説明

特に高パラフィンの触媒性水素異性化のための合成ゼオライト

特に高パラフィンの水素異性化のためのZSM−12タイプのゼオライトであり、0.1μm以下の初晶サイズで;最大4000バールの圧力における水銀多孔度測定において検出された比容積が4ないし10nmの細孔半径の範囲において30ないし200mm/gであり;さらに、アルミニウム源と、ケイ素源としての沈殿ケイ酸と、テンプレートとしてのTEAと、原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源Mとからなり;HO:SiOの分子量比が5ないし15で選択される、合成ゲル組成物から形成される。本発明はさらに前記のゼオライトを含んだ触媒ならびにその適用方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、特に高パラフィンの水素異性化に適しているZSM−12タイプのゼオライトおよび触媒、この種のZSM−12タイプゼオライトあるいは触媒の製造方法、ならびにその触媒の使用方法に関する。
【0002】
パラフィンの異性化は重要な精製工程の1つに数えられる。最新の法律による自動車ガソリンにおける芳香剤およびメチルt−ブチルエーテルの使用の制限によって、高パラフィン(Cより大きいもの)の異性化が自動車用ガソリンのオクタン価を高めるための重要な代替方法となった。このことは特にCパラフィンの異性化に該当するものである。
【0003】
従来この種の異性化は過度に小さい選択性のため、すなわち大量の分解生成物の発生のため実現不可能であった。
【0004】
昨今、高パラフィンの水素異性化および水素分解のための触媒としてのゼオライトの使用に関する一連の研究が実施されている。W.ツァングおよびP.G.スミルニオティス(J.Catal.第182巻、第400−416頁(1999))は、n−オクタンの水素異性化または水素分解のための選択性および反応メカニズムに対するゼオライト構造とその酸性度の影響について発表している。触媒としては有するZSM−12、USYならびにβ−ゼオライトが多様なSi/Al比率で検査された。ZSM−12ゼオライトの合成物において、Si/Al比率を調節するために非アルミニウム化によって酸化アルミニウム塩がゼオライトから除去された。そのようにして製造されたゼオライトは、その表面酸性度と触媒活性度が試験された。290℃を超える温度において、n−オクタンが約50%の変換率および27ないし41%の選択性でイソオクタンに変換された。
【0005】
A.カトビッツおよびG.ジョルダーノ(ケミストリエクスプレス、第6巻第16号、第969−972(1991))は、次のヒドロゲル系からなるZSM−12ゼオライト合成物について発表している:x NaO:y TEABr:z Al:50 SiO:1000 HO(ここで2.5<x<7.5;3.5<y<10;0<z<1)。沈殿ケイ酸を使用してのZSM−12の生成に際して、NaO/SiO比=0.1、TEABr/SiO比=0.2、およびSiO/Al比=100が適用された。純粋かつ結晶性(Na−TEA)のZSM−12を得るためには以下の条件が推奨される:Si/Alが50の領域、OH/TEAは1の領域、HO/OHは100の領域となる。
【0006】
米国特許第5800801号明細書には、MTWゼオライトと、その製造方法、ならびに炭化水素の分解におけるその適用方法が開示されている。このMTWゼオライトはZSM−12ゼオライトとも呼称される。このゼオライトは特定のX線回折図形と300m/gより大きな比表面積を有する。このMTW−ゼオライト触媒の製造のために、ケイ酸ナトリウムの水溶液が生成され、その中に水酸化テトラエチルアンモニウム溶液と硝酸アルミニウム水溶液とを付加し、ここで各成分の分量は、SiO/Al:>120;TEA/SiO:0.2−0.95;HO/SiO:20−300;OH/SiO:0.4−0.7が成立するように選択する。
【0007】
米国特許第3970544号明細書ならびにドイツ国特許第2213109C2号明細書には、ZSM−12ゼオライトと、その製造方法と、ならびに炭化水素の変換におけるその適用方法が開示されている。このZSM−12ゼオライトにおいて、SiO/Al比は49ないし300となる。例においては、コロイド状二酸化ケイ素がシリコン源として使用されている。
【0008】
高パラフィンの水素異性化においては、大量の低分子分解生成物が発生する。この副反応は一般的に高い温度のために促進されるものであるが、これは技術的に充分な変換率を達成するために必要なものである。
【0009】
従って、本発明の目的は、例えば高パラフィンの水素異性化に使用されるように触媒内における適用に特に適している、ZSM−12タイプのゼオライトを提供することである。さらに、本発明の目的は、特に高パラフィンの水素異性化に際してより高い収量でイソパラフィンを得ることができ、またその他の炭化水素の変換においても良好な結果を得ることができる触媒を提供することである。
【0010】
前記の課題は、請求項1に従ったZSM−12タイプのゼオライトによって解決される。ZSM−12タイプのゼオライトの好適な追加構成が従属請求項の対象である。さらに、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトを含んだ触媒が本発明によって提供される。この触媒の好適な追加構成が請求項8の従属請求項の対象である。
【0011】
意外なことに、特定の特性を合成物において維持した際に極めて好適なゼオライトが得られ、これは特に高い活性度において高パラフィンの水素異性化を行うための触媒内での使用に適しており、ここで反応を比較的低い温度で実施できることが判明した。
【0012】
従って、本発明の対象はまず高パラフィンの水素異性化のためのZSM−12タイプのゼオライトであり、
(a) 0.1μm未満の初晶サイズで;
(b) 最大4000バールの圧力における水銀多孔度測定において検出された比容積が4ないし10nmの細孔半径の範囲において30ないし200mm/gであり;
(c) さらに、
c1) アルミニウム源と、
c2) ケイ素源としての沈殿ケイ酸と、
c3) テンプレートとしてのTEAと、
c4) 原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源Mとからなり;
c5) HO:SiOの分子量比が5ないし18で選択される、
合成ゲル組成物から形成される。
【0013】
本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、極めて高い多孔性を特徴とする。このことは水銀多孔度測定によって測定された比細孔容積によって明確に示され、特に細孔半径に関して明確である。本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、水銀多孔度測定において細孔半径が4ないし10nmの範囲において30ないし200mm/g、好適には80ないし150mm/g、特に好適には100ないし130mm/gの比容積を有する。コロイド状のケイ酸を使用して生成されたZSM−12タイプのゼオライトは、この細孔半径の範囲において著しく小さな比細孔容積を有する。その4ないし10nmの細孔半径の範囲における典型的な数値は約3mm/gである。10ないし100nmの細孔半径の領域において本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、約70ないし700mm/g、好適には約150ないし550mm/g、特に好適には約200ないし500mm/gの比細孔容積を有する。コロイド状のケイ酸を使用して生成されたZSM−12タイプのゼオライトは、この10ないし100nmの細孔半径の範囲において典型的に約40mm/gの比細孔容積を有する。水銀多孔度測定による細孔容積の測定はDIN66133に従って最大4000バールの圧力において実施される(例11参照)。前記の多孔度測定値は、例1に従って洗浄、乾燥ならびにか焼されたゼオライトにおいて測定される。しかしながら、前記の比容積の範囲はさらに洗浄および乾燥されたがか焼されていないゼオライトにも該当する。
【0014】
本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、高い比率で大きな細孔を有しており、これは請求項1に従った組成のみによって達成することができる。本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、窒素多孔度測定において30ないし200Å(オングストローム)の領域で0.05ないし0.40cm/g、好適には0.10ないし0.35cm/g、特に好適には0.15ないし0.30cm/gの比容積を有する。本発明をこれに限定するものではないが、前記の本発明に係るゼオライトの多孔度が高い触媒活性度に寄与するものでありまた小さな初晶間の多数の空洞部に反映されるものであることが理解される。窒素多孔度測定による比細孔容積の測定は例12に示されるようにDIN661134に準拠するものである。前記の多孔度測定値は、洗浄、乾燥したがか焼はされていない、あるいは好適にはか焼されたゼオライトにおいて測定することができる。前記の多孔度測定値は、例1に従って洗浄、乾燥ならびにか焼されたゼオライトにおいて測定される。しかしながら、前記の比容積の範囲はさらに洗浄および乾燥されたがか焼されていないゼオライトにも該当する。
【0015】
ゼオライトの1次合成物内(合成ゲル組成物内)においてケイ素源とアルミニウム源の分量を適宜に設定することによって、ゼオライトの合成を直接所要のSiO/Al比で実施することが特に好適であることが判明した。この合成ゲル組成物内のSiO/Al比はZSM−12ゼオライト内のSiO/Al比に略一致する。合成ゲル組成物内のSiO比率は、当業者において既知のように、完成したゼオライト内において約±10%の誤差となる。SiO比率が極めて大きいあるいは極めて小さい場合にのみより大きな誤差が観察される。これによって、SiO/Al比を調節するために後から比アルミニウム化を行う必要は無い。従って、後続する酸の添加およびアルミニウム原子の溶出によってZSM−12タイプのゼオライトのアルミニウム含有率を低下させる必要は無い。本発明に係る直接的な合成によって均質なゼオライト構造が可能になり、ゼオライト合成後の比アルミニウム化に際して発生しZSM−12ゼオライトの活性度および選択性に不要な影響を及ぼし得る、いわゆる“特別フレーム構造”アルミニウムを回避することができる。
【0016】
意外なことに、本発明に係る好適なゼオライト特性は、ゼオライトの製造のために使用される合成ゲルが所定の要件を満たせば実現することが判明した。本発明に従ってTEA陽イオンがテンプレートとして使用される(TEA=テトラエチルアンモニウム)。一方MTEAは適していない(MTEA=メチルトリエチルアンモニウム)。TEAOHをテンプレートとして使用すれば特に好適である。しかしながら、任意のテトラエチルアンモニウムイオンを供給する原材料を使用することが勿論可能である。例えば、TEABrを使用することもできる。
【0017】
合成ゲル内において調節されたTEA/SiO分子量比率は、小さく選択することが好適である。好適には、TEA/SiO分子量比率は0.10ないし0.18で選択される。合成ゲル組成物内においてSiO/Al分子量比率は約50ないし150の範囲で選択することが好適である。
【0018】
合成ゲルは比較的小さなアルカリおよび/またはアルカリ土含有率を有することが好適であり、ここでM2/nO:SiO分子量比率は約0.01ないし0.045となることが好適である。ここで、M2/nOは、n価のアルカリあるいはアルカリ土金属の酸化物である。さらに、本発明によれば、約5ないし18、好適には5ないし13の比較的小さなHO:SiO分子量比率が合成ゲル内で使用される。金属イオンMとしてはアルカリ金属、特にナトリウムが選択される。
【0019】
意外なことに、生成されるZSM−12ゼオライトの形態および触媒活性度に対するケイ素源の大きな影響が判明した。従って本発明においては、コロイド状ケイ酸に比して低い反応性を有する沈殿ケイ酸が使用される。それによって、本発明においては平均粒子サイズが0.1μmよりも小さいものとなる得られた初晶も影響を受けることが可能である。沈殿ケイ酸は200m/g以下のBET表面積を有することが好適である。
【0020】
本発明に係る触媒内において、初晶の平均サイズが比較的小さくなり0.1μm未満となることが好適である。初晶の大きさは電子顕微鏡撮影を使用して長さと幅に対して初晶の数を検出することによって判定することができる。測定した初晶の大きさを介して相加平均が求められる。本発明に係る触媒内に含まれている初晶は、通常長さの延長に比べて幅の延長においては著しい差異を有していない。しかしながら、個別のケースにおいて大きな差異が生じた場合、初晶の大きさを判定する際に最大および最小の結晶直径が求められる。
【0021】
個々のケースにおいては、洗浄および乾燥されているが(例1参照)か焼はされていないテンプレートを含んだZSM−12ゼオライトが68000ないし97676倍の拡大で電子顕微鏡写真が撮影される(機器はドイツ国オーバーコッヘン市のLEO・GmbH製のLeo1530)。画像上で、境界が明確になっておりその長さあるいは幅の延長が計測され(上述参照)それから中央値を算定することができる30個の初晶が選択される。このように算定された直径から相加平均、すなわち平均初晶サイズが得られる。初晶サイズは実質的にか焼による影響を受けない。従って、初晶サイズはZSM−12タイプのゼオライトの合成直後ならびにか焼の後のいずれにおいても算定することができる。
【0022】
好適には初晶サイズは約10ないし80nm、特に約20ないし60nmの範囲となる。従って、本発明に係る触媒は比較的小さな初晶を有するものである。
【0023】
特に好適な本発明の実施形態において、ゼオライトの初晶は少なくとも部分的に凝集体に結合されている。初晶は少なくとも30%、好適には少なくとも60%、特に少なくとも90%の割合で凝集体に結合されることが好適である。ここで比率は初晶の総数に対するものである。
【0024】
本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトにおいて前述した要件あるいは特徴を保持することにより、意外なことに極めて小さな初晶からなる極めて好適な凝集体形状が得られ、これはZSM−12ゼオライトの触媒作用にも好適な影響をもたらすものである。その後凝集体はその表面上に多数の空洞部あるいは個々の初晶間の間隙部を有する。従って、凝集体は、この凝集体表面から連通している空洞部あるいは個々の初晶間の間隙部を有する緩やかな結合体を形成する。電子顕微鏡映像上において、この凝集体は多数の割れ目を有する表面を備えた海綿構造となり、これは初晶を緩く結合することによって形成されている。映像には、ブロッコリ状の形状からなる大きな球形凝集体が示される。組織化した表面は、緩やかな結合を構成する初晶によって形成されている。個々の結晶の間には空洞部が形成され、これから表面に向かって通路が延在しており、これは映像上において暗く対照化した表面部分として現れる。全体として多孔質の構造が得られる。初晶から構成された凝集体はさらにより大きな上位の凝集体に結合されることが好適であり、その間により大きな直径を有する個別の通路が形成される。
【0025】
これに対して、従来のZSM−12タイプのゼオライトは電子顕微鏡映像上において比較的少なく組織化されたより平坦に見える表面からなる凝集体を有する。これは著しく小さいゼオライトの多孔性に拠るものである。
【0026】
従って、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは開孔性の凝集体構造を有し、すなわちこれにおいては凝集体の表面が著しく平滑あるいは閉鎖性のものとならないように初晶が結合されている。初晶はむしろ隣接した初晶間にブリッジを形成し、従ってこの隣接した初晶間に空洞部が形成される。
【0027】
本発明をその理論に限定するものではないが、この特殊な凝集体構造によって変換される分子が本発明に係る触媒の反応中央部に効果的に進入すること、もしくは変換された分子の反応中央部からの迅速な搬出、ならびに初晶凝集体の内部における極めて効果的な触媒活動の利用が可能になることが理解される。例えば、本発明に係る触媒のパラフィンの水素異性化に際しての高い触媒作用は、初晶凝集体内の反応中央部への効果的なパラフィンの拡散による影響を受けることができ、これによって反応活動ならびに枝分かれした炭化水素の利用率を改善することができる。このことによって、比較的低い温度においても良好な変換率をもってまた低分子炭化水素を発生させる炭化水素構造の分解を殆ど伴わずに、水素異性化を進行させることが可能になる。
【0028】
従って、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトの初晶は凝集体に結合することが好適であるが、この凝集体の大きさは大幅に可変であるとともに、複数の凝集体をより大きな上位の凝集体に結合することができる。ここで初晶の多くは境界が明確になった単体として電子顕微鏡で確認することができるが、その表面の一部は隣接する初晶と共に凝集体に結合している。電子顕微鏡の映像において顕著に組織化された表面を有するブロッコリ状の大きな構造体群を確認することができ、これはより大きな上位の凝集体に結合されている。この構造は、ゼオライトの触媒への加工、特にか焼、破砕等によって著しく影響を受け変化することは無い。
【0029】
好適な実施形態によれば、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトにおいて凝集体に結合されていない初晶は少なく抑えられている。ここで凝集体とは複数の初晶の結合体であると解釈される。
【0030】
本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、特に高パラフィンの水素異性化に際して高い触媒活性度を有する。従って、本発明の対象はさらに、前述したようなZSM−12タイプのゼオライトを含んだ特に高パラフィンの水素異性化のための触媒である。本発明において、高パラフィンとは少なくとも5個の炭化水素分子を有するパラフィンと解釈される。
【0031】
最も単純な実施形態においては、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトのみを含んでいる。このため、ZSM−12タイプのゼオライトを製造する際に得られた粉末をまずさらに破砕して所定の粒子サイズに分配し、例えば結合剤を用いずに成形体に成形することができる。
【0032】
他方、触媒はその他の成分を有することもできる。従って、触媒はさらなる中型孔および/または細孔性材料を含むことができる。中型孔および細孔性材料とは、分子ふるい、特にアルミノリン酸塩、金属アルミン酸塩、チタンケイ酸塩、ならびにゼオライト等の金属ケイ酸塩等と解釈することができる。中型孔および/または細孔性材料の割合は触媒の重量に対して1ないし99重量%とすることができる。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態によれば、触媒は結合剤を使用して成形体に加工することができる。特に触媒は10ないし90重量%、好適には20ないし70重量%の結合剤含有率を有することができる。結合剤としては当業者において知られていてこれに適するものとされる任意の結合剤を使用することができ、特にケイ酸塩材料、アルミナ、ジルコニウム化合物、酸化チタン、およびそれらの混合物、ならびにセメント、粘度、ケイ酸/アルミナ等の材料を使用することができる。好適な結合剤は特に、擬似ベーマイトならびにコロイド状酸化ケイ素等のケイ酸塩結合剤等である。
【0034】
本発明に係る触媒は、それに限定されることはないが、一般的に炭化水素の転換反応に適している。その触媒特性は、この触媒をその触媒作用に影響与える、あるいはそれ自体触媒として作用する触媒活性成分によって覆うことによって変化させることができる。これに適したものとしては例えば遷移群金属であり、ここで貴金属が特に好適である。例えば、金、銀、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよびプラチナ、ならびにそれらの混合物および合金である。プラチナが特に好適である。
【0035】
触媒活性成分は一般的に触媒の総重量に対して0.01ないし40重量%の比率で触媒に含まれている。貴金属を触媒活性成分として使用する場合、これは0.05ないし2重量%の割合で触媒内に含有することが好適である。
【0036】
本発明に係る触媒の独特な特性は、合成ゲルの組成ならびに沈殿ケイ酸の使用等の触媒の製造によって著しく影響を受けるものである。従って本発明の対象はさらに前述した触媒の製造方法である。
【0037】
本発明に係る方法においては、水溶液あるいは懸濁液内に:
a1) アルミニウム源と;
a2) ケイ素源としての沈殿ケイ酸と;
a3) テンプレートとしてのTEAと;
a4) 原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源Mを含んでおり;
a5) HO:SiOの分子量比を5ないし15で選択して、
合成ゲル組成物を生成し、この合成ゲル組成物を熱水条件下で結晶化し、固形材料を形成する。この固形材料を分離して必要に応じて洗浄、乾燥およびか焼する。
【0038】
本発明に係る方法において得られる固形材料は、前述したZSM−12タイプのゼオライトに相当する。これは、平均初晶サイズが0.1nm未満である初晶を有し、細孔容積に応じて前述したような水銀多孔度測定によって判定される比細孔容積の配分を備える。
【0039】
本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトまたは触媒に関して既に記述したように、本発明に係る方法において沈殿ケイ酸がケイ素源として、またテトラエチルアンモニウムイオンがテンプレートとして使用される。
【0040】
アルミニウム源に関しては全く制限は無く、従って本発明においては全ての一般的かつ当業者において既知のアルミニウム源を使用することができる。例えば、活性化酸化アルミニウム、γ−酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等が適している。アルミン酸ナトリウムは同時にアルカリイオン源として作用するため特に適している。
【0041】
アルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源としては、全ての一般的かつ当業者において既知の結合物を使用することができる。特に好適には、アルカリ金属としてナトリウムが使用される。アルカリ金属源としては、特にアルカリ水酸化物、好適には水酸化ナトリウムが使用される。
【0042】
合成において、まず脱塩水内の水酸化テトラエチルアンモニウム溶液が用意される。続いてこの溶液にアルミニウム源、例えばアルミン酸ナトリウム、ならびに原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源M、例えば水酸化ナトリウムが添加され、これらの成分が溶解するまで混合物が攪拌される。続いてこの溶液に、高粘性のゲルが得られるまで沈殿ケイ酸が小分けして付加される。ゼオライトの合成物は溶液として少ない水量内で行われることが好適である。このため、HO:SiOの分子量比は5ないし15の範囲で調節される。
【0043】
合成組成物内におけるケイ素およびアルミニウム源の分子量比は、製造するZSM−12タイプのゼオライトの分子配分に実質的に一致する。反応活動に起因する合成ゲルの成分と所要のゼオライトの成分との間の差異を考慮するために、必要に応じて適宜な合成ゲル組成を検知するための予備試験を行うこともできる。好適には、合成ゲル組成物内におけるM2/nO:SiO分子量比は酸化調整方法において0.01ないし0.45の範囲で調節される。合成ゲル組成物内のSiO:Al分子量比は50ないし150とすることが好適である。
【0044】
合成ゲル組成物は、均質なゲルが得られるまで攪拌される。続いて熱水条件下、すなわち100℃超の温度および1バール超の圧力下で結晶化が行われる。このため、合成ゲルは適宜な圧力容器内で攪拌される。この結晶化は約120ないし200℃、特に約140ないし180℃の温度で行うことが好適である。特に、約160℃の温度で結晶化を行うことが好適である。結晶化時間は約50ないし500時間、特に約100ないし250時間とすることが好適である。結晶化時間は、例えば結晶化温度の影響を受けるものである。この合成条件下において、平均初晶サイズが約0.1μmよりも大きくならない初晶を有する固形材料が得られる。
【0045】
続いてこの結晶生成物が母液から分離される。このため、反応混合物を例えば薄膜フィルタによって濾過することができる。しかしながら、固形材料を分離するためのその他の方法を使用することもできる。例えば、遠心分離によって分離を行うこともできる。分離された固形材料は続いて脱塩水中で洗浄される。好適には、この洗浄工程は洗浄水の導電率が100μS/cm未満に低下するまで行う。
【0046】
続いて分離された固形材料が乾燥される。この乾燥は例えば一般的な乾燥装置内において空気によって行うことができる。乾燥温度は例えば100ないし120℃の範囲内で選択することができる。乾燥時間は一般的に約10ないし20時間である。ここで乾燥時間は分離された固形材料の湿度ならびに分量に依存する。乾燥した固形材料は続いて一般的な方法で粉砕、特に粒子化あるいは破砕することができる。
【0047】
テンプレートを除去するために固形材料をか焼することができる。このか焼は通気下で行われ、ここで温度は400ないし700℃の範囲、特に500ないし600℃の範囲で選択される。ここでか焼のための時間は、ゼオライトが最高の温度で保持される持続時間を示すものである。加熱および冷却時間は考慮されない。
【0048】
触媒内の交換性イオン、特にアルカリイオンの含有量は、例えばアンモニウムイオン、金属イオン、オキソニウムイオン、またはそれらの混合物等の適宜な陽イオン源による処理によって影響を受けることができ、この際本発明に係るZSM−12タイプのゼオライト内に得られた交換性イオン、特にアルカリイオンが交換される。適宜なイオンがチャージされた触媒は、その後再び洗浄および乾燥することができる。この乾燥は例えば110ないし130℃において12ないし16時間の持続時間で行われる。アンモニウムイオンに対する交換に際して触媒を酸活性化状態に転換するために、この触媒をさらにか焼することができ、ここで例えば460ないし500℃の温度で6ないし10時間の持続時間でか焼することができる。続いて、触媒をさらに破砕することができる。
【0049】
触媒は粉末形状で使用することができる。しかしながら、触媒は物理的安定性を向上するためならびに取扱い容易性を改善するために成形体に加工することが好適である。このため、本発明に係るZSM−12タイプのゼオライトは、前記実施形態と同様に、例えば結合剤の添加の有無にかかわらず、適宜な成形体に圧締め成形することができる。しかしながら、この成形は例えば押出し成形等のその他の方法で行うこともできる。ここで、得られた粉末は例えば擬似ベーマイト等の結合剤の添加によって成形体に成形することができる。この成形体は続いて例えば100ないし130℃の温度で乾燥することができる。さらに必要に応じて成形体をか焼することができ、ここで一般的に400ないし600℃の温度を適用する。
【0050】
特に、水素化、脱水素、および水素異性化のための使用に際して、触媒にはさらに好適な活性結合物(活性成分)付加される。この活性成分の添加は当業者において既知の方式で実施することができ、例えば集中的な混錬、蒸着、適宜な溶液内での浸蝕あるいは含浸、あるいはゼオライト内への混和によって行うことができる。好適には少なくとも1種類の遷移群金属、特に少なくとも1種類の貴金属の付加によって行うことが好適である。このため触媒は例えば遷移群金属あるいは貴金属の溶液内で含浸される。プラチナを添加するためには例えば水溶性のHPtCl溶液が好適である。ここで、含浸溶液はこの含浸溶液が完全に触媒に吸収されるように配量することが好適である。この触媒は続いて例えば110ないし130℃の温度で12ないし20時間乾燥され、また例えば400ないし500℃の温度で3ないし7時間か焼される。
【0051】
本発明における触媒は、特に炭化水素の転換に適している。従って、本発明に係る触媒は、石油蒸留成分の改質、ガス油の流動性向上、オレフィンまたは芳香族化合物の異性化、オレフィンあるいはアセチレン炭化水素の触媒または水素分解ならびにオリゴマー化または重合化に適している。その他の適用形態として、芳香族およびアルキル置換芳香族のアルキル化、アルキル交換、異性化または不均化、オレフィンの水素化および脱水素化、水化および脱水、アルキル化および異性化、アルコールおよびエーテルの脱硫および炭化水素への変換、パラフィンまたはオレフィンの芳香族への変換が挙げられる。特にこの触媒は、ナフテンの異性化および水素異性化にも適している。従って、本発明の対象は、前述した触媒の有機化合物、特に炭化水素の変換への適用である。
【0052】
高パラフィンの水素異性化に特に適している。ここで、高パラフィンは、5個より多い炭化水素数、特に少なくとも7個の炭化水素数からなる飽和線状炭化水素と解釈される。特にこの触媒はn−オクタンの水素異性化に適している。
【0053】
水素異性化は芳香族の存在下、特にベンゼンの存在下で行うことが好適である。
【0054】
水素異性化は水素の存在下において290℃未満、好適には約230ないし260℃、特に好適には約250℃の温度で行うことが好適である。水素異性化に際しての圧力は1ないし50バールで、触媒リッター当たりで供給される炭化水素または炭化水素混合物の液空搭速度(LHSV)は約0.1ないし10l/hで行われる。
【0055】
次に、本発明につき例を参照しながらより詳細に説明する。
【0056】
例1:ZSM−12の合成(本発明)
ZSM−12ゼオライトの製造のために以下の成分を有する合成ゲル組成物が生成された:
8.5952HO:SiO:0.0099Al:0.0201NaO:0.1500TEAOH
TEAOH=水酸化テトラエチルアンモニウム
【0057】
271.2gのアルミン酸ナトリウムおよび99.1gのNaOHが9498.3gの水酸化テトラエチルアンモニウム(35重量%)および15905.3gの水の水溶液中に攪拌しながら溶解された。この溶液が攪拌器を備えた容量40lの圧力容器内に先に注入された。170m/gの比表面積を有する10226.1gの沈殿ケイ酸が強力に攪拌しながら小分けして付加された。24.0℃において13.7のpH値を有する高粘性のゲルが得られた。圧力容器が閉じられ内容物は12時間の間に163℃まで加熱され、その後155時間の総反応時間にわたってこの温度に保持された。ここで圧力容器内には13バールの圧力が生じた。
【0058】
155時間の経過後に、圧力容器は室温まで冷却された。固形生成物が濾過によって母液から分離され続いて洗浄水の導電性が100μS/cmになるまで脱塩水内で洗浄される。濾過ケークが通気下において120℃で16時間乾燥され、その後通気下でか焼される。か焼のために乾燥された固形材料がまず1K/minの加熱速度で120℃まで加熱され、3時間この温度に保持された。続いて1K/minの加熱速度で550℃まで加熱され、5時間この温度に保持された。
【0059】
X線回折による検査によってZSM−12が形成されたことが示された。電子顕微鏡検査によって約0.8μmの直径を有する凝集体が確認され、これは小さな初晶から形成され、凝集体はブロッコリ形状の構造を有している。
【0060】
例2:イオン交換
920gの例1で得られたZSM−12ゼオライトを4250.40gの脱塩水中の349.60gのNHNOからなる溶液内に懸濁し2時間攪拌した。固形材料を濾過によって分離し、濾過ケークを4回脱塩水で洗浄した。続いて、洗浄した濾過ケークを4250.40gの脱塩水中の349.60gのNHNOからなる新鮮な溶液内に再度懸濁し2時間攪拌した。固形材料を再度濾過によって分離し、洗浄水の導電性が100μS/cmに低下するまで脱塩水内で洗浄した。濾過ケークを通気下において120℃で14時間乾燥させ、その後通気下でか焼した。このため洗浄し乾燥させた濾過ケークを1℃/minの加熱速度で480℃まで加熱しその後8時間この温度に保持した。
収量:916.7g。
【0061】
化学および物理分析によって表1の数値が得られた:
【0062】
【表1】

【0063】
例3:押出し成形による成形体の形成
330gの例2で得られた酸化物状のZSM−12ゼオライトを混錬器内で156.3gの市販の擬似ベーマイトを結合剤として添加し294gの脱塩水を加えながら15分間混錬し、可塑性の材料に加工した。この材料をさらに10分間混錬して21.0gの離型油(ステアタイト油)を付加した。この材料を続いて成形体に押出し成形した(d=1/16”)。この成形体を通気下において120℃で16時間乾燥させ、その後通気下でか焼した。このため成形体をまず1℃/minの加熱速度で120℃まで加熱しその後2時間この温度に保持した。その後温度を1℃/minの加熱速度で550℃まで加熱しその後5時間成形体をこの温度に保持した。成形体を室温まで冷却し、続いて3mmの平均サイズに破砕した。触媒は表2に示された化学および物理特性を示した:
【0064】
【表2】

【0065】
例4:ケイ酸塩結合剤を用いた成形体の製造
300gの例2で得られたH形態のZSM−12ゼオライトを混錬器内で25重量%のケイ酸を含んだ473.7gのコロイド状ケイ酸塩と混合し、可塑性の材料が生成されるまで冷気中で乾燥させた。この可塑性材料をさらに10分間混錬し、その後6.0gのメチルセルロースを付加した。この材料を続いて押出し成形した(d=1/16”)。この押出し成形体を通気下において60℃で16時間乾燥させ、その後通気下でか焼した。このため押出し成形体をまず1K/minの加熱速度で600℃まで加熱しその後5時間この温度に保持した。続いて押出し成形体を3mmの平均長を有する粒体に破砕した。
【0066】
b)イオン交換
349.5gのa)で得られた押出し成形体をふるい内に収容し、このふるいを2103.44gの脱塩水中の158.32gのNHNOからなる溶液内に懸濁させた。粒体を室温においてこの1.5時間この溶液内に放置し、ここでイオン交換を向上させるためにふるいを定期的に溶液から取り出した。粒体をNHNO溶液から取り出し、洗浄水の導電性が50μS/cmに低下するまで脱塩水内で洗浄した。アンモニウムイオンを保有する粒体を通気下において120℃で16時間乾燥させ、その後通気下でか焼した。か焼のために乾燥させた粒体をまず1K/minの加熱速度で600℃まで加熱しその後5時間この温度に保持した。
【0067】
触媒の特性は表3に示される:
【0068】
【表3】

【0069】
例5(比較例):
例1を再実施し、この際沈殿ケイ酸に代えてコロイド状ケイ酸を使用した。合成ゲル組成は以下のように選定した。
8.5952HO:SiO:0.0099Al:0.0201NaO:0.1500TEAOH
【0070】
ZSM−12ゼオライトに加えてZSM−5ゼオライトを30%の割合で含んだ固形材料が得られた。電子顕微鏡映像から、ZSM−12初晶の平均直径は50ないし70nmと測定された。初晶は重なり合って気密に詰まれた密閉した凝集体を形成した。凝集体全体に対しての密閉した凝集体の割合は20%を超えた。
【0071】
例6(比較例):
S.エルンスト、P.A.ヤコブス、J.A.マルテンス、J.ウェイトカンプによる;ゼオライト、1987年第7巻、第458−462頁に記載されている方式でZSM−12ゼオライトを製造した。このゼオライトはメチルトリエチルアンモニウムブロミド(MTEABr)を使用して製造した。ゼオライト粉末はSiO/Al比108を有していた。電子顕微鏡による1980ないし20000倍の映像によって平均長0.5ないし13μmの米粒形状の結晶が確認された。
【0072】
このゼオライト粉末は、例2と同様に、NHNOとのイオン交換ならびにそれに続くか焼によって酸化物H状態に転換された。
【0073】
例7:プラチナを含んだ触媒の製造
例2および例6において得られたH形態のゼオライトをいずれも追加的な添加剤無しでカーバ実験用プレス機を使用して18トンの圧力でタブレット状に成形した。このタブレットを破壊して0.5ないし1.0mmふるい成分を分離した。この粒体に30%のHPtCl溶液への含浸によって0.5重量%のプラチナを付加した。続いてこの粒体を120℃において6時間乾燥させ、その後450℃で5時間か焼した。粒体の特性は表4に示されている。
【0074】
【表4】

【0075】
例8:異性化
例7に従って得られたプラチナを含有する触媒をマイクロ反応器内で純粋なn−ヘプタンによって試験した。試験条件は以下のものである:
反応器直径: 8mm
触媒重量: 2.0g
触媒サイズ 0.5ないし1.0mmの
粒子化された材料のふるい成分
圧力 20バール
温度 250℃
WHSV: 2.18h−1
:n−ヘプタン: 1.3:1
【0076】
反応器を以下のように準備した:まず大気圧下において空気を33.33ml/minの速度で誘導し、その後反応器が室温から400℃に加熱された。この温度は1時間保持されその後温度が400℃から250℃に下げられた。ここで空気流が遮断され30分間窒素流(33.33ml/min)で代替された。この窒素流がその後30分間水素流(33.33ml/min)で代替された。その後圧力を20バールのHに高め、その後純粋なn−ヘプタンを導入して製品流をガスクロマトグラフによって分析した。C1ないしC7の全ての成分のピーク面積を30分毎に測定した。全てのi(so)−ヘプタン(例えばメチルヘキサン、ジメチルペンタン等)のピーク面積を統合してi(so)−ヘプタン面積として示した。パラメータは以下のように定義した:
変換(%)=(1−面積(n−ヘプタン)/総面積)×100
選択性(%)=(面積(i−ヘプタン)/総面積−面積(n−ヘプタン))×100
収率(%)=(面積(i−ヘプタン)/総面積)×100
【0077】
本発明に係る触媒は、略100%の選択性において40%の固定された変換および収率を示した。より小さな分子へのn−ヘプタンの破壊は極少ない割合のみで発生した。比較用触媒は250℃において顕著なn−ヘプタンの変換を示さない。本発明に係る触媒はより高い活性度を示すとともに低い温度においても極めて高い選択性をもってn−ヘプタンを変換する。
【0078】
例9:
例1を繰り返すが、合成ゲルの組成は以下の比率に設定した:
7.8918HO:SiO:0.0091Al:0.0185NaO:0.1377TEAOH
【0079】
結晶化時間は175時間に延長した。その他については例1において記述した実験工程に準拠した。ZSM−12から形成された結晶質の固形材料が得られた。この固形材料を電子顕微鏡によって検査した。電子顕微鏡映像上においてブロッコリ形状の構造を有する凝集体が確認された(開放性凝集体)。凝集体総数に対しての密閉された凝集体の割合は10%未満であり、開放性の凝集体の割合は90%超である。
【0080】
例10:
例7によって得られたプラチナを含有する触媒をマイクロ反応器内で純粋なn−オクタンによって試験した。試験条件は以下のものである:
反応器直径: 8mm
触媒重量: 2.0g
触媒サイズ 0.5ないし1.0mmの
粒子化された材料のふるい成分
圧力 20バール
温度 245−250℃
WHSV: 2.25h−1
:n−オクタン: 1.4:1
【0081】
反応器を以下のように準備した:まず大気圧下において空気を33.33ml/minの速度で誘導し、その後反応器が室温から400℃に加熱された。この温度は1時間保持されその後温度が400℃から250℃に下げられた。ここで空気流が遮断され30分間窒素流(33.33ml/min)で代替された。この窒素流がその後30分間水素流(33.33ml/min)で代替された。その後圧力を20バールのHに高め、その後純粋なn−オクタンを導入して製品流をガスクロマトグラフによって分析した。
【0082】
この実験において、C1ないしC8の全ての成分のピーク面積を30分毎に測定した。全てのイソオクタン(例えばメチルヘプタン、ジメチルヘキサン等)のピーク面積を統合してイソオクタン面積として示した。パラメータは以下のように定義した:
変換(%)=(1−面積(n−オクタン)/総面積)×100
選択性(%)=(面積(イソオクタン)/総面積−面積(n−オクタン))×100
収率(%)=(面積(イソオクタン)/総面積)×100
【0083】
この触媒を110時間マイクロ反応器内で試験し、ここで245ないし250℃における活性度および選択性を測定した。
【0084】
本発明に係る触媒(例2と例7の組み合わせ)は250℃において85%超の極めて高い変換率と10時間後で80%の選択性を示した。245℃においては変換率が70%また選択性が85%であった。
【0085】
これに対して比較用触媒(例6と例7の組み合わせ)は著しく低い選択性と変換率を示した。J.スミルニオティスによる触媒第182巻第400−416頁(1999年)の記載に従って製造した比較用触媒は、同様な条件において極めて低い変換率を示した。290℃の高い温度において初めて許容可能な変換率および選択性が観察された。
【0086】
例11
例1,5および9において得られた固形材料についてDIN66133に従った水銀多孔度測定によって比容積を測定した。実験条件は以下の通りである:
装置: イタリア、カルロ・エルバ社製ポロシメータ4000
試料準備: 室温において30分の真空化
最大圧力: 4000バール
接触角: 141.3°
水銀表面張力: 480Dyn/cm
試料に対して得られた数値は表5に記載した。
【0087】
【表5】

【0088】
緩い結合したがって初晶間の高い空洞部の割合が1.9ないし100nmの細孔半径の範囲で水銀多孔度測定によって示された。例1および9の本発明に係るか焼されたゼオライトは4ないし10nmの範囲における水銀多孔度測定において約110ないし125mm/gの比容積を示している。か焼された比較例(例5のコロイド状ケイ酸を使用して製造されたZSM−12ゼオライト)は4ないし10nmの領域で2.5mm/gの比容積を示している。例1および9の本発明に係るゼオライトは10ないし100nmの領域で300ないし400mm/gの比容積を有している。例5の比較例として示されたゼオライトは10ないし100nmの領域で41mm/gの比容積を有している。
【0089】
例12
例1,5および9において得られたゼオライトについてDIN66134の窒素多孔度測定に従ってその細孔半径分布を検査した。検査条件は以下のように製造者の申告に従って選択され、評価は“Dollim./Heal”法によって実施された。
【0090】
装置: イタリア、カルロ・エルバ社製ソープトマティック1900
試料準備: 16時間/250℃/真空
【0091】
試料に対して得られた数値は表6に記載した。
【0092】
【表6】

【0093】
10ないし200Å(オングストローム)の領域における窒素多孔度測定により、両方の構造間に顕著な相異が示された。10ないし30Å(オングストローム)の極めて小さな細孔半径の領域は小型に形成された凝集体を特徴とするものであり、ここでは本発明に係るゼオライト(例1および9)ならびに比較例として示された例5のゼオライトの両方が約0.04cm/gの容積を示している。しかしながら、本発明に係るゼオライトはこの領域において10ないし200Å(オングストローム)の領域全体で見た総容積の約15%を占めるに過ぎないのに対して、例5においてはこの領域における0.04cm/gの容積は10ないし200Å(オングストローム)の領域全体で見た総容積の76%に相当するものである。水銀多孔度測定と一致して、本発明に係るゼオライト(例1および9)と例5のものは特に30ないし200Å(オングストローム)の細孔半径領域において顕著に異なっている。か焼された本発明に係るゼオライトは窒素多孔度測定に際して30ないし200Å(オングストローム)の範囲で約0.18ないし0.21cm/gの比容積を示している。比較例として示された例5のものはこの領域において僅か0.014cm/gの比容積を示しており、従ってこの例5のゼオライトは初晶間に著しく小さな割合の空洞部しか有していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に高パラフィンの水素異性化のためのZSM−12タイプのゼオライトであり、
(a) 0.1μm以下の初晶サイズで;
(b) 最大4000バールの圧力における水銀多孔度測定において検出された比容積が4ないし10nmの細孔半径の範囲において30ないし200mm/gであり;
(c) さらに、
c1) アルミニウム源と、
c2) ケイ素源としての沈殿ケイ酸と、
c3) テンプレートとしてのTEAと、
c4) 原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源Mとからなり;
c5) HO:SiOの分子量比が5ないし15で選択される、
合成ゲル組成物から形成されるゼオライト。
【請求項2】
窒素多孔度測定において3ないし20nmの細孔半径の領域で0.05ないし0.40cm/gの比容積を有することを特徴とする請求項1記載のゼオライト。
【請求項3】
合成ゲル組成物内においてSiO/Al分子量比を50ないし150に設定することを特徴とする請求項1または2記載のゼオライト。
【請求項4】
合成ゲル組成におけるM2/nO:SiO分子量比率は酸化物標記(Oxidic Preparation)において約0.01ないし0.045となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項5】
初晶は少なくとも30%、好適には少なくとも60%、特に少なくとも90%の割合で凝集体に結合されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のゼオライト。
【請求項6】
初晶は約10ないし70nm、特に約30ないし50nmの平均直径を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項7】
凝集体はこの凝集体表面から連通している空洞部あるいは初晶間の間隙部を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のZSM−12タイプのゼオライトを含んだ特に高パラフィンの水素異性化のための触媒。
【請求項9】
触媒は塊状の形状を有することを特徴とする請求項8記載の触媒。
【請求項10】
触媒はこの触媒の総重量に対して10ないし90重量%、好適には20ないし70重量%の結合剤を有することを特徴とする請求項8または9記載の触媒。
【請求項11】
触媒は少なくとも1つの触媒活性成分を保有することを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の触媒。
【請求項12】
少なくとも1つの触媒活性成分は遷移群金属であることを特徴とする請求項11記載の触媒。
【請求項13】
遷移群金属は貴金属であることを特徴とする請求項12記載の触媒。
【請求項14】
貴金属はプラチナであることを特徴とする請求項13記載の触媒。
【請求項15】
触媒活性成分は触媒の総重量に対して0.01ないし40重量%の比率で触媒に含まれていることを特徴とする請求項11または14記載の触媒。
【請求項16】
水溶液あるいは懸濁液内に:
a1) アルミニウム源と;
a2) ケイ素源としての沈殿ケイ酸と;
a3) テンプレートとしてのTEAと;
a4) 原子価nを有するアルカリおよび/またはアルカリ土金属イオン源Mを含んでおり;
a5) HO:SiOの分子量比を5ないし15で選択して、
合成ゲル組成物を生成し、この合成ゲル組成物を熱水条件下で結晶化して固形材料を形成し、この固形材料を分離して必要に応じて洗浄、乾燥することからなる、
請求項1ないし7のいずれかにZSM−12タイプのゼオライトの製造方法。
【請求項17】
合成ゲル組成におけるMn/2O:SiO分子量比率は約0.01ないし0.045の範囲で設定することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
SiO/Al分子量比を50ないし150の範囲で設定することを特徴とする請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
合成ゲルの結晶化は約120ないし200℃、特に約140ないし180℃の温度で行うことを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
分離された固形材料は洗浄水の導電率が100μS/cm未満になるまで脱塩水中で洗浄することを特徴とする請求項16ないし19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
結晶化時間は約50ないし500時間、特に約100ないし250時間とすることを特徴とする請求項16ないし20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
固形材料は乾燥後に細分化、特に粒子化あるいは粉砕しさらにか焼することを特徴とする請求項16ないし21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
か焼は400ないし700℃、特に500ないし600℃の温度で3ないし12時間、特に3ないし6時間の持続時間で行うことを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
ZSM−12タイプのゼオライト内に含まれている交換性陽イオンはアンモニウム化合物の水溶液あるいは酸を用いた処理によって交換し、イオン交換後に得られた固形材料を洗浄、乾燥、続いてか焼することを特徴とする請求項16ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ZSM−12タイプのゼオライトを成形体に成形することを特徴とする請求項16ないし24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
成形体に成形するためにZSM−12タイプのゼオライトに触媒の総重量に対して10ないし90重量%、好適には20ないし70重量%の結合剤を添加することを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
成形体は少なくとも1つの遷移群金属を保有することを特徴とする請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
遷移群金属は貴金属、特にプラチナである請求項27記載の方法。
【請求項29】
請求項1ないし7のいずれかに記載のZSM−12タイプのゼオライトおよび/または請求項8ないし15のいずれかに記載の触媒を有機化合物の変換に使用する適用方法。
【請求項30】
有機化合物の変換は、n−パラフィンあるいはナフテンの改質、触媒または水素分解、異性化または水素異性化;オレフィンあるいはアセチレン炭化水素を有する化合物のオリゴマー化または重合化;芳香族およびアルキル置換芳香族のアルキル化、アルキル交換、異性化または不均化;オレフィンの脱水または水化、脱水素化または水素化、アルキル化または異性化;脱硫化;アルコールおよびエーテルの炭化水素への変換;パラフィンまたはオレフィンの芳香族への変換;あるいは、ガス油等の原料油の沸点の低下であることを特徴とする請求項29記載の適用方法。
【請求項31】
触媒は高パラフィン、特に5個より多い炭化水素数、特に少なくとも7個の炭化水素数からなるn−パラフィンの水素異性化に使用されることを特徴とする請求項29または30記載の適用方法。
【請求項32】
水素異性化は芳香族の存在下、特にベンゼンの存在下で行うことを特徴とする請求項29ないし31のいずれかに記載の適用方法。
【請求項33】
水素異性化は290℃未満、好適には約230ないし260℃、特に好適には約250℃の温度で行うことを特徴とする請求項29ないし32のいずれかに記載の適用方法。
【請求項34】
水素異性化は1ないし50バールの圧力において、触媒リッター当たりで高パラフィンの液空搭速度(LHSV)が約0.1ないし10l/hで行うことを特徴とする請求項29ないし33のいずれかに記載の適用方法。

【公表番号】特表2007−534578(P2007−534578A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504894(P2006−504894)
【出願日】平成16年3月27日(2004.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003283
【国際公開番号】WO2004/087315
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(591056237)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (33)
【氏名又は名称原語表記】Sued−Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Lenbachplatz 6, D−80333 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】