説明

物品保持装置

【課題】大量の気体を必要とすることなく、非接触で物品を保持できるようにする。
【解決手段】物品保持装置20は、ガラス基板Sに対向可能な物品対向部42及び内部に設けられた空間を有するケース22と、少なくとも1つのファン24と、吸い込み口26と、吹き出し口28と、を備えている。ファン24は、ケース22の空間に配置され、気体を吸い込んで吹き出す。吸い込み口26は、物品対向部42に配置され、ファン24の吸い込み側と連通する。吹き出し口28は、吸い込み口26と異なる位置で物品対向部42に対向して配置され、ファン24の吹き出し側と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、特に、物品を非接触で保持する物品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板及び液晶ガラス基板等の物品を保持する場合、非接触で物品を保持する物品保持装置が半導体製造工場や液晶製造工場で広く用いられている。例えば、いわゆるベルヌーイチャックと呼ばれる物品保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の物品保持装置は、流体を噴出する流体噴出口を有している。この流体噴出口は筒状の凹部の内周面に流体が渦流となるように形成されている。流体が噴出されると、凹部で負圧が発生して物品を吸着するとともに、噴出した流体が物品保持装置と物品との間で流れて物品と物品保持装置とが接触しないように反発させる。これにより、物品が非接触で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−278831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の物品保持装置では、渦流を凹部に噴出させて負圧を作り出している。このため、負圧を発生させるために大量の清浄な気体が必要になる。
【0005】
本発明の課題は、大量の気体を必要とすることなく、非接触で物品を保持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物品保持装置は、物品を非接触で保持する物品保持装置である。物品保持装置は、物品に対向可能な物品対向部と内部に設けられた空間とを有する収納部と、少なくとも1つの送風機と、吸い込み口と、吹き出し口と、を備えている。送風機は、収納部の空間に配置され、気体を吸い込んで吹き出す。吸い込み口は、物品対向部に配置され、送風機の吸い込み側と連通する。吹き出し口は、吸い込み口と異なる位置で物品対向部に配置され、送風機の吹き出し側と連通する。
この物品保持装置では、物品を収納部の物品対向部に対向させた状態で送風機を運転すると、吸い込み口から気体を吸い込んで吹き出し口から気体が吹き出される。この吸い込んだ気体により物品を保持し、吹き出した気体により物品を収納部から離反させる。このとき、送風機の送風量を制御して吸い込み口からの吸い込み量と吹き出し口からの吹き出し量とを適宜に調整することより、収納部に非接触で物品を保持できる。具体的には、吸い込み口に吸い込まれる風の力が、吹き出し口からの吹き出される風の力と、物品の重量と、反発力との和と等しくなると物品は保持される。この反発力は、収納部と物品との間の気体層のクッションにより密着を防ぐ力である。ここでは、物品保持装置に設けた送風機により生じる気体の吸い込み量及び吹き出し量を制御することにより物品を保持している。このため、保持装置の周囲にある気体を用いて物品を保持できる。したがって、大量の気体を必要とすることなく、非接触で物品を保持できるようになる。
【0007】
物品対向部は、物品に対向可能な平面を有し、吸い込み口は、平面に配置され、吹き出し口は、平面の吸い込み口の周囲に配置されていてもよい。
この場合には、物品を保持するのに寄与する吸い込み口の周囲に物品を離反させる吹き出し口が設けられているので、簡単な構造で物品を安定して保持できる。
【0008】
吸い込み口は、送風機の吸い込み側に対向して配置されていてもよい。
この場合には、物品に対向して配置された吸い込み口が送風機の吸い込み側に対向して配置されるので、送風機が吸い込み口を介して物品に対向して配置される。このため、物品の保持するための吸い込み側での抵抗が小さくなり、吸い込み流量の損失が減少し、物品の保持を確実に行える。また、吹き出し口及び吸い込み口の構成がコンパクトになる。
【0009】
物品保持装置は、送風機の吸い込み側と連通し、平面と異なる位置に開口する吸気部をさらに備えていてもよい。
この場合には、吸い込み口に物品が近づいて吸い込み口からの吸い込み流量が減少しても、吸気部から送風機の吸い込み側に気体を供給できるので、物品が平面に吸着しにくくなる。
【0010】
吸気部は、平面に平行に配置されていてもよい。この場合には、吸気部が平面に平行に配置されているので、簡単な構造で物品の平面への吸着を防止できる。
【0011】
物品保持装置は、収納部に配置され、物品と平面との距離を把握可能な距離把握手段をさらに備えてもよい。
この場合には、物品と収納部との距離を把握できるので、距離に応じて送風機を制御することにより、物品と収納部との隙間を適切に管理できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、物品保持装置に設けた送風機により生じる気体の流量を制御することにより物品を保持している。このため、保持装置の周囲にある気体を用いて物品を保持できる。したがって、大量の気体を必要とすることなく、非接触で物品を保持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態が採用された移載装置の斜視図。
【図2】本発明の一実施形態による物品保持装置の底面図。
【図3】その側面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】ファン制御部のブロック図。
【図6】ファン制御部の制御動作を示すフローチャート。
【図7】他の実施形態のファン制御部のブロック図。
【図8】さらに他の実施形態の図4に相当する断面模式図。
【図9】さらに他の実施形態の図4に相当する断面模式図。
【図10】さらに他の実施形態の図4に相当する断面模式図。
【図11】さらに他の実施形態の図2に相当する底面図。
【図12】さらに他の実施形態の図2に相当する底面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)移載装置の全体構成
図1において、本発明の一実施形態が採用された移載装置10は、例えば、大型液晶用のガラス基板SをカセットCと図示しない搬送装置との間で移載する。移載装置10は、例えばスカラロボットからなる移載ロボット12と、移載ロボット12の先端に設けられた移載アーム14と、移載アーム14に装着された、例えば4つの物品保持装置20と、を備えている。カセットCは、内部に複数段の棚部Caを有している。各棚部Caは、左右に間隔を隔てて配置された3つの棚板Cbを有している。
【0015】
移載ロボット12は、フレーム部12aと、フレーム部12aに装着された第1アーム部12bと、第1アーム部12bに装着された第2アーム部12cと、を有している。第1アーム部12bは、フレーム部12aに昇降かつ昇降軸E回りに旋回自在に装着されている。第2アーム部12cは、第1アーム部12bの先端に昇降軸Eと平行な軸回りに旋回自在に装着されている。第2アーム部12cの先端に移載アーム14が装着されている。移載アーム14は、第2アーム部12cの先端に昇降軸Eと平行な軸回り旋回自在に装着されている。したがって、移載ロボット12は、平行な3つの関節軸と1つの昇降軸Eとを有している。
【0016】
移載アーム14は、第2アーム部12cの先端に所定高さ離反して配置されている。これにより、物品保持装置20及びそれに保持されるガラス基板Sをかわせるようになっている。移載アーム14は、この実施形態では、二股に分かれるフォーク14a及びフォーク14bを有している。フォーク14a及びフォーク14bの下面に2つの物品保持装置20が間隔を隔てて固定されている。フォーク14a及びフォーク14bは、カセットCの棚板Cbの間に配置可能である。
【0017】
(2)物品保持装置の構成
物品保持装置20は、物品としてのガラス基板Sの上面を非接触で保持するものである。物品保持装置20は、図2〜図4に示すように、ガラス基板Sに対向可能なケース(収納部の一例)22と、ケース22内に配置されたファン(送風機の一例)24と、吸い込み口26と、吹き出し口28と、を備えている。また、物品保持装置20は、ケース22の内部にファン24を制御するファン制御部30を備え、ケース22の外部に複数(例えば4つ)の距離センサ(距離把握手段の一例)32を備えている。さらに、物品保持装置20は、吸い込み口26と連通する吸気部34を備えている。
【0018】
(3)ケースの構成
ケース22は、内部にファン24とファン制御部30とを収納している。ケース22は、金属又は合成樹脂製であり、ガラス基板Sに対向する平面を有している。ケース22は、概ね直方体の筐体で構成されるケース本体40と、ケース本体40に間隔を隔てて固定された物品対向部42と、を有している。
【0019】
ケース本体40の上面は、フォーク14a又はフォーク14bに固定されている。ケース本体40は、下方が正方形に開口し内部に空間40aを有する第1部材40bと、第1部材40bの開口を塞ぐ第2部材40cと、を有している。第1部材40bは、例えば、金属薄板の折り曲げ又はプレス成形して形成された枠状の部材である。第2部材40cは、正方形の板状部材であり、第1部材40bに例えばねじや接着等の適宜の固定手段により固定されている。第2部材40cは、第1部材40bの開口の内側に嵌合している。第2部材40cは、ガラス基板Sに対向可能な平面を有し、平面の中心には、吸い込み口26を構成する円形の第1開口40dが形成されている。第1開口40dの周囲には、吹き出し口28を構成する円形の複数(例えば、18個)の第2開口40eが第1開口40dの中心を中心とする円周上に間隔を隔てて配置されている。ここで、複数の第2開口40eの面積の和は、同じ平面に第1開口40d及び第2開口40eを形成した場合、第1開口40dの面積の1/3以上2/3以下に設定されている。本実施形態では、外周側に吹き出し口28があり、内側の吸い込み口26に比べて吹き付ける風が外側に逃げることにより作用する力が小さくなる。このため、面積を小さくして吹き出し圧力を上げている。
【0020】
物品対向部42は、ガラス基板Sに対向する平面を有している。物品対向部42は、第2部材40cに間隔を隔てて配置された概ね正方形の板状部材である。物品対向部42は、主に吸気部34を構成するために設けられている。すなわち、ケース22との間の隙間が吸気部34となっている。物品対向部42の中心には、第1開口40dに対向して円形の第3開口42aが形成されている。第3開口42aは、第1開口40dと同径の孔であり、第3開口42aも吸い込み口26を構成している。第3開口42aの周囲には、複数の第2開口40eに対向して複数の第4開口42bが形成されている。第4開口42bは、第2開口40eと同径の孔であり、第4開口42bも吹き出し口28を構成している。第2開口40eと第4開口42bの配置部分には、吹き出し口28と吸気部34との連通を防止するための複数の間座部材44が配置されている。複数の間座部材44は、第2開口40e及び第4開口42bと同芯に配置されている。間座部材44は座金形状の部材であり、第2開口40e及び第4開口42bと同径の貫通孔44aを有している。吸気部34は、前述したようにケース本体40と物品対向部42との間の隙間に配置されている。したがって、吸気部34は、ケース22の下面ではなく下面に沿って配置され側部に開口している。吸気部34は、吸い込み口26と連通し、吹き出し口28とは連通していない。これにより、吸い込み口26の第3開口42aに誤ってガラス基板Sが接触し、第3開口42aがガラス基板Sにより塞がれても、吸気部34から気体を吸い込んで吹き出し口28から吹き出すことができる。このため、ガラス基板Sが吸い込み口26に接触しにくくなる。
【0021】
(4)ファンの構成
ファン24は、その回転中心が吸い込み口26と同芯に配置されている。ファン24は、例えば、シロッコファン、ターボファン、及びプロペラファン等を用いた回転ファン部50を有している。この実施形態では、回転ファン部50は、ターボファンに比べて風量が多いシロッコファンを用いているが、その他の形態のものでもよい。また、ファン24は、回転ファン部50を回転駆動するファンモータ52と、ファンモータ52を固定するファンケース54と、を有している。ファンモータ52は、例えば、モータ軸52aがファンケース54に固定された軸固定形のモータである。回転ファン部50はファンモータ52のモータケース52bに固定されている。ファンケース54は、平面視J字状であり、第2部材40cに固定されている。ファン24は吸い込み部54aが吸い込み口26に対向してファンケース54の下面に配置され、吹き出し部54bが吹き出し口28に連通してファンケース54の側部に配置されている。なお、ファン24において、吸い込み側と吹き出し側とを区分けできるものであれば、ファンケース54はなくてもよい。
【0022】
(5)距離センサの構成
距離センサ32は、ケース本体40の対向する二辺にそれぞれ間隔を隔てて4つ配置されている。距離センサ32は、例えばレーザ光等の光をガラス基板Sに照射してその反射光によりガラス基板Sとの距離を検出可能なものである。
(6)ファン制御部の構成
ファン制御部30は、例えば、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを備えている。ファン制御部30は、4つの距離センサ32での測定結果の距離が一定になるようにファン24のファンモータ52の回転速度を制御する。
【0023】
図5に示すように、ファン制御部30には、距離センサ32と、外部通信部36と、ファンモータ52と、が接続されている。外部通信部36は、無線、有線等の通信手段(例えば、IEEE 802.15.1やIEEE 802.15.4で規定される無線通信規格)で外部装置と通信可能なものである。この実施形態では、ファン制御部30は、外部通信部36を介して移載装置10の制御を行う移載制御部60と通信可能である。移載制御部60もファン制御部30と同様な1又は複数のマイクロコンピュータを有している。移載制御部60には、外部通信部36を含む外部装置と通信可能な外部通信部62と、移載ロボット12と、が接続されている。
【0024】
(7)移載制御部の構成
移載制御部60は、ファン制御部30にガラス基板Sを保持する保持命令及びガラス基板Sの保持を解除する解除命令を出力する。移載制御部60には、外部通信部62を介して工場内の上位コントローラ(図示せず)から搬送指令が与えられる。この搬送指令には、ガラス基板Sの質量のデータが含まれている。なお、搬送指令に表面粗さデータ、物品のたわみやすさのデータを含んでもよい。これは表面粗さが粗いと気体による吸着力が弱くなるからである。また、物品がたわみやすいと、物品を慎重に吸着する必要があるからである。この搬送指令に含まれるデータは、移載制御部60が搬送指令を受け取ると、保持命令を出力する前にファン制御部30に外部通信部62及び外部通信部36を介して送信される。ファン制御部30は、質量のデータを受け取ると、質量のデータを加味してファンモータ52を制御する。移載制御部60は、ガラス基板Sに移載アーム14が配置されると、ファン制御部30にガラス基板Sを保持する保持命令及び保持を解除する解除命令を送信する。この保持命令及び解除命令を受け取ってファン制御部30はファンモータ52を制御する。
【0025】
(8)ファン制御部の制御動作
次に、ファン制御部30の制御動作を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
ファン制御部30に電源が投入されると、ステップS1で初期設定がなされる。この初期設定では、各種の変数及びフラグがリセットされる。ステップS2では、搬送指令に含まれる質量データを受信したか否かを判断する。これらのデータを受信してない場合は、ステップS3に移行する。ステップS3では、保持命令を受信したか否かを判断する。保持命令を受信していない場合は、ステップS4に移行する。ステップS4では、解除命令を受信したか否かを判断する。解除命令を受信していない場合は、ステップS2に戻る。
【0026】
質量データを受信すると、ステップS2からステップS10に移行する。ステップS10では、受信した質量データに基づいて、ファンモータ52の回転速度Vs及びガラス基板Sとの距離Lsを設定する。この2つの設定値は、質量データに応じて、例えば、マップデータの形でマイクロコンピュータ内の内部メモリに記憶されている。例えば、回転速度Vsは、質量が大きいほど、速度が速くなるように設定されている。また、距離Lsを質量が大きいほど、距離が大きくなるように設定してもよい。
ステップS10で設定が終わるとステップS3に移行する。
【0027】
保持命令を受信すると、ステップS3からステップS11に移行する。ステップS11では、すでにファンモータ52が正転(すなわち、吸い込み口26から気体を吸い込む、図2に矢印で示す反時計回りの回転方向)しているか否かを判断する。ファンモータ52が正転していない場合は、ステップS10に移行して、ファンモータ52を正転させ、ステップS13に移行し、ファンモータ52が正転している場合は、ステップS13に移行する。ファン24が正転すると、気体が図2及び図3に白抜き矢印で示すように流れ、吸い込み口26から気体が吸い込まれ、吹き出し口28から吹き出される。このとき、吹き出し口28らか吹き出される風の力と、ガラス基板Sの重量と、反発力と、の和が、吸い込み口26から吸い込まれる風の力と等しくなると、非接触でガラス基板を物品保持装置20により保持できる。したがって、吸い込み口26や吹き出し口28からの風が斜めになると、風量は同じでも風の力は弱くなる。
【0028】
ステップS13では、距離センサ32で計測された距離Lを取り込む。このとき、4つの距離センサ32の平均値を計測距離Lとする。なお、4つの距離センサ32の値が所定以上(例えば2mm以上)離反している場合は、ガラス基板Sが傾いていると判断して以降の処理を中断してファンモータ52を逆転させ保持を解除してもよい。
【0029】
ステップS14では、計測距離LがステップS10で設定された距離Lsから制御距離dL(例えば1mm)を減算した減算距離未満か否か、つまりガラス基板Sが物品保持装置20に接近しすぎているか否かを判断する。ステップS15では、計測距離Lが設定された距離Lsに制御距離dL(例えば1mm)を加算した加算距離を超えているか否か、つまりガラス基板Sが物品保持装置20から離反しすぎているか否かを判断する。
【0030】
計測距離Lが減算距離未満のときは、ステップS14からステップS16に移行する。ステップS16では、ファンモータ52の回転速度Vを設定された回転速度Vsから速度dVだけ減少させる。例えば、ファンモータ52をディーティ比によりPWM(パルス幅変調)制御する場合は、デューティ比を例えば5%程度下げる。
【0031】
計測距離Lが加算距離を超えているときは、ステップS15からステップS17に移行する。ステップS17では、ファンモータ52の回転速度Vを設定された回転速度Vsから速度dVだけ増加させる。例えば、ファンモータ52をディーティ比によりPWM(パルス幅変調)制御する場合は、デューティ比を例えば5%程度上げる。これらの処理が終了すると、ステップS4に移行する。
【0032】
解除命令を受信すると、ステップS4からステップS18に移行する。ステップS18では、ファンモータ52を所定時間逆転させる。これにより、吸い込み口26から気体が吹き出してガラス基板Sの保持が解除される。
【0033】
(9)特徴
物品保持装置20は、ガラス基板Sを非接触で保持する装置である。物品保持装置20は、ガラス基板Sに対向可能な物品対向部42と内部に設けられた空間40aとを有するケース22と、ファン24と、吸い込み口26と、吹き出し口28と、を備えている。ファン24は、ケース22の空間40aに配置され、気体を吸い込んで吹き出す少なくとも1つのものである。吸い込み口26は、物品対向部42に配置され、ファン24の吸い込み側と連通するものである。吹き出し口28は、吸い込み口26と異なる位置で物品対向部42に対向して配置され、ファン24の吹き出し側と連通するものである。
この物品保持装置20では、ガラス基板Sをケース22の物品対向部42に対向させた状態でファン24を運転すると、吸い込み口26から気体を吸い込んで吹き出し口28から気体が吹き出される。この吸い込んだ気体によりガラス基板Sを保持し、吹き出した気体によりガラス基板Sをケース22から離反させる。このとき、ファン24の回転数を制御して流量を適宜に調整することより、ケース22に非接触でガラス基板Sを保持できる。ここでは、物品保持装置20に設けたファン24により生じる気体の流量を制御することによりガラス基板Sを保持している。このため、保持装置の周囲にある気体を用いて物品を保持できる。したがって、大量の気体を必要とすることなく、非接触でガラス基板Sを保持できるようになる。
【0034】
物品対向部42は、ガラス基板Sに対向可能な平面を有し、吸い込み口26は、平面に配置され、吹き出し口28は、平面の吸い込み口26の周囲に配置されている。
ここでは、ガラス基板Sを保持するのに寄与する吸い込み口26の周囲にガラス基板Sを離反させる吹き出し口28が設けられているので、簡単な構造でガラス基板Sを安定して保持できる。
【0035】
吸い込み口26は、ファン24の吸い込み側に対向して配置されている。
ここでは、ガラス基板Sに対向して配置された吸い込み口26がファン24の吸い込み側に対向して配置されるので、ファン24が吸い込み口26を介してファン24に対向して配置される。このため、ファン24の保持するための吸い込み側での抵抗が小さくなり、吸い込み流量の損失が減少し、ガラス基板Sの保持を確実に行える。また、吹き出し口28及び吸い込み口26の構成がコンパクトになる。
【0036】
物品保持装置20は、吸い込み口26と連通し、平面と異なる位置に開口する吸気部34をさらに備えている。
このため、吸い込み口26にガラス基板Sが近づいて吸い込み口26からの吸い込み流量が減少しても、吸気部34からファン24に気体を供給できるので、ガラス基板Sが平面に吸着しにくくなる。
【0037】
吸気部34は、平面に沿って配置されている。
ここでは、吸気部34が平面に沿って配置されているので、簡単な構造でガラス基板Sの平面への吸着を防止できる。
【0038】
物品保持装置20は、ケース22に配置され、ガラス基板Sと平面との距離を把握可能な距離センサ32をさらに備えている。
このため、ガラス基板Sとケース22との距離を把握できるので、距離に応じて送風機を制御することにより、ガラス基板Sとケース22との隙間を適切に管理できる。
【0039】
(10)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
(A)前記実施形態では、収納部の一例としてケースを示したが、収納部は、内部に吸い込み口、吸い込み口から吸い込んだ気体の通路、ファンの配置場所、吹き出す気体の通路、及び吹き出し口までが囲まれた空間を有するものであればどのような形態でもよく、独立して設けなくてもよい。たとえば、移載装置10の移載アームに空間を形成して収納部としてもよい。また、収納部の形状は、直方体の筐体に限定されず、複雑な形状の一部に設けられた空間、薄い円柱状のような形状でもよい。
【0041】
(B)前記実施形態では、物品としてガラス基板を例示したが、物品は硬質の平面を有するものであれば、どのようなものでもよい。ただし、非接触で物品を保持できるので、物品との接触による汚染を嫌う、例えば、半導体基板や精密部品の保持に好適である。
【0042】
(C)前記実施形態では、距離把握手段として距離センサを例示したが、本発明はこれに限定されない。
図7において、ファン制御部30には、距離把握手段として圧力センサ38が接続されている。その他の構成は、図5に示す前記実施形態と同様である。圧力センサ38は、ファン24の吸い込み側又は吹き出し側に配置されており、負圧又は正圧を検出する。この実施形態では、圧力センサ38は、吸い込み側に配置され負圧を検出している。このように圧力センサ38により、距離を把握すれば、特定のガラス基板のように光により距離を検出しにくい物品であっても精度良く物品との距離を計測できる。
【0043】
圧力センサ38で距離を計測する場合、図6のステップS13の計測距離の取り込みに代えて計測された圧力(負圧)を取り込み、ステップS14及びステップS15の判断ステップで、計測された負圧と設定された負圧とを比較する。そして、負圧の大小によりガラス基板Sとの距離を把握できる。具体的には、負圧が設定圧力より大きい場合は、ガラス基板Sが物品保持装置20に近づいているので、ファンモータ52の回転速度を前記実施形態と同様に下げる。また、負圧が設定圧力より小さい場合は、ガラス基板Sが物品保持装置20から離反しているので、ファンモータ52の回転速度を前記実施形態と同様にあげる制御を行う。このように、距離把握手段は、距離を直接計測する距離センサに限定されない。なお、設定圧力は、前記実施形態と同様に、質量データに応じて設定すればよい。
【0044】
(D)前記実施形態では、吸気部34をケース22の側部に設けたが、吸気部は吸い込み口と連通し、吹き出し口と連通しない位置であればどのような位置にあってもよい。
【0045】
図8において、物品保持装置120の吸気部134は、ファン124のファンモータ152のモータ軸152aの中心にモータ軸152aを貫通して形成されている。ケース22の第1部材40bの上面にはモータ軸152aに対向して吸気口134aが開口している。したがって、物品対向部は設けられていない。このため、前記実施形態の第1開口が吸い込み口26となり、第2開口が吹き出し口28となっている。また、吹き出し口28との連通を防止する間座部材144が、ケース22の第1部材40bの吸気口134aとモータ軸152aとの間に配置されている。このような構成でも、前記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0046】
(E)前記実施形態では、吸い込みと吹き出しとを1台のファン24で行っていたが、複数台のファンで行ってもよい。この場合、吸い込み用と吹き出し用とを分けてもよい。
図9において、物品保持装置220は、吸い込みファン224aと、複数(例えば、4つ)の吹き出しファン224bと有している。吸い込みファン224aは、ケース222の中心に配置された吸い込み口226に対向して配置されている。吹き出しファン224bは、吸い込み口226の周囲に周方向に間隔を隔てて配置された複数の吹き出し口228に対向して配置されている。吸い込みファン224aの吹き出し側には、排気通路235が形成され、吹き出しファン224bの吸い込み側には、吸気通路(吸気部の一例)234が形成されている。
【0047】
図10において、物品保持装置320は、吸い込みファン324aと、複数(例えば、4つ)の吹き出しファン324bと有している。ケース322内の吸い込みファン324aの周囲には、吸い込みファン324aを囲むように矩形筒形状に隔壁322aが形成されている。吸い込みファン324aは、ケース322の中心に配置された吸い込み口326に対向して配置されている。吹き出しファン324bは、吹き出し口328ではなく、隔壁322aに形成された複数(例えば4つ)の吹き出し経路322bに設けられている。
【0048】
このような構成でも、前記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、吸い込みファン224a及び吸い込みファン324aと吹き出しファン224b及び吹き出しファン324bとが独立して設けられているので、吸い込み風量と吹き出し風量とを個別に制御でき、精度が高い保持制御を行える。なお、吸い込みファンと吹き出しファンとを用いる場合、前述したように、吸い込みファンから吸い込まれる風の力が、吹き出しファンから吹き出される風の力と、物品の重量と、反発力と、の和と等しくなるように制御する。
なお、複数のファンを用いる場合、物品が傾いたときに、複数のファンの回転量を制御して傾きを修正するようにしてもよい。
【0049】
(F)前記実施形態では、ワッシャ形状の間座部材44により吸気部34を構成したが、本発明はこれに限定されない。
図11及び図12には、複数(たとえば3つ)の貫通孔444aを有する扇形状の複数(たとえば4個)の間座部材444及び複数の貫通孔544aを有する円弧状の複数(たとえば4個の)間座部材544を物品対向部42とケース22との間に配置している。この間座部材444及び間座部材544の間に、吸気部434及び吸気部534を設けている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、物品を非接触で保持する物品保持装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 移載装置
12 移載ロボット
12a フレーム部
12b 第1アーム部
12c 第2アーム部
14 移載アーム
14a フォーク
14b フォーク
20 物品保持装置
22 ケース(収納部)
24 ファン
26 吸い込み口
28 吹き出し口
30 ファン制御部
32 距離センサ
34 吸気部
36 外部通信部
38 圧力センサ
40 ケース本体
40a 空間
40b 第1部材
40c 第2部材
40d 第1開口
40e 第2開口
42 物品対向部
42a 第3開口
42b 第4開口
44 間座部材
44a 貫通孔
50 回転ファン部
52 ファンモータ
52a モータ軸
52b モータケース
54 ファンケース
54a 吸い込み部
54b 吹き出し部
60 移載制御部
62 外部通信部
120 物品保持装置
124 ファン
134 吸気部
134a 吸気口
144 間座部材
152 ファンモータ
152a モータ軸
220 物品保持装置
222 ケース
224a 吸い込みファン
224b 吹き出しファン
226 吸い込み口
228 吹き出し口
234 吸気通路
235 排気通路
320 物品保持装置
322 ケース
322a 隔壁
322b 吹き出し経路
324a 吸い込みファン
324b 吹き出しファン
326 吸い込み口
328 吹き出し口
434 吸気部
444 間座部材
444a 貫通孔
534 吸気部
544 間座部材
544a 貫通孔
C カセット
S ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を非接触で保持する物品保持装置であって、
前記物品に対向可能な物品対向部及び内部に設けられた空間を有する収納部と、
前記収納部の前記空間に配置され、気体を吸い込んで吹き出す少なくとも1つの送風機と、
前記物品対向部に配置され、前記送風機の吸い込み側と連通する吸い込み口と、
前記吸い込み口と異なる位置で前記物品対向部に配置され、前記送風機の吹き出し側と連通する吹き出し口と、
を備えた物品保持装置。
【請求項2】
前記物品対向部は、前記物品に対向可能な平面を有し、
前記吸い込み口は、前記平面に配置され、
前記吹き出し口は、前記平面の前記吸い込み口の周囲に配置されている、請求項1に記載の物品保持装置。
【請求項3】
前記吸い込み口は、前記送風機の前記吸い込み側に対向して配置されている、請求項2に記載の物品保持装置。
【請求項4】
前記送風機の吸い込み側と連通し、前記平面と異なる位置に開口する吸気部をさらに備える、請求項2又は3に記載の物品保持装置。
【請求項5】
前記吸気部は、前記平面に平行に配置されている、請求項4に記載の物品保持装置。
【請求項6】
前記収納部に配置され、前記物品と前記収納部との距離を把握可能な距離把握手段をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の物品保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−258292(P2010−258292A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108096(P2009−108096)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】