説明

物品搬送装置

【課題】ファンを用いて物品を搬送する物品搬送装置において、物品に関わる検出器を可及的に減らせるようにする。
【解決手段】移載装置1、非接触でガラス基板を搬送する装置である。移載装置は、ケース22と、ファン24と、吹き出し口28と、電流値測定部と、ファン制御部30と、を備えている。ケース22は、ガラス基板に対向する物品対向部42を有している。ファン24は、ファンケース54の内部に設けられている。吹き出し部は、物品対向部42に設けられ、ファン24との間で空気を流す。電流値測定部は、ファン24の負荷を検出する。ファン制御部30は、電流値測定部の検出結果によりファン24を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、特に、ファンを用いて物品を接触および非接触の少なくともいずれかで搬送する物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板及びガラス基板等の物品を保持する場合、非接触で物品を搬送する物品搬送装置が半導体製造工場や液晶製造工場で広く用いられている。例えば、ファンを用いた浮上搬送により物品を搬送する物品搬送装置が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の物品搬送装置は浮上用のファンユニットと、推進用のファンユニットと、を有している。各ファンユニットは、上部に吹き出し口を有する筐体と、筐体内に配置されたファンと、を有している。また、物品の位置を検出するための搬送物センサが搬送経路に配置されている。搬送物センサとしては、例えば超音波センサおよびガラス基板の有無に応じて異なる誘電率を測定するセンサ等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−75499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のファンを用いて物品を浮上搬送する物品搬送装置では、物品の位置等検出するために検出器が必要になる。また、ファンを用いて非接触で物品を搬送する場合、物品との距離を検出するための検出器を用いる場合もある。このように、ファンを用いて物品を搬送する場合、物品に関わる種々の検出器が必要になる。
【0005】
本発明の課題は、ファンを用いて物品を搬送する物品搬送装置において、物品に関わる検出器を可及的に減らせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る物品搬送装置は、接触及び非接触の少なくともいずれかで物品を搬送する物品搬送装置である。物品搬送装置は、筐体と、ファンと、通気部と、負荷検出部と、ファン制御部と、を備えている。筐体は、物品に対向する物品対向部を有する。ファンは、筐体の内部に設けられる。通気部は、物品対向部に設けられ、ファンとの間で空気を流す。負荷検出部は、ファンの負荷を検出する。ファン制御部は、負荷検出部の検出結果によりファンを制御する。
この物品搬送装置では、ファンが回転することにより、ファンから生じる空気の流れの作用により、物品が保持される或いは物品が浮上して物品が搬送される。また、ファンの回転によりその負荷が負荷検出部により検出され、その検出された負荷に応じてファンが制御される。例えば、ファンによる浮上搬送の場合は、負荷検出部の検出結果により物品の有無を検出できる。また、ファンの空気の流れにより物品を接触または非接触で保持する場合には、物品からの距離、物品の有無等を負荷検出部の検出結果により検出できる。
この検出結果により、ファンが制御される。例えば、浮上搬送の場合は、複数のファンを並べて配置したときに、搬送方向上流側のファンに物品が位置しているときに、ファン制御部が搬送方向下流側のファンの回転速度を待機状態から浮上可能状態に上昇させる。また、物品を保持する場合は、物品対向部からの距離が一定になるようにファン制御部がファンの回転速度を制御する。ここでは、負荷検出部の検出結果により物品に関するデータを得ることができるので、物品に関する検出器を可及的に減らすことができる。
【0007】
負荷検出部は、ファンに流れる電流値を測定する電流値測定部を有してもよい。
これにより、ファンを駆動するモータに流れる電流値を測定してファンの負荷を容易に検出できる。
【0008】
ファン制御部は、負荷検出部が検出した負荷により物品対向部と物品との距離を算出する距離算出部を有する。
これにより、負荷の検出により物品対向部と物品との距離を算出して、例えば、物品対向部と物品との距離が一定になるようにファンを制御することができる。このため、レーザ距離計等の距離検出用の高価な検出器が不要になり、距離検出専用の検出器を減らすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷検出部の検出結果により物品に関するデータを得ることができるので、物品に関する検出器を可及的に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による物品搬送装置である移載装置の斜視図。
【図2】その物品保持装置の底面図。
【図3】その側面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】ファン制御部のブロック図。
【図6】ファン制御部の制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)全体構成
図1において、本発明の一実施形態による物品搬送装置である移載装置10は、例えば、大型液晶用のガラス基板SをカセットCと図示しない搬送装置との間で移載する。移載装置10は、例えばスカラロボットからなる移載ロボット12と、例えば4つの物品保持装置20と、を備えている。カセットCは、内部に複数段の棚部Caを有している。各棚部Caは、左右に間隔を隔てて配置された3つの棚板Cbを有している。
【0012】
移載ロボット12は、フレーム部12aと、フレーム部12aに装着された第1アーム部12bと、第1アーム部12bに装着された第2アーム部12cと、を有している。また、移載ロボット12は、第2アーム部12cの先端に装着された移載アーム14を有している。この移載アーム14の先端に4つの物品保持装置20が装着されている。
【0013】
第1アーム部12bは、フレーム部12aに昇降かつ昇降軸E回りに旋回自在に装着されている。第2アーム部12cは、第1アーム部12bの先端に昇降軸Eと平行な軸回りに旋回自在に装着されている。第2アーム部12cの先端に移載アーム14が装着されている。移載アーム14は、第2アーム部12cの先端に昇降軸Eと平行な軸回り旋回自在に装着されている。したがって、移載ロボット12は、平行な3つの関節軸と1つの昇降軸Eとを有している。
【0014】
移載アーム14は、第2アーム部12cの先端に所定高さ離反して配置されている。これにより、物品保持装置20及びそれに保持されるガラス基板Sをかわせるようになっている。移載アーム14は、この実施形態では、二股に分かれるフォーク14a及びフォーク14bを有している。フォーク14a及びフォーク14bの下面に2つの物品保持装置20が間隔を隔てて固定されている。フォーク14a及びフォーク14bは、カセットCの棚板Cbの間に配置可能である。
【0015】
(2)物品保持装置
物品保持装置20は、物品としてのガラス基板Sの上面を非接触で保持するものである。物品保持装置20は、図2〜図4に示すように、装置本体21を備えている。装置本体21は、ガラス基板Sに対向可能なケース22(筐体の一例)と、ケース22内に配置されたファン24と、吸い込み口26(通気部の一例)と、吹き出し口28(通気部の一例)と、を有している。また、物品保持装置20は、ケース22の内部にファン24を制御するファン制御部30と、吸い込み口26と連通する吸気部34と、負荷検出部としての電流値測定部55と、をさらに備えている。
【0016】
(3)ケース
ケース22は、内部にファン24と、ファン制御部30と、後述するモータ駆動回路53と、が設けられている。ファン制御部30とモータ駆動回路53は、ケース22内に設けられた制御ケース33に収納されている。ケース22は、金属又は合成樹脂製であり、ガラス基板Sに対向する平面を有している。ケース22は、概ね直方体の箱形で構成されるケース本体40と、ケース本体40に間隔を隔てて固定された物品対向部42と、を有している。
【0017】
ケース本体40の上面は、フォーク14a又はフォーク14bに固定されている。ケース本体40は、下方が正方形に開口し内部に空間40aを有する第1部材40bと、第1部材40bの開口を塞ぐ第2部材40cと、を有している。第1部材40bは、例えば、金属薄板の折り曲げ又はプレス成形して形成された枠状の部材である。第2部材40cは、正方形の板状部材であり、第1部材40bに例えばねじや接着等の適宜の固定手段により固定されている。第2部材40cは、第1部材40bの開口の内側に嵌合している。第2部材40cは、ガラス基板Sに対向可能な平面を有し、平面の中心には、吸い込み口26を構成する円形の第1開口40dが形成されている。第1開口40dの周囲には、吹き出し口28を構成する円形の複数(例えば、18個)の第2開口40eが第1開口40dの中心を中心とする円周上に間隔を隔てて配置されている。ここで、複数の第2開口40eの面積の和は、同じ平面に第1開口40d及び第2開口40eを形成した場合、第1開口40dの面積の1/3以上2/3以下に設定されている。本実施形態では、外周側に吹き出し口28があり、内側の吸い込み口26に比べて吹き付ける風が外側に逃げることにより作用する力が小さくなる。このため、面積を小さくして吹き出し圧力を上げている。
【0018】
物品対向部42は、ガラス基板Sに対向する平面を有している。物品対向部42は、第2部材40cに間隔を隔てて配置された概ね正方形の板状部材である。物品対向部42は、主に吸気部34を構成するために設けられている。すなわち、ケース22との間の隙間が吸気部34となっている。物品対向部42の中心には、第1開口40dに対向して円形の第3開口42aが形成されている。第3開口42aは、第1開口40dと同径の孔であり、第3開口42aも吸い込み口26を構成している。第3開口42aの周囲には、複数の第2開口40eに対向して複数の第4開口42bが形成されている。第4開口42bは、第2開口40eと同径の孔であり、第4開口42bも吹き出し口28を構成している。第2開口40eと第4開口42bの配置部分には、吹き出し口28と吸気部34との連通を防止するための複数の間座部材44が配置されている。複数の間座部材44は、第2開口40e及び第4開口42bと同芯に配置されている。間座部材44は座金形状の部材であり、第2開口40e及び第4開口42bと同径の貫通孔44aを有している。吸気部34は、前述したようにケース本体40と物品対向部42との間の隙間に配置されている。したがって、吸気部34は、ケース22の下面ではなく下面に沿って配置され側部に開口している。吸気部34は、吸い込み口26と連通し、吹き出し口28とは連通していない。これにより、吸い込み口26の第3開口42aに誤ってガラス基板Sが接触し、第3開口42aがガラス基板Sにより塞がれても、吸気部34から気体を吸い込んで吹き出し口28から吹き出すことができる。このため、ガラス基板Sが吸い込み口26に接触しにくくなる。
【0019】
(4)ファン
ファン24は、その回転中心が吸い込み口26と同芯に配置されている。ファン24は、例えば、シロッコファン、ターボファン、及びプロペラファン等を用いた回転ファン部50を有している。この実施形態では、回転ファン部50は、ターボファンに比べて風量が多いシロッコファンを用いているが、その他の形態のものでもよい。また、ファン24は、回転ファン部50を回転駆動するファンモータ52と、ファンモータ52を固定するファンケース54と、を有している。ファンモータ52は、例えば、モータ軸52aがファンケース54に固定された軸固定形の直流ブラシレスモータである。回転ファン部50はファンモータ52のモータケース52bに固定されている。ファンケース54は、平面視J字状であり、第2部材40cに固定されている。ファン24は吸い込み部54aが吸い込み口26に対向してファンケース54の下面に配置され、吹き出し部54bが吹き出し口28に連通してファンケース54の側部に配置されている。なお、ファン24において、吸い込み側と吹き出し側とを区分けできるものであれば、ファンケース54はなくてもよい。
【0020】
(5)電流値測定部
電流値測定部55は、モータ駆動回路53に設けられている。モータ駆動回路53は、ファンモータ52を例えばPWM(パルス幅変調 Pulse Width Modulation)駆動するFET(電界効果トランジスタ:Field Effect Transistor)を有している。また、モータ駆動回路53は、PWM駆動の際にファンモータ52に流れる電流値を測定する電流値測定部55を有している。
【0021】
(6)ファン制御部
ファン制御部30は、例えば、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを備えている。ファン制御部30は、ソフトウェアで実現される機能構成として距離算出部32を有している。距離算出部32は、電流値測定部55で測定されたファンモータ52に作用する負荷を示す電流値によりガラス基板Sとの距離を算出する。ファン制御部30は、算出された距離が一定になるようにファン24のファンモータ52の回転速度をフィードバック制御する。
【0022】
図5に示すように、ファン制御部30には、外部通信部36と、ファンモータ52が接続されたモータ駆動回路53と、が接続されている。外部通信部36は、無線、有線等の通信手段(例えば、IEEE 802.15.1やIEEE 802.15.4で規定される無線通信規格)で外部装置と通信可能なものである。この実施形態では、ファン制御部30は、外部通信部36を介して移載装置10の制御を行う移載制御部60と通信可能である。移載制御部60もファン制御部30と同様な1又は複数のマイクロコンピュータを有している。移載制御部60には、外部通信部36を含む外部装置と通信可能な外部通信部62と、移載ロボット12と、が接続されている。
【0023】
(7)移載制御部
移載制御部60は、ファン制御部30にガラス基板Sを保持する保持命令及びガラス基板Sの保持を解除する解除命令を出力する。移載制御部60には、外部通信部62を介して工場内の上位コントローラ(図示せず)から搬送指令が与えられる。この搬送指令には、ガラス基板Sの質量のデータ及び移載ロボット12の動作位置毎の加速度を含む動作パターンのデータが含まれている。なお、搬送指令に表面粗さデータ、物品のたわみやすさのデータを含んでもよい。これは表面粗さが粗いと気体による吸着力が弱くなるからである。また、物品がたわみやすいと、物品を慎重に吸着する必要があるからである。この搬送指令に含まれるデータは、移載制御部60が搬送指令を受け取ると、保持命令を出力する前にファン制御部30に外部通信部62及び外部通信部36を介して送信される。ファン制御部30は、これらのデータを受け取ると、それらのデータを加味してファンモータ52を制御する。移載制御部60は、ガラス基板Sに移載アーム14が配置されると、ファン制御部30にガラス基板Sを保持する保持命令及び保持を解除する解除命令を送信する。この保持命令及び解除命令を受け取ってファン制御部30はファンモータ52を制御する。
【0024】
(8)ファン制御部の制御動作
次に、ファン制御部30の制御動作を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
ファン制御部30に電源が投入されると、ステップS1で初期設定がなされる。この初期設定では、各種の変数やフラグがリセットされる。ステップS2では、搬送指令に含まれる質量データを受信したか否かを判断する。質量データを受信していない場合は、ステップS3に移行する。ステップS3では、保持命令を受信したか否かを判断する。保持命令を受信していない場合は、ステップS4に移行する。ステップS4では、解除命令を受信したか否かを判断する。解除命令を受信していない場合は、ステップS2に戻る。
【0025】
質量データを受信すれば、ステップS2からステップS10に移行する。ステップS10では、受信した質量データに基づいて、ファンモータ52の回転速度Vs及びガラス基板Sとの距離Lsを設定する。この2つの設定値は、質量データに応じて、例えば、マップデータの形でマイクロコンピュータ内の内部メモリに記憶されている。例えば、回転速度Vsは、質量が大きいほど、速度が速くなるように設定されている。また、距離Lsを質量が大きいほど、大きくなるように設定してもよい。
ステップS10で設定が終わるとステップS3に移行する。
【0026】
保持命令を受信すれば、ステップS3からステップS11に移行する。ステップS11では、すでにファンモータ52が正転(すなわち、吸い込み口26から吸い込む回転方向)しているか否かを判断する。ファンモータ52が正転していない場合は、ステップS12に移行して、ファンモータ52を正転させ、ステップS13に移行する。ファンモータ52が正転している場合は、ステップS13に移行する。ファン24が正転(図2に矢印で示す反時計回り)することにより、気体が図2及び図3に白抜き矢印で示すように流れ、吸い込み口26から気体が吸い込まれ、吹き出し口28から吹き出される。このとき、吹き出し口28らか吹き出される風の力と、ガラス基板Sの重量と、反発力と、の和が、吸い込み口26から吸い込まれる風の力と等しくなると、非接触でガラス基板を物品保持装置20により保持できる。したがって、吸い込み口26や吹き出し口28からの風が斜めになると、風量は同じでも風の力は弱くなる。
【0027】
ステップS13では、電流値測定部55の測定値を取り込んで得られた距離算出部32で算出された距離Lを取り込む。ここで、電流値で距離を算出できる理由は、ファン24は、取り込んだ空気を吹き出す際に空気を押し出すため、負荷が発生する。ファン24とガラス基板Sとの距離が小さくなると、取り込む空気の量が減るとともに、押し出す空気の量も減る。このため、負荷すなわち空気抵抗が小さくなり、電流値が小さくなるからである。この距離算出部32による距離の算出は、単に電流値から距離を算出するのではなく、ガラス基板の仕様毎に予め電流値と距離との関係を調べておき、その結果をマップデータの形で記憶して読み出すようにしてもよい。これにより、制御の高速化に対応できる。
【0028】
ステップS14では、算出距離LがステップS10で設定された距離Lsから制御距離dL(例えば1mm)を減算した減算距離未満か否か、つまりガラス基板Sが物品保持装置20に接近しすぎているか否かを判断する。算出距離Lが減算距離以上のときは、ステップS14からステップS15に移行する。ステップS15では、算出距離Lが設定された距離Lsに制御距離dL(例えば1mm)を加算した加算距離を超えているか否か、つまり、ガラス基板Sが物品保持装置20から離反しすぎているか否かを判断する。
【0029】
算出距離Lが減算距離未満のときは、ステップS14からステップS16に移行する。ステップS16では、ファンモータ52の回転速度Vを設定された回転速度Vsから速度dVだけ減少させた値にする。例えば、モータ駆動回路53に対して与えるデューティ比を例えば5%程度下げる。
【0030】
算出距離Lが加算距離を超えているときは、ステップS15からステップS17に移行する。ステップS17では、ファンモータ52の回転速度Vを設定された回転速度Vsから速度dVだけ増加させた値にする。例えば、ファンモータ52をデューティ比によりPWM(パルス幅変調)制御する場合は、例えば、モータ駆動回路53に対して与えるデューティ比を例えば5%程度あげる。これらの処理が終了すれば、ステップS4に移行する。
【0031】
解除命令を受信すれば、ステップS4からステップS18に移行する。ステップS18では、モータ駆動回路53を介してファンモータ52を所定時間逆転させる。これにより、吸い込み口26から気体が吹き出してガラス基板Sの保持が解除される。
【0032】
(9)特徴
物品搬送装置としての移載装置10は、非接触でガラス基板Sを搬送する。物品搬送装置は、移載ロボット12と、物品保持装置20と、を有している。物品保持装置20は、ケース22と、ファン24と、吸い込み口26および吹き出し口28と、電流値測定部55と、ファン制御部30と、を備えている。ケース22は、ガラス基板Sに対向する物品対向部42を有する。ファン24は、ケース22の内部に設けられる。吸い込み口26および吹き出し口28は、物品対向部42に設けられ、ファン24との間で空気を流す。電流値測定部55は、ファン24の負荷を検出する。ファン制御部30は、電流値測定部55の検出結果によりファンを制御する。
この移載装置10では、ファン24が回転することにより、ファン24から生じる空気の流れの作用により、ガラス基板Sが保持され、ガラス基板Sが搬送される。また、ファン24の回転によりその負荷が電流値測定部55により検出され、その検出された負荷に応じてファン24が制御される。具体的には、ガラス基板Sからの距離を電流値測定部55の検出結果により測定できる。
この検出結果により、ファン24が制御される。例えば、物品対向部42からの距離Lが一定になるようにファン制御部30がファン24の回転速度を制御する。ここでは、負荷検出部である電流値測定部55の検出結果によりガラス基板Sに関するデータを得ることができるので、ガラス基板Sに関する検出器、具体的には距離センサを可及的に減らすことができる。
【0033】
ファン制御部30は、電流値測定部55が測定した負荷(電流値)により物品対向部42とガラス基板Sとの距離Lを算出する距離算出部32を有する。
これにより、負荷の検出により物品対向部42とガラス基板Sとの距離Lを算出して、例えば物品対向部42とガラス基板Sとの距離Lが一定になるようにファン24を制御することができる。このため、レーザ距離計等の距離検出用の高価な検出器が不要になり、距離検出専用の検出器を減らすことができる。
【0034】
(10)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
(A)前記実施形態では、物品としてガラス基板を非接触で保持して搬送する物品搬送装置を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、物品を吸着して接触した状態で搬送する物品搬送装置にも本発明を適用できる。また、物品をファンにより浮上させて搬送する浮上搬送装置にも本発明を適用できる。
物品を吸着した状態で搬送する物品搬送装置では、筐体に通気部としての吸い込み口を設け、負荷検出部の検出結果により物品を保持したことを検出できる。これにより、例えば物品の搬送開始タイミングを制御できる。また、物品を浮上させて搬送する物品搬送装置では、筐体に通気部としての吹き出し口を設け、負荷検出部の検出結果により物品がファン上にあることが検出できる。これにより、例えば、搬送方向下流側にあるファンの回転速度を待機状態から浮上可能状態に上昇させる制御を行える。
【0036】
(B)前記実施形態では、ファン24の数がケース22内に1つであったが複数でもよい。
【0037】
(C)前記実施形態では、負荷検出部の検出結果により物品と物品対向部との距離を算出し、距離が一定になるように制御したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ファンモータの回転速度の低下により負荷を検出するようにしてもよい。特に、ブラシレスモータの場合、回転センサが内蔵されているものがあるため、内蔵された回転センサを利用してもよい。また、回転センサが内蔵されていない場合は、逆起電流の変化により回転速度を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ファンを用いて物品を搬送する物品搬送装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 移載装置
12 移載ロボット
12a フレーム部
12b 第1アーム部
12c 第2アーム部
14 移載アーム
14a フォーク
14b フォーク
20 物品保持装置
21 装置本体
22 ケース(筐体)
24 ファン
26 吸い込み口(通気部)
28 吹き出し口(通気部)
30 ファン制御部
32 距離算出部
33 制御ケース
34 吸気部
36 外部通信部
40 ケース本体
40a 空間
40b 第1部材
40c 第2部材
40d 第1開口
40e 第2開口
42 物品対向部
42a 第3開口
42b 第4開口
44 間座部材
44a 貫通孔
50 回転ファン部
52 ファンモータ
52a モータ軸
52b モータケース
53 モータ駆動回路
54 ファンケース
54a 吸い込み部
54b 吹き出し部
55 電流値測定部(負荷検出部)
60 移載制御部
62 外部通信部
C カセット
S ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触及び非接触の少なくともいずれかで物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品に対向する物品対向部を有する筐体と、
前記筐体の内部に設けられたファンと、
前記物品対向部に設けられ、前記ファンとの間で空気を流す通気部と、
前記ファンの負荷を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部の検出結果により前記ファンを制御するファン制御部と、
を備えた物品搬送装置。
【請求項2】
前記負荷検出部は、前記ファンに流れる電流値を測定する電流値測定部を有する、請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記ファン制御部は、負荷検出部が検出した負荷により前記物品対向部と前記物品との距離を算出する距離算出部を有する、請求項1または2に記載の物品搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131612(P2012−131612A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285465(P2010−285465)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】