説明

燃焼装置

空気中の窒素が入り込まないようにして、窒素酸化物の生成を抑制し、排気ガスとして水素や二酸化炭素を主要なものにし、排気ガスをクリーンにし、またその回収も容易にする。
空気の供給が遮断されるとともに燃焼物に水が混合された流動物Lが供給され流動物L中の水を熱分解して燃焼物を燃焼させて燃焼後のガスを排気する燃焼室体1と、燃焼物に水が混合された流動物Lを貯留する流動物貯留槽40と、流動物貯留槽40内の流動物Lを燃焼室体1に供給する流動物供給部50と、燃焼室体1から排気されるガスを回収するガス回収部60とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃油,プラスチックや古タイヤあるいは家畜の糞尿等の廃有機物を初めとする種々の燃焼物を燃焼させる燃焼装置に係り、特に、燃焼物に水を混合して流動物にした状態のものを高温下で完全燃焼できる燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼物に水を混合して流動物にした状態のものを高温下で燃焼させる燃焼装置として、例えば、日本国特開2000−63857号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。
これは、図4に示すように、燃焼室100に、空気加熱装置101で加熱した加熱空気を高速で噴射する空気ノズル102と、その空気流中に貯蔵タンク103からの水−化石燃料混合エマルジョンからなる流動物を導入しうるようにした燃料ノズル104とを設け、1000℃以上に加熱した加熱空気を燃焼室100に導入して高速噴射させ、この空気流で水−化石燃料混合エマルジョンからなる流動物を燃焼室100内で低酸素燃焼させるようにしている。
【0003】
【特許文献1】日本国特開2000−63857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の燃焼装置にあっては、燃焼物である化石燃料を、水と混合して水−化石燃料混合エマルジョンからなる流動物にし、そして、燃焼室100において、流動物中の水を熱分解して低酸素燃焼させるようにしているが、空気ノズル102から空気加熱装置101で加熱した加熱空気を高速で噴射しているので、必ず空気が混入し、そのため、空気中の窒素によりどうしても窒素酸化物が生成するので、排気ガスが好ましいものになっていないという問題があった。また、排気ガスもそのまま排気しているので、環境上の問題もある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、空気中の窒素が入り込まないようにして、窒素酸化物の生成を抑制し、排気ガスとして水素や二酸化炭素を主要なものにし、排気ガスをクリーンにし、またその回収も容易にした燃焼装置を提供することを目的とする。また、必要に応じ、熱効率の向上も図った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の技術的手段は、空気の供給が遮断されるとともに燃焼物に水が混合された流動物が供給され該流動物中の水を熱分解して燃焼物を燃焼させて燃焼後のガスを排気する燃焼室体と、上記流動物を上記燃焼室体に供給する流動物供給部とを備えた構成としている。
本発明の燃焼装置で処理できる燃焼物は、燃焼できるものであればどのようなものでも良い。例えば、廃油あるいは家畜の糞尿などの初めから流動物になっているようなものは勿論のこと、廃プラスチックや廃木材などの固形のものでも良い。但し、固形物は、予め粉粒状に粉砕して用いる。そして、燃焼物に適宜に水を混合して流動物とする。水の量は、燃焼物の熱量などを勘案して適宜に量調整をすると良い。
【0007】
これによれば、燃焼室体内においては、空気の供給が遮断された状態で、燃焼物に水が混合された流動物が供給され、流動物中の水が酸素と水素に熱分解され、この酸素により燃焼物が略完全燃焼させられ、排気されていく。この場合、燃焼室への空気の供給が遮断されているので、窒素の供給がほとんどなくなり、そのため、燃焼物に起因するもの以外は、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、排気ガスがクリーンになり、またその回収も容易に行われる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記燃焼室体から排気されるガスを回収するガス回収部を備えた構成としている。ガスを回収するのでガスの有効利用が図られる。
この場合、上記ガス回収部を、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器を備えて構成したことが有効である。ガスの種類毎に分けて抽出するので、より一層ガスの有効利用を図り易くすることができる。
【0009】
また、必要に応じ、上記燃焼室体を囲繞する外側室体を設け、上記燃焼室体の下部に燃焼室体の灰分を排出する下部開口を設け、該下部開口から上記外側室体の外側に灰分を排出する排出通路部を設け、上記外側室体と燃焼室体との間の空間を上記排出通路部を冷却する冷却流体が通される冷却流体通路として構成し、該外側室体の下部に冷却流体が流入する流入口を設け、該外側室体の上部に冷却流体が流出する流出口を設けた構成としている。これにより、燃焼室内で生成された灰分は、燃焼室の下に落下し、排出通路部から排出される。この過程では、排出通路部は冷却流体通路を流れる冷却流体によって冷却される。そのため、冷却流体は、排出通路部との間の熱交換により加温させられ、流出口から流出させられ、例えば暖房などのエネルギー源として利用することができる。
【0010】
この場合、上記排出通路部から排出された灰分から水分を分離する水分分離器を設けたことが有効である。排出通路部から排出された灰分は、水分分離器に至り、灰分から水分が分離され、汚泥となって排出される。この場合、汚泥の量は、処理する流動物に比較して極めて少ないものになり、その後の処理が容易なものとなる。
【0011】
そしてまた、必要に応じ、上記燃焼室体を囲繞する外側室体を設け、上記燃焼室体を上記外側室体に対して回転駆動可能に設け、上記燃焼室体の下部に該燃焼室体内に連通し流動物を導入する下部開口を設け、上記燃焼室体の上部に上記燃焼室体に連通し排気を排出する上部開口を設け、上記燃焼室体を外筒と内筒とから構成し、上記燃焼室体の内筒を、上記燃焼室体の遠心力で外筒側に押しつけられ燃焼室体の内壁を形成する耐熱流体で構成した。
この場合、上記燃焼室体の内筒を形成する耐熱流体を、該燃焼室体における燃焼物の燃焼により溶解し、遠心力で外筒側に押しつけられるセラミックスで構成したことが有効である。
【0012】
これによれば、燃焼室体内では、燃焼室体の高速回転による遠心力によって耐熱流体が内筒を形成し、この溶解した耐熱流体の円筒内面で赤外線が反射し合い、非常に高温になり、そのため、燃焼室体内では、上昇渦が生じ、燃焼室体内は高温高圧下となり、流動物中の水が熱分解した酸素により、燃焼物が確実に略完全燃焼される。
【0013】
また、必要に応じ、上記燃焼室体に供給された燃焼物に着火させる着火装置を備えた構成としている。装置の始動を容易に行なうことができる。
更に、必要に応じ、上記着火装置を、上記燃焼室体内に設けられる高周波加熱体で構成している。確実に高温にすることができ、装置の始動を容易に行なうことができる。
【0014】
更にまた、必要に応じ、上記燃焼物に水が混合された流動物を貯留する流動物貯留槽を設けた構成にしている。流動物を貯留するので、水分調整等が容易になる。
この場合、上記流動物貯留槽内に水を供給する水供給部を設け、該流動物貯留槽に該流動物貯留槽内の流動物を攪拌するミキサを設けたことが有効である。流動物貯留槽内においては、流動物が投入されており、水供給部からの水により、水分量が適正なものに調整されるとともに、ミキサにより攪拌されている。そのため、均質化され、燃焼室での燃焼を円滑に行なわせることができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記流動物供給部を、上記流動物貯留槽で生成された流動物が通過する通過塔と、該通過塔の下部に設けられ上記流動物を該通過塔の上部に圧送する高圧ポンプと、上記通過塔の上部に接続管を介して接続され上記燃焼室体内に圧送された流動物を燃焼室体内に噴射する噴射体とを備えて構成した。噴射体からの流動物の噴射を確実に行なうことができる。
この場合、上記接続管に付設され該接続管を流れる流動物に磁場を付与する磁場発生器を設けたことが有効である。流動物をマイナスイオン化して、燃焼させ易くすることができる。
【0016】
そしてまた、必要に応じ、上記燃焼室体の上部に設けた上部開口から排気されるガスが通される排気管を設け、該排気管を上記通過塔内にその上部から下部に亘って配設され該排気管中のガスと通過塔内の流動物との交差熱交換を行なわせる螺旋管を備えて構成した。排気は排気管の螺旋管を通り、ここで、排気管中のガスと通過塔内の流動物との交差熱交換が行なわれるので、流動物は加温されて、噴射体から噴射されることになり、そのため、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。
【0017】
また、必要に応じ、上記螺旋管の後流側の排気管を、上記流動物貯留槽内を通るように配設した。これによっても、流動物は加温されて、噴射体から噴射されることになり、そのため、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。
【0018】
更に、上記燃焼室体の上部に設けた上部開口から排気されるガスが通される排気管を設け、該排気管の径路中に動力タービンを設けた構成としている。排気により、動力タービンが駆動させられるので、発電等の用に供され、エネルギーの有効利用が図られる。
【0019】
更にまた、必要に応じ、上記燃焼室体内に酸素を供給する酸素供給器を備えて構成した。適時に酸素供給器を作動させることにより、着火を確実にしたり、燃焼の安定化を図ることができる。
また、必要に応じ、上記燃焼室体内に水素を供給する水素供給器を備えて構成した。適時に水素供給器を作動させることにより、着火を確実にしたり、燃焼の安定化を図ることができる。
そしてまた、必要に応じ、上記燃焼室体内に酸素,水素及び二酸化炭素以外の気体のための中和剤を注入する中和剤注入器を備えて構成した。この中和剤により、酸素,水素及び二酸化炭素以外の気体を、ある程度中和して灰分として排出することができ、酸素,水素及び二酸化炭素をより取出し易くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃焼装置によれば、燃焼室体内においては、空気の供給が遮断された状態で、燃焼物に水が混合された流動物が供給され、流動物中の水が酸素と水素に熱分解され、この酸素により燃焼物が略完全燃焼させられるので、窒素の供給がほとんどなくなり、そのため、窒素酸化物の生成を抑制することができ、その結果、排気ガスをクリーンにすることができ、またその回収も容易に行なうことができるようになる。
そして、燃焼室体から排気されるガスを回収するガス回収部を備えた場合には、ガスを回収するのでガスの有効利用を図ることができる。この場合、ガス回収部を、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器を備えて構成した場合には、ガスの種類毎に分けて抽出するので、より一層ガスの有効利用を図り易くすることができる等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る燃焼装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る燃焼装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第三の実施の形態に係る燃焼装置を示す断面図である。
【図4】従来の燃焼装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
L 流動物
1 燃焼室体
2 内筒
3 外筒
4 下部開口
5 上部開口
6 外側室体
8 排出通路部
9 冷却流体通路
10 流入口
11 流出口
12 水分分離器
14 酸素供給器
15 酸素噴射管
20 中和剤注入器
23 磁場発生器
30 着火装置
31 高周波加熱体
40 流動物貯留槽
41 開口
42 水供給部
43 ミキサ
50 流動物供給部
51 通過塔
52 高圧ポンプ
53 接続管
54 噴射体
55 磁場発生器
56 排気管
56a 螺旋管
57 排水部
58 動力タービン
60 ガス回収部
61 ガス遠心分離器
62 水素取出し管路
63 二酸化炭素取出し管路
64 他ガス取出し管路
70 筒状体
71 排気口
72 中間仕切壁
74 排気空間
75 収納部
76 回転駆動部
78 ガラス
80 外筒
81 内筒
83 水素供給器
84 水素噴射管
85 筒体
88 回転駆動部
90 流動物供給部
91 吸引ポンプ
92 流動物一時貯留槽
93 噴射体
94 接続管
110 冷却流体供給装置
111 高圧ポンプ
112 冷却流体一時貯留槽
113 流入管
116 噴出孔
120 加熱槽
121 流入口
122 流出口
130 排気管
130a 螺旋管
130b 螺旋状管
131,135 迂回管
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る燃焼装置について詳細に説明する。図1には本発明の第一の実施の形態に係る燃焼装置を示している。
実施の形態において、処理する燃焼物は、例えば、廃油あるいは家畜の糞尿などの流動状のものである。
図1に示すように、実施の形態に係る燃焼装置の基本的構成は、燃焼物に水が混合された流動物Lが供給されこの流動物L中の水を熱分解して燃焼物を燃焼させる燃焼室体1と、燃焼物に水が混合された流動物Lを貯留する流動物貯留槽40と、流動物貯留槽40内の流動物Lを燃焼室体1に供給する流動物供給部50と、燃焼室体1から排気されるガスを回収するガス回収部60とを備えてなる。
【0024】
燃焼室体1は、空気の供給が遮断されるとともに燃焼物に水が混合された流動物Lが供給され、流動物L中の水を熱分解して燃焼物を燃焼させて燃焼後のガスを排気するものである。詳しくは、燃焼室体1は、例えばタングステン(融点3407℃)などの融点の高い金属でカプセル状に形成された内筒2と、例えばステンレスなどの金属で形成され内筒2を空間を介して覆うカプセル状の外筒3とから構成されている。内筒2と外筒3との間の空間が断熱作用をする。燃焼室体1の下部には、燃焼室体1の灰分を排出する下部開口4、上部には、燃焼後のガスを排気する上部開口5が形成されている。燃焼室体1内の温度は、燃焼時には、例えば、1000℃〜3000℃になる。これにより、水が酸素と水素に熱分解される。
【0025】
燃焼室体1は、これを囲繞する外側室体6に囲繞されてこれに支持されている。外側室体6は、例えばステンレスなどの金属でカプセル状に形成されており、外側面に断熱材7が被覆されている。燃焼室体1の下部に設けられ燃焼室体1の灰分を排出する下部開口4には、下部開口4から外側室体6の外側に灰分を排出する螺旋管状の排出通路部8が設けられている。そして、外側室体6と燃焼室体1との間の空間は、排出通路部8を冷却する冷却流体(実施の形態では冷却水)が通される冷却流体通路9として構成されている。外側室体6の下部には、冷却流体が流入する流入口10が設けられ、外側室体6の上部には、冷却流体が流出する流出口11が設けられている。この冷却流体は、排出通路部8との間の熱交換により加温させられ、湯あるいは蒸気となって流出口11から流出させられ、例えば暖房などのエネルギー源として利用される。
【0026】
外側室体6の外側には、排出通路部8から排出された灰分から水分を、例えば遠心分離により分離する水分分離器12が設けられている。13は排出通路部8に設けられたバルブである。
また、本装置には、燃焼室体1内に酸素を供給する酸素供給器14が設けられている。酸素供給器14は、燃焼室体1の上部から内部に吊下され酸素を噴出する多数の噴出孔15aを有した酸素噴射管15を備え、酸素ボンベ16からの酸素を燃焼室体1内に供給する。17は酸素の供給量を調整する調整バルブである。この酸素供給器14は、例えば、本装置の始動時あるいは火力安定のために適時に作動させられる。
【0027】
また、本装置には、燃焼室体1内に酸素,水素及び二酸化炭素以外の気体のための中和剤を注入する中和剤注入器20が設けられている。中和剤注入器20は、図示外の中和剤貯留タンクからギヤポンプ21により注入管22を通して上記の酸素噴射管15に中和剤を注入して酸素噴射管15の噴出孔15aから燃焼室体1内に中和剤を散布するものである。注入管22には、注入管22を流れる流動物Lに磁場を付与する磁場発生器23が付設されている。これにより、中和剤がマイナスイオン化され、中和剤の機能が向上させられる。
【0028】
また、実施の形態では、燃焼室体1に供給された燃焼物に着火させる着火装置30が備えられている。着火装置30は、燃焼室体1内に設けられる高周波加熱体31で構成されている。高周波加熱体31は、例えば、高周波電磁誘導コイルからなり、燃焼室体1の内筒2の内壁に絶縁体32を介して付設されている。33は高周波加熱体31の電源供給部である。この着火装置30は、本装置の始動時あるいは火力安定のために適時に作動させられる。
【0029】
流動物貯留槽40は、燃焼物に水が混合された流動物Lが投入される開口41を有し、投入された流動物Lを貯留する。42は流動物貯留槽40内に水を供給する水供給部である。この水供給部42から、適量の水を供給して流動物Lの水分量を適正なものに調整する。また、流動物貯留槽40には、流動物貯留槽40内の流動物Lを攪拌するミキサ43が設けられている。
【0030】
流動物供給部50は、流動物貯留槽40で生成された流動物Lが通過する通過塔51と、通過塔51の下部に設けられ流動物Lを通過塔51の上部に圧送する高圧ポンプ52と、通過塔51の上部に接続管53を介して接続され燃焼室体1内に圧送された流動物Lを燃焼室体1内に噴射する噴射体54とを備えて構成されている。噴射体54は、燃焼室体1内の上部に設けられ流動物Lをシャワー状に燃焼室体1内に散布する。
また、接続管53には、接続管53を流れる流動物Lに磁場を付与する磁場発生器55が付設されている。これにより、流動物Lがマイナスイオン化され、燃焼されやすくなる。
【0031】
更にまた、本装置においては、燃焼室体1の上部に設けた上部開口5から排気されるガスが通される排気管56が設けられている。排気管56は、通過塔51内にその上部から下部に亘って配設され、排気管56中のガスと通過塔51内の流動物Lとの交差熱交換を行なわせる螺旋管56aを備えて構成されている。
また、螺旋管56aの後流側の排気管56(56b)は、流動物貯留槽40内を通るように配設されている。排気管56に排気される水蒸気は、冷却されて排水部57から排水され、あるいは、上記の水供給部42の水として、後述のガス回収部60から供給されて利用される。
更に、通過塔51に至る排気管56の径路中に動力タービン58が設けられており、発電等の用に供される。
【0032】
ガス回収部60は、燃焼室体1から排気されるガスを回収するもので、流動物貯留槽40を通過した排気管56に接続され、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器61を備えて構成されている。実施の形態では、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収する。ガス遠心分離器61には、水素取出し管路62,二酸化炭素取出し管路63及び他ガス取出し管路64が設けられている。
【0033】
従って、この実施の形態に係る燃焼装置によれば、流動物貯留槽40内においては、流動物Lが投入されており、水供給部42からの水により、水分量が適正なものに調整されるとともに、ミキサ43により攪拌されている。そのため、均質化され、燃焼室体1での後述の燃焼を円滑に行なわせしめる。
【0034】
そして、本装置の始動時には、着火装置30が作動させられ、即ち、高周波加熱体31が作動させられ、燃焼室体1が高温に温度上昇させられる。このとき、酸素供給器14から酸素が供給される。この状態で、流動物供給部50の高圧ポンプ52を作動させると、流動物貯留槽40に貯留された流動物Lが通過塔51を通って、噴射体54から燃焼室体1内に散布される。これにより、流動物L中の水が酸素と水素に熱分解させられ、この酸素及び酸素供給器14から供給される酸素により燃焼物が燃焼し始める。そして、燃焼が定常状態になったならば、着火装置30及び酸素供給器14を停止する。尚、燃焼の安定化のために、適時に着火装置30及び酸素供給器14を作動させて良い。
【0035】
定常状態では、流動物L中の水が熱分解した酸素により、燃焼物が略完全燃焼させられる。燃焼室体1には、水素,二酸化炭素,水蒸気,余分な酸素などのその他のガスなどが生成され、排気管56から排気されていく。そして、排気により、動力タービン58が駆動させられ発電等の用に供される。また、排気は排気管56の螺旋管56aを通り、ここで、排気管56中のガスと通過塔51内の流動物Lとの交差熱交換が行なわれる。そのため、流動物Lは加温されて、噴射体54から噴射されるので、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。また、螺旋管56aの後流側の排気管56も、流動物貯留槽40内を通るので、これによっても、流動物Lは加温されて、噴射体54から噴射されることになり、そのため、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。
【0036】
一方、ガスは冷却されて、ガス回収部60に至り、ガス回収部60のガス遠心分離器61により、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収される。この場合、燃焼室体1への空気の供給が遮断されているので、窒素の供給がほとんどなくなり、そのため、燃焼物に起因するもの以外は、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、排気ガスがクリーンになり、またその回収も容易に行われる。
【0037】
また、燃焼室体1内で生成された灰分は、燃焼室体1の下に落下し、排出通路部8から排出される。この過程では、排出通路部8は冷却流体通路9を流れる冷却流体によって冷却される。そのため、冷却流体は、排出通路部8との間の熱交換により加温させられ、湯あるいは蒸気となって流出口11から流出させられ、例えば暖房などのエネルギー源として利用される。
排出通路部8から排出された灰分は、水分分離器12に至り、灰分から水分が分離され、汚泥となって排出される。この場合、汚泥の量は、処理する流動物Lに比較して極めて少ないものになり、その後の処理が容易なものとなる。
【0038】
図2には、本発明の第二の実施の形態に係る燃焼装置を示している。これは、上記第一の実施の形態とは、燃焼室体1の構造が異なっている。尚、上記第一の実施の形態と同様のものは同一の符号を付して説明する。
第二の実施の形態に係る燃焼装置においては、燃焼室体1はカプセル状に形成され、燃焼室体1の下部に燃焼室体1内に連通し流動物Lを導入する下部開口4が設けられ、燃焼室体1の上部に燃焼室体1に連通し排気を排出する上部開口5が設けられている。上部開口5には筒状体70が連設されている。そして、筒状体70の基端部に上部開口5に連通する排気口71が形成されている。
【0039】
また、本装置においては、燃焼室体1を囲繞するカプセル状の外側室体6が設けられており、燃焼室体1は、外側室体6に対して中間仕切壁72を介して回転駆動可能に設けられている。73は中間仕切壁72に対して燃焼室体1の下部を回転可能に支持するベアリングである。74は外側室体6の上部に形成され排気口71からの排気を後述の排気管56に導く排気空間である。
【0040】
また、外側室体6の上側には、筒状体70が収納される収納部75が設けられ、この収納部75に筒状体70を回転駆動して燃焼室体1を回転させるギヤ装置76a及びモータ76bからなる回転駆動部76が設けられている。77は収納部75に対して筒状体70を回転可能に支持するベアリングである。
また、収納部75の天井には筒状体70の開口70aに対峙した透明なガラス78が設けられ、燃焼室体1内部で発生する光を取出し可能にしている。例えば、ミラー79や光ファイバーを介してガラス78からの光を取出し、レーザー光線として利用する。
【0041】
更に、燃焼室体1は、外筒80と内筒81とから構成され、燃焼室体1の内筒81は、燃焼室体1の遠心力で外筒80側に押しつけられ燃焼室体1の内壁を形成する耐熱流体で構成されている。燃焼室体1の内筒81を形成する耐熱流体は、燃焼室体1における燃焼物の燃焼により溶解し、遠心力で外筒80側に押しつけられるセラミックスで構成されている。
詳しくは、外筒80は例えばタングステン(融点3407℃)で形成されており、内筒81はセラミックス、例えばサクランダム(融点2432℃)で形成されている。ここで、内筒81を形成するセラミックスは燃焼物の燃焼により溶解して、遠心力で外筒80側に押しつけられて燃焼室体1を形成する。セラミックスが溶解することにより、燃焼による高温は遮断され外筒80に伝えられにくくなり、燃焼室体1の耐熱性が向上する。尚、このセラミックスは、燃焼装置の運転前に筒状体70から粒子として投入され燃焼装置の運転中に溶解して内筒81を形成する。
【0042】
更にまた、中間仕切壁72の下部には、燃焼室体1の下部開口4から排出された灰分を外側室体6の外側に排出するロート状の排出通路部8が設けられている。そして、外側室体6と中間仕切壁72との間の空間は、排出通路部8を冷却する冷却流体(実施の形態では冷却水)が通される冷却流体通路9として構成されている。72aは排出通路部8の外側に設けられた冷却フィンである。外側室体6の下部には、冷却流体が流入する流入口10が設けられ、外側室体6の上部には、冷却流体が流出する流出口11が設けられている。この冷却流体は、排出通路部8との間の熱交換により加温させられ、湯あるいは蒸気となって流出口11から流出させられ、例えば暖房などのエネルギー源として利用される。
【0043】
外側室体6の外側には、排出通路部8から排出された灰分から水分を、例えば遠心分離により分離する水分分離器12が設けられている。
また、本装置には、燃焼室体1内に酸素を供給する酸素供給器14が設けられている。酸素供給器14は、燃焼室体1の下部開口4から酸素を噴射する酸素噴射管15を備えている。また、燃焼室体1内に水素を供給する水素供給器83が設けられている。水素供給器83は、燃焼室体1の下部開口4から水素を噴射する水素噴射管84を備えている。酸素供給器14及び水素供給器83は、例えば、本装置の始動時あるいは火力安定のために適時に作動させられる。
また、実施の形態では、燃焼室体1に供給された燃焼物に着火させる着火装置30が備えられている。着火装置30は、燃焼室体1の下部開口4の近傍に設けられた点火プラグで構成されている。
【0044】
流動物貯留槽40は、燃焼物に水が混合された流動物Lが投入される開口41を有し、投入された流動物Lを貯留する。42は流動物貯留槽40内に水を供給する水供給部である。この水供給部42から、適量の水を供給して流動物Lの水分量を適正なものに調整する。また、流動物貯留槽40には、流動物貯留槽40内の流動物Lを攪拌するミキサ43が設けられている。
【0045】
流動物供給部50は、流動物貯留槽40で生成された流動物Lが通過する通過塔51と、通過塔51の下部に設けられ流動物Lを通過塔51の上部に圧送する高圧ポンプ52と、通過塔51の上部に接続管53を介して接続され燃焼室体1内に圧送された流動物Lを燃焼室体1内に噴射する噴射体54とを備えて構成されている。噴射体54は、燃焼室体1の下部開口4に向けて流動物Lを噴射するノズルで構成されている。
【0046】
更にまた、本装置においては、外側室体6の上部に設けた排気空間74に接続され排気口71から排気されるガスが通される排気管56が設けられている。排気管56は、通過塔51内にその上部から下部に亘って配設され、排気管56中のガスと通過塔51内の流動物Lとの交差熱交換を行なわせる螺旋管56aを備えて構成されている。
また、螺旋管56aの後流側の排気管56(56b)は、流動物貯留槽40内を通るように配設されている。排気管56に排気される水蒸気は、冷却されて排水部57から排水され、あるいは、上記の水供給部42の水として、後述のガス回収部60から供給されて利用される。
更に、通過塔51に至る排気管56の径路中に動力タービン58が設けられており、発電等の用に供される。
【0047】
ガス回収部60は、燃焼室体1から排気されるガスを回収するもので、流動物貯留槽40を通過した排気管56に接続され、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器61を備えて構成されている。実施の形態では、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収する。ガス遠心分離器61には、水素取出し管路62,二酸化炭素取出し管路63及び他ガス取出し管路64が設けられている。
【0048】
従って、この実施の形態に係る燃焼装置によれば、流動物貯留槽40内においては、流動物Lが投入されており、水供給部42からの水により、水分量が適正なものに調整されるとともに、ミキサ43により攪拌されている。そのため、均質化され、燃焼室体1での後述の燃焼を円滑に行なわせしめる。
【0049】
そして、本装置の始動時には、回転駆動部76により、燃焼室体1を回転させるとともに、燃焼室体1内に酸素供給器14及び水素供給器83から酸素及び水素が供給される。この状態で、着火装置30の点火プラグが作動させられ、酸素による水素の燃焼により燃焼室体1が高温に温度上昇させられる。そしてセラミック粒子を筒状体70から投入すると、セラミックスは水素の燃焼により溶解して、遠心力で外筒80側に押しつけられて内筒81を形成する。
【0050】
この状態で、流動物供給部50の高圧ポンプ52を作動させると、流動物貯留槽40に貯留された流動物Lが通過塔51を通って、噴射体54から燃焼室体1内に噴射される。これにより、流動物L中の水が酸素と水素に熱分解させられ、この酸素及び酸素供給器14から供給される酸素により燃焼物が燃焼し始める。そして、燃焼が定常状態になったならば、酸素供給器14及び水素供給器83を停止する。尚、燃焼の安定化のために、適時に着火装置30,酸素供給器14及び水素供給器83を作動させて良い。
【0051】
定常状態では、燃焼室体1内では、上昇渦が生じ、燃焼室体1内は高温高圧下となり、流動物L中の水が熱分解した酸素により、燃焼物は、略完全燃焼される。即ち、このとき、燃焼室体1内では、燃焼室体1の高速回転による遠心力によって溶解セラミックスが垂直に近づいて円筒状になり、この溶解したセラミックスの円筒内面で赤外線が反射し合い、排気口71に赤外線が更に出にくくなるために非常に高温になり、略完全燃焼が行われるのである。燃焼室体1内には、水素,二酸化炭素,水蒸気,余分な酸素などのその他のガスなどが生成され、排気管56から排気されていく。そして、排気により、動力タービン58が駆動させられ発電等の用に供される。また、排気は排気管56の螺旋管56aを通り、ここで、排気管56中のガスと通過塔51内の流動物Lとの交差熱交換が行なわれる。
そのため、流動物Lは加温されて、噴射体54から噴射されるので、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。
【0052】
一方、ガスは冷却されて、ガス回収部60に至り、ガス回収部60のガス遠心分離器61により、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収される。この場合、燃焼室体1への空気の供給が遮断されているので、窒素の供給がほとんどなくなり、そのため、燃焼物に起因するもの以外は、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、排気ガスがクリーンになり、またその回収も容易に行われる。
【0053】
また、燃焼室体1内で生成された灰分は、燃焼室体1の下に落下し、排出通路部8から排出される。この過程では、排出通路部8は冷却流体通路9を流れる冷却流体によって冷却される。そのため、冷却流体は、排出通路部8との間の熱交換により加温させられ、湯あるいは蒸気となって流出口11から流出させられ、例えば暖房などのエネルギー源として利用される。
排出通路部8から排出された灰分は、水分分離器12に至り、灰分から水分が分離され、汚泥となって排出される。この場合、汚泥の量は、処理する流動物Lに比較して極めて少ないものになり、その後の処理が容易なものとなる。
【0054】
図3には、本発明の第三の実施の形態に係る燃焼装置を示している。これは、上記第二の実施の形態とは原理的には同様であるが、外側室体,流動物供給部,冷却流体通路等の構造が異なっている。尚、上記第二の実施の形態と同様のものは同一の符号を付して説明する。
第三の実施の形態に係る燃焼装置においては、燃焼室体1はカプセル状に形成され、燃焼室体1の下部に燃焼室体1内に連通し流動物Lを導入する下部開口4が設けられ、燃焼室体1の上部に燃焼室体1に連通し排気を排出する上部開口5が設けられている。上部開口5には筒状体70が連設されている。また、下部開口6には筒体85が連設されている。そして、筒状体70の基端部に上部開口5に連通する排気口71が形成されている。
【0055】
また、本装置においては、燃焼室体1を囲繞するカプセル状の外側室体6が設けられており、燃焼室体1は、外側室体6に対して中間仕切壁72を介して回転駆動可能に設けられている。74は外側室体6の上部に形成され排気口71からの排気を後述の排気管130に導く排気空間である。
【0056】
また、外側室体6の下側には、筒体85が臨む収納部87が設けられている。更に、外側室体6の下側には、燃焼室体1を回転させる回転駆動部88が設けられている。回転駆動部88は、収納部87に設けられ筒体85を回転駆動することにより燃焼室体1を回転させるギヤ装置88a及び外側室体6の外部に設けられギヤ装置88aに接続されるモータ88bからなる。73は、中間仕切壁72に対して燃焼室体1の筒体85を回転可能に支持するベアリングである。77は、筒状体70を回転可能に外側室体に支持するベアリングである。
また、外側室体6の天井6aには筒状体70の開口70aに対峙した透明なガラス78が設けられ、燃焼室体1内部で発生する光を取出し可能にしている。例えば、第2の実施の形態と同様にミラーや光ファイバーを介してガラス78からの光を取出し、レーザー光線として利用する。
図中、86は、ガラス78を通過してきた光の温度を測定するための温度センサである。
【0057】
更に、燃焼室体1は、外筒80と内筒81とから構成され、燃焼室体1の内筒81は、燃焼室体1の遠心力で外筒80側に押しつけられ燃焼室体1の内壁を形成する耐熱流体で構成されている。燃焼室体1の内筒81を形成する耐熱流体は、燃焼室体1における燃焼物の燃焼により溶解し、遠心力で外筒80側に押しつけられるセラミックスで構成されている。
詳しくは、外筒80は例えばタングステン(融点3407℃)で形成されており、内筒81はセラミックス、例えばサクランダム(融点2432℃)で形成されている。ここで、内筒81を形成するセラミックスは燃焼物の燃焼により溶解して、遠心力で外筒80側に押しつけられて燃焼室体1を形成する。セラミックスが溶解することにより、燃焼による高温は遮断され外筒80に伝えられにくくなり、燃焼室体1の耐熱性が向上する。尚、このセラミックスは、燃焼装置の運転前に筒状体70から粒子として投入され燃焼装置の運転中に溶解して内筒81を形成する。燃焼室体1内の温度は、燃焼時には、例えば、1,000℃〜70,000℃になる。これにより、水が酸素と水素に熱分解される。
【0058】
更にまた、中間仕切壁72の下部には、燃焼室体1の下部開口4から排出された灰分を外側室体6の外側に排出するロート状の排出通路部8が設けられている。そして、外側室体6と中間仕切壁72との間の空間は、排出通路部8を冷却する冷却流体(実施の形態では冷却水)が通される冷却流体通路9として構成されている。外側室体6の下部には、冷却流体が流入する流入口10が設けられている。流入口10には、冷却流体を供給する冷却流体供給装置110が設けられている。冷却流体供給装置110は、冷却流体を吸引する高圧ポンプ111と、高圧ポンプ111からの冷却流体を一時的に貯留する冷却流体一時貯留槽112と、冷却流体一時貯留槽112及び流入口10を接続する流入管113とを備えている。高圧ポンプ111は、例えば、冷却流体を貯留するタンクから水を吸引する。図中、114は、冷却流体が逆流するのを防ぐ逆止弁,115は、冷却流体通路9に流入する冷却流体の流量を調整する流量調整弁である。
また、中間仕切壁72には、冷却流体通路9を流れる冷却流体が噴出する複数の噴出孔116が設けられている。噴出孔116から噴出した冷却流体は、燃焼室体1に向けて吹きかけられて、燃焼室体1の外筒3を冷却するとともに外筒3の外側を流下して、ベアリング73の外側に設けられた孔119を通過し、排出通路部8から灰分とともに外側室体6の外部に排出される。そして、この冷却流体は、水分分離器12で遠心分離されて取出される。この水分分離器12は、外側室体6の外側に設けられ、排出通路部8から排出された灰分から水分を、例えば遠心分離により分離する。
【0059】
また、本装置には、燃焼室体1内に酸素を供給する酸素供給器14が設けられている。酸素供給器14は、燃焼室体1の下部開口4から酸素を噴射する酸素噴射管15を備えている。また、燃焼室体1内に水素を供給する水素供給器83が設けられている。水素供給器83は、燃焼室体1の下部開口4から水素を噴射する水素噴射管84を備えている。酸素供給器14及び水素供給器83は、例えば、本装置の始動時あるいは火力安定のために適時に作動させられる。
また、実施の形態では、燃焼室体1に供給された燃焼物に着火させる着火装置30が備えられている。着火装置30は、燃焼室体1の下部開口4の近傍に設けられた点火プラグで構成されている。
【0060】
流動物貯留槽40は、燃焼物に水が混合された流動物Lが投入される開口41を有し、投入された流動物Lを貯留する。42は流動物貯留槽40内に水を供給する水供給部である。この水供給部42から、適量の水を供給して流動物Lの水分量を適正なものに調整する。また、流動物貯留槽40には、流動物貯留槽40内の流動物Lを攪拌するミキサ43が設けられている。図中、118は、流動物貯留槽40内の流動物Lの温度を測定するための温度センサである。
【0061】
流動物供給部90は、流動物貯留槽40の下部の流動物Lを吸引する吸引ポンプ91と、この吸引ポンプ91で吸引された流動物Lを一時的に貯留する流動物一時貯留槽92と、流動物一時貯留槽92に貯留された流動物Lを接続管94を介して燃焼室体1内に噴射する噴射体93とを備えて構成されている。図中、95は、流動物Lの逆流を防止するための逆止弁,96は燃焼室体1内に噴射される流動物Lの流量を調整するための流量調整弁である。
また、この燃焼装置には、例えば、別の装置等からの流体(例えば、温水プール用の水等)が引き込まれるとともにこの流体と後述の排気管130中のガスとの交差熱交換を行なう加熱槽120が設けられている。加熱槽120は、その下部に流体が流れ込む流入口121が設けられ、その上部に流体が流出する流出口122が設けられている。図中、123は、加熱槽120内の流体の温度を測定するための温度センサである。
【0062】
更にまた、本装置においては、外側室体6の上部に設けた排気空間74に接続され排気口71から排気されるガスが通される排気管130が設けられている。排気管130は、加熱槽120の上部から下部に亘って配設される螺旋管130aと、流動物貯留槽40内にその下部から上部に亘って配設される螺旋状管130bを備えて構成されている。螺旋管130aは、排気管130中のガスと加熱内の流体との交差熱交換を行なわせる。また、螺旋状管130bは、加熱槽120の内部に配設された螺旋管130aの後流側に設けられ、排気管130中のガスと流動物貯留槽40内の流動物Lとの交差熱交換を行なわせる。
【0063】
更に、排気管130は、螺旋管130aより上流側で分岐し螺旋管130aの後流側で合流する迂回管131を備えている。迂回管131と螺旋管130aとの分岐点には、螺旋管130a及び迂回管131に選択的にガスを流通させる電磁弁132が設けられている。電磁弁132は、加熱槽120の内部の流体の温度を検知する温度検知センサ133に基づいて、螺旋管130aに流入するガスの量を調整している。また、迂回管131と螺旋管130aとの合流点よりも上流の螺旋管130aには、迂回管131側からの逆流を防止する逆止弁134が設けられている。
【0064】
更にまた、排気管130は、螺旋管131の後流側に、螺旋状管130bより上流側で分岐し螺旋状管130bの後流側で合流する迂回管135を備えている。迂回管135と螺旋状管130bとの分岐点には、螺旋状管130b及び迂回管135に選択的にガスを流通させる電磁弁136が設けられている。電磁弁136は、流動物貯留槽40の内部の流体の温度を検知する温度検知センサ137に基づいて、螺旋状管130bに流入するガスの量を調整している。また、迂回管135と螺旋状管130bとの合流点よりも上流の螺旋状管130bには、迂回管135側からの逆流を防止する逆止弁138が設けられている。
また、螺旋管130aと螺旋状管130bとの間の排気管130の経路中には、内部を流れるガスの流量を調整するための電磁調整弁139が設けられている。図中、140は、排気管130の内部のガスの圧力を測定するための圧力センサである。141は、排気管130の経路に設けられた水抜き用のドレーンである。
更に、加熱槽120に至る排気管130の径路中に動力タービン58が設けられており、発電等の用に供される。
【0065】
ガス回収部60は、燃焼室体1から排気されるガスを回収するもので、流動物貯留槽40を通過した排気管130に接続され、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器61を備えて構成されている。実施の形態では、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収する。ガス遠心分離器61には、水素取出し管路62,二酸化炭素取出し管路63及び他ガス取出し管路64が設けられている。
【0066】
従って、この実施の形態に係る燃焼装置によれば、流動物貯留槽40内においては、流動物Lが投入されており、水供給部42からの水により、水分量が適正なものに調整されるとともに、ミキサ43により攪拌されている。そのため、均質化され、燃焼室体1での後述の燃焼を円滑に行なわせしめる。
そして、本装置の始動時には、回転駆動部88により、燃焼室体1を回転させるとともに、燃焼室体1内に酸素供給器14及び水素供給器83から酸素及び水素が供給される。この状態で、着火装置30の点火プラグが作動させられ、酸素による水素の燃焼により燃焼室体1が高温に温度上昇させられる。そしてセラミック粒子を筒状体70から投入すると、セラミックスは水素の燃焼により溶解して、遠心力で外筒3側に押しつけられて内筒2を形成する。
【0067】
この状態で、流動物供給部90の吸引ポンプ91を作動させると、流動物貯留槽40に貯留された流動物Lが吸引されて流動物一時貯留槽92に溜められ、流動物一時貯留槽92から噴射体93を介して燃焼室体1内に噴射される。これにより、流動物L中の水が酸素と水素に熱分解させられ、この酸素及び酸素供給器14から供給される酸素により燃焼物が燃焼し始める。そして、燃焼が定常状態になったならば、酸素供給器14及び水素供給器83を停止する。尚、燃焼の安定化のために、適時に着火装置30,酸素供給器14及び水素供給器83を作動させて良い。
【0068】
定常状態では、燃焼室体1内では、上昇渦が生じ、燃焼室体1内は高温高圧下となり、流動物L中の水が熱分解した酸素により、燃焼物は、略完全燃焼される。即ち、このとき、燃焼室体1内では、燃焼室体1の高速回転による遠心力によって溶解セラミックスが垂直に近づいて円筒状になり、この溶解したセラミックスの円筒内面で赤外線が反射し合い、排気口に赤外線が更に出にくくなるために非常に高温になり、略完全燃焼が行われるのである。燃焼室体1内には、水素,二酸化炭素,水蒸気,余分な酸素などのその他のガスなどが生成され、排気管130から排気されていく。そして、排気により、動力タービン58が駆動させられ発電等の用に供される。また、排気は排気管130の螺旋管130aを通り、ここで、排気管130中のガスと加熱槽120の内部の流体との交差熱交換が行なわれ、また、加熱槽120よりも後流の排気管130において流動物貯留槽40の内部の流動物Lが加温される。そのため、流動物Lは加温されて、噴射体93から噴射されるので、熱効率が良く、それだけ確実に燃焼させられる。
【0069】
また、燃焼室体1内の燃焼によって外筒3が高温になっても、冷却流体が燃焼室体1の外筒3に噴射されて、外筒3を冷却するので、外筒3が溶解する事態を防止できる。
一方、ガスは冷却されて、ガス回収部60に至り、ガス回収部60のガス遠心分離器61により、水素,二酸化炭素及びその他のガスに分離して回収される。この場合、燃焼室体1への空気の供給が遮断されているので、窒素の供給がほとんどなくなり、そのため、燃焼物に起因するもの以外は、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、排気ガスがクリーンになり、またその回収も容易に行われる。
【0070】
また、燃焼室体1内で生成された灰分は、燃焼室体1の下に落下し、排出通路部8から排出される。この過程では、排出通路部8は冷却流体通路9を流れる冷却流体によって冷却される。
排出通路部8から排出された灰分は、水分分離器12に至り、灰分から水分が分離され、汚泥となって排出される。この場合、汚泥の量は、処理する流動物Lに比較して極めて少ないものになり、その後の処理が容易なものとなる。
【0071】
尚、上記第二及び第三の実施の形態において、着火装置30を点火プラグで構成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第一の実施の形態と同様に高周波加熱体31を備えて構成してもよく適宜変更して差支えない。
尚また、上記第二及び第三の実施の形態において、筒状体70の開口に対峙した透明なガラスが設けられているが、このガラスの上方に別のガラスを設けるとともにこれらの2枚のガラスを交互に開閉可能にし、例えば、粗大ゴミ等の廃棄物を、2枚のガラスの間の空間に一時収納して燃焼室体内に投入可能にしてもよく適宜変更して差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、廃有機物をほぼ完全燃焼させることができ燃焼装置からの排気ガスを清浄なものとすることができるとともに、水素及び二酸化炭素を回収できるので、これを再利用することができる。そのため、種々の廃棄物の有効利用を図ることに寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の供給が遮断されるとともに燃焼物に水が混合された流動物が供給され該流動物中の水を熱分解して燃焼物を燃焼させて燃焼後のガスを排気する燃焼室体と、上記流動物を上記燃焼室体に供給する流動物供給部とを備えたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
上記燃焼室体から排気されるガスを回収するガス回収部を備えたことを特徴とする請求の範囲1記載の燃焼装置。
【請求項3】
上記ガス回収部を、ガスの種類毎に分けて抽出するガス遠心分離器を備えて構成したことを特徴とする請求の範囲2記載の燃焼装置。
【請求項4】
上記燃焼室体を囲繞する外側室体を設け、上記燃焼室体の下部に燃焼室体の灰分を排出する下部開口を設け、該下部開口から上記外側室体の外側に灰分を排出する排出通路部を設け、上記外側室体と燃焼室体との間の空間を上記排出通路部を冷却する冷却流体が通される冷却流体通路として構成し、該外側室体の下部に冷却流体が流入する流入口を設け、該外側室体の上部に冷却流体が流出する流出口を設けたことを特徴とする請求の範囲1,2または3記載の燃焼装置。
【請求項5】
上記排出通路部から排出された灰分から水分を分離する水分分離器を設けたことを特徴とする請求の範囲4記載の燃焼装置。
【請求項6】
上記燃焼室体を囲繞する外側室体を設け、上記燃焼室体を上記外側室体に対して回転駆動可能に設け、上記燃焼室体の下部に該燃焼室体内に連通し流動物を導入する下部開口を設け、上記燃焼室体の上部に上記燃焼室体に連通し排気を排出する上部開口を設け、上記燃焼室体を外筒と内筒とから構成し、上記燃焼室体の内筒を、上記燃焼室体の遠心力で外筒側に押しつけられ燃焼室体の内壁を形成する耐熱流体で構成したことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4または5記載の燃焼装置。
【請求項7】
上記燃焼室体の内筒を形成する耐熱流体を、該燃焼室体における燃焼物の燃焼により溶解し、遠心力で外筒側に押しつけられるセラミックスで構成したことを特徴とする請求の範囲6記載の燃焼装置。
【請求項8】
上記燃焼室体に供給された燃焼物に着火させる着火装置を備えたことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6または7記載の燃焼装置。
【請求項9】
上記着火装置を、上記燃焼室体内に設けられる高周波加熱体で構成したことを特徴とする請求の範囲8記載の燃焼装置。
【請求項10】
上記燃焼物に水が混合された流動物を貯留する流動物貯留槽を設けたことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の燃焼装置。
【請求項11】
上記流動物貯留槽内に水を供給する水供給部を設け、該流動物貯留槽に該流動物貯留槽内の流動物を攪拌するミキサを設けたことを特徴とする請求の範囲10記載の燃焼装置。
【請求項12】
上記流動物供給部を、上記流動物が通過する通過塔と、該通過塔の下部に設けられ上記流動物を該通過塔の上部に圧送する高圧ポンプと、上記通過塔の上部に接続管を介して接続され上記燃焼室体内に圧送された流動物を燃焼室体内に噴射する噴射体とを備えて構成したことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載の燃焼装置。
【請求項13】
上記接続管に付設され該接続管を流れる流動物に磁場を付与する磁場発生器を設けたことを特徴とする請求の範囲12記載の燃焼装置。
【請求項14】
上記燃焼室体の上部に設けた上部開口から排気されるガスが通される排気管を設け、該排気管を上記通過塔内にその上部から下部に亘って配設され該排気管中のガスと通過塔内の流動物との交差熱交換を行なわせる螺旋管を備えて構成したことを特徴とする請求の範囲12または13記載の燃焼装置。
【請求項15】
上記燃焼物に水が混合された流動物を貯留する流動物貯留槽を設け、上記螺旋管の後流側の排気管を、上記流動物貯留槽内を通るように配設したことを特徴とする請求の範囲14記載の燃焼装置。
【請求項16】
上記燃焼室体の上部に設けた上部開口から排気されるガスが通される排気管を設け、該排気管の径路中に動力タービンを設けたことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14または15記載の燃焼装置。
【請求項17】
上記燃焼室体内に酸素を供給する酸素供給器を備えて構成したことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15または16記載の燃焼装置。
【請求項18】
上記燃焼室体内に水素を供給する水素供給器を備えて構成したことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16または17記載の燃焼装置。
【請求項19】
上記燃焼室体内に酸素,水素及び二酸化炭素以外の気体のための中和剤を注入する中和剤注入器を備えて構成したことを特徴とする請求の範囲1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17または18記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/033582
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514427(P2005−514427)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014147
【国際出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(597040304)
【Fターム(参考)】