説明

物体表面検査装置

【課題】物体表面の検査面において光沢度の差を明瞭に検出できる物体表面検査装置を提供する。
【解決手段】物体表面検査装置は、検査対象物50の検査面51の法線方向L1と斜めに交差する方向からライン状の検査光を検査面51に照射する照明装置2と、ライン状に配置された受光素子を具備し受光素子の受光光軸L3と検査面51の法線方向との為す角度δ2が照明装置2の投光光軸L2と検査面51の法線方向L1の為す角度δ1と同じ角度になるように配置されて検査面51を撮像する撮像装置3と、撮像装置3が撮像した画像を解析することによって検査面の検査を行う画像処理装置1とを備え、照明装置2及び撮像装置3は、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の視野Aの延びる方向L4が、搬送装置4による検査対象物50の搬送方向L5に対して、それぞれ同じ角度θ1,θ2で斜めに交差するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の検査面に光を照射させるとともに、検査面を撮像して得た画像を解析することによって検査面の検査を行う物体表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、検査対象物の表面(検査面)の光沢度を計測する検査装置として、検査面の法線方向と投光光軸のなす角度を約45度とした光源から検査面に光を照射させるとともに、検査面で反射された正反射光を、検査面の法線方向と受光光軸の成す角度を約45度とした撮像手段で撮像し、撮像手段の撮像画像から検査面の光沢度を観測するものがあった。
【0003】
また特許文献1に示されるように、検査対象物の一側方斜め上方に光源を配置して、光源から検査面に浅い入射角度で照明光を照射させると共に、検査対象物の他側方斜め上方に撮像装置を配置して、検査面を浅い撮像角度で撮像することで、検査面の異物や突起を影として捉えるようにした検査方法も従来提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−5573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、接着剤を塗布した合板に突板を重ねた上で、平滑な圧板により突板を合板に圧接して製造される床材の場合、突板が破損した箇所では、接着剤が圧板に直接押し付けられて平滑面ができ、部分的にツヤ(光沢)を生じるようになる。また金属板の表面において傷などが発生することによって、周囲の部位に比べて光沢度の高い部位が発生する場合があり、上述した従来の検査方法を用いて、光沢度の高い部位を光沢度が低い粗面と弁別して検出したいという要求があった。
【0006】
しかしながら、床材などの板材や表面にヘアライン加工などの微細な凹凸加工が施された金属板のように、特定の方向に対しては光を散乱反射しやすく、別の方向に対しては光を正反射しやすい表面性状を有する検査対象物の場合、表面の光沢度の差を明瞭に検出するためには、光が散乱反射される方向から検査対象物を観測する必要がある。ここで、床材や金属板のような長大物の製造現場において、合板の表面に突板を接着する工程や、金属板の表面に凹凸加工を施す工程の後で、床材や金属板からなる検査対象物の表面に対し、搬送方向と直交する方向に延びるライン光を照射させるとともに、ラインカメラで対象物表面を撮像して表面検査を行う場合、床材や金属板を搬送移動させる方向と、散乱反射が最大となる方向とが必ずしも一致しないため、撮像方向を搬送方向と一致させて撮像装置が設置されていると、散乱反射が最大となる方向から検査対象物を観測することができない場合があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、物体表面の検査面において光沢度の差を明瞭に検出できる物体表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、検査対象物の検査面の法線方向と斜めに交差する方向からライン状の検査光を検査面に照射する照明手段と、ライン状に配置された受光素子を具備し受光素子の受光光軸と検査面の法線方向との為す角度が照明手段の投光光軸と検査面の法線方向の為す角度と同じ角度になるように配置されて検査面を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像を解析することによって検査面の検査を行う検査処理手段とを備え、照明手段および撮像手段は、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の撮像領域の延びる方向が、照明手段および撮像手段に対して検査対象物が相対的に移動する移動方向に対して、それぞれ同じ角度で斜めに交差するように配置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の撮像領域の延びる方向が移動方向と為す角度を計測する角度計測手段と、角度計測手段の計測結果に基づいて撮像手段が撮像した画像の変形を補正する画像補正手段を備え、検査処理手段が、画像補正手段による補正後の画像を解析することによって検査面の検査を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、検査面において光沢度が大きくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために用いられる輝度の第1閾値と輝度変化量の第2閾値とを記憶する記憶部を備えるとともに、検査処理手段が、検査面の撮像画像から第1閾値よりも輝度が高い領域を明部として抽出する明部抽出機能と、明部と当該明部の周辺部とでそれぞれ輝度の平均値を求め、明部における輝度の平均値と周辺部における輝度の平均値との輝度差が第2閾値より大きい場合を光沢変化部と判断する光沢変化判断機能とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、検査面において光沢度が小さくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために用いられる輝度の第3閾値と輝度変化量の第4閾値とを記憶する記憶部を備えるとともに、検査処理手段が、検査面の撮像画像から第3閾値よりも輝度が低い領域を暗部として抽出する暗部抽出機能と、暗部と当該暗部の周辺部とでそれぞれ輝度の平均値を求め、暗部における輝度の平均値と周辺部における輝度の平均値との輝度差が第4閾値より大きい場合を光沢変化部と判断する光沢変化判断機能とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1つの発明において、照明手段が、検査面にライン状の平行光を照射する光源を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、照明手段が検査面の法線方向と斜めに交差する方向からライン状の検査光を照射させているので、検査面に凹凸がある場合には凹部の底部側には検査光が差し込まず、凸部の先端側のみに検査光が照射されることになり、且つ撮像手段は、受光素子の受光光軸と検査面の法線方向との為す角度が照明手段の投光光軸と検査面の法線方向の為す角度と同じ角度になるように配置されているので、検査面の凸部先端で正反射された光成分を撮像手段で受光することができる。したがって、検査面の模様や検査面で反射した周囲の迷光に影響されることなく、検査面の正反射率に比例した受光光量が得られるので、検査面の光沢度を正しく検出することができる。さらに、木目を有する突板が貼り付けられた木材やヘアライン加工が施された金属板のように、特定の方向に対しては光を散乱反射しやすく、別の方向に対しては光を正反射しやすい表面性状の検査対象物を検査する場合、貼着工程やヘアライン加工の加工工程を終えた製品を移動させる際の移動方向によって、散乱反射が最大となる方向が移動方向と平行になる場合や、散乱反射が最大となる方向が移動方向と直交する場合が考えられるが、照明手段および撮像手段は、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の撮像領域の延びる方向がそれぞれ移動方向に対して同じ角度で斜めに交差するように配置されているので、散乱反射が最大となる方向が移動方向と平行になった場合でも移動方向と直交する場合でも、散乱光の影響を受けにくくし、検査面の正反射率に比例した受光光量を得ることで、検査面の光沢度を正しく検出して、光沢度の差を明瞭に検出することができる。
【0014】
ここにおいて、検査面の法線方向に対して、照明手段の投光光軸および撮像手段の受光光軸を大きく傾ければ、検査面の微少な凹凸で乱反射され、検査面の色の影響で反射光量が変化した成分が撮像手段に入射しにくくなるから、検査面の模様の影響が軽減され、検査面において光沢度が変化した部位を確実に検出することができる。尚、検査対象物が木材である場合には、実験の結果、検査面の法線方向に対する照明手段の投光光軸および撮像手段の受光光軸の角度を70度以上とすれば、検査面の模様の影響を軽減できることが判明した。また、床材などの板材や表面に微細凹凸加工を施した金属板のように特定の方向に対して乱反射しやすい性状をもつ長大形状の検査対象物をラインカメラを用いて撮像する場合に、投受光光軸を移動方向に対して60°以上傾けて配設することによって、対象物の移動方向が表面の散乱反射が最大となる方向と直角又は平行になる場合でも、散乱反射しやすい方向から対象物表面のツヤ変化を観測することが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、画像補正手段が角度計測手段の計測結果に基づいて画像の変形を補正することで、光沢度が変化した部位の寸法や面積の計測を容易に行うことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、輝度が第1閾値より高く且つ周辺部との輝度変化量が第2閾値よりも大きい部位を求めることで、周辺部に比べて面性状が滑らな部位を検出することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、輝度が第3閾値より低く且つ周辺部との輝度変化量が第4閾値よりも大きい部位を求めることで、周辺部に比べて面性状が粗い部位を検出することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、検査面に照射されるライン光の方向が一方向となる光源を用いることによって、検査面の凹部内に検査光が差し込むのを防止し、散乱光による影響を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の物体表面検査装置を示し、(a)は概略的なシステム構成図、(b)は照明装置および撮像装置の配置説明図である。
【図2】(a)(b)は同上の検出原理を説明する説明図である。
【図3】同上の撮像装置による撮像画像の説明図である。
【図4】同上による光沢変化部の検出方法を説明する説明図である。
【図5】同上による光沢変化部の検出方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の技術思想を、床材のような板材の表面欠陥を検出する物体表面検査装置に適用した実施形態について図1〜図5を参照して説明する。床材は、図2(a)に示すように接着剤を塗布した合板57に突板51を重ねた上で、平滑な圧板により突板51を合板57に圧接して製造されるのであるが、図2(b)に示すように突板51が破損している箇所(ヒビや割れが発生している箇所)では、接着剤54が直接圧板に押し付けられることによって、表面に微細な凹凸構造(凹部52および凸部53からなる)をもつ突板部分55に比べて、光沢度の高い滑面部56が形成されることになり、本実施形態の物体表面検査装置では、このような滑面部56を不良箇所として検出するとともに、周辺部に比べて面性状が粗い部位も不良箇所として検出する。尚、検査対象物は板材に限定されるものではなく、金属材の表面にできた傷を検出するものでもよいし、不良箇所として周辺部に比べて面性状が滑らかな部位および周辺部に比べて面性状が粗い部位の何れか一方のみを検出するものでもよい。
【0021】
図1(a)は物体検査装置の概略的なシステム構成図であり、この物体検査装置は表面に突板が貼り付けられた板材50(検査対象物)にライン状の検査光を照射する照明装置2(照明手段)と、板材50の検査面51の画像を撮像する撮像装置3(撮像手段)と、撮像装置3によって撮像された画像を解析することによって板材50の検査面51における欠陥を検出する画像処理装置1とを主要な構成として備えている。
【0022】
照明装置2は、図1(a)(b)に示すように、例えば直管形蛍光ランプのような細長い発光部を有する光源2aと、直線状のスリットが形成されたマスク2bとを備え、マスク2bを透過したライン状の平行光束が検査面51に対して照射される。この照明装置2は、検査面51の法線方向と斜めに交差する方向から検査面51に対してライン光を照射させる位置に配置されている。また照明装置2は、検査面51に照射する光束の方向が一方向となるような平行光照明を行っているので、図2に示すように検査面51に微少な凹凸がある場合でも光源からの迷光が凹部52内に回り込むのを防止でき、凸部53の頂部付近の平行な面で反射された光を撮像装置3に入射させることができる。
【0023】
撮像装置3は、CCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)やCMOS撮像素子のような受光素子をライン状に配置したラインカメラからなり、コンベヤのような搬送装置4によって検査対象である板材50が搬送方向L5(移動方向)に一定速度で搬送されることで、板材50の検査面上を走査し、検査面51の全面の画像が取得される。撮像装置3で撮像された画像は、後述する画像処理装置1の画像メモリ11に蓄積され、検査処理部10によって欠陥の検出処理が行われる。なお撮像装置3の受光素子としては、入射する光エネルギの対数に比例した出力が得られる素子を用いることが好ましく、具体的には対数変換型のCMOS撮像素子のような受光素子を用いればよい。このような受光素子を用いることで、検査面51における光沢度の変化が大きい場合でも撮像装置3によって取得される検査面51の光沢度を示す輝度値が飽和するのを防止でき、光沢度のダイナミックレンジを広げることができる。
【0024】
ここで、検査光が照射されるライン状の視野Aと照明装置2とを結び、視野Aの延びる方向に対して直交する直線(以下、この直線を投光光軸という。)L2と検査面51の法線L1とが為す角度δ1(入射角)と、撮像装置3が検査面上を観測するライン状の視野Aと撮像装置3とを結び、視野Aの延びる方向に対して直交する直線(以下、この直線を受光光軸と言う。)と法線L1が為す角度δ2(反射角)は共に等しく、δ1=δ2≧70度となるように配設されている。すなわち、照明装置2および撮像装置3は、視野Aを挟んで入射角δ1と反射角δ2が一致するように配置されているので、撮像装置3には検査対象物である板材50の検査面51で正反射された光成分が主に入射することになる。
【0025】
また、図2(a)は検査対象物である板材50の検査面51を模式的に示した拡大断面図であり、ヘアライン加工が施された金属板や木材のように表面に微細な凹凸構造を有する検査対象物の場合には、入射角δ1を大きくとることによって、照明装置2から放射された光のうち、凹凸を構成する凸部53の頂上付近の水平に近い面を有する部位で正反射された成分だけが、撮像装置3の方向へ入射するようになる。正反射された光成分は、検査面51の色に依存せず、光源光の波長分布のままである特徴を持つので、照明装置2の投光光軸と検査面51の法線との為す角度δ1および撮像装置3の受光光軸と検査面51の法線との為す角度δ2を上記形態のように設定することで、検査面51の色に影響を受けることなく、検査面51のツヤ(光沢度)の差、つまり正反射率の差だけを画像化することが可能になる。ここにおいて、上述の角度δ1,δ2は検査対象物の面粗さに応じて適宜の値に設定すれば良く、例えば床材として用いられる面粗さが10〜20μm程度の板材を検査する場合には、上記の角度δ1,δ2を70度以上の角度とすることが好ましい。
【0026】
ここで、表面にヘアライン加工などの微細加工が施された金属板や木材のように、検査対象物の表面に、一定方向に延びる溝状の微細構造が存在する場合、溝状の微細構造に対して直交する方向から観測すると、検査面は乱反射面(粗面)に近い反射特性を有し、溝状の微細構造と同じ方向から観測すると、検査面は正反射面(滑面)に近い反射特性を有することになる。例えば面性状が周辺部に比べて滑らかな部位或いは粗い部位を検出するために、検査面において光沢度の差を検出する場合に、照明装置2の投光光軸および撮像装置3の受光光軸は、検査面が乱反射面に近く見える方向に配設するのが望ましく、散乱反射が最大となる方向が搬送方向と一致する場合には、照明装置2の投光光軸および撮像装置3の受光光軸を搬送方向に一致させるように、照明装置2および撮像装置3を配置することが望ましい。しかしながら、産業分野では例えば検査対象物がロール品のように搬送方向が限定される場合も多くあり、検査対象物を、その表面に形成された溝状の微細構造に沿う方向にしか搬送できない場合もありえる。すなわち、検査対象物によって、搬送方向が溝状の微細構造と直交する場合や、搬送方向が溝状の微細構造と平行する場合があるため、本実施形態の物体表面検査装置では、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の撮像領域(視野A)の延びる方向(図1中のL4)がそれぞれ搬送方向L5に対して同じ角度θ1,θ2で斜めに交差するように配置されている。したがって、検査面の溝状の微細構造が搬送方向と直交する場合でも搬送方向と平行する場合でも、撮像装置3により検査対象物の検査面51を乱反射面に近く見える方向から観測することができ、検査面51において光沢度の差を明瞭に検出することができる。ここにおいて、検査対象物が床材のような板材50の場合には、照明装置2の投光光軸および撮像装置3の受光光軸がそれぞれ搬送方向と為す角度θ1,θ2を60度以上且つ90度未満の角度に設定するのが好ましい。但し、検査視野幅は検査対象物である板材50の幅寸法を、受光光軸と搬送方向の為す角度θ2の余弦で除した値となり(検査視野幅=検査視野幅÷cosθ2)、角度θ2が90度に近付くほど視野幅が極端に大きくなるので、光学系を実用的に構成できる範囲で、角度θ1,θ2をできるだけ大きい値に設定すればよい。
【0027】
また、ライン状の撮像領域(視野A)の延びる方向L4が搬送方向L5に対して角度θ2で斜めに交差する場合、撮像装置3により取得される板材50の画像は、図3に示されるように平行四辺形状に歪みを生じることになるため、撮像装置3が画像データを画像メモリ11に転送する過程で、画像の歪みに応じて画像データのアドレスをシフトさせるといった方法で、画像の歪みを取り除いて、視野Aの延びる方向が搬送方向L5と直交した状態と同じ画像を得ることが好ましく、検査対象物において光沢度が変化した部位の寸法や面積の計測を容易に行うことができる。なお、撮像装置3が画像データを画像メモリ11に転送する過程で画像の歪みを補正しているが、撮像装置3で撮像された画像データを画像メモリ11にそのまま蓄積させ、検査処理部10側で画像の歪みを補正する処理を行ってもよい。すなわち、ライン状の撮像領域の延びる方向が搬送方向L5と為す角度θ2を計測する角度計測部13が画像処理装置1に設けられ、検査処理部10において、画像メモリ11から画像データを読み出して画像処理を行う過程で、画像補正機能部14が画像メモリ11から画像データを読み出すとともに、角度計測部13から角度θ2の計測結果を取り込み、角度θ2の計測結果に基づいて画像データのアドレスをシフトさせることによって画像の歪みを補正した後、補正後の画像データを用いて画像処理を行うことで、検査対象物において光沢度が変化した部位の寸法や面積の計測を容易に行うことができる。
【0028】
次に、検査処理部10が、画像メモリ11に蓄積された画像データから、検査面において周辺部に比べて光沢度が高い滑面部、及び、周辺部に比べて光沢度が低い粗面部を検出する処理について以下に説明する。ここで、撮像装置3によって撮像される画像においては、表面が乱反射面(粗面)に近ければ輝度が低く、表面が正反射面(滑面)に近ければ輝度が高く撮像される傾向がある。したがって、検査面において光沢度が相対的に大きい部位(明部)を検出するために用いられる輝度の第1閾値Th1と、光沢度が相対的に低い部位(暗部)を検出するために用いられる輝度の第3閾値Th3とを記憶部12に予め記憶させておき、検査処理部10の明部抽出機能部15が、検査対象物の画像において輝度が第1閾値Th1よりも明るい画素の集まりを滑面部(明部)として抽出するとともに、検査処理部10の暗部抽出機能部16が、検査対象物の画像において輝度が第3閾値Th3よりも暗い画素の集まりを粗面部(暗部)として抽出しており、例えば抽出された明部又は暗部の面積が所定の基準値以上であれば欠陥があると判断する。このように、各画素の輝度と閾値との高低を比較して明部および暗部を抽出する処理は、検査面の全域が一定の光沢度を有している対象物から、光沢度が規定の範囲を超えている部分(すなわち、光沢度が規定値よりも低い部分、又は規定値よりも高い部分)を検出する場合に適している。
【0029】
一方、検査対象物の表面にできた傷や破損を検出する場合には、撮像装置3によって撮像された画像から検査面の光沢度が急変する部位だけを検出する必要があり、このような場合に上述した単純な閾値判定のみを行うと、検査面の光沢度に部分的なムラがある部位を誤検出する可能性があるので、検出された光沢変化部とその周辺部分とで光沢度の差を評価することも好ましい。
【0030】
そこで、検査面において光沢度が大きくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために輝度変化量の第2閾値Th2を記憶部12に記憶させるとともに、検査面において光沢度が小さくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために輝度変化量の第4閾値Th4(第2閾値Th2と同じ値でもよい)を記憶部12に記憶させており、例えば光沢度が大きくなる方向に急変する部位を検出する場合、図4に示すように明部抽出機能部15によって第1閾値Th1よりも輝度の大きい画素の集まりである光沢変化部61が抽出されると、検査処理部10の光沢変化判断機能部17が、上記光沢変化部61の外接矩形領域62を求めると共に、この外接矩形領域62を所定の拡張幅mだけ上下左右にそれぞれ拡張した検査領域63を設定し、光沢変化部61内の画素の平均輝度D1と、検査領域63から光沢変化部61を除いた領域の平均輝度D2を求め、両者の輝度差|D1−D2|が上述の第2閾値Th2を超える場合に明方向への光沢度急変部として検出する。
【0031】
また光沢度が低くなる方向に急変する部位を検出する場合も同様に、暗部抽出機能部16によって第3閾値Th3よりも輝度の低い画素の集まりである光沢変化部61が抽出されると、検査処理部10の光沢変化判断機能部17が、上記光沢変化部61の外接矩形領域62を求めると共に、この外接矩形領域62を所定の拡張幅mだけ上下左右にそれぞれ拡張した検査領域63を設定し、光沢変化部61内の画素の平均輝度D1と、検査領域63から光沢変化部61を除いた領域の平均輝度D2を求め、両者の輝度差|D1−D2|が上述の第4閾値Th4を超える場合に暗方向への光沢度急変部として検出する。
【0032】
このように検査処理部10では、画像内で輝度が第1閾値よりも明るい画素の集まりである明部又は輝度が第3閾値よりも暗い画素の集まりである暗部を抽出した後、明部又は暗部とその周辺部とで平均輝度の差が第2閾値Th2、第4閾値Th4より大きい部位のみを光沢度の急変部として検出しているので、光沢度のムラを誤検出する可能性を低減することができる。
【0033】
なお、検査処理部10の光沢変化判断機能部17では、明部又は暗部とその周辺部とで平均輝度の差を所定の閾値と比較することで、光沢度の急変部位を検出する検出方法1に代えて、以下に説明する検出方法2で光沢度の急変部位を検出してもよい。例えば光沢度が大きくなる方向に急変する部位を検出する場合、図4に示すように明部抽出機能部15によって第1閾値Th1よりも輝度の大きい画素の集まりである光沢変化部61が抽出されると、検査処理部10の光沢変化判断機能部17が、上記光沢変化部61の外接矩形領域62を求めると共に、この外接矩形領域62を所定の拡張幅mだけ上下左右にそれぞれ拡張した検査領域63を設定し、検査領域63内の各画素の輝度分布のヒストグラムを求める。図5は、このようにして求められたヒストグラムの一例であり、光沢変化部61の輝度分布を示すピーク71と、光沢変化部61の周辺部(検査領域63から光沢変化部61を除いた領域)の輝度分布を示すピーク72について、それぞれ平均輝度e1,e2と輝度標準偏差d1,d2を求め、下記の式(1)で定義される明瞭度αを求める。
【0034】
【数1】

【0035】
ここで、図5に示すヒストグラムで検出された光沢変化部61の輝度分布71と、その周辺部の輝度分布72とが大きく分離するほど、式(1)で求められる明瞭度αは高い値となり、明瞭度αの値は、光沢変化部61とその周辺部との相対的な分布の差を表すことになる。したがって、検査処理部10の光沢変化判断機能部17では、上述の処理で求めた明瞭度αと、記憶部12に予め記憶された所定の閾値とを比較し、明瞭度が閾値を超える場合に光沢変化部61を光沢度の急変部として検出する。
【0036】
また、光沢度が低くなる方向に急変する部位を検出する場合も上述と同様に、暗部抽出機能部16によって第2閾値Th1よりも輝度の低い画素の集まりである光沢変化部61が抽出されると、検査処理部10の光沢変化判断機能部17が、上記光沢変化部61の外接矩形領域62を求めると共に、この外接矩形領域62を所定の拡張幅mだけ上下左右にそれぞれ拡張した検査領域63を設定して、検査領域63内の各画素の輝度分布のヒストグラムを求める。その後、検査処理部10の光沢変化判断機能部17では、検査領域63内の輝度分布のヒストグラムから、光沢変化部61の輝度分布を示すピーク71と、光沢変化部61の周辺部の輝度分布を示すピーク72について、それぞれ平均輝度e1,e2と輝度標準偏差d1,d2を求め、上述の式(1)で定義される明瞭度αを求めた後、この明瞭度αと所定の閾値とを比較し、明瞭度が閾値を超える場合に光沢変化部61を光沢度の急変部として検出する。
【0037】
このように検査処理部10では、画像内で輝度が第1閾値よりも明るい画素の集まりである明部又は輝度が第3閾値よりも暗い画素の集まりである暗部を抽出するとともに、明部又は暗部とその周辺部とで平均輝度および輝度標準偏差を求めた後、式(1)で示される明瞭度を求めており、この明瞭度が所定の閾値を超える部位を光沢度の急変部位として検出している。したがって、検査面における光沢度のムラが大きいために、上述した検出方法1を用いても光沢度のムラを誤検出してしまう場合でも、平均輝度と輝度標準偏差から求めた明瞭度をもとに光沢度の急変部位を求めることによって、光沢度のムラを誤検出することなく光沢度の急変部位を求めることができる。
【0038】
なお、本実施形態では検査対象物である板材50が搬送装置4によって搬送される場合を例に説明したが、照明装置2及び撮像装置3が図示しない搬送装置によって移動させられることによって、照明装置2及び撮像装置3が検査対象物に対して相対的に移動して、検査対象物を走査するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 画像処理装置
2 照明装置
2a 光源
2b マスク
3 撮像装置
4 搬送装置
10 検査処理部
11 画像メモリ
12 記憶部
13 角度計測部
14 画像補正機能部
15 明部抽出機能部
16 暗部抽出機能部
17 光沢変化判断機能部
50 板材
50 検査対象物
51 検査面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査面の法線方向と斜めに交差する方向からライン状の検査光を前記検査面に照射する照明手段と、ライン状に配置された受光素子を具備し受光素子の受光光軸と前記検査面の法線方向との為す角度が前記照明手段の投光光軸と前記検査面の法線方向の為す角度と同じ角度になるように配置されて前記検査面を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像を解析することによって前記検査面の検査を行う検査処理手段とを備え、前記照明手段および前記撮像手段は、ライン状の検査光の延びる方向およびライン状の撮像領域の延びる方向が、前記照明手段および前記撮像手段に対して前記検査対象物が相対的に移動する移動方向に対して、それぞれ同じ角度で斜めに交差するように配置されたことを特徴とする物体表面検査装置。
【請求項2】
前記ライン状の検査光の延びる方向および前記ライン状の撮像領域の延びる方向が前記移動方向と為す角度を計測する角度計測手段と、角度計測手段の計測結果に基づいて前記撮像手段が撮像した画像の変形を補正する画像補正手段を備え、前記検査処理手段が、画像補正手段による補正後の画像を解析することによって前記検査面の検査を行うことを特徴とする請求項1記載の物体表面検査装置。
【請求項3】
検査面において光沢度が大きくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために用いられる輝度の第1閾値と輝度変化量の第2閾値とを記憶する記憶部を備えるとともに、
前記検査処理手段が、前記検査面の撮像画像から前記第1閾値よりも輝度が高い領域を明部として抽出する明部抽出機能と、前記明部と当該明部の周辺部とでそれぞれ輝度の平均値を求め、前記明部における輝度の平均値と前記周辺部における輝度の平均値との輝度差が前記第2閾値より大きい場合を光沢変化部と判断する光沢変化判断機能とを備えることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の物体表面検査装置。
【請求項4】
検査面において光沢度が小さくなる方向に急変する光沢変化部を検出するために用いられる輝度の第3閾値と輝度変化量の第4閾値とを記憶する記憶部を備えるとともに、
前記検査処理手段が、前記検査面の撮像画像から前記第3閾値よりも輝度が低い領域を暗部として抽出する暗部抽出機能と、前記暗部と当該暗部の周辺部とでそれぞれ輝度の平均値を求め、前記暗部における輝度の平均値と前記周辺部における輝度の平均値との輝度差が前記第4閾値より大きい場合を光沢変化部と判断する光沢変化判断機能とを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の物体表面検査装置。
【請求項5】
前記照明手段が、前記検査面にライン状の平行光を照射する光源を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の物体表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230450(P2010−230450A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77659(P2009−77659)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】