説明

状態監視装置

【課題】多数の機器の状態を同時に監視する際における、監視者にかかる負担を軽減すること。
【手段】複数の監視対象の状態を夫々測定し、測定した状態を表す測定値を出力する複数のセンサと、それらのセンサに対応付けられており、ある調和関係を持った複数の演奏パートの楽音を各々出力する楽音出力手段とを備える。更に、あるセンサが出力した測定値が正常範囲を逸脱している間、楽音出力手段によって出力される楽音のうちそのセンサに対応付けられた演奏パートの楽音を、調和関係を失わせる別の楽音信号に切り替える切替制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や工作機械、ロボットなどの管理者に対し、それらの機器の稼動状態をリアルタイムで提示する監視装置が従来より開発されてきた。このような監視装置の多くは各種センサを搭載し、センサによって測定した値が所定の正常範囲を外れた場合に、異常があった旨を管理者に提示するようになっている。
【0003】
この種の監視装置に関する発明を開示した文献として、特許文献1がある。同文献に記された車両用警報装置は、車両の前方、後方、側方に障害物があるか否かをセンサによって測定する。そして、センサが測定した値を基に衝突の危険度を段階的に予測し、危険度が比較的低い間は可聴周波数域の周辺付近の警告音を出力する一方で、危険度が高くなるにつれて可聴周波数域の中心付近に近い警告音を出力する。可聴周波数域の周辺付近の警告音は、サブリミナル的な効果は有しつつも比較的聴取されにくいという特性を有するので、危険度が比較的低い間は運転を妨げるような煩わしい印象を与えることなく、運転者に注意を喚起することができる。
【特許文献1】特開平8−118991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場など多数の機器が設置されているような環境においては、それらのすべての機器の稼動状態の監視を一人の管理者が一手に担当しなければならないことも少なくない。この場合、管理者は自らの管理下にある個々の機器の稼動状態に逐一気を配らねばならず、その監視負担は極めて大きなものとなっていた。従って、多数の機器の状態を同時に監視しなければならない場合に生じるであろう負担を軽減できるような装置の実現が望まれていた。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、多数の機器の状態を同時に監視する際における、監視者にかかる負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様である状態監視装置は、複数の監視対象の状態を夫々測定し、測定した状態を表す測定値を出力する複数のセンサと、前記複数のセンサに対応付けられており、ある調和関係を持った複数の演奏パートの楽音を各々出力する楽音出力手段と、前記複数のセンサのうちあるセンサが出力した測定値が正常範囲を逸脱している間、前記楽音出力手段によって出力される前記複数の演奏パートの楽音のうちそのセンサに対応付けられた演奏パートの楽音を、所定のアルゴリズムに従い、前記調和関係を失わせる別の楽音に切り替える切替制御手段とを備える。
【0006】
この態様において、前記所定のアルゴリズムは、あるタイミングで発音される楽音の楽音信号を、そのタイミングよりも所定の時間長だけ遅延させた又は遡らせた別のタイミングで発音される楽音の楽音信号に切り替える手順を表すアルゴリズムであってもよい。
【0007】
更に、前記記憶手段は、センサによる測定値と前記正常範囲との差異の大きさと各々対応付けられた複数の前記アルゴリズムを夫々記憶し、前記切替制御手段は、前記あるセンサが出力した測定値が正常範囲を逸脱している間、そのセンサに対応付けられた演奏パートの楽音を、前記出力した測定値と正常範囲との差異の大きさと対応付けて前記記憶手段に記憶されているアルゴリズムに従い、前記調和関係を失わせる別の楽音に切り替えるようにしてもよい。
また、前記各センサが出力した測定値を表示する状態表示手段を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、多数の機器の状態を同時に監視する際における、監視者にかかる負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の実施の形態)
本願発明の実施形態について説明する。
本実施形態にかかる状態監視システムは以下の2つの特徴を有する。1つ目の特徴は、監視対象となる複数の機器の各々にセンサを設置してそれら各機器の状態を測定し、測定した状態を各機器に個別に割り当てた演奏パートの楽音として表現するようにした点である。2つ目の特徴は、全ての機器の状態に異常が現れていない間は、ある一定の調和関係を持たせた楽音を出力する一方で、一部の機器の状態に異常が現れたときは、その調和関係を失わせる楽音を出力するようにした点である。
【0010】
ここで、各機器に設置するセンサは、それらを設置した機器における特定の物質の物質量を定量化して電気信号に変換できるものであればその種別を問うものでなく、熱センサ、気圧センサ、湿度センサ等のいずれであってもよい。例えば、各機器が放出する熱量を基にそれらのオーバーヒートの有無を監視する用途に本システムを用いるのであれば、熱センサを各機器に設置する。本実施形態では、各機器にこの熱センサが設置されているものとする。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる状態監視システムの全体構成を示すブロック図である。図に示すように、この状態監視システムは、監視対象となる機器10A乃至C、それらに1つずつ設置されたセンサ21A乃至C、設定メモリ22、設定入力装置23、電気信号生成装置24、状態表示装置25、楽音信号生成装置26、音源27、アンプ28、及びスピーカ29を備えている。
【0012】
センサ21は、上記前提より熱センサであり、図2に示すように、監視対象である機器10A乃至Cの温度を測定し、その測定値を表すアナログ電気信号を電気信号生成装置24へ供給する。
設定メモリ22は、測定値設定テーブル、正常時演奏設定テーブル、及び異常時演奏設定テーブルを記憶している。
【0013】
図3は、測定値設定テーブルのデータ構造図である。このテーブルは、各々が機器10に設置された1つのセンサ21と対応する複数のレコードの集合体である。このテーブルを構成する1つのレコードは、「センサ」、「正常レベル」、「異常レベル1」、「異常レベル2」、及び「異常レベル3」の5つのフィールドを有している。本実施形態では、各機器10の異常の程度を3つのレベルとして段階的に提示する。そして、異常レベル1、2、3は危険度の段階を夫々表わしており、異常レベル1が最も危険度が低く、異常レベル3が最も危険度が高い。
「センサ」のフィールドには、機器10A乃至Cに夫々備え付けた各センサ21A乃至Cを識別する識別情報を記憶する。「正常レベル」のフィールドには、正常範囲情報を記憶する。正常範囲情報とは、正常に稼動しているとみなす温度の範囲を表す上限値、下限値、又はその両者の対を表すデータを意味する。「異常レベル1」、「異常レベル2」、及び「異常レベル3」の各フィールドには、レベル別異常範囲情報を夫々記憶する。レベル別異常範囲情報とは、各異常レベルに該当する温度の範囲を表す上限値、下限値、又はその両者の対を表すデータを意味する。
本システムを利用する監視者は、上記測定値設定テーブルにおける「正常レベル」、「異常レベル1」、「異常レベル2」、及び「異常レベル3」の各フィールドの記憶内容を、設定入力装置23を用いた入力によって各センサ毎に個別に設定する。
【0014】
図4は、正常時演奏設定テーブルのデータ構造図である。このテーブルも、各々が機器10に設置された1つのセンサ21と対応する複数のレコードの集合体となっている。このテーブルを構成する1つのレコードは、「センサ」、「第1属性」、「第2属性」、「第3属性」、及び「第4属性」の5つのフィールドを有している。「センサ」のフィールドには、各センサ21の識別情報を記憶する。「第1属性」、「第2属性」、「第3属性」、及び「第4属性」の各フィールドには、属性情報を記憶する。属性情報とは、機器10に異常が発生していない間、その機器10に割り当てた演奏パートとして再生されるべき楽音の属性を表すデータを意味する。属性情報によって表される楽音の属性としては、発音タイミングの間隔、音色、ピッチ、音量といったものが想定できる。
本システムを利用する監視者は、上記正常時演奏設定テーブルの各レコードにおける、「第1属性」、「第2属性」、「第3属性」、及び「第4属性」の何れか1つ以上のフィールドの記憶内容を、設定入力装置23を用いた入力によって個別に設定する。
【0015】
図5は、異常時演奏設定テーブルのデータ構造図である。このテーブルは、各々が機器10に発生した異常の異常レベルと対応する複数のレコードの集合体である。このテーブルを構成する1つのレコードは、「レベル」と「アルゴリズム」の2つのフィールドを有している。
「レベル」のフィールドには、各異常レベルを識別する識別情報を記憶する。「アルゴリズム」のフィールドには、楽音切替アルゴリズムを記憶する。楽音切替アルゴリズムとは、各異常レベルに該当する異常が発生している間に再生されるべき楽音の生成手順を表すデータを意味する。
本システムを利用する監視者は、上記異常時演奏設定テーブルの各レコードにおける、「アルゴリズム」のフィールドの記憶内容を、設定入力装置23を用いた入力によって個別に設定する。
【0016】
電気信号生成装置24は、図6に示すように、センサ21から測定値のアナログ電気信号を入力するインターフェースA乃至Cを備えている。そして、この電気信号生成装置24は、各インターフェースを介して入力されたアナログ電気信号を基に各センサ21が測定した測定値を取り纏め、センサ21の識別情報と測定値の各対を表すデジタル電気信号として楽音信号生成装置26と状態表示装置25とに夫々供給する。
状態表示装置25は、図7に示すように、自らに供給されたデジタル電気信号が示す測定値を各センサ毎にメータ表示する。
【0017】
楽音信号生成装置26は、図8に示すように、電気信号生成装置24からデジタル電気信号が入力されると、各演奏パートの楽音のMIDI(musical instrument digital interface:登録商標)データを夫々生成し、生成したMIDIデータを楽音信号として音源27へ出力する。その際、電気信号生成装置24は、各センサ21によって測定された測定値が、測定値設定テーブルにて各センサ毎に個別に設定されている正常範囲情報、各レベル別異常範囲情報が夫々示す範囲のいずれに該当するかを判断する。そして、正常範囲情報が表す範囲に該当している間は、正常時演奏設定テーブルにて設定された属性情報を基に生成したMIDIデータを音源27へ供給する一方で、何れかのレベル別異常範囲情報が表す範囲に該当している間は、供給するMIDIデータを異常時演奏設定テーブルの楽音切替アルゴリズムに従って切り替える。このMIDIデータの切り替え処理については、テーブルの具体的な設定例を挙げて後に詳述する。
【0018】
MIDIデータの供給を受けた音源27からは、そのMIDIデータが指定する楽音のアナログ波形データが直ちに出力される。音源27から出力されたアナログ波形データは、アンプ28にて増幅された後、スピーカ29に供給される。スピーカ29からは、アナログ波形データを基に合成された楽音が発音される。
【0019】
上述したように、本システムによる機器10の監視を実行させるにあたっては、測定値設定テーブルの各レコードにおける、「正常レベル」、「異常レベル1」、「異常レベル2」、「異常レベル3」のフィールドの記憶内容、及び正常時演奏設定テーブルの各レコードにおける、「第1属性」、「第2属性」、「第3属性」、「第4属性」の何れか1つ以上のフィールドの記憶内容、更には、異常時演奏設定テーブルの各レコードにおける、「アルゴリズム」のフィールドの記憶内容を、設定入力装置23を用いた入力によって夫々設定しておかなければならい。
そして、この設定は、以下に示す2つのルールに従って行われることが望ましい。これらのルールに従った設定を行っておくと、楽音信号生成装置26によって生成されるMIDIデータが機器10に発生した異常の程度に比例して段階的に切り替えられ、その切り替えられたMIDIデータを基に合成される楽音を聴取する監視者に対し、機器10に発生した異常の程度を感覚的に把握させることができる。
ルール1:正常時演奏設定テーブルに設定される少なくとも一種類以上の属性情報は、各機器10に割り当てた演奏パートの間にある特定の調和関係を持たせる様な内容とする。
ルール2:異常時演奏設定テーブルに設定される楽音切替アルゴリズムは、正常時演奏設定テーブルの設定によって作り出されるある属性についての調和関係が、機器10に発生した異常の程度に応じて段階的に失われるような内容とする。
【0020】
以下には、上記2つのルールに従った好適な設定例を、その設定内容に応じて生成したMIDIデータを基に行われる演奏の様子と併せて紹介する。
〔第1の設定例〕
図9及び図10は、第1の設定例にかかる正常時演奏設定テーブル及び異常時演奏設定テーブルの設定内容を表わしている。
まず、図9に示す正常時演奏設定テーブルの設定内容について説明する。この設定例では、各レコードの「第1属性」のフィールドに、楽音の音色を表す属性情報を設定し、「第2属性」のフィールドに、リズム、つまり、発音タイミングの間隔を表す属性情報を設定していることが分かる。具体的には、センサ21Aと対応するレコードの「第1属性」のフィールドに「音色:ドラム音」と、センサ21Bと対応するレコードの同フィールドに「音色:伴奏音」と、センサ21Cと対応するレコードの同フィールドに「音色:メロディ音」と夫々設定される一方で、センサ21A乃至Cと対応する全レコードの「第2属性」のフィールドには、「リズム:1秒おきに発音」と設定されている。
【0021】
次に、図10に示す異常時演奏設定テーブルの設定内容について説明する。この設定例では、「異常レベル1」と対応するレコードの「アルゴリズム」のフィールドに「リズム:0.1秒遅延させて発音」と、「異常レベル2」と対応するレコードの同フィールドに「リズム:0.2秒遅延させて発音」と、「異常レベル3」と対応するレコードの同フィールドに「リズム:0.25秒遅延させて発音」と夫々設定されている。
【0022】
このような設定の下に各機器10の監視を行った場合、楽音信号生成装置26は、全ての機器10に異常が発生していない間、「第1属性」の設定内容に従った各音色の楽音を発音するためのMIDIデータを、「第2属性」の設定内容に従った時間長(1秒)が経過する毎に訪れるタイミング(以下、このタイミングを「基準発音タイミング」と呼ぶ)に合わせて音源27へ供給し続ける。この結果、図11の「正常」の発音例に示すように、全演奏パートの楽音が、基準発音タイミングの到来と合せてスピーカ29から発音されることになる。
【0023】
一方で、何れかの機器10に異常が発生すると、楽音信号生成装置26は、その機器の異常の程度が、異常レベル1、異常レベル2、及び異常レベル3のいずれに該当するかを判断する。そして、異常の程度が異常レベル1に該当する場合、異常レベル1と対応するレコードの「アルゴリズム」のフィールドの設定内容に従い、基準発音タイミングよりも0.1秒遅延させたタイミングでMIDIデータを音源27へ供給する。この結果、スピーカ29からは、図11の「異常1」の発音例に示すように、異常の発生した機器10に割り当てていた演奏パートの楽音だけが、基準発音タイミングよりも0.1秒遅れたタイミングでスピーカ29から発音されることになる。同様に、異常の程度が異常レベル2に該当する場合、基準発音タイミングよりも0.2秒遅れたタイミングで発音され、更に、異常レベル3に該当する場合、0.25秒遅れたタイミングで発音される。
【0024】
つまり、この設定例の場合、正常時設定テーブルの設定内容は各演奏パートの楽音のリズムに調和関係を持たせた格好となっている一方で、異常時設定テーブルの設定内容は、異常レベルが高くなるほどそのリズムの調和関係が段階的に失われるような格好となっている。従って、上述のルール1及び2に則った良好な設定例であると言える。
【0025】
〔第2の設定例〕
図12及び図13は、第2の設定例にかかる正常時演奏設定テーブル及び異常時演奏設定テーブルの設定内容を表わしている。
まず、図12に示す正常時演奏設定テーブルの設定内容について説明する。この設定例では、各レコードにおける「第1属性」のフィールドの記憶内容と「第2属性」のフィールドの記憶内容を共に第1の設定例と同じくするが、更にこれに加えて、「第3属性」のフィールドに、4種類の和音の各構成音とそれらの和音の発音ローテーションとを表す属性情報を設定していることが分かる。具体的には、センサ21A乃至Cと対応する全レコードの「第3属性」のフィールドに、「和音:ドミソ→ミソシ→ファラド→ソシレ」と設定されている。これは、基準発音タイミングが到来する毎に、「ドミソ」、「ミソシ」、「ファラド」、「ソシレ」の楽音をこの順番で繰り返し発音すべきことを表すものである。
【0026】
次に、図13に示す異常時演奏設定テーブルの設定内容について説明する。この設定例では、「レベル1」と対応するレコードの「アルゴリズム」のフィールドに「和音:次の和音と順番を入れ替え」と、「レベル2」と対応するレコードの同フィールドに「和音:不協和音を含む和音で発音(不協和度 低)」と、「レベル3」と対応するレコードの同フィールドに「和音:不協和音を含む和音で発音(不協和度 高)」と夫々設定されている。
【0027】
このような設定の下に各機器10の監視を行った場合、楽音信号生成装置26は、全ての機器10に異常が発生していない間は、「第1属性」の設定内容に従った各音色で、「第3属性」のフィールドの設定内容に従った和音の構成音を発音するためのMIDIデータを、「第2属性」の設定内容に従った基準発音タイミングに合わせて音源27へ供給し続ける。この結果、図14の「正常」の譜面例に示すように、全演奏パートの楽音が、基準発音タイミングの到来と合わせ、「ドミソ」→「ミソシ」→「ファラド」→「ソシレ」という順番で発音されることになる。
【0028】
一方で、何れかの機器10に異常が発生すると、楽音信号生成装置26は、その機器10の異常の程度が、異常レベル1、異常レベル2、及び異常レベル3のいずれに該当するかを判断する。そして、該当する異常レベルに応じたレコードの「アルゴリズム」のフィールドの記憶内容に応じて、以下のような各処理を夫々実行する。
【0029】
まず、異常の程度が異常レベル1に該当する場合、本来であれば次の基準発音タイミングに合せて発音されるべき和音のMIDIデータを、その次に到来する基準発音タイミングに合せて発音する和音のMIDIデータと入れ替えて音源27へ供給する。この結果、図14の「異常1」の譜面例に示すように、異常の発生した機器10に割り当てていた演奏パートの和音だけが、「第3属性」のフィールドの設定内容とは異なる順番で発音される。図の譜面例の場合、本来であれば、「ドミソ」→「ミソシ」→「ファラド」→「ソシレ」のローテーションで発音されるべきところが、「ファラド」と「ソシレ」が入れ替えられたことにより、「ドミソ」→「ミソシ」→「ソシレ」→「ファラド」となっている。
【0030】
また、異常の程度が異常レベル2に該当する場合、次の基準発音タイミングに合せて発音されるべき和音のMIDIデータに、その和音と不協和な関係にある別の楽音のMIDIデータを重畳する。この結果、図14の「異常2」の譜面例に示されるように、異常の発生した機器10に割り当てていた演奏パートについては、和音と、その和音と不協和な関係にある別の楽音とが発音される。
【0031】
更に、異常の程度が異常レベル3に該当する場合、次の基準発音タイミングに合せて発音されるべき和音のMIDIデータに、異常レベル2よりも不協和の度合いがより強くなるような別の楽音のMIDIデータを重畳する。この結果、図14の「異常3」の譜面例に示すように、異常の発生した機器10に割り当てていた演奏パートについては、和音と、その和音に対する不協和の程度をより一層強める別の楽音とが発音される。
【0032】
つまり、この設定例の場合、正常時設定テーブルの設定内容は各演奏パートの和音のローテーションに調和関係を持たせた格好となっている一方で、異常時設定テーブルの設定内容は、異常レベルが高くなるほど、そのローテーションの調和関係が段階的に失われるような格好となっている。従って、これも上述のルール1及び2に則った良好な設定例であると言える。
【0033】
以上説明した本実施形態では、監視対象となる機器10の状態をそれらに設置したセンサ21によって測定し、測定した状態を各機器10に個別に割り当てた演奏パートの楽音として表現する。そして、全ての機器10に異常が発生していない間は各演奏パートを構成する楽音に調和関係を持たせるのに対し、一部の機器10に異常が発生すると、その機器10に割り当てた演奏パートを構成する楽音と他の演奏パートを構成する楽音との間の調和関係を失わせるようになっている。従って、監視者は、各機器10に割り当てた演奏パートの楽音を聴取することによって、それら各機器10ごとの異常の発生の有無を感覚的に把握することができる。
【0034】
(他の実施形態)
本実施形態は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態では、設定メモリ22に正常時演奏設定テーブルを設け、楽音信号生成装置26は、音源27へ供給すべきMIDIデータをこのテーブルに設定された楽音情報を基に生成するようになっていた。
これに対し、正常時演奏設定テーブルを設定メモリ22に設けない代わりに、図15に示すようなMIDI楽曲データベース30を設け、楽音信号生成装置26がこのMIDI楽曲データベース30に記憶してあるMIDI楽曲ファイルを基にMIDIデータを生成するようにしてもよい。
【0035】
このMIDI楽曲ファイルは、BGM用に編曲されたある楽曲の演奏内容を、複数のトラックに分けて個別にシーケンス化されたMIDIデータ列として記録する。本変形例では、各機器10に割り当てる演奏パートの各々をこのMIDI楽曲ファイルにおける1つのトラックと対応付ける。そして、全ての機器10に異常が発生していない間は、各トラックから読み出したMIDIデータを音源27へそのまま供給する一方で、何れかの機器10に異常が発生すると、異常時演奏設定テーブルの楽音切替アルゴリズムを基に生成したMIDIデータを、その機器10の演奏パートに対応するトラックから読み出したMIDIデータの代わりに音源27へ供給する。かかる変形例によれば、監視対象となる全ての機器10に異常が発生していない間はMIDI楽曲ファイルの内容に応じたBGMがそのままの内容でスピーカ29から出力される一方で、何れかの機器10に異常が発生すると、その機器10に割り当てていた演奏パートだけが変形された楽音として出力される。従って、監視者は、スピーカ29から出力されるBGMの曲調の変化を聴取することによって、特定の機器10に発生した異常を感覚的に把握することができる。
【0036】
更に、図16に示すように、MIDI楽曲ファイルをインターネットを介してダウンロードできるようにすれば、監視者の嗜好に応じた多様な内容の楽曲を、機器10の監視に利用することができるようになる。
上記実施形態は、工場内に設置された複数の機器10に夫々センサ21を設置してそれらを監視することを想定したが、本願発明は、機器のみを監視対象として想定するものではなく、例えば、自動車に組み込まれた複数の部品の状態をそれら各部品に割り当てた演奏パートの楽音として表現してもよい。また、河川内に設置した複数の計測地点における流水量の状態をそれら各計測地点に割り当てた演奏パートの楽音として表現するといったように、本監視システムを自然現象の観測に応用してもよい。
【0037】
設定メモリ22における正常時演奏設定テーブルと異常時演奏設定テーブルの設定内容を上述した第1の設定例や第2の設定例に従ったものとせず、別の設定内容としてももちろんよい。例えば、同じ構成音の和音が各演奏パート毎に異なる音色で発音されるような設定を正常時演奏設定テーブルにて行っておく一方で、ある機器10に異常が発生したときは、その機器10に割り当ててある演奏パートの和音が他の演奏パートの和音に合わない音程を多用して発音されるといった設定を異常時演奏設定テーブルにて行なってもよい。また、異常が発生したときに、所定の時間長だけ発音のタイミングを遅らせるのではなく、反対に所定の時間長だけ発音のタイミングを遡らせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】状態監視システムの全体構成図である。
【図2】センサのハードウェア構成図である。
【図3】測定値設定テーブルのデータ構造図である。
【図4】正常時演奏設定テーブルのデータ構造図である。
【図5】異常時演奏設定テーブルのデータ構造図である。
【図6】電気信号生成装置のハードウェア構成図である。
【図7】状態表示装置の表示態様を表す図である。
【図8】楽音信号生成装置のハードウェア構成図である。
【図9】正常時演奏設定テーブルの第1の設定例を示す図である。
【図10】異常時演奏設定テーブルの第1の設定例を表す図である。
【図11】第1の設定例に従った演奏の様子を表す図である。
【図12】正常時演奏設定テーブルの第2の設定例を表す図である。
【図13】異常時演奏設定テーブルの第2の設定例を表す図である。
【図14】第2の設定例に従った演奏の様子を表す図である。
【図15】状態監視システムの全体構成図である(変形例)。
【図16】状態監視システムの全体構成図である(変形例)。
【符号の説明】
【0039】
10…機器、21…センサ、22…設定メモリ、23…設定入力装置、24…電気信号生成装置、25…状態表示装置、26…楽音信号生成装置、27…音源、28…アンプ、29…スピーカ、30…MIDI楽曲データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象の状態を夫々測定し、測定した状態を表す測定値を出力する複数のセンサと、
前記複数のセンサに対応付けられており、ある調和関係を持った複数の演奏パートの楽音を各々出力する楽音出力手段と、
前記複数のセンサのうちあるセンサが出力した測定値が正常範囲を逸脱している間、前記楽音出力手段によって出力される前記複数の演奏パートの楽音のうちそのセンサに対応付けられた演奏パートの楽音を、所定のアルゴリズムに従い、前記調和関係を失わせる別の楽音に切り替える切替制御手段と
を備えた状態監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態監視装置において、
前記所定のアルゴリズムは、
あるタイミングで発音される楽音の楽音信号を、そのタイミングよりも所定の時間長だけ遅延させた又は遡らせた別のタイミングで発音される楽音の楽音信号に切り替える手順を表すアルゴリズムである
状態監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載の状態監視装置において、
前記記憶手段は、
センサによる測定値と前記正常範囲との差異の大きさと各々対応付けられた複数の前記アルゴリズムを記憶し、
前記切替制御手段は、
前記あるセンサが出力した測定値が正常範囲を逸脱している間、そのセンサに対応付けられた演奏パートの楽音を、前記出力した測定値と正常範囲との差異の大きさと対応付けて前記記憶手段に記憶されているアルゴリズムに従い、前記調和関係を失わせる別の楽音に切り替える
状態監視装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の状態監視装置において、
前記各センサが出力した測定値を表示する状態表示手段
を更に備えた状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−106984(P2006−106984A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290658(P2004−290658)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】