説明

物理量センサとその製造方法

【課題】本発明は、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することを目的とする。
【解決手段】第1の基材21と、第2の基材31と、可動部3及び枠体部5を備える機能部と、可動部3の変位を検出する検知部とを有し、第1の枠体部5aが第1の封止層23を有し、第2の基材31の第1の封止層23と対向する位置に第2の封止層33が形成され、第1の封止層23が第2の封止層33と対向する面に第1の接合面と第2の接合面とを有し、前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも第2の基材31側に位置するように第1の封止層23と第2の封止層33とが接合されてなる物理量センサ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン(Silicon)基材を微細加工して形成される物理量センサに係り、特に、気密性に優れる物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon on Insulator)層を備えるシリコン(Silicon)基材を微細加工することで、加速度センサ、衝撃センサ、圧力センサ、または振動型ジャイロ等の物理量センサが製作される。
【0003】
この種の物理量センサにおいては、シリコン基材の一部で形成された物理量の変化を検知する可動部が中央部に設けられ、その周囲に前記可動部を囲むように枠体部が設けられる。
【0004】
そして、この可動部が清浄な空間内で微細な距離で動作できるように、前記可動部の可動領域が、前記枠体部によって気密封止される。
【0005】
そのため、特許文献1に開示される発明では、第1の基材と第2の基材との間に可動部を配置し、この可動部の周囲を囲むように枠体部が設けられる。そして、第1の基材と枠体部とが第1の絶縁層を介して接合され、枠体部の表面に第1の封止層が形成される。また、第2の基材の表面に第2の絶縁層が形成され、この第2の絶縁層の表面に第1の封止層に対向する位置に第2の封止層が形成される。
【0006】
次に、第1の封止層と第2の封止層とを対向させて、所定の熱処理温度で圧接する。その結果、第1の封止層と第2の封止層とが共晶接合することで接合される。このようにして、可動部の可動領域は、枠体部によって気密封止される。
【0007】
特許文献1に開示される発明では、第1の基材と第2の基材との間に可動部と固定電極とが対面するように配置され、第1の封止層と第2の封止層とが共晶接合される。また、可動部と固定電極との間に形成される静電容量の変化によって加速度等の物理量を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2011−010919号
【特許文献2】国際公開WO2010/140468号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示される発明では、第1の封層と第2の封層との互いに共晶接合されるそれぞれの面の酸化状態や汚れ等によって、共晶接合が不均一になることがあった。そのために、共晶接合層の厚さがばらつくことや共晶接合が不十分であることが、容量ギャップ(可動部と固定電極との間隔)のばらつきや封止不良の原因になっていた。尚、容量ギャップがばらつくと静電容量がばらつくことになり、その結果、出力信号である加速度等の物理量がばらつくために測定誤差が大きくなる。
【0010】
よって、共晶接合層の厚さばらつき低減や安定的に共晶接合を形成することで、容量ギャップのばらつきや封止不良を低減することが必要であった。
【0011】
本発明の目的は、このような課題を顧みてなされたものであり、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、を有して構成され、前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を有し、前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を有し、前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を有し、前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に第2の封止層を有し、前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の一方に第1の接合面と第2の接合面とを有し、前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の他方に近く位置するように、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなることを特徴とする。
【0013】
このような態様であれば、前記第1の封止層と前記第2の封止層との互いに接合されるそれぞれの面に酸化皮膜や汚れ等があっても、前記第1の接合面が前記酸化皮膜や前記汚れ等を突き破るので、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが安定的に接合される。
【0014】
その結果、容量ギャップのばらつきや封止不良を低減することができ、本発明によれば、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することが可能である。
【0015】
前記第1の接合面が平面視で不連続な複数の接合面からなることが好ましい。
【0016】
このような態様であれば、前記第1の封止層と前記第2の封止層とを接合する際に、この不連続な複数の接合面の間に形成される隙間から、酸化性ガス等の不要なガスを排出することができるので、前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の酸化を抑制できる。よって、前記第1の封止層と前記第2の封止層との安定的な接合が容易になる。
【0017】
前記第1の接合面が平面視で複数の多角形パターン、複数の円形パターンまたは複数の楕円形パターンの組み合わせからなることが好ましい。
【0018】
このような態様であれば、前記第1の接合面を不連続な複数の接合面から構成することができる。
【0019】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、前記第1の封止層と前記第2の封止層との間に形成される接合層の厚さより小さいことが好ましい。
【0020】
このような態様であれば、前記接合層が前記第1の接合面と前記第2の接合面とに跨って形成されているので、前記第1の封止層と前記第2の封止層との間に充分な接合層が得られている。
【0021】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、100nmから200nmであることが好ましい。このようにすることで前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面をより安定的に行うことが可能となる。
【0022】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離及び前記第3の接合面と前記第4の接合面との接合面間の距離が100nmよりも小さい際には、第1の封止層と第2の封止層との互いに接合されるそれぞれの面にある酸化皮膜や汚れ等を突き破ることが不十分な段階で、前記第2の接合面が前記第2の封止層あるいは前記第1の封止層に接することがあるので、前記第1の封止層と前記第2の封止層との間の接合が不安定となる。
【0023】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が200nmよりも大きい際には、後述する第1の潰れ量と第2の潰れ量に対して前記接合面間の距離が大きくなり、前記第2の接合面が前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層に埋め込まれないことがあり、前記第1の封止層と前記第2の封止層との間の接合が不安定となることがある。
【0024】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、前記接合によって前記第2の封止層が圧縮される第1の潰れ量あるいは前記接合によって前記第1の封止層が圧縮される第2の潰れ量より小さいことが好ましい。
【0025】
このような態様であれば、前記第1の接合面及び前記第2の接合面が、前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層に埋め込まれた状態となり、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが安定的に接合される。
【0026】
前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の面積に対して第1の接合面の面積が10%から50%であることが好ましい。
【0027】
前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の面積に対して前記第1の接合面の面積が10%より小さいと、前記第1の接合面の面積が前記酸化皮膜や前記汚れ等の面積よりも小さいことがあり、前記酸化皮膜や前記汚れ等の一部に突き破られないで残る部分が発生することがある。
【0028】
前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の面積に対して前記第1の接合面の面積が50%より大きいと、前記第1の接合面を通して前記第2の封止層に集中的に荷重される単位面積当りの力が小さくなり、前記酸化皮膜や前記汚れ等が十分に突き破られないことがある。
【0029】
よって、前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の面積に対して前記第1の接合面の面積を10%から50%にすることで、前記酸化皮膜や前記汚れ等が適切に突き破られるので、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが安定的に接合される。
【0030】
前記第1の接合面と前記第2の接合面を有する前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の一方がゲルマニウムを有して形成され、前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の他方がアルミニウムを有して形成されていることが好ましい。
【0031】
このような態様であれば、前記第1の接合面と前記第2の接合面とがゲルマニウムで形成され、前記第1の接合面と前記第2の接合面とに対向する封止層がアルミニウムで形成される。前記接合の際に、ゲルマニウムはアルミニウムに比べて硬いので、前記第1の接合面と前記第2の接合面とは対向する封止層を容易に潰すことができるので、前記酸化皮膜や前記汚れ等が容易に突き破られる。よって、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが安定的に接合される。
【0032】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、から構成される物理量センサの製造方法であって、前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を形成し、前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を形成し、前記第1の封止層に第1の接合面と第2の接合面とを形成する工程と、前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を形成し、前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に前記第1の封止層と接合する第2の封止層を設ける工程と、前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第2の絶縁層側に位置するように前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなる工程と、を有することを特徴とする。
【0033】
このような態様であれば、前記第1の封止層と前記第2の封止層との互いに接合されるそれぞれの面に酸化皮膜や汚れ等があっても、前記第1の接合面が前記酸化皮膜や前記汚れ等を突き破るので、前記第1の封止層と前記第2の封止層とは安定的に接合される。
【0034】
その結果、容量ギャップのばらつきや封止不良を低減することができ、本発明によればは、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することが可能である。
【0035】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、から構成される物理量センサの製造方法であって、前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を形成し、前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を形成する工程と、前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を形成し、前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に前記第1の封止層と接合する第2の封止層を形成し、前記第2の封止層に第1の接合面と第2の接合面とを形成する工程と、前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第1の絶縁層側に位置するように前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなる工程と、を有することを特徴とする。
【0036】
このような態様であれば、前記第1の封止層と前記第2の封止層との互いに接合されるそれぞれの面に酸化皮膜や汚れ等があっても、前記第1の接合面が前記酸化皮膜や前記汚れ等を突き破るので、前記第1の封止層と前記第2の封止層とは安定的に接合される。
【0037】
その結果、容量ギャップのばらつきや封止不良を低減することができ、本発明によればは、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる物理量センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態における物理センサの平面略図である。
【図2】図1に示す物理量センサのII−II線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面略図である。
【図3】第1の実施形態の物理量センサが無重力下で静止している状態を示す斜視略図である。
【図4】第1の実施形態の物理量センサが動作している状態を示す斜視略図である。
【図5】図1に示す機能部の裏面状態を示す部分透視略図である。
【図6】図5に対向する電極基板側の部分透視略図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面略図である。
【図8】図5の第1の変形例である。
【図9】図5の第2の変形例である。
【図10】第1の実施形態における物理量センサの製造工程説明図である。
【図11】第1の実施形態における第1の封止層と第2の封止層の接合面の断面略図である。
【図12】第2の実施形態である電極基板の表面状態を示す部分透視略図である。
【図13】図11に対向するセンサ基板側の部分透視略図である。
【図14】第2の実施形態における第1の封止層と第2の封止層の接合面の断面略図である。
【図15】第3の実施形態における第1の封止層と第2の封止層の接合面の断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<第1の実施形態>
各図に示す物理量センサ1に関しては、Y方向が左右方向であり、Y1方向が左方向でY2方向が右方向、X方向が前後方向であり、X1方向が前方向でX2方向が後方向である。また、X方向とY方向の双方に直交する方向が上下方向(Z方向;高さ方向)である。なお、各図面は、見やすくするために寸法を適宜異ならせて示している。
【0041】
第1の実施形態では、物理量センサ1は加速度センサである。物理量センサ1は加速度センサに限定されるものではなく、衝撃センサ、圧力センサ、または振動型ジャイロ等も可能である。
【0042】
図1に示す物理量センサ1は、例えば、長方形の平板である導電性の機能部(シリコン層)2を有して形成されている。即ち、機能部2に、各部分の形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層が存在していない部分で、シリコン基材をディープRIE(ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング)のエッチング工程で切断することで、各部分に分離している。したがって、物理量センサ1の機能部2に形成される各部分は、シリコン層の表面と裏面の厚みの範囲内で構成されている。物理量センサ1が無重力下で静止状態の際は、図3に示すように、可動部3は、表面全体と裏面全体とのそれぞれが同一面上に位置しており、表面及び裏面から突出する部分がない。なお、実際の物理量センサ1は地球上で使用されるため、地球の重力の影響で可動部3は静止状態であっても若干変位を生じている。
【0043】
ただし、図1は第1の基材21を透視して機能部2を第1の基材21側から眺めた平面略図である。また、図3、図4は第1の基材21、第2の基材31及び枠体部5を省略している。
【0044】
図1に示すように、物理量センサ1を構成する機能部2は、可動部3と、可動部3の周囲に第1の枠体部5aを有している。
【0045】
図1や図3に示すように、可動部3は、高さ方向(Z)に平行に変位する錘部4と、錘部4の内側に設けられた回動支持部6、7、8、9を有して構成される。
【0046】
図1に示すように、第1の回動支持部6は、前方向(X1)に延びる連結腕6aと、後方向(X2)に延びる脚部6bとが一体に形成されている。また図1に示すように第2の回動支持部7は、後方向(X2)に延びる連結腕7aと、前方向(X1)に延びる脚部7bとが一体に形成されている。
【0047】
また、可動部3の内側には、中央アンカ部10、左側アンカ部11及び右側アンカ部12が設けられている。各アンカ部10〜12は、左右方向(Y)に所定の間隔を空けて設けられる。中央アンカ部10、左側アンカ部11及び右側アンカ部12の前後方向(X)の幅寸法は略同一である。
【0048】
連結腕6a、7a及び脚部6b、7bは各アンカ部10〜12から離れる方向であって、前後方向(X1−X2方向)に平行に所定の幅寸法にて延出する形状で形成されている。
【0049】
各アンカ部10〜12は、図2(図2は図1に示すII−II線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面図である。ただし図2には中央アンカ部10のみが図示されている。)に示すように、第1の基材21に酸化絶縁層である第1の絶縁層22を介して固定支持される。
【0050】
また、可動部3の周囲に設けられる第1の枠体部5aは、第1の基材21に酸化絶縁層である第1の絶縁層22を介して固定支持される。
【0051】
図1に示すように、第1の回動支持部6の連結腕6aの先端部と錘部4とが連結部40aによって回動自在に連結されており、第2の回動支持部7の連結腕7aの先端部と錘部4とが連結部40bによって回動自在に連結されている。
【0052】
第1の回動支持部6の連結腕6aは、左側アンカ部11と支持連結部50b及び中央アンカ部10と支持連結部50aによって回動自在に連結されている。第2の回動支持部7の連結腕7aは、右側アンカ部12と支持連結部51b及び中央アンカ部10と支持連結部51aによって回動自在に連結されている。
【0053】
左側アンカ部11の後方向(X2)に、錘部4及び左側アンカ部11と分離して形成される第3の回動支持部8が設けられ、右側アンカ部12の前方向(X1)に、錘部4及び右側アンカ部12と分離して形成される第4の回動支持部9が設けられている。
【0054】
第3の回動支持部8の先端部と錘部4とは、連結部41aによって回動自在に連結されている。また、第4の回動支持部9の先端部と錘部4とは、連結部41bによって回動自在に連結されている。
【0055】
第3の回動支持部8と左側アンカ部11とは、支持連結部52aによって回動自在に連結されている。また、第4の回動支持部9と右側アンカ部12とは、支持連結部52bによって回動自在に連結されている。
【0056】
第1の回動支持部6の連結腕6aと第3の回動支持部8との間が、連結部42aを介して連結されている。また、第2の回動支持部7の連結腕7aと第4の回動支持部9との間が、連結部42bを介して連結されている。
【0057】
各連結部40a、40b、41a、41b、42a、42b及び各支持連結部50a、50b、51a、51b、52a、52bは、シリコン層をエッチングによって薄い板状に切り出すことで、ばね性を有するトーションバー(ばね部)で構成される。
【0058】
導電性の第1の基材21は、例えばシリコン基板である。第1の絶縁層22は、回動支持部6〜9及び錘部4に対向する位置には設けられていない。ただし、図2には、第1の回動支持部6の脚部6b、第2の回動支持部7の脚部7b、及び錘部4のみが図示されている。機能部2は、可動部3、アンカ部10〜12、及び第1の枠体部5aから構成され、例えばSOI層である。そして、センサ基板20は、第1の基材21、機能部2、及び第1の絶縁層22から構成される。
【0059】
ただし、可動部3は、錘部4、回動支持部6〜9、連結部40〜42、及び支持連結部50〜52から構成される。
【0060】
図2に示すように、物理量センサ1には、可動部3と高さ方向(Z)に離れた一方に第1の基材21と他方に導電性の第2の基材31が設けられている。配線基板30は、第2の基材31の第1の基材21に対向する面に、第2の絶縁層32が形成され、第2の絶縁層32の表面に固定電極層35が形成されて構成される。固定電極層35は、第2の絶縁層32の表面に導電性金属材料をスパッタし、またはメッキすることで形成される。そして、固定電極層35と可動部3、錘部4及び枠体部5とが共に検知部を構成する。
【0061】
各アンカ部10〜12(中央アンカ部10のみ図示)と配線基板30とは金属の接合層60により共晶接合されている。第2の絶縁層32の内部には配線層36が形成されている。配線層36は、接合層60と電気的に接続されると共に、図示していないが第2の絶縁層32の内部を通って外部に引き出されている。
【0062】
センサ基板20側の第1の枠体部5aと配線基板30側の第2の枠体部5bとの間が金属の封止層61により共晶接合されている。
【0063】
本実施形態では、接合層60及び封止層61は共晶接合としたが、これに限定されるものではなく、拡散接合も可能である。
【0064】
物理量センサ1は、無重力下で外部から力(加速度等)が作用していない際は、それぞれの支持連結部50〜52及び連結部40〜42に設けられたトーションバー(ばね部)の弾性復元力により、図3に示すように、全ての部分の表面が同一平面となった状態を維持している。尚、物理量センサ1を実際に使用する際は、地球の重力の影響で若干変位している。
【0065】
物理量センサ1に外部から例えば加速度が与えられると、加速度は回動支持部6〜9、錘部4、アンカ部10〜12等に作用する。この際、それぞれの構成部材の質量の大小に起因する慣性力の差によって、それぞれの構成部材は相対的に移動する。その結果、第1の基材21と第2の基材31に連結されたアンカ部10〜12が絶対空間に留まろうとし、錘部4は加速度の作用方向へ相対的に移動する。そのため、錘部4は加速度により図3の静止状態の位置から高さ方向へ向けて変位すべく、第1の回動支持部6が支持連結部50a、50bを中心に高さ方向に回動し、第2の回動支持部7が支持連結部51a、51bを中心して高さ方向に回動し、第3の回動支持部8が支持連結部52aを中心として高さ方向に回動し、第4の回動支持部9が支持連結部52bを中心として高さ方向に回動する。その結果、図4に示すように各構成部材は変位する。(ただし、図4には構成部材の一部のみが図示されている。)この回動動作時、各連結部40〜42及び支持連結部50〜52に設けられるトーションバーは捩れ変形する。
【0066】
図5は、図1に示す機能部2の裏面状態を示す部分透視図である。ただし、図5には図1に示す可動部3やアンカ部10〜12の構造は図示していない。また図6は、図5に対向する配線基板30側の部分透視略図であり、配線基板30の表面状態を示す部分透視略図である。ただし図2に示す固定電極層35やアンカ部10〜12と対向する位置に設けられる第2の絶縁層32の突起部10b〜12bや突起部10b〜12b表面の金属層については図示していない。
【0067】
また、図7は、図5のVII−VII線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面略図である。
【0068】
図5、図2に示すように、センサ基板20側の第1の枠体部5aの裏面(配線基板30との対向面)には、可動部3の周囲を囲むように枠状パターンの第1の封止層23が形成されている。そして、図5、図7に示すように、第1の封止層23には第2の接合面25の内側に不連続な第1の接合面24が形成されている。また、第1の接合面24は、第2の接合面25よりも配線基板30側に突出して形成されている。この突出した量は、第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図7に示すA)である。
【0069】
第1の封止層23は、ゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を有して形成され、スパッタ等により形成することができる。
【0070】
図6、図2に示すように、配線基板30側には第1の枠体部5aに対向する位置に第2の枠体部5bが形成され、第2の枠体部5bの表面(センサ基板20との対向面)に第2の封止層33が形成されている。
【0071】
第2の封止層33は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を有して形成され、スパッタ等により形成することができる。
【0072】
第1の封止層23と第2の封止層33とは共晶接合されて、図2に示す封止層61が形成される。
【0073】
図8、図9は、図5の変形例である。図5に示す複数の矩形パターンからなる第1の接合面24が、図8では複数の楕円パターン、図9では複数の2重に配置された矩形パターンに変形されている。
【0074】
図10は、物理量センサ1の製造方法を示す工程図である。各図は、製造工程中の部分断面図である。
【0075】
図10(a)に示す工程で、センサ基板20を形成する。センサ基板20は、2枚のシリコン基板がシリコン酸化膜(SiO)を介して接合されたシリコン基材を加工して得られる。シリコン基材の一方の表面に、可動部3、アンカ部10〜12、及び第1の枠体部5aのそれぞれの形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層から露出しているシリコン基材の部分を、ディープRIEなどのイオンエッチング手段で除去し、可動部3、アンカ部10〜12、及び第1の枠体部5aを互いに分離する。ただし、左側アンカ部11及び右側アンカ部12は図示していない。
【0076】
このとき、図示していないが、イオンエッチング手段にて可動部3に多数の微細孔を形成しておく。そして、シリコンを溶解せずシリコン酸化膜を溶解できる選択性の等方性エッチング処理を行う。この際、エッチングガスまたはエッチング液は、分離した溝内に浸透し、さらに微細孔から浸透して、シリコン酸化膜を除去する。
【0077】
その結果、アンカ部10〜12及び第1の枠体部5aと第1の基材21との間のみに第1の絶縁層22が残され、可動部3と第1の基材21との間の第1の絶縁層22は除去される。
【0078】
第1の基材21の厚さ寸法は0.2〜0.7mm程度、可動部3、アンカ部10〜12及び第1の枠体部5aから構成される機能部2の厚さ寸法は10〜30μm程度、第1の絶縁層22の厚さ寸法は1〜3μm程度である。
【0079】
続いて機能部2の配線基板30に対向する面に、第1の枠体部5aの第1の接合面24とアンカ部10〜12の第5の接合面28とに相当する領域を覆うようにレジスト層を形成し、ディープRIEなどのイオンエッチング手段によってシリコン層を除去して、第1の枠体部5aとアンカ部10〜12との裏面(配線基板30との対向面)にそれぞれ突出する接合面を形成する。
【0080】
続いて第1の金属層をスパッタ等で形成する。そして、第1の金属層をレジスト層で覆い、ディープRIEなどのイオンエッチング手段によって第1の枠体部5aとアンカ部10〜12との裏面以外の第1の金属層を除去する。同時にシリコン層もエッチングし第1の枠体部5aとアンカ部10〜12とを突起状構造に加工する。このようにして、第1の枠体部5aの裏面に第1の封止層23が形成され、第1の封止層23は第2の接合面25と突出する第1の接合面24とを有するように形成される。
【0081】
第1の金属層は、ゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を主成分とする金属膜である。
【0082】
図10(b)に示す工程で、配線基板30を形成する。配線基板30を構成する導電性の第2の基材31の表面に第2の絶縁層32を形成し、第2の絶縁層32の表面に第2の枠体部5b、アンカ部10〜12に対向する位置に突起部10b〜12bをエッチングにより形成する。第2の基材31は、厚さ寸法が0.2〜0.7mm程度のシリコン基板である。第2の絶縁層32は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコンナイトライト膜(Si)、またはアルミナ膜(Al)等であり、スパッタやCVD等で形成される。ただし、突起部11b、12bは図示していない。
【0083】
続いて第2の絶縁層32の表面に第2の金属層をスパッタ等で形成する。そして、第2の金属層をレジスト層で覆い、ディープRIEなどのイオンエッチング手段によって、第2の枠体部5b及び突起部10b〜12bの表面や固定電極層35以外の第2の金属層が除去される。そして、第2の枠体部5bの表面に第2の封止層33が形成される。
【0084】
第2の金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属膜である。
【0085】
上述のように製造されたセンサ基板20と配線基板30とは、互いに対向させて位置調整をした状態で真空容器に挿入し、真空引きしながら所定の温度(およそ430℃)まで加熱され圧着される。これにより、図10(c)に示す工程で、第1の枠体部5aの裏面に形成された第1の封止層23と第2の枠体部5bの表面に形成された第2の封止層33とが共晶接合して封止層61が形成される。これにより、センサ基板20と配線基板30とが、第1の枠体部5a、第2の枠体部5b、及び封止層61を含む枠体部5によって気密に封止される。
【0086】
本実施形態では、ゲルマニウムとアルミニウムとの共晶点(424℃)より高い温度である430℃付近まで加熱している。
【0087】
この共晶接合では、接合面に生じる共晶反応を利用して原子を相互に拡散させて接合するので、第1の封止層23と第2の封止層33とのそれぞれの融点より低い温度で、塑性変形ができるだけ生じない程度に加圧して接合することができる。よって、接合面の残留応力を低減できるので、接合面の気密性劣化を抑制できる。また、接合時の温度を下げることができるので、接合面の酸化を抑制し封止不良を低減できる。
【0088】
また、真空容器内での真空引きの際に、第1の接合面24が不連続な複数の接合面で形成されていると、第1の封止層23と第2の封止層33とを接した状態で、不連続な複数の接合面の間に形成される隙間から、始めに物理量センサ1の内部から酸化性ガスである空気等を排出し、所定の温度までの昇温時に脱ガス(昇温により生じる)を排出することができる。よって、所定の温度まで加熱される際に、第1の封止層23と第2の封止層33との接合されるそれぞれの面の酸化を抑制することができる。
【0089】
第1の封止層23と第2の封止層33との金属材料の主成分の組み合わせとして、互いに共晶接合することにより、アルミニウムと亜鉛、アルミニウムとマグネシウム、金とシリコン、金とインジウム、金とゲルマニウム、金と錫も可能である。
【0090】
第1の封止層23は、段差的に形成された第1の接合面24と第2の接合面25を有しており、第1の接合面24が第2の接合面25より突出して形成されている。そのため、センサ基板20を配線基板30に押し圧する際に、突出した第1の接合面24が対向する第2の封止層33に最初に押し圧される。そのため、加圧される力は、第1の接合面24の面を通して集中的に荷重されるので、第1の接合面24と第2の封止層33との接合されるそれぞれの面にある酸化皮膜や汚れ等が突き破られ易くなる。
【0091】
加熱に加えて、第1の接合面24が第2の封止層33に集中的に荷重する力によって、酸化皮膜や汚れ等は、消失、変形や破壊等をすることで突き破られる。そして、清浄な金属表面が接することで共晶反応が進行する。
【0092】
その結果、第1の接合面24と第2の封止層33とが接する面の全面で均一に共晶接合が始まる。そして、共晶接合した層(共晶接合層)が前記接する面から第1の接合面24と第2の封止層33の内側に拡がる。次に、第2の接合面25が第2の封止層33に押し圧されると、第2の接合面25と第2の封止層33との接合面で共晶接合が始まる。この際に、第2の接合面25と第2の封止層33との接合されるそれぞれの面に酸化皮膜や汚れ等があっても、第1の接合面24と第2の封止層33及び第2の接合面25と第2の封止層33との正常な(酸化皮膜や汚れ等がない)箇所で進行する共晶接合が、第1の封止層23と第2の封止層33との接合面の全面に拡がる。よって、第1の封止層23と第2の封止層33との接合面の全面に安定的に共晶接合層が形成される。
【0093】
このようにして、本実施形態によれば、第1の封止層23と第2の封止層33とは安定的に共晶接合される。よって、共晶接合層の厚さがばらつくことや共晶接合が不十分であることが抑制され、容量ギャップ(機能部2と固定電極層35との対向する面の間隔)のばらつきやボイド等による封止不良が防止された。
【0094】
そして、図11に示すように、第1の接合面24が第2の接合面25よりも第2の絶縁層32側に位置すると共に、共晶接合層が第1の封止層23と第2の封止層33との全体に拡がって封止層61が形成されて、第1の封止層23と第2の封止層33とが接合される。
【0095】
本実施形態は、原理的に液相拡散を利用する共晶接合に対して述べたが、固相拡散を利用する拡散接合に対しても基本的に同様な現象が起こる。よって、本発明によれば、共晶接合及び拡散接合に対して、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる高信頼性の物理量センサ1を提供することが可能である。
【0096】
共晶接合及び拡散接合に関しては、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)等によって断面加工し、この断面をエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray spectroscopy)等で元素分布を計測することで確認される。そして、接合層領域で構成元素がほぼ一定の比率で分布する場合が共晶接合であり、接合面から互いに元素が拡散し合い元素濃度が変化する場合が拡散接合である。
【0097】
上記のエネルギー分散型X線分析以外にも、オージェ電子分光法(Auger Electron spectroscopy)や二次イオン質量分析法(Secondary Ion−microprobe Mass spectrometer)等による深さ方向元素分布分析によっても確認できる。
【0098】
また、第1の封止層23が第2の封止層33に圧着される際に、圧着される領域の膜厚は潰れることで薄くなる。最初に第1の接合面24が第2の封止層33に押し圧されるが、次に第2の接合面25が第2の封止層33に押し圧される際は、押し圧される単位面積当りの力が小さくなり第3の潰れ量(潰れて薄くなる膜厚:図11に示すC)が制限されて、そのばらつきが小さくなる。その結果、封止層61の厚さばらつきが小さくなる。このように、第1の接合面24と第2の接合面25を設けることは、容量ギャップを設計値に制御するために好ましい方法であり、容量ギャップのばらつきを低減する。
【0099】
図11に示すように、第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図11(b)に示すA)が、第2の封止層33の第1の潰れ量(図11に示すE)より小さいことが好ましい。このような態様であれば、第1の接合面24と第2の接合面25とは、第2の封止層33に埋め込まれた状態となり、第1の封止層23と第2の封止層33とが安定的に強固及び気密に接合される。
【0100】
第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図11(b)に示すA)が、第1の封止層23と第2の封止層33との間に形成される共晶接合層の厚さより小さいことが確認されると、上述に説明した共晶接合のメカニズムが正常に進行したことを意味する。即ち、共晶接合層が第1の接合面24と第2の接合面25とに跨って形成されて、第1の封止層23と第2の封止層33との間に充分な共晶接合層が得られている。逆の場合には、第2の接合面25の位置に共晶接合されていない領域があることを意味する。
【0101】
第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図11(b)に示すA)が200nmよりも大きい際には、第1の潰れ量(図11に示すE)に対して前記接合面間の距離が大きくなり、第2の接合面25が第2の封止層33に埋め込まれないことがあり、第1の封止層23と第2の封止層33との間の接合が不安定となることがある。
【0102】
第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図11(b)に示すA)が100nmよりも小さい際には、第1の封止層23と第2の封止層33との互いに接合されるそれぞれの面にある酸化皮膜や汚れ等を突き破ることが不十分な段階で、第2の接合面25が第2の封止層33に接することがあるので、第1の封止層23と第2の封止層33との間の接合が不安定となる。
【0103】
第1の封止層23と第2の封止層33との接合面の面積、即ち、平面視で第1の封止層23と第2の封止層33が重なりあった領域の全面積に対して、第1の接合面24の面積、即ち、例えば図5に示すように、第1の接合面24を構成する複数の矩形パターンの面積の総和が10%より小さいと、第1の接合面24の面積が酸化皮膜や汚れ等が占める面積よりも小さいことがあり、前記酸化皮膜や前記汚れ等の一部に突き破られないで残る部分が発生することがある。
【0104】
第1の封止層23と第2の封止層33との接合面の面積に対して第1の接合面24の面積が50%より大きいと、第1の接合面24を通して第2の封止層33に集中的に荷重される単位面積当りの力が小さくなり、前記酸化皮膜や前記汚れ等が十分に突き破られないことがある。
【0105】
第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離、第1の潰れ量や第3の潰れ量等は、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)等によって断面加工し、この断面のSIM(Scanning Ion Microscope)像、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)像、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)像等から計測することができる。
【0106】
ゲルマニウムあるいはゲルマニウム合金とアルミニウムあるいはアルミニウム合金とは共晶反応することは良く知られている。また、ゲルマニウムがアルミニウムより硬いので、ゲルマニウムを含む第1の封止層23の方に第1の接合面24と第2の接合面25を設けて、第2の封止層33に押し圧して、酸化皮膜や汚れ等を突き破ることにした。
【0107】
また、第1の接合面24と第2の接合面25とは対向する第2の封止層33を容易に潰すことができるので、その表面にある前記酸化皮膜や前記汚れ等が容易に突き破られる。
【0108】
本実施形態の加速度センサは、機能部2と固定電極層35との間に形成される静電容量によって加速度を検知している。よって、機能部2と固定電極層35との間隔である容量ギャップがばらつくと、機能部2と固定電極層35との間に形成される静電容量がばらつくことになる。その結果、出力される加速度、即ち、出力信号がばらつくことになり、容量ギャップを要因とする測定誤差が大きくなる。
【0109】
共晶接合が不十分のために気密性が損なわれると、そこをリークパスとして空気や水等が物理量センサ1の機能部2に浸入し、物理量センサ1の信頼性を低下させる問題がある。
【0110】
よって、本実施形態によれば、共晶接合層の厚さがばらつくこと、第1の潰れ量及び第2の潰れ量がばらつくことや共晶接合が不十分であることが抑制されることで、容量ギャップのばらつきや封止不良が防止され、測定誤差が小さいと共に気密性に優れる高信頼性の物理量センサ1を提供することが可能である。
【0111】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、センサ基板20側の第1の封止層23に第1の接合面24と第2の接合面25とを形成した。図12、図14(a)に示すように、第2の実施形態では、配線基板30側の第2の封止層33に第2の接合面25より突出する第1の接合面24と第2の接合面25とを形成した。図13に示すように、センサ基板20には、第2の封止層33に対向する位置に第1の封止層23が形成されている。
【0112】
また、第2の実施形態では、第1の封止層23はアルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属膜であり、第2の封止層33はゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を主成分とする金属膜である。
【0113】
図14(b)に示すように、第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離(図14(b)に示すF)が、第1の封止層23の第2の潰れ量(図14(b)に示すG)より小さいことが好ましい。このような態様であれば、第1の接合面24と第2の接合面25とは、第1の封止層23に埋め込まれた状態となり、第1の封止層23と第2の封止層33とが安定的に強固及び気密に接合される。
【0114】
第1の接合面24と第2の接合面25との接合面間の距離や第2の潰れ量等は、集束イオンビーム等によって断面加工し、この断面のSIM像や走査型電子顕微鏡像等から計測することができる。
【0115】
上述した以外に関しては、第2の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同じである。
【0116】
<第3の実施形態>
図11に示すように、第1の実施形態では第1の枠体部5aに段差を設けることで、第1の接合面24と第2の接合面25を形成した。第3の実施形態では、図15に示すように、第1の封止層となる第1の金属層を形成した後に、第1の金属層の一部をレジスト層で覆い、ディープRIEなどのイオンエッチング手段によって、第1の金属層に段差を設けることにより第1の接合面24と第2の接合面25を形成した。
【0117】
上述した以外に関しては、第3の実施形態は、基本的に第1の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0118】
1 物理量センサ
2 機能部
3 可動部
4 錘部
5 枠体部
5a 第1の枠体部
5b 第2の枠体部
6、7、8、9 回動支持部
10、11、12 アンカ部
20 センサ基板
21 第1の基材
22 第1の絶縁層
23 第1の封止層
24 第1の接合面
25 第2の接合面
28 第5の接合面
30 配線基板
31 第2の基材
32 第2の絶縁層
33 第2の封止層
35 固定電極層
36 配線層
40、41、42 連結部
50、51、52 支持連結部
61 封止層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、を有して構成され、
前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を有し、
前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を有し、
前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を有し、
前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に第2の封止層を有し、
前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の一方に第1の接合面と第2の接合面とを有し、前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の他方に近く位置するように、前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記第1の接合面が平面視で不連続な複数の接合面からなることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記第1の接合面が平面視で複数の多角形パターン、複数の円形パターンまたは複数の楕円形パターンの組み合わせからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、前記第1の封止層と前記第2の封止層との間に形成される接合層の厚さより小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、100nmから200nmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物理量センサ。
【請求項6】
前記第1の接合面と前記第2の接合面との接合面間の距離が、前記接合によって前記第2の封止層が圧縮される第1の潰れ量あるいは前記接合によって前記第1の封止層が圧縮される第2の潰れ量より小さいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の物理量センサ。
【請求項7】
前記第1の封止層と前記第2の封止層との接合面の面積に対して第1の接合面の面積が10%から50%であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の物理量センサ。
【請求項8】
前記第1の接合面と前記第2の接合面を有する前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の一方がゲルマニウムを有して形成され、前記第1の封止層あるいは前記第2の封止層の他方がアルミニウムを有して形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の物理量センサ。
【請求項9】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、から構成される物理量センサの製造方法であって、
前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を形成し、前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を形成し、前記第1の封止層に第1の接合面と第2の接合面とを形成する工程と、
前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を形成し、前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に前記第1の封止層と接合する第2の封止層を設ける工程と、
前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第2の絶縁層側に位置するように前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなる工程と、
を有することを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項10】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された可動部及び前記可動部の周囲を囲む枠体部を備える機能部と、前記可動部の変位を検出するための検知部と、から構成される物理量センサの製造方法であって、
前記枠体部と前記第1の基材との間に第1の絶縁層を形成し、前記枠体部が前記第2の基材と対向する面に枠状で形成された第1の封止層を形成する工程と、
前記第2の基材の前記機能部と対向する面に第2の絶縁層を形成し、前記第2の絶縁層の前記機能部と対向する面の前記第1の封止層と対向する位置に前記第1の封止層と接合する第2の封止層を形成し、前記第2の封止層に第1の接合面と第2の接合面とを形成する工程と、
前記第1の接合面が前記第2の接合面よりも前記第1の絶縁層側に位置するように前記第1の封止層と前記第2の封止層とが接合されてなる工程と、
を有することを特徴とする物理量センサの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−7713(P2013−7713A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141946(P2011−141946)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】