説明

特殊効果処理方法及び画像処理装置

【課題】 入力画像の中の所望の画像部分に所望の特殊効果をリアルタイムに、確実に且つ自動的に施す。
【解決手段】 画像認識判定部5が、人物等のように動きのある画素と背景等のように静止している画素とを判別したり、入力画像の中でオペレータによって指定された画像部分のパターン情報の特徴と同一と推測される画像部分を以後の入力画像から判別したり、入力画像において隣接する画素の輝度,色等の画素情報の変化量から画像の輪郭部分を判別したりすると、特殊効果発生処理部6は、画像認識判定部5において判別された画素或いは領域の画素の位置情報を変調して、モザイク,スクランブル,バースト,メルト等の特殊効果や、レベル情報を変調して、ペイント,ネガ,モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス,エンハンス等の特殊効果を所望の画像部分に順次自動的に施す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスプレイに表示する画像の特定部分に画像変形,変調等による特殊効果を施すための特殊効果処理方法及び画像処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図8は従来の画像処理装置の基本的な構成を示すもので、1は、オペレータによって選択されたモザイク,デフォーカス,色替え等の特殊効果を、入力端子から入力した画像I面にそれぞれ施し、画像IIとして出力する特殊効果発生処理部、2は特殊効果発生処理部1において画像Iの全面に特殊効果を施すのに要する時間だけ画像Iの出力タイミングを遅らせる遅延部である。
【0003】3は、オペレータが特殊効果を施したい人物,物体,景色等の全体或いは部分の画像領域a(以下「特殊効果画像領域a」という)を画像IIIとして設定すると、遅延部2から入力した画像Iの中から特殊効果画像領域a内の画像を検出したときに切替信号を出力する切替信号発生処理部、4は、切替信号が入力しないときには遅延部2から入力する画像Iを出力し、切替信号が入力したときには特殊効果発生処理部1から入力する画像IIを出力する画像切替合成処理部である。
【0004】このように構成された従来例では、例えば山中の木立の近傍に人物が立っている画像Iが入力端子に入力すると、画像Iにオペレータが選択した特殊効果、例えばモザイクを施した画像IIが特殊効果発生処理部1から画像切替合成処理部4に出力されるのに同期して、画像Iが遅延部2から画像切替合成処理部4に出力される。
【0005】このとき、特殊効果画像領域aが切替信号発生処理部3に設定されていなければ、切替信号は切替信号発生処理部3から全く出力されないので、画像Iが画像切替合成処理部4からそのまま出力されて、ディスプレイには例えば山中の木立の近傍に人物が立っている画像Iがそのまま表示される。
【0006】又、例えば人物全体が特殊効果画像領域aとして切替信号発生処理部3に設定されていれば、画像Iの特殊効果画像領域a外の画像を検出したときには、切替信号は切替信号発生処理部3から出力されないので、画像Iの特殊効果画像領域a外の画像、例えば山中に木が立っている景色の画像が画像切替合成処理部4から出力されると共に、画像Iの特殊効果画像領域a内の画像を検出したときには、切替信号が切替信号発生処理部3から出力されるので、画像IIの特殊効果画像領域a内の画像、例えば人物にモザイクを施した画像が画像切替合成処理部4から出力されるので、ディスプレイには、画像Iの特殊効果画像領域aの中に画像IIの特殊効果画像領域a内の画像を嵌め込んだ画像IV、例えば山中の木立の近傍に立っている人物にモザイクを施した画像IVが表示される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、画像Iの中の特殊効果を施したい画像が画面内で移動したり、この画像の形状或いは大きさが画面内で変化するときには、オペレータは、この画像の動き或いは変化に合わせて特殊効果画像領域aが画面内で移動したり、特殊効果画像領域aの形状或いは大きさが画面内で変化したりするように、切替信号発生処理部3に設定する特殊効果画像領域aを逐次変えていかなければならない。
【0008】このため、特殊効果を施したい画像の動きや、この画像の形状或いは大きさの変化が早いと、特殊効果を施したい画像と特殊効果画像領域aとの間の位置,形状或いは大きさにずれが生じて、画像Iの中の所望の画像に特殊効果を確実に施せなくなるため、従来の画像処理装置はテレビジョンの生放送番組でほとんど使用できないという課題があった。
【0009】又、画像Iの中の所望の画像をフルカラーで表示し、その他の画像をモノカラーで表示するような特殊効果を画像Iに施すときには、領域設定画像IIIに設定する特殊効果画像領域aと画像Iの中の特殊効果を施したい画像の位置,形状或いは大きさの変化とが完全に一致するように、領域設定画像IIIへの特殊効果画像領域aの設定を1フィールド,1フレーム或いは1コマずつ緻密に行わなければならないため、従来の画像処理装置はテレビジョンの生放送番組で全く使用できず、このような特殊効果はCM等の特定の分野でしか使用できないという課題があった。
【0010】本発明は、このような課題を解決するもので、入力画像の中の所望の画像に所望の特殊効果をリアルタイムに、自動的に且つ確実に施せる特殊効果処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、特定条件に基づいて判別された入力画像の中の特殊効果を施したい画像部分に特殊処理を施して、入力画像に合成処理する方法である。
【0012】本発明の特定条件は、入力画像,入力画像の輝度,入力画像の色,入力画像の輪郭のうちの少なくとも1つである。
【0013】本発明の特殊効果は、モザイク,スクランブル,バースト,メルト,ペイント(ビット落し),ネガ(反転),モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス(ぼかし),エンハンスのうちの少なくとも1つである。
【0014】本発明の合成処理は、切替合成,キー合成,NAM合成のうちの少なくとも1つである。
【0015】又、本発明は、入力画像の中の特殊効果を施したい画像部分を入力画像から判別する画像認識判定部と、画像認識判定部において判別された画像部分に特殊効果を施した上、画像部分を入力画像に合成処理する特殊効果発生処理部とからなるものである。
【0016】本発明の画像部分を入力画像,入力画像の輝度,入力画像の色,入力画像の輪郭のうちの少なくとも1つによって判別するものである。
【0017】本発明の特殊効果は、モザイク,スクランブル,バースト,メルト,ペイント(ビット落し),ネガ(反転),モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス(ぼかし),エンハンスのうちの少なくとも1つである。
【0018】本発明の合成処理は、切替合成,キー合成,NAM合成のうちの少なくとも1つで行うものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】図1は本発明の画像処理装置の基本的な構成を示すもので、画像認識判定部5が、前フィールドの輝度,色等の画素情報と現フィールドの輝度,色等の画素情報との値を比較して、人物等のように動きのある画素と背景等のように静止している画素とを判別したり、入力画像の中でオペレータによって指定された画像部分の形,輝度,色等のパターン情報の特徴を抽出して、そのパターン情報の特徴と同一と推測される画像部分を以後の入力画像から判別したり、入力画像において隣接する画素の輝度,色等の画素情報の変化量から画像の輪郭部分を判別したりすることにより、判定信号を出力すると、特殊効果発生処理部6は、画像認識判定部5において判別された動きのある画素或いは静止している画素,オペレータによって指定された画像部分のパターン情報の特徴と同一と推測される画像部分の画素,輪郭内部或いは輪郭外部の画像部分の画素等の位置情報(アドレス)を変調して、モザイク,スクランブル,バースト,メルト等の特殊効果や、各画素の輝度,色等のレベル情報を変調して、ペイント(ビット落し),ネガ(反転),モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス(ぼかし),エンハンス等の特殊効果を所望の画像部分に順次自動的に施した上、入力画像に合成していく。
【0021】図2(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の具体的な構成を示し、図2(b)は図2(a)の画像認識判定部のフローチャートを示すもので、1フィールド分の画素情報を読み書きするフィールドメモリ7が、1フィールド前に書き込んだ1フィールド分の画素の輝度,色等の画素情報A(以下「前フィールドの画素情報A」という)の読み出しと共に、現在入力中の1フィールド分の画素の輝度,色等の画素情報B(以下「現フィールドの画素情報B」という)の書き込みを行う〔ステップ1(以下「S1」の如く記載する)〕と、画素情報差分演算手段8は、フィールドメモリ7から読み出した前フィールドの各画素の画素情報Aの値と現フィールドの各画素の画素情報Bの値の差分(A−B)を求める(S2)。
【0022】そこで、画素判定手段9は、差分(A−B)がしきい値以上であれば(S3)、その画素は動きのある画素と判別して(S4)判定信号を出力し(S5)、又、差分(A−B)がしきい値未満であれば(S3)、その画素は静止した画素と判別して(S6)判定信号を出力しない。
【0023】そして、この動作を1フィールド分の画素信号が入力する毎に繰り返せば、現フィールドの画像の中の動きのある画像部分と静止した画像部分とがリアルタイムに、確実に且つ自動的に判別することができる。
【0024】図3(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の他の具体的な構成を示し、図3(b)は図3(a)の画像認識判定部のフローチャートを示すもので、特徴抽出手段10が、現フィールドの画像の中からオペレータによって設定された画像領域の形,輝度,色等のパターンAの特徴を抽出する(S7)と、パターン差分演算手段11は、パターンAと現フィールドの次のフィールド以降に入力する1フィールド分の画像のパターンBとの差分(A−B)を求める(S8)。
【0025】そこで、パターン一致判定手段12は、差分(A−B)がしきい値以上の領域があれば(S9)、その領域がパターンBの中においてパターンAの特徴と一致している領域と判別して(S10)判定信号を出力し(S11)、又、差分(A−B)がしきい値未満であれば(S9)、パターンBの中にパターンAの特徴と一致している領域がないと判別して(S12)判定信号を出力しない。
【0026】そして、この動作を1フィールド分の画像が入力する毎に繰り返せば、入力画像の中のパターンAの特徴と同一と推測される画像領域がリアルタイムに、確実に且つ自動的に判別することができる。
【0027】図4(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の更に他の具体的な構成を示し、図4(b)は図4(a)の画像認識判定部のフローチャートを示すもので、1走査線分の画素情報を読み書きするラインメモリ13が、入力画像において1走査線分前に書き込んだ輝度,色等の画素情報Aの読み出しと共に、現在入力している1走査線分の輝度,色等の画素情報Bの書き込みを行う(S13)と、画素情報変化量演算手段14は、ラインメモリ13から出力される前走査線の画素情報Aと現走査線の画素情報Bとの隣接する画素の画素情報の差分(A−B)を求める(S14)。
【0028】そこで、エッジ判定手段15は画素情報変化量演算手段14で求めた差分(A−B)がしきい値以上で、変化が急激であれば(S15)、画像のエッジ(輪郭)であると判別して(S16)判定信号を出力し(S17)、又、差分(A−B)がしきい値未満で、変化が緩慢であれば(S15)、画像のエッジ(輪郭)ではないと判別して(S18)、判定信号を出力しない。
【0029】そして、この動作を1走査線分の画素信号が入力する毎に繰り返せば、画像のエッジ(輪郭)がリアルタイムに、確実に且つ自動的に判別することができる。
【0030】図5は本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の合成手段の一具体例を示すもので、16は、2つの端子からそれぞれ入力する画素Aと画素Bとの何れか1つを、1ビット2値信号からなる切替信号に応じて出力する切替合成手段である。
【0031】図6は本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の合成手段の他の具体例を示すもので、17は、2つの入力端子からそれぞれ入力する画素Aと画素Bとに、例えば10ビット1024階調の多値キー信号K(但し、K=0〜1)に応じて合成した画像信号を出力するキー合成手段である。
【0032】図7は本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の合成手段の更に他の具体例を示すもので、18は、2つの入力端子からそれぞれ入力する画素Aと画素Bとの内の最もレベルの高い方の画素A或いはB、又は、所定のレベル範囲の画素A或いはBを出力するNAM合成手段である。
【0033】このように構成された本発明の画像処理装置において、入力画像のどの部分を特殊効果画像にしたいか、例えば画面上の人物の顔を画像認識判定部5で指定した上、画像認識判定部5において図3に示したパターン認識による判定処理を、特殊効果発生処理部6においてモザイク或いはデフォーカスの特殊効果と、図5に示した切替合成手段16とをそれぞれ指定すると、人物が移動したり、カメラがパンする等して、画面上の人物の顔の位置が移動しても、特殊効果を施す部分として人物の顔の部分を自動的に追跡して、顔の部分にモザイク或いはデフォーカスの特殊効果を確実に施した画像がリアルタイムで得られる。
【0034】又、入力画像のどの部分を特殊効果画像にしたいか、例えば画面上の人物を画像認識判定部5で指定した上、画像認識判定部5において図2に示した動き検出による判定処理を、特殊効果発生処理部6においてモノカラーの特殊効果と、図6に示したキー合成手段17とをそれぞれ指定すると、人物が移動したり、カメラがパンする等して、画面上の人物の位置が移動しても、特殊効果画像領域として人物の部分を自動的に追跡して、人物のみをカラーで確実に表示し、それ以外の背景等をモノカラーで表示するパートカラー画像がリアルタイムで得られる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、入力画像の中の特殊効果を施す画像部分を画像認識判定部によって自動的に判定できるので、従来、画像編集時に人手によってしか行うことのできなかった特殊効果を施す作業が、リアルタイムに、確実に且つ自動的に施すことができるため、本発明の画像特殊効果発生装置が生放送番組でも使用できるという効果を奏する。
【0036】又、本発明の画像特殊効果発生装置は、従来の画像特殊効果発生装置が有する3次元Y/C分離やフレーム処理部で使用している動き検出回路や、動画圧縮に使用しているパターン認識回路等と本発明の画像認識判定部とを組み合わせることにより、従来の画像特殊効果発生装置でも本発明の画像特殊効果発生装置と同様の機能を簡単に持たせることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像処理装置の基本的な構成を示す図
【図2】(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の具体的な構成を示す図、(b)は(a)の画像認識判定部のフローチャート
【図3】(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の他の具体的な構成を示す図、(b)は(a)の画像認識判定部のフローチャート
【図4】(a)は本発明の画像処理装置における画像認識判定部の更に他の具体的な構成を示す図、(b)は(a)の画像認識判定部のフローチャート
【図5】本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の切替合成手段の一具体例を示す図
【図6】本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の切替合成手段の他の具体例を示す図
【図7】本発明の画像処理装置における特殊効果発生処理部の切替合成手段の更に他の具体例を示す図
【図8】従来の画像処理装置の基本的な構成を示す図
【符号の説明】
5 画像認識判定部
6 特殊効果発生処理部
7 フィールドメモリ
8 画素情報差分演算手段
9 画素判定手段
10 特徴抽出手段
11 パターン差分演算手段
12 パターン一致判定手段
13 ラインメモリ
14 画素情報変化量演算手段
15 エッジ判定手段
16 切替合成手段
17 キー合成手段
18 非加算合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 特定条件に基づいて判別された入力画像の中の特殊効果を施したい画像部分に特殊処理を施して、前記入力画像に合成処理する特殊効果処理方法。
【請求項2】 前記特定条件は、前記入力画像,前記入力画像の輝度,前記入力画像の色,前記入力画像の輪郭のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の特殊効果処理方法。
【請求項3】 前記特殊効果は、モザイク,スクランブル,バースト,メルト,ペイント(ビット落し),ネガ(反転),モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス(ぼかし),エンハンスのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の特殊効果処理方法。
【請求項4】 前記合成処理は、切替合成,キー合成,NAM合成のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の特殊効果処理方法。
【請求項5】 入力画像の中の特殊効果を施したい画像部分を前記入力画像から判別する画像認識判定部と、該画像認識判定部において判別された前記画像部分に特殊効果を施した上、前記画像部分を前記入力画像に合成処理する特殊効果発生処理部とからなることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】 前記画像部分を前記入力画像,前記入力画像の輝度,前記入力画像の色,前記入力画像の輪郭のうちの少なくとも1つによって判別することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】 前記特殊効果は、モザイク,スクランブル,バースト,メルト,ペイント(ビット落し),ネガ(反転),モノカラー,モアレ,ソラリゼーション,デフォーカス(ぼかし),エンハンスのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】 前記合成処理は、切替合成,キー合成,NAM合成のうちの少なくとも1つで行うことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−232609(P2000−232609A)
【公開日】平成12年8月22日(2000.8.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−33302
【出願日】平成11年2月10日(1999.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】