説明

現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置

【課題】外周面に規則的な凹凸を形成し、優れた現像特性を有する現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】円筒状をなす基体511と、基体511の外周面に固定された筒状のメッシュ部材512とを有し、メッシュ部材512の網目512c内にトナーを担持するように構成されている。このメッシュ部材512は、焼きばめによって、基体511の外周面に固定されている。メッシュ部材512は、焼きばめによって、基体511の外周面に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程などの一連の画像形成プロセスによって、紙などの記録媒体上に、トナーからなる画像を形成する。
このような画像形成装置には、静電的な潜像を担持する感光体に対向して配設され、トナーを担持する現像ローラを有する現像装置が備えられている。かかる現像装置は、現像工程にて、現像ローラから感光体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化する。
【0003】
従来から、現像ローラ上にトナーを確実に担持させるために、現像ローラの外周面に凹凸が形成されているものが広く知られている。例えば、特許文献1では、規則的に凹凸が形成されたシート状部材(カットシート)を円筒状の基体(ローラ体)の外周面に貼り付けることで、現像ローラの外周面に凹凸を形成している。
しかしながら、このような現像ローラでは、必ずカットシートの継ぎ目が形成されることとなるため、この継ぎ目によって、現像特性の低下を招く場合がある。
【0004】
例えば、継ぎ目が存在すると、(1)継ぎ目に対して一方側の凹凸と、他方側の凹凸との配置(位置関係)が不規則になったり、(2)現像ローラの周方向におけるカットシートの両端部同士が重なり合うことで、その重なり部分(つまり、シーム部)の外径がその他の部分の外形よりも大きくなったりする。このようなことにより、現像ローラの外周面に担持されるトナー量の分布が不均一となったり、現像ローラの外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)が不均一になったりする。
【0005】
【特許文献1】特開平5−46012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外周面に規則的な凹凸を形成し、優れた現像特性を有する現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の現像ローラは、円筒状または円柱状をなす基体と、
前記基体の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、
前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
基体の外周面にメッシュ部材の継ぎ目(シーム部)が存在しないため、現像ローラの外周面に均一な網目(つまり、凹凸)を形成することができる。これにより、現像ローラの外周面に担持されるトナー量の分布を均一化し、かつ、現像ローラの外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)を均一化することができる。この結果、現像ローラは、優れた現像特性を発揮することができる。
【0009】
本発明の現像ローラでは、前記メッシュ部材は、焼きばめによって、前記基体の外周面に固定されていることが好ましい。
これにより、簡単な方法で、かつ、強固にメッシュ部材を基体の外周面に固定することができ、現像ローラの外周面の全域にわたって、所望の平面視形状を有する網目を規則的に形成することができる。
【0010】
本発明の現像ローラでは、前記メッシュ部材の長さは、前記基体の長さよりも短く、前記基体の両端部に前記メッシュ部材で覆われていない領域が形成されていることが好ましい。
これにより、メッシュ部材は、その長さ方向の全域にわたって基体の外周面に固定されることとなる。そのため、メッシュ部材のほつれを確実に防止することができ、基体の外周面の全域(ただし、基体の外周面のメッシュ部材で覆われていない領域を除く)にわたって、所望の形状の網目を規則的に形成することができる。
【0011】
本発明の現像ローラでは、前記基体の外周面および前記メッシュ部材を覆うように形成されたメッキ層を備えていることが好ましい。
これにより、基体の外周面とメッシュ部材とをさらに強固に固定することができるとともに、現像ローラの強度(例えば、耐久性)を向上させることができる。
本発明の現像ローラでは、前記メッシュ部材のメッシュ数は、250〜800メッシュ/インチであることが好ましい。
これにより、現像ローラの外周面に担持されるトナー量の分布(特に軸方向での分布)を均一化することができるとともに、トナーがメッシュ部材に引っ掛かりやすくなり、トナーの転動性が向上し帯電性が向上する。
【0012】
本発明の現像ローラでは、前記メッシュ部材は、格子状に織り込まれていることが好ましい。
これにより、比較的単純な形状の網目を形成することができるため、トナーが網目内に滞留してフィルミングが生じてしまうことを抑制することができる。
本発明の現像ローラでは、前記メッシュ部材は、互いに間隔を隔てて並設された多数の第1の線状部材と、該第1の線状部材に交差するとともに、互いに間隔を隔てて並設された多数の第2の線状部材とで構成され、前記トナーの平均粒径をdとし、隣接する1対の前記第1の線状部材同士の離間距離をL1とし、隣接する1対の前記第2の線状部材同士の離間距離をL2としたとき、L1およびL2は、それぞれ、2d〜40dの範囲内であることが好ましい。
これにより、現像ローラは、網目内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。
【0013】
本発明の現像ローラでは、前記トナーの平均粒径をdとし、前記各第1の線状部材の線径をD1とし、前記各第2の線状部材の線径をD2としたとき、D1およびD2は、それぞれ、0.5d〜5dの範囲内であることが好ましい。
これにより、現像ローラは、網目内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。
本発明の現像ローラでは、前記各第1の線状部材および前記各第2の線状部材は、それぞれ、前記基体の周方向に対して傾斜していることが好ましい。
これにより、トナーがメッシュ部材に引っ掛かりやすくなり、トナーの転動性が向上し、帯電性が向上する。
【0014】
本発明の現像ローラの製造方法は、円筒状または円柱状をなす基体と、筒状のメッシュ部材とを用意する第1の工程と、
前記メッシュ部材の内側に前記基体を挿入し、前記基体の外周面に前記メッシュ部材を固定する第2の工程とを有していることを特徴とする。
これにより、簡単に、現像ローラの外周面に担持されるトナー量の分布を均一化し、かつ、現像ローラの外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)を均一化することができる現像ローラを製造することができる。
【0015】
本発明の現像ローラの製造方法では、前記メッシュ部材の内径は、前記基体の外径よりも若干小さく、
前記第2の工程は、前記メッシュ部材を加熱し拡径させる加熱工程と、
拡径した前記メッシュ部材の内側に前記基体を挿入する挿入工程と、
拡径した前記メッシュ部材を冷却し縮径させる冷却工程とを有していることが好ましい。
これにより、メッシュ部材の形状(例えば、網目の形状など)を所望の形状に保ったまま、基体の外周面に強固に固定することができる。その結果、現像ローラの外周面に均一な凹凸を形成することができる。
【0016】
本発明の現像ローラの製造方法では、前記基体は、その外周面が予め粗面化されたものであることが好ましい。
これにより、基体の外周面の摩擦抵抗が高められ、メッシュ部材をより強固に固定することができる。
本発明の現像ローラの製造方法では、さらに、前記第2の工程の後に、前記メッシュ部材および前記基体の外周面を覆うようにメッキ層を形成するメッキ層形成工程を含んでいることが好ましい。
これにより、基体の外周面とメッシュ部材とをさらに強固に固定することができるとともに、現像ローラの強度(例えば、耐久性)を向上させることができる。
【0017】
本発明の現像装置は、円筒状または円柱状をなす基体と、該基部の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成された現像ローラを備え、該現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像ローラから前記潜像担持体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化することを特徴とする。
これにより、優れた現像特性を有する現像装置を提供することができる。
【0018】
本発明の画像形成装置は、帯電・露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスにより、画像を記録媒体に形成することを特徴とする画像形成装置であって、
円筒状または円柱状をなす基体と、該基部の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成された現像ローラを備え、該現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像ローラから前記潜像担持体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化する現像装置を有していることを特徴とする。
これにより、優れた現像特性を有する画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<画像形成装置>
まず、本発明の画像形成装置、すなわち本発明の現像装置を備える画像形成装置を簡単に説明する。
【0020】
図1は、本発明の画像形成装置の全体構成を示す模式的断面図である。
図1に示す本実施形態の画像形成装置10は、主として露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスによって画像を記録媒体に記録するものである。このような画像形成装置10は、図1に示すように、静電的な潜像を担持し図示矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向に沿って順次、帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ローラ60、クリーニングユニット75が配設されている。また、画像形成装置10は、図1にて下部に、紙などの記録媒体Pを収容する給紙トレイ82が設けられ、その給紙トレイ82に対して記録媒体Pの搬送方向下流に、二次転写ローラ80、定着装置90が記録媒体Pの搬送方向に沿って順次配設されている。また、画像形成装置10には、記録媒体の両面に画像を形成する場合に、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを表裏反転させて二次転写ローラ80へ帰還させるための搬送部88が設けられている。
【0021】
感光体20は、円筒状の導電性基材(図示せず)と、その外周面に形成された感光層(図示せず)とを有し、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。
帯電ユニット30は、コロナ帯電などにより感光体20の表面を一様に帯電するための装置である。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体20上に、レーザを照射することによって、静電的な潜像を形成する装置である。
【0022】
現像ユニット50は、ブラック現像装置51と、マゼンタ現像装置52と、シアン現像装置53と、イエロー現像装置54との4つの現像装置を有し、これらの現像装置を感光体20上の潜像に対応して選択的に用いて、前記潜像をトナー像(現像剤像)として可視化する装置である。この装置では、現像剤として、ブラック現像装置51はブラック(K)トナー、マゼンタ現像装置52はマゼンタ(M)トナー、シアン現像装置53はシアン(C)トナー、イエロー現像装置54はイエロー(Y)トナーを用いて現像を行う。
【0023】
本実施形態におけるYMCK現像ユニット50は、前述の4つの現像装置51、52、53、54を選択的に感光体20に対向するように、回転可能となっている。具体的には、このYMCK現像ユニット50は、軸50aを中心として回転可能な保持体55の4つの保持部55a、55b、55c、55dにそれぞれ4つの現像装置51、52、53、54が保持されており、保持体55の回転により、4つの現像装置51、52、53、54が相対位置関係を維持したまま、感光体20に選択的に対向するようになっている。各現像装置51、52、53、54は、本発明の現像ローラの製造方法を用いて製造された現像ローラを備えるものである。なお、各現像装置51、52、53、54については、後に詳述する。
【0024】
中間転写体61は、エンドレスベルト状の中間転写ベルト70を有し、この中間転写ベルト70は、一次転写ローラ60、従動ローラ72、駆動ローラ71で張架されており、駆動ローラ71の回転により、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。
一次転写ローラ60は、感光体20に形成された単色のトナー像を中間転写ベルト70に転写するための装置である。
【0025】
中間転写ベルト70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。本実施形態では、駆動ローラ71が、後述する二次転写ローラ80のバックアップローラとしても機能する。また、一次転写ローラ60、駆動ローラ71、従動ローラ72は、基体73によって支持されている。
【0026】
二次転写ローラ80は、中間転写ベルト70上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体Pに転写するための装置である。
定着装置90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体Pを加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体Pに融着させて永久像として定着させるための装置である。
【0027】
クリーニングユニット75は、一次転写ローラ60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ローラ60によって中間転写ベルト70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
搬送部88は、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを挟持搬送する搬送ローラ対88A、88Bと、搬送ローラ対88A、88Bによって搬送される記録媒体Pを表裏反転しつつレジローラ86へ向け案内する搬送路88Cとを備えている。これにより、記録媒体の両面に画像形成する場合に、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを表裏反転して二次転写ローラ80へ帰還させる。
【0028】
次に、このように構成された画像形成装置10の動作を説明する。
まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50に設けられた現像ローラ(図示せず)、および中間転写ベルト70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転しながら、帯電ユニット30により順次帯電される。
感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
【0029】
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。このとき、YMCK現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、前記現像位置にて感光体20と対向している。
感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置(すなわち、感光体20と一次転写ローラ60との対向部)に至り、一次転写ローラ60によって、中間転写ベルト70に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ60には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、この間、二次転写ローラ80は、中間転写ベルト70から離間している。
【0030】
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト70に重なり合って転写される。これにより、中間転写ベルト70上にはフルカラートナー像が形成される。
【0031】
一方、記録媒体Pは、給紙トレイ82から、給紙ローラ84、レジローラ86によって二次転写ローラ80へ搬送される。
中間転写ベルト70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト70の回転に伴って二次転写位置(すなわち、二次転写ローラ80と駆動ローラ71との対向部)に至り、二次転写ローラ80によって記録媒体Pに転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ80は中間転写ベルト70に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
【0032】
記録媒体Pに転写されたフルカラートナー像は、定着装置90によって加熱および加圧されて記録媒体Pに融着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対87によって画像形成装置10の外部へ排出される。
一方、感光体20は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75のクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット75内の残存トナー回収部に回収される。
【0033】
記録媒体の両面に画像形成する場合には、定着装置90によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦排紙ローラ対87により挟持した後に、排紙ローラ対87を反転駆動するとともに、搬送ローラ対88A、88Bを駆動して、当該記録媒体Pを搬送路88Cを通じて表裏反転して二次転写ローラ80へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
【0034】
<現像装置>
次に、現像ユニット50の現像装置51、52、53、54を詳細に説明する。なお、現像装置51、52、53、54は、使用するトナーが異なるが、それ以外は同様の構成であるため、以下、図2に基づいて、イエロー現像装置54を代表的に説明する。
図2は、本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
図2に示すイエロー現像装置54は、現像剤たるトナーT(イエロートナー)を収容するハウジング540と、現像ローラ510と、この現像ローラ510にトナーTを供給するトナー供給ローラ550と、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制する規制ブレード560とを有している。
【0035】
ハウジング540は、その内部空間として形成された収容部530内にトナーTを収容する。ハウジング540では、収容部530の下部に形成された開口およびその近傍において、トナー供給ローラ550および現像ローラ510が互いに圧接回転するように支持されている。また、ハウジング540には、規制ブレード560が取り付けられていて、これが現像ローラ510に圧接している。さらに、ハウジング540には、前記開口におけるハウジング540と現像ローラ510との間からのトナーの漏れを防止するためのシール部材520が取り付けられている。
【0036】
現像ローラ510は、その外周面にトナーTを担持しつつ、現像ローラ510と感光体20との対向部である現像位置(以下、単に「現像位置」という)へトナーTを搬送するものである。また、現像ローラ510は、円筒状をなし、その軸線まわりに回転可能となっている。本実施形態では、現像ローラ510は、感光体20の回転方向と逆の方向に回転する。なお、現像ローラ510については、後に詳述する。
【0037】
また、本実施形態では、イエロー現像装置54による現像時に、現像ローラ510と感光体20とが微小間隙をもって、非接触状態で対向する。そして、現像ローラ510と感光体20との間に交番電界を印加することにより、トナーTを現像ローラ510上から感光体20へ飛翔させて、感光体20上の潜像が現像される。
トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する。このトナー供給ローラ550は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形された状態で現像ローラ510に圧接している。本実施形態では、トナー供給ローラ550は、現像ローラ510の回転方向と逆の方向に回転する。なお、トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する機能を有するだけでなく、現像後に現像ローラ510に残存しているトナーTを現像ローラ510から剥ぎ取る機能をも有している。
【0038】
規制ブレード560は、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、その規制時に、摩擦帯電により、現像ローラ510に担持されたトナーTに電荷を付与する。この規制ブレード560は、現像ローラ510の回転方向にて現像位置の上流側のシール部材としても機能している。
この規制ブレード560は、現像ローラ510の軸方向に沿って当接される当接部材としてのゴム部560aと、このゴム部560aを支持する支持部材としてのゴム支持部560bとを有している。ゴム部560aは、シリコンゴム、ウレタンゴム等を主材料として構成され、ゴム支持部560bは、ゴム部560aを現像ローラ510側に付勢する機能も有するため、リン青銅、ステンレス等のバネ性(弾性)を有するシート状の薄板が用いられる。ゴム支持部560bは、その一端がブレード支持板金562に固定されている。ブレード支持板金562は、ハウジング540に取り付けられ、シール部材520もハウジング540に取り付けられる。さらに現像ローラ510が取り付けられた状態で、ゴム部560aは、ゴム支持部560bの撓みによる弾性力によって、現像ローラ510に押しつけられている。
【0039】
また、本実施形態では、規制ブレード560の現像ローラ510側とは逆側には、ブレード裏部材570が設けられ、ゴム支持部560bとハウジング540との間にトナーTが入り込むことを防止するとともに、ゴム部560aを現像ローラ510へ押圧して、ゴム部560aを現像ローラ510に押しつけている。
本実施形態では、規制ブレード560の自由端部、すなわち、ブレード支持板金562に支持されている側とは逆側の端部は、その端縁で現像ローラ510に接触せずに、端縁から若干離れた部位で現像ローラ510に接触している。また、規制ブレード560は、その先端が現像ローラ510の回転方向の上流側に向くように配置されており、いわゆるカウンタ当接している。
【0040】
<現像ローラ>
ここで、図3〜図5に基づき、本発明の現像ローラの一例である現像ローラ510を詳細に説明する。
図3は、図2に示す現像装置に備えられた現像ローラを示す模式的平面図、図4は、図3に示す現像ローラの模式的縦断面図、図5は、図4に示す断面図の部分拡大図である。なお、図3では、説明の便宜上、後述するメッキ層513を省略している。
【0041】
図3、4に示すように、現像ローラ510は、円筒状の基体511と、基体511の両端に設けられた1対の軸部材514、515と、基体511の外周面に固定された筒状のメッシュ部材512と、基体511の外周面およびメッシュ部材512を覆うように形成されたメッキ層513とを備えている。
そして、現像ローラ510は、メッシュ部材512の網目512c内(言い換えれば、基体511の外周面とメッシュ部材512とで形成された凹凸の凹部)にトナーを収容可能に構成されている。
【0042】
なお、例えば、基体511の外周面が粗面化されていてもよい。これにより、基体511の外周面の摩擦抵抗が高められ、メッシュ部材512のズレを抑制し、メッシュ部材512を確実に固定することができる。
基体511の外周面を粗面化する方法としては、特に限定されないが、例えば、ブラスト処理などが挙げられる。
このような基体511の両端部の内側には、1対の軸部材514、515が圧入されている。現像ローラ510は、この1対の軸部材514、515によって、回転可能に支持されている。
【0043】
ただし、基体511としては、円柱状をなしていてもよい。この場合には、例えば、1対の軸部材514、515は、基体511と一体的に形成されていてもよい。
このような基体511は、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄等のような金属材料を主材料として構成されている。
以上のような基体511の外周面には、筒状のメッシュ部材512が固定されている。
【0044】
図3に示すように、メッシュ部材512の軸方向の長さ(以下、単に「長さ」と言う)は、基体511の長さよりも短く、基体511の両端部にメッシュ部材512で覆われていない領域Tが形成されている。言い換えれば、メッシュ部材512は、その長さ方向の全域にわたって基体511の外周面に固定されているとも言える。これにより、メッシュ部材512のほつれを確実に防止することができ、現像ローラ510の外周面の全域(ただし、領域Tは除く。以下同じ)にわたって、所望の形状を有する網目512cを規則的に形成することができる。
【0045】
本実施形態では、メッシュ部材512は、その内径が基体511の外径よりも若干小さくなるように形成されている。そして、後述する現像ローラ510の製造方法でも説明するように、メッシュ部材512は、焼きばめによって、基体511の外周面に固定されている。これにより、簡単な方法で、かつ、強固にメッシュ部材512を基体511の外周面に固定することができる。また、現像ローラ510の外周面の全域にわたって、所望の形状を有する網目512cを規則的に形成することができる。
【0046】
ここで、メッシュ部材512は、筒状に織り込まれた織物である。つまり、メッシュ部材512には、繋ぎ目(シーム部)が存在しない。そのため、現像ローラ510の外周面の全域にわたって、所望の形状を有する網目512cを規則的に形成することができる。これにより、現像ローラ510の外周面に担持されるトナー量の分布(特に、現像ローラの周方向での分布)を均一化し、かつ、現像ローラ510の外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)を均一化することができる。この結果、現像ローラ510は、優れた現像特性を発揮することができる。
【0047】
また、このようなメッシュ部材512は、格子状に織り込まれている。これにより、簡単に、基体511の外周面とメッシュ部材512とで規則的な凹凸を簡単に形成することができる。また、比較的単純な形状の網目512cを形成することができるため、トナーが網目512c内に滞留してフィルミングが生じてしまうことを抑制することができる。
メッシュ部材512について具体的に説明すれば、メッシュ部材512は、互いに間隔を隔てて並設された多数の第1の線状部材512aと、第1の線状部材512aに交差するとともに、互いに間隔を隔てて並設された多数の第2の線状部材512bとで構成されている。そして、隣接する1対の第1の線状部材512aと、隣接する1対の第2の線状部材512bとで囲まれることで網目512cが形成されている。
【0048】
このような各第1の線状部材512aおよび各第2の線状部材512bは、それぞれ、基体511の周方向に対して傾斜するように設けられている。これにより、現像ローラ510の外周面に担持されるトナー量の分布(特に、現像ローラ510の軸方向での分布)を均一化するとともに、トナーがメッシュ部材512に引っ掛かりやすくなり、トナーの転動性が向上し帯電性が向上する。
【0049】
本実施形態では、メッシュ部材512として、いわゆる「平織」によって織り込まれたものを用いている。ただし、後述するように、メッシュ部材512の織り方は、特に限定されない。
ここで、図3に示すように、隣接する1対の線状部材512a同士の離間距離(いわゆる「線ピッチ」)をL1とし、隣接する1対の前記第2の線状部材同士の離間距離(いわゆる「線ピッチ」)をL2とし、トナーの平均粒径をdとしたとき、L1およびL2は、それぞれ、2d〜40dの範囲内であることが好ましく、4d〜20dの範囲内であることがより好ましい。これにより、現像ローラ510は、網目512c内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。これに対し、L1、L2が上記下限値未満であると、トナーの材料や網目512cの形状などによっては、トナーが網目512c内に入り込まずトナーの転動性が悪化し帯電不良を生じたり、トナーTが網目512c内に入っても網目512c内に滞留してフィルミングが生じたりする場合がある。一方、L1、L2が前記上限値を超えると、網目512cの形状などによっては、現像ローラ510に担持されるトナー量が少なくなり搬送不良を生じる場合がある。
なお、L1とL2との関係については、特に限定されないが、L1とL2とがほぼ等しいことが好ましい。これにより、現像ローラ510は、さらに、網目512c内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。
【0050】
また、図5に示すように、第1の線状部材512aの線径をD1とし、第2の線状部材512bの線径をD2とし、トナーの平均粒径をdとしたとき、D1およびD2は、それぞれ、0.5d〜5dの範囲内であることが好ましく、0.7d〜3dの範囲であることがより好ましい。これにより、現像ローラ510は、網目512c内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。これに対し、D1およびD2が前記下限値未満であると、網目512cの形状などによっては、トナーがメッシュ部材512(つまり、第1の線状部材512aおよび第2の線状部材512b)に引っ掛かりにくく、トナーの転動性が悪化し、帯電不良を生じる場合がある。一方、D1およびD2が前記上限値を超えると、網目512cの形状などによっては、網目512c内に担持されているトナーが現像ローラ510および規制ブレード560のいずれにも接触せずに帯電不良を生じる場合がある。
【0051】
なお、D1とD2との関係については、特に限定されないが、L1とL2とがほぼ等しいことが好ましい。これにより、現像ローラ510は、さらに、網目512c内にトナーを均一かつ最適な量で担持することができる。
また、メッシュ部材512のメッシュ数は、250〜800メッシュ/インチであるのが好ましく、400〜800メッシュ/インチであるのがより好ましい。これにより、トナーがメッシュ部材512に引っ掛かりやすくなり、トナーの転動性が向上し、帯電性が向上する。これに対し、メッシュ部材512のメッシュ数が前記下限値未満であると、網目512cの形状などによっては、トナーがメッシュ部材512に引っ掛かりにくく、トナーの転動性が悪化し、帯電不良を生じる場合がある。一方、メッシュ部材512のメッシュ数が前記上限値を超えると、トナーが網目512c内に入り込まずトナーの転動性が悪化し帯電不良を生じたり、トナーTが網目512c内に入っても網目512c内に滞留してフィルミングが生じたりする場合がある。
【0052】
なお、本明細書中の「メッシュ数」とは、1インチあたりに存在する網目512cの数を言う。
このようなメッシュ部材512の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス、銅などの金属材料や、Ni−Ti合金のような超弾性合金や、ピアノ線などの鋼材や、各種樹脂材料(例えば、ケブラーなどの高強度弾性体)などを好適に用いることができる。これらの中でも、メッシュ部材512を焼きばめによって基体511に固定する場合には、熱膨張係数が比較的高い金属材料、合金などが特に好ましい。これにより、例えば、メッシュ部材512の内径を熱膨張係数が低い材料に比べて小さくすることができるため、メッシュ部材512をより強固に基体511の外周面に固定することができる。
【0053】
以上説明したメッシュ部材512および基体511の外周面を覆うようにメッキ層513が形成されている。このようなメッキ層513を形成することで、基体511の外周面とメッシュ部材512とをさらに強固に固定することができるとともに、現像ローラ510の強度(例えば、耐久性)を向上させることができる。また、このようなメッキ層513を形成することで、例えば、第1の線状部材512aと第2の線状部材512bとの間に形成されている微小隙間をメッキによって埋めることができるため、トナーのフィルミングを抑制することができる。
メッキ層513の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ニッケルメッキ、クロムメッキ等を好適に用いることができる。また、メッキ層513の厚さは、2〜5μm程度であるのが好ましい。
以上説明した現像ローラ510は、例えば、次のように製造される。
【0054】
<現像ローラの製造方法>
図6、7に基づいて、本発明の現像ローラの製造方法の一例として、前述した現像ローラ510の製造方法を説明する。
図6は、本発明の実施形態にかかる現像ローラの製造方法を説明するための断面図、図7は、本発明の実施形態にかかる現像ローラの製造方法を説明するための平面図である。
【0055】
現像ローラ510の製造方法は、[1]円筒状をなす基体511と、筒状をなし、その内径が基体511の外径よりも若干小さいメッシュ部材512とを用意する第1の工程と、[2]メッシュ部材512の内側に基体511を挿入し、基体511の外周面にメッシュ部材512を固定する第2の工程と、[3]メッシュ部材512および基体511の外周面を覆うようにメッキ層513を形成する第3の工程(メッキ層形成工程)とを有する。
さらに、第2の工程は、メッシュ部材512を加熱し拡径させる加熱工程と、拡径したメッシュ部材512の内側に基体511を挿入する挿入工程と、拡径したメッシュ部材512を冷却し縮径させる冷却工程とを有している。
【0056】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[1]第1の工程
まず、図6(a)に示すように、円筒状の基体511を用意する。
基体511は、アルミニウム、ステンレス、鉄等のような金属材料を主材料として構成されている。より具体的には、基体511の構成材料としては、STKM、STK、SGPなどの鉄系材料や、A6063、A5056などのアルミ系材料が好適に用いられる。
また、基体511の外径は、特に限定されないが、10〜30mmであるのが好ましく、15〜25mmであるのがより好ましい。
また、基体511の厚さは、特に限定されないが、0.2〜3mmであるのが好ましく、0.5〜3mmであるのがより好ましい。
【0057】
次に、図6(b)に示すように、基体511の一端部(図6中左側の端部)の内部に軸部材514を圧入する。この際、接着剤などを用いて基体511の内壁と軸部材514とを接着してもよい。同様に、基体511の他端部(図6中右側の端部)の内部に軸部材515を圧入する。
一方、図7(a)に示すように、筒状をなし、その内径が基体511の外径よりも若干小さいメッシュ部材512を用意する。用意するメッシュ部材512の織り方は、特に限定されないが、格子状に織り込む平織、綾織など、比較的単純な織り方が好ましい。
メッシュ部材512は、例えば、多数のステンレスワイヤを筒状に織り込むことで形成されている。なお、メッシュ部材512のスペック(メッシュ数など)としては、前述した通りであるため説明を省略する。
以上の様にして、基体511とメッシュ部材512とを用意する。
【0058】
[2]第2の工程
まず、図7(b)に示すように、メッシュ部材512を加熱し拡径させる。
次に、図7(c)に示すように、拡径したメッシュ部材512の内側に基体511を挿入する。このとき、基体511の両端部にメッシュ部材512に覆われていない領域(つまり、領域T)を形成するように、例えば、基体511の長さ方向の中央がメッシュ部材の長さ方向の中央に一致するように基体511を配置する。
【0059】
次に、図7(d)に示すように、基体511がメッシュ部材512の内側に挿入されている状態で、メッシュ部材512を冷却し縮径させる。冷却方法としては、特に限定されず、例えば、冷却機を用いて急冷してもよいし、常温で放置して除冷してもよい。
メッシュ部材512は、冷却されることで、もとの径(つまり、図7(a)に示す状態)に戻ろうとするが、メッシュ部材512の内径よりも基体511の外径の方が大きいため、基体511の外周面と接触(圧接)した時点で、メッシュ部材512の収縮が止まる。これにより、図7(d)に示すように、基体511の外周面にメッシュ部材512が強固に固定される。
【0060】
つまり、メッシュ部材512は、いわゆる「焼きばめ」によって基体511の外周面に固定される。このように、メッシュ部材512を加熱・冷却することで基体511の外周面に固定することで、メッシュ部材512の形状(例えば、網目512cの形状など)を所望の形状に保ったまま、基体511の外周面に固定することができる。その結果、現像ローラ510の外周面に均一な凹凸を形成することができる。
【0061】
[3]第3の工程(メッキ層形成工程)
最後に、図7(e)に示すように、基体511の外周面およびメッシュ部材512を覆うように、メッキ層513を形成する。
メッキ層513の形成方法として、例えば、溶融メッキ法や、電界メッキ法を用いることができる。
【0062】
このようなメッキ層513の構成材料としては、例えば、Ni−Pメッキを用いることができる。
このようなメッキ層513を形成することで、基体511の外周面とメッシュ部材512とをさらに強固に固定することができるとともに、現像ローラ510の強度を向上させることができる。
以上の様にして、簡単に、優れた現像特性を有する現像ローラ510を製造することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
まず、[1]A6063を構成材料として構成し、外径が20mm、長さが300mm、厚さが2mmの円筒状の基体と、[2]ステンレスワイヤを用いて平織され、線径が5μm、メッシュ数が100メッシュ/インチ、内径が18mm、長さが280mmの筒状のメッシュ部材とを用意する。
そして、用意されたメッシュ部材を250℃で1分加熱した後、メッシュ部材の内部に基体を挿入し、常温で除冷した。
さらに、基体およびメッシュ部材を覆うように、膜厚3μmのNi−Pメッキ層を無電界メッキ法により形成することで現像ローラを製造した。
【0064】
(実施例2)
メッシュ数が250メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例3)
メッシュ数が400メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
【0065】
(実施例4)
メッシュ数が500メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例5)
メッシュ数が600メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
【0066】
(実施例6)
メッシュ数が800メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例7)
メッシュ数が1000メッシュ/インチのメッシュ部材を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造した。
【0067】
(実施例8)
線径が10μmのメッシュ部材を用いた以外は、実施例4と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例9)
線径が15μmのメッシュ部材を用いた以外は、実施例4と同様にして現像ローラを製造した。
【0068】
(実施例10)
線径が20μmのメッシュ部材を用いた以外は、実施例4と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例11)
線径が30μmのメッシュ部材を用いた以外は、実施例4と同様にして現像ローラを製造した。
(実施例12)
線径が40μmのメッシュ部材を用いた以外は、実施例4と同様にして現像ローラを製造した。
【0069】
(比較例)
A6063を構成材料として構成し、外径が20mm、長さが300mm、厚さが2mmの円筒状の基体を用意し、ブラスト処理によって、この基体の外周面に凹凸を形成した(表面粗さ7.0Rz)。その後、基体の外周面を覆うように、膜厚3μmのNi−Pメッキ層を無電界メッキ法により形成し、現像ローラを得た(表面粗さ6.4Rz)。
【0070】
以上のような実施例1〜12および比較例の現像ローラをそれぞれレーザープリンタ(セイコーエプソン(株)製「LP9000C」)に組み込み、平均粒径が6.5μmのトナーを用いて、トナー搬送量、トナー帯電量、安定時かぶり、補給時かぶり、規制もれ、印字ムラ、フィルミングについて、それぞれ、初期段階(印刷枚数100枚以下)の場合と、20万枚印刷後の場合とで測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中の「※1」については、初期段階にて規制もれが発生したため、測定を省略した(つまり、評価不可)。
【0071】
<トナー搬送量の測定>
トナー搬送量は、現像ローラから転写部に搬送されたトナーの量である。そして、このようなトナー搬送量は、感光体上にベタ印字画像の潜像を形成し、それに対応して、現像ローラからトナーを搬送することで感光体上にトナー像を得、このトナー像を粘着テープに転写して、テープの貼り付け前後のテープ質量差を測定することで求めた。
【0072】
<トナー帯電量の測定>
トナー帯電量は、現像ローラ上のトナーを帯電量分布測定器(ホソカワミクロン(株)製「E−SPARTIII」)を使用して測定した。測定個数は3000個とした。
<安定時かぶりの測定>
安定時かぶりは、トナー収容部(第1実施形態で言う収容部530)内にトナーが満たされているときのかぶり量である。そして、このような安定時かぶりを評価するために、白抜きとなるべき部分(つまり、本来ならばトナーが付着しない部分)に付着したトナーの量を測定した。なお、表1の示す数値は、1000枚プリントした時のトナーの総量(g)である。
【0073】
<補給時かぶりの測定>
補給時かぶりは、トナー収容部内にトナーを補充した直後のかぶり量である。そして、このような補給時かぶりを評価するために、白抜きとなるべき部分に付着したトナーの量を測定した。なお、表1の示す数値は、1000枚プリントした時のトナーの総量(g)である。
【0074】
<規制もれの測定>
規制もれは、規制ブレードからトナーが漏れることをいい、目視により評価した。評価方法は、以下の通りである。
○:規制もれなし
×:規制もれ発生
【0075】
<印字ムラの測定>
印字ムラは、記録媒体(プリント紙)上に印刷された100%ベタ印字を目視で観察することにより評価した。評価方法は、以下の通りである。
○:印字ムラをほとんど確認できない。
×:目視によって印字ムラを確認できる。
【0076】
<フィルミングの測定>
フィルミングは、現像ローラを目視で観察することにより評価した。評価方法は、以下の通りである。
○:フィルミングを確認できない。
×:フィルミングを確認できる。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から明らかなように、実施例1〜12に関して、線径が同じでメッシュ数が異なる実施例1〜7の中でも、メッシュ数が400〜800メッシュ/インチの範囲である実施例3〜6が特に優れた現像特性を発揮している。
【0079】
また、メッシュ数が同じで線径が異なる実施例4、8〜12の中でも、線径がトナー粒径の0.7〜3倍の範囲である実施例4、8、9が特に優れた現像特性を発揮している。
以上のことから、本願発明の現像ローラは、その外周面に担持されるトナー量の分布を均一化し、かつ、現像ローラの外周面でのトナー粒子の転動性(転がりやすさ)を均一化することができ、優れた現像特性を発揮することができる。
【0080】
以上、本発明の現像ローラ、現像ローラの製造方法、現像装置、および画像形成装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、現像ローラ、現像装置、および画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0081】
前述した実施形態では、現像ローラを形成するための基体が円筒状をなすものについて説明したが、現像ローラ(本体)および基材が円柱状をなしていてもよい。
また、前述した実施形態では、第1の線状部材と第2の線状部材とがほぼ直交していたが、これに限定されず、鋭角または鈍角をもってこれらが交差するように形成されていてもよい。
【0082】
また、前述した実施形態では、メッシュ部材が格子状に織り込まれているもの(つまり、平織によって織り込まれたメッシュ部材)について説明したが、現像ローラの外周面に凹凸を形成することができれば、織り方としては特に限定されず、綾織、杉綾織、平畳織、綾畳織、撚線織(片撚線織、両撚線織を含む)であってもよい。
特に、図8に示すような綾織は、前述したような平織と比較して、比較的簡単にメッシュ数を大きくすることができる(つまり、ハイメシュにすることができる)。また、平織と比較して、メッシュ数の割に線状部材の線径を太くすることができる。
【0083】
また、図9に示すような杉綾織は、メッシュ部材の均整を保つことが容易である。
このように、現像ローラのスペックに合わせてメッシュ部材の織り方を変更してもよい。
また、前述した実施形態では、第1の線状部材および第2の線状部材がそれぞれ現像ローラの周方向に対して傾斜しているものについて説明したが、例えば、第1の線状部材が現像ローラの周方向に沿って延在し、第2の線状部材が現像ローラの軸方向に沿って延在していてもよい。
また、前述した実施形態では、基体の外周面の両端部がメッシュ部材に覆われていない現像ローラについて説明したが、基体の外周面の全域がメッシュ部材で覆われていてもよい。つまり、メッシュ部材の長さと基体の長さとがほぼ等しいようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。
【図3】図2に示す現像装置に備えられた現像ローラの模式的平面図である。
【図4】図3に示す現像ローラの模式的縦断面図である。
【図5】図4に示す断面図の部分拡大図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる現像ローラの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる現像ローラの製造方法を説明するための平面図である。
【図8】図2に示す現像装置に備えられた現像ローラの別実施形態を示す模式的平面図である。
【図9】図2に示す現像装置に備えられた現像ローラの別実施形態を示す模式的平面図である。
【符号の説明】
【0085】
10……画像形成装置 20……感光体 30……帯電ユニット 40……露光ユニット 50……現像ユニット 50a……軸 51……ブラック現像装置 52……マゼンタ現像装置 53……シアン現像装置 54……イエロー現像装置 55……保持体 55a〜55d……保持部 510……現像ローラ 511……基体 512……メッシュ部材 512a……第1の線状部材 512b……第2の線状部材 512c……網目 513……メッキ層 514、515……軸部材 520……シール部材 530……収容部 540……ハウジング 550……トナー供給ローラ 560……規制ブレード 560a……ゴム部 560b……ゴム支持部 562……ブレード支持板金 570……ブレード裏部材 60……一次転写ローラ 61……中間転写体 70……中間転写ベルト 71……駆動ローラ 72……従動ローラ 73……基体 75……クリーニングユニット 76……クリーニングブレード 80……二次転写ローラ 87……排紙ローラ対 88……搬送部 88A、88B……搬送ローラ対 88C……搬送路 82……給紙トレイ 84……給紙ローラ 86……レジローラ 90……定着装置 P……記録媒体 T……トナー(現像剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状をなす基体と、
前記基体の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、
前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成されていることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記メッシュ部材は、焼きばめによって、前記基体の外周面に固定されている請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記メッシュ部材の長さは、前記基体の長さよりも短く、前記基体の両端部に前記メッシュ部材で覆われていない領域が形成されている請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記基体の外周面および前記メッシュ部材を覆うように形成されたメッキ層を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記メッシュ部材のメッシュ数は、250〜800メッシュ/インチである請求項1ないし4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記メッシュ部材は、格子状に織り込まれている請求項1ないし5のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記メッシュ部材は、互いに間隔を隔てて並設された多数の第1の線状部材と、該第1の線状部材に交差するとともに、互いに間隔を隔てて並設された多数の第2の線状部材とで構成され、前記トナーの平均粒径をdとし、隣接する1対の前記第1の線状部材同士の離間距離をL1とし、隣接する1対の前記第2の線状部材同士の離間距離をL2としたとき、L1およびL2は、それぞれ、2d〜40dの範囲内である請求項7に記載の現像ローラ。
【請求項8】
前記トナーの平均粒径をdとし、前記各第1の線状部材の線径をD1とし、前記各第2の線状部材の線径をD2としたとき、D1およびD2は、それぞれ、0.5d〜5dの範囲内である請求項6または7に記載の現像ローラ。
【請求項9】
前記各第1の線状部材および前記各第2の線状部材は、それぞれ、前記基体の周方向に対して傾斜している請求項7または8に記載の現像ローラ。
【請求項10】
円筒状または円柱状をなす基体と、筒状のメッシュ部材とを用意する第1の工程と、
前記メッシュ部材の内側に前記基体を挿入し、前記基体の外周面に前記メッシュ部材を固定する第2の工程とを有していることを特徴とする現像ローラの製造方法。
【請求項11】
前記メッシュ部材の内径は、前記基体の外径よりも若干小さく、
前記第2の工程は、前記メッシュ部材を加熱し拡径させる加熱工程と、
拡径した前記メッシュ部材の内側に前記基体を挿入する挿入工程と、
拡径した前記メッシュ部材を冷却し縮径させる冷却工程とを有している請求項10に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項12】
前記基体は、その外周面が予め粗面化されたものである請求項10または11に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項13】
さらに、前記第2の工程の後に、前記メッシュ部材および前記基体の外周面を覆うようにメッキ層を形成するメッキ層形成工程を含んでいる請求項10ないし12のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
【請求項14】
円筒状または円柱状をなす基体と、該基部の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成された現像ローラを備え、該現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像ローラから前記潜像担持体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化することを特徴とする現像装置。
【請求項15】
帯電・露光・現像・転写・定着を含む一連の画像形成プロセスにより、画像を記録媒体に形成することを特徴とする画像形成装置であって、
円筒状または円柱状をなす基体と、該基部の外周面に固定された筒状のメッシュ部材とを有し、前記メッシュ部材の網目内にトナーを担持するように構成された現像ローラを備え、該現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体に接触または近接して対向しており、前記現像ローラから前記潜像担持体へトナーを付与することにより、前記潜像をトナー像として可視化する現像装置を有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292946(P2008−292946A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140846(P2007−140846)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】