説明

燐光体を内部に分散させた透明なプラスチック製シェル(shell)を具備する透過型光学要素およびその製造方法

【課題】透過型光学要素とは、別に燐光体被覆または燐光体含有封入剤を使用する必要がない発光素子の実装を提供すること。
【解決手段】透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を鋳型に充填し、この溶融液体を凝固させて、燐光体が内部に分散した透過型光学要素を作製することによって、透過型光学要素が製造される。透過型光学要素は、燐光体が内部に分散されている透明のプラスチックから作製されたシェルを含む。燐光体はシェルの中に均一および/または不均一に分散され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子およびその製造方法に関し、さらに詳細には発光素子の実装(packaging)および実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードのような半導体発光素子が多くの応用例に広く使用されている。当業者にはよく知られているように、半導体発光ダイオードは一般に、ドーム形の透明なプラスチック製シェルで半導体発光ダイオードの少なくとも一部を包囲することによって実装される。
【0003】
特定の周波数帯域の放出放射を増強し、かつ/または放射の少なくとも一部を別の周波数帯域に変換するために、燐光体(phosphor)を発光素子に組み込むことがしばしば望ましい。燐光体は、多くの従来技術を使用して発光素子の中に含まれ得る。1つの技術では、燐光体がプラスチック製シェルの内側および/または外側に被覆される。他の技術では、燐光体が、例えば、電気泳動堆積法を用いて半導体発光素子自体の上に被覆される。さらに他の実施形態では、燐光体を含有するエポキシ系などの物質の小滴が、プラスチック製シェルの内側、半導体発光素子の上、および/または素子とシェルとの間に滴下され得る。燐光体被覆を用いるLEDが幾つか開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5、および6参照)。
【0004】
実装は、発光素子完成品の経費および/または製造時間の主要部分を構成し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6252254号明細書
【特許文献2】米国特許第6069440号明細書
【特許文献3】米国特許第5858278号明細書
【特許文献4】米国特許第5813753号明細書
【特許文献5】米国特許第5277840号明細書
【特許文献6】米国特許第5959316号明細書
【特許文献7】米国特許第6201262号明細書
【特許文献8】米国特許第6187606号明細書
【特許文献9】米国特許第6120600号明細書
【特許文献10】米国特許第5912477号明細書
【特許文献11】米国特許第5739554号明細書
【特許文献12】米国特許第5631190号明細書
【特許文献13】米国特許第5604135号明細書
【特許文献14】米国特許第5523589号明細書
【特許文献15】米国特許第5416342号明細書
【特許文献16】米国特許第5393993号明細書
【特許文献17】米国特許第5338944号明細書
【特許文献18】米国特許第5210051号明細書
【特許文献19】米国特許第5027168号明細書
【特許文献20】米国特許第4966862号明細書
【特許文献21】米国特許第4918497号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2003/0006418(A1)号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2002/0123164(A1)号明細書
【特許文献24】米国特許仮出願第60/411980号明細書
【特許文献25】米国特許第10/659108号明細書
【特許文献26】米国特許第4826424号明細書
【特許文献27】米国特許第5110278号明細書
【特許文献28】米国特許第5882553号明細書
【特許文献29】米国特許第5968422号明細書
【特許文献30】米国特許第6156242号明細書
【特許文献31】米国特許第6383417号明細書
【特許文献32】米国特許第4107238号明細書
【特許文献33】米国特許第4042552号明細書
【特許文献34】米国特許第4141941号明細書
【特許文献35】米国特許第4562018号明細書
【特許文献36】米国特許第5143660号明細書
【特許文献37】米国特許第5374668号明細書
【特許文献38】米国特許第5753730号明細書
【特許文献39】米国特許第6391231号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の幾つかの実施形態が、透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を鋳型に充填し、この溶融液体を凝固させて、燐光体が内部に分散されている透過型光学要素を製造することによって透過型光学要素を形成する。したがって、これらの実施形態は、別に燐光体被覆または燐光体含有封入剤を使用することもできるが、そうする必要はない。
【0007】
本発明の幾つかの実施形態では、透過型光学要素はドーム(dome)であり、それを透過して発光素子が光を放出する。これらの実施形態では、透明のコア(core)もドームの内側に形成され得る。別法として、透明のコアを最初に形成し、次いで、この透明のコアを含むドーム形の鋳型に透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を充填することによって成形を行うことができる。
【0008】
さらに他の実施形態では、透過型光学要素はキーパッド用キーであり、それを透過して発光素子が光を放出する。さらに他の実施形態では、光学要素がキーパッド用キー面であり、それを透過して発光素子が光を放出する。これらの実施形態では、キーパッド用キー面に装着されるキーパッド用キー壁を形成するために別の工程が設けられ得る。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態に係る透過型光学要素は、燐光体が内部に分散されている透明のプラスチックを含むシェルを具備する。幾つかの実施形態では、燐光体がシェルの中に均一に分散されている一方で、他の実施形態では、燐光体がシェルの中に非均一に分散されている。
【0010】
幾つかの実施形態では、シェルはドーム形シェルであり、透過型光学要素は、ドーム形シェルの内側に透明の内方コア(inner core)をさらに含む。幾つかの実施形態では、透明の内方コアがドーム形シェルを充填して半球光学要素を設ける。さらに他の実施形態では、ドーム形シェルは、光を透明の内方コアの中に放出しかつそれに透過させ、さらにドーム形シェルに透過させて、ドーム形シェルから現出するように構成される半導体発光素子と組合せ可能である。さらに他の実施形態は、半導体発光素子に隣接しかつ透明の内方コアから遠隔の実装基板を追加する。さらに他の実施形態は、発光素子と透明のコアとの間に封入剤を追加する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、シェルが、キーパッド用キー面と、このキーパッド用キー面から延在する(extend)キーパッド用キー壁とを含むキーパッド用キーシェルである。これらの実施形態の幾つかでは、燐光体がキーパッド用キーシェルの中に均一に分散されている。他の実施形態では、燐光体がキーパッド用キー面の中に均一に分散されているが、キーパッド用キー壁の中には含まれていない。さらに他の実施形態では、燐光体がキーパッド用キー面の中に非均一に分散されるが、キーパッド用キー壁の中には含まれてもまたは含まれていなくてもよい。
【0012】
本発明の他の実施形態に係る発光素子は、実装基板と、この実装基板の上の半導体発光素子とを含む。燐光体が内部に分散されている透明のプラスチックを含むドーム形シェルが、実装基板の上に設けられ、半導体発光素子の少なくとも一部を包囲する。透明の内方コアがドーム形シェルの内側に設けられる。他の実施形態では、封入剤が半導体発光素子と透明の内方コアとの間に設けられる。さらに他の実施形態では、実装基板がその内部に空隙を含み、半導体発光素子の少なくとも一部がその空隙の中にあり、ドーム形シェルは空隙を包囲する実装基板の上にあり、さらに封入剤は空隙の中にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】半導体発光素子を提供できる本発明の第1の実施形態に係る透過型光学要素を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る半導体発光素子を示す断面図である。
【図3】キーパッド用キーを提供できる本発明のさらに他の実施形態に係る光学要素を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光学要素を製造するために使用可能な成形装置を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る発光素子を製造するために実行可能な動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る発光素子を製造するために実行可能な動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、以下では本発明をさらに完全に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施可能であり、本明細書に説明する実施形態に限定されるものと考えるべきではない。さらに正確に言えば、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全になるように、さらに本発明の範囲を当業者に十分に伝達するために提供されるものである。図面では、層および領域の寸法ならびに相対寸法は、明瞭にするために誇張され得る。全体を通して同様の数字が同様の要素を指す。
層、領域、または基板などの要素が、別の要素の「上に」あると言及されるとき、それは他の要素の上に直に存在してもよいし、または介在する要素が存在してもよいことが理解されよう。導電線の表面のような要素の一部が「外方(outer)」と言及される場合に、それは当該要素の他の部分よりも素子の外側に近接していることが理解されよう。さらには、本明細書では「下方」というような相対的な用語が、図に例示する基板または基層を基準にして、1つの層または領域が別の層または領域に対する関係を説明するために使用され得る。これらの用語は、図に示す配置に加えて、素子の異なる配置を包含しようとするものであることが理解されよう。最後に、「直に」という用語は、介在要素が存在しないことを意味する。
【0015】
図1A〜1Hは、本発明の様々な実施形態に係る透過型光学要素を示す断面図である。これらの光学要素を使用して、半導体発光素子のような発光素子を実装する(package)ことができる。
【0016】
図1Aに示すように、本発明の幾つかの実施形態に係る透過型光学要素が、透明のプラスチックを含むシェル100を具備する。シェル100は、その中に分散された燐光体110を含む。当業者にはよく知られているように、このシェルは、ポリカーボネート材料および/または透過型光学要素を製造するために使用される他の通常のプラスチック材料を含み得る。さらには、この燐光体は、セリウムドープYAGおよび/または他の通常の燐光体を含めて、任意の通常の燐光体を含み得る。幾つかの特定の実施形態では、燐光体は、セシウムドープのイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)を含む。他の実施形態では、微小燐光体が使用可能である。燐光体は当業者にはよく知られており、したがって本明細書ではこれ以上説明する必要がない。
【0017】
図1Aでは、燐光体110がシェル100内部に均一に分散されている。対照的に、図1Bでは、燐光体120がシェル内部に非均一に分散されている。燐光体120の様々なパターンが形成され、例えば、より高い強度および/または異なる色の領域を設けたり、かつ/または照明時にシェル100の上に様々な標示(indicia)を現出させ(provide)たりすることができる。図1A〜1Bでは、シェル100がドーム形のシェルである。本明細書で使用されるように、「ドーム」および「ドーム形の」という用語は、正規の半球構造ばかりでなく、正規の半球を形成しないで形状が偏心していたり、かつ/または他の特徴、構造、および/もしくは表面を有したりする他の概ね円弧状構造も含めて、概ね円弧状の表面輪郭を有する構造を指す。さらには、以下に説明するように様々な形状を設けることができる。
【0018】
ここで図1Cを参照すると、1つまたは複数の被覆130がシェル100の外面上に設けられ得る。この被覆は、保護被覆、偏光被覆、標示付き被覆、および/または当業者によく知られている光学要素のための他の任意通常の被覆であり得る。図1Dでは、1つまたは複数の内方被覆140がシェル100の内表面の上に設けられる。この場合も、任意の通常の被覆または被覆の組合せが使用可能である。
【0019】
さらには、本発明の他の実施形態が、内部に均一に分散された燐光体110および/または非均一に分散された燐光体120を含む、シェル100のための内方および外方被覆を設ける。このような内方および外方被覆を設けることによって、燐光体に対する屈折率整合(index matching)を向上させることができる。したがって、本発明の幾つかの実施形態にしたがって3つの層を射出成形することができる。本発明の他の実施形態は、液体および/または固体ゲルのような屈折率整合媒質をシェル内部に使用して、屈折率整合を補助することができる。内方および外方層を使用すると、屈折率整合の結果として、燐光体含有層の中に閉じ込め得る燐光体の数を削減することができる。
【0020】
図1Eは本発明の他の実施形態を説明するが、そこでは透明の内方コア150が、ドーム形のシェル100の内側に設けられている。幾つかの実施形態では、図1Eにも示すように、半球状の光学要素を設けるために、透明の内方コア150がドーム形のシェル100を充填する。透明の内方コア150は、均一に透明であっても、かつ/または半透明および/もしくは不透明の領域を内部に含んでもよい。透明の内方コア150には、ガラス、プラスチック、および/または他の光結合媒質が含まれ得る。
【0021】
図1Fは本発明の他の実施形態を例示するが、そこでは光162を透明な内方コア150の中に放出しかつそれに透過させ、さらにドームシェル100に透過させて、ドーム形シェル100から現出するように構成されている半導体発光素子160と燐光体含有シェル100とを組み合わせる。半導体発光素子は発光ダイオード、レーザ発光ダイオード、および/または他の素子を含み得るが、他の素子には、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、および/または他の半導体材料を含み得る1つもしくは複数の半導体層;サファイヤ、ケイ素、炭化ケイ素、または他の超小型電子基板を含み得る基板;ならびに金属および/または他の導電性層を含み得る1つもしくは複数の接点層が含まれ得る。半導体発光素子の設計および製造は当業者にはよく知られている。
【0022】
例えば、発光要素160は、米国ノースカロライナ州ダラム(Durham)所在のクリー インコーポレーテッド社(Cree,Inc.)によって製造および販売されている素子のような炭化ケイ素基板上に形成された窒化ガリウム系LEDまたはレーザでよい。例えば、本発明で使用するのに適切なLEDおよび/またはレーザが、参照によりその開示が本明細書に完全に記載されたものとして本明細書に組み込まれる(例えば、特許文献7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、および21参照)。他の適切なLEDおよび/またはレーザが、2003年1月9日に公開された「Group III Nitride Based Light Emitting Diode Structures With a Quantum Well and Superlattice, Group III Nitride Based Quantum Well Structures and Group III Nitride Based Superlattice Structures」という名称の(特許文献22)ならびに「Light Emitting Diodes Including Modifications for Light Extraction and Manufacturing Methods Therefor」という名称の(特許文献23)に記載されている。さらには、参照によりその開示が本明細書に完全に記載されたものとして本明細書に組み込まれている、2002年9月19日に出願された「Phosphor-Coated Light Emitting Diodes Including Tapered Sidewalls, and Fabrication Methods Therefor」という名称の(特許文献24)に記載されているものなどの燐光体被覆LEDも、本発明の実施形態において使用するのに同様に適切であり得る。
【0023】
LEDおよび/またはレーザは、基板を透過して発光が行われるように動作すべく構成可能である。このような実施形態では、上で引用した開示のように(特許文献23参照)、基板は素子の光出力を高めるようにパターン形成可能である。
【0024】
図1Gは、本発明の他の実施形態を示す断面図である。図1Gに示すように、実装基板170が設けられ、発光素子160が実装基板170と透明な内方コア150との間にあるようになっている。図1Gにも示すように、幾つかの実施形態では、実装基板170は、内部に空隙172を含み、発光素子160の少なくとも一部が空隙172の中にある。
【0025】
最後に、図1Hが本発明のさらに他の実施形態を例示する。これらの実施形態では、空隙170には、エポキシ系および/または他の光結合媒質(例えば、ケイ素)のような封入剤180が充填され得る。封入剤180は、発光素子160から透明な内方コア150までの光結合を向上させることができる。本発明の幾つかの実施形態に使用可能な実装基板170の設計および製造が、本発明の譲受人に譲り受けられたNegleyの「Solid Metal Block Mounting Substrates for Semiconductor Light Emitting Devices, and Oxidizing Methods for Fabricating Same」という名称の同時出願(特許文献25)(整理番号5308―311)に記載されており、その開示は本明細書に完全に記載されたものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
図1A〜1Hの実施形態を別個の実施形態として例示したが、図1A〜1Hの様々な要素を様々な組合せおよび要素の副次的な組合せで一緒に使用可能であることが当業者には理解されよう。したがって、例えば、内方および外方被覆140および130、均一分布燐光体110および非均一分布燐光体120、発光素子160、実装基板170、空隙172、内方コア150、および封入剤180の組合せが一緒に使用可能である。したがって、本発明は、図1A〜1Hに示されている別個の実施形態に限定されるべきではない。
【0027】
図2Aは、本発明の他の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。図2に示すように、これらの実施形態は、燐光体および/または他の化学物質が混入されている光学的に透明な材料から作製可能な外方シェル200を具備する。内方コア250は、プラスチックまたはガラスのような光学的に透明な材料から作製可能であり、実装基板270中の封入収容空隙272に配置される。外方シェル200および内方コア250は、発光ダイオード260のための複合レンズを形成する。
【0028】
図2Bは、本発明のさらに他の実施形態に係る発光素子を示す断面図である。図2Bに示すように、これらの実施形態は内方シェル202を具備し、それは燐光体および/または他の化学物質が混入されたポリマーのような光学的に透明な材料から作製可能である。外方シェル252は、プラスチックまたはガラスのような光学的に透明な材料から作製可能である。図2Aの場合と同様に、発光ダイオード260のための複合レンズを形成するために封入空隙272および実装基板270を設けることができる。
【0029】
図3A〜3Fは、本発明のさらに他の実施形態に係る透過型光学要素を示す断面図であり、これらの実施形態を使用して、例えば、携帯電話、自動車のダッシュボード、携帯用コンピュータ、および照明付きキーパッドを具備する他の通常の機器で使用可能なキーパッド用キーを形成することができる。ここで図3Aを参照すると、透過型光学要素が、発燐光体310を内部に分散させたキーパッド用キー面300を具備するキーパッド用キーシェルを含む。図3Aでは、燐光体310が内部に均一に分散されている一方で、図3Bでは、燐光体320が内部に非均一に分散されている。非均一分散は、異なる光強度、異なる色、および上で説明した標示を設ける。
【0030】
図3Cでは、キーパッド用キーは、キーパッド用キー面300から延在するキーパッド用キー壁330も具備する。図3Cでは、燐光体310がキーパッド用キー面300およびキーパッド用キー壁330の中に均一に分布している。図3Dでは、燐光体320’がキーパッド用キー面300の上に均一に分布しているが、キーパッド用キー壁330の中には含まれていない。図3Eでは、燐光体320がキーパッド用キー面300の中で非均一に分布しているが、キーパッド用キー壁330の中には含まれていない。
【0031】
図3Fは、筐体370の中に装着されたキーパッド用キー面300およびキーパッド用キー壁330を具備するキーパッド用キーを例示するが、それは、キーパッド用キー面300および/または壁330を透過して光362を放出するために、筐体とキーとの間に半導体発光素子のような発光素子360を含む。光導波路を使用して半導体発光素子360をキーから遠隔に位置決めできることが理解されよう。図3A〜3Fに示した様々な要素の組合せおよび/または副次的な組合せを使用して、例えば、均一および/または非均一分布の燐光体310、320、320’をキー面および/またはキー壁330の中に使用可能であることも理解されよう。したがって、本発明は、図3A〜3Fに個別に示す要素の様々な組合せに限定されるべきではない。
【0032】
図4は、本発明の様々な実施形態に係る透過型光学素子を形成するための装置を示す模式図である。特に、図4は、本発明の様々な実施形態に係る透過型光学要素を形成するために使用できる射出成形装置を例示する。図4に示すように、射出成形装置がホッパ410または他の貯留装置を具備し、その中に透明のプラスチックおよび/または燐光体添加剤450が供給される。透明のプラスチックおよび/または燐光体添加剤は、ペレット、粉体、および/または固形で供給可能である。当業者にはよく知られているように、溶剤、結合剤などのような他の添加剤も含まれ得る。射出機420は、透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を溶解したり、かつ/またはこれらの材料を溶解状態に維持したりするために使用される加熱器およびスクリュー機構を具備して、透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を供給することができる。射出機420は、ノズル430を介して溶融液体を鋳型440の中に射出する。鋳型440は内部に適切な流路460を具備し、それを使用してドームまたはキーパッド用キーのような光学要素の形状を画成することができる。光学要素の射出成形は当業者によく知られ、かつ開示されており(例えば、特許文献26、27、28、29、30、および31参照)、本明細書ではこれ以上説明する必要がない。流し込み成形技術(casting technique)も使用可能であり、その場合には、透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体が雌型の中に供給され、次いでそれが雄型に結合されて(または逆の様態で)光学要素を成形することも理解されよう。光学要素の流し込み成形は幾つも開示されており(例えば、特許文献32、33、34、35、36、37、38、および39参照)、本明細書ではこれ以上説明する必要がない。
【0033】
図5は、本発明の様々な実施形態に係る透過型光学要素を製造するために使用可能な工程を示すフローチャートである。図5に示すように、ブロック510で、図4の鋳型440のような鋳型に透明のプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体が充填される。ブロック520で、溶融液体を凝固させて燐光体が内部に分散した光学要素を製造する。
【0034】
図6は、本発明の実施形態に係る半導体発光素子を製造するために実行可能な工程を示すフローチャートである。図6に示すように、ブロック610で、燐光体が内部に分散された透明のプラスチックを含む、図1Aのドーム形シェル100のようなシェルが、射出成形、流し込み成形、および/または他の通常の技術を使用して成形される。ブロック620で、図1Eのコア150のようなコアが形成される。幾つかの実施形態では、コア150がドーム形シェル100の内側に配置されるかまたは形成される一方で、他の実施形態では、透明なコア150を包囲するドーム形シェル100を形成するために、この透明のコアを形成し、次いで、透明なプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を透明のコア150を含む鋳型に充填することによって、ブロック620がブロック610に先行することが理解されよう。
【0035】
さらに図6を参照すると、図1Gの素子160のような半導体発光素子が、実装基板170のような実装基板の上に配置される。ブロック640で、図1Hの封入剤180のような封入剤が、実装基板170、発光素子160、および/またはコア150に使用される。最後に、ブロック650で、エポキシ系、スナップ嵌め、および/または他の通常の実装技術を使用して、シェルが実装基板に結合される(mate)。
【0036】
使用され得る封入剤180の量を削減または最少化するために、内方コア150がレンズ全体を充填することが望まれ得る。当業者によく知られているように、封入剤180は、実装基板170および/または内方コア110とは異なる熱膨張係数を有し得る。ブロック640で使用される封入剤180の量を削減または最少化することによって、これらの熱的不整合(thermal mismatches)の影響を低減または最小化することができる。
【0037】
幾つかの別法による実施態様では、図5および/または図6のブロックにおいて留意した機能/働きは、フローチャートで留意した順序から逸脱し得ることにも留意されるべきである。例えば、連続的に示した2つのブロックが、関与する機能/働きに応じて、実際には実質的に同時に実行可能であるし、またはこれらのブロックが逆の順序で実行することも可能である。
【0038】
したがって、本発明の幾つかの実施形態は、成形または流し込み成形技術を使用して、レンズのような複合的な光学要素を形成することができる。例えば、電話用のキーパッドには、2色キーを形成するように、またはより安価なプラスチックを使用して機械的安定性を与える一方で、外観を改善するためのみにより高価な材料の薄層を使用して費用を削減するように、2工程射出成形法を使用することができる。幾つかの実施形態では、射出成形を使用して内表面または外表面の上に成形材料中に分散させた燐光体層を配置し、次いで、残った容積中において成形または流し込み工程を完了して、望ましい光学要素を形成することができる。これらの光学要素は、幾つかの実施形態では、キーまたはドームの背後の青色発光ダイオードを白色光に変換することができる。
【0039】
本発明の他の実施形態が、燐光体を使用して光を均一に分散させたり、かつ/または光を所望のパターンで分散させたりすることができる。例えば、通常の発光素子は光を「コウモリの翼状」放射パターンで放出可能であり、その場合には、軸方向(0°)または側面(例えば、約40°よりも大きな角度)に較べて、約40°の軸外し角のような軸外し角でより大きな光強度が備わる。他の発光ダイオードは、「ランバートの」放射パターンを与え、その場合には、最大強度が約40°の軸外しまでの中心域内に集中し、次いで角度が大きくなると急激に低下する。さらに他の通常の素子は、側面発光(side emitting)放射パターンを与えることが可能であり、その場合には、軸から90°のような大きな角度で最大の光強度が備わり、軸に近づいていく角度が小さくなると急激に低下する。対照的に、本発明の幾つかの実施形態では、相関色温度(Color Correlated Temperature)(CCT)の角度依存性のような、光出力の角度依存放射パターンを発光素子から低減または排除することができる。したがって、光強度およびレンズの全表面からのx、y色度値/座標が、幾つかの実施形態では相対的に一定に留まり得る。これは、スポットライト効果が望ましくない部屋のような照明応用例に使用されるときに有利であり得る。
【0040】
上で説明した本発明の幾つかの実施形態に係る射出成形過程は、レンジング(lensing)および白色変換のような、多重特徴を備える単一光学要素を形成することが可能である。さらには、幾つかの実施形態に係る2工程成形または流し込み成形技術を使用することによって、燐光体層をその望ましい構成に成形して、視角に関する色温度の角度依存性を低減または最小化することができる。
【0041】
本図面および明細書では、本発明の実施形態が開示されており、また特定の用語が使用されているが、それらは包括的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定を目的とするものではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型光学要素を形成する方法であって、
透明なプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体をドーム形鋳型に充填する工程と、
前記溶融液体を凝固させて、ドーム形内表面及びドーム形外表面を有し、燐光体が内部に分散されている透過型ドーム形シェルを製造する工程と、
前記燐光体が内部に分散されている透過型ドーム形シェルのドーム形内表面上又はドーム形外表面上に、ドーム形内表面及びドーム形外表面を有する透明なドーム形シェルを形成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
燐光体が内部に分散されている透明なプラスチックを含む第1のドーム形シェルであって、ドーム形内表面及びドーム形外表面を有する第1のドーム形シェルと、
ドーム形内表面及びドーム形外表面を有し、前記第1のドーム形シェルの前記ドーム形内表面上又はドーム形外表面上にある第2のドーム形シェルと、
を有する透過型光学要素。
【請求項3】
前記燐光体は、前記第1のドーム形シェルの中に均一に分散されている請求項2に記載の透過型光学要素。
【請求項4】
前記燐光体は、前記第1のドーム形シェルの中に標示を設けるために前記第1のドーム形シェルの中に非均一に分散されている請求項2に記載の透過型光学要素。
【請求項5】
光を前記第1及び第2のドーム形シェルの中に放出しかつ前記第1及び第2のドーム形シェルに透過させて、前記第1及び第2のドーム形シェルから現出するように構成されている半導体発光素子と組み合わせた請求項2に記載の透過型光学要素。
【請求項6】
前記半導体発光素子に隣接する実装基板であって、前記半導体発光素子が前記実装基板と前記第1及び第2のドーム形シェルとの間にあるような前記実装基板とさらに組み合わせた請求項5に記載の透過型光学要素。
【請求項7】
前記半導体発光素子と前記第1及び第2のドーム形シェルとの間にある封入剤とさらに組み合わせた請求項6に記載の透過型光学要素。
【請求項8】
前記第2のドーム形シェルは、前記第1のドーム形シェルの前記ドーム形内表面上にある請求項2に記載の透過型光学要素。
【請求項9】
実装基板と、
前記実装基板の上にある半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の少なくとも一部を包囲する前記実装基板の上にあり、燐光体が内部に分散されている透明なプラスチックを含むドーム形シェルと、
前記ドーム形シェルの外側にある透明な外方シェルと、
前記ドーム形シェルの内側にあるドーム型の透明な内方コアと、
を含む発光素子。
【請求項10】
前記半導体発光素子と前記透明な内方コアとの間に封入剤をさらに含む請求項9に記載の発光素子。
【請求項11】
前記実装基板は内部に空隙を含み、前記半導体発光素子の少なくとも一部が前記空隙の中にあり、前記ドーム形シェルは前記空隙を包囲する前記実装基板の上にあり、さらに前記封入剤は前記空隙の中にある請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記燐光体は、前記ドーム形シェルの中に均一に分散されている請求項9−11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項13】
前記燐光体は、前記ドーム形シェルの中に非均一に分散されている請求項9−11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項14】
前記透明な内方コアは、前記ドーム形シェルを充填する請求項9−13のいずれかに記載の発光素子。
【請求項15】
前記半導体発光素子は、光を前記透明な内方コアの中に放出しかつそれに透過させ、さらに前記ドーム形シェルに透過させて、前記ドーム形シェルから現出するように構成されている請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
請求項9−15に記載のいずれかの発光素子を形成する方法であって、
前記ドーム形シェルは、
透明なプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体をドーム形鋳型に充填する工程と、
前記溶融液体を凝固させ、燐光体が内部に分散されている前記ドーム形シェルを製造する工程と、
前記ドーム形シェルの内側に透明なコアを形成する工程と、
によって製造される方法。
【請求項17】
前記ドーム形シェルの外側に透明な外方シェルを形成する工程をさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記透明なコアを形成する工程が前記充填する工程に先行し、前記充填する工程は、前記透明なコアを含むドーム形鋳型に透明なプラスチックおよび燐光体添加剤を含む溶融液体を充填する工程を含む請求項16または17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51353(P2011−51353A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258269(P2010−258269)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2006−526059(P2006−526059)の分割
【原出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】