物体検出装置及び物体検出方法
【課題】FM−CWレーダ方式の物体検出装置において、静止物体を検出する。
【解決手段】送信手段1と、受信手段2と、移動体の速度を検出する速度検出手段10と、速度情報に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段5と、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段5と、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段6と、加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段7とを備える。
【解決手段】送信手段1と、受信手段2と、移動体の速度を検出する速度検出手段10と、速度情報に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段5と、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段5と、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段6と、加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM−CW方式を用いた物体検出装置及び物体検出方法に関し、特に、静止物体を検出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発明に関し、FM−CWレーダの周波数上昇変調部分から得られる周波数スペクトルと周波数下降変調部分から得られる周波数スペクトルの差分演算を行い、静止物体からの反射信号を除去して移動物体のみを検出する周波数変調レーダ装置が知られている(特許文献1参照)。この装置によれば、レーダビーム内に静止物体、移動物体が混在しても、移動物体のみを抽出し、移動物体間の距離及び移動速度を検出することができるため、自動車専用道路等では他の車両との位置関係における危険判定等を行うことができる。
【0003】
しかしながら、この装置では相対的に静止している静止物体の周波数スペクトルを消滅させて移動体の周波数スペクトルを残すことにより、移動体の検出を行うため、静止物体の検出を行うことができないという問題があった。特に、市街地等などのように、走行車両などの移動物体とともに駐車車両、渋滞末尾の停止車両といった相対的に静止状態にある静止物体が多く混在する状況では、静止物体を検出できる物体検出装置が求められていた。
【特許文献1】特開平6−214017号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明は上述の課題を鑑みてなされたものであり、静止物体を検出することができるFM−CWレーダ方式の物体検出装置及び物体検出方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明によれば、移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、当該送信手段が送信する送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する受信手段とを備え、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出装置であって、移動体の速度を検出する速度検出手段と、速度検出手段により検出された移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段と、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段と、周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段と、加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段と、を有する物体検出装置が提供される。
【0006】
これにより、FM−CWレーダ方式の物体検出装置において、加算周波数スペクトルに基づく静止物体の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、第1実施形態〜第3実施形態の物体検出装置100を説明する。物体検出装置100は、ユーザが搭乗する車両(移動体)に搭載され、車両周囲の物標の存在、物標の存在方向、車両からの距離、物標の特性(移動体であるか静止物であるか)を検出する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る物体検出装置100ブロック構成図である。図1に示すように、物体検出装置100は、レーダヘッド200と、信号処理装置300とを有している。
【0009】
レーダヘッド200は、前方空間に送信信号を送信する送信手段1と前方物標からの反射信号を受信する受信手段2を少なくとも有し、三角波やのこぎり波を周波数変調させるFM−CW(Frequency Modulate Continuous Wave:周波数変調連続波レーダ方式)のレーダ装置である。FM−CW方式とは、電波レーダとして三角波変調した送信信号を用い、周波数上昇変調時の反射信号周波数と周波数下降変調時の反射信号周波数との格差より反射物体の距離と相対速度を検出する方式である。
【0010】
送信手段1は、送信アンテナ11と、電力分配器12と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)13とを有している。VCO(Voltage Controlled Oscillator)13は、信号処理装置300側の三角波発生手段301から送られてきた三角波信号で変調した送信信号を生成する。電力分配器12は、VCO13で生成した送信信号を所定の電力比で2分岐に電力分配する。一方を送信信号として送信アンテナ11から送信し、一方を基準信号とする。送信アンテナ11は送信信号を前方空間に送出する。
【0011】
受信手段2は、受信アンテナ21と、ミキサ回路22と、増幅回路23とを有する。受信アンテナ21は、送信アンテナ11から送出された送信信号が前方物標で反射して戻ってきた反射信号を受信する。ミキサ回路22は、電力分配器12で分岐された送信信号の一部と受信信号とをミキシングして受信IF信号(IF:Intermediate Frequency:中間周波数)を生成する。増幅回路23は、ミキサ回路22で生成された受信IF信号を増幅して信号処理装置300側のFFT(高速フーリエ変換)処理手段302へ向けて出力する。
【0012】
本実施形態のレーダヘッド200は、送受信方位走査手段3を備える。送受信方位走査手段3は、異なる方位における信号の送受信ができるように、送信アンテナ11と受信アンテナ21を機械的に車両の走行面に対して水平方向に沿って回頭させることにより、異なる方位へ向けて送信信号を送出するとともに異なる方向から受信信号を受信させる。送信アンテナ11及び受信アンテナ21の回頭方向(角度)は、送信信号の送信方位情報又は受信信号の受信方位情報として、周波数オフセット量算出手段4に向けて送出される。
【0013】
なお、方位検出型のFM−CWレーダヘッドとしては、レーダヘッド200を機械的に回頭させて送受信方位軸を変更するものに限定されず、送信アンテナ11を単独で回頭させる機構を有するものであってもよいし、サーキュレータを追加して信号の送信と受信を一つの送受信アンテナで行い、この送受信アンテナを横方向に回頭させて送受信方位を変更する機構を有するものであってもよい。また、送受信アンテナをアレイアンテナ構造とし、アレイ毎に位相器を用いてビーム方位を制御するフェイズドアレイアンテナを用いてもよい。
【0014】
信号処理装置300は、一般的なFM−CWレーダの物体検出機能を備える。本例の信号処理装置100は、受信信号と送信信号(基準信号)とを掛け合わせLPF(low pass filter)を通す等を行って受信IF信号を抽出し、受信IF信号をフーリエ変換することにより得られる、スペクトルのピークから受信IF信号に含まれる反射信号の周波数を得る。受信IF信号には物標までの距離に比例する周波数成分とレーダ装置と物標間の相対的速度により生じるドップラ周波数偏移が含まれるため、周波数上昇時の受信IF信号と周波数下降時の受信IF信号の周波数差からこれらを求め、これに基づいて目標物体までの距離と相対速度を求めることができる。
【0015】
本実施形態の信号処理装置300は、速度検出手段10と、周波数オフセット量算出手段4と、周波数オフセット手段5と、加算手段6と、静止物体検出手段7とを少なくとも有する。特に限定されないが、差分算出手段8と、移動物体検出手段9とを有することが好ましい。さらに、本実施形態の信号処理装置300は、記憶手段15と、編集手段16とを有することが好ましい。なお、信号処理装置300は、三角波を発生する三角波発生部301と、増幅回路23から出力される受信IF信号の周波数解析を行うFFT処理手段302とを備えることが好ましい。
【0016】
具体的に、信号処理装置300は、静止物体を検出するプログラム、および移動物体を検出するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等と、このROM等に格納されたプログラムを実行することで、周波数オフセット手段5、加算手段6、静止物体検出手段7、差分算出手段8、移動物体検出手段9、編集手段16として機能するCPU(Central Processing Unit)等と、アクセス可能な記憶手段として機能するRAM(Random Access Memory)等(メモリ50)とを備える。本実施形態では、説明の便宜のため、加算手段6、差分算出手段8、静止物体検出手段7、移動物体検出手段を別の構成として説明するが、これらは加算機能、差分算出機能、静止物体検出機能、移動物体検出機能、編集機能を有する1又は2以上の演算装置(CPU等)として構成してもよい。
【0017】
以下、信号処理装置300の各手段について説明する。
【0018】
速度検出手段10は、自車両(移動体)の速度を検出する。車両に搭載された速度計を利用してもよい。
【0019】
周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する。
【0020】
周波数オフセット手段5は、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を用いて、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを算出する。具体的に、周波数オフセット手段5は、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める。
【0021】
加算手段6は、周波数オフセット手段5により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める。静止物体検出手段7は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う。具体的には加算周波数スペクトルにおいて特徴的なピークを示すスペクトルは静止物体からの反射信号であるとして、静止物体の存在を検出し、その信号の受信方向から静止物体の存在方向を、ピークの存在する周波数値から距離を求めることができる。
【0022】
本実施形態の物体検出装置100は、差分算出手段8と移動物体検出手段9をさらに備える。差分算出手段8は、周波数オフセット手段5により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める。移動物体検出手段9は、差分算出手段により算出された差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行う。具体的には差分周波数スペクトルにおいて特徴的な正負一対のピークを示すスペクトルは移動物体からの反射信号であるとして、移動物体の存在を検出し、その信号の受信方向から移動物体の存在方向を、受信IF信号の正負ピークの中央周波数値及び隔差から距離及び移動速度を求めることができる。
【0023】
特に限定されないが、本実施形態の物体検出装置100は、静止物体検出手段7の検出結果および/または移動物体検出手段9の検出結果を記憶する記憶手段15と、記憶手段15に記憶された検出結果に基づいて物体の検出情報を編集する編集手段16とを有する。編集手段16は、静止物体検出手段7又は移動物体検出手段9に組み込んで構成することが好ましいが、説明の便宜のため、本例では編集手段を静止物体検出手段7および移動物体検出手段9とは独立させて構成した。編集手段16は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて、抽出された静止物体のスペクトル情報を所定の投影面に投影した二次元マップを編集する。静止物体検出手段7は、編集された二次元マップに基づいて静止物体の二次元的形状の検出を行う。
【0024】
さらに、編集手段16は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトル及びその強度を抽出し、送信信号の送信方向または受信信号の受信方向と静止物体に対応するスペクトルの強度に基づいて、抽出された静止物体のスペクトルの三次元マップを編集する。静止物体検出手段7は、編集された二次元マップに基づいて静止物体の形状を検出する。
【0025】
次に、本実施形態の物体検出装置100の動作を図2〜図12に基づいて説明する。図2は本実施形態の物体検出装置100の制御手順を示すフローチャートである。
本実施形態の物体検出装置100は一般的なFM−CWレーダ機能を備え、物体の有無、物体までの距離及び物体の速度を検出する。
【0026】
まず、送信手段1は送信アンテナ11を介して送信信号を送出する(S1)。受信手段2は送信手段1が送信した送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する(S2)。周波数オフセット手段5は、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得する。ちなみに、周波数オフセット手段5が取得する受信IF信号は、電力分配器12で分岐された送信信号の一部と受信信号とがミキサ回路22によりミキシングされ、増幅回路23により増幅され、FFT(高速フーリエ変換)処理手段302によりフーリエ変換された情報である。
【0027】
図3に相対速度が零乃至零近傍の物体からの反射信号を観測した場合の信号例を示す。図3(1)は三角波発生部301により生成された三角波信号を示し、図3(2)は三角波信号で周波数変換されてVCO13から出力された送信信号を示し、図3(3)は前方物標で反射された受信信号(反射信号)及び送信信号(点線で示した)、図3(4)は送信信号と受信信号をミキシングして得た受信IF信号を示す。周波数変調の傾きが分かっているため図3(4)に示す周波数f0を検出することにより、距離に応じた時間遅延を算出することができ前方にある物体までの距離を検出できる。
【0028】
図4に相対速度を有する(相対速度がゼロではない)物体からの反射信号を観測した信号例を示す。図4の(1)から(4)のグラフのタイトルは、図3のそれと共通する。図4(3)に示すように、相対速度を有する前方物体から反射された受信信号には、距離に応じた時間遅延と相対速度によるドップラ効果による周波数シフトが発生している。図4(4)に示すように周波数上昇変調時の受信IF信号の周波数はf1と観測され、周波数下降変調時の受信IF信号の周波数はf2と観測される。二つの周波数f1、f2の平均値に基づいて時間遅延量を検出し前方物体までの距離を検出できる。また、二つの周波数f1、f2の周波数差よりドップラ周波数を算出し、相対速度を検出できる。
【0029】
S1からS3までの処理と並行して、速度検出手段10は自車両(移動体)の速度を検出する(S21)。周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度に基づいてドップラシフト量を求め(S22)、ドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する(S23)。具体的に、周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度Vと送受信方位走査手段3から取得した送信信号の送出方位θとに基づいて、静止物体の相対速度(=V・cosθ)を算出し、該相対速度に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量Δfを以下の式1より算出し、周波数オフセット手段4に向けて出力する。
【0030】
Δf=F・V・cosθ/C ・・・(1),(但し、Fは送信信号の周波数、Cは光速)
周波数オフセット手段5は、送信周波数の上昇部分の受信IF信号を取得し(S4)、送信周波数の下降部分の受信IF信号を取得する(S5)。周波数オフセット手段5は、送信周波数の上昇部分の受信IF信号に、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める(S6)。
【0031】
図5は、自車両が走行しているときに、前方物標から反射された反射信号を受信した場合の上昇周波数スペクトルAと下降周波数スペクトルBとを示す。周波数X1近傍に2つのピークP1及びP2が観測され、周波数X2近傍に2つのピークQ1及びQ2が観測されている。
【0032】
図6は、周波数オフセット手段5により周波数オフセット量だけオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルである。図6に示すように、オフセット処理後におけるピークP1とP2の周波数はほぼ一致しており、ピークP1及びP2は静止物体からの反射信号に対応することが推測できる。一方、ピークQ1及びQ2の周波数は異なっており、移動物体からの反射信号に対応することが推測できる。
【0033】
周波数オフセット手段5は、オフセットした上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルを加算手段6および/または差分算出手段8に向けて出力する。
【0034】
加算手段6は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める(S7)。図7は、周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルとを加算した加算周波数スペクトルである。図5及び図6で観測された遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは目立たなくなっているが、近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークはほぼ2倍のピークP3となっており、静止物体の信号レベルを強調させた周波数スペクトルを得ることができる。加算手段6は、求めた加算周波数スペクトルを静止物体検出手段7に向けて出力する。
【0035】
静止物体検出手段7は、図7に示したような加算周波数スペクトルのピークPに基づいて静止物体を検出し(S8)、検出結果を記憶装置11に記憶する(S11)。加算周波数スペクトルでは移動物体のピーク(たとえばQ1,Q2)が強調されないため、静止物体を移動物体から区別して検出することができる。静止物体検出手段7は、静止物体を検出するとともに、静止物体までの距離を算出し、その結果を記憶手段15に記憶し、または車両の走行を制御する車両制御装置へ向けて送出する。
【0036】
差分算出手段8は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める(S9)。図8は、周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルの差分を算出した差分周波数スペクトルである。図5及び図6で観測された近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークは相互に打ち消されてピークは目立たなくなっているが、遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは残存し、移動物体の信号レベルを強調させた周波数スペクトルを得ることができる。差分算出手段8は、求めた差分周波数スペクトルを移動物体検出手段7に向けて出力する。
【0037】
このように、周波数オフセット量に応じてオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルに基づいて、加算周波数スペクトルおよび/または差分周波数スペクトルを求めることにより、静止物体からの反射波を強調させ、又は移動物体からの反射波を正確に強調させることがきる。
【0038】
前方物体が単一で存在する場合には問題はないが、前方物体が複数存在し、複数の物体が同時に観測された場合、周波数上昇変調、周波数下降変調の反射信号には複数の周波数成分が混在するため、正確な距離測定を行う為には周波数上昇および周波数下降の各変調時に受信される周波数成分を適切にペアリングする必要がある。特に市街地など静止物体からの反射信号が多く観測される場面においては、ペアリングミスによって誤検出や未検出が多く発生してしまうため、正確なペアリング処理に対する要請が高い。本実施形態は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルを求めるオフセット処理と、これらから加算周波数スペクトルと差分周波数スペクトルを求める加算処理及び差分処理を行うことにより、静止物体と移動物体を区別して検出することができる。つまり、相対速度を有する先行走行車両の検出のみならず、駐停車車両および走行しているが渋滞等によって相対速度がゼロとなる先行車両を検出することができる。加えて、前方物体が複数存在する場合において発生する受信信号のペアリングミスを抑制することができる。
【0039】
移動物体検出手段7は、図8に示したような差分周波数スペクトルのピークQ1,Q2に基づいて移動物体を検出し(S10)、少なくとも一時的に記憶手段15に記憶する(S11)。差分周波数スペクトルでは静止物体のピーク(たとえばP1,P2)がキャンセルされるため、移動物体を静止物体から区別して検出することができる。移動物体検出手段9は、移動物体を検出するとともに、移動物体までの距離及び移動速度を算出し、その結果を記憶手段15に記憶し、または車両の走行を制御する図外の車両制御装置へ向けて送出する。
【0040】
ちなみに、S7及びS8とS9及びS10とは並行して処理されてもよいし、独立に処理されてもよい。
【0041】
このように、静止物体からの反射受信信号が強調された加算周波数スペクトルに基づいて静止物体を検出し、移動物体からの反射受信信号が強調された(静止物体からの反射信号が除去された)差分周波数スペクトルに基づいて移動物体を検出することにより、静止物体及び移動物体の双方を同時に検出することができ、又はいずれか一方を単独検出することができる。
【0042】
送信アンテナ11と受信アンテナ21の走査が全方位について終了したか否かを判断する(S13)。終了していない場合は、終了するまでS1からS13,S21〜S23を繰り返す。
【0043】
次に、編集手段16は、二次元マップの編集を実行する(S14)。二次元マップは、抽出された静止物体のスペクトル情報を所定の投影面に投影した二次元のスペクトル強度分布である。二次元マップは、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、この抽出された静止物体のスペクトル情報を送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影して作成する。二次元マップには、移動物体のスペクトル情報を含ませてもよい。つまり、差分算出手段8により求められた差分周波数スペクトルから移動物体に対応するスペクトルを抽出し、この抽出された移動物体のスペクトル情報を送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影した情報を二次元マップに含ませてもよい。
【0044】
二次元マップの例を図9〜図11に基づいて説明する。図9(A)は周波数オフセット手段5が算出した上昇オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。図9(B)は周波数オフセット手段5が算出した下降オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。検出された周波数スペクトルの強度を背景の濃度を基準とした濃淡で示した。背景の濃度との相対的な濃度差が大きい領域は反射強度が高く、比較的近い位置に存在する物体である。また所定の濃度差(絶対値)を示す領域については輪郭の切り出しを行い、物体の境界を明確に示した。図10は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の差分演算処理結果、すなわち差分算出手段8により算出された差分周波数スペクトルを図9と同じ二次元座標上に示す。図10に示すように、左及び右に存在していた矩形の物体の画像が消えている。これは差分算出手段8の処理により静止物体に対応するスペクトルが除去されたからである。
【0045】
図11は、編集手段16により編集された二次元マップの一例である。図11は上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の加算演算処理結果、すなわち加算手段6により算出された加算周波数スペクトルを、図9と同じ二次元座標上に示す。加算処理に伴いスペクトルの強度を1/2にして示した。図11に示すように、左及び右に存在していた矩形の物体の画像が強調され、中央の円形の物体の画像が目立たなくなっている。これは加算算出手段8の処理により静止物体に対応するスペクトルが他のスペクトルに比べて強調されたからである。これにより方位に基づいて定義された二次元座標上における物体の位置を検出することができる(S16)。座標系が定義された二次元マップに基づいて、前方物体を視覚的に認識できる画像データを編集してもよい。
【0046】
さらに、編集手段は、必要に応じて三次元マップを編集する(S15)。図12は、編集手段16により編集された三次元マップの一例である。この三次元マップは、送受信方位に基づく二次元座標にスペクトル強度を第3の座標軸として加えた三次元座標上に加算周波数スペクトルを示したものである。図12に示した三次元マップは、図11に示した二次元マップの情報に基づいて編集されたものである。強度の変化は色彩(波長)の変化により表現する。反射強度が大きい方を赤、反射強度が低い方を紫となるように、赤から紫までの波長を反射強度の値に対応させた。この三次元マップによれば、反射スペクトルの発生位置(物体の存在位置)とスペクトルの反射強度を表現できるため、物標の位置及び形状を視覚的に表現することができる。反射強度が座標上において連続的に検出することができれば、物体の面が連続している状態を予測することができ、同値の反射強度が連続する点の軌跡に基づいて物体の表面形状を予測することができる。つまり、走行経路上にガードレール等の静止物体が存在する場合、ガードレールにより反射された受信信号に基づいて加算周波数スペクトルが得られた場合、同値の反射強度が連続する点の軌跡に基づいて、走行路の左右端に延説されたガードレールの延在状態が推測でき、ガードレールの延在状態から走行路の擬似的な立体地図を生成して表示することができる。これにより方位と反射強度に基づいて定義された三次元座標上において物体の位置および形状を検出することができる。
【0047】
検出結果は車両制御装置400へ向けて出力される(S17)。
【0048】
天候(霧、雨)や時間帯(夜間)によっては視界が悪い場合、山道などを走行するような場合には、CCD等では良質の撮像映像が得られない場合があるが、本実施形態によれば、路側の静止物体(ガードレールや側壁など)からの反射信号(受信信号)に基づいて、静止物体(及び/又は移動物体)を検出することができるため、このような状況においても走行路を正確に認識することができ、自車両の走行経路の情報を提供し、走行車線はみ出し防止制御を行うことができる。
【0049】
ちなみに、S8において検出された静止物体の検出情報、S9において検出された移動物体の検出情報は編集処理を経ないで車両制御装置400へ向けて出力してもよい。また編集された二次元マップは、物体検出のために移動物体検出手段9および/または静止物体検出手段7へ出力してもよいし、そのまま出力してもよい。
【0050】
以上のとおり、本実施形態によれば、三角波で周波数変調した電磁波を送受信して物標検出を行うFM−CWレーダにおいて、周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルを自車両の速度情報から得られる周波数オフセット量に基づいてオフセット(シフト)させることにより静止物体(自車両の速度に等しい相対速度を持つ物体)からの反射信号によって生じる周波数上昇部分と周波数下降部分のIF信号の周波数成分を等しい周波数にすることができ、この二つの周波数スペクトルに加算処理を行うことにより、移動物体からの反射信号を抑制した加算周波数スペクトルを得ることができ、移動物体とは区別して静止物体のみを検出することができる。また、並行して差分算出処理を行うことにより、静止物体からの反射信号を抑制した差分周波数スペクトルを得ることができ、静止物体とともの移動物体の検出を一の測定で同時にすることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図13及び図14に基づいて第2実施形態を説明する。図13に本実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示した。図13に示すように、本実施形態は、差分算出手段8が絶対値算出部81を備える点、第1実施形態とは異なる処理を行う加算手段61とを有する点で第1実施形態と異なる。これらの点以外は第1実施形態と基本的に共通するので、ここでは異なる点を中心に説明し、重複する部分については省略する。
【0052】
差分算出手段8は、差分周波数スペクトルの周波数絶対値を求める。この機能は、加算手段61が備えてもよい。すなわち加算手段6が差分周波数スペクトルに基いて周波数絶対値を算出してもよい。
【0053】
加算手段61は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算するとともに、差分算出手段8により求められた差分周波数スペクトルの周波数絶対値を差し引いた加算周波数スペクトルを求める。本実施形態の加算手段61は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算する処理に加えて、差分周波数スペクトルの周波数絶対値を加算周波数スペクトルから控除する処理を行う。差分周波数スペクトルは、静止物体に対応する周波数スペクトルが除去され、移動物体に対応する周波数スペクトルが残存したものである。一方、加算周波数スペクトルは、静止物体に対応する周波数スペクトルが強調されているが、図7に示すピークQ1及びQ2のように移動物体を示す周波数スペクトルが弱いピークではあるが残存している。本実施形態では、この加算周波数スペクトルから移動物体に対応するスペクトルを控除する。差分周波数スペクトルは図8に示すように、正のスペクトルピークと負のスペクトルピークとして出現するため、本例ではその周波数絶対値を加算周波数スペクトルから控除する。
【0054】
図14は本実施形態の制御手順を示すフローチャートである。図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通するので、ここでは異なる処理(S71及びS72)について説明する。S71において、加算手段6は、差分算出手段8が算出した差分周波数スペクトルの差分絶対値を取得する。S72において、加算手段6は、S7において算出した加算周波数スペクトルから差分絶対値を差し引く(控除する)。S72において得られたものが本実施形態の加算周波数スペクトルとなる。
【0055】
特に限定されないが、加算手段6は、差分周波数スペクトルの絶対値に基づく、全周波数で信号強度を2分の1に変換した絶対値スペクトルを取得し、加算周波数スペクトルから差し引くことが好ましい。このように、絶対値スペクトルを控除(差分処理)することにより、強調された静止物体の反射信号の特徴を損なうことなく、移動物体の反射信号を除去することができ、より正確に静止物体の検出を行うことができる。
【0056】
<第3実施形態>
図15及び図16に基づいて第3実施形態を説明する。本実施形態では、自車両の走行速度と操舵角等の挙動情報から自車両の移動ベクトルを求め、送信信号の送出方位にベクトル分解して得られる速度成分からドップラシフト量および周波数オフセット量を算出する点を特徴とする。
【0057】
図15に本実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示した。図15に示すように、本実施形態は、移動体(自車両)の挙動を検出する挙動情報取得手段20を有する点、およびオフセット量算出手段4が移動ベクトル算出部41を備える点で第1実施形態と異なる。これらの点以外は第1実施形態と基本的に共通するので、ここでは異なる点を中心に説明し、重複する部分については省略する。
【0058】
本実施形態の送信手段1は、移動体の走行面と略水平方向に沿って往復回動しながら複数の送出方向に向けて送信信号を送信する走査型の送信アンテナ11を有する。
【0059】
挙動情報取得手段20は、送出方向ごとの移動体の速度成分に影響を与える、操舵角情報、左右車輪速差などの移動体の挙動に関する挙動情報を取得する。
【0060】
周波数オフセット量算出手段4は、挙動情報取得手段20により取得された移動体の挙動情報に基づいて、送信アンテナ11が送信信号を送信する送出方向ごとの移動体の速度成分を算出し、送出方向ごとの移動体の速度成分に基づいて周波数のオフセット量を算出する。移動ベクトル算出部41は、自車両の速度情報と自車両の挙動情報とに基づいて移動体の挙動に応じて変化する自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトルを算出する機能を有する。
【0061】
例えば、自車両の走行速度V、移動方向φとして検出された場合、送信信号の送出方位θにおけるドップラシフト量に応じた周波数オフセット量Δfは以下の式で表される。
【0062】
Δf=F・V・cos(θ−φ)/C ・・・(2)(但し、Fは送信信号周波数、Cは光速)
図16は本実施形態の制御手順を示すフローチャートである。図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通するので、ここでは異なる処理(S201乃至S203)について説明する。S201において、挙動情報取得手段20は、自車両の操舵角等の挙動情報を取得する。S202において、移動ベクトル算出部41は、自車両の速度情報と自車両の挙動情報とに基づいて自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトルを算出する。
【0063】
S203において、周波数オフセット量算出手段4は、移動体の速度情報と移動体の挙動情報とから算出された送信アンテナ11が送信信号を送信する送出方向ごとの移動ベクトルに基づいて周波数のオフセット量を算出する。
【0064】
このように、自車両の走行速度と挙動情報から送信信号の送出方位にベクトル分解して得られる速度成分からドップラシフト量および周波数オフセット量を算出するので、自車両が直進しない場合でも送信信号の送出方位毎の自車両の速度成分を正確に算出することができる。静止物体と自車両の正確な相対速度に基づいて、正確な周波数オフセット量、差分周波数スペクトル、加算周波数スペクトルを算出することができ、曲線路などで自車両が転舵動作であるときでも静止物体および/または移動物体の反射信号を正確に分別することができる。
【0065】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態の物体検出装置のブロック構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【図3】(1)〜(4)は静止物体へ向けて送出した信号の各状態を説明するための図である。
【図4】(1)〜(4)は移動物体へ向けて送出した信号の各状態を説明するための図である。
【図5】自車両が走行しているときに、前方物標から反射された反射信号を受信した場合の上昇周波数スペクトルAと下降周波数スペクトルBとを示す図である。
【図6】周波数オフセット手段5により周波数オフセット量だけオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルである。
【図7】周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルとを加算した加算周波数スペクトルである。
【図8】周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルの差分を算出した差分周波数スペクトルである。
【図9】図9(A)は周波数オフセット手段5が算出した上昇オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。図9(B)は周波数オフセット手段5が算出した下降オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。
【図10】上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の差分演算処理結果を示す図である。
【図11】編集手段16により編集された二次元マップの一例を示す図である。
【図12】編集手段16により編集された三次元マップの一例である。
【図13】第2実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【図15】第3実施形態の物体検出装置102のブロック構成を示す図である。
【図16】第3実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100…物体検出装置
200…レーダヘッド
1…送信手段
11…送信アンテナ
12…電力分配器
13…VOC
2…受信手段
21…受信アンテナ
22…ミキサ回路
23…増幅回路
3…送受信方位走査手段
300…
301…三角波発生部
302…FFT処理部
4・・・周波数オフセット量算出手段
5・・・周波数オフセット手段
6・・・加算手段
7・・・静止物体検出手段
8・・・差分算出手段
9・・・移動物体検出手段
10・・・速度検出手段
15・・・記憶手段
16・・・編集手段
400・・・車両制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM−CW方式を用いた物体検出装置及び物体検出方法に関し、特に、静止物体を検出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発明に関し、FM−CWレーダの周波数上昇変調部分から得られる周波数スペクトルと周波数下降変調部分から得られる周波数スペクトルの差分演算を行い、静止物体からの反射信号を除去して移動物体のみを検出する周波数変調レーダ装置が知られている(特許文献1参照)。この装置によれば、レーダビーム内に静止物体、移動物体が混在しても、移動物体のみを抽出し、移動物体間の距離及び移動速度を検出することができるため、自動車専用道路等では他の車両との位置関係における危険判定等を行うことができる。
【0003】
しかしながら、この装置では相対的に静止している静止物体の周波数スペクトルを消滅させて移動体の周波数スペクトルを残すことにより、移動体の検出を行うため、静止物体の検出を行うことができないという問題があった。特に、市街地等などのように、走行車両などの移動物体とともに駐車車両、渋滞末尾の停止車両といった相対的に静止状態にある静止物体が多く混在する状況では、静止物体を検出できる物体検出装置が求められていた。
【特許文献1】特開平6−214017号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明は上述の課題を鑑みてなされたものであり、静止物体を検出することができるFM−CWレーダ方式の物体検出装置及び物体検出方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明によれば、移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、当該送信手段が送信する送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する受信手段とを備え、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出装置であって、移動体の速度を検出する速度検出手段と、速度検出手段により検出された移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段と、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段と、周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段と、加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段と、を有する物体検出装置が提供される。
【0006】
これにより、FM−CWレーダ方式の物体検出装置において、加算周波数スペクトルに基づく静止物体の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、第1実施形態〜第3実施形態の物体検出装置100を説明する。物体検出装置100は、ユーザが搭乗する車両(移動体)に搭載され、車両周囲の物標の存在、物標の存在方向、車両からの距離、物標の特性(移動体であるか静止物であるか)を検出する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る物体検出装置100ブロック構成図である。図1に示すように、物体検出装置100は、レーダヘッド200と、信号処理装置300とを有している。
【0009】
レーダヘッド200は、前方空間に送信信号を送信する送信手段1と前方物標からの反射信号を受信する受信手段2を少なくとも有し、三角波やのこぎり波を周波数変調させるFM−CW(Frequency Modulate Continuous Wave:周波数変調連続波レーダ方式)のレーダ装置である。FM−CW方式とは、電波レーダとして三角波変調した送信信号を用い、周波数上昇変調時の反射信号周波数と周波数下降変調時の反射信号周波数との格差より反射物体の距離と相対速度を検出する方式である。
【0010】
送信手段1は、送信アンテナ11と、電力分配器12と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)13とを有している。VCO(Voltage Controlled Oscillator)13は、信号処理装置300側の三角波発生手段301から送られてきた三角波信号で変調した送信信号を生成する。電力分配器12は、VCO13で生成した送信信号を所定の電力比で2分岐に電力分配する。一方を送信信号として送信アンテナ11から送信し、一方を基準信号とする。送信アンテナ11は送信信号を前方空間に送出する。
【0011】
受信手段2は、受信アンテナ21と、ミキサ回路22と、増幅回路23とを有する。受信アンテナ21は、送信アンテナ11から送出された送信信号が前方物標で反射して戻ってきた反射信号を受信する。ミキサ回路22は、電力分配器12で分岐された送信信号の一部と受信信号とをミキシングして受信IF信号(IF:Intermediate Frequency:中間周波数)を生成する。増幅回路23は、ミキサ回路22で生成された受信IF信号を増幅して信号処理装置300側のFFT(高速フーリエ変換)処理手段302へ向けて出力する。
【0012】
本実施形態のレーダヘッド200は、送受信方位走査手段3を備える。送受信方位走査手段3は、異なる方位における信号の送受信ができるように、送信アンテナ11と受信アンテナ21を機械的に車両の走行面に対して水平方向に沿って回頭させることにより、異なる方位へ向けて送信信号を送出するとともに異なる方向から受信信号を受信させる。送信アンテナ11及び受信アンテナ21の回頭方向(角度)は、送信信号の送信方位情報又は受信信号の受信方位情報として、周波数オフセット量算出手段4に向けて送出される。
【0013】
なお、方位検出型のFM−CWレーダヘッドとしては、レーダヘッド200を機械的に回頭させて送受信方位軸を変更するものに限定されず、送信アンテナ11を単独で回頭させる機構を有するものであってもよいし、サーキュレータを追加して信号の送信と受信を一つの送受信アンテナで行い、この送受信アンテナを横方向に回頭させて送受信方位を変更する機構を有するものであってもよい。また、送受信アンテナをアレイアンテナ構造とし、アレイ毎に位相器を用いてビーム方位を制御するフェイズドアレイアンテナを用いてもよい。
【0014】
信号処理装置300は、一般的なFM−CWレーダの物体検出機能を備える。本例の信号処理装置100は、受信信号と送信信号(基準信号)とを掛け合わせLPF(low pass filter)を通す等を行って受信IF信号を抽出し、受信IF信号をフーリエ変換することにより得られる、スペクトルのピークから受信IF信号に含まれる反射信号の周波数を得る。受信IF信号には物標までの距離に比例する周波数成分とレーダ装置と物標間の相対的速度により生じるドップラ周波数偏移が含まれるため、周波数上昇時の受信IF信号と周波数下降時の受信IF信号の周波数差からこれらを求め、これに基づいて目標物体までの距離と相対速度を求めることができる。
【0015】
本実施形態の信号処理装置300は、速度検出手段10と、周波数オフセット量算出手段4と、周波数オフセット手段5と、加算手段6と、静止物体検出手段7とを少なくとも有する。特に限定されないが、差分算出手段8と、移動物体検出手段9とを有することが好ましい。さらに、本実施形態の信号処理装置300は、記憶手段15と、編集手段16とを有することが好ましい。なお、信号処理装置300は、三角波を発生する三角波発生部301と、増幅回路23から出力される受信IF信号の周波数解析を行うFFT処理手段302とを備えることが好ましい。
【0016】
具体的に、信号処理装置300は、静止物体を検出するプログラム、および移動物体を検出するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等と、このROM等に格納されたプログラムを実行することで、周波数オフセット手段5、加算手段6、静止物体検出手段7、差分算出手段8、移動物体検出手段9、編集手段16として機能するCPU(Central Processing Unit)等と、アクセス可能な記憶手段として機能するRAM(Random Access Memory)等(メモリ50)とを備える。本実施形態では、説明の便宜のため、加算手段6、差分算出手段8、静止物体検出手段7、移動物体検出手段を別の構成として説明するが、これらは加算機能、差分算出機能、静止物体検出機能、移動物体検出機能、編集機能を有する1又は2以上の演算装置(CPU等)として構成してもよい。
【0017】
以下、信号処理装置300の各手段について説明する。
【0018】
速度検出手段10は、自車両(移動体)の速度を検出する。車両に搭載された速度計を利用してもよい。
【0019】
周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量を算出する。
【0020】
周波数オフセット手段5は、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を用いて、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを算出する。具体的に、周波数オフセット手段5は、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める。
【0021】
加算手段6は、周波数オフセット手段5により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める。静止物体検出手段7は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う。具体的には加算周波数スペクトルにおいて特徴的なピークを示すスペクトルは静止物体からの反射信号であるとして、静止物体の存在を検出し、その信号の受信方向から静止物体の存在方向を、ピークの存在する周波数値から距離を求めることができる。
【0022】
本実施形態の物体検出装置100は、差分算出手段8と移動物体検出手段9をさらに備える。差分算出手段8は、周波数オフセット手段5により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める。移動物体検出手段9は、差分算出手段により算出された差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行う。具体的には差分周波数スペクトルにおいて特徴的な正負一対のピークを示すスペクトルは移動物体からの反射信号であるとして、移動物体の存在を検出し、その信号の受信方向から移動物体の存在方向を、受信IF信号の正負ピークの中央周波数値及び隔差から距離及び移動速度を求めることができる。
【0023】
特に限定されないが、本実施形態の物体検出装置100は、静止物体検出手段7の検出結果および/または移動物体検出手段9の検出結果を記憶する記憶手段15と、記憶手段15に記憶された検出結果に基づいて物体の検出情報を編集する編集手段16とを有する。編集手段16は、静止物体検出手段7又は移動物体検出手段9に組み込んで構成することが好ましいが、説明の便宜のため、本例では編集手段を静止物体検出手段7および移動物体検出手段9とは独立させて構成した。編集手段16は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて、抽出された静止物体のスペクトル情報を所定の投影面に投影した二次元マップを編集する。静止物体検出手段7は、編集された二次元マップに基づいて静止物体の二次元的形状の検出を行う。
【0024】
さらに、編集手段16は、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトル及びその強度を抽出し、送信信号の送信方向または受信信号の受信方向と静止物体に対応するスペクトルの強度に基づいて、抽出された静止物体のスペクトルの三次元マップを編集する。静止物体検出手段7は、編集された二次元マップに基づいて静止物体の形状を検出する。
【0025】
次に、本実施形態の物体検出装置100の動作を図2〜図12に基づいて説明する。図2は本実施形態の物体検出装置100の制御手順を示すフローチャートである。
本実施形態の物体検出装置100は一般的なFM−CWレーダ機能を備え、物体の有無、物体までの距離及び物体の速度を検出する。
【0026】
まず、送信手段1は送信アンテナ11を介して送信信号を送出する(S1)。受信手段2は送信手段1が送信した送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する(S2)。周波数オフセット手段5は、送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得する。ちなみに、周波数オフセット手段5が取得する受信IF信号は、電力分配器12で分岐された送信信号の一部と受信信号とがミキサ回路22によりミキシングされ、増幅回路23により増幅され、FFT(高速フーリエ変換)処理手段302によりフーリエ変換された情報である。
【0027】
図3に相対速度が零乃至零近傍の物体からの反射信号を観測した場合の信号例を示す。図3(1)は三角波発生部301により生成された三角波信号を示し、図3(2)は三角波信号で周波数変換されてVCO13から出力された送信信号を示し、図3(3)は前方物標で反射された受信信号(反射信号)及び送信信号(点線で示した)、図3(4)は送信信号と受信信号をミキシングして得た受信IF信号を示す。周波数変調の傾きが分かっているため図3(4)に示す周波数f0を検出することにより、距離に応じた時間遅延を算出することができ前方にある物体までの距離を検出できる。
【0028】
図4に相対速度を有する(相対速度がゼロではない)物体からの反射信号を観測した信号例を示す。図4の(1)から(4)のグラフのタイトルは、図3のそれと共通する。図4(3)に示すように、相対速度を有する前方物体から反射された受信信号には、距離に応じた時間遅延と相対速度によるドップラ効果による周波数シフトが発生している。図4(4)に示すように周波数上昇変調時の受信IF信号の周波数はf1と観測され、周波数下降変調時の受信IF信号の周波数はf2と観測される。二つの周波数f1、f2の平均値に基づいて時間遅延量を検出し前方物体までの距離を検出できる。また、二つの周波数f1、f2の周波数差よりドップラ周波数を算出し、相対速度を検出できる。
【0029】
S1からS3までの処理と並行して、速度検出手段10は自車両(移動体)の速度を検出する(S21)。周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度に基づいてドップラシフト量を求め(S22)、ドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する(S23)。具体的に、周波数オフセット量算出手段4は、速度検出手段10により検出された自車両の速度Vと送受信方位走査手段3から取得した送信信号の送出方位θとに基づいて、静止物体の相対速度(=V・cosθ)を算出し、該相対速度に応じたドップラシフト量に基づく周波数オフセット量Δfを以下の式1より算出し、周波数オフセット手段4に向けて出力する。
【0030】
Δf=F・V・cosθ/C ・・・(1),(但し、Fは送信信号の周波数、Cは光速)
周波数オフセット手段5は、送信周波数の上昇部分の受信IF信号を取得し(S4)、送信周波数の下降部分の受信IF信号を取得する(S5)。周波数オフセット手段5は、送信周波数の上昇部分の受信IF信号に、周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから周波数オフセット量算出手段4により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める(S6)。
【0031】
図5は、自車両が走行しているときに、前方物標から反射された反射信号を受信した場合の上昇周波数スペクトルAと下降周波数スペクトルBとを示す。周波数X1近傍に2つのピークP1及びP2が観測され、周波数X2近傍に2つのピークQ1及びQ2が観測されている。
【0032】
図6は、周波数オフセット手段5により周波数オフセット量だけオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルである。図6に示すように、オフセット処理後におけるピークP1とP2の周波数はほぼ一致しており、ピークP1及びP2は静止物体からの反射信号に対応することが推測できる。一方、ピークQ1及びQ2の周波数は異なっており、移動物体からの反射信号に対応することが推測できる。
【0033】
周波数オフセット手段5は、オフセットした上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルを加算手段6および/または差分算出手段8に向けて出力する。
【0034】
加算手段6は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める(S7)。図7は、周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルとを加算した加算周波数スペクトルである。図5及び図6で観測された遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは目立たなくなっているが、近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークはほぼ2倍のピークP3となっており、静止物体の信号レベルを強調させた周波数スペクトルを得ることができる。加算手段6は、求めた加算周波数スペクトルを静止物体検出手段7に向けて出力する。
【0035】
静止物体検出手段7は、図7に示したような加算周波数スペクトルのピークPに基づいて静止物体を検出し(S8)、検出結果を記憶装置11に記憶する(S11)。加算周波数スペクトルでは移動物体のピーク(たとえばQ1,Q2)が強調されないため、静止物体を移動物体から区別して検出することができる。静止物体検出手段7は、静止物体を検出するとともに、静止物体までの距離を算出し、その結果を記憶手段15に記憶し、または車両の走行を制御する車両制御装置へ向けて送出する。
【0036】
差分算出手段8は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める(S9)。図8は、周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルの差分を算出した差分周波数スペクトルである。図5及び図6で観測された近距離の静止物体からの反射信号P1,P2のピークは相互に打ち消されてピークは目立たなくなっているが、遠距離の移動物体からの反射信号Q1,Q2のピークは残存し、移動物体の信号レベルを強調させた周波数スペクトルを得ることができる。差分算出手段8は、求めた差分周波数スペクトルを移動物体検出手段7に向けて出力する。
【0037】
このように、周波数オフセット量に応じてオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルに基づいて、加算周波数スペクトルおよび/または差分周波数スペクトルを求めることにより、静止物体からの反射波を強調させ、又は移動物体からの反射波を正確に強調させることがきる。
【0038】
前方物体が単一で存在する場合には問題はないが、前方物体が複数存在し、複数の物体が同時に観測された場合、周波数上昇変調、周波数下降変調の反射信号には複数の周波数成分が混在するため、正確な距離測定を行う為には周波数上昇および周波数下降の各変調時に受信される周波数成分を適切にペアリングする必要がある。特に市街地など静止物体からの反射信号が多く観測される場面においては、ペアリングミスによって誤検出や未検出が多く発生してしまうため、正確なペアリング処理に対する要請が高い。本実施形態は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルを求めるオフセット処理と、これらから加算周波数スペクトルと差分周波数スペクトルを求める加算処理及び差分処理を行うことにより、静止物体と移動物体を区別して検出することができる。つまり、相対速度を有する先行走行車両の検出のみならず、駐停車車両および走行しているが渋滞等によって相対速度がゼロとなる先行車両を検出することができる。加えて、前方物体が複数存在する場合において発生する受信信号のペアリングミスを抑制することができる。
【0039】
移動物体検出手段7は、図8に示したような差分周波数スペクトルのピークQ1,Q2に基づいて移動物体を検出し(S10)、少なくとも一時的に記憶手段15に記憶する(S11)。差分周波数スペクトルでは静止物体のピーク(たとえばP1,P2)がキャンセルされるため、移動物体を静止物体から区別して検出することができる。移動物体検出手段9は、移動物体を検出するとともに、移動物体までの距離及び移動速度を算出し、その結果を記憶手段15に記憶し、または車両の走行を制御する図外の車両制御装置へ向けて送出する。
【0040】
ちなみに、S7及びS8とS9及びS10とは並行して処理されてもよいし、独立に処理されてもよい。
【0041】
このように、静止物体からの反射受信信号が強調された加算周波数スペクトルに基づいて静止物体を検出し、移動物体からの反射受信信号が強調された(静止物体からの反射信号が除去された)差分周波数スペクトルに基づいて移動物体を検出することにより、静止物体及び移動物体の双方を同時に検出することができ、又はいずれか一方を単独検出することができる。
【0042】
送信アンテナ11と受信アンテナ21の走査が全方位について終了したか否かを判断する(S13)。終了していない場合は、終了するまでS1からS13,S21〜S23を繰り返す。
【0043】
次に、編集手段16は、二次元マップの編集を実行する(S14)。二次元マップは、抽出された静止物体のスペクトル情報を所定の投影面に投影した二次元のスペクトル強度分布である。二次元マップは、加算手段6により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、この抽出された静止物体のスペクトル情報を送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影して作成する。二次元マップには、移動物体のスペクトル情報を含ませてもよい。つまり、差分算出手段8により求められた差分周波数スペクトルから移動物体に対応するスペクトルを抽出し、この抽出された移動物体のスペクトル情報を送信信号の送信方向または受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影した情報を二次元マップに含ませてもよい。
【0044】
二次元マップの例を図9〜図11に基づいて説明する。図9(A)は周波数オフセット手段5が算出した上昇オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。図9(B)は周波数オフセット手段5が算出した下降オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。検出された周波数スペクトルの強度を背景の濃度を基準とした濃淡で示した。背景の濃度との相対的な濃度差が大きい領域は反射強度が高く、比較的近い位置に存在する物体である。また所定の濃度差(絶対値)を示す領域については輪郭の切り出しを行い、物体の境界を明確に示した。図10は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の差分演算処理結果、すなわち差分算出手段8により算出された差分周波数スペクトルを図9と同じ二次元座標上に示す。図10に示すように、左及び右に存在していた矩形の物体の画像が消えている。これは差分算出手段8の処理により静止物体に対応するスペクトルが除去されたからである。
【0045】
図11は、編集手段16により編集された二次元マップの一例である。図11は上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の加算演算処理結果、すなわち加算手段6により算出された加算周波数スペクトルを、図9と同じ二次元座標上に示す。加算処理に伴いスペクトルの強度を1/2にして示した。図11に示すように、左及び右に存在していた矩形の物体の画像が強調され、中央の円形の物体の画像が目立たなくなっている。これは加算算出手段8の処理により静止物体に対応するスペクトルが他のスペクトルに比べて強調されたからである。これにより方位に基づいて定義された二次元座標上における物体の位置を検出することができる(S16)。座標系が定義された二次元マップに基づいて、前方物体を視覚的に認識できる画像データを編集してもよい。
【0046】
さらに、編集手段は、必要に応じて三次元マップを編集する(S15)。図12は、編集手段16により編集された三次元マップの一例である。この三次元マップは、送受信方位に基づく二次元座標にスペクトル強度を第3の座標軸として加えた三次元座標上に加算周波数スペクトルを示したものである。図12に示した三次元マップは、図11に示した二次元マップの情報に基づいて編集されたものである。強度の変化は色彩(波長)の変化により表現する。反射強度が大きい方を赤、反射強度が低い方を紫となるように、赤から紫までの波長を反射強度の値に対応させた。この三次元マップによれば、反射スペクトルの発生位置(物体の存在位置)とスペクトルの反射強度を表現できるため、物標の位置及び形状を視覚的に表現することができる。反射強度が座標上において連続的に検出することができれば、物体の面が連続している状態を予測することができ、同値の反射強度が連続する点の軌跡に基づいて物体の表面形状を予測することができる。つまり、走行経路上にガードレール等の静止物体が存在する場合、ガードレールにより反射された受信信号に基づいて加算周波数スペクトルが得られた場合、同値の反射強度が連続する点の軌跡に基づいて、走行路の左右端に延説されたガードレールの延在状態が推測でき、ガードレールの延在状態から走行路の擬似的な立体地図を生成して表示することができる。これにより方位と反射強度に基づいて定義された三次元座標上において物体の位置および形状を検出することができる。
【0047】
検出結果は車両制御装置400へ向けて出力される(S17)。
【0048】
天候(霧、雨)や時間帯(夜間)によっては視界が悪い場合、山道などを走行するような場合には、CCD等では良質の撮像映像が得られない場合があるが、本実施形態によれば、路側の静止物体(ガードレールや側壁など)からの反射信号(受信信号)に基づいて、静止物体(及び/又は移動物体)を検出することができるため、このような状況においても走行路を正確に認識することができ、自車両の走行経路の情報を提供し、走行車線はみ出し防止制御を行うことができる。
【0049】
ちなみに、S8において検出された静止物体の検出情報、S9において検出された移動物体の検出情報は編集処理を経ないで車両制御装置400へ向けて出力してもよい。また編集された二次元マップは、物体検出のために移動物体検出手段9および/または静止物体検出手段7へ出力してもよいし、そのまま出力してもよい。
【0050】
以上のとおり、本実施形態によれば、三角波で周波数変調した電磁波を送受信して物標検出を行うFM−CWレーダにおいて、周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルを自車両の速度情報から得られる周波数オフセット量に基づいてオフセット(シフト)させることにより静止物体(自車両の速度に等しい相対速度を持つ物体)からの反射信号によって生じる周波数上昇部分と周波数下降部分のIF信号の周波数成分を等しい周波数にすることができ、この二つの周波数スペクトルに加算処理を行うことにより、移動物体からの反射信号を抑制した加算周波数スペクトルを得ることができ、移動物体とは区別して静止物体のみを検出することができる。また、並行して差分算出処理を行うことにより、静止物体からの反射信号を抑制した差分周波数スペクトルを得ることができ、静止物体とともの移動物体の検出を一の測定で同時にすることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図13及び図14に基づいて第2実施形態を説明する。図13に本実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示した。図13に示すように、本実施形態は、差分算出手段8が絶対値算出部81を備える点、第1実施形態とは異なる処理を行う加算手段61とを有する点で第1実施形態と異なる。これらの点以外は第1実施形態と基本的に共通するので、ここでは異なる点を中心に説明し、重複する部分については省略する。
【0052】
差分算出手段8は、差分周波数スペクトルの周波数絶対値を求める。この機能は、加算手段61が備えてもよい。すなわち加算手段6が差分周波数スペクトルに基いて周波数絶対値を算出してもよい。
【0053】
加算手段61は、周波数オフセット手段5により求められた、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算するとともに、差分算出手段8により求められた差分周波数スペクトルの周波数絶対値を差し引いた加算周波数スペクトルを求める。本実施形態の加算手段61は、上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算する処理に加えて、差分周波数スペクトルの周波数絶対値を加算周波数スペクトルから控除する処理を行う。差分周波数スペクトルは、静止物体に対応する周波数スペクトルが除去され、移動物体に対応する周波数スペクトルが残存したものである。一方、加算周波数スペクトルは、静止物体に対応する周波数スペクトルが強調されているが、図7に示すピークQ1及びQ2のように移動物体を示す周波数スペクトルが弱いピークではあるが残存している。本実施形態では、この加算周波数スペクトルから移動物体に対応するスペクトルを控除する。差分周波数スペクトルは図8に示すように、正のスペクトルピークと負のスペクトルピークとして出現するため、本例ではその周波数絶対値を加算周波数スペクトルから控除する。
【0054】
図14は本実施形態の制御手順を示すフローチャートである。図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通するので、ここでは異なる処理(S71及びS72)について説明する。S71において、加算手段6は、差分算出手段8が算出した差分周波数スペクトルの差分絶対値を取得する。S72において、加算手段6は、S7において算出した加算周波数スペクトルから差分絶対値を差し引く(控除する)。S72において得られたものが本実施形態の加算周波数スペクトルとなる。
【0055】
特に限定されないが、加算手段6は、差分周波数スペクトルの絶対値に基づく、全周波数で信号強度を2分の1に変換した絶対値スペクトルを取得し、加算周波数スペクトルから差し引くことが好ましい。このように、絶対値スペクトルを控除(差分処理)することにより、強調された静止物体の反射信号の特徴を損なうことなく、移動物体の反射信号を除去することができ、より正確に静止物体の検出を行うことができる。
【0056】
<第3実施形態>
図15及び図16に基づいて第3実施形態を説明する。本実施形態では、自車両の走行速度と操舵角等の挙動情報から自車両の移動ベクトルを求め、送信信号の送出方位にベクトル分解して得られる速度成分からドップラシフト量および周波数オフセット量を算出する点を特徴とする。
【0057】
図15に本実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示した。図15に示すように、本実施形態は、移動体(自車両)の挙動を検出する挙動情報取得手段20を有する点、およびオフセット量算出手段4が移動ベクトル算出部41を備える点で第1実施形態と異なる。これらの点以外は第1実施形態と基本的に共通するので、ここでは異なる点を中心に説明し、重複する部分については省略する。
【0058】
本実施形態の送信手段1は、移動体の走行面と略水平方向に沿って往復回動しながら複数の送出方向に向けて送信信号を送信する走査型の送信アンテナ11を有する。
【0059】
挙動情報取得手段20は、送出方向ごとの移動体の速度成分に影響を与える、操舵角情報、左右車輪速差などの移動体の挙動に関する挙動情報を取得する。
【0060】
周波数オフセット量算出手段4は、挙動情報取得手段20により取得された移動体の挙動情報に基づいて、送信アンテナ11が送信信号を送信する送出方向ごとの移動体の速度成分を算出し、送出方向ごとの移動体の速度成分に基づいて周波数のオフセット量を算出する。移動ベクトル算出部41は、自車両の速度情報と自車両の挙動情報とに基づいて移動体の挙動に応じて変化する自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトルを算出する機能を有する。
【0061】
例えば、自車両の走行速度V、移動方向φとして検出された場合、送信信号の送出方位θにおけるドップラシフト量に応じた周波数オフセット量Δfは以下の式で表される。
【0062】
Δf=F・V・cos(θ−φ)/C ・・・(2)(但し、Fは送信信号周波数、Cは光速)
図16は本実施形態の制御手順を示すフローチャートである。図2に示した第1実施形態の制御手順と基本的に共通するので、ここでは異なる処理(S201乃至S203)について説明する。S201において、挙動情報取得手段20は、自車両の操舵角等の挙動情報を取得する。S202において、移動ベクトル算出部41は、自車両の速度情報と自車両の挙動情報とに基づいて自車両の進行方向の情報を含んだ移動ベクトルを算出する。
【0063】
S203において、周波数オフセット量算出手段4は、移動体の速度情報と移動体の挙動情報とから算出された送信アンテナ11が送信信号を送信する送出方向ごとの移動ベクトルに基づいて周波数のオフセット量を算出する。
【0064】
このように、自車両の走行速度と挙動情報から送信信号の送出方位にベクトル分解して得られる速度成分からドップラシフト量および周波数オフセット量を算出するので、自車両が直進しない場合でも送信信号の送出方位毎の自車両の速度成分を正確に算出することができる。静止物体と自車両の正確な相対速度に基づいて、正確な周波数オフセット量、差分周波数スペクトル、加算周波数スペクトルを算出することができ、曲線路などで自車両が転舵動作であるときでも静止物体および/または移動物体の反射信号を正確に分別することができる。
【0065】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態の物体検出装置のブロック構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【図3】(1)〜(4)は静止物体へ向けて送出した信号の各状態を説明するための図である。
【図4】(1)〜(4)は移動物体へ向けて送出した信号の各状態を説明するための図である。
【図5】自車両が走行しているときに、前方物標から反射された反射信号を受信した場合の上昇周波数スペクトルAと下降周波数スペクトルBとを示す図である。
【図6】周波数オフセット手段5により周波数オフセット量だけオフセットされた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルである。
【図7】周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルとを加算した加算周波数スペクトルである。
【図8】周波数オフセット手段5が求めた上昇オフセット周波数スペクトルと下降周波数スペクトルの差分を算出した差分周波数スペクトルである。
【図9】図9(A)は周波数オフセット手段5が算出した上昇オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。図9(B)は周波数オフセット手段5が算出した下降オフセット周波数スペクトルを送受信方位毎に基づいて定義された二次元座標上に並べた検出画像である。
【図10】上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数の差分演算処理結果を示す図である。
【図11】編集手段16により編集された二次元マップの一例を示す図である。
【図12】編集手段16により編集された三次元マップの一例である。
【図13】第2実施形態の物体検出装置101のブロック構成を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【図15】第3実施形態の物体検出装置102のブロック構成を示す図である。
【図16】第3実施形態に係る物体検出装置の制御手順を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100…物体検出装置
200…レーダヘッド
1…送信手段
11…送信アンテナ
12…電力分配器
13…VOC
2…受信手段
21…受信アンテナ
22…ミキサ回路
23…増幅回路
3…送受信方位走査手段
300…
301…三角波発生部
302…FFT処理部
4・・・周波数オフセット量算出手段
5・・・周波数オフセット手段
6・・・加算手段
7・・・静止物体検出手段
8・・・差分算出手段
9・・・移動物体検出手段
10・・・速度検出手段
15・・・記憶手段
16・・・編集手段
400・・・車両制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、当該送信手段が送信する送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する受信手段とを備え、前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出装置であって、
前記移動体の速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された前記移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段と、
前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、前記送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに前記周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、前記送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから前記周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段と、
前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段と、
前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段と、を有する物体検出装置。
【請求項2】
前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める差分算出手段と、
前記差分算出手段により算出された差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行う移動物体検出手段と、をさらに備えた請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記加算手段は、前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算し、この加算結果から前記差分算出手段により求められた差分周波数スペクトルの周波数絶対値を差し引いて加算周波数スペクトルを求め、
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記移動体の挙動を示す挙動情報を取得する挙動情報取得手段をさらに備え、
前記送信手段は、前記移動体の置載面と略水平方向に沿って往復回動しながら複数の送出方向に向けて送信信号を送信する送信アンテナを有し、
前記周波数オフセット量算出手段は、前記速度検出手段により検出された前記移動体の速度情報と前記挙動情報取得手段により取得された移動体の挙動情報とに基づいて、前記送信アンテナが送信信号を送信する送出方向ごとの前記移動体の速度成分を算出し、前記送出方向ごとの移動体の速度成分に基づいて前記周波数のオフセット量を算出する請求項1〜3のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、前記抽出された静止物体のスペクトル情報を前記送信信号の送信方向または前記受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影した二次元マップを編集する編集機能を備え、当該編集された二次元マップに基づいて静止物体の形状の検出を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトル及びその強度を抽出し、前記送信信号の送信方向または前記受信信号の受信方向と静止物体に対応するスペクトルの強度に基づいて、前記抽出された静止物体のスペクトルの三次元マップを編集する編集機能を備え、当該編集された三次元マップに基づいて静止物体の形状の検出を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項7】
移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信するとともに、当該送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信し、前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出方法であって、
前記移動体の速度を検出するステップと、
前記検出された前記移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出するステップと、
前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、前記送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに前記周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、前記送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから前記周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求めるステップと、
前記上昇オフセット周波数スペクトルと前記下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求めるステップと、
前記上昇オフセット周波数スペクトルと前記下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求めるステップと、
前加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行うステップと、
前記差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行うステップと、
を有する物体検出方法。
【請求項1】
移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、当該送信手段が送信する送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信する受信手段とを備え、前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出装置であって、
前記移動体の速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された前記移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出する周波数オフセット量算出手段と、
前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、前記送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに前記周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、前記送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから前記周波数オフセット量算出手段により算出された周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求める周波数オフセット手段と、
前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求める加算手段と、
前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行う静止物体検出手段と、を有する物体検出装置。
【請求項2】
前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求める差分算出手段と、
前記差分算出手段により算出された差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行う移動物体検出手段と、をさらに備えた請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記加算手段は、前記周波数オフセット手段により求められた上昇オフセット周波数スペクトルと下降オフセット周波数スペクトルとを加算し、この加算結果から前記差分算出手段により求められた差分周波数スペクトルの周波数絶対値を差し引いて加算周波数スペクトルを求め、
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記移動体の挙動を示す挙動情報を取得する挙動情報取得手段をさらに備え、
前記送信手段は、前記移動体の置載面と略水平方向に沿って往復回動しながら複数の送出方向に向けて送信信号を送信する送信アンテナを有し、
前記周波数オフセット量算出手段は、前記速度検出手段により検出された前記移動体の速度情報と前記挙動情報取得手段により取得された移動体の挙動情報とに基づいて、前記送信アンテナが送信信号を送信する送出方向ごとの前記移動体の速度成分を算出し、前記送出方向ごとの移動体の速度成分に基づいて前記周波数のオフセット量を算出する請求項1〜3のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトルを抽出し、前記抽出された静止物体のスペクトル情報を前記送信信号の送信方向または前記受信信号の受信方向に基づいて所定の投影面に投影した二次元マップを編集する編集機能を備え、当該編集された二次元マップに基づいて静止物体の形状の検出を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記静止物体検出手段は、前記加算手段により求められた加算周波数スペクトルから静止物体に対応するスペクトル及びその強度を抽出し、前記送信信号の送信方向または前記受信信号の受信方向と静止物体に対応するスペクトルの強度に基づいて、前記抽出された静止物体のスペクトルの三次元マップを編集する編集機能を備え、当該編集された三次元マップに基づいて静止物体の形状の検出を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物体検出装置。
【請求項7】
移動体に搭載され、周波数変調された送信信号を送信するとともに、当該送信信号が物体に反射して生じた反射信号を受信信号として受信し、前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号に基づいて物体を検出するFM−CWレーダ方式の物体検出方法であって、
前記移動体の速度を検出するステップと、
前記検出された前記移動体の速度情報に応じたドップラシフト量に基づく周波数のオフセット量を算出するステップと、
前記送信信号と受信信号とから得た受信IF信号を取得し、前記送信信号の周波数上昇部分における受信IF信号の周波数スペクトルに前記周波数オフセット量を加えて上昇オフセット周波数スペクトルを求めるとともに、前記送信信号の周波数下降部分における受信IF信号の周波数スペクトルから前記周波数オフセット量を差し引いて下降オフセット周波数スペクトルを求めるステップと、
前記上昇オフセット周波数スペクトルと前記下降オフセット周波数スペクトルとを加算して加算周波数スペクトルを求めるステップと、
前記上昇オフセット周波数スペクトルと前記下降オフセット周波数スペクトルの差分を算出して差分周波数スペクトルを求めるステップと、
前加算周波数スペクトルに基づいて静止物体の検出を行うステップと、
前記差分周波数スペクトルに基づいて移動物体の検出を行うステップと、
を有する物体検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−3476(P2007−3476A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187094(P2005−187094)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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