説明

燈体、燈体における成膜方法および成膜装置

【課題】ハウジング部に光源を組み込んで、ハウジング部内側面と、光源先端部とに反射膜を形成するにあたり、光源先端部の膜厚がハウジング部内側面の膜厚よりも厚くなるようにする。
【解決手段】固定金型となる第一金型6に、第一、第二マグネトロンスパッタリング装置9a、10aを備えた第一、第二成膜装置9、10を設けるとともに、第一成膜装置9を構成するターゲット室11aの開口にマスキング部材16を設ける構成とし、一次の射出工程の後、第二金型6に保持され、バルブ3が組み込まれたハウジング部4に対し、第一成膜装置9による第一成膜工程と、第二成膜装置10による第二成膜工程とを実施する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるフロントランプ、ウインカー(サイドターンランプ)、テールランプ等の燈体、燈体における成膜方法および成膜装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種燈体のなかには、車両用に設けられるサイドウィンカーやフロントランプ等があり、このものでは、光源(バルブ、発光ダイオード等)が組み込まれる(支持される)ハウジング部に、レンズ部を突き合わせ、該突き合わせ部となる外周部位を一体化することにより形成されている。このような燈体を形成するにあたり、一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程により、一次成型体としてレンズ部とハウジング部とを成型し、これらを互いに突き合わせ、該突き合わせ部に二次の射出工程により樹脂材を射出することで一体化して燈体を成型するようにした、所謂中空体成型方法で射出成形することが提唱されている。
また、このような燈体では、ハウジング部の内側の面に、反射面となる金属膜を成膜することで、光源の光量を増加したり広い照射範囲が確保することができ、このような燈体を前記中空体成型方法により成型する場合に、第一、第二金型の何れか一方に成膜装置を組み込んで、中空体成型方法による成型工程の過程に成膜工程を組み込むようにして、作業性の改善、歩留まりの向上、品質の向上等を図るようにする方法が既に提唱されている。
一方、このような燈体のレンズ部は透光性樹脂材で形成されているため、光源が非点灯状態にあるとき、レンズ部を透して光源を目視できることになるが、近年、光源を発光ダイオードにしたり、反射面が成膜されたハウジング部の内側面やレンズ部の色と異なる色の光源を用いることがあり、このような場合では、非点灯時にレンズ部から光源が透ける状態で目視できて(見えて)しまい、意匠的に劣るという問題があり改善が求められている。
【0003】
前記問題を解決する一手段として、光源の先端部にハウジング部と同様に反射膜を成膜することで、非点灯時にレンズ部を透して光源を見たとき、光源の色がハウジング部の内側面と同じになり、光源がハウジング部と異なる色であっても目立つことがないようにすることが考えられ、この場合に、一次射出工程と二次射出工程とのあいだに成膜工程を設けて、ハウジング部の内側面と光源の先端部とを同時に成膜するようにして、燈体を高品質でしかも作業性よく成型するようにしたものが提唱されている。
【特許文献1】WO2006/098302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記従来のものは、光源とハウジング部とを同様の成膜条件で成膜しているため、光源に形成される反射膜の膜厚とハウジング部に形成される反射膜の膜厚とは同様の厚さになっている。このため、非点灯時に光源が目立ちにくくなるものの、レンズ部を透明樹脂材とし、光源をアンバー色として両者の色が大きく異なるような場合では、レンズ部を透して光源が目視できてしまうという問題が依然残っている。これに対処するには、光源の反射膜の膜厚を厚くすればよいが、前記従来の手法で対応しようとした場合では、ハウジング部と光源とを同時に同条件で成膜する構成であるので、ハウジング部の反射膜の膜厚も厚くなってしまう。このように、ハウジング部と光源とに膜厚の厚い反射膜を形成した場合、広い面積に反射膜が形成されるハウジング部側においては、ハウジング部を構成する樹脂材と反射膜とで熱収縮率が異なることから、反射膜が剥離してしまうという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて光源の先端部とハウジング部の内側面とを成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して形成される燈体であって、光源の膜厚は、ハウジング部の膜厚よりも厚く成膜されている燈体である。
請求項2の発明は、予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、成膜装置による成膜工程は、光源の先端部のみを成膜する第一成膜工程と、ハウジング部の内側面と光源の先端部とを同時に成膜する第二成膜工程とが設けられている燈体における成膜方法である。
請求項3の発明は、第一成膜工程は、第二成膜工程において成膜される金属材料とは異なる金属材料を用いて成膜するように構成されている請求項2に記載の燈体における成膜方法である。
請求項4の発明は、予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、前記成膜装置は、第二金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えた第一、第二成膜装置で構成され、一方の成膜装置には、光源の基端部とハウジング部をマスキングするマスキング部材が設けられている燈体における成膜装置である。
請求項5の発明は、マスキング部材は、ターゲット室の開口部に設けられている請求項4に記載の燈体における成膜装置である。
請求項6の発明は、マスキング部材は、光源の先端部が嵌入する円筒状部を備えたリング状平板体で構成されている請求項4または5に記載の燈体における成膜装置である。
請求項7の発明は、予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、前記成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備え、該ターゲット室には、光源の先端部に嵌入し、光源の基端部とハウジング部とをマスキングするマスキング部材が着脱自在に設けられている燈体における成膜装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、レンズ部の外部から光源が透けて見えることがなく、しかも、ハウジング部の内側面に成膜された反射膜が剥離するようなことがなく、意匠性に優れ、しかも、耐久性を備えた信頼性の高い燈体とすることができる。
請求項2の発明とすることにより、光源先端部とハウジング部内側面とに膜厚の異なる反射膜を容易に形成することができる。
請求項3の発明とすることにより、バルブ先端部とハウジング部内側面との反射膜を膜厚以外にも異なるようにすることができて、意匠性に優れた燈体を提供することができる。
請求項4の発明とすることにより、光源先端部とハウジング部内側面とに膜厚の異なる反射膜を容易に形成することができる。
請求項5、6の発明とすることにより、マスキング部材の装着、脱落の操作を省略できて、作業時間の短縮を図れてコスト低下に寄与できる。
請求項7の発明とすることにより、燈体成型装置を小型化できるうえ、成型工程を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の第一の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1は本発明の燈体に相当するサイドウインカーであって、該サイドウインカー1は、レンズ部2と、先端半球体状に形成されたアンバー色のバルブ3(光源であればよく、例えば発光ダイオードでも実施できる。)が組み込まれるハウジング部(本体部)4とを備えて構成されている。尚、3aはバルブ3から伸長する端子である。
【0008】
さらに、本実施の形態のサイドウインカー1は、バルブ3の半球体状の先端部3bと、ハウジング部4の内側面4aとに、それぞれ金属膜で構成される反射膜5B、5Hを形成することにより、それぞれが反射面となっている。そして、この場合に、バルブ3に形成される反射膜5Bの膜厚は、ハウジング部4に形成される反射膜5Hの膜厚よりも厚く形成されている。これによって、サイドウインカー1の非点灯時において、レンズ部2の外部からバルブ3をみたとき、バルブ3の先端部3bとハウジング部4の内側面4aとが同色となって、バルブ3のアンバー色が透けて見えることがなく、しかも、ハウジング部4の反射膜5Hがバルブ先端部3bの反射膜5Bよりも薄い膜厚となっていて、樹脂材に対し熱収縮率の異なる反射膜5Hを広い面積に成膜したものでありながら反射膜5Hが剥離するような不具合がなく、意匠性に優れ、しかも、耐久性を備えた信頼性の高いサイドウインカー1を提供できるように構成されている。
【0009】
前記サイドウインカー1は、固定型である第一の金型6と、可動型である第二の金型7とを用い、一次の射出工程においてそれぞれ一次成型体としてレンズ部2とハウジング部4とを成型し、これら一次成型体同士を突き合わせて二次の射出工程においてレンズ部2とハウジング部4との外周部に樹脂材8を射出して一体化することによりサイドウインカー1が成型される中空体成型方法に基づいて成型されている。
そして、本発明が実施された第一、第二金型6、7を用いることで、中空体成型方法に基づくサイドウインカー1の成型過程で、ハウジング部4の内側面4aとバルブ3の先端部3bとにそれぞれ膜厚の異なる反射膜5B、5Hを成膜(形成)することができるように構成されており、これによって、作業性よくサイドウインカー1を形成できるように設定されている。
【0010】
つぎに、前記第一、第二金型6、7について説明するが、図2において上側に位置する第一金型6は固定型であり、下側に位置する第二金型7は第一金型6に対して互いに対向する方向への離接移動(図2において上下方向への移動)と、第一金型6から離間した状態で第一金型6の面に沿う方向への移動(平行移動であって、図2において左右方向への移動)とがそれぞれ自在に行えるよう、架台Bに組み込まれている。前記第二金型7の移動機構の詳細については、従来の中空体成型方法に用いる技術をそのまま採用することができるので、ここでの説明は省略する。
尚、金型の移動は相対的なものでよく、第一金型を可動、第二金型を移動させるように構成してもよく、また、第一、第二金型の両者を移動するように構成することもできる。さらに、金型の移動は、面に沿う方向の移動であれば直線方向の移動に限定されることはなく、軸を中心とする回転移動であってもよい。
【0011】
そして、固定型である第一金型6は、右端部に位置してレンズ部2外側面を成型するための第一凹型面6aが形成され、該第一凹型面6aの左側に隣接してハウジング部4の内側面を成型するための第一凸型面6bが形成されている。さらに、第一金型6は、左側半部に位置して凹部6cが形成され、該凹部6cに、本発明の第一、第二成膜装置9、10が左右に隣接する状態で設けられている。
一方、下方に位置する可動型である第二金型7には、右半部に位置してレンズ部2の内側面を成型するための第二凸型面7aが形成され、左半部に位置してハウジング部4外側面を成型するための第二凹型面7bが形成されている。
【0012】
前記第一、第二成膜装置9、10は、それぞれ凹部6cに一体的に固定される第一、第二ケーシング11、12を備えて構成されており、これら第一、第二ケーシング11、12には、第二金型7の第二凹型面7bに対向する大きさに形成された開口部を備えた凹溝形状の第一、第二ターゲット室11a、12aがそれぞれ形成されており、これら第一、第二ターゲット室11a、12aに、それぞれ成膜手段である第一、第二マグネトロンスパッタリング装置9a、10aが収容されている。
尚、前記第一、第二マグネトロンスパッタリング装置9a、10aは汎用のもの装置を用いることができ、真空ポンプP、吸気路13、マグネット14、反射膜5B、5H(反射膜、金属膜)となるターゲット15(金属材料)、図示しない不活性ガス供給路等の各種部材装置を備えて構成されている。
また、本実施の形態では、第一、第二マグネトロンスパッタリング装置9a、10aのターゲット15は同様の金属が用いられているが、異なる金属を用いる構成としてもよい。
因みに、第一、第二成膜装置9、10に組み込まれる成膜手段としては、種々のスパッタリング装置、真空蒸着装置等による成膜手段等、適宜用いることができ、第一、第二成膜装置9、10で異なる成膜手段を用いるように構成することもできる。
【0013】
前記成膜装置9、10のうち、左側に位置する第一成膜装置9の第一ターゲット室11aにおける内周面11bには、第二金型7側の端部(開口端部)に位置してマスキング部材16が一体的に固定されている。前記マスキング部材16は、中央部に位置しバルブ3の先端部3bが嵌入する円筒状部16aと、ハウジング部4の内側面4aを覆うリング状平板体16bとにより構成されている。そして、後述するように、第一成膜装置9をバルブ3が組み込まれた状態のハウジング部4が保持された第二金型7の第二凹型面7bに突き当てた場合に、マスキング部材円筒状部16aにバルブ3の先端部3bが嵌入し、バルブ3の基端部およびハウジング部4の内側面が、円筒状部16aおよびリング状平板体16bとによりマスキングされ、これによって、ターゲット室11a側にバルブ3の先端部3bのみが露出して、該部位の成膜ができるように設定されている。
【0014】
つぎに、サイドウインカー1の製造工程手順について、図2〜6の図面を用いて説明する。
図2は、第一金型6と第二金型7とが離間して配設されているが、まず、第一凹型面6aと第二凸型面7aとを対向させ、第一凸型面6bと第二凹型面7bとを対向させ、この状態から第二金型7を第一金型6側に移動して、第一凹型面6aと第二凸型面7a、第一凸型面6bと第二凹型面7bとをそれぞれ互いに突き合わせた状態とする。そして、前記状態において樹脂材を射出して、図3(A)に示すように、一次成型体としてのレンズ部2とハウジング部4とをそれぞれ成型する(一次の射出工程)。このとき、第一金型6に組み込まれた第一、第二成膜装置9、10は、第二金型7の各型面7a、7bとは位置ズレした状態となっていて第二金型7側に干渉することはなく、また、マグネトロンスパッタリング装置9a、10aが作動することはない。
【0015】
前記状態から、図3(B)に示すように、第二金型7が第一金型6から離間する方向に移動するが、このとき、レンズ部2は第一金型6側に設けられた吸引手段により第一金型6に保持される状態で第二金型7から脱型され、ハウジング部4は第一金型6から脱型されて第二金型7側に保持される(離型工程)ように型設計されている。
そして、前記状態から、図4(A)に示すように、第二金型7を左方に移動して、第一金型6の第一成膜装置9に第二金型7に保持されているハウジング部4を対向させる位置関係とする。この状態において、端子部材3aが組み込まれたバルブ3をハウジング部4に挿入組み込みして固定し、続いて、本発明の第一成膜工程を実施するべく、第二金型7を第一金型6に近接する方向に移動し、図4(B)に示すように、第一金型6の第一ターゲット室11aの下端面11cと第二金型7の第二凹型面7bの上端面とを突き合わせる。この突き合わせ移動において、ハウジング部4に組み込まれたバルブ3の先端部3bは、第一ターゲット室11aに設けられたマスキング部材16の円筒状部16aに自動的に嵌入するように構成されており、これによって、マスキング部材16をバルブ3に組み込む工程を省略できるように構成されている。
尚、第一成膜工程において、第二成膜装置10と第二金型7の第二凸型面7aとは近接対向するが、互いに干渉することはないように設定されている。
【0016】
そして、前記状態になるとマスキング部材16によりバルブ3の基端部とハウジング部4の内側面とがマスキングされた状態となり、第一マグネトロンスパッタリング装置9aを予め設定される時間のあいだ作動することにより、第一成膜工程が実施され、バルブ先端部3bにのみに所定の膜厚の反射膜5Bが形成されるように設定されている。
前記第一成膜工程が終了すると、ハウジング部4が保持される第二金型7を第一金型6から離間する方向に移動させるが、このとき、バルブ3は、ハウジング部4とともに第一成膜装置9を構成する第一ターゲット室11aから下動することにより、マスキング部材16の円筒状部16aから自動的に抜け出すように構成され、これによって、マスキング部材16の取り外し工程を省略できるように構成されている。
【0017】
そして、前記状態から第二金型7を右方に移動させ、図5(A)に示すように、ハウジング部4が第二成膜装置10に対向する位置関係とする。この状態において、本発明の第二成膜工程を実施するべく、図5(B)に示すように、第二金型7を第一金型6に近接する方向に移動し、第一金型6の第二ターゲット室12aの下端面12bと第二金型7の第二凹型面7bの上端面とを突き合わせる。この状態において、第二マグネトロンスパッタリング装置10aが予め設定される時間のあいだ作動することにより、第二成膜工程が実施され、予め第一成膜工程により反射膜5Bが所定の膜厚で形成されたバルブ先端部3bと、反射膜が形成されていないハウジング部4の内側面4aとの両者に、所定の膜厚の反射膜5B、5Hが形成されるように設定されている。これによって、バルブ先端部3bは、第一成膜工程により形成された反射膜5Bと第二成膜工程により形成される反射膜5Bとにより、ハウジング部内側面4aに形成される反射膜5Hよりも膜厚の厚い反射膜5Bが形成されるように設定されている。
ここで、第一、第二成膜工程における成膜時間は、必ずしも同じ時間にする必要はなく、バルブ先端部3bとハウジング部内側面4aとに必要な膜厚となるよう適宜設定することができる。
尚、第二成膜工程において、第一金型6の第一凸型面6bと第二金型7の第二凸型面7aとは近接対向するが、互いに干渉することはないように設定されている。
【0018】
このように、第一、第二成膜工程が実施されて成膜された後は、第一金型6に保持されている一次成型体としてのレンズ部2に対し、第二金型7に保持され、第一、第二成膜工程が実施された一次成型体としてのハウジング部4とを対向させ、図6に示すように、第二金型7を第一金型6側に近接する方向に移動させ、これら第一、第二金型6、7同士を突き合わせてレンズ部2とハウジング部4とを突き合わせた状態とする。そして、レンズ部2とハウジング部4との突き合わせ部の外周縁部に、前述したように、樹脂材8を射出(二次の射出工程)することにより、レンズ部2とハウジング部4とを一体化(接着)してサイドウインカー1を形成する。因みに、二次の射出工程において、第一、第二成膜装置9、10は、第二金型7とは位置ズレしており干渉することはないように設定されている。
前記成型されたサイドウインカー1は、第二金型7を第一金型6から離間させた状態で取り出されるが、この後、第二金型7を右方に移動させることにより、レンズ部2とハウジング部4とを一次射出する状態となり、以降、この工程を繰り返すことにより、順次サイドウインカー1が成型されるように構成されている。
【0019】
叙述の如く構成された本形態において、射出により成型されたサイドウインカー1は、ハウジング部4の内側面4aとアンバー色のバルブ3の先端部3bとにそれぞれ反射膜5が成膜されているが、バルブ3の先端部3bは、第一成膜装置9による第一成膜工程において所定の膜厚の反射膜5Bが形成され、さらに、第二成膜装置10による第二成膜工程において再度所定の膜厚の反射膜5Bが形成されるため、バルブ先端部3bの反射膜5Bの膜厚は、ハウジング部4の内側面4aに形成される反射膜5Hよりも厚くなっている。この結果、サイドウインカー1の非点灯時において、レンズ部2の外部からバルブ3をみたとき、バルブ3の先端部3bとハウジング部4の内側面4aとが同色となって、バルブ3のアンバー色が透けて見えることがなく、しかも、広範囲に成膜されたハウジング部内側面4aの反射膜5Hが熱収縮率の差から剥離されてしまうような不具合がなく、意匠性に優れ、しかも、耐久性を備えた信頼性の高いサイドウインカー1とすることができる。
【0020】
このように、本発明が実施されたサイドウインカー1は、ハウジング部内側面4aとともにバルブ3の先端部3bに反射膜5H、5Bが成膜されるものであるが、この場合に、成膜装置として第一、第二成膜装置9、10を用い、第一成膜装置9のターゲット室11aには、バルブ先端部3bのみを成膜するためのマスキング部材16を設ける構成としたので、ハウジング部4が保持された第一金型7を第一金型6に設けた第一、第二成膜装置9、10に順次対向させて成膜することで、バルブ先端部3bには厚い反射膜5Bを形成し、ハウジング部内側面4aにはそれよりも薄い反射膜5Hを簡単に形成することが可能となる。
【0021】
しかも、バルブ3の基端部とハウジング部内側面4aとをマスキングするマスキング部材16は、ターゲット室11aの開口部に設けられる一方、マスキング部材16は、バルブ3の先端部が嵌入する円筒状部16aが形成されたものにしたので、バルブ3を組み込んだハウジング部4をターゲット室11aに離接することで、マスキング部材16を自動的にバルブ3の先端部3bに装着、脱落させることができ、マスキング部材16を取り付けたり、取り外したりする操作が一切不要になって、作業性よくサイドウインカー1を成型することができ、作業時間の短縮を図れてコスト低下に寄与できる。
【0022】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、図7、8に示す第二の実施の形態のようにすることもできる。尚、第二の実施の形態において、第一、第二成膜工程は、固定側の第一金型6側に設けられた一つの成膜装置17により実施するように構成されており、成膜装置17以外の基本的な構成は、前記第一の実施の形態と同様であり、同様の部材については同様の符号を付すことで説明を省略する。
前記第二の実施の形態において、前記成膜装置17は、第一金型6に形成される凹部6cに設けられるケーシング18を備えて構成されている。前記ケーシング18には、第二金型7の第二凹型面7bに対向する大きさの開口部を備えた凹溝形状のターゲット室18aが形成されており、該ターゲット室18aに成膜手段であるマグネトロンスパッタリング装置17aが収容(内装)されている。尚、マグネトロンスパッタリング装置17aは、真空ポンプP、吸気路13、マグネット14、反射膜5B、5H(反射膜、金属膜)となるターゲット15、図示しない不活性ガス供給路等の各種部材装置を備えて構成されている。
【0023】
そして、ターゲット室18aの開口端側の内周面18bにはマスキング部材19が設けられるが、前記マスキング部材19は、前記第一の実施の形態のマスキング部材と同様に中央部にバルブ3の先端部3bが嵌入する円筒状部19aと、ハウジング部4の内側面4aを覆うリング状平板体19bとを備えて構成されるが、本実施の形態のマスキング部材19は、二つ割り状に分割されて左右の分割体19c、19dとなっており、各分割体19c、19dは、それぞれターゲット室内周面18bに対し、枢支軸20を支点として揺動自在に組み込まれ、各分割体19c、19dがターゲット室18aの開口を塞ぎ、円筒状部19aとリング状平板体19bとを形成する倒伏姿勢と、該倒伏姿勢から上方揺動し、各分方謡19c、19dがターゲット室18aの内周面に沿い、ターゲット室の開口を開放状態とする起立姿勢とに揺動変姿するように構成されている。
【0024】
そして、このものでは、予め第一金型6の第一凹型面6aと第二金型7の第二凸型面7a、第一金型の第一凸型面6bと第二金型7の第二凹型面7bとをそれぞれ対向せしめて一次射出してレンズ部2とハウジング部4とを成型した後、図8に示すように、第二金型7を移動して第二凹型面7bに保持されたハウジング部4を、成膜装置17のターゲット室18aに突き当て、マスキング部材19を仮想線で示す倒伏姿勢とすることでバルブ3の基端部とハウジング部内側面4aとをマスキングし、この状態において、マグネトロンスパッタリング装置17aを予め設定される時間のあいだ作動することにより、バルブ3の先端部3bに所定の膜厚の反射膜5Bが形成される(第一成膜工程)ように設定されている。その後、マスキング部材19を実線で示す起立姿勢とし、ターゲット室18aの開口を開放し、この状態において、マグネトロンスパッタリング装置17aを予め設定される時間のあいだ作動することにより、バルブ3の先端部3bおよびハウジング部内側面4aとに所定の膜厚の反射膜5B、5Hが形成される(第二成膜工程)ように設定されている。
【0025】
このようにすることにより、バルブ3の先端面3bには、ハウジング部内側面4aの反射膜5Hよりも厚い反射膜5Bを形成することができて、バルブ3のアンバー色が透けて見えることがなく、しかも、広範囲に成膜されたハウジング部4の反射膜5Hが熱収縮率の差から剥離されてしまうような不具合がなく、意匠性に優れ、しかも、耐久性を備えた信頼性の高いサイドウインカー1とすることができる。
しかも、この場合では、第一金型6に設けられる成膜装置17を一つにすることができてターンランプ2の成型装置を小型化できるうえ、第二金型7の移動回数を減らすことができるという利点を得ることができる。
【0026】
尚、第一成膜工程と第二成膜工程とで異なる金属材料を用いる場合では、第一、第二成膜工程を前記第一の実施の形態とは逆に第二成膜工程を先行し、第一成膜工程を後行して成膜するようにしてもよく、何れの場合も、バルブ先端部とハウジング部内側面との反射膜を膜厚だけでなく、色や特性等を異なるようにすることができて、意匠性に優れたものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】サイドウインカーの断面図である。
【図2】サイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図4】図4(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図5】図5(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図6】サイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図7】第二の実施の形態におけるサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図8】第二の実施の形態における成膜工程を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 サイドウインカー
2 レンズ部
2a 内側面
3 バルブ
3b 先端部
3c 基端側部位
4 ハウジング部
4a 内側面
5B 反射膜
5H 反射膜
6 第一金型
7 第二金型
9 第一成膜装置
9a 第一マグネトロンスパッタリング装置
10 第二成膜装置
10a 第二マグネトロンスパッタリング装置
11a 第一ターゲット室
16 マスキング部材
16a 円筒状部
16b リング状平板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて光源の先端部とハウジング部の内側面とを成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して形成される燈体であって、光源の膜厚は、ハウジング部の膜厚よりも厚く成膜されている燈体。
【請求項2】
予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、成膜装置による成膜工程は、光源の先端部のみを成膜する第一成膜工程と、ハウジング部の内側面と光源の先端部とを同時に成膜する第二成膜工程とが設けられている燈体における成膜方法。
【請求項3】
第一成膜工程は、第二成膜工程において成膜される金属材料とは異なる金属材料を用いて成膜するように構成されている請求項2に記載の燈体における成膜方法。
【請求項4】
予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、前記成膜装置は、第二金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えた第一、第二成膜装置で構成され、一方の成膜装置には、光源の基端部とハウジング部をマスキングするマスキング部材が設けられている燈体における成膜装置。
【請求項5】
マスキング部材は、ターゲット室の開口部に設けられている請求項4に記載の燈体における成膜装置。
【請求項6】
マスキング部材は、光源の先端部が嵌入する円筒状部を備えたリング状平板体で構成されている請求項4または5に記載の燈体における成膜装置。
【請求項7】
予め型成形されたレンズ部が保持される第一金型に反射膜を形成する成膜装置を設ける一方、第二金型に保持されるハウジング部に光源の基端部を挿入固定し、第一、第二金型の型移動に基づいて成膜装置をハウジング部に対向させて成膜し、その後、レンズ部とハウジング部との突き合わせ部に樹脂材を射出成形して燈体を形成するにあたり、前記成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備え、該ターゲット室には、光源の先端部に嵌入し、光源の基端部とハウジング部とをマスキングするマスキング部材が着脱自在に設けられている燈体における成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−99489(P2009−99489A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272194(P2007−272194)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】