる外気流路が形成され、前記外気流路の一端側には、外気を導入する第1外気導入口が設けられ、前記外気流路の他端側には、当該外気流路を流通する外気の流れを上方へ変える傾斜部が設けられ、前記バッフルプレートは、前記傾斜部を前記安全弁側に向けて、前記タンク容器下部の走行風導入口の縁部に固定され、前記タンク容器下部の走行風導入口のうち、前記安全弁側には前記バッフルプレートにより覆われていない第2外気導入口が設けられることが好ましい。
【0026】
この発明によれば、バッフルプレートの傾斜部を安全弁側に向けて、タンク容器下部に固定することにより、第1外気導入口から導入した外気を安全弁へ積極的に流入させることができる。またさらに、タンク容器下部の走行風導入口のうち安全弁側に、バッフルプレートにより覆われていない第2外気導入口を設けた。これにより、この第2外気導入口を介して安全弁側へ積極的に流入させることができる。
例えば、燃料電池車両において火災が発生した場合、バッフルプレートにより水素タンクの高圧容器を火炎から保護しつつ、火炎または火炎により加熱された外気を、第1外気導入口及び第2外気導入口を介して積極的に安全弁側に誘導し、この安全弁を速やかに開弁することができる。したがって、燃料電池車両1の安全性をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の燃料電池車両によれば、水素タンクを車室内に設けることにより、水素タンクの総容量を大きくすることができる。また、走行風導入口からタンク容器の内部に走行風を導入しながら、このタンク容器の内部に残留するガスを走行風排出口から車外に排出することができる。したがって、水素タンクから水素ガスが漏れた場合であってもタンク容器の内部に水素ガスを溜めることなく車外に積極的に排出することができる。また、この燃料電池車両によれば、タンク容器の内部を換気するためにファンなどの換気装置を設ける必要もないので、車室内の空間を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池車両1の概略構成を示す側面図である。
燃料電池車両1は、車輪を回転駆動するための駆動力を発生する駆動モータ10と、反応ガスを燃料として発電する燃料電池20と、水素ガスを貯蔵する水素タンク30と、を備える。
【0029】
燃料電池車両1において、運転者が居住する車室Rは、フロアパネル70により区画される。すなわち、燃料電池車両1のボディBで覆われた空間において、フロアパネル70よりも上方は車室Rであり、フロアパネル70よりも下方は車外である。このようにフロアパネル70によりその内外が区画された燃料電池車両1において、燃料電池20は車外に設けられ、水素タンク30は車室R内に設けられる。
【0030】
より具体的には、フロアパネル70は車両前後方向に沿って延び、車両前方側の前部パネル71と、車両後方側の後部パネル72とに分けられる。
前部パネル71のうち車両幅方向の中央部には、車室側へ向けて凸状に形成されたセンターコンソール73が設けられており、燃料電池20はこのセンターコンソール73内に設けられている。また、この燃料電池20は、前部パネル71の下方に設けられたアンダーカバー75により底部から覆われている。
【0031】
一方、後部パネル72には、車両上方へ向けて凹状に形成されたタンク積載部74が形成されており、水素タンク30は、後述のタンク容器40に収容した状態でタンク積載部74に積載されている。なお、この車両後方側の構成については、後に図2〜図10を参照して詳述する。
【0032】
燃料電池20は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陽極)及びカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。この燃料電池20は、図示しない反応ガス供給装置により、アノード電極(陽極)側に水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給されると、電気化学反応により発電する。この燃料電池20により発電された電力は、駆動モータ10に供給される。したがって、燃料電池車両1における駆動力発生装置は、これら燃料電池20及び駆動モータ10により構成される。
【0033】
以下では、図2〜図10を参照して、車両後方側の構成について説明する。
図2は、図1中の線II−IIに沿った断面図であり、車両後方側の構成を示す断面図である。また、この図2は、車両の後方側から視た断面図である。したがって、図2中の左側は、車両進行方向左側を示し、図2中の右側は、車両進行方向右側を示す。
図3は、後部パネル72及びタンク容器40の構成を示す分解斜視図である。また、この図3において、左側を車両前方とし、右側を車両後方とする。
【0034】
図2に示すように、水素タンク30は、水素ガスが充填される略円筒状の高圧容器31と、この高圧容器31の一端側に形成された開口部32を密閉する蓋部材33と、を含んで構成される。水素タンク30は、後述のタンク容器40内に収容された状態で、蓋部材33を車両進行方向右側に向けて、車両幅方向に沿って後部パネル72上に積載される。
【0035】
図4は、水素タンク30の構成を示す側面図である。より具体的には、水素タンク30を車両進行方向右側から視た図である。
蓋部材33には、ガス充填用配管37と、ガス供給用配管38と、ガス排出用配管39とがそれぞれ接続されている。
【0036】
ガス充填用配管37は、車外に設けられた充填口に接続されている。水素ガスは、このガス充填用配管37を介して高圧容器31に充填される。
ガス供給用配管38は、燃料電池20に接続されている。高圧容器31に充填された水素ガスは、このガス供給用配管38を介して燃料電池20に供給される。
ガス排出用配管39は、車外に開放されている。水素タンク30が所定の温度以上になった場合、高圧容器31に充填された水素ガスは、このガス排出用配管39を介して車外に排出される。
【0037】
図5は、蓋部材33の構成を示す正面図である。
蓋部材33には、ガス充填用配管37が接続される充填通路371と、ガス供給用配管38が接続される供給通路381と、ガス排出用配管39が接続される排出通路391とが、それぞれ、高圧容器31の内部に連通する通路として形成されている。
【0038】
充填通路371には、充填口から高圧容器31に供給された水素ガスが逆流するのを防止ための図示しない逆止弁が設けられている。
供給通路381には、高圧容器31に充填された水素ガスの供給量を調整するための図示しない電磁弁が設けられている。
排出通路391には、その温度が所定の温度以下である場合には閉弁しており、所定の温度以上になった場合には開弁する安全弁34が設けられている。
【0039】
図6及び図7は、図5中の線VI−VIに沿った断面図であり、安全弁34の構成を示す断面図である。より具体的には、図6は、安全弁34が閉弁した状態を示し、図7は、安全弁34が開弁した状態を示す。
【0040】
安全弁34は、排出通路391に形成されたシリンダ341と、このシリンダ341内に摺動可能に設けられ排出通路391を開閉する弁体342と、この弁体342を支持する弁体支持部343と、スプリング344と、可溶金属345と、これら弁体342、弁体支持部343、スプリング344、及び可溶金属345をシリンダ341内に収める締結部材346と、を含んで構成される。
【0041】
弁体支持部343は、シリンダ341内で摺動可能に設けられるとともに、弁体342を開閉する方向に沿って支持する。
可溶金属345は、所定の温度を超えると溶けるものであり、例えばBi−In合金で構成される。可溶金属345は、弁体支持部343と締結部材346との間に設けられる。
スプリング344は、弁体支持部343と弁体342との間に設けられ、可溶金属345側へ向かって弁体支持部343を付勢し、排出通路391を閉じる方向に向かって弁体342を付勢する。
【0042】
ここで、例えば火災が発生することで可溶金属345が上述の温度を超えると、図7に示すように、可溶金属345が溶ける。可溶金属345が溶けると、スプリング344が伸びるとともに、このスプリング344の弾性力により弁体支持部343が締結部材346側に付勢される。さらに、弁体342は、高圧容器31内の水素ガスの圧力により締結部材346側に押し上げられ、これにより、高圧容器31内の水素ガスが室外に排出される。
【0043】
図2及び図3に戻って、タンク容器40及び後部パネル72の構成について説明する。
後部パネル72は、車両前後方向に沿って延びており、タンク容器40が積載されるタンク積載部74が形成されている。
【0044】
タンク積載部74は、上方に向けて凹状に形成されており、このタンク積載部74を囲う略矩形状の縁部77に対して低くなっている。タンク積載部74の略中央の最下部近傍には、車外からタンク容器40内に外気を導入する、略矩形状の第1走行風導入口781が貫通して形成されている。第1走行風導入口781は、車両幅方向に沿って延び、さらに車両前方へ向けて傾斜する(後述の図10参照)。
【0045】
図2に示すように、タンク容器40は、車両幅方向に沿って延びる略円筒状であり、水素タンク30よりも大きい。このタンク容器40は、水素タンク30の周囲を覆うように、水素タンク30の外形に沿った形状に形成される。また、水素タンク30の表面とタンク容器40の内面との間には、上述のガス充填用配管37、ガス放出用配管38、及びガス供給用配管39を配設でき、かつ、後述の第2走行風導入口422から導入された外気が流通できる程度の隙間が確保される。
【0046】
以下では、タンク容器40のうち水素タンク30の蓋部材33よりも上方側をタンク容器上部41とし、水素タンク30の蓋部材33よりも下方側をタンク容器下部42として説明する。
【0047】
タンク容器上部41には、配管排出口411と、走行風排出口としての換気口412とが形成されている。配管排出口411は、タンク容器上部41のうち略中央に形成され、換気口412は、タンク容器上部41のうち車両進行方向右側かつ水素タンク30の蓋部材33の近傍に形成されている。
【0048】
配管排出口411には、配管用ダクト413が接続されており、上述の複数の配管37,38,39は、これら配管排出口411及び配管用ダクト413を介してタンク容器40の外部に取り出される。
換気口412は、車外に連通する換気用ダクト414に接続されている。これにより、タンク容器40の内部と車外とが連通する。
【0049】
図8は、タンク容器下部42の構成を示す斜視図であり、図9は、タンク容器下部42の構成を示す下面図である。これら図8及び図9は、それぞれ、タンク容器40を下方から視た図である。
図8に示すように、タンク容器下部42には、下方に向けて凸状に形成された凸部421が設けられている。凸部421の略中央の最下部近傍には、車外からタンク容器40内に外気を導入するために、略矩形状の第2走行風導入口422が貫通して形成されている。この第2走行風導入口422は、車両幅方向に沿って延び、また、車両前方へ向けて傾斜する(後述の図10参照)。また、この凸部421のうち、第2走行風導入口422の縁部423は、略平らに形成されている。
【0050】
タンク容器下部42には、枠状のサブフレーム50が取り付けられている。サブフレーム50は後部パネル72の縁部77と略同形であり、タンク容器40はこのサブフレーム50を介して後部パネル72に固定される(図2参照)。このサブフレーム50の下面、すなわち、後部パネル72側の面には、後部パネル72からタンク容器40に伝わる振動を吸収する複数のインシュレータ51が設けられている。また、サブフレーム50をタンク容器下部42に固定すると、凸部421はサブフレーム50に囲われ、第2走行風導入口422がサブフレーム50の下方側から露出する。
【0051】
タンク容器下部42の内部のうち、第2走行風導入口422の近傍には、この第2走行風導入口422の一部を覆うとともに、水素タンク30の安全弁34へ外気を誘導するバッフルプレート60が設けられている。バッフルプレート60は、車両幅方向に沿って延びる第2走行風導入口422のうち、車両進行方向右側、すなわち水素タンク30の安全弁34側に隙間Dが形成されるように、第2走行風導入口422と水素タンク30との間に設けられる(図9参照)。
【0052】
図2及び図3に戻って、タンク容器40を後部パネル72に固定する手順について説明する。
上述のようにしてサブフレーム50に取り付けられたタンク容器40は、サブフレーム50を縁部77に固定することにより、後部パネル72に取り付けられる。ここで、タンク容器40を後部パネル72に固定すると、タンク積載部74の第1走行風導入口781と、タンク容器下部42の第2走行風導入口422とが対向し、これにより、タンク容器40の内部と車外とが連通する。
また、タンク容器40を後部パネル72に固定する際、タンク積載部74とタンク容器下部42との間には、第1走行風導入口781及び第2走行風導入口422を囲う環状のシール部材43が介装される。これにより、タンク積載部74とタンク容器下部42との間は、それぞれの走行風導入口781,422の周囲においてシール部材43により密閉される。
【0053】
本実施形態の燃料電池車両1によれば、以下の効果を奏する。
(1)水素タンク30をタンク容器40に収容し、さらにこのタンク容器40をフロアパネル70の上部に積載した。すなわち、水素タンク30を車室内に設けることにより、水素タンク30の総容量を大きくすることができる。
また、フロアパネル70のタンク積載部74、並びに、このタンク積載部74に対向するタンク容器40のタンク容器下部42に、それぞれ、燃料電池車両1の外部とタンク容器40の内部とを連通する第1走行風導入口781及び第2走行風導入口422を形成し、さらにこのタンク容器40のタンク容器上部41に、タンク容器40の内部と燃料電池車両1の外部とを連通する換気口412を形成した。
これにより、図2の矢印91に示すように、走行風導入口781,422からタンク容器40の内部に走行風を導入しながら、さらに矢印92に示すように、タンク容器40の内部に残留するガスを換気口412から車外に排出することができる。したがって、水素タンク30から水素ガスが漏れた場合であっても、タンク容器40の内部に水素ガスを溜めることなく車外に積極的に排出することができる。また、本実施形態の燃料電池車両1によれば、タンク容器40の内部を換気するためにファンなどの換気装置を設ける必要もないので、車室内の空間を有効に利用することができる。
【0054】
(2)図2の矢印93に示すように、タンク容器40のタンク容器下部42から導入された走行風は、タンク容器40の内部の車両進行方向右側を通って、換気口412から車外へ抜ける。また、水素タンク30の蓋部材33は、タンク容器40の内部のうち、このような外気の流路上に配置される。この水素タンクにおいて、蓋部材33は、密閉しにくく、水素ガスが漏れる可能性の最も高い部分である。したがって、水素タンク30から水素ガスが漏れた場合であっても、漏れた水素ガスを走行風とともに確実に車外に排出することができる。したがって、燃料電池車両1の安全性をさらに向上できる。
【0055】
(3)タンク容器40の形状を水素タンク30の外形に沿ったものにすることで、タンク容器40と水素タンク30との間の隙間を出来るだけ小さくし、さらにタンク容器30の大きさを出来るだけ小さくすることができる。またこの場合、タンク容器と水素タンク30との間の隙間を出来るだけ小さくすることにより、タンク容器40の内部に残留するガスの量を低減することができる。したがって、燃料電池車両1の安全性をさらに向上できる。
【0056】
(4)タンク容器下部42に枠状のサブフレーム50を取り付け、さらにこのサブフレーム50を介してタンク容器40をタンク積載部74に固定した。これにより、作業性を向上することができる。
【0057】
(5)タンク積載部74とタンク容器下部42との間は、それぞれの走行風導入口781,422の周囲において、シール部材43により密封される。これにより、水素タンク30から漏れた水素ガスがフロアパネル70とタンク容器40との間に溜まるのを防止できる。したがって、燃料電池車両1の安全性をさらに向上できる。
【0058】
(6)図10は、図2中の線X−Xに沿った断面図である。図10中の左方は車両前方を示し、右方は車両後方を示す。また、線HLは水平線、すなわち車両進行方向を示す。
図10に示すように、後部パネル72の第1走行風導入口781及びタンク容器40の第2走行風導入口422を、車両進行方向HLに対し傾斜することにより、走行風をタンク容器40の内部にさらに積極的に導入することができる。したがって、タンク容器40に水素ガスが滞留するのをさらに抑制し、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0059】
(7)タンク容器40の内部のうち、第2走行風導入口422の近傍に、この第2走行風導入口422の一部を覆うとともに、水素タンク30の安全弁34へ外気を誘導するバッフルプレート60を設けた。このようなバッフルプレート60を設けることにより、例えば、燃料電池車両1において火災が発生した場合、火災により加熱された外気を安全弁34に誘導し、この安全弁34を速やかに開弁することができる。したがって、燃料電池車両1の安全性をさらに向上することができる。
【0060】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0061】
図11は、本実施形態に係るタンク容器40及びバッフルプレート60Aの構成を示す斜視図である。また、図11中の左側は、車両進行方向右側を示し、図11中の右側は、車両進行方向左側を示す。
本実施形態の燃料電池車両は、第1実施形態の燃料電池車両1と、バッフルプレート60Aの構成及びこのバッフルプレート60Aを設ける位置が異なる。本実施形態のバッフルプレート60Aは、第2走行風導入口422の一部を外部から覆うように、タンク容器40に固定される。
【0062】
図12は、バッフルプレート60Aの構成を示す斜視図である。より具体的には、図12は、バッフルプレート60Aをタンク容器下部42側から視た斜視図である。
また、このバッフルプレート60Aの略中央には、その一端側から他端側へ車両幅方向に沿って延びる断面コ字状の外気通路61Aが形成されている。
この外気通路61Aの一端側には、外気を導入する第1外気導入口62Aが設けられている。一方、外気通路61Aの他端側には、外気通路61Aを一端側から他端側へ流通する外気の流れを上方へ変える傾斜部63Aが設けられている。
【0063】
外気通路61Aの側壁となる側部64A,64Aの上方側はフランジ状に形成され、タンク容器40の第2走行風導入口422の縁部423と接する複数の取付部65Aが設けられている。また、各取付部65Aの間は高さが低くなっており、複数の隙間部66Aが形成されている。このような隙間部66Aを形成することにより、バッフルプレート60Aとタンク容器40の縁部423との間に隙間を形成し、この隙間から外気通路61Aに外気を導入することができる。
【0064】
図11に戻って、以上のように構成されたバッフルプレート60Aは、傾斜部63Aを、車両進行方向右側、すなわち水素タンク30の安全弁34側(後述の図13参照)に向けるとともに、タンク容器下部42の第2走行風導入口422の縁部423に各取付部65Aを合わせて固定される。
ここで、バッフルプレート60Aは、車両幅方向に沿って延びる第2走行風導入口422のうち、車両進行方向右側に、バッフルプレート60Aにより覆われていない隙間としての第2外気導入口67Aが形成されるように、タンク容器40に固定される。
【0065】
本実施形態の燃料電池車両によれば、以下のような効果を奏する。
(8)タンク容器40の外部のうち、第2走行風導入口422の近傍に、この第2走行風導入口422の一部を覆うとともに、水素タンク30の安全弁34へ外気を誘導するバッフルプレート60Aを設けた。このようなバッフルプレート60Aを設けることにより、例えば、燃料電池車両において火災が発生した場合、火炎により加熱された外気を安全弁に誘導し、この安全弁を速やかに開弁することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上することができる。
【0066】
(9)図13は、タンク容器40の構成を示す下面図である。バッフルプレート60Aをタンク容器40の第2走行風導入口422の縁部423に固定するとともに、このバッフルプレート60Aと縁部423との間に複数の隙間を形成した。これにより、図13中の白抜き矢印95に示すように、これら隙間を介して外気をさらに導入することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上できる。
【0067】
(10)バッフルプレート60Aの傾斜部63Aを水素タンク30の安全弁34側に向けて、タンク容器下部42に固定することにより、図13中の白抜き矢印96に示すように、第1外気導入口62Aから導入した外気を安全弁34へ積極的に流入させることができる。またさらに、タンク容器下部42の第2走行風導入口422のうち安全弁34側に、バッフルプレート60Aにより覆われていない第2外気導入口67Aを設けた。これにより、図13中の白抜き矢印97に示すように、第2外気導入口67Aを介して安全弁34側へ積極的に流入させることができる。
【0068】
例えば、燃料電池車両において火災が発生した場合、バッフルプレート60Aにより水素タンク30の高圧容器31を火炎から保護しつつ、火炎または火炎により加熱された外気を、これら2つの第1外気導入口62A及び第2外気導入口67Aを介して積極的に安全弁34側に誘導し、この安全弁34を速やかに開弁することができる。したがって、燃料電池車両の安全性をさらに向上することができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1中の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】上記実施形態に係る後部パネル及びタンク容器の構成を示す分解斜視図である。
【図4】上記実施形態に係る水素タンクの構成を示す側面図である。
【図5】上記実施形態に係る蓋部材の構成を示す正面図である。
【図6】図6中の線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】図6中の線VI−VIに沿った断面図である。
【図8】上記実施形態に係るタンク容器下部の構成を示す斜視図である。
【図9】上記実施形態に係るタンク容器下部の構成を示す下面図である。
【図10】図2中の線X−Xに沿った断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両のタンク容器及びバッフルプレートの構成を示す斜視図である。
【図12】上記実施形態に係るバッフルプレートの構成を示す斜視図である。
【図13】上記実施形態に係るタンク容器の構成を示す下面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…燃料電池車両
10…駆動モータ(駆動力発生装置)
20…燃料電池(駆動力発生装置)
30…水素タンク
31…高圧容器
32…開口部
33…蓋部材
34…安全弁
40…タンク容器
41…タンク容器上部
412…換気口(走行風排出口)
414…換気用ダクト
42…タンク容器下部
421…凸部
422…第2走行風導入口(走行風導入口)
423…縁部
43…シール部材
50…サブフレーム
60,60A…バッフルプレート
61A…外気通路
62A…第1外気導入口
63A…傾斜部
67A…第2外気導入口
70…フロアパネル
72…後部パネル
74…タンク積載部(積載部)
781…第1走行風導入口781(走行風導入口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃料として駆動力を発生する駆動力発生装置と、
水素ガスを貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクの周囲を覆うタンク容器と、を備える燃料電池車両であって、
前記タンク容器は、前記水素タンクを収容した状態で車両の内外を区画するフロアパネルの上部に積載され、
前記フロアパネルのうち前記タンク容器が積載される積載部、並びに、前記タンク容器のうち前記積載部に対向するタンク容器下部には、それぞれ、前記燃料電池車両の外部と前記タンク容器の内部とを連通する走行風導入口が設けられ、
前記タンク容器の上部には、前記タンク容器の内部と前記燃料電池車両の外部とを連通する走行風排出口が設けられることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記水素タンクは、水素ガスが充填される高圧容器と、当該高圧容器の一端側に形成された開口部を密閉する蓋部材と、を含み、
前記蓋部材は、前記タンク容器の内部のうち、前記走行風導入口から前記走行風排出口へ流通する外気の流路上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記タンク容器は、前記水素タンクの外形に沿った形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記タンク容器下部は下方に向けて凸状に形成されるとともに、その走行風導入口は当該タンク容器下部の最下部近傍に形成され、
前記積載部は上方に向けて凹状に形成されるとともに、その走行風導入口は当該積載部の最下部近傍に形成され、
前記タンク容器は、前記積載部を囲う略枠状のフレームを介して前記フロアパネルに固定されることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の燃料電池車両。
【請求項5】
前記積載部と前記タンク容器下部との間は、それぞれの走行風導入口の周囲において、シール部材により密閉されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の燃料電池車両。
【請求項6】
前記タンク容器及び前記フロアパネルの走行風導入口は、それぞれ、車両前方へ向けて傾斜することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の燃料電池車両。
【請求項7】
前記水素タンクは、水素ガスが充填される高圧容器と、その温度が所定温度以上になると開弁し前記高圧容器内の水素ガスを排出する安全弁と、を含み、
前記タンク容器下部の走行風導入口または前記積載部の走行風導入口の近傍には、当該走行風導入口の一部を覆うとともに、前記安全弁へ外気を誘導するバッフルプレートが設けられることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の燃料電池車両。
【請求項8】
前記バッフルプレートは、前記タンク容器の走行風導入口の縁部に固定され、
前記バッフルプレートと前記縁部との間には、隙間が形成されることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池車両。
【請求項9】
前記バッフルプレートには、その一端側から他端側へ延びる外気流路が形成され、
前記外気流路の一端側には、外気を導入する第1外気導入口が設けられ、
前記外気流路の他端側には、当該外気流路を流通する外気の流れを上方へ変える傾斜部が設けられ、
前記バッフルプレートは、前記傾斜部を前記安全弁側に向けて、前記タンク容器下部の走行風導入口の縁部に固定され、
前記タンク容器下部の走行風導入口のうち、前記安全弁側には前記バッフルプレートにより覆われていない第2外気導入口が設けられることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−70028(P2010−70028A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239159(P2008−239159)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】