物理的蒸着によるイオン性液体中の粒子の生成方法
ナノ粒子などの粒子を製造するための方法が提供される。該方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、および物理的蒸着により1種類もしくは複数の材料を該イオン性液体に誘導するか、または1種類もしくは複数の材料を該イオン性液体上に蒸着して、該イオン性液体中にナノ粒子を形成する工程を包含する。ナノ粒子を製造するための方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、該蒸着室を排気し、1および7ミクロンHgの範囲内の真空を形成する工程、ならびに1種または複数の材料を該イオン性液体に誘導するために該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、該イオン性液体中にナノ粒子を形成する工程を包含する。本発明の組成物は、イオン性液体および物理的蒸着により該イオン性液体中に形成されたナノ粒子を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年1月17日出願の米国仮特許出願第60/759,457号に対して優先権を主張し、この仮特許出願の全体を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、粒子の形成に一般的に関し、1つの特定の非限定的な実施形態において、イオン性液体中にナノ粒子を形成することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ナノ粒子は、その寸法がナノメートル(nm)で測定される微細粒子である。ナノ粒子が、電子のエネルギー準位の量子化が起こる程に十分に小さい(典型的に10nm未満)場合、半導体材料でできているナノ粒子を量子ドットと呼ぶ場合もある。
【0004】
ナノ粒子はバルク材料と原子または分子構造との間を効果的に橋渡しするため、多大な科学的関心が寄せられている。その寸法に関わらずバルク材料は一定の物理的特性を有するはずであるが、ナノスケールにおいては、これはしばしば当てはまらない。半導体粒子における量子閉込め、幾つかの金属粒子における表面プラズモン共鳴、および磁気材料における超常磁性などの寸法に依存する特性が観察される。生物医学、光学、および電子工学の分野における多種多様な潜在的用途のために、現在、ナノ粒子の研究は集中的な科学研究の領域である。
【0005】
現在、ナノ粒子は、溶液化学プロセスを使用して通常形成される。例えば、金ナノ粒子は、還元剤存在下で、テトラクロロ金酸を還元して生成できる。これにより、金イオンはイオン化されていない金原子に還元され、サブナノメートルの粒子の形で析出する。粒子が凝集するのを防ぐため、ナノ粒子の表面に粘着する安定化剤を普通加える。各種の有機配位子によってナノ粒子を機能化し、高度な機能の有機−無機ハイブリッドを形成することができる。
【0006】
ナノ粒子の形成には適切である一方、これらの現行の溶液化学プロセスには幾つかの欠点がある。例えば、プロセスの際に、多数の加熱および反応工程が必要とされる場合がある。さらに、必要な試薬の幾つかは作業者にとって有害な場合があり、よって作業するのが困難または危険な場合がある。更に、ナノ粒子が最終的に形成されると、通常分離されおよびパッキングされ、その結果、粒子が個々の粒子のままであるよりもむしろ凝集された状態になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、現行の方法に伴う少なくとも幾つかの問題を低減または取除くナノ粒子の作製方法を提供すれば、有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
粒子を製造するための方法が提供される。該方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、および物理的蒸着により1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中に粒子を提供する工程を包含する。
【0009】
ナノ粒子を製造するための方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、該蒸着室を排気し、1および7ミクロンHgの範囲内の真空を形成する工程、ならびに1種または複数の材料を該イオン性液体に誘導するために該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、該イオン性液体中にナノ粒子を形成する工程を包含する。
【0010】
本発明の組成物は、イオン性液体および物理的蒸着により該イオン性液体中に形成されたナノ粒子を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、「左」、「右」、「内部」、「外部」、「上」、「下」などの空間的または方向的な用語は、図面において示されるように本発明に関係する。しかしながら、本発明は様々な代替の方向性を想定し得ることが理解されるべきであり、したがって、そのような用語が限定としては考慮されるべきでない。更に、本明細書中で使用される場合、明細書および特許請求の範囲において使用される、寸法、物理的特徴、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表現する全ての数字は、用語「約」によって、全ての例において修飾されるように理解されるべきである。したがって、反対に示されない場合、以下の明細書および特許請求の範囲において記載される数値は、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変更できる。少なくとも、特許請求の範囲の権利範囲に対する均等論の適用を制限することを企図しておらず、各々の数値は、報告される有効数字の数を考慮して、通常の概数技法を適用することによって、少なくとも構成されるべきである。更に、本明細書において開示される全ての範囲は、範囲の最初および最後の値ならびにそこに含まれる任意および全ての部分範囲を包含するよう理解されるべきである。例えば、「1〜10」と言及される範囲は、最小値1と最大値10と(最小値1と最大値10とを含む)の間の任意および全ての部分範囲;即ち、最小値1以上で始まり最大値10以下で終わる全ての部分範囲、例えば、1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などを含むように考えられるべきである。更に、本明細書中で使用される場合、用語「の上に形成される」、「の上に蒸着される」、または「の上に提供される」は、上に形成、蒸着、または提供されることを意味するが、必ずしも表面と接触している必要はない。例えば、基材「の上に形成される」コーティング層は、その形成されたコーティング層と基材との間に配置される、同一または異なる組成物の他のコーティング層またはフィルムが1つまたは複数存在することを除外しない。本明細書中で使用される場合、用語「重合体」または「重合体の」は、オリゴマー、単独重合体、共重合体、およびターポリマー、例えば、2種以上の単量体または重合体から形成される重合体、を含む。さらに、本明細書において引用される発行された特許および特許出願などの、しかし限定されない全ての文書、ならびに全てのウェブサイトは、それらの全体が「参考として援用される」と考えられる。
【0012】
1つの非限定的な実施形態において、本発明は、物理的蒸着プロセスを使用した、室温においてイオン性液体(IL)中に、ナノ粒子などの、しかし限定されない粒子を生成する方法を提供する。1つの非限定的な実施形態において、従来のスパッタ蒸着装置または従来の電子ビーム蒸着装置などの従来の物理的蒸着装置の蒸着室中に、ILが導入される。蒸着室は排気され、1つまたは複数のカソードが使用されて、1種または複数の材料をIL上にスパッタ蒸着する。任意の従来のカソードを使用できる。適切なカソードとしては、ただし限定されることなく、僅かに数例を挙げれば、金属含有カソード、準金属含有カソード、および炭素カソードが挙げられる。ILは、400℃以下の温度で液体の塩である。本発明の実施に適切な非限定的なイオン性液体としては、カチオンおよびアニオンの組合せが挙げられる。カチオンとしては、一置換、二置換、および三置換されたイミダゾリウム;置換されたピリジニウム;置換されたピロリジニウム;テトラアルキルホスホニウム;テトラアルキルアンモニウム;グアニジニウム;イソウロニウム;およびチオウロニウムを挙げることができる。アニオンとしては、クロリド;ブロミド;ヨード;テトラフルオロボレート;ヘキサフルオロホスフェート;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(FAP);トリフルオロメタンスルホネート;トリフルオロアセテート;メチルスルフェート;オクチルスルフェート;チオシアネート;有機ボレート;およびp−トルエンスルホネートを挙げることができる。ILの具体的で非限定的な例としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMIM]PF6)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)が挙げられる。他の非限定的なILはドイツ国ケルン市のソルベントイノベーション社より入手でき、http://www.solvent−innovation.com/index_overview.htmに列記されている。更に他のILが、ドイツ国ダルムスタット市のメルク社より入手できる。カチオンおよびアニオンを変えることで多数のイオン性液体を生成でき、特定の用途に細かく調整できる。
【0013】
ILはまた、反応、再生利用および重合できる溶媒である。その結果、ILは産業において広範な用途を有し、例えば、触媒、合成、電気化学、医療、センサー、潤滑剤、および分離が挙げられる。さらに、ILは無視できる程の蒸気圧しか有しておらず、高温安定性を示す。これらの特性のために、例えば僅かに数例を挙げれば、アルコール、トルエン、塩化メチレンなどの一般的な有機溶媒と比較して、VOC(揮発性有機化合物)の観点から、ILは環境に優しい溶媒である。
【0014】
本発明においては、真空系において物理的蒸着(PVD)により生成される蒸気がIL上に蒸着される際にナノ粒子が生成されること、およびイオン性液体が粒子の安定した貯留体として作用することが見出された。以下の実施例では、蒸気を蒸着する方法として、マグネトロンスパッタリングを使用した。しかしながら、真空系で行われる物理的蒸着プロセスは、いずれでも粒子を生成するために使用できる。既知の技術に優る本発明の利点は、真空系において液体を収容できることであり、この系において液体は圧力に対し無視できる程の効果しか有していない。真空コーティングプロセスで要求される低いベース圧力および蒸着圧力は、系内に液体が存在していないかのように達成される。ILの他の利点は、IL自体が化学処理に使用される普遍的な溶媒であることである(IL’s in Chemical Processingについては、AlChE Journal、(2001年11月)、47巻、2384〜2389頁参照)。本発明のナノ粒子はIL中に取込まれ、よって、更なる処理のために媒体中に移送する工程を排除し、および/または多段階化学処理工程を排除する。さらに、蒸着される粒子の体積は蒸着圧力に比例し、よって、理想的には低い蒸着圧力が、汚染のない安定したプロセスを行うことのみならず、例えばナノ粒子径の範囲の所望の粒子径の範囲内の粒子を一貫して確実に生成することにも適することが示された。本明細書中で使用される場合、「粒子」または「ナノ粒子径の範囲」とは、500nm以下の最大寸法を有する粒子を意味し、例えば200nm以下の(例えば100nm以下の、または50nm以下の、または10nm以下の)、例えば0.1nm〜200nmの範囲内の、例えば0.5nm〜200nmの範囲内の、例えば1nm〜200nmの範囲内の粒子を意味する。蒸着プロセスは、50ミクロンHg以下の圧力で行われ、例えば20ミクロンHg以下で、10ミクロンHg以下などで、7ミクロンHg以下などで、5ミクロンHg以下で、または4ミクロンHg以下などで、3ミクロンHg以下などで、2ミクロンHg以下で、または1ミクロンHg以下などの圧力で行われる。理解されるように、1ミクロンは0.001トールと等しい。さらに、ILは蒸気圧を増加させる添加剤を一切必要とせず、粒子の凝集を防ぎ、および低い圧力で行うためのプロセスの能力を制限しない。粘度を増加させるが蒸気圧には影響しない添加剤も利用できる。最終的な液体の粘度を調節するために、異なる粘度のILを混合できる。
【0015】
以下の非限定的な実施例では、本発明の種々の様態が例示される。これらの実施例では、銅、銀、および酸化タングステンが、真空系においてイオン液体上にスパッタ蒸着された。真空系のベース圧力は10−6〜10−7トールの範囲内で、液体が導入された後も、従来の固体基材と認め得るほど異なって変化せず、イオン液体の無視できる蒸気圧が説明された。このことは、7ミクロンHg以下の圧力による蒸着を可能とした。蒸着の最中に、圧力に変化はなかった。液体中への蒸着の結果、ナノ粒子が液体中に形成された。
【0016】
本発明を例示するために、幾つかの材料を作製および特性解析する方法を、以下に詳細に説明する。点眼器を使用して透明フロートガラス基材の表面をイオン液体(IL)で濡らし、1ミリメートル未満の深さで約1.5インチ(3.8cm)の正方形を覆うことにより、試料を調製した。表面上に液体を広げるのを助けるため、へらを使用した。ILを載せたガラス基材は、3インチ(7.6cm)の正方形であった。次いで基材を搬送板上に置き、エアコテメスカル社ILS 1600真空塗工機の搬入固定台中に置き、蒸着室に入れる前に排気し、10−6トール未満のベース圧力に設定した。全てのコーティング物を、1および7ミクロンHgの圧力の間でDCマグネトロンスパッタリングにより蒸着させた。基材は、120インチ/分(3m/分)の速度でスパッタリングターゲット下を移動させた。ILを載せた試料が蒸着室に入った後、または蒸着プロセスの最中に、圧力に変化はなかった。他に示さない限り、テンコール社P1触針式表面形状測定装置を使用してコーティング厚さを測定した。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
この実施例は、銅ナノ粒子の形成を例示する。銅ターゲットより、1.5kWの一定出力、508ボルトの電圧、および2.95アンペアの電流で、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銅を蒸着した。基材は、20回、ターゲットの下を通過させた。蒸着後、試料をチャンバーより取除いた。予想通り、イオン性液体(上述の[BMIM]PF6)を囲んでいるガラス表面の領域は、銅フィルムで覆われていた。しかしながら、赤褐色に見えた透過色を除いてILは不変に見えたが、約4分後に緑がかった成分が現れてきた。少なくとも4分間、真空下で塗工機内に銅含有ILが残存した場合は取除き、ILは緑がかった色合いのない赤褐色であった。しかしながら、その色合いは、前述の通り約4分後には現れた。塗工機から取除く際に試料がガラス板で覆われている場合、溶液は赤褐色のままで緑がかった色合いは現れなかった。これは、大気中の酸素および水蒸気のために幾つかの銅粒子が酸化銅または水酸化銅をIL中に形成している場合があること、ならびに/あるいは幾つかの粒子が凝集していることを示す。
【0018】
アセトンで濯ぐことにより銅含有ILをガラス基材の表面より回収皿中に除去すると、ILのあった所にコーティングはなく、銅フィルムで形成された鋭い境界があった。これは、IL上に蒸着された銅がIL中に残存しており、蒸着の前または最中のいずれかで液体−フィルムの境界において、気体の放出、飛散、または反応がなかったことを示す。フィルム厚を測定するために境界を使用し、353nmであった。これは、スパッタされた銅フィルムのXRF測定より導出される密度より計算される通り、1平方cm当たり約344μgの銅と等しい。
【0019】
本方法で形成された銅粒子を、LEO社1530SEMおよびノーランバンテージ社EDS/EDXをそれぞれ使用し、FESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)およびEDX(エネルギー分散型X線)分析により、それぞれ分析した。この分析を使用することの利点は、元素の確認(EDX)と共に粒子および粒子径(FESEM)を視覚的に観測することである。ILからのバックグラウンド信号が粒子の信号と干渉したため、凝集した粒子はILの大部分から除去され、ILの量を減らすことで粒子からの信号強度を増加させた。除去のプロセスにより凝集した粒子または凝集に至った粒子のみを、ILより抽出した。粒子の除去は、皿の中でアセトンを数回加えて銅含有ILを希釈し、それぞれの希釈後に濾紙によってアセトンおよびILを除去し、更に50%イソプロパノール−脱イオン水混合物で希釈し、次いで液体を捨てることにより行った。この手順の結果、希釈されたILの残渣中に凝集した銅粒子が生じ、次いで、その一部を、FESEM分析のため、商標がスコッチ(登録商標)であるテープに移送した。凝集していない粒子は、IL中の懸濁液中に残った。凝集していない粒子の存在を、分光光度測定により確かめた。
【0020】
分光光度測定および分析は、固有波長における吸収ピークの存在を観測することで、ナノ粒子の存在を測定するために使用される、もう1つの技法である。特に、IL中の溶液中の金属ナノ粒子の存在を確認するために、粒子の材質および寸法と粒子を含む媒体との両方の関数である、固有波長における金属の表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した。この技法の利点は、粒子が溶液中にあり、ならびに凝集していない状態のままであることである。ILからのバックグラウンド信号は小さく、差引かれるか、または、試料の信号と比較して無視できるのであれば、無視できる。また、上記の通り、試料を大気から密封して測定できる。
【0021】
銅ナノ粒子の存在について、分光光度測定は、銅含有IL試料(即ち、実施例1中で上に議論した通りの希釈する前のIL)を分析するために使用した。試験試料は、目に見える凝集した粒子を一切含まないように見えた。2種の試料、即ち塗工機から取出した後に大気に曝した試料(「曝露された」と言う)、および塗工機から取出した直後に透明フロートガラス板で覆い、密封した試料(「密封された」と言う)の吸収スペクトルを測定した。その曝露試料は、パーキンエルマー社Lambda 2 UV/VIS/NIR分光光度計を使用し、300nmおよび1100nmの間で測定した。スペクトルのUV領域中での透明性のために、石英キュベット(curvet)(フィッシャー社 遠紫外矩形1mm)を使用し、曝露試料を収容した。2つの曝露試料、即ち銅含有IL、および同種の追加ILで希釈した(「希釈された」と言う)銅含有試料を測定した。
【0022】
その密封試料を、米国BYKガードナー社より入手可能なTCS分光光度計上で、400および700nmの間で測定した。フロートガラスはUV領域において透明性がより低く、350nm未満で透過率が急速に落込む(2.3mm厚さで350nmにおいて83%が300nmにおいて3.5%)ため、TCS分光光度計を使用した。しかしながら、吸収の固有波長は、スペクトルの可視領域で生じる。
【0023】
図1は、3種の銅含有ILの吸光度を示す。密封試料は、約580nmで吸収ピークを示す。これは、100nm以下の最大寸法を有する銅ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因する。曝露および希釈されたCu試料において500nmで吸収が急峻に開始することは、酸化銅および水酸化銅のナノ粒子の存在を示していると考えられる。
【0024】
図2および3は、商標がスコッチであるテープ上の残渣IL中の凝集した銅粒子の試料に対するFESEMを示す。ILより銅を完全に抽出することが困難であるため、この試料に限ってではあるが、粒子は100nm以下の最大寸法を有する粒子を示す。それらは、粒子径の上限を表す。図4中のEDX分析は、ILからの銅およびバックグランドのリン(P)を示す。
【0025】
(実施例2)
この実施例は、銀ナノ粒子の形成を例示する。銅のための実施例1中で記載された方法と同様にして、銀を蒸着した。3.0kWの一定出力、599ボルトの電圧、および5.0アンペアで、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銀を蒸着した。基材は、10回、銀ターゲットの下を通過させた。アセトン中で濯ぐことにより、銀含有ILをガラス基材より回収皿中に除去した。フィルムとILを載せていた非コーティング領域との境界において測定すると、銀フィルム厚は463nmであった。これは、スパッタされた銀フィルムのXRF測定より導出される密度より計算される通り、平方cm当たり約470μgの銀と等しい。粒子の除去は、アセトンを数回加えて皿の中の銀含有ILを希釈し、それぞれの希釈後に濾紙によってアセトンおよびILを除去して行った。次いで、凝集した銀ナノ粒子のフィルムが残るまで、アセトンを蒸発させた。次いで、FESEMおよびEDX分析のため、フィルムをスコッチ商標のテープに移送した。凝集していない粒子が懸濁液中に残っており、アセトンを除去する際に除去した。凝集していない粒子の存在を、銅のために使用した方法と同様に分光光度測定により確かめた。FESEM像は、10nm未満から約100nmまでの寸法の範囲の粒子より形成された凝集された銀を示した(図5および6参照)。元素の銀の粒子の存在を、EDX分析により確認した。スコッチ商標のテープ上の抽出された銀の試料を、サーモエレクトロン社ThetaProbe(サーモ エレクトロン社、ウェストサセックス州、英国)を使用してXPS(X線光電子分光法)により更に分析し、いずれの銀がILと反応したかを検出した。予想通り、試料の表面は、炭素、酸素およびフッ素の汚染を示した。アルゴンイオンボンバードメント(スパッタリング)を使用して2kVの加速電圧で表面の汚染を除去後は、銀のみが残った。これは、銀金属の3d5/2の光電子の存在より確認した。図7は、テープ上に載せられた銀に対するXPS強度を示す。60秒のスパッタリング後、フッ素の1sの信号が消失し、銀の3dの信号が増加しており、銀粒子のみが存在しておりイオン性液体と反応していないことを示す。酸素の信号は、テープによるものである。
【0026】
銀含有ILの分光光度測定も、銅のために記載した方法で測定した。蒸着後、大気に曝された銀含有ILを、Lambda 2上での測定のため石英キュベットに移送した。幾つかの凝集したナノ粒子を溶液より分離して除去し、試験試料は、目に見える凝集した粒子を一切含んでいなかった。図8は、その試料に対して、約410nmに銀によるスペクトル中の強い吸収ピークを示す。これは、銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因する。この測定は、XPS測定と併せて、ILまたは大気(水分または酸素)との反応がないことを示している。
【0027】
これらの分析の結果は、銀ナノ粒子が、IL中での銀の蒸着によって生じていることを示した。粒子は、100nmまでの最大寸法を有し、例えば、50nmまで、または10nmまでであった。
【0028】
さらに、これらの結果は、銅および銀の両方に対して、最大量のナノ粒子はIL中の溶液に溶解し、そのまま残り、この最大値を超える任意の粒子は凝集するということを示している。
【0029】
(実施例3)
この実施例は、酸化タングステンナノ粒子の形成を例示する。上記の方法で、酸化タングステンを蒸着した。50%のO2および50%のArの反応性ガス雰囲気流中、4ミクロンHgの圧力で、タングステンターゲットを蒸着した。3.0kWの一定出力、486ボルトの電圧、および6.24アンペアの電流で、ターゲットを作動した。基材は、10回、ターゲットの下を通過させた。アセトン中で濯ぐことで、酸化タングステン含有ILをガラス基材から回収皿へ除去した。酸化タングステンは、117nm厚であった(上記のようにして決定された)。酸化タングステン含有ILは、透過して見ると黄色の外観であった。この着色は、IL中に酸化タングステンが存在しているか、またはILとプラズマの反応によると考えられる。粒子の除去は、最初に酸化タングステン含有ILを皿の中でアセトンによって希釈し、アセトンおよびILを濾紙により除去することで行った。しかしながら、凝集の目に見える証拠はなく、アセトン希釈ILを除去する試みは、いずれも液体およびWO3の両者を吸収する結果となることが見出された。結果として、アセトンを蒸発させた。次いで、残っているIL溶液を50%イソプロパノール−50%脱イオン水混合物と混合し、酸化タングステン含有溶液の小さい液滴(1mm未満の直径)が形成される結果となった。その液滴をシリコン基材に移し、SPI社Plasma−Prep IIプラズマ灰化機中で処理してある程度のILを除去し、FESEM、EDXおよびXPSを使用して分析した。XPSにより、液滴がWO3を含むことを検証した。XPSチャート(図9参照)は、シリコン基材上の試料について、4F7/2および4F5/2ピークの間で2.2eV隔てて35.8eVに酸化タングステンのピークを示している。(XPSのピーク位置に関する材料のデータベースについては、http://srdata.nist.gov/xps/index.htmを参照)。FESEM像(図10および11参照)には、酸化タングステンの個々の粒子を示した。その像は、約120nm以下、例えば50nm以下、または10nm以下の最大寸法を有する粒子を示す。粒子は、はっきりした球のように見えた。EDX(図12参照)により、タングステン元素の存在を確認する。
【0030】
(実施例4)
この実施例は、ILの粘度を増加させると蒸着される材料の特性が変化することを例示する。
【0031】
PVDによりIL上に材料を蒸着する場合、ナノ粒子またはフィルムが形成されるかはILの粘度により決定されることが見出された。これを例示するために、IL中に重合体を溶解してILの粘度を増加し、溶液上に異なる材料をマグネトロンスパッタ蒸着した。
【0032】
[BMIM]PF6 1ml当たり0.14グラムの濃度でポリビニルピロリドン(PVP)の粉体(NP−K30型、GAF社より商業的に入手可能)を加え、粘性のある溶液を作製した。次いで、溶液を35分間90℃で加熱し、透明で非常に粘性があり粘着性で、室温(21℃)まで冷却すると目に見えては流動しない溶液を生成した。その溶液を、3インチ×3インチ(7.6cm×7.6cm)で2.3mm厚のガラス板上に、約1.5インチ(3.8cm)の直径の円に広げ、12インチ×12インチ(36.5cm×36.5cm)の搬送板に固定し、真空室中に置く前に、表面を数分間放置し「滑らか」にした。
【0033】
PVP−IL溶液上にマグネトロンスパッタ蒸着して、2つの試料を作製した。第1の試料は、銀および銅に対し先に記載した方法と同様にして銀を蒸着して作製した。1kWの一定出力、476ボルトの電圧、および2.1アンペアで、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銀を蒸着した。基材は、30回、銀ターゲットの下を通過させた。ガラス基材上で、銀層は300nmの厚さと推定された。第2の試料を蒸着し、ガラス上で従来使用されてきた型の多層低放射率コーティングを形成した。コーティングは、一連のマグネトロンスパッタリングにより順次蒸着した以下の層を含んでいた:Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4(ここでは「Ag−誘電体スタック」と言う)。この型のコーティングは「高T/低E(High T/Low E)」(高透過性(high transmitting)/低放射率(low emissivity))コーティングとして知られ、米国特許第4,898,789号および4,898,790号に記載されている。蒸着後、コーティング試料をチャンバーより取出し、視覚的に調べた。純粋なIL中にナノ粒子が蒸着された試料の外観とは対照的に、PVP−IL溶液上全体にコーティングが現れた。溶液上のコーティングの全般的な外観は、隣接するガラス表面上のコーティングと概ね同一であった。銀コーティングは、下にある流体の不均一な性質のため、僅かにしわが寄った外観を有していた。多層コーティングは、おそらくコーティング層に密着し一体化された溶液の流れのため、幾つか亀裂を有していた。多層コーティングは、蓋がされた正方形ペトリ皿中で10カ月保存した後も、最初に蒸着されたときと概ね同じ外観を依然有していた。亀裂の周りのコーティングは、端が曝露されているため、僅かにより劣化していた。これは、この型のコーティングでは予想されるだろう。同一の期間の後、銀コーティングの幾つかの部分は、隣接するガラス基材上の銀コーティングの幾つかの部分がそうなったように、光沢を有していた。同様に、他の場所は曇っていた。図13中のスペクトルは、300から2500nmでのPVP−IL溶液およびAg−誘電体スタックがコーティングされたガラス基材に対する10カ月後の透過率を示す。ガラス基材と比較して、透過率は可視(400〜780nm)で僅かに減少し、太陽赤外(800〜2500)で僅かに増加している。これは、PVP−IL溶液上のコーティング中の亀裂による。コーティングは保護されないままであること(商業的に使用する場合は、これらのコーティングは乾燥不活性ガス下の設備中に密封される)およびPVP−IL溶液上に10カ月あったことを考慮すれば、[BMIM]PF6は、銀ベースのコーティングに対して無視できる腐食作用しか有していないことが例示される。
【0034】
溶液の粘度は測定しなかったが、溶液上に蒸着される材料の形状、即ち、粒子かまたはフィルムかを決定するうえで粘度が大きく影響すると認められ得る。純粋な[BMIM]PF6の粘度の既報値は、312センチポイズ(cP)である。1つの非限定的な実施形態において、本発明の実施において適切なILの粘度は、室温(23℃)において、1500cP以下でよく、1110cP以下などで、66〜1110cPの範囲内などである。溶液の粘度が増加すると、粒子がもはや溶液内に進入しないところまで条件が達してしまい、その代わりに溶液上にフィルムが形成される、即ち、蒸着された材料の束が表面に見え、その表面は液体よりはむしろ固体として挙動する。溶液中に粒子が形成される粘度の範囲に対し、寸法および形状などの粒子の特性が影響される。これは、IL中の溶質の濃度を低下させ、溶液上に蒸着させることで達成できる。ILの溶液中に進入しPVDに適する任意の材料を使用できる。
【0035】
上の実施例においては、フィルムまたは粒子の形成を制御するために、蒸着の前に重合体を加えた。溶液、または粒子、またはフィルムのいずれかの特定の特性が所望される場合、異なる量の重合体またはILを、蒸着の前もしくは後のいずれか、または前後の両方で加えることができる。例えば、溶液の最終粘度と異なる粘度で特定の粒子径が所望される場合、特定の粒子径を生成する溶液をコーティングし、蒸着の後に追加の重合体またはILを添加し、最終的な重合体−IL溶液にとって所望の粘度を達成する。重合体は、同一または異なる重合体でよい。重合体または重合体の組合せとの組合せにおいて所望の溶液を得るためにILの組合せを添加でき、イオン性液体も調節できる。全ての場合において重合体を単量体に置換えることができ、蒸着後に単量体を重合できる。代替の応用においては、ILを残して重合体を除去できるか、または溶液中のILおよび重合体を濯いで除くことができ、引続く処理、例えば顔料用に薄片にする(flake for pigment)ために独立したフィルムを生成する。もう1つの応用においては、溶液上に蒸着されたコーティングまたは溶液中の粒子を有する層は、他の材料、例えば有機もしくは無機層、またはより具体的には重合体もしくはガラス層と組み合わせて積層できる。
【0036】
ILの粘度は、IL中の粒子径分布に影響する。粘度が十分高い場合、1つまたは複数のフィルムをIL上に蒸着できる。引続いて、従来法でILを溶解または除去できフィルムを残し、このフィルムは顔料として使用できるか、または顔料と共にもしくは顔料なしで媒体中に取込むことができる。分散した粒子を有するILについて、粒子の更なる処理のための担体として、または更なる処理工程における反応剤としてILを使用できる。
【0037】
(実施例5)
この実施例は、IL中にナノ粒子触媒を生成するための方法を例示する。
【0038】
制御された寸法および組成の安定な遷移金属ナノ粒子は、粒子の凝集を避けるための界面活性剤、重合体または有機配位子などの保護剤の存在下で金属化合物を還元または酸化することで化学的に得ることができる。化学的合成およびイオン性液体中で遷移金属触媒を使用することが、最近報告された。ILによって遷移金属ナノ粒子を調製および安定化でき、触媒の再生利用および生成物の分離が容易になり得る。IL中でナノ粒子を使用することの利点は、触媒活性が著しく失われることなく触媒反応において多数回、触媒を再生利用できることである。IrおよびRuを調製し、触媒系を生成した。
【0039】
IL中への物理的蒸着により、1段階のプロセスのみを必要とし化学的副生成物がなく、安定した媒体中にナノ粒子を生成する別のやり方が与えられ、再生利用が容易となり得、蒸着後に薬剤を加えることもできるが、蒸着の前または後のいずれかで粒子の凝集を防ぐための追加の薬剤を必要としない。
【0040】
これを例示するため、[BMIM]PF6および[BMIM]BF4の溶液上にIrをマグネトロンスパッタ蒸着して、試料を作製した。銀および銅に対し先に記載した方法と同様にしてIrターゲットからイリジウムを蒸着して、試料を作製した。3kWの一定出力、590ボルトの電圧、および5.08アンペアで、100パーセントのアルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、イリジウムを蒸着した。基材は、15回、イリジウムターゲットの下を通過させた。チャンバーから取出した後、Irを含むILは透過すると茶色がかった外観を有していた。走査電子顕微鏡法(SEM)を使用した断面の測定より決定された通り、ガラス上のイリジウム層は120nmの厚さであった。
【0041】
Irナノ粒子を含む[BMIM]BF4を、FESEM分析のため炭素基盤に移した。少量(約5滴)を、FESEM分析のため炭素基盤に置いた。少量の脱イオン水を、IL溶液を希釈するために使用し、Irナノ粒子の凝集を発生させた。水を乾燥させ、結果としてナノ粒子が凝集することとなる希釈および乾燥の手順を、数回繰返した。Irナノ粒子のためのFESEMを図に示す。図15中のEDXより、Irの存在が確認される。
【0042】
(実施例6)
上で議論した材料に加え、Ti、TiO2、Zn2SnO4、Si−10重量%酸化アルミニウム、亜鉛−10重量%酸化スズ、および酸化銀を、IL([BMIM]PF6)上にマグネトロンスパッタ蒸着した。多層コーティングも、IL上に蒸着した。コーティングは、一連のマグネトロンスパッタリングにより蒸着された以下の層を含んでいた:Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、および1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)からなる追加のIL上に、本明細書において記載したようにマグネトロンスパッタリングにより、銅および銀を蒸着した。図16に示すように、本明細書において記載したように測定したこれらの銀含有液体の分光光度測定は、[BMIM]PF6に対する測定と併せて、約410nmに強い吸収ピークを示したが、IL溶液中の銀ナノ粒子に対する表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因している。図14から認められるように、該粒子は、50nm以下など、10nm以下などの200nmよりはるかに小さいナノ粒子の凝集を示すテクスチャを示している。
【0043】
IL中で蒸着した場合、物理的蒸着(PVD)により蒸着できる任意の材料(1種類または複数)が、ナノ粒子の安定した溶液を結果として与えると考えられる。例えば、炭素をPVD、例えば、マグネトロンスパッタ蒸着または炭素アークでIL上に蒸着でき、炭素ナノ粒子、例えば、炭素ナノチューブを生成できる。インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子を、[BMIM]PF6中にマグネトロンスパッタ蒸着で蒸着した。ITOナノ粒子は、スペクトルの可視領域には吸収がない導電性粒子を生成するために使用できる。二酸化チタンナノ粒子を、[BMIM]PF6中にマグネトロンスパッタ蒸着で蒸着した。二酸化チタンナノ粒子は、ナノ触媒を生成するために使用できる。
【0044】
(実施例7)
本明細書において記載された方法により生成されたナノ粒子含有IL電解質からの、ナノ粒子含有重合体の電気化学的析出の一例として、EDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェン)単量体溶液より、銀ナノ粒子含有[BMIM]PF6電解質溶液中で、導電性高分子PEDOT(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン)を電気化学的析出により成長させた。フィルムを、TEMグリッド上に直接成長させた。TEM測定は、導電性高分子マトリックス中にAgナノ粒子が存在することを示した。
【0045】
この方法により、電着の最中に適当な電圧を印加することで中性(絶縁)から完全ドープ(導電)までの種々のドーピングの程度の導電性高分子フィルムを形成できる。このハイブリッド材料は、エレクトロクロミックデバイスおよび有機発光デバイスの用途に加え、熱電性デバイスおよび光起電性デバイスの用途で興味がもたれている。
【0046】
その方法は上記材料に限定されることなく、任意の電気化学的重合性単量体および任意の型のナノ粒子に適応できる。
【0047】
ナノ粒子含有ILのための追加の用途としては、殺生物剤、電池、顔料、潤滑剤、および化粧品が挙げられる。膜、フィルター、繊維、およびナノ孔セラミックなどの基材はナノ粒子含有ILを吸収でき、用途、基材の型、または基材の事前処理によっては、基材を濯ぐことにより、基材の孔中に分配されたナノ粒子を残すことができる。基材は柔軟または剛直または透明または不透明でよい。特に適切な膜の1つは、PPGインダストリーズ社により製造されているテスリン(登録商標)膜である。
【0048】
(粒子特性への影響)
これらの実験で基材は移動していたため、FESEM像中で例示されるように、IL中に広い粒子径分布が集積された。蒸着された材料の形態、特に粒子の寸法および形状は、ターゲットに印加される電力、または基材の速度(静止した基材上の蒸着を含む)および基材−ターゲットの間隔、ガスおよび真空室の圧力などの蒸着パラメータによって決定される。供給源と基材との間の角度は、基材が動いている場合は考慮されないが、粒子の寸法および形状を強く決定する。供給源から直接的な線上に静止した基材を選び、低角入射粒子を遮蔽することで、より均一な粒子分布が得られよう。または、供給源から基材上に粒子を回収することは、供給源からの距離および/または角度の関数として、粒子径が分布する結果となる。さらに、粒子の体積は圧力に比例し、よって真空系および粒子の両方に適合する液体を有する重要性が説明されることが示された。粘度、温度、厚さ、化学的組成などのILの特性が、粒子の特性に影響する。特に、スパッタリングは、寸法を正確に制御できる原子蒸着プロセスである。合金ターゲットまたは共スパッタターゲット、およびガス組成物は、改変または混合でき、アルゴン−酸素−窒素ガス混合物からのオキシ窒化物などの材料を蒸着する。しかしながら、熱蒸着もしくは電子ビーム蒸着、または陰極アーク蒸着などの他の方法を制御でき、ナノ粒子から数百マイクロメートルの寸法の広い範囲にわたり高い蒸着速度で粒子を生成する。上の議論より認められる通り、粒子の凝集を防ぐ界面活性剤をILは含む必要がない。
【0049】
(粒子を含む液体の反応)
ナノ粒子を含むILを他の材料と混合することにより、得られる混合物中で追加の特徴を付与することができる。一般に、ILを使用する幾つかの型の重合が当技術分野において記載されており、単独重合、統計的共重合、ブロック共重合および重合体−イオン性液体複合物が挙げられる。これらの型の重合は本発明の方法で作製されたナノ粒子を含むILを使用して行うことができ、当技術分野において記載されるような多数の処理工程を避けられる。
【0050】
例えば、銅、銀、または酸化銀を含む曝露ILをシアノアクリレートエステル(パーマボンド910FS接着剤)と混合し、プラスチック基材を形成した。もう1つの例として、銀含有ILを、320〜380nm範囲のUV中で硬化するウレタンオリゴマー/メタクリル酸単量体ブレンド(ケムカートカオー光学接着剤300)と混合した。混合物を2枚の透明フロートガラスにはさみ、次いでUV硬化し、ガラス/重合体(硬化混合物からなる)/ガラス積層体を生成した。もう1つの例では、エルバサイトのアクリル樹脂を、ダウアノールPM(グリコールエーテルPM)および[BMIM]BF4に溶解し、ナノ粒子を含む[BMIM]BF6を溶液に加えた。Irナノ粒子を含む[BMIM]BF4はゲルを形成し、132℃までXXX分加熱して、プラスチック基材を形成した。プラスチック基材をアセトン中で濯ぎ、残渣を除去した。プラスチック基材は、ILを含む溶液の元々の茶色がかった色を留めており、Irナノ粒子の存在が示された。本明細書において記載された方法で作製されたZnOを含む[BMIM]BF6およびITOナノ粒子を含む[BMIM]BF6を同じ溶液に加え、12時間132℃で加熱して、プラスチック基材を形成し、ナノ粒子をプラスチック基材に取込めることが示された。
【0051】
上の議論から認められる通り、粒子がその中に分散されるか、フィルムがその上に形成される、またはその両方が起こったILを更に処理して種々の製品とすることができる。例えば、添加剤または反応物質をILに添加することができ、粒子またはフィルムを取込む固体、例えば、プラスチックを形成する。あるいは、更なる処理または反応のための溶媒として、ILを使用できる。
【0052】
(液体中に蒸着するための装置)
IL中に蒸着するための装置は、ILのための貯留体として働くことができる容器からなる。容器は、物理的蒸着プロセスにより材料が蒸着されている際には、材料を捕捉する位置にある。容器は、容器中にILを移送するおよび/または容器から粒子を含むILを取出すための入口および出口を備えることができる。容器は、ILを冷却または加熱する任意の従来の装置を備えることができる。出入口によって、制御された環境、例えば、真空または不活性雰囲気中での取出しが可能となる。その取出しによって、更なるプロセスのための液体の移送が可能となる。
【0053】
当技術分野において記載される、液体を収容するための他の手段が、ILと共に使用できる。これらとしては、従来のVEROS技術もしくはそれの変法、または従来のVERL技術もしくはそれの変法が挙げられ、例えば、それぞれ、S. Yatsuya、Y. Tsukasaki、K. MihamaおよびR. Uyeda、J. Cryst. Growth、43巻、490頁、(1978年)およびI. Nakatani、T. Furubayashi、J. Magn. Magn. Mater.、122巻(1993年)10頁中に記載される通りである。
【0054】
前述の記載中で開示される概念から逸脱することなく本発明を変更し得ることは、当業者によって容易に認められるであろう。そのような変更は、本発明の範囲内に含まれると考えられるべきである。したがって、以上で詳細に記載された特定の実施形態は単に例示であり、本発明の範囲に関して制限するものではないが、その範囲は、添付の特許請求の範囲ならびに任意および全てのそれに均等なものの全幅を与えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下の図面を参照して本発明を説明していくが、全体を通して同様の参照番号は同様の部分を示す。
【図1】図1は、本発明に従って形成されたCuナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【図2】図2は、Cuナノ粒子のFESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)である。
【図3】図3は、Cuナノ粒子のFESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)である。
【図4】図4は、Cuナノ粒子のEDX(エネルギー分散型X線)である。
【図5】図5は、Agナノ粒子のFESEMである。
【図6】図6は、Agナノ粒子のFESEMである。
【図7】図7は、Agナノ粒子のXPS(X線光電子分光法)である。
【図8】図8は、Agナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【図9】図9は、酸化タングステンナノ粒子におけるカウント(XPS)に対する結合エネルギーのグラフである。
【図10】図10は、酸化タングステンナノ粒子のFESEMである。
【図11】図11は、酸化タングステンナノ粒子のFESEMである。
【図12】図12は、酸化タングステンを含むナノ粒子のEDXである。
【図13】図13は、異なる基材上のAg誘電体スタックに置ける波長に対する透過率のグラフである。
【図14】図14は、Irナノ粒子のFESEMである。
【図15】図15は、Irナノ粒子のEDXである。
【図16】図16は、異なるイオン性液体中におけるAgナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年1月17日出願の米国仮特許出願第60/759,457号に対して優先権を主張し、この仮特許出願の全体を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、粒子の形成に一般的に関し、1つの特定の非限定的な実施形態において、イオン性液体中にナノ粒子を形成することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ナノ粒子は、その寸法がナノメートル(nm)で測定される微細粒子である。ナノ粒子が、電子のエネルギー準位の量子化が起こる程に十分に小さい(典型的に10nm未満)場合、半導体材料でできているナノ粒子を量子ドットと呼ぶ場合もある。
【0004】
ナノ粒子はバルク材料と原子または分子構造との間を効果的に橋渡しするため、多大な科学的関心が寄せられている。その寸法に関わらずバルク材料は一定の物理的特性を有するはずであるが、ナノスケールにおいては、これはしばしば当てはまらない。半導体粒子における量子閉込め、幾つかの金属粒子における表面プラズモン共鳴、および磁気材料における超常磁性などの寸法に依存する特性が観察される。生物医学、光学、および電子工学の分野における多種多様な潜在的用途のために、現在、ナノ粒子の研究は集中的な科学研究の領域である。
【0005】
現在、ナノ粒子は、溶液化学プロセスを使用して通常形成される。例えば、金ナノ粒子は、還元剤存在下で、テトラクロロ金酸を還元して生成できる。これにより、金イオンはイオン化されていない金原子に還元され、サブナノメートルの粒子の形で析出する。粒子が凝集するのを防ぐため、ナノ粒子の表面に粘着する安定化剤を普通加える。各種の有機配位子によってナノ粒子を機能化し、高度な機能の有機−無機ハイブリッドを形成することができる。
【0006】
ナノ粒子の形成には適切である一方、これらの現行の溶液化学プロセスには幾つかの欠点がある。例えば、プロセスの際に、多数の加熱および反応工程が必要とされる場合がある。さらに、必要な試薬の幾つかは作業者にとって有害な場合があり、よって作業するのが困難または危険な場合がある。更に、ナノ粒子が最終的に形成されると、通常分離されおよびパッキングされ、その結果、粒子が個々の粒子のままであるよりもむしろ凝集された状態になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、現行の方法に伴う少なくとも幾つかの問題を低減または取除くナノ粒子の作製方法を提供すれば、有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
粒子を製造するための方法が提供される。該方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、および物理的蒸着により1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中に粒子を提供する工程を包含する。
【0009】
ナノ粒子を製造するための方法は、イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、該蒸着室を排気し、1および7ミクロンHgの範囲内の真空を形成する工程、ならびに1種または複数の材料を該イオン性液体に誘導するために該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、該イオン性液体中にナノ粒子を形成する工程を包含する。
【0010】
本発明の組成物は、イオン性液体および物理的蒸着により該イオン性液体中に形成されたナノ粒子を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、「左」、「右」、「内部」、「外部」、「上」、「下」などの空間的または方向的な用語は、図面において示されるように本発明に関係する。しかしながら、本発明は様々な代替の方向性を想定し得ることが理解されるべきであり、したがって、そのような用語が限定としては考慮されるべきでない。更に、本明細書中で使用される場合、明細書および特許請求の範囲において使用される、寸法、物理的特徴、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表現する全ての数字は、用語「約」によって、全ての例において修飾されるように理解されるべきである。したがって、反対に示されない場合、以下の明細書および特許請求の範囲において記載される数値は、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変更できる。少なくとも、特許請求の範囲の権利範囲に対する均等論の適用を制限することを企図しておらず、各々の数値は、報告される有効数字の数を考慮して、通常の概数技法を適用することによって、少なくとも構成されるべきである。更に、本明細書において開示される全ての範囲は、範囲の最初および最後の値ならびにそこに含まれる任意および全ての部分範囲を包含するよう理解されるべきである。例えば、「1〜10」と言及される範囲は、最小値1と最大値10と(最小値1と最大値10とを含む)の間の任意および全ての部分範囲;即ち、最小値1以上で始まり最大値10以下で終わる全ての部分範囲、例えば、1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などを含むように考えられるべきである。更に、本明細書中で使用される場合、用語「の上に形成される」、「の上に蒸着される」、または「の上に提供される」は、上に形成、蒸着、または提供されることを意味するが、必ずしも表面と接触している必要はない。例えば、基材「の上に形成される」コーティング層は、その形成されたコーティング層と基材との間に配置される、同一または異なる組成物の他のコーティング層またはフィルムが1つまたは複数存在することを除外しない。本明細書中で使用される場合、用語「重合体」または「重合体の」は、オリゴマー、単独重合体、共重合体、およびターポリマー、例えば、2種以上の単量体または重合体から形成される重合体、を含む。さらに、本明細書において引用される発行された特許および特許出願などの、しかし限定されない全ての文書、ならびに全てのウェブサイトは、それらの全体が「参考として援用される」と考えられる。
【0012】
1つの非限定的な実施形態において、本発明は、物理的蒸着プロセスを使用した、室温においてイオン性液体(IL)中に、ナノ粒子などの、しかし限定されない粒子を生成する方法を提供する。1つの非限定的な実施形態において、従来のスパッタ蒸着装置または従来の電子ビーム蒸着装置などの従来の物理的蒸着装置の蒸着室中に、ILが導入される。蒸着室は排気され、1つまたは複数のカソードが使用されて、1種または複数の材料をIL上にスパッタ蒸着する。任意の従来のカソードを使用できる。適切なカソードとしては、ただし限定されることなく、僅かに数例を挙げれば、金属含有カソード、準金属含有カソード、および炭素カソードが挙げられる。ILは、400℃以下の温度で液体の塩である。本発明の実施に適切な非限定的なイオン性液体としては、カチオンおよびアニオンの組合せが挙げられる。カチオンとしては、一置換、二置換、および三置換されたイミダゾリウム;置換されたピリジニウム;置換されたピロリジニウム;テトラアルキルホスホニウム;テトラアルキルアンモニウム;グアニジニウム;イソウロニウム;およびチオウロニウムを挙げることができる。アニオンとしては、クロリド;ブロミド;ヨード;テトラフルオロボレート;ヘキサフルオロホスフェート;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(FAP);トリフルオロメタンスルホネート;トリフルオロアセテート;メチルスルフェート;オクチルスルフェート;チオシアネート;有機ボレート;およびp−トルエンスルホネートを挙げることができる。ILの具体的で非限定的な例としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMIM]PF6)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)が挙げられる。他の非限定的なILはドイツ国ケルン市のソルベントイノベーション社より入手でき、http://www.solvent−innovation.com/index_overview.htmに列記されている。更に他のILが、ドイツ国ダルムスタット市のメルク社より入手できる。カチオンおよびアニオンを変えることで多数のイオン性液体を生成でき、特定の用途に細かく調整できる。
【0013】
ILはまた、反応、再生利用および重合できる溶媒である。その結果、ILは産業において広範な用途を有し、例えば、触媒、合成、電気化学、医療、センサー、潤滑剤、および分離が挙げられる。さらに、ILは無視できる程の蒸気圧しか有しておらず、高温安定性を示す。これらの特性のために、例えば僅かに数例を挙げれば、アルコール、トルエン、塩化メチレンなどの一般的な有機溶媒と比較して、VOC(揮発性有機化合物)の観点から、ILは環境に優しい溶媒である。
【0014】
本発明においては、真空系において物理的蒸着(PVD)により生成される蒸気がIL上に蒸着される際にナノ粒子が生成されること、およびイオン性液体が粒子の安定した貯留体として作用することが見出された。以下の実施例では、蒸気を蒸着する方法として、マグネトロンスパッタリングを使用した。しかしながら、真空系で行われる物理的蒸着プロセスは、いずれでも粒子を生成するために使用できる。既知の技術に優る本発明の利点は、真空系において液体を収容できることであり、この系において液体は圧力に対し無視できる程の効果しか有していない。真空コーティングプロセスで要求される低いベース圧力および蒸着圧力は、系内に液体が存在していないかのように達成される。ILの他の利点は、IL自体が化学処理に使用される普遍的な溶媒であることである(IL’s in Chemical Processingについては、AlChE Journal、(2001年11月)、47巻、2384〜2389頁参照)。本発明のナノ粒子はIL中に取込まれ、よって、更なる処理のために媒体中に移送する工程を排除し、および/または多段階化学処理工程を排除する。さらに、蒸着される粒子の体積は蒸着圧力に比例し、よって、理想的には低い蒸着圧力が、汚染のない安定したプロセスを行うことのみならず、例えばナノ粒子径の範囲の所望の粒子径の範囲内の粒子を一貫して確実に生成することにも適することが示された。本明細書中で使用される場合、「粒子」または「ナノ粒子径の範囲」とは、500nm以下の最大寸法を有する粒子を意味し、例えば200nm以下の(例えば100nm以下の、または50nm以下の、または10nm以下の)、例えば0.1nm〜200nmの範囲内の、例えば0.5nm〜200nmの範囲内の、例えば1nm〜200nmの範囲内の粒子を意味する。蒸着プロセスは、50ミクロンHg以下の圧力で行われ、例えば20ミクロンHg以下で、10ミクロンHg以下などで、7ミクロンHg以下などで、5ミクロンHg以下で、または4ミクロンHg以下などで、3ミクロンHg以下などで、2ミクロンHg以下で、または1ミクロンHg以下などの圧力で行われる。理解されるように、1ミクロンは0.001トールと等しい。さらに、ILは蒸気圧を増加させる添加剤を一切必要とせず、粒子の凝集を防ぎ、および低い圧力で行うためのプロセスの能力を制限しない。粘度を増加させるが蒸気圧には影響しない添加剤も利用できる。最終的な液体の粘度を調節するために、異なる粘度のILを混合できる。
【0015】
以下の非限定的な実施例では、本発明の種々の様態が例示される。これらの実施例では、銅、銀、および酸化タングステンが、真空系においてイオン液体上にスパッタ蒸着された。真空系のベース圧力は10−6〜10−7トールの範囲内で、液体が導入された後も、従来の固体基材と認め得るほど異なって変化せず、イオン液体の無視できる蒸気圧が説明された。このことは、7ミクロンHg以下の圧力による蒸着を可能とした。蒸着の最中に、圧力に変化はなかった。液体中への蒸着の結果、ナノ粒子が液体中に形成された。
【0016】
本発明を例示するために、幾つかの材料を作製および特性解析する方法を、以下に詳細に説明する。点眼器を使用して透明フロートガラス基材の表面をイオン液体(IL)で濡らし、1ミリメートル未満の深さで約1.5インチ(3.8cm)の正方形を覆うことにより、試料を調製した。表面上に液体を広げるのを助けるため、へらを使用した。ILを載せたガラス基材は、3インチ(7.6cm)の正方形であった。次いで基材を搬送板上に置き、エアコテメスカル社ILS 1600真空塗工機の搬入固定台中に置き、蒸着室に入れる前に排気し、10−6トール未満のベース圧力に設定した。全てのコーティング物を、1および7ミクロンHgの圧力の間でDCマグネトロンスパッタリングにより蒸着させた。基材は、120インチ/分(3m/分)の速度でスパッタリングターゲット下を移動させた。ILを載せた試料が蒸着室に入った後、または蒸着プロセスの最中に、圧力に変化はなかった。他に示さない限り、テンコール社P1触針式表面形状測定装置を使用してコーティング厚さを測定した。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
この実施例は、銅ナノ粒子の形成を例示する。銅ターゲットより、1.5kWの一定出力、508ボルトの電圧、および2.95アンペアの電流で、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銅を蒸着した。基材は、20回、ターゲットの下を通過させた。蒸着後、試料をチャンバーより取除いた。予想通り、イオン性液体(上述の[BMIM]PF6)を囲んでいるガラス表面の領域は、銅フィルムで覆われていた。しかしながら、赤褐色に見えた透過色を除いてILは不変に見えたが、約4分後に緑がかった成分が現れてきた。少なくとも4分間、真空下で塗工機内に銅含有ILが残存した場合は取除き、ILは緑がかった色合いのない赤褐色であった。しかしながら、その色合いは、前述の通り約4分後には現れた。塗工機から取除く際に試料がガラス板で覆われている場合、溶液は赤褐色のままで緑がかった色合いは現れなかった。これは、大気中の酸素および水蒸気のために幾つかの銅粒子が酸化銅または水酸化銅をIL中に形成している場合があること、ならびに/あるいは幾つかの粒子が凝集していることを示す。
【0018】
アセトンで濯ぐことにより銅含有ILをガラス基材の表面より回収皿中に除去すると、ILのあった所にコーティングはなく、銅フィルムで形成された鋭い境界があった。これは、IL上に蒸着された銅がIL中に残存しており、蒸着の前または最中のいずれかで液体−フィルムの境界において、気体の放出、飛散、または反応がなかったことを示す。フィルム厚を測定するために境界を使用し、353nmであった。これは、スパッタされた銅フィルムのXRF測定より導出される密度より計算される通り、1平方cm当たり約344μgの銅と等しい。
【0019】
本方法で形成された銅粒子を、LEO社1530SEMおよびノーランバンテージ社EDS/EDXをそれぞれ使用し、FESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)およびEDX(エネルギー分散型X線)分析により、それぞれ分析した。この分析を使用することの利点は、元素の確認(EDX)と共に粒子および粒子径(FESEM)を視覚的に観測することである。ILからのバックグラウンド信号が粒子の信号と干渉したため、凝集した粒子はILの大部分から除去され、ILの量を減らすことで粒子からの信号強度を増加させた。除去のプロセスにより凝集した粒子または凝集に至った粒子のみを、ILより抽出した。粒子の除去は、皿の中でアセトンを数回加えて銅含有ILを希釈し、それぞれの希釈後に濾紙によってアセトンおよびILを除去し、更に50%イソプロパノール−脱イオン水混合物で希釈し、次いで液体を捨てることにより行った。この手順の結果、希釈されたILの残渣中に凝集した銅粒子が生じ、次いで、その一部を、FESEM分析のため、商標がスコッチ(登録商標)であるテープに移送した。凝集していない粒子は、IL中の懸濁液中に残った。凝集していない粒子の存在を、分光光度測定により確かめた。
【0020】
分光光度測定および分析は、固有波長における吸収ピークの存在を観測することで、ナノ粒子の存在を測定するために使用される、もう1つの技法である。特に、IL中の溶液中の金属ナノ粒子の存在を確認するために、粒子の材質および寸法と粒子を含む媒体との両方の関数である、固有波長における金属の表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した。この技法の利点は、粒子が溶液中にあり、ならびに凝集していない状態のままであることである。ILからのバックグラウンド信号は小さく、差引かれるか、または、試料の信号と比較して無視できるのであれば、無視できる。また、上記の通り、試料を大気から密封して測定できる。
【0021】
銅ナノ粒子の存在について、分光光度測定は、銅含有IL試料(即ち、実施例1中で上に議論した通りの希釈する前のIL)を分析するために使用した。試験試料は、目に見える凝集した粒子を一切含まないように見えた。2種の試料、即ち塗工機から取出した後に大気に曝した試料(「曝露された」と言う)、および塗工機から取出した直後に透明フロートガラス板で覆い、密封した試料(「密封された」と言う)の吸収スペクトルを測定した。その曝露試料は、パーキンエルマー社Lambda 2 UV/VIS/NIR分光光度計を使用し、300nmおよび1100nmの間で測定した。スペクトルのUV領域中での透明性のために、石英キュベット(curvet)(フィッシャー社 遠紫外矩形1mm)を使用し、曝露試料を収容した。2つの曝露試料、即ち銅含有IL、および同種の追加ILで希釈した(「希釈された」と言う)銅含有試料を測定した。
【0022】
その密封試料を、米国BYKガードナー社より入手可能なTCS分光光度計上で、400および700nmの間で測定した。フロートガラスはUV領域において透明性がより低く、350nm未満で透過率が急速に落込む(2.3mm厚さで350nmにおいて83%が300nmにおいて3.5%)ため、TCS分光光度計を使用した。しかしながら、吸収の固有波長は、スペクトルの可視領域で生じる。
【0023】
図1は、3種の銅含有ILの吸光度を示す。密封試料は、約580nmで吸収ピークを示す。これは、100nm以下の最大寸法を有する銅ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因する。曝露および希釈されたCu試料において500nmで吸収が急峻に開始することは、酸化銅および水酸化銅のナノ粒子の存在を示していると考えられる。
【0024】
図2および3は、商標がスコッチであるテープ上の残渣IL中の凝集した銅粒子の試料に対するFESEMを示す。ILより銅を完全に抽出することが困難であるため、この試料に限ってではあるが、粒子は100nm以下の最大寸法を有する粒子を示す。それらは、粒子径の上限を表す。図4中のEDX分析は、ILからの銅およびバックグランドのリン(P)を示す。
【0025】
(実施例2)
この実施例は、銀ナノ粒子の形成を例示する。銅のための実施例1中で記載された方法と同様にして、銀を蒸着した。3.0kWの一定出力、599ボルトの電圧、および5.0アンペアで、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銀を蒸着した。基材は、10回、銀ターゲットの下を通過させた。アセトン中で濯ぐことにより、銀含有ILをガラス基材より回収皿中に除去した。フィルムとILを載せていた非コーティング領域との境界において測定すると、銀フィルム厚は463nmであった。これは、スパッタされた銀フィルムのXRF測定より導出される密度より計算される通り、平方cm当たり約470μgの銀と等しい。粒子の除去は、アセトンを数回加えて皿の中の銀含有ILを希釈し、それぞれの希釈後に濾紙によってアセトンおよびILを除去して行った。次いで、凝集した銀ナノ粒子のフィルムが残るまで、アセトンを蒸発させた。次いで、FESEMおよびEDX分析のため、フィルムをスコッチ商標のテープに移送した。凝集していない粒子が懸濁液中に残っており、アセトンを除去する際に除去した。凝集していない粒子の存在を、銅のために使用した方法と同様に分光光度測定により確かめた。FESEM像は、10nm未満から約100nmまでの寸法の範囲の粒子より形成された凝集された銀を示した(図5および6参照)。元素の銀の粒子の存在を、EDX分析により確認した。スコッチ商標のテープ上の抽出された銀の試料を、サーモエレクトロン社ThetaProbe(サーモ エレクトロン社、ウェストサセックス州、英国)を使用してXPS(X線光電子分光法)により更に分析し、いずれの銀がILと反応したかを検出した。予想通り、試料の表面は、炭素、酸素およびフッ素の汚染を示した。アルゴンイオンボンバードメント(スパッタリング)を使用して2kVの加速電圧で表面の汚染を除去後は、銀のみが残った。これは、銀金属の3d5/2の光電子の存在より確認した。図7は、テープ上に載せられた銀に対するXPS強度を示す。60秒のスパッタリング後、フッ素の1sの信号が消失し、銀の3dの信号が増加しており、銀粒子のみが存在しておりイオン性液体と反応していないことを示す。酸素の信号は、テープによるものである。
【0026】
銀含有ILの分光光度測定も、銅のために記載した方法で測定した。蒸着後、大気に曝された銀含有ILを、Lambda 2上での測定のため石英キュベットに移送した。幾つかの凝集したナノ粒子を溶液より分離して除去し、試験試料は、目に見える凝集した粒子を一切含んでいなかった。図8は、その試料に対して、約410nmに銀によるスペクトル中の強い吸収ピークを示す。これは、銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因する。この測定は、XPS測定と併せて、ILまたは大気(水分または酸素)との反応がないことを示している。
【0027】
これらの分析の結果は、銀ナノ粒子が、IL中での銀の蒸着によって生じていることを示した。粒子は、100nmまでの最大寸法を有し、例えば、50nmまで、または10nmまでであった。
【0028】
さらに、これらの結果は、銅および銀の両方に対して、最大量のナノ粒子はIL中の溶液に溶解し、そのまま残り、この最大値を超える任意の粒子は凝集するということを示している。
【0029】
(実施例3)
この実施例は、酸化タングステンナノ粒子の形成を例示する。上記の方法で、酸化タングステンを蒸着した。50%のO2および50%のArの反応性ガス雰囲気流中、4ミクロンHgの圧力で、タングステンターゲットを蒸着した。3.0kWの一定出力、486ボルトの電圧、および6.24アンペアの電流で、ターゲットを作動した。基材は、10回、ターゲットの下を通過させた。アセトン中で濯ぐことで、酸化タングステン含有ILをガラス基材から回収皿へ除去した。酸化タングステンは、117nm厚であった(上記のようにして決定された)。酸化タングステン含有ILは、透過して見ると黄色の外観であった。この着色は、IL中に酸化タングステンが存在しているか、またはILとプラズマの反応によると考えられる。粒子の除去は、最初に酸化タングステン含有ILを皿の中でアセトンによって希釈し、アセトンおよびILを濾紙により除去することで行った。しかしながら、凝集の目に見える証拠はなく、アセトン希釈ILを除去する試みは、いずれも液体およびWO3の両者を吸収する結果となることが見出された。結果として、アセトンを蒸発させた。次いで、残っているIL溶液を50%イソプロパノール−50%脱イオン水混合物と混合し、酸化タングステン含有溶液の小さい液滴(1mm未満の直径)が形成される結果となった。その液滴をシリコン基材に移し、SPI社Plasma−Prep IIプラズマ灰化機中で処理してある程度のILを除去し、FESEM、EDXおよびXPSを使用して分析した。XPSにより、液滴がWO3を含むことを検証した。XPSチャート(図9参照)は、シリコン基材上の試料について、4F7/2および4F5/2ピークの間で2.2eV隔てて35.8eVに酸化タングステンのピークを示している。(XPSのピーク位置に関する材料のデータベースについては、http://srdata.nist.gov/xps/index.htmを参照)。FESEM像(図10および11参照)には、酸化タングステンの個々の粒子を示した。その像は、約120nm以下、例えば50nm以下、または10nm以下の最大寸法を有する粒子を示す。粒子は、はっきりした球のように見えた。EDX(図12参照)により、タングステン元素の存在を確認する。
【0030】
(実施例4)
この実施例は、ILの粘度を増加させると蒸着される材料の特性が変化することを例示する。
【0031】
PVDによりIL上に材料を蒸着する場合、ナノ粒子またはフィルムが形成されるかはILの粘度により決定されることが見出された。これを例示するために、IL中に重合体を溶解してILの粘度を増加し、溶液上に異なる材料をマグネトロンスパッタ蒸着した。
【0032】
[BMIM]PF6 1ml当たり0.14グラムの濃度でポリビニルピロリドン(PVP)の粉体(NP−K30型、GAF社より商業的に入手可能)を加え、粘性のある溶液を作製した。次いで、溶液を35分間90℃で加熱し、透明で非常に粘性があり粘着性で、室温(21℃)まで冷却すると目に見えては流動しない溶液を生成した。その溶液を、3インチ×3インチ(7.6cm×7.6cm)で2.3mm厚のガラス板上に、約1.5インチ(3.8cm)の直径の円に広げ、12インチ×12インチ(36.5cm×36.5cm)の搬送板に固定し、真空室中に置く前に、表面を数分間放置し「滑らか」にした。
【0033】
PVP−IL溶液上にマグネトロンスパッタ蒸着して、2つの試料を作製した。第1の試料は、銀および銅に対し先に記載した方法と同様にして銀を蒸着して作製した。1kWの一定出力、476ボルトの電圧、および2.1アンペアで、アルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、銀を蒸着した。基材は、30回、銀ターゲットの下を通過させた。ガラス基材上で、銀層は300nmの厚さと推定された。第2の試料を蒸着し、ガラス上で従来使用されてきた型の多層低放射率コーティングを形成した。コーティングは、一連のマグネトロンスパッタリングにより順次蒸着した以下の層を含んでいた:Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4(ここでは「Ag−誘電体スタック」と言う)。この型のコーティングは「高T/低E(High T/Low E)」(高透過性(high transmitting)/低放射率(low emissivity))コーティングとして知られ、米国特許第4,898,789号および4,898,790号に記載されている。蒸着後、コーティング試料をチャンバーより取出し、視覚的に調べた。純粋なIL中にナノ粒子が蒸着された試料の外観とは対照的に、PVP−IL溶液上全体にコーティングが現れた。溶液上のコーティングの全般的な外観は、隣接するガラス表面上のコーティングと概ね同一であった。銀コーティングは、下にある流体の不均一な性質のため、僅かにしわが寄った外観を有していた。多層コーティングは、おそらくコーティング層に密着し一体化された溶液の流れのため、幾つか亀裂を有していた。多層コーティングは、蓋がされた正方形ペトリ皿中で10カ月保存した後も、最初に蒸着されたときと概ね同じ外観を依然有していた。亀裂の周りのコーティングは、端が曝露されているため、僅かにより劣化していた。これは、この型のコーティングでは予想されるだろう。同一の期間の後、銀コーティングの幾つかの部分は、隣接するガラス基材上の銀コーティングの幾つかの部分がそうなったように、光沢を有していた。同様に、他の場所は曇っていた。図13中のスペクトルは、300から2500nmでのPVP−IL溶液およびAg−誘電体スタックがコーティングされたガラス基材に対する10カ月後の透過率を示す。ガラス基材と比較して、透過率は可視(400〜780nm)で僅かに減少し、太陽赤外(800〜2500)で僅かに増加している。これは、PVP−IL溶液上のコーティング中の亀裂による。コーティングは保護されないままであること(商業的に使用する場合は、これらのコーティングは乾燥不活性ガス下の設備中に密封される)およびPVP−IL溶液上に10カ月あったことを考慮すれば、[BMIM]PF6は、銀ベースのコーティングに対して無視できる腐食作用しか有していないことが例示される。
【0034】
溶液の粘度は測定しなかったが、溶液上に蒸着される材料の形状、即ち、粒子かまたはフィルムかを決定するうえで粘度が大きく影響すると認められ得る。純粋な[BMIM]PF6の粘度の既報値は、312センチポイズ(cP)である。1つの非限定的な実施形態において、本発明の実施において適切なILの粘度は、室温(23℃)において、1500cP以下でよく、1110cP以下などで、66〜1110cPの範囲内などである。溶液の粘度が増加すると、粒子がもはや溶液内に進入しないところまで条件が達してしまい、その代わりに溶液上にフィルムが形成される、即ち、蒸着された材料の束が表面に見え、その表面は液体よりはむしろ固体として挙動する。溶液中に粒子が形成される粘度の範囲に対し、寸法および形状などの粒子の特性が影響される。これは、IL中の溶質の濃度を低下させ、溶液上に蒸着させることで達成できる。ILの溶液中に進入しPVDに適する任意の材料を使用できる。
【0035】
上の実施例においては、フィルムまたは粒子の形成を制御するために、蒸着の前に重合体を加えた。溶液、または粒子、またはフィルムのいずれかの特定の特性が所望される場合、異なる量の重合体またはILを、蒸着の前もしくは後のいずれか、または前後の両方で加えることができる。例えば、溶液の最終粘度と異なる粘度で特定の粒子径が所望される場合、特定の粒子径を生成する溶液をコーティングし、蒸着の後に追加の重合体またはILを添加し、最終的な重合体−IL溶液にとって所望の粘度を達成する。重合体は、同一または異なる重合体でよい。重合体または重合体の組合せとの組合せにおいて所望の溶液を得るためにILの組合せを添加でき、イオン性液体も調節できる。全ての場合において重合体を単量体に置換えることができ、蒸着後に単量体を重合できる。代替の応用においては、ILを残して重合体を除去できるか、または溶液中のILおよび重合体を濯いで除くことができ、引続く処理、例えば顔料用に薄片にする(flake for pigment)ために独立したフィルムを生成する。もう1つの応用においては、溶液上に蒸着されたコーティングまたは溶液中の粒子を有する層は、他の材料、例えば有機もしくは無機層、またはより具体的には重合体もしくはガラス層と組み合わせて積層できる。
【0036】
ILの粘度は、IL中の粒子径分布に影響する。粘度が十分高い場合、1つまたは複数のフィルムをIL上に蒸着できる。引続いて、従来法でILを溶解または除去できフィルムを残し、このフィルムは顔料として使用できるか、または顔料と共にもしくは顔料なしで媒体中に取込むことができる。分散した粒子を有するILについて、粒子の更なる処理のための担体として、または更なる処理工程における反応剤としてILを使用できる。
【0037】
(実施例5)
この実施例は、IL中にナノ粒子触媒を生成するための方法を例示する。
【0038】
制御された寸法および組成の安定な遷移金属ナノ粒子は、粒子の凝集を避けるための界面活性剤、重合体または有機配位子などの保護剤の存在下で金属化合物を還元または酸化することで化学的に得ることができる。化学的合成およびイオン性液体中で遷移金属触媒を使用することが、最近報告された。ILによって遷移金属ナノ粒子を調製および安定化でき、触媒の再生利用および生成物の分離が容易になり得る。IL中でナノ粒子を使用することの利点は、触媒活性が著しく失われることなく触媒反応において多数回、触媒を再生利用できることである。IrおよびRuを調製し、触媒系を生成した。
【0039】
IL中への物理的蒸着により、1段階のプロセスのみを必要とし化学的副生成物がなく、安定した媒体中にナノ粒子を生成する別のやり方が与えられ、再生利用が容易となり得、蒸着後に薬剤を加えることもできるが、蒸着の前または後のいずれかで粒子の凝集を防ぐための追加の薬剤を必要としない。
【0040】
これを例示するため、[BMIM]PF6および[BMIM]BF4の溶液上にIrをマグネトロンスパッタ蒸着して、試料を作製した。銀および銅に対し先に記載した方法と同様にしてIrターゲットからイリジウムを蒸着して、試料を作製した。3kWの一定出力、590ボルトの電圧、および5.08アンペアで、100パーセントのアルゴンガス雰囲気中、4ミクロンHgの圧力で、イリジウムを蒸着した。基材は、15回、イリジウムターゲットの下を通過させた。チャンバーから取出した後、Irを含むILは透過すると茶色がかった外観を有していた。走査電子顕微鏡法(SEM)を使用した断面の測定より決定された通り、ガラス上のイリジウム層は120nmの厚さであった。
【0041】
Irナノ粒子を含む[BMIM]BF4を、FESEM分析のため炭素基盤に移した。少量(約5滴)を、FESEM分析のため炭素基盤に置いた。少量の脱イオン水を、IL溶液を希釈するために使用し、Irナノ粒子の凝集を発生させた。水を乾燥させ、結果としてナノ粒子が凝集することとなる希釈および乾燥の手順を、数回繰返した。Irナノ粒子のためのFESEMを図に示す。図15中のEDXより、Irの存在が確認される。
【0042】
(実施例6)
上で議論した材料に加え、Ti、TiO2、Zn2SnO4、Si−10重量%酸化アルミニウム、亜鉛−10重量%酸化スズ、および酸化銀を、IL([BMIM]PF6)上にマグネトロンスパッタ蒸着した。多層コーティングも、IL上に蒸着した。コーティングは、一連のマグネトロンスパッタリングにより蒸着された以下の層を含んでいた:Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4/Zn−10重量%Sn/Ag/Ti/Zn2SnO4。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、および1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)からなる追加のIL上に、本明細書において記載したようにマグネトロンスパッタリングにより、銅および銀を蒸着した。図16に示すように、本明細書において記載したように測定したこれらの銀含有液体の分光光度測定は、[BMIM]PF6に対する測定と併せて、約410nmに強い吸収ピークを示したが、IL溶液中の銀ナノ粒子に対する表面プラズモン共鳴(SPR)吸収に起因している。図14から認められるように、該粒子は、50nm以下など、10nm以下などの200nmよりはるかに小さいナノ粒子の凝集を示すテクスチャを示している。
【0043】
IL中で蒸着した場合、物理的蒸着(PVD)により蒸着できる任意の材料(1種類または複数)が、ナノ粒子の安定した溶液を結果として与えると考えられる。例えば、炭素をPVD、例えば、マグネトロンスパッタ蒸着または炭素アークでIL上に蒸着でき、炭素ナノ粒子、例えば、炭素ナノチューブを生成できる。インジウムスズ酸化物(ITO)ナノ粒子を、[BMIM]PF6中にマグネトロンスパッタ蒸着で蒸着した。ITOナノ粒子は、スペクトルの可視領域には吸収がない導電性粒子を生成するために使用できる。二酸化チタンナノ粒子を、[BMIM]PF6中にマグネトロンスパッタ蒸着で蒸着した。二酸化チタンナノ粒子は、ナノ触媒を生成するために使用できる。
【0044】
(実施例7)
本明細書において記載された方法により生成されたナノ粒子含有IL電解質からの、ナノ粒子含有重合体の電気化学的析出の一例として、EDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェン)単量体溶液より、銀ナノ粒子含有[BMIM]PF6電解質溶液中で、導電性高分子PEDOT(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン)を電気化学的析出により成長させた。フィルムを、TEMグリッド上に直接成長させた。TEM測定は、導電性高分子マトリックス中にAgナノ粒子が存在することを示した。
【0045】
この方法により、電着の最中に適当な電圧を印加することで中性(絶縁)から完全ドープ(導電)までの種々のドーピングの程度の導電性高分子フィルムを形成できる。このハイブリッド材料は、エレクトロクロミックデバイスおよび有機発光デバイスの用途に加え、熱電性デバイスおよび光起電性デバイスの用途で興味がもたれている。
【0046】
その方法は上記材料に限定されることなく、任意の電気化学的重合性単量体および任意の型のナノ粒子に適応できる。
【0047】
ナノ粒子含有ILのための追加の用途としては、殺生物剤、電池、顔料、潤滑剤、および化粧品が挙げられる。膜、フィルター、繊維、およびナノ孔セラミックなどの基材はナノ粒子含有ILを吸収でき、用途、基材の型、または基材の事前処理によっては、基材を濯ぐことにより、基材の孔中に分配されたナノ粒子を残すことができる。基材は柔軟または剛直または透明または不透明でよい。特に適切な膜の1つは、PPGインダストリーズ社により製造されているテスリン(登録商標)膜である。
【0048】
(粒子特性への影響)
これらの実験で基材は移動していたため、FESEM像中で例示されるように、IL中に広い粒子径分布が集積された。蒸着された材料の形態、特に粒子の寸法および形状は、ターゲットに印加される電力、または基材の速度(静止した基材上の蒸着を含む)および基材−ターゲットの間隔、ガスおよび真空室の圧力などの蒸着パラメータによって決定される。供給源と基材との間の角度は、基材が動いている場合は考慮されないが、粒子の寸法および形状を強く決定する。供給源から直接的な線上に静止した基材を選び、低角入射粒子を遮蔽することで、より均一な粒子分布が得られよう。または、供給源から基材上に粒子を回収することは、供給源からの距離および/または角度の関数として、粒子径が分布する結果となる。さらに、粒子の体積は圧力に比例し、よって真空系および粒子の両方に適合する液体を有する重要性が説明されることが示された。粘度、温度、厚さ、化学的組成などのILの特性が、粒子の特性に影響する。特に、スパッタリングは、寸法を正確に制御できる原子蒸着プロセスである。合金ターゲットまたは共スパッタターゲット、およびガス組成物は、改変または混合でき、アルゴン−酸素−窒素ガス混合物からのオキシ窒化物などの材料を蒸着する。しかしながら、熱蒸着もしくは電子ビーム蒸着、または陰極アーク蒸着などの他の方法を制御でき、ナノ粒子から数百マイクロメートルの寸法の広い範囲にわたり高い蒸着速度で粒子を生成する。上の議論より認められる通り、粒子の凝集を防ぐ界面活性剤をILは含む必要がない。
【0049】
(粒子を含む液体の反応)
ナノ粒子を含むILを他の材料と混合することにより、得られる混合物中で追加の特徴を付与することができる。一般に、ILを使用する幾つかの型の重合が当技術分野において記載されており、単独重合、統計的共重合、ブロック共重合および重合体−イオン性液体複合物が挙げられる。これらの型の重合は本発明の方法で作製されたナノ粒子を含むILを使用して行うことができ、当技術分野において記載されるような多数の処理工程を避けられる。
【0050】
例えば、銅、銀、または酸化銀を含む曝露ILをシアノアクリレートエステル(パーマボンド910FS接着剤)と混合し、プラスチック基材を形成した。もう1つの例として、銀含有ILを、320〜380nm範囲のUV中で硬化するウレタンオリゴマー/メタクリル酸単量体ブレンド(ケムカートカオー光学接着剤300)と混合した。混合物を2枚の透明フロートガラスにはさみ、次いでUV硬化し、ガラス/重合体(硬化混合物からなる)/ガラス積層体を生成した。もう1つの例では、エルバサイトのアクリル樹脂を、ダウアノールPM(グリコールエーテルPM)および[BMIM]BF4に溶解し、ナノ粒子を含む[BMIM]BF6を溶液に加えた。Irナノ粒子を含む[BMIM]BF4はゲルを形成し、132℃までXXX分加熱して、プラスチック基材を形成した。プラスチック基材をアセトン中で濯ぎ、残渣を除去した。プラスチック基材は、ILを含む溶液の元々の茶色がかった色を留めており、Irナノ粒子の存在が示された。本明細書において記載された方法で作製されたZnOを含む[BMIM]BF6およびITOナノ粒子を含む[BMIM]BF6を同じ溶液に加え、12時間132℃で加熱して、プラスチック基材を形成し、ナノ粒子をプラスチック基材に取込めることが示された。
【0051】
上の議論から認められる通り、粒子がその中に分散されるか、フィルムがその上に形成される、またはその両方が起こったILを更に処理して種々の製品とすることができる。例えば、添加剤または反応物質をILに添加することができ、粒子またはフィルムを取込む固体、例えば、プラスチックを形成する。あるいは、更なる処理または反応のための溶媒として、ILを使用できる。
【0052】
(液体中に蒸着するための装置)
IL中に蒸着するための装置は、ILのための貯留体として働くことができる容器からなる。容器は、物理的蒸着プロセスにより材料が蒸着されている際には、材料を捕捉する位置にある。容器は、容器中にILを移送するおよび/または容器から粒子を含むILを取出すための入口および出口を備えることができる。容器は、ILを冷却または加熱する任意の従来の装置を備えることができる。出入口によって、制御された環境、例えば、真空または不活性雰囲気中での取出しが可能となる。その取出しによって、更なるプロセスのための液体の移送が可能となる。
【0053】
当技術分野において記載される、液体を収容するための他の手段が、ILと共に使用できる。これらとしては、従来のVEROS技術もしくはそれの変法、または従来のVERL技術もしくはそれの変法が挙げられ、例えば、それぞれ、S. Yatsuya、Y. Tsukasaki、K. MihamaおよびR. Uyeda、J. Cryst. Growth、43巻、490頁、(1978年)およびI. Nakatani、T. Furubayashi、J. Magn. Magn. Mater.、122巻(1993年)10頁中に記載される通りである。
【0054】
前述の記載中で開示される概念から逸脱することなく本発明を変更し得ることは、当業者によって容易に認められるであろう。そのような変更は、本発明の範囲内に含まれると考えられるべきである。したがって、以上で詳細に記載された特定の実施形態は単に例示であり、本発明の範囲に関して制限するものではないが、その範囲は、添付の特許請求の範囲ならびに任意および全てのそれに均等なものの全幅を与えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下の図面を参照して本発明を説明していくが、全体を通して同様の参照番号は同様の部分を示す。
【図1】図1は、本発明に従って形成されたCuナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【図2】図2は、Cuナノ粒子のFESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)である。
【図3】図3は、Cuナノ粒子のFESEM(電界放出型走査電子顕微鏡)である。
【図4】図4は、Cuナノ粒子のEDX(エネルギー分散型X線)である。
【図5】図5は、Agナノ粒子のFESEMである。
【図6】図6は、Agナノ粒子のFESEMである。
【図7】図7は、Agナノ粒子のXPS(X線光電子分光法)である。
【図8】図8は、Agナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【図9】図9は、酸化タングステンナノ粒子におけるカウント(XPS)に対する結合エネルギーのグラフである。
【図10】図10は、酸化タングステンナノ粒子のFESEMである。
【図11】図11は、酸化タングステンナノ粒子のFESEMである。
【図12】図12は、酸化タングステンを含むナノ粒子のEDXである。
【図13】図13は、異なる基材上のAg誘電体スタックに置ける波長に対する透過率のグラフである。
【図14】図14は、Irナノ粒子のFESEMである。
【図15】図15は、Irナノ粒子のEDXである。
【図16】図16は、異なるイオン性液体中におけるAgナノ粒子における波長に対する吸光度のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、および
物理的蒸着により1種または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中に粒子を提供する工程、
を含む、粒子を製造するための方法。
【請求項2】
前記蒸着室を排気する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸着室を排気し、10ミクロンHg以下の真空を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着室を排気し、7ミクロンHg以下の真空を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子が、500nm以下の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子が、200nm以下の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子が、1nm〜200nmの範囲内の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン性液体が、一置換、二置換、および三置換されたイミダゾリウム;置換されたピリジニウム;置換されたピロリジニウム;テトラアルキルホスホニウム;テトラアルキルアンモニウム;グアニジニウム;イソウロニウム;およびチオウロニウムより選択される少なくとも1種類のカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン性液体が、クロリド;ブロミド;ヨード;テトラフルオロボレート;ヘキサフルオロホスフェート;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(FAP);トリフルオロメタンスルホネート;トリフルオロアセテート;メチルスルフェート;オクチルスルフェート;チオシアネート;有機ボレート;およびp−トルエンスルホネートより選択される少なくとも1種類のアニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン性液体が、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMIM]PF6)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン性液体が、23℃の温度において1110cP以下の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸着工程が、マグネトロンスパッタリングまたは電子ビーム蒸着により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スパッタリングが、反応性雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スパッタリングが、真空雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記スパッタリングが、不活性雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン性液体が、2種類以上のイオン性液体の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン性液体の粘度を調節する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記調節工程が、1種類または複数の重合体または単量体を前記イオン性液体に添加することで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1種類または複数の単量体または重合体を前記イオン性液体に添加する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記単量体または重合体を反応させて、前記粒子を含む高分子材料を形成する工程を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、
該蒸着室を排気し、該蒸着室中に7ミクロンHg以下の真空を形成する工程、および
該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中にナノ粒子を提供する工程、
を含むナノ粒子を製造するための方法。
【請求項22】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程;
該蒸着室を排気し、該蒸着室中に7ミクロンHg以下の真空を形成する工程;および
該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体上にコーティングフィルムを形成する工程、
を含むイオン性液体をコーティングするための方法。
【請求項23】
イオン性液体、および
物理的蒸着により該イオン性液体中に蒸着された粒子
を含む組成物。
【請求項24】
前記粒子が、500nm以下の寸法を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
1種類または複数の単量体または重合体を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の方法により作製される粒子を含む、組成物。
【請求項27】
請求項21に記載の方法により作製される、フィルム。
【請求項28】
蒸着室、および
イオン性液体用の容器
を備える粒子を作製するための装置であって、
該容器が、蒸着室中において物理的蒸着プロセスにより材料を蒸着するときにその材料を捕捉するように構成されており、該容器中にイオン性液体を移送する、および/または該容器から粒子含有イオン性液体を取出すための入口および出口を備える、装置。
【請求項1】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、および
物理的蒸着により1種または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中に粒子を提供する工程、
を含む、粒子を製造するための方法。
【請求項2】
前記蒸着室を排気する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸着室を排気し、10ミクロンHg以下の真空を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着室を排気し、7ミクロンHg以下の真空を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子が、500nm以下の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子が、200nm以下の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子が、1nm〜200nmの範囲内の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン性液体が、一置換、二置換、および三置換されたイミダゾリウム;置換されたピリジニウム;置換されたピロリジニウム;テトラアルキルホスホニウム;テトラアルキルアンモニウム;グアニジニウム;イソウロニウム;およびチオウロニウムより選択される少なくとも1種類のカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン性液体が、クロリド;ブロミド;ヨード;テトラフルオロボレート;ヘキサフルオロホスフェート;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(FAP);トリフルオロメタンスルホネート;トリフルオロアセテート;メチルスルフェート;オクチルスルフェート;チオシアネート;有機ボレート;およびp−トルエンスルホネートより選択される少なくとも1種類のアニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン性液体が、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMIM]PF6)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([HMIM]BF4)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM]BF4)、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンアミド([EMIM](CF3SO2)2N)より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン性液体が、23℃の温度において1110cP以下の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記蒸着工程が、マグネトロンスパッタリングまたは電子ビーム蒸着により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スパッタリングが、反応性雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スパッタリングが、真空雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記スパッタリングが、不活性雰囲気中で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン性液体が、2種類以上のイオン性液体の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン性液体の粘度を調節する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記調節工程が、1種類または複数の重合体または単量体を前記イオン性液体に添加することで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1種類または複数の単量体または重合体を前記イオン性液体に添加する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記単量体または重合体を反応させて、前記粒子を含む高分子材料を形成する工程を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程、
該蒸着室を排気し、該蒸着室中に7ミクロンHg以下の真空を形成する工程、および
該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体中にナノ粒子を提供する工程、
を含むナノ粒子を製造するための方法。
【請求項22】
イオン性液体を蒸着室中へ導入する工程;
該蒸着室を排気し、該蒸着室中に7ミクロンHg以下の真空を形成する工程;および
該蒸着室中の1つまたは複数のカソードをスパッタリングし、1種類または複数の材料を該イオン性液体に誘導し、該イオン性液体上にコーティングフィルムを形成する工程、
を含むイオン性液体をコーティングするための方法。
【請求項23】
イオン性液体、および
物理的蒸着により該イオン性液体中に蒸着された粒子
を含む組成物。
【請求項24】
前記粒子が、500nm以下の寸法を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
1種類または複数の単量体または重合体を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の方法により作製される粒子を含む、組成物。
【請求項27】
請求項21に記載の方法により作製される、フィルム。
【請求項28】
蒸着室、および
イオン性液体用の容器
を備える粒子を作製するための装置であって、
該容器が、蒸着室中において物理的蒸着プロセスにより材料を蒸着するときにその材料を捕捉するように構成されており、該容器中にイオン性液体を移送する、および/または該容器から粒子含有イオン性液体を取出すための入口および出口を備える、装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−525396(P2009−525396A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551354(P2008−551354)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/001226
【国際公開番号】WO2007/084558
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/001226
【国際公開番号】WO2007/084558
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]