現像剤、現像装置および画像形成装置
【課題】トナー同士の固着や現像剤担持体への固着による担持量の不均一化が原因する画像濃度ムラを防止することができる構成を備えた現像剤を提供する。
【解決手段】像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体81の表面に担持され、該現像剤担持体81の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石82により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含む現像剤自体の硬度として、微小硬度計において硬度2から20N/mm2を設定されていることを特徴としている。
【解決手段】像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体81の表面に担持され、該現像剤担持体81の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石82により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含む現像剤自体の硬度として、微小硬度計において硬度2から20N/mm2を設定されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤、現像装置および画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤およびこの現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0004】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0005】
二成分系現像剤を用いる現像装置の構成には、図11に示す構成がある(例えば、特許文献1)。
図11に示す構成では、現像剤担持体としての現像スリーブ5が配置されている位置の下方に現像剤供給用のオーガ401が配置され、水平方向において現像剤供給用オーガ401の軸線に平行する攪拌用のオーガ402が配置されている。供給用および攪拌用の各オーガ401,402は軸方向端部でこれらオーガが配置されている空間同士が連通している。
【0006】
図11に示す構成においては、各スクリューオーガが相反する方向に現像剤を移送することにより、現像剤を各オーガが配置されているスペース間で循環させる。これにより、供給用オーガ401から現像スリーブ5に対して現像剤の汲み上げと現像後の現像スリーブ5に担持されている現像剤の回収とを行うようになっている。
【0007】
上述した現像剤の供給および回収を行うための構成として、現像スリーブ5の内部には周方向に沿って、現像スリーブ5に対向して磁気ブラシを穂立ちさせる現像主極および現像スリーブ上で現像剤を移動される搬送磁極そして現像後のスリーブ周面から現像剤を剥離するための反撥磁界を形成可能な剥離磁極が設けられており、反撥磁極を設けることにより奇数極、具体的には7極の磁石が用いられている。
【0008】
反撥磁極により現像スリーブ5の周面から剥離されて回収される現像剤は、一点鎖線の矢印F1で示すように、一旦、搬送路401Pを通過して供給用オーガ401に回収されるが、再度、搬送磁極による汲み上げられて現像スリーブ5の周面に供給されることになる。これにより、現像剤は、同じ位置に存在する供給用の搬送路および回収用の搬送路間を循環しながらオーガの軸方向に搬送され、その過程で現像スリーブ側の磁極と多数回対向しながら移動する。
【0009】
現像剤は、磁極と対向した際に穂立ち状態とされ、磁極から離れると穂立ちが崩れて凝縮するという過程を繰り返すことによりキャリアとトナーとの摩擦接触が行われてトナーの摩擦帯電が行われる。
穂立ち状態および穂立ちが崩れて凝縮することによる摩擦接触が繰り返される現像剤は、例えば、オーガの軸方向に搬送されることから、その方向での搬送過程においてトナーの消費量が多くなると搬送方向下流側でのトナーの濃度が低下する。
例えば、画像面積が大きい画像を現像するような場合、オーガの軸方向でのトナーの消費は、供給される側で大量に消費されてしまう可能性が高く、搬送方向下流側では現像剤の含まれるトナー量が少なくなる。このため、現像スリーブの軸方向で一様なトナーの濃度を維持することができないことがある。トナーの濃度不足は画像品質の低下に繋がる。
【0010】
上述した不具合は、現像剤の供給搬送路と回収用搬送路とが共通して用いられることに原因がある。つまり、回収された現像剤はトナーが不足しており、このような現像剤を供給搬送路に再度搬送してしまうと、供給される現像剤内でのキャリアの含有比率が高くなってしまい、供給される現像剤中のキャリアとトナーとの比率が所定比率と異なることになる。
【0011】
そこで、図11に示した構成の一部を変更して、現像剤の供給搬送路と回収搬送路とを区別して供給搬送路内に回収された現像剤が混入しないようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
図12には、特許文献1に開示されている現像装置の要部が示されており、同図において、現像装置4のハウジング内には、仕切り壁403によって上下方向で仕切られて第1のオーガ401,第2のオーガ402をそれぞれ収容する攪拌室401P、402Pが設けられている。
【0012】
一方、特許文献1に開示されているように、オーガを収容する攪拌室を仕切り壁により仕切るようにした構成に関する別の例として、特許文献2に開示された構成がある。
図13は、特許文献2に開示された構成を示す図であり、同図において、現像装置4のハウジング内には、現像スリーブ5に対して現像剤を供給するため供給用オーガ401および現像剤の攪拌用オーガ402に加えて現像領域を通過した現像スリーブ5上の現像剤を回収する回収用オーガ404が設けられ、供給用オーガ401が位置する供給搬送路401P’と回収用オーガ404が位置する回収用搬送路404Pとは仕切り壁405によって仕切られ、攪拌用オーガ402が位置する攪拌搬送路402P’と回収用搬送路404Pとは仕切り壁406によって仕切られている。
【0013】
特許文献1に開示されている構成では、回収された現像剤が攪拌用のオーガ402によって軸方向に搬送されてそのまま供給用のオーガ401に向け搬送されることから、新たなトナーが補給された場合でも攪拌用のオーガ402による攪拌が不十分となりがちであり、トナーの帯電不足による画像濃度の不均一や濃度低下を来す虞がある。特に、回収される現像剤のトナー濃度が低下しやすい高印字率の画像形成時には顕著となる。
【0014】
一方、特許文献2に開示されている構成では、現像スリーブから回収される現像剤が回収用搬送路404Pに搬送され、供給用搬送路401P’に混入することがなく、さらには、回収された現像剤がそのまま攪拌用搬送路402P’内に入り込むこともなく、攪拌されたうえで供給用搬送路401P’に向け搬送されることから、図11に示した構成で生じる不具合を解消することが期待できる。
【0015】
しかし、これら特許文献に開示されている構成に用いられる現像剤担持体である現像スリーブの構成には、次のような問題がある。
各特許文献に開示されている現像スリーブは、内部に磁気ブラシ形成用、つまり現像剤を穂立ちさせる磁極を備えているが、その磁極数が、特許文献1においては、図示されているように5極とされ、そして特許文献2においては、図示されていないものの、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収する回収スクリューに向け現像剤が移動することが記載されていることから、図11に示した場合あるいは特許文献1と同様に、5又は7極程度であることが予想できる。
【0016】
一方、特許文献1に開示されている構成においては、図11に示した場合と違って、供給搬送路と回収搬送路とが共通していないで独立した構成となっていることからして、現像剤は、供給・回収搬送路間での循環作用が得られない。
このため、回収される現像剤は、上述した磁極を通過する回数が5〜7回程度しかない状態のままで回収されることになり、穂立ち・穂立ちの崩れを繰り返す際の摩擦接触がきわめて低い状態が得られてしまう。この結果、摩擦接触の機会が要因となる摩擦帯電が不十分となり、トナーの帯電に長い時間が必要となるという問題が生じる。
【0017】
特許文献2に開示されている構成では、攪拌搬送路が独立して設けられていることから、回収された現像剤を対象とした攪拌効率の向上が望めるが、現像剤交換後や長時間の放置時にはトナーの帯電量も失われがちであることから、キャリアへの付着力低下を生じて飛散しやすくなり、結果として、装置内汚染を招く虞がある。
【0018】
ところで、この種、現像装置においては、現像領域を通過した現像スリーブ5上に残存する現像剤が回収された後、新たな現像剤の供給を受けることで現像剤スリーブ5上に担持される現像剤の濃度を一定に維持することが必要とされる。
しかし、現像領域を通過した現像スリーブ5上から現像剤の回収が良好に行えないと、現像スリーブに担持される現像剤濃度が変化し、所定濃度の画像が得られないという問題が生じる。つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
【0019】
そこで、従来では、上述した不具合を解消するために、像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置において、現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置について開示されている(例えば、特許文献3)。
【0020】
また、トナーの耐久性を向上させることも必要であり、このための構成として、ビッカーズ硬度の範囲を限定した構成が提案されている(例えば、特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献3に開示された構成の現像装置を用いることにより、トナーの回収を容易化して上述した不具合が解消されるものの、トナーの移動時に作用する負荷が大きいため、トナーがキャリアにスペントすることや、トナー同士の固着が発生して凝着することがある。
この現象はトナーが砕かれたときに顕著となり、砕かれることで微粉状となったトナーが現像剤担持体表面にも固着してしまい、像担持体面で現像剤の担持量が不均一となる。この結果、画像濃度ムラが発生する虞がある。
【0022】
一方、現像剤担持体に担持される現像剤は、現像担持体内に配置されている磁石からの磁力により表面で磁気穂、いわゆる、磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像剤担持体、例えば、現像ローラの回転に伴い周面で転動しながら移動し、ドクターブレードにより穂立ち高さを規定されて感光体上の静電潜像と対向するが、穂立ち高さを規定される際にドクターブレードからの衝撃を受ける。
【0023】
ドクターブレードから衝撃を受けた磁気ブラシには剪断力が作用し、現像剤中のトナーの一部が現像剤担持体表面に擦りつけられて砕かれると微粉化したトナーが現像剤担持体に固着する。また、ドクターブレード先端と現像ローラ表面との間に設定されている隙間内にトナーが凝縮されると、搬送されてくるトナーがドクターブレードに固着して磁気ブラシの高さ設定を阻害する虞がある。
【0024】
このように現像剤担持体表面やドクターブレードにトナーが固着すると、上述したように現像剤担持体表面での現像剤の担持量が一定とならず、画像濃度ムラを起こすことになる。
【0025】
本発明の目的は、上記従来の二成分系現像剤における問題に鑑み、トナー同士の固着や現像剤担持体への固着による担持量の不均一化が原因する画像濃度ムラを防止することができる構成を備えた現像剤、現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的を達成するため、本発明は、少なくとも露光、現像、転写および定着を行う画像形成処理において、露光により像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、
該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含むトナーの硬度として、微小硬度計において硬度2〜20N/mm2を設定されていることを特徴とする現像剤にある。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トナーを構成する結着樹脂の主成分として非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含む現像剤自体の硬度には微小硬度計において硬度2から20N/mm2を設定されることにより、衝撃に対してトナー自体に割れが生じない状態を維持できる柔軟性を持たせることができる。これにより、トナーの移動時に作用する負荷が大きくてもトナー自体の柔軟性により砕かれることがない。
【0028】
この結果、現像剤担持体に内蔵されて現像剤担持体の回転中心に対して偏心した回転中心を有する複数の磁石により現像剤担持体からの剥離性を向上させて搬送循環性を高めた場合には、移動する過程でのトナーの微粉化が生じないので微粉化した場合のトナーの固着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置が適用される画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置の構成を説明するための図である。
【図3】図1に示した現像装置での現像剤の搬送形態について説明するための図である。
【図4】従来の現像剤を用いた場合の初期時でのトナー粒径と所定時間後のトナー粒径との変化と、一実施形態にかかる現像剤を用いた場合のトナー粒径の変化とを比較した結果を説明するための線図である。
【図5】従来の現像剤を用いた場合の微粉トナーの増加量と一実施形態にかかる現像剤を用いた場合の微粉トナーの増加量を比較した結果を示す線図である。
【図6】現像剤担持体表面での現像剤嵩密度の違いについて説明するための図である。
【図7】複数の回転可能な磁石の1回転時でのドクターブレードの配置位置での磁束密度の関係を説明するための線図である。
【図8】磁気穂の回転(回転数)と帯電量との関係を説明するための線図である。
【図9】現像剤担持体表面での現像剤からなる磁気穂の転動状態を説明するための図である。
【図10】現像剤の搬送速度について説明するための図である。
【図11】現像装置の従来例の一つを示す図である。
【図12】現像装置の他の従来例を示す図である。
【図13】現像装置のさらに他の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1には、一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置を適用する画像形成装置が示されており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0031】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニット20を備えている。
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0032】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザ光を照射する。
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0033】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。
帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0034】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0035】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0036】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路48に向けて送り出される。
【0037】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路48は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路46内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0038】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0039】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0040】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0041】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0042】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0043】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0044】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0045】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0046】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
図2に示すように感光体1は図中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
【0047】
現像装置4は、図中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0048】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81からなり、内部には、複数の磁極からなり図中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82が配置されている。
【0049】
磁石ローラ82は、直径φ40(mm)の中空円筒が用いられ、図3(A)に示すように、回転中心A’が現像スリーブ81の回転中心Aより距離(T)だけ離れた位置に偏心させて位置決めされている。
磁石ローラ82の外周面には、20個の磁極(磁石)が周方向に沿って等分位置に備えられ、直径がφ30(mm)とされて現像ローラ5内に配置できるようになっている。
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する前の位置で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、上記符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0050】
一方、偏心方向と反対側では磁気力を低く抑えることができる。このため、現像スリーブ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
このような偏心構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0051】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2を示す紙面の手前側(以下、便宜上、図中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0052】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクターブレード12を備えている。
【0053】
現像ローラ5の感光体1Yとの対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0054】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0055】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0056】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクターブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
現像ローラ5の直径はφ40(mm)、ドクターブレード12及び感光体1とのギャップは0.3(mm)程度となっている。
現像後の現像剤は回収搬送路7にて回収が行われ、図2中手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第二仕切り壁134の開口部で、攪拌搬送路10へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路10における現像剤搬送方向上流側の第二仕切り壁134の開口部の付近で攪拌搬送路10の上側には、図7に示すように、後述するトナー補給口95から攪拌搬送路10にトナーが供給される。
【0057】
現像装置4に用いられる現像剤について説明する。
一実施形態にかかる現像剤は、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤が用いられ、少なくとも結着樹脂の主成分として非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、微小硬度計における硬度が2〜10N/mm2に設定されたものが用いられる。
結晶性ポリエステルは結晶性を有し、分離量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルが用いられることが望ましい。
【0058】
微小硬度計における硬度2からというのは、硬度が5より小さいとトナー自体の柔軟性が大きく、キャリアにスペントしやすくなり、現像剤の劣化、稼働後の帯電特性の低下による地肌汚れやトナー飛散などが発生するのを防止することを考慮して規定されている。
【0059】
また、上述した硬度のうちで、20N/mm2という値は、この値よりも大きい場合にトナーの硬度が高くなることにより低温定着性の悪化、トナーに割れが生じやすくなることで微粉が生じやすくなり、トナー飛散や擦れによる固着が起こりやすくなることを考慮して規定されている。なお、トナーの硬度は、マイクロビッカース硬度計(DUH−211S 島津製作所製)を用い、最大試験力:1mN、負荷速度:0.0150mN/sec、最大負荷保持時間:5secに基づき得たものである。
【0060】
一実施形態係る現像剤は、上述した硬度に加えて次の条件が設定されている。
(1)トナーのガラス転移点温度が30℃〜50℃である。
(2)トナーの軟化温度が95℃〜115℃である。
(3)トナーに含まれる離型剤の融点が55℃〜75℃である。
(4)トナーに含まれる離型剤の量が、3〜12重量部含まれている。
(5)トナーに含まれる離型剤の酸価が3〜20mgKOH/gである。
(6)トナーに含まれる離型剤の針入度が5以下である。
(7)トナーに含まれる非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5〜40mgKOH/gである。
【0061】
(1)に挙げた条件は、現像剤に含まれるトナーの硬度を得るための条件である。
【0062】
(2)の条件は、トナー軟化温度が95℃より低いと高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、115℃より高いと低温定着性が悪化することを理由としている。
【0063】
(3)の条件は、離型剤の融点が55℃より低いと、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、離型剤の融点が75℃以上になると定着時にブリードアウトし離形性を発揮することができず、定着分離性が悪化することを考慮したものである。
【0064】
(4)の条件は、離型剤を3重量部より少ないと、定着時にブリードアウトし離形性を発揮することができず、定着分離性が悪化する。一方、12重量部より多くなると、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなることに着目したものである。
【0065】
(5)の条件は、離型剤の酸価が3mgKOH/gより小さいと離型剤の分散性が悪いためトナー表面に離型剤が偏在しやすくなり、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、酸価が20mgKOH/gより大きいと表面に露出する離型剤が吸湿しやすくなるため、特に高温高湿下での帯電変動が大きくなることを考慮したものである。
【0066】
(6)の条件は、針入度が5より大きいと表面に露出する離型剤が軟らかいため、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなることに着目したものである。
【0067】
(7)の条件は、非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/gより小さいと、離型剤の分散性が悪いためトナー表面に離型剤が偏在しやすくなり、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、40mgKOH/gより大きいとトナーの吸湿性が向上するため、特に高温高湿下での帯電変動が大きくなることを考慮したものである。
【0068】
(8)の条件においては、非晶性および結晶性ポリエステル樹脂は顔料および離型剤の分散性の観点より、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物をポリエステル樹脂を重合するときに用いるジオール成分に対して50モル%以上含有することが好ましい。更に好ましいのは70モル%以上、更に好ましいのは80モル%以上である。
【0069】
ジオール成分としてプロピレンオキサイド付加物が一定以上含有したポリエステル樹脂と所定の酸価、アミン価を有するポリエステル誘導体である高分子分散剤を組み合わせたときに顔料分散性が優れ、またトナーの色再現性が向上する。
この理由は定かでないが、恐らくポリエステル樹脂と高分子分散剤の親和性が高まり顔料を安定化すると考えられることにある。
【0070】
上述したビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物以外のジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。なお、アルキレングリコールの炭素数は、2〜12であることが好ましい。これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0071】
また、三価以上のアルコールも使用ができ、三価以上のアルコールとしては、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。
三価以上の脂肪族アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類の具体例としては、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物の具体例としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
【0072】
酸成分としてはポリカルボン酸が挙げられる。ポリカルボン酸は、目的に応じて適宜選択することができ、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等を用いることができるが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸の混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0073】
ジカルボン酸の具体例としては、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。二価のアルカン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。二価のアルケン酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、具体的には、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜20であることが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜20の二価のアルケン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0074】
三価以上のカルボン酸としては、三価以上の芳香族カルボン酸等を用いることができる。三価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、9〜20であることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。 ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸を混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
ポリオールとポリカルボン酸を重縮合させる際の混合比は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比は、通常、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0075】
一実施形態にかかる現像剤でのイエロートナー用着色剤としては、例えば、カラーインデックスにより分類される、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15若しくはC.I.ピグメントイエロー17等のアゾ系顔料、又は、黄色酸化鉄若しくは黄土等の無機系顔料を用いることができる。
また、染料としては、例えば、C.I.アジットイエロー1等のニトロ系染料、又は、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19若しくはC.I.ソルベントイエロー21等の油溶性染料を用いることができる。特に、色相や発色の観点から、好ましくはC.I.ピグメントイエロー185が用いられる。
【0076】
シアントナー用着色剤としては、シアントナーの顔料としては、C.I.ピグメントブルー−15、C.I.ピグメントブルー−16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70等を用いることができるが、C.I.ピグメントブルー−15等の銅フタロシアニン顔料が色味の点から選択される。
【0077】
マゼンタトナー用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10又はC.I.ディスパーズレッド15等を用いることができる。
更に、各色トナー顔料は混合して用いても良く、特にマゼンタトナー用顔料については、色相の観点からC.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド269の混合系を用いる。なお上記顔料は、分散性の向上を目的として予め結着樹脂に分散する所謂マスターバッチとして用いても良い。
以上のことから、着色剤としては、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができるといえ、例えば、上述した成分も含まれるが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。前記着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
また現像剤に含まれるトナーの結着剤用主成分に用いられる離型剤としては、蝋類およびワックス類が用いられる。本実施形態に用いられるワックス類は、天然ワックスとして、動物由来の蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、植物由来のカルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス等があり、そして石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等があり、鉱物由来のモンタンワックス、セルシン、オゾケライト等があり、また合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等がある。これら天然ワックスの他に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらの中でも、定着補助成分としての脂肪酸アミド系化合物との相溶性が低く、互いの機能を損なうことなく独立して作用することができ、トナーの低温定着性を充分に得ることができる成分として、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)や、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系ワックス等がある。
【0079】
種類について限定されるものではないが、好ましくは離形性の観点から離形性、保存性および耐久性の観点からエステルワックスもしくはパラフィンワックスが良い。
これは、これらのワックスが比較的低温で低粘度であると共に、針入度が低く、また変性や反応方法により比較的容易に酸価を制御することが可能である。
【0080】
また、本実施形態では帯電制御剤を用いることが好ましい。帯電制御剤としては公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色又は白色に近い材料を用いることが好ましい。具体的には、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、フッ素変性四級アンモニウム塩を含む四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、市販品としては、四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体のLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子等が挙げられる。
また、帯電制御剤としては、この他に、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
【0082】
トナー中の帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、結着樹脂に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
含有量が、0.1質量%未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量%を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、現像ローラとの静電引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0083】
油相に含有させる前記結着樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000であることが好ましく、1500〜15000がより好ましい。重量平均分子量が、1000未満であると、耐熱保存性が低下することがある。このため、重量平均分子量が1000未満である成分の含有量は、8〜28質量%であることが好ましい。 一方、重量平均分子量が30000を超えると、低温定着性が低下することがある。
なお非晶性および結晶性ポリエステルのガラス転移温度は、通常、30〜70℃であり、35〜60℃がより好ましく、35〜55℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、70℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0084】
水系媒体は、公知のものの中から適宜選択することができる。具体的には、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物等が挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶媒としては、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0085】
本実施形態に係る現像剤において、少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナー材料を含有する油相は、トナー材料が溶媒に溶解又は分散されていることが好ましい。溶媒は、有機溶媒を含有することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの母粒子を形成する際又はトナーの母粒子を形成した後に除去することが好ましい。
【0086】
有機溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が150℃未満であることが好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0087】
有機溶媒の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、40〜300質量部であることが好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部がさらに好ましい。
【0088】
トナー材料は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有し、活性水素基を有する化合物及び活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体をさらに含有することが好ましく、必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分をさらに含有してもよい。
【0089】
トナー材料を含有する油相における着色剤と有機溶媒の混合割合は、目的に応じて適宜選択することができ、5:95〜50:50であることが好ましい。着色剤の配合量がこの範囲より少なくなると、トナーの製造時に有機溶媒の量が多くなり、トナーの製造効率が低下することがあり、この範囲より多くなると、顔料の分散が不十分となることがある。
【0090】
トナー材料を含有する油相を用いて水系媒体中でトナー材料を乳化又は分散させる際には、攪拌しながらトナー材料を含有する油相を水系媒体中に分散させることが好ましい。分散には、公知の分散機等を適宜用いることができる。分散機の具体例としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。中でも、分散体(油滴)の粒子径を2〜20μmに制御することができることから、高速せん断式分散機が好ましい。
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1000〜30000rpmであることが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は、バッチ方式の場合は、0.1〜5分であることが好ましく、分散温度は、加圧下において、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、一般に、分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0091】
トナーの母粒子を形成する方法は、公知の方法の中から適宜選択することができる。具体的には、溶解懸濁法等を用いてトナーの母粒子を形成する方法、結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法等が挙げられるが、これらの中でも、結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法が好ましい。ここで、結着樹脂とは、紙等の記録媒体に対する接着性を有する基材である。
結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法は、トナー材料が活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有し、水系媒体中で、活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を反応させることにより結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法である。
このようにして得られるトナーは、必要に応じて適宜選択される離型剤、帯電制御剤等のその他の成分をさらに含有してもよい。
【0092】
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体は、活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂等が好適に用いられる。 活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基に対する反応性を有する重合体としてのイソシアネート基を有するポリエステルが好ましい。なお、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂と活性水素基を有する化合物を反応させる際にアルコール類を添加することにより、ウレタン結合を形成してもよい。このようにして生成するウレア結合に対するウレタン結合のモル比(イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが有するウレタン結合と区別するため)は、0〜9であることが好ましく、1/4〜4であることがより好ましく、2/3〜7/3が特に好ましい。この比が9より大きいと、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0093】
活性水素基を有する化合物は、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体が水系媒体中で伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基の具体例としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。なお、活性水素基は、単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
【0094】
活性水素基を有する化合物は、目的に応じて適宜選択することができるが、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体がイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーである場合には、ポリエステルプレポリマーと伸長反応、架橋反応等により高分子量化できることから、アミン類が好適である。
【0095】
アミン類は、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的には、ジアミン、三価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸及びこれらのアミノ基をブロックしたもの等が挙げられるが、ジアミン及びジアミンと少量の三価以上のアミンの混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0096】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。芳香族ジアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。脂環式ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0097】
脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。三価以上のアミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。アミノアルコールの具体例としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
【0098】
アミノメルカプタンの具体例としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。アミノ基をブロックしたものの具体例としては、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物等が挙げられる。
【0099】
なお、活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体の伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる。反応停止剤の具体例としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン及びこれらのアミノ基をブロックしたケチミン化合物等が挙げられる。
【0100】
アミン類のアミノ基の当量に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量の比は、1/3〜3であることが好ましく、1/2〜2がより好ましく、2/3〜1.5が特に好ましい。この比が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3を超えると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)は、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0101】
プレポリマーが有する活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、化学構造式 −COClで示される官能基等が挙げられるが、中でも、イソシアネート基が好ましい。プレポリマーは、このような官能基の一つを有してもよいし、二種以上を有してもよい。
プレポリマーとしては、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構の無い場合でも良好な離型性及び定着性を確保できることから、ウレア結合を生成することが可能なイソシアネート基等を有するポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーは、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂と、ポリイソシアネートの反応生成物等が挙げられる。
【0102】
ポリオールは、目的に応じて適宜選択することができ、ジオール、三価以上のアルコール、ジオールと三価以上のアルコールの混合物等を用いることができるが、ジオール又はジオールと少量の三価以上のアルコールの混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。なお、アルキレングリコールの炭素数は、2〜12であることが好ましい。これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0103】
三価以上のアルコールとしては、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。三価以上の脂肪族アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。三価以上のポリフェノール類の具体例としては、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物の具体例としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
ジオールと三価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する三価以上のアルコールの質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
【0104】
ポリカルボン酸は、目的に応じて適宜選択することができ、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等を用いることができるが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸の混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ジカルボン酸の具体例としては、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。二価のアルカン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。二価のアルケン酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、具体的には、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜20であることが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜20の二価のアルケン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
三価以上のカルボン酸としては、三価以上の芳香族カルボン酸等を用いることができる。三価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、9〜20であることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。 ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
【0105】
低級アルキルエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸を混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
ポリオールとポリカルボン酸を重縮合させる際の混合比は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比は、通常、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0106】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。この含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
ポリイソシアネートは、目的に応じて適宜選択することができるが、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプローラクタム等でブロックしたもの等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテル等が挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアヌレート類の具体例としては、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、ポリエステル樹脂の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、通常、1〜5であることが好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3が特に好ましい。当量比が5を超えると、低温定着性が低下することがあり、1未満であると、耐オフセット性が低下することがある。
【0107】
イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。この含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0108】
ポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数は、1以上であることが好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい。この平均数が、1未満であると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
油相における前記ジオール成分中にビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を50モル%以上含有し、特定の水酸基価と酸価を有するポリエステル樹脂に対するイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比は、5/95〜25/75であることが好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。質量比が、5/95未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、25/75を超えると、低温定着性や画像の光沢性が低下することがある。
【0109】
したがって、トナーに含有される接着性基材の具体例としては次のものが挙げられる。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸、トリメリット酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをアミノ基をケトン類でブロックしたケチミン化合物でウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸の重縮合物との混合物等である。
【0110】
本実施形態にかかる現像剤中のトナーは、上記母体粒子に対し、トナーに流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤を外添して用いられる。外添剤としては、PMMAなどの有機微粒子や無機粒子を目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
無機粒子として具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0111】
無機粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、無機粒子のBET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。
【0112】
トナー中の無機粒子の含有量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.01〜5.0質量%がより好ましい。これら無機粒子は流動性やブロッキング性の向上や、耐保存性や耐水性の観点から表面処理をして用いられる。表面処理の具体例としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0113】
次にトナーの製造方法の一例として、接着性基材を生成しながら、トナー母粒子を形成する方法を以下に示す。なお、本実施形態におけるトナーの製造方法としては、上述した方法の他に、重合法等も含めてさまざまな方法が可能である。
重合法としては懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などが可能であり、重合法とは異なるが溶解懸濁法、ポリマー懸濁法等の他、伸長反応法等が使用可能である。
上述した接着基材を形成しながらトナー母粒子を形成する方法においては、水系媒体相の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化又は分散、接着性基材の生成、溶媒の除去、活性水素基に対する反応性を有する重合体の合成、活性水素基を有する化合物の合成等を行う。
【0114】
水系媒体の調製は、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、0.5〜10質量%が好ましい。
トナー材料を含有する油相の調製は、溶媒中に、活性水素基を有する化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤、帯電制御剤、前記ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解又は分散させることにより行うことができる。
なお、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、ポリエステル樹脂以外の成分は、樹脂粒子を水系媒体に分散させる際に水系媒体中に添加混合してもよいし、トナー材料を含有する油相を水系媒体に添加する際に、水系媒体に添加してもよい。
【0115】
トナー材料の乳化又は分散は、トナー材料を含有する油相を、水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、トナー材料を乳化又は分散させる際に、活性水素基を有する化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、接着性基材が生成する。
【0116】
ウレア変性ポリエステル系樹脂等の接着性基材は、例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基に対する反応性を有する重合体を含有する油相を、アミン類等の活性水素基を含有する化合物と共に、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を、予め活性水素基を有する化合物を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、活性水素基を有する化合物を添加し、水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよい。
なお、粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的にウレア変性ポリエステル樹脂が形成され、トナー中にウレア変性ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
【0117】
接着性基材を生成させるための反応条件は、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体と活性水素基を有する化合物の組み合わせに応じて適宜選択することができる。反応時間は、10分間〜40時間であることが好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。反応温度は、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。
【0118】
水系媒体中において、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、水系媒体相中に、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤、帯電制御剤、前記ポリエステル樹脂等のトナー材料を溶媒に溶解又は分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0119】
分散は、公知の分散機等を用いて行うことができ、分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられるが、分散体の粒子径を2〜20μmに制御することができることから、高速せん断式分散機が好ましい。
【0120】
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1000〜30000rpmであることが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は、バッチ方式の場合、0.1〜5分であることが好ましく、分散温度は、加圧下において、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、分散温度は、高温である方が一般に分散が容易である。
【0121】
トナー材料を乳化又は分散させる際の、水系媒体の使用量は、トナー材料100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。この使用量が、50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母粒子が得られないことがあり、2000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
トナー材料を含有する油相を乳化又は分散する工程においては、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にする共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0122】
分散剤は、目的に応じて適宜選択することができ、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられるが、界面活性剤が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0123】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。 陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に用いられる。フルオロアルキル基を有する陰イオン界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0124】
フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製)、フローラドFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェント100、150(以上、ネオス社製)等が挙げられる。
【0125】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製);フローラドFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等を用いることが好ましい。
【0126】
非イオン界面活性剤としては、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0127】
難水溶性の無機化合物分散剤の具体例としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニル、アミドモノマー、酸塩化物のモノマー、窒素原子又はその複素環を有するモノマー等を重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマー、ポリオキシエチレン系樹脂、セルロース類等が挙げられる。なお、上記のモノマーを重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマーは、ビニルアルコール由来の構成単位を有するものも含む。
【0128】
カルボキシル基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。ビニルエーテルの具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
【0129】
カルボン酸ビニルの具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミドモノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。酸塩化物のモノマーの具体例としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等が挙げられる。
【0130】
窒素原子又はその複素環を有するモノマーの具体例としては、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系樹脂の具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸フェニル、ポリオキシエチレンペラルゴン酸フェニル等が挙げられる。セルロース類の具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0131】
分散剤の具体例としては、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散剤として、リン酸カルシウムを用いた場合は、塩酸等でカルシウム塩を溶解させて、水洗する方法、酵素で分解する方法等を用いて、リン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0132】
接着性基材を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等が挙げられる。
【0133】
乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。 有機溶媒が除去されると、トナー母粒子が形成される。
トナー母粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。
分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0134】
得られたトナー母粒子は、離型剤、帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。 機械的衝撃力を印加する方法としては、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0135】
本実施形態での現像剤中のトナーは、表面が平滑であるため、転写性、帯電性等の諸特性に優れ、高品質な画像を形成することができる。また、本発明のトナーが、活性水素基を有する化合物と、活性水素基に対する反応性を有する重合体を水系媒体中で反応させることにより得られる接着性基材を含有すると、転写性、定着性等の諸特性にさらに優れる。このため、トナーは、各種分野において使用することができ、電子写真法による画像形成に、好適に使用することができる。
本実施形態にかかる現像剤に含まれているトナーの体積平均粒子径は、3〜8μmであることが好ましく、4〜7μmがより好ましい。体積平均粒子径が3μm未満であると、二成分現像剤では、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナー融着が発生することがある。体積平均粒子径が8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0136】
トナーの個数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比は、1.00〜1.25であることが好ましく、1.05〜1.25がより好ましい。これにより、二成分現像剤では、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、一成分現像剤では、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着を抑制し、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。この比が1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0137】
体積平均粒子径及び個数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)を用いて、以下のようにして測定することができる。まず、約1質量%塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液100〜150ml中に、分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤を0.1〜5ml添加する。次に、測定試料を約2〜20mg添加する。試料が懸濁した電解質水溶液に、超音波分散機を用いて約1〜3分間分散処理を行った後、100μmのアパーチャーを用いて、トナーの体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒子径及び個数平均粒子径を求めることができる。
【0138】
本実施形態にかかる現像剤中のトナーは、二成分現像剤用トナーであり、、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が必要となる。
このためキャリアは、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。芯材の材料は、公知のものの中から適宜選択することができ、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム系材料、マンガン−マグネシウム系材料等が挙げられる。 芯材の体積平均粒子径は、10〜150μmであることが好ましく、40〜100μmがより好ましい。
体積平均粒子径が10μm未満であると、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることがある。
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、90〜98質量%であることが好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【0139】
次に、上述した特性を有したトナーに関する実施例を挙げる。
<樹脂合成例>
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例1)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸289部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、7時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R1は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.8℃、1/2軟化温度89.5℃、酸価が19.8mgKOH/g、であった。
【0140】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例2)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物77部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物74部、テレフタル酸144部イソフタル酸144部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が42.2℃、1/2軟化温度88.3℃、酸価が18.5mgKOH/g、であった。
【0141】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例3)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物57部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物94部、テレフタル酸144部イソフタル酸144部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、7時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R3は、ガラス転移温度の2ndランの値が46.3℃、1/2軟化温度91.2℃、酸価が20.3mgKOH/g、であった。
【0142】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例4)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物57部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物94部、テレフタル酸289部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、10時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R4は、ガラス転移温度の2ndランの値が43.9℃、1/2軟化温度98.4℃、酸価が17.4mgKOH/g、であった。
【0143】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例5)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物87部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物64部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.2℃、1/2軟化温度83.1℃、酸価が21.3mgKOH/g、であった。
【0144】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例6)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、10時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.6℃、1/2軟化温度91.4℃、酸価が4.7mgKOH/g、であった。
【0145】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例7)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、15時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.6℃、1/2軟化温度82.482.4℃、酸価が42.5mgKOH/g、であった。
【0146】
(合成例8)
<イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10mmHg〜15mmHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,500、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が51であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体)を合成した。
得られたイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の遊離イソシアネート含有量は、1.53質量%であった。
【0147】
(合成例9)
<ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)の合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物のアミン価は418であった。
【0148】
(合成例10)
<結晶性ポリエステル樹脂の合成>
アジピン酸152重量部1.6−ヘキサンジオール170重量部にハイドロキノンを添加し、250℃で縮重合して、Mw=15000、Mn=4000の結晶性ポリエステルを合成した。
【0149】
(トナー硬度測定)
トナー硬度は、マイクロビッカース硬度計(DUH−211S 島津製作所製)を用いて測定できる。
【0150】
測定条件
最大試験力 :1mN、
負荷速度 :0.0150mN/sec、
最大負荷保持時間:5sとし、HV値を読み取りトナー硬度とした。
【0151】
(トナーおよび樹脂のガラス転移温度)
本発明におけるガラス転移点は、示差走査型熱量測定(DSC)において、下記条件で昇温と降温を繰り返し、2度目の昇温(2ndラン)の時のそのDSC曲線の元のベースラインと変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)での接線の交点から決定される。 また測定は島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
【0152】
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
【0153】
1stラン
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温条件
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
【0154】
2ndラン
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
【0155】
(トナーの1/2軟化温度)
1/2軟化温度はフローテスター(CFT−500 島津製作所製)を用いて測定される。
フローテスターのシリンダ内部にトナー1gを計量したものを投入し、70℃で300秒保持した後測定を開始する。シリンダのピストンが稼動領域の半分、つまり1/2移動した際の温度を読み取り1/2軟化温度は決定される。
【0156】
なお、フローテスターの条件は以下の通りである。
測定条件;
開始温度70℃
荷重 30kgf
ダイ径および長さ 1mm×1mm
昇温速度 6℃/min
【0157】
(樹脂およびワックス酸価の測定方法)
JIS K0070−1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行う。
試料調整:試料0.5gをトルエン120mlに添加して室温(23℃)で約10時間撹拌して溶解する。更にエタノール30mlを添加して試料溶液とする。
測定は上記記載の装置にて計算することが出来るが、具体的には次のように計算する。
あらかじめ標定されたN/10苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料質量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
【0158】
(実施例1)
ビーカー内に、ポリエステルプレポリマー10部、80部の非晶性ポリエステル樹脂、10重量部の結晶性ポリエステル及び酢酸エチル130部を入れ、攪拌して溶解させた。
次に、融点が72.1℃、酸価が10.2mgKOH/g、針入度3のエステルワックス6部及びカーボンブラック7部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした。さらに、ケチミン化合物2.7部を加えて溶解させ、トナー材料液を調製した。
容器に水系媒体150部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで攪拌しながら、トナー材料液100部を添加し、10分間混合して、乳化スラリーを調製した。
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃で12時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。
分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10重量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。
【0159】
さらに、得られた濾過ケーキに10重量%塩酸20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを、循風乾燥機を用いて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100部に対し、外添剤としての疎水性シリカ1.0部と、表1に示す酸化チタンとをヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、トナー1を作製した。
【0160】
(実施例2)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー12部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを8重量部に変えた以外は同様にしてトナー2を作製した。
【0161】
(実施例3)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル2に変えた以外は同様にしてトナー3を作製した。
【0162】
(実施例4)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル3に変えた以外は同様にしてトナー4を作製した。
【0163】
(実施例5)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル4に変えた以外は同様にしてトナー5を作製した。
【0164】
(実施例6)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル5に変えた以外は同様にしてトナー6を作製した。
【0165】
(実施例7)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル6に変えた以外は同様にしてトナー7を作製した。
【0166】
(実施例8)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル7に変えた以外は同様にしてトナー8を作製した。
【0167】
(実施例9)
実施例1の離型剤を融点53.5、酸価9.4mg/KOH、針入度4のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー9を作製した。
【0168】
(実施例10)
実施例1の離型剤を融点76.8、酸価11.5mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー9を作製した。
【0169】
(実施例11)
実施例1の離型剤の添加量を2.5重量部に変える以外は同様にしてトナー11を作製した。
【0170】
(実施例12)
実施例1の離型剤の添加量を13.0重量部に変える以外は同様にしてトナー12を作製した。
【0171】
(実施例13)
実施例1の離型剤を融点73.8、酸価2.7mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー13を作製した。
【0172】
(実施例14)
実施例1の離型剤を融点69.5、酸価25.5mg/KOH、針入度4のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー14を作製した。
【0173】
(実施例15)
実施例1の離型剤を融点68.5、酸価14.5mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー15を作製した。
【0174】
(比較例1)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー15部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを5重量部に変えた以外は同様にして比較トナー1を作製した。
【0175】
(比較例2)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー8部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを13重量部に変えた以外は同様にしてトナー2を作製した。
なお、上記トナーは全て体積平均粒子径5.2μm、個数換算における3.17μm以下の割合が5%以下になるように調整した。粒子径はマルチサイザーIII(コールター社製)を用いて測定した。
トナーの各特性を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
(トナー評価結果)
(地汚れ長期ランニング試験)
上記で製造したトナーと粒径50μmのフェライトキャリアとをトナー濃度8%になるように添加し、V型混合機にて1時間撹拌しての評価用現像剤を作製した。
本評価に用いる現像装置は、現像ローラが現像剤を担持する円筒状の現像スリーブと現像スリーブに内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラからなる。
現像スリーブはアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
現像スリーブブラスト処理し、偶数個の磁石を等間隔に配置し、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
磁石ローラと現像スリーブとの駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブの表面に担持される現像剤と磁石ローラ側の磁石との対向回数が多くなることを条件として設定した。
【0178】
本現像装置をRICOH C901(リコー社製)を改造したものに搭載し、35℃85%環境にて原稿濃度5%の100000枚の耐刷試験をおこなった。形成された100000枚目の非画像部の画像濃度をマクベス社製の反射濃度計(小数点以下3桁測定できるように改造)により測定した。未使用紙と定着画像の白紙部の濃度差を測定し、濃度差が0.01未満の場合を「◎」、0.01以上0.02未満の場合は「○」、0.02以上0.03未満の場合は「△」、0.03以上の場合を「×」として判断した。
また、本評価に用いた現像剤の100000枚目時点でのトナーの微粉として個数換算における3.17μm以下の割合を測定し、6%未満を「◎」、6%以上8%未満を「○」、8%以上12%未満を「△」、12%以上を「×」とした。
【0179】
(定着性評価)
−低温定着性評価−
上記で得られた二成分現像剤を株式会社リコー社製複写機(Imagio Neo C355)で付着量4.0g/m2、未定着画像を作成し、次に株式会社リコー社製複写機(Imagio Neo C355)の定着装置(オイルレス方式)を改造したローラ温度を自由に設定できる外部定着機を用い、紙送りを120mm/secに固定し、100℃〜140℃まで温度を5℃ずつ変更した。
この時、十分に溶融しきれずに未画像部に画像が再転写するオフセット現象について定着ローラ上および紙上を観察し、画像が再転写しない温度を低温側の非オフセット温度とした。
結果において、非オフセットの温度が110℃未満ものを「◎」、110℃以上120℃未満を「○」、120℃以上130℃未満を「△」、130℃以上を「×」とした。
【0180】
−高温オフセット性評価−
上記同様に未定着画像を作製し、同条件で外部定着機を用い170℃から5℃ずつ温度を上昇した。この時、十分に溶融しきれずに未画像部に画像が再転写するオフセット現象について定着ローラ上および紙上を観察し、画像が再転写しない温度を高温側の非オフセット温度とした。
結果において、非オフセットの温度が200℃以上を「◎」、185℃以上195℃未満を「○」、175℃以上185℃未満を「△」、170℃以下を「×」とした。
【0181】
表2に評価結果を示す。
【0182】
【表2】
【0183】
上記評価結果によると、比較例1はトナー硬度が定着性は良好であるが、微粉が発生しやすく耐久性の悪いトナーとなった。また比較例2はトナー硬度が高いため高温高湿下での耐久性には優れるが、低温定着性が悪い結果となった
一方、実施例1から15は、本発明の範囲内であるため、その程度には差はあるがそれぞれ良好な結果が得られた。
【0184】
以上のように、本実施形態においては、現像剤に含まれるトナーを構成する結着樹脂の主成分として非晶質、結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、その硬度を規定することにより、衝撃を受けた際の破砕をトナー自身の柔軟性により防止できることによって微粉化することがない。これにより、現像による画像再現性、つまり、微粉の固着による現像剤担持量の不均一をなくして画像濃度ムラの発生を防止でき、しかも耐久性に優れ、高温高湿下においても異常画像の発生を抑えることができる。
【0185】
次に上述したトナーを含む現像剤を現像装置に適用した場合の磁気穂を対象とした形成条件について説明すると次の通りである。
本実施形態に用いられる現像装置4では、現像ローラ5に用いられる現像スリーブ81の内部、つまり現像ローラ5の内部に配置されて、現像ローラ5の回転中心から偏心した回転中心を有する磁石ローラ82が、図3(A)に示すように、現像スリーブ81における回転方向(符号Iで示す方向)と逆方向(符号Jで示す方向)に回転するようになっている。
このため、現像スリーブ81の周面に形成された磁気穂(磁気ブラシ)は、図3(B)に示すように、現像スリーブ81の周面で回転しながら移動し、いわゆる、現像スリーブ81上を転動する。このように転動しながら磁気穂は現像スリーブ81の周面上で搬送されることになる。
【0186】
ところで、上述したように、磁石ローラ82の回転により現像スリーブ81上を転動しながら搬送される磁気穂を構成する現像剤は、穂立ちしている磁気穂先端粒子の速度が現像スリーブ81の速度と磁石ローラ82の回転による磁気穂の回転速度との和に相当し、現像スリーブ81のみを回転させる場合と違って、磁気穂の回転する運動エネルギーは大きくなる。
このような状態のトナーが転動時に倒れると、現像ローラ5の周面からの衝撃を受けて割れ、いわゆる破砕されて微粉(小さなトナー)となることがある。
【0187】
現像剤が現像ローラ5上を搬送されるとき、現像ローラ5を構成する現像スリーブ81と現像剤との接触によってトナーが現像スリーブ81の表面に付着するが、微粉トナーは粒径が小さいため現像スリーブ81との付着力が大きくなり、一度付着すると離れにくい。
上述した現像スリーブおよび磁石ローラの双方が回転する方式では、現像スリーブ上で磁気穂が回転するため、現像スリーブの周速に比べて現像剤の速度が速いという特徴がある。そのため現像スリーブ表面にトナーが付着していると、付着したトナーと現像剤との間で剪断力が働き、トナーがスリーブ表面に強く擦り付けられて固着してしまうことがある。
【0188】
このような現象への対応として、本実施形態では、前述した特性を有することで柔軟性を有し、衝撃を受けた際に自らの弾性変形によって衝撃を吸収することにより割れるのを防止して微粉化するのを避けるようになっている。
【0189】
以上のようなトナーを用いた現像装置において稼働後での現像剤に含まれるトナーの粒径変化を実験した結果が図4に示されている。
図4は、現像装置を20時間稼働した後の粒径分布を示す図であり、図4(A)は、通常のトナー、つまり、本実施形態の構成を備えていないトナーを対象としたもの、図4(B)は本実施形態でのものである。
【0190】
図4に示す結果から明らかなように、本実施形態にかかるトナーを含む現像剤を用いた場合には、粒径変化を生じたトナーの個数が少ないことがわかる。
【0191】
また、図5は、初期に対する微粉トナーの増加量に関する推移を実験した結果であり、この結果から明らかなように、通常のトナーを用いた比較例ではトナーの粒径が小さくなっているがわかる。しかも、比較例では、粒径が小さくなって微粉化したトナーが現像ローラに固着していることが確認された。
これに対し、本実施形態にかかる軟らかいトナーを用いた場合、現像ローラにトナー固着は見られなかった。トナーの粒径分布も初期と比較してほとんど変化がなく、微粉トナーの増加は比較例に比べて少なくなっていた。
なお、本実施例中での微粉トナーとは平均粒径が3.17μm以下のトナーのことであり、個数平均で微粉トナーの割合が初期トナーに比べて約5%増加すると固着による画像濃度ムラが現れることが確認されている。
【0192】
次に本発明にかかる別の実施形態について説明する。
以下に説明する実施形態では、上述したように、トナーの割れを防止してトナーの微粉化による現像スリーブへの固着を防止する点に関し、さらに効率よく微粉化を抑制してトナーの固着を抑制する点に特徴を持つ。
【0193】
図6は、第2の実施形態に関する構成を示す図であり、同図に示す構成では、現像ローラ5と感光体1とで構成される空間内での現像剤密度を適切な範囲に管理することにより、磁気穂の回転が円滑に行われるようにして微粉トナーの発生を抑制するようにした点を特徴としている。
【0194】
図6において、現像ローラ5上の単位面積あたりの現像剤の搬送量をM(mg/cm2)、現像剤の嵩密度をρ(mg/cm3)、感光体1と現像ローラ5とのギャップをP(mm)としたとき、現像領域で現像剤の密度はM/ρ/Pとなる。
この式で計算される現像剤密度が高くなるほど、磁気穂同士の間隔が狭く、磁気穂が回転するときの空間が少なくなり他の磁気穂やスリーブ、感光体と接触する確率が高くなり微粉化しやすい。
【0195】
特に60%を超えると、回転するたびに他の磁気穂と接触し微粉化しやすい。また、軟らかい、いわゆる、柔軟性を有するトナーのため密度が高い状態で現像ローラ上を搬送されてしまうことや、放置時間が長いと現像剤やトナー同士が凝集することがある。
一方、60%以下であれば、磁気穂の回転は円滑に行われるためトナーの微粉化が抑制でき、現像領域で現像剤やトナーが凝集体を作ることもない。
【0196】
そこで現像領域での現像剤密度が60%以下になるように、ドクターブレードと現像ローラのギャップ、感光体と現像ローラのギャップを設定した。なお、現像剤の嵩密度はJIS嵩密度計を用いて測定した。
【0197】
本実施形態では、現像領域での現像剤密度は50%〜60%の範囲で使用した。 この結果、上述した条件を設定することにより、トナーの微粉化が抑制でき、現像剤やトナーの凝集体の発生もなかった。
【0198】
本実施形態においては、現像領域での剤密度をさげることで、剤の動きを円滑化してトナーの凝集が起こりにくい状態とすることができる。また、磁気穂同士の間隔が十分あるため、他の磁気穂と接触しにくく、接触頻度が下がることでトナーが微粉化しにくくなり、微粉化トナーの固着を抑制することが可能となる。
【0199】
次に第3の実施形態について説明する。
本実施形態では、スリーブと磁石ローラの偏心量Tを調整し、ドクターブレードに対向する位置での法線方向磁束密度の最大値が20mT以下となるようにしてトナーの固着を防止する点に特徴を持つ。
【0200】
図7は磁石ローラ82を1回転させながら、現像ローラ5上のドクターブレード12が設置されている位置の磁束密度をガウスメーターで測定した結果である。
現像ローラ5と磁石ローラ82との双方を回転させる現像装置では、磁石ローラが回転するため、図7に示すように、現像スリーブ81上の磁束密度は磁石の通過する間隔で極性、大きさが変動する。
【0201】
ドクターブレード12に対向する位置での法線方向磁束密度が高いと、現像剤がドクタギャップ通過時に剪断力によって強いストレスを受ける。特にトナーが軟らかいとストレスを受けてドクターブレード12や現像スリーブ81に固着しやすい。しかし、法線方向磁束密度を20mT以下にすることで、現像スリーブ81に現像剤が強く保持されないため固着を防止でき軟らかいトナーであっても使用可能となる。
本実施形態では、この点に立脚して、法線方向磁束密度の最大値が20mT以下となるように磁石ローラの軸を固定している。
【0202】
次に第4の実施形態について説明する。
本実施形態に至る背景は次の通りである。
通常の現像装置ではドクターブレードの位置通過時の剪断力で現像剤の帯電量を立ち上げている。ところが、第3の実施形態において説明したように、ドクターブレードでの法線方向磁束密度を低下させると、現像剤に対して十分な帯電付与が行えない。
特に、現像ローラ5および磁石ローラ82の両回転方式の現像装置では、ドクターブレード12だけでなく、現像スリーブ81上を磁気穂が回転する際の摩擦帯電によってトナーに帯電を付与することができる。このため、ドクターブレード12で帯電を立ち上げる必要がない。
【0203】
図8は現像剤が現像ローラに供給されてからの現像ローラ上での磁気穂の回転数と帯電量の関係を表すグラフである。
現像剤が現像ローラに供給された直後の帯電量は−24μC/gと低いが、磁気穂が回転すること摩擦帯電が促進され30回転以上すると帯電量は−30μC/g以上となり、十分な帯電量を得ることができる。さらに50回以上であれば帯電量はほぼ飽和し常に一定の帯電量で現像動作を行うことができる。
【0204】
本実施形態はこのような考察に基づき、現像剤が現像ローラに供給されてから現像に使用されるまでに磁気穂が30回以上回転するように磁石ローラの回転数を設定した。現像剤が現像剤担持体に供給されてから現像に使用されるまでとは、図9の矢印で示す領域を搬送されている間のことである。
現像ローラ上での磁気穂の回転数は次の式で定義する。
磁気穂回転数=現像ローラ上の搬送距離/スリーブの速度×磁石ローラの回転速度×磁石数
【0205】
本実施形態においては、上述した構成を備えることにより、トナーに過度なストレスを与えることなく帯電量を得られるため、軟らかいトナーであっても安定した作像動作が行える。特に、ドクターブレードでの帯電付与がなくなる反面、現像ローラ上で搬送される磁気穂の交番を利用して摩擦帯電を行うことができるので現像領域に達した際には十分な帯電量を得ることが可能となる。
【0206】
次に第5の実施形態について説明する。
本実施形態に至る背景は次の通りである。
現像スリーブ81および磁石ローラ82の双方を回転させる方式の現像装置においては、現像スリーブ81と磁石ローラ82が逆方向に回転することで現像スリーブ81上に穂立ちした磁気穂が回転しながら搬送されるため、現像剤の速度がスリーブの速度よりも速い。
このため、現像剤と現像スリーブ81との間に速度差が生じ、現像スリーブ81の表面に付着したトナーが現像スリーブ81上を搬送される現像剤によって現像スリーブ81に擦り付けられると、一部のトナーが固着してしまう。
そこで、現像スリーブ81へのトナーの固着を防止するには現像スリーブ81との間に発生する磁気穂への剪断力を小さくする必要がある。
【0207】
本実施形態では、以上の点に鑑み、現像剤と現像スリーブ81との速度差を1.2以下に設定している。
現像剤搬送距離は、現像スリーブ81の移動距離に加えて磁気穂の転動によって進む距離の和であるため、搬送速度の調整は磁石ローラの回転数の増減で磁気穂の回転数を増減させ適切な範囲に設定する。
【0208】
なお、この場合の現像剤の搬送速度は図10に示す方法で測定可能である。
ドクターブレード12の上流側から現像剤を供給し、現像スリーブ81と磁石ローラ82を回転させる。現像ローラ5の下側で剤離れして回収される現像剤の量を時間に対して測定する。
測定された量を現像ローラの長手方向の現像剤搬送量(M×現像ローラ長さ)で割ることで現像剤速度を計算できる。
上記のように、現像剤と現像スリーブ81の速度差を小さくすることで現像剤と現像スリーブ81との剪断力が小さくなり、現像スリーブ81に付着したトナーが固着しにくくなる。
以上の実施形態において磁石ローラ82の回転数は、第4,第5の実施形態の両方を満たす範囲に設定することが好ましい。
具体的には、磁石ローラ82の回転数が1350rpmに設定されている。
つまり、現像ローラ5上の搬送距離が40mmの場合に、現像スリーブ81の速度が600mm/s、磁石ローラの磁石の個数が20個、1350rpmの条件では、磁気穂の回転は30回となる。
また、この条件において現像剤の速度は715mm/sであり、現像剤と現像スリーブ81の速度比は1.19である。
【0209】
本実施形態においては、現像スリーブ81と磁石ローラ82との間の速度差が原因する磁気穂への剪断力の発生を抑制することにより微粉化されたトナーの発生を少なくして微粉トナーが固着するのを防止することができる。これにより、微粉トナーの固着が原因する現像剤の担持量不均一な状態を防止して画像濃度ムラの発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0210】
1 感光体ドラム
4 現像装置
81 現像スリーブ
82 磁石ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0211】
【特許文献1】特許第3127594号公報
【特許文献2】特開2007−101797号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤、現像装置および画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤およびこの現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0004】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0005】
二成分系現像剤を用いる現像装置の構成には、図11に示す構成がある(例えば、特許文献1)。
図11に示す構成では、現像剤担持体としての現像スリーブ5が配置されている位置の下方に現像剤供給用のオーガ401が配置され、水平方向において現像剤供給用オーガ401の軸線に平行する攪拌用のオーガ402が配置されている。供給用および攪拌用の各オーガ401,402は軸方向端部でこれらオーガが配置されている空間同士が連通している。
【0006】
図11に示す構成においては、各スクリューオーガが相反する方向に現像剤を移送することにより、現像剤を各オーガが配置されているスペース間で循環させる。これにより、供給用オーガ401から現像スリーブ5に対して現像剤の汲み上げと現像後の現像スリーブ5に担持されている現像剤の回収とを行うようになっている。
【0007】
上述した現像剤の供給および回収を行うための構成として、現像スリーブ5の内部には周方向に沿って、現像スリーブ5に対向して磁気ブラシを穂立ちさせる現像主極および現像スリーブ上で現像剤を移動される搬送磁極そして現像後のスリーブ周面から現像剤を剥離するための反撥磁界を形成可能な剥離磁極が設けられており、反撥磁極を設けることにより奇数極、具体的には7極の磁石が用いられている。
【0008】
反撥磁極により現像スリーブ5の周面から剥離されて回収される現像剤は、一点鎖線の矢印F1で示すように、一旦、搬送路401Pを通過して供給用オーガ401に回収されるが、再度、搬送磁極による汲み上げられて現像スリーブ5の周面に供給されることになる。これにより、現像剤は、同じ位置に存在する供給用の搬送路および回収用の搬送路間を循環しながらオーガの軸方向に搬送され、その過程で現像スリーブ側の磁極と多数回対向しながら移動する。
【0009】
現像剤は、磁極と対向した際に穂立ち状態とされ、磁極から離れると穂立ちが崩れて凝縮するという過程を繰り返すことによりキャリアとトナーとの摩擦接触が行われてトナーの摩擦帯電が行われる。
穂立ち状態および穂立ちが崩れて凝縮することによる摩擦接触が繰り返される現像剤は、例えば、オーガの軸方向に搬送されることから、その方向での搬送過程においてトナーの消費量が多くなると搬送方向下流側でのトナーの濃度が低下する。
例えば、画像面積が大きい画像を現像するような場合、オーガの軸方向でのトナーの消費は、供給される側で大量に消費されてしまう可能性が高く、搬送方向下流側では現像剤の含まれるトナー量が少なくなる。このため、現像スリーブの軸方向で一様なトナーの濃度を維持することができないことがある。トナーの濃度不足は画像品質の低下に繋がる。
【0010】
上述した不具合は、現像剤の供給搬送路と回収用搬送路とが共通して用いられることに原因がある。つまり、回収された現像剤はトナーが不足しており、このような現像剤を供給搬送路に再度搬送してしまうと、供給される現像剤内でのキャリアの含有比率が高くなってしまい、供給される現像剤中のキャリアとトナーとの比率が所定比率と異なることになる。
【0011】
そこで、図11に示した構成の一部を変更して、現像剤の供給搬送路と回収搬送路とを区別して供給搬送路内に回収された現像剤が混入しないようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
図12には、特許文献1に開示されている現像装置の要部が示されており、同図において、現像装置4のハウジング内には、仕切り壁403によって上下方向で仕切られて第1のオーガ401,第2のオーガ402をそれぞれ収容する攪拌室401P、402Pが設けられている。
【0012】
一方、特許文献1に開示されているように、オーガを収容する攪拌室を仕切り壁により仕切るようにした構成に関する別の例として、特許文献2に開示された構成がある。
図13は、特許文献2に開示された構成を示す図であり、同図において、現像装置4のハウジング内には、現像スリーブ5に対して現像剤を供給するため供給用オーガ401および現像剤の攪拌用オーガ402に加えて現像領域を通過した現像スリーブ5上の現像剤を回収する回収用オーガ404が設けられ、供給用オーガ401が位置する供給搬送路401P’と回収用オーガ404が位置する回収用搬送路404Pとは仕切り壁405によって仕切られ、攪拌用オーガ402が位置する攪拌搬送路402P’と回収用搬送路404Pとは仕切り壁406によって仕切られている。
【0013】
特許文献1に開示されている構成では、回収された現像剤が攪拌用のオーガ402によって軸方向に搬送されてそのまま供給用のオーガ401に向け搬送されることから、新たなトナーが補給された場合でも攪拌用のオーガ402による攪拌が不十分となりがちであり、トナーの帯電不足による画像濃度の不均一や濃度低下を来す虞がある。特に、回収される現像剤のトナー濃度が低下しやすい高印字率の画像形成時には顕著となる。
【0014】
一方、特許文献2に開示されている構成では、現像スリーブから回収される現像剤が回収用搬送路404Pに搬送され、供給用搬送路401P’に混入することがなく、さらには、回収された現像剤がそのまま攪拌用搬送路402P’内に入り込むこともなく、攪拌されたうえで供給用搬送路401P’に向け搬送されることから、図11に示した構成で生じる不具合を解消することが期待できる。
【0015】
しかし、これら特許文献に開示されている構成に用いられる現像剤担持体である現像スリーブの構成には、次のような問題がある。
各特許文献に開示されている現像スリーブは、内部に磁気ブラシ形成用、つまり現像剤を穂立ちさせる磁極を備えているが、その磁極数が、特許文献1においては、図示されているように5極とされ、そして特許文献2においては、図示されていないものの、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収する回収スクリューに向け現像剤が移動することが記載されていることから、図11に示した場合あるいは特許文献1と同様に、5又は7極程度であることが予想できる。
【0016】
一方、特許文献1に開示されている構成においては、図11に示した場合と違って、供給搬送路と回収搬送路とが共通していないで独立した構成となっていることからして、現像剤は、供給・回収搬送路間での循環作用が得られない。
このため、回収される現像剤は、上述した磁極を通過する回数が5〜7回程度しかない状態のままで回収されることになり、穂立ち・穂立ちの崩れを繰り返す際の摩擦接触がきわめて低い状態が得られてしまう。この結果、摩擦接触の機会が要因となる摩擦帯電が不十分となり、トナーの帯電に長い時間が必要となるという問題が生じる。
【0017】
特許文献2に開示されている構成では、攪拌搬送路が独立して設けられていることから、回収された現像剤を対象とした攪拌効率の向上が望めるが、現像剤交換後や長時間の放置時にはトナーの帯電量も失われがちであることから、キャリアへの付着力低下を生じて飛散しやすくなり、結果として、装置内汚染を招く虞がある。
【0018】
ところで、この種、現像装置においては、現像領域を通過した現像スリーブ5上に残存する現像剤が回収された後、新たな現像剤の供給を受けることで現像剤スリーブ5上に担持される現像剤の濃度を一定に維持することが必要とされる。
しかし、現像領域を通過した現像スリーブ5上から現像剤の回収が良好に行えないと、現像スリーブに担持される現像剤濃度が変化し、所定濃度の画像が得られないという問題が生じる。つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
【0019】
そこで、従来では、上述した不具合を解消するために、像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置において、現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体と対向する側と反対側および前記現像剤担持体内部の間に存在する隙間空間には該磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が配置されていることを特徴とする現像装置について開示されている(例えば、特許文献3)。
【0020】
また、トナーの耐久性を向上させることも必要であり、このための構成として、ビッカーズ硬度の範囲を限定した構成が提案されている(例えば、特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献3に開示された構成の現像装置を用いることにより、トナーの回収を容易化して上述した不具合が解消されるものの、トナーの移動時に作用する負荷が大きいため、トナーがキャリアにスペントすることや、トナー同士の固着が発生して凝着することがある。
この現象はトナーが砕かれたときに顕著となり、砕かれることで微粉状となったトナーが現像剤担持体表面にも固着してしまい、像担持体面で現像剤の担持量が不均一となる。この結果、画像濃度ムラが発生する虞がある。
【0022】
一方、現像剤担持体に担持される現像剤は、現像担持体内に配置されている磁石からの磁力により表面で磁気穂、いわゆる、磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像剤担持体、例えば、現像ローラの回転に伴い周面で転動しながら移動し、ドクターブレードにより穂立ち高さを規定されて感光体上の静電潜像と対向するが、穂立ち高さを規定される際にドクターブレードからの衝撃を受ける。
【0023】
ドクターブレードから衝撃を受けた磁気ブラシには剪断力が作用し、現像剤中のトナーの一部が現像剤担持体表面に擦りつけられて砕かれると微粉化したトナーが現像剤担持体に固着する。また、ドクターブレード先端と現像ローラ表面との間に設定されている隙間内にトナーが凝縮されると、搬送されてくるトナーがドクターブレードに固着して磁気ブラシの高さ設定を阻害する虞がある。
【0024】
このように現像剤担持体表面やドクターブレードにトナーが固着すると、上述したように現像剤担持体表面での現像剤の担持量が一定とならず、画像濃度ムラを起こすことになる。
【0025】
本発明の目的は、上記従来の二成分系現像剤における問題に鑑み、トナー同士の固着や現像剤担持体への固着による担持量の不均一化が原因する画像濃度ムラを防止することができる構成を備えた現像剤、現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的を達成するため、本発明は、少なくとも露光、現像、転写および定着を行う画像形成処理において、露光により像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、
該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含むトナーの硬度として、微小硬度計において硬度2〜20N/mm2を設定されていることを特徴とする現像剤にある。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トナーを構成する結着樹脂の主成分として非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これらを含む現像剤自体の硬度には微小硬度計において硬度2から20N/mm2を設定されることにより、衝撃に対してトナー自体に割れが生じない状態を維持できる柔軟性を持たせることができる。これにより、トナーの移動時に作用する負荷が大きくてもトナー自体の柔軟性により砕かれることがない。
【0028】
この結果、現像剤担持体に内蔵されて現像剤担持体の回転中心に対して偏心した回転中心を有する複数の磁石により現像剤担持体からの剥離性を向上させて搬送循環性を高めた場合には、移動する過程でのトナーの微粉化が生じないので微粉化した場合のトナーの固着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置が適用される画像形成装置の構成を説明するための図である。
【図2】一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置の構成を説明するための図である。
【図3】図1に示した現像装置での現像剤の搬送形態について説明するための図である。
【図4】従来の現像剤を用いた場合の初期時でのトナー粒径と所定時間後のトナー粒径との変化と、一実施形態にかかる現像剤を用いた場合のトナー粒径の変化とを比較した結果を説明するための線図である。
【図5】従来の現像剤を用いた場合の微粉トナーの増加量と一実施形態にかかる現像剤を用いた場合の微粉トナーの増加量を比較した結果を示す線図である。
【図6】現像剤担持体表面での現像剤嵩密度の違いについて説明するための図である。
【図7】複数の回転可能な磁石の1回転時でのドクターブレードの配置位置での磁束密度の関係を説明するための線図である。
【図8】磁気穂の回転(回転数)と帯電量との関係を説明するための線図である。
【図9】現像剤担持体表面での現像剤からなる磁気穂の転動状態を説明するための図である。
【図10】現像剤の搬送速度について説明するための図である。
【図11】現像装置の従来例の一つを示す図である。
【図12】現像装置の他の従来例を示す図である。
【図13】現像装置のさらに他の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1には、一実施形態にかかる現像剤を用いる現像装置を適用する画像形成装置が示されており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0031】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニット20を備えている。
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0032】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザ光を照射する。
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0033】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。
帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0034】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0035】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0036】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路48に向けて送り出される。
【0037】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路48は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路46内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0038】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0039】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0040】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0041】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0042】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0043】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0044】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0045】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0046】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
図2に示すように感光体1は図中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
【0047】
現像装置4は、図中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0048】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81からなり、内部には、複数の磁極からなり図中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82が配置されている。
【0049】
磁石ローラ82は、直径φ40(mm)の中空円筒が用いられ、図3(A)に示すように、回転中心A’が現像スリーブ81の回転中心Aより距離(T)だけ離れた位置に偏心させて位置決めされている。
磁石ローラ82の外周面には、20個の磁極(磁石)が周方向に沿って等分位置に備えられ、直径がφ30(mm)とされて現像ローラ5内に配置できるようになっている。
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する前の位置で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、上記符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0050】
一方、偏心方向と反対側では磁気力を低く抑えることができる。このため、現像スリーブ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
このような偏心構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0051】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2を示す紙面の手前側(以下、便宜上、図中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0052】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクターブレード12を備えている。
【0053】
現像ローラ5の感光体1Yとの対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0054】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0055】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0056】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクターブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
現像ローラ5の直径はφ40(mm)、ドクターブレード12及び感光体1とのギャップは0.3(mm)程度となっている。
現像後の現像剤は回収搬送路7にて回収が行われ、図2中手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第二仕切り壁134の開口部で、攪拌搬送路10へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路10における現像剤搬送方向上流側の第二仕切り壁134の開口部の付近で攪拌搬送路10の上側には、図7に示すように、後述するトナー補給口95から攪拌搬送路10にトナーが供給される。
【0057】
現像装置4に用いられる現像剤について説明する。
一実施形態にかかる現像剤は、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤が用いられ、少なくとも結着樹脂の主成分として非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、微小硬度計における硬度が2〜10N/mm2に設定されたものが用いられる。
結晶性ポリエステルは結晶性を有し、分離量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルが用いられることが望ましい。
【0058】
微小硬度計における硬度2からというのは、硬度が5より小さいとトナー自体の柔軟性が大きく、キャリアにスペントしやすくなり、現像剤の劣化、稼働後の帯電特性の低下による地肌汚れやトナー飛散などが発生するのを防止することを考慮して規定されている。
【0059】
また、上述した硬度のうちで、20N/mm2という値は、この値よりも大きい場合にトナーの硬度が高くなることにより低温定着性の悪化、トナーに割れが生じやすくなることで微粉が生じやすくなり、トナー飛散や擦れによる固着が起こりやすくなることを考慮して規定されている。なお、トナーの硬度は、マイクロビッカース硬度計(DUH−211S 島津製作所製)を用い、最大試験力:1mN、負荷速度:0.0150mN/sec、最大負荷保持時間:5secに基づき得たものである。
【0060】
一実施形態係る現像剤は、上述した硬度に加えて次の条件が設定されている。
(1)トナーのガラス転移点温度が30℃〜50℃である。
(2)トナーの軟化温度が95℃〜115℃である。
(3)トナーに含まれる離型剤の融点が55℃〜75℃である。
(4)トナーに含まれる離型剤の量が、3〜12重量部含まれている。
(5)トナーに含まれる離型剤の酸価が3〜20mgKOH/gである。
(6)トナーに含まれる離型剤の針入度が5以下である。
(7)トナーに含まれる非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5〜40mgKOH/gである。
【0061】
(1)に挙げた条件は、現像剤に含まれるトナーの硬度を得るための条件である。
【0062】
(2)の条件は、トナー軟化温度が95℃より低いと高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、115℃より高いと低温定着性が悪化することを理由としている。
【0063】
(3)の条件は、離型剤の融点が55℃より低いと、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、離型剤の融点が75℃以上になると定着時にブリードアウトし離形性を発揮することができず、定着分離性が悪化することを考慮したものである。
【0064】
(4)の条件は、離型剤を3重量部より少ないと、定着時にブリードアウトし離形性を発揮することができず、定着分離性が悪化する。一方、12重量部より多くなると、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなることに着目したものである。
【0065】
(5)の条件は、離型剤の酸価が3mgKOH/gより小さいと離型剤の分散性が悪いためトナー表面に離型剤が偏在しやすくなり、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、酸価が20mgKOH/gより大きいと表面に露出する離型剤が吸湿しやすくなるため、特に高温高湿下での帯電変動が大きくなることを考慮したものである。
【0066】
(6)の条件は、針入度が5より大きいと表面に露出する離型剤が軟らかいため、表面に露出する離型剤により、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下でのランニングでの帯電の変動が大きくなることに着目したものである。
【0067】
(7)の条件は、非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/gより小さいと、離型剤の分散性が悪いためトナー表面に離型剤が偏在しやすくなり、高温高湿下保管時にトナーが凝集固化したり、高温高湿下での本現像装置でのランニングでの帯電の変動が大きくなる。一方、40mgKOH/gより大きいとトナーの吸湿性が向上するため、特に高温高湿下での帯電変動が大きくなることを考慮したものである。
【0068】
(8)の条件においては、非晶性および結晶性ポリエステル樹脂は顔料および離型剤の分散性の観点より、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物をポリエステル樹脂を重合するときに用いるジオール成分に対して50モル%以上含有することが好ましい。更に好ましいのは70モル%以上、更に好ましいのは80モル%以上である。
【0069】
ジオール成分としてプロピレンオキサイド付加物が一定以上含有したポリエステル樹脂と所定の酸価、アミン価を有するポリエステル誘導体である高分子分散剤を組み合わせたときに顔料分散性が優れ、またトナーの色再現性が向上する。
この理由は定かでないが、恐らくポリエステル樹脂と高分子分散剤の親和性が高まり顔料を安定化すると考えられることにある。
【0070】
上述したビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物以外のジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。なお、アルキレングリコールの炭素数は、2〜12であることが好ましい。これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0071】
また、三価以上のアルコールも使用ができ、三価以上のアルコールとしては、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。
三価以上の脂肪族アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類の具体例としては、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物の具体例としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
【0072】
酸成分としてはポリカルボン酸が挙げられる。ポリカルボン酸は、目的に応じて適宜選択することができ、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等を用いることができるが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸の混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0073】
ジカルボン酸の具体例としては、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。二価のアルカン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。二価のアルケン酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、具体的には、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜20であることが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜20の二価のアルケン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0074】
三価以上のカルボン酸としては、三価以上の芳香族カルボン酸等を用いることができる。三価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、9〜20であることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。 ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸を混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
ポリオールとポリカルボン酸を重縮合させる際の混合比は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比は、通常、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0075】
一実施形態にかかる現像剤でのイエロートナー用着色剤としては、例えば、カラーインデックスにより分類される、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15若しくはC.I.ピグメントイエロー17等のアゾ系顔料、又は、黄色酸化鉄若しくは黄土等の無機系顔料を用いることができる。
また、染料としては、例えば、C.I.アジットイエロー1等のニトロ系染料、又は、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19若しくはC.I.ソルベントイエロー21等の油溶性染料を用いることができる。特に、色相や発色の観点から、好ましくはC.I.ピグメントイエロー185が用いられる。
【0076】
シアントナー用着色剤としては、シアントナーの顔料としては、C.I.ピグメントブルー−15、C.I.ピグメントブルー−16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70等を用いることができるが、C.I.ピグメントブルー−15等の銅フタロシアニン顔料が色味の点から選択される。
【0077】
マゼンタトナー用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10又はC.I.ディスパーズレッド15等を用いることができる。
更に、各色トナー顔料は混合して用いても良く、特にマゼンタトナー用顔料については、色相の観点からC.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド269の混合系を用いる。なお上記顔料は、分散性の向上を目的として予め結着樹脂に分散する所謂マスターバッチとして用いても良い。
以上のことから、着色剤としては、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができるといえ、例えば、上述した成分も含まれるが、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられる。前記着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
また現像剤に含まれるトナーの結着剤用主成分に用いられる離型剤としては、蝋類およびワックス類が用いられる。本実施形態に用いられるワックス類は、天然ワックスとして、動物由来の蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、植物由来のカルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス等があり、そして石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等があり、鉱物由来のモンタンワックス、セルシン、オゾケライト等があり、また合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等がある。これら天然ワックスの他に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらの中でも、定着補助成分としての脂肪酸アミド系化合物との相溶性が低く、互いの機能を損なうことなく独立して作用することができ、トナーの低温定着性を充分に得ることができる成分として、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)や、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系ワックス等がある。
【0079】
種類について限定されるものではないが、好ましくは離形性の観点から離形性、保存性および耐久性の観点からエステルワックスもしくはパラフィンワックスが良い。
これは、これらのワックスが比較的低温で低粘度であると共に、針入度が低く、また変性や反応方法により比較的容易に酸価を制御することが可能である。
【0080】
また、本実施形態では帯電制御剤を用いることが好ましい。帯電制御剤としては公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色又は白色に近い材料を用いることが好ましい。具体的には、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、フッ素変性四級アンモニウム塩を含む四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、市販品としては、四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体のLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子等が挙げられる。
また、帯電制御剤としては、この他に、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
【0082】
トナー中の帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、結着樹脂に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
含有量が、0.1質量%未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量%を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、現像ローラとの静電引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0083】
油相に含有させる前記結着樹脂の重量平均分子量は、1000〜30000であることが好ましく、1500〜15000がより好ましい。重量平均分子量が、1000未満であると、耐熱保存性が低下することがある。このため、重量平均分子量が1000未満である成分の含有量は、8〜28質量%であることが好ましい。 一方、重量平均分子量が30000を超えると、低温定着性が低下することがある。
なお非晶性および結晶性ポリエステルのガラス転移温度は、通常、30〜70℃であり、35〜60℃がより好ましく、35〜55℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、70℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0084】
水系媒体は、公知のものの中から適宜選択することができる。具体的には、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物等が挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶媒としては、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0085】
本実施形態に係る現像剤において、少なくとも結着樹脂と着色剤を含むトナー材料を含有する油相は、トナー材料が溶媒に溶解又は分散されていることが好ましい。溶媒は、有機溶媒を含有することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの母粒子を形成する際又はトナーの母粒子を形成した後に除去することが好ましい。
【0086】
有機溶媒は、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易であることから、沸点が150℃未満であることが好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0087】
有機溶媒の使用量は、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対して、40〜300質量部であることが好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部がさらに好ましい。
【0088】
トナー材料は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有し、活性水素基を有する化合物及び活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体をさらに含有することが好ましく、必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分をさらに含有してもよい。
【0089】
トナー材料を含有する油相における着色剤と有機溶媒の混合割合は、目的に応じて適宜選択することができ、5:95〜50:50であることが好ましい。着色剤の配合量がこの範囲より少なくなると、トナーの製造時に有機溶媒の量が多くなり、トナーの製造効率が低下することがあり、この範囲より多くなると、顔料の分散が不十分となることがある。
【0090】
トナー材料を含有する油相を用いて水系媒体中でトナー材料を乳化又は分散させる際には、攪拌しながらトナー材料を含有する油相を水系媒体中に分散させることが好ましい。分散には、公知の分散機等を適宜用いることができる。分散機の具体例としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられる。中でも、分散体(油滴)の粒子径を2〜20μmに制御することができることから、高速せん断式分散機が好ましい。
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1000〜30000rpmであることが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は、バッチ方式の場合は、0.1〜5分であることが好ましく、分散温度は、加圧下において、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、一般に、分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0091】
トナーの母粒子を形成する方法は、公知の方法の中から適宜選択することができる。具体的には、溶解懸濁法等を用いてトナーの母粒子を形成する方法、結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法等が挙げられるが、これらの中でも、結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法が好ましい。ここで、結着樹脂とは、紙等の記録媒体に対する接着性を有する基材である。
結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法は、トナー材料が活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有し、水系媒体中で、活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を反応させることにより結着樹脂を生成しながら、トナーの母粒子を形成する方法である。
このようにして得られるトナーは、必要に応じて適宜選択される離型剤、帯電制御剤等のその他の成分をさらに含有してもよい。
【0092】
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体は、活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂等が好適に用いられる。 活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基に対する反応性を有する重合体としてのイソシアネート基を有するポリエステルが好ましい。なお、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂と活性水素基を有する化合物を反応させる際にアルコール類を添加することにより、ウレタン結合を形成してもよい。このようにして生成するウレア結合に対するウレタン結合のモル比(イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが有するウレタン結合と区別するため)は、0〜9であることが好ましく、1/4〜4であることがより好ましく、2/3〜7/3が特に好ましい。この比が9より大きいと、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0093】
活性水素基を有する化合物は、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体が水系媒体中で伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基の具体例としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。なお、活性水素基は、単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
【0094】
活性水素基を有する化合物は、目的に応じて適宜選択することができるが、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体がイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーである場合には、ポリエステルプレポリマーと伸長反応、架橋反応等により高分子量化できることから、アミン類が好適である。
【0095】
アミン類は、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的には、ジアミン、三価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸及びこれらのアミノ基をブロックしたもの等が挙げられるが、ジアミン及びジアミンと少量の三価以上のアミンの混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0096】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。芳香族ジアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。脂環式ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0097】
脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。三価以上のアミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。アミノアルコールの具体例としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
【0098】
アミノメルカプタンの具体例としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。アミノ基をブロックしたものの具体例としては、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物等が挙げられる。
【0099】
なお、活性水素基を有する化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体の伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる。反応停止剤の具体例としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン及びこれらのアミノ基をブロックしたケチミン化合物等が挙げられる。
【0100】
アミン類のアミノ基の当量に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量の比は、1/3〜3であることが好ましく、1/2〜2がより好ましく、2/3〜1.5が特に好ましい。この比が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3を超えると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)は、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0101】
プレポリマーが有する活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、化学構造式 −COClで示される官能基等が挙げられるが、中でも、イソシアネート基が好ましい。プレポリマーは、このような官能基の一つを有してもよいし、二種以上を有してもよい。
プレポリマーとしては、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構の無い場合でも良好な離型性及び定着性を確保できることから、ウレア結合を生成することが可能なイソシアネート基等を有するポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーは、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂と、ポリイソシアネートの反応生成物等が挙げられる。
【0102】
ポリオールは、目的に応じて適宜選択することができ、ジオール、三価以上のアルコール、ジオールと三価以上のアルコールの混合物等を用いることができるが、ジオール又はジオールと少量の三価以上のアルコールの混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。なお、アルキレングリコールの炭素数は、2〜12であることが好ましい。これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0103】
三価以上のアルコールとしては、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。三価以上の脂肪族アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。三価以上のポリフェノール類の具体例としては、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物の具体例としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
ジオールと三価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する三価以上のアルコールの質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
【0104】
ポリカルボン酸は、目的に応じて適宜選択することができ、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等を用いることができるが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸の混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
ジカルボン酸の具体例としては、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。二価のアルカン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。二価のアルケン酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、具体的には、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜20であることが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜20の二価のアルケン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
三価以上のカルボン酸としては、三価以上の芳香族カルボン酸等を用いることができる。三価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、9〜20であることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。 ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
【0105】
低級アルキルエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸を混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比は、0.01〜10%であることが好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
ポリオールとポリカルボン酸を重縮合させる際の混合比は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比は、通常、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0106】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。この含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
ポリイソシアネートは、目的に応じて適宜選択することができるが、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプローラクタム等でブロックしたもの等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテル等が挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアヌレート類の具体例としては、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、ポリエステル樹脂の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、通常、1〜5であることが好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3が特に好ましい。当量比が5を超えると、低温定着性が低下することがあり、1未満であると、耐オフセット性が低下することがある。
【0107】
イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。この含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0108】
ポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数は、1以上であることが好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい。この平均数が、1未満であると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
油相における前記ジオール成分中にビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を50モル%以上含有し、特定の水酸基価と酸価を有するポリエステル樹脂に対するイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比は、5/95〜25/75であることが好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。質量比が、5/95未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、25/75を超えると、低温定着性や画像の光沢性が低下することがある。
【0109】
したがって、トナーに含有される接着性基材の具体例としては次のものが挙げられる。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸、トリメリット酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをアミノ基をケトン類でブロックしたケチミン化合物でウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物(ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物混合比率が50モル%以上)及びテレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸の重縮合物との混合物等である。
【0110】
本実施形態にかかる現像剤中のトナーは、上記母体粒子に対し、トナーに流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤を外添して用いられる。外添剤としては、PMMAなどの有機微粒子や無機粒子を目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
無機粒子として具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0111】
無機粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、無機粒子のBET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。
【0112】
トナー中の無機粒子の含有量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.01〜5.0質量%がより好ましい。これら無機粒子は流動性やブロッキング性の向上や、耐保存性や耐水性の観点から表面処理をして用いられる。表面処理の具体例としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0113】
次にトナーの製造方法の一例として、接着性基材を生成しながら、トナー母粒子を形成する方法を以下に示す。なお、本実施形態におけるトナーの製造方法としては、上述した方法の他に、重合法等も含めてさまざまな方法が可能である。
重合法としては懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などが可能であり、重合法とは異なるが溶解懸濁法、ポリマー懸濁法等の他、伸長反応法等が使用可能である。
上述した接着基材を形成しながらトナー母粒子を形成する方法においては、水系媒体相の調製、トナー材料を含有する油相の調製、トナー材料の乳化又は分散、接着性基材の生成、溶媒の除去、活性水素基に対する反応性を有する重合体の合成、活性水素基を有する化合物の合成等を行う。
【0114】
水系媒体の調製は、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、0.5〜10質量%が好ましい。
トナー材料を含有する油相の調製は、溶媒中に、活性水素基を有する化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤、帯電制御剤、前記ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解又は分散させることにより行うことができる。
なお、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、ポリエステル樹脂以外の成分は、樹脂粒子を水系媒体に分散させる際に水系媒体中に添加混合してもよいし、トナー材料を含有する油相を水系媒体に添加する際に、水系媒体に添加してもよい。
【0115】
トナー材料の乳化又は分散は、トナー材料を含有する油相を、水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、トナー材料を乳化又は分散させる際に、活性水素基を有する化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、接着性基材が生成する。
【0116】
ウレア変性ポリエステル系樹脂等の接着性基材は、例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基に対する反応性を有する重合体を含有する油相を、アミン類等の活性水素基を含有する化合物と共に、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を、予め活性水素基を有する化合物を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する油相を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、活性水素基を有する化合物を添加し、水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよい。
なお、粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的にウレア変性ポリエステル樹脂が形成され、トナー中にウレア変性ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
【0117】
接着性基材を生成させるための反応条件は、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体と活性水素基を有する化合物の組み合わせに応じて適宜選択することができる。反応時間は、10分間〜40時間であることが好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。反応温度は、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。
【0118】
水系媒体中において、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、水系媒体相中に、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤、帯電制御剤、前記ポリエステル樹脂等のトナー材料を溶媒に溶解又は分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0119】
分散は、公知の分散機等を用いて行うことができ、分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられるが、分散体の粒子径を2〜20μmに制御することができることから、高速せん断式分散機が好ましい。
【0120】
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1000〜30000rpmであることが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は、バッチ方式の場合、0.1〜5分であることが好ましく、分散温度は、加圧下において、0〜150℃であることが好ましく、40〜98℃がより好ましい。なお、分散温度は、高温である方が一般に分散が容易である。
【0121】
トナー材料を乳化又は分散させる際の、水系媒体の使用量は、トナー材料100質量部に対して、50〜2000質量部であることが好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。この使用量が、50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母粒子が得られないことがあり、2000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
トナー材料を含有する油相を乳化又は分散する工程においては、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にする共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0122】
分散剤は、目的に応じて適宜選択することができ、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられるが、界面活性剤が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0123】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。 陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に用いられる。フルオロアルキル基を有する陰イオン界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0124】
フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製)、フローラドFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェント100、150(以上、ネオス社製)等が挙げられる。
【0125】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製);フローラドFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等を用いることが好ましい。
【0126】
非イオン界面活性剤としては、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0127】
難水溶性の無機化合物分散剤の具体例としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、カルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニル、アミドモノマー、酸塩化物のモノマー、窒素原子又はその複素環を有するモノマー等を重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマー、ポリオキシエチレン系樹脂、セルロース類等が挙げられる。なお、上記のモノマーを重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマーは、ビニルアルコール由来の構成単位を有するものも含む。
【0128】
カルボキシル基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。ビニルエーテルの具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
【0129】
カルボン酸ビニルの具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミドモノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。酸塩化物のモノマーの具体例としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等が挙げられる。
【0130】
窒素原子又はその複素環を有するモノマーの具体例としては、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系樹脂の具体例としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸フェニル、ポリオキシエチレンペラルゴン酸フェニル等が挙げられる。セルロース類の具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0131】
分散剤の具体例としては、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散剤として、リン酸カルシウムを用いた場合は、塩酸等でカルシウム塩を溶解させて、水洗する方法、酵素で分解する方法等を用いて、リン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0132】
接着性基材を生成させる際の伸長反応及び/又は架橋反応には、触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等が挙げられる。
【0133】
乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。 有機溶媒が除去されると、トナー母粒子が形成される。
トナー母粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、さらに分級等を行うことができる。
分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0134】
得られたトナー母粒子は、離型剤、帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。 機械的衝撃力を印加する方法としては、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0135】
本実施形態での現像剤中のトナーは、表面が平滑であるため、転写性、帯電性等の諸特性に優れ、高品質な画像を形成することができる。また、本発明のトナーが、活性水素基を有する化合物と、活性水素基に対する反応性を有する重合体を水系媒体中で反応させることにより得られる接着性基材を含有すると、転写性、定着性等の諸特性にさらに優れる。このため、トナーは、各種分野において使用することができ、電子写真法による画像形成に、好適に使用することができる。
本実施形態にかかる現像剤に含まれているトナーの体積平均粒子径は、3〜8μmであることが好ましく、4〜7μmがより好ましい。体積平均粒子径が3μm未満であると、二成分現像剤では、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナー融着が発生することがある。体積平均粒子径が8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0136】
トナーの個数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比は、1.00〜1.25であることが好ましく、1.05〜1.25がより好ましい。これにより、二成分現像剤では、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、一成分現像剤では、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着を抑制し、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。この比が1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0137】
体積平均粒子径及び個数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)を用いて、以下のようにして測定することができる。まず、約1質量%塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液100〜150ml中に、分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤を0.1〜5ml添加する。次に、測定試料を約2〜20mg添加する。試料が懸濁した電解質水溶液に、超音波分散機を用いて約1〜3分間分散処理を行った後、100μmのアパーチャーを用いて、トナーの体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒子径及び個数平均粒子径を求めることができる。
【0138】
本実施形態にかかる現像剤中のトナーは、二成分現像剤用トナーであり、、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が必要となる。
このためキャリアは、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。芯材の材料は、公知のものの中から適宜選択することができ、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム系材料、マンガン−マグネシウム系材料等が挙げられる。 芯材の体積平均粒子径は、10〜150μmであることが好ましく、40〜100μmがより好ましい。
体積平均粒子径が10μm未満であると、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることがある。
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、90〜98質量%であることが好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【0139】
次に、上述した特性を有したトナーに関する実施例を挙げる。
<樹脂合成例>
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例1)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸289部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、7時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R1は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.8℃、1/2軟化温度89.5℃、酸価が19.8mgKOH/g、であった。
【0140】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例2)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物77部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物74部、テレフタル酸144部イソフタル酸144部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が42.2℃、1/2軟化温度88.3℃、酸価が18.5mgKOH/g、であった。
【0141】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例3)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物57部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物94部、テレフタル酸144部イソフタル酸144部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で8時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、7時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R3は、ガラス転移温度の2ndランの値が46.3℃、1/2軟化温度91.2℃、酸価が20.3mgKOH/g、であった。
【0142】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例4)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物57部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物94部、テレフタル酸289部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、10時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R4は、ガラス転移温度の2ndランの値が43.9℃、1/2軟化温度98.4℃、酸価が17.4mgKOH/g、であった。
【0143】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例5)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物87部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物64部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、5時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.2℃、1/2軟化温度83.1℃、酸価が21.3mgKOH/g、であった。
【0144】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例6)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、10時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.6℃、1/2軟化温度91.4℃、酸価が4.7mgKOH/g、であった。
【0145】
(非晶性ポリエステル樹脂の合成例7)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物67部、ビスフェノールAのプロピオンオキシド3モル付加物84部、テレフタル酸120部イソフタル酸169重量部及びジブチルスズオキシド2部を投入し、常圧下、230℃で6時間反応させた。次に、10〜15mmHgの減圧下、15時間反応させて、ポリエステル樹脂を合成した。得られたポリエステル樹脂R2は、ガラス転移温度の2ndランの値が44.6℃、1/2軟化温度82.482.4℃、酸価が42.5mgKOH/g、であった。
【0146】
(合成例8)
<イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の合成>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10mmHg〜15mmHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,500、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が51であった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体)を合成した。
得られたイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂の遊離イソシアネート含有量は、1.53質量%であった。
【0147】
(合成例9)
<ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)の合成>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物のアミン価は418であった。
【0148】
(合成例10)
<結晶性ポリエステル樹脂の合成>
アジピン酸152重量部1.6−ヘキサンジオール170重量部にハイドロキノンを添加し、250℃で縮重合して、Mw=15000、Mn=4000の結晶性ポリエステルを合成した。
【0149】
(トナー硬度測定)
トナー硬度は、マイクロビッカース硬度計(DUH−211S 島津製作所製)を用いて測定できる。
【0150】
測定条件
最大試験力 :1mN、
負荷速度 :0.0150mN/sec、
最大負荷保持時間:5sとし、HV値を読み取りトナー硬度とした。
【0151】
(トナーおよび樹脂のガラス転移温度)
本発明におけるガラス転移点は、示差走査型熱量測定(DSC)において、下記条件で昇温と降温を繰り返し、2度目の昇温(2ndラン)の時のそのDSC曲線の元のベースラインと変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)での接線の交点から決定される。 また測定は島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
【0152】
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
【0153】
1stラン
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温条件
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
【0154】
2ndラン
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
【0155】
(トナーの1/2軟化温度)
1/2軟化温度はフローテスター(CFT−500 島津製作所製)を用いて測定される。
フローテスターのシリンダ内部にトナー1gを計量したものを投入し、70℃で300秒保持した後測定を開始する。シリンダのピストンが稼動領域の半分、つまり1/2移動した際の温度を読み取り1/2軟化温度は決定される。
【0156】
なお、フローテスターの条件は以下の通りである。
測定条件;
開始温度70℃
荷重 30kgf
ダイ径および長さ 1mm×1mm
昇温速度 6℃/min
【0157】
(樹脂およびワックス酸価の測定方法)
JIS K0070−1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行う。
試料調整:試料0.5gをトルエン120mlに添加して室温(23℃)で約10時間撹拌して溶解する。更にエタノール30mlを添加して試料溶液とする。
測定は上記記載の装置にて計算することが出来るが、具体的には次のように計算する。
あらかじめ標定されたN/10苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料質量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
【0158】
(実施例1)
ビーカー内に、ポリエステルプレポリマー10部、80部の非晶性ポリエステル樹脂、10重量部の結晶性ポリエステル及び酢酸エチル130部を入れ、攪拌して溶解させた。
次に、融点が72.1℃、酸価が10.2mgKOH/g、針入度3のエステルワックス6部及びカーボンブラック7部を加えて、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスクの周速度6m/秒で、粒径0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした。さらに、ケチミン化合物2.7部を加えて溶解させ、トナー材料液を調製した。
容器に水系媒体150部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて、12000rpmで攪拌しながら、トナー材料液100部を添加し、10分間混合して、乳化スラリーを調製した。
攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃で12時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。
分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10重量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。
得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。
【0159】
さらに、得られた濾過ケーキに10重量%塩酸20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを、循風乾燥機を用いて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100部に対し、外添剤としての疎水性シリカ1.0部と、表1に示す酸化チタンとをヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、トナー1を作製した。
【0160】
(実施例2)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー12部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを8重量部に変えた以外は同様にしてトナー2を作製した。
【0161】
(実施例3)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル2に変えた以外は同様にしてトナー3を作製した。
【0162】
(実施例4)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル3に変えた以外は同様にしてトナー4を作製した。
【0163】
(実施例5)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル4に変えた以外は同様にしてトナー5を作製した。
【0164】
(実施例6)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル5に変えた以外は同様にしてトナー6を作製した。
【0165】
(実施例7)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル6に変えた以外は同様にしてトナー7を作製した。
【0166】
(実施例8)
実施例1の非晶性ポリエステル1を非晶性ポリエステル7に変えた以外は同様にしてトナー8を作製した。
【0167】
(実施例9)
実施例1の離型剤を融点53.5、酸価9.4mg/KOH、針入度4のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー9を作製した。
【0168】
(実施例10)
実施例1の離型剤を融点76.8、酸価11.5mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー9を作製した。
【0169】
(実施例11)
実施例1の離型剤の添加量を2.5重量部に変える以外は同様にしてトナー11を作製した。
【0170】
(実施例12)
実施例1の離型剤の添加量を13.0重量部に変える以外は同様にしてトナー12を作製した。
【0171】
(実施例13)
実施例1の離型剤を融点73.8、酸価2.7mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー13を作製した。
【0172】
(実施例14)
実施例1の離型剤を融点69.5、酸価25.5mg/KOH、針入度4のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー14を作製した。
【0173】
(実施例15)
実施例1の離型剤を融点68.5、酸価14.5mg/KOH、針入度3のエステルワックスに変える以外は同様にしてトナー15を作製した。
【0174】
(比較例1)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー15部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを5重量部に変えた以外は同様にして比較トナー1を作製した。
【0175】
(比較例2)
実施例1の樹脂添加量をプレポリマー8部、非晶性ポリエステル80部、結晶性ポリエステルを13重量部に変えた以外は同様にしてトナー2を作製した。
なお、上記トナーは全て体積平均粒子径5.2μm、個数換算における3.17μm以下の割合が5%以下になるように調整した。粒子径はマルチサイザーIII(コールター社製)を用いて測定した。
トナーの各特性を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
(トナー評価結果)
(地汚れ長期ランニング試験)
上記で製造したトナーと粒径50μmのフェライトキャリアとをトナー濃度8%になるように添加し、V型混合機にて1時間撹拌しての評価用現像剤を作製した。
本評価に用いる現像装置は、現像ローラが現像剤を担持する円筒状の現像スリーブと現像スリーブに内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラからなる。
現像スリーブはアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
現像スリーブブラスト処理し、偶数個の磁石を等間隔に配置し、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
磁石ローラと現像スリーブとの駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブの表面に担持される現像剤と磁石ローラ側の磁石との対向回数が多くなることを条件として設定した。
【0178】
本現像装置をRICOH C901(リコー社製)を改造したものに搭載し、35℃85%環境にて原稿濃度5%の100000枚の耐刷試験をおこなった。形成された100000枚目の非画像部の画像濃度をマクベス社製の反射濃度計(小数点以下3桁測定できるように改造)により測定した。未使用紙と定着画像の白紙部の濃度差を測定し、濃度差が0.01未満の場合を「◎」、0.01以上0.02未満の場合は「○」、0.02以上0.03未満の場合は「△」、0.03以上の場合を「×」として判断した。
また、本評価に用いた現像剤の100000枚目時点でのトナーの微粉として個数換算における3.17μm以下の割合を測定し、6%未満を「◎」、6%以上8%未満を「○」、8%以上12%未満を「△」、12%以上を「×」とした。
【0179】
(定着性評価)
−低温定着性評価−
上記で得られた二成分現像剤を株式会社リコー社製複写機(Imagio Neo C355)で付着量4.0g/m2、未定着画像を作成し、次に株式会社リコー社製複写機(Imagio Neo C355)の定着装置(オイルレス方式)を改造したローラ温度を自由に設定できる外部定着機を用い、紙送りを120mm/secに固定し、100℃〜140℃まで温度を5℃ずつ変更した。
この時、十分に溶融しきれずに未画像部に画像が再転写するオフセット現象について定着ローラ上および紙上を観察し、画像が再転写しない温度を低温側の非オフセット温度とした。
結果において、非オフセットの温度が110℃未満ものを「◎」、110℃以上120℃未満を「○」、120℃以上130℃未満を「△」、130℃以上を「×」とした。
【0180】
−高温オフセット性評価−
上記同様に未定着画像を作製し、同条件で外部定着機を用い170℃から5℃ずつ温度を上昇した。この時、十分に溶融しきれずに未画像部に画像が再転写するオフセット現象について定着ローラ上および紙上を観察し、画像が再転写しない温度を高温側の非オフセット温度とした。
結果において、非オフセットの温度が200℃以上を「◎」、185℃以上195℃未満を「○」、175℃以上185℃未満を「△」、170℃以下を「×」とした。
【0181】
表2に評価結果を示す。
【0182】
【表2】
【0183】
上記評価結果によると、比較例1はトナー硬度が定着性は良好であるが、微粉が発生しやすく耐久性の悪いトナーとなった。また比較例2はトナー硬度が高いため高温高湿下での耐久性には優れるが、低温定着性が悪い結果となった
一方、実施例1から15は、本発明の範囲内であるため、その程度には差はあるがそれぞれ良好な結果が得られた。
【0184】
以上のように、本実施形態においては、現像剤に含まれるトナーを構成する結着樹脂の主成分として非晶質、結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、その硬度を規定することにより、衝撃を受けた際の破砕をトナー自身の柔軟性により防止できることによって微粉化することがない。これにより、現像による画像再現性、つまり、微粉の固着による現像剤担持量の不均一をなくして画像濃度ムラの発生を防止でき、しかも耐久性に優れ、高温高湿下においても異常画像の発生を抑えることができる。
【0185】
次に上述したトナーを含む現像剤を現像装置に適用した場合の磁気穂を対象とした形成条件について説明すると次の通りである。
本実施形態に用いられる現像装置4では、現像ローラ5に用いられる現像スリーブ81の内部、つまり現像ローラ5の内部に配置されて、現像ローラ5の回転中心から偏心した回転中心を有する磁石ローラ82が、図3(A)に示すように、現像スリーブ81における回転方向(符号Iで示す方向)と逆方向(符号Jで示す方向)に回転するようになっている。
このため、現像スリーブ81の周面に形成された磁気穂(磁気ブラシ)は、図3(B)に示すように、現像スリーブ81の周面で回転しながら移動し、いわゆる、現像スリーブ81上を転動する。このように転動しながら磁気穂は現像スリーブ81の周面上で搬送されることになる。
【0186】
ところで、上述したように、磁石ローラ82の回転により現像スリーブ81上を転動しながら搬送される磁気穂を構成する現像剤は、穂立ちしている磁気穂先端粒子の速度が現像スリーブ81の速度と磁石ローラ82の回転による磁気穂の回転速度との和に相当し、現像スリーブ81のみを回転させる場合と違って、磁気穂の回転する運動エネルギーは大きくなる。
このような状態のトナーが転動時に倒れると、現像ローラ5の周面からの衝撃を受けて割れ、いわゆる破砕されて微粉(小さなトナー)となることがある。
【0187】
現像剤が現像ローラ5上を搬送されるとき、現像ローラ5を構成する現像スリーブ81と現像剤との接触によってトナーが現像スリーブ81の表面に付着するが、微粉トナーは粒径が小さいため現像スリーブ81との付着力が大きくなり、一度付着すると離れにくい。
上述した現像スリーブおよび磁石ローラの双方が回転する方式では、現像スリーブ上で磁気穂が回転するため、現像スリーブの周速に比べて現像剤の速度が速いという特徴がある。そのため現像スリーブ表面にトナーが付着していると、付着したトナーと現像剤との間で剪断力が働き、トナーがスリーブ表面に強く擦り付けられて固着してしまうことがある。
【0188】
このような現象への対応として、本実施形態では、前述した特性を有することで柔軟性を有し、衝撃を受けた際に自らの弾性変形によって衝撃を吸収することにより割れるのを防止して微粉化するのを避けるようになっている。
【0189】
以上のようなトナーを用いた現像装置において稼働後での現像剤に含まれるトナーの粒径変化を実験した結果が図4に示されている。
図4は、現像装置を20時間稼働した後の粒径分布を示す図であり、図4(A)は、通常のトナー、つまり、本実施形態の構成を備えていないトナーを対象としたもの、図4(B)は本実施形態でのものである。
【0190】
図4に示す結果から明らかなように、本実施形態にかかるトナーを含む現像剤を用いた場合には、粒径変化を生じたトナーの個数が少ないことがわかる。
【0191】
また、図5は、初期に対する微粉トナーの増加量に関する推移を実験した結果であり、この結果から明らかなように、通常のトナーを用いた比較例ではトナーの粒径が小さくなっているがわかる。しかも、比較例では、粒径が小さくなって微粉化したトナーが現像ローラに固着していることが確認された。
これに対し、本実施形態にかかる軟らかいトナーを用いた場合、現像ローラにトナー固着は見られなかった。トナーの粒径分布も初期と比較してほとんど変化がなく、微粉トナーの増加は比較例に比べて少なくなっていた。
なお、本実施例中での微粉トナーとは平均粒径が3.17μm以下のトナーのことであり、個数平均で微粉トナーの割合が初期トナーに比べて約5%増加すると固着による画像濃度ムラが現れることが確認されている。
【0192】
次に本発明にかかる別の実施形態について説明する。
以下に説明する実施形態では、上述したように、トナーの割れを防止してトナーの微粉化による現像スリーブへの固着を防止する点に関し、さらに効率よく微粉化を抑制してトナーの固着を抑制する点に特徴を持つ。
【0193】
図6は、第2の実施形態に関する構成を示す図であり、同図に示す構成では、現像ローラ5と感光体1とで構成される空間内での現像剤密度を適切な範囲に管理することにより、磁気穂の回転が円滑に行われるようにして微粉トナーの発生を抑制するようにした点を特徴としている。
【0194】
図6において、現像ローラ5上の単位面積あたりの現像剤の搬送量をM(mg/cm2)、現像剤の嵩密度をρ(mg/cm3)、感光体1と現像ローラ5とのギャップをP(mm)としたとき、現像領域で現像剤の密度はM/ρ/Pとなる。
この式で計算される現像剤密度が高くなるほど、磁気穂同士の間隔が狭く、磁気穂が回転するときの空間が少なくなり他の磁気穂やスリーブ、感光体と接触する確率が高くなり微粉化しやすい。
【0195】
特に60%を超えると、回転するたびに他の磁気穂と接触し微粉化しやすい。また、軟らかい、いわゆる、柔軟性を有するトナーのため密度が高い状態で現像ローラ上を搬送されてしまうことや、放置時間が長いと現像剤やトナー同士が凝集することがある。
一方、60%以下であれば、磁気穂の回転は円滑に行われるためトナーの微粉化が抑制でき、現像領域で現像剤やトナーが凝集体を作ることもない。
【0196】
そこで現像領域での現像剤密度が60%以下になるように、ドクターブレードと現像ローラのギャップ、感光体と現像ローラのギャップを設定した。なお、現像剤の嵩密度はJIS嵩密度計を用いて測定した。
【0197】
本実施形態では、現像領域での現像剤密度は50%〜60%の範囲で使用した。 この結果、上述した条件を設定することにより、トナーの微粉化が抑制でき、現像剤やトナーの凝集体の発生もなかった。
【0198】
本実施形態においては、現像領域での剤密度をさげることで、剤の動きを円滑化してトナーの凝集が起こりにくい状態とすることができる。また、磁気穂同士の間隔が十分あるため、他の磁気穂と接触しにくく、接触頻度が下がることでトナーが微粉化しにくくなり、微粉化トナーの固着を抑制することが可能となる。
【0199】
次に第3の実施形態について説明する。
本実施形態では、スリーブと磁石ローラの偏心量Tを調整し、ドクターブレードに対向する位置での法線方向磁束密度の最大値が20mT以下となるようにしてトナーの固着を防止する点に特徴を持つ。
【0200】
図7は磁石ローラ82を1回転させながら、現像ローラ5上のドクターブレード12が設置されている位置の磁束密度をガウスメーターで測定した結果である。
現像ローラ5と磁石ローラ82との双方を回転させる現像装置では、磁石ローラが回転するため、図7に示すように、現像スリーブ81上の磁束密度は磁石の通過する間隔で極性、大きさが変動する。
【0201】
ドクターブレード12に対向する位置での法線方向磁束密度が高いと、現像剤がドクタギャップ通過時に剪断力によって強いストレスを受ける。特にトナーが軟らかいとストレスを受けてドクターブレード12や現像スリーブ81に固着しやすい。しかし、法線方向磁束密度を20mT以下にすることで、現像スリーブ81に現像剤が強く保持されないため固着を防止でき軟らかいトナーであっても使用可能となる。
本実施形態では、この点に立脚して、法線方向磁束密度の最大値が20mT以下となるように磁石ローラの軸を固定している。
【0202】
次に第4の実施形態について説明する。
本実施形態に至る背景は次の通りである。
通常の現像装置ではドクターブレードの位置通過時の剪断力で現像剤の帯電量を立ち上げている。ところが、第3の実施形態において説明したように、ドクターブレードでの法線方向磁束密度を低下させると、現像剤に対して十分な帯電付与が行えない。
特に、現像ローラ5および磁石ローラ82の両回転方式の現像装置では、ドクターブレード12だけでなく、現像スリーブ81上を磁気穂が回転する際の摩擦帯電によってトナーに帯電を付与することができる。このため、ドクターブレード12で帯電を立ち上げる必要がない。
【0203】
図8は現像剤が現像ローラに供給されてからの現像ローラ上での磁気穂の回転数と帯電量の関係を表すグラフである。
現像剤が現像ローラに供給された直後の帯電量は−24μC/gと低いが、磁気穂が回転すること摩擦帯電が促進され30回転以上すると帯電量は−30μC/g以上となり、十分な帯電量を得ることができる。さらに50回以上であれば帯電量はほぼ飽和し常に一定の帯電量で現像動作を行うことができる。
【0204】
本実施形態はこのような考察に基づき、現像剤が現像ローラに供給されてから現像に使用されるまでに磁気穂が30回以上回転するように磁石ローラの回転数を設定した。現像剤が現像剤担持体に供給されてから現像に使用されるまでとは、図9の矢印で示す領域を搬送されている間のことである。
現像ローラ上での磁気穂の回転数は次の式で定義する。
磁気穂回転数=現像ローラ上の搬送距離/スリーブの速度×磁石ローラの回転速度×磁石数
【0205】
本実施形態においては、上述した構成を備えることにより、トナーに過度なストレスを与えることなく帯電量を得られるため、軟らかいトナーであっても安定した作像動作が行える。特に、ドクターブレードでの帯電付与がなくなる反面、現像ローラ上で搬送される磁気穂の交番を利用して摩擦帯電を行うことができるので現像領域に達した際には十分な帯電量を得ることが可能となる。
【0206】
次に第5の実施形態について説明する。
本実施形態に至る背景は次の通りである。
現像スリーブ81および磁石ローラ82の双方を回転させる方式の現像装置においては、現像スリーブ81と磁石ローラ82が逆方向に回転することで現像スリーブ81上に穂立ちした磁気穂が回転しながら搬送されるため、現像剤の速度がスリーブの速度よりも速い。
このため、現像剤と現像スリーブ81との間に速度差が生じ、現像スリーブ81の表面に付着したトナーが現像スリーブ81上を搬送される現像剤によって現像スリーブ81に擦り付けられると、一部のトナーが固着してしまう。
そこで、現像スリーブ81へのトナーの固着を防止するには現像スリーブ81との間に発生する磁気穂への剪断力を小さくする必要がある。
【0207】
本実施形態では、以上の点に鑑み、現像剤と現像スリーブ81との速度差を1.2以下に設定している。
現像剤搬送距離は、現像スリーブ81の移動距離に加えて磁気穂の転動によって進む距離の和であるため、搬送速度の調整は磁石ローラの回転数の増減で磁気穂の回転数を増減させ適切な範囲に設定する。
【0208】
なお、この場合の現像剤の搬送速度は図10に示す方法で測定可能である。
ドクターブレード12の上流側から現像剤を供給し、現像スリーブ81と磁石ローラ82を回転させる。現像ローラ5の下側で剤離れして回収される現像剤の量を時間に対して測定する。
測定された量を現像ローラの長手方向の現像剤搬送量(M×現像ローラ長さ)で割ることで現像剤速度を計算できる。
上記のように、現像剤と現像スリーブ81の速度差を小さくすることで現像剤と現像スリーブ81との剪断力が小さくなり、現像スリーブ81に付着したトナーが固着しにくくなる。
以上の実施形態において磁石ローラ82の回転数は、第4,第5の実施形態の両方を満たす範囲に設定することが好ましい。
具体的には、磁石ローラ82の回転数が1350rpmに設定されている。
つまり、現像ローラ5上の搬送距離が40mmの場合に、現像スリーブ81の速度が600mm/s、磁石ローラの磁石の個数が20個、1350rpmの条件では、磁気穂の回転は30回となる。
また、この条件において現像剤の速度は715mm/sであり、現像剤と現像スリーブ81の速度比は1.19である。
【0209】
本実施形態においては、現像スリーブ81と磁石ローラ82との間の速度差が原因する磁気穂への剪断力の発生を抑制することにより微粉化されたトナーの発生を少なくして微粉トナーが固着するのを防止することができる。これにより、微粉トナーの固着が原因する現像剤の担持量不均一な状態を防止して画像濃度ムラの発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0210】
1 感光体ドラム
4 現像装置
81 現像スリーブ
82 磁石ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0211】
【特許文献1】特許第3127594号公報
【特許文献2】特開2007−101797号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、
該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これら主成分を含むトナーの硬度として、微小硬度計において硬度2〜20N/mm2を設定されていることを特徴とする現像剤。
【請求項2】
前記トナーのガラス転移温度が、30℃〜50℃であることを特徴とする請求項1記載の現像剤。
【請求項3】
前記トナーの軟化温度が、95℃〜115℃であることを特徴とする請求項1または2記載の現像剤。
【請求項4】
前記トナーに含まれる離型剤の融点が、55℃〜75℃であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項5】
前記トナーに含まれる離型剤が、3〜12重量部含まれることを特徴とする請求項1乃至4のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項6】
前記トナーに含まれる離型剤の酸価が、3〜20mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項7】
前記トナーに含まれる離型剤の針入度が5以下であることを特徴とする請求項1乃至6のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項8】
前記トナーに含まれる非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5から40mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至7のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項9】
像担持体に形成された静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を接触させて可視像処理する現像装置であって、
前記現像剤として請求項1乃至8のうちの一つに記載の現像剤を用いることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
像担持体に形成された静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を接触させて可視像処理する際に用いる現像剤として請求項1乃至8のうちの一つに記載の現像剤を用いる現像装置であって、
前記二成分系現像剤は、前記像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成された磁気穂を回転させながら前記静電潜像に接触させるに際に、現像剤担持体上での密度をM(mg/cm2)とし、嵩密度をρ(mg/cm3)とし、像担持体と現像剤担持体とのギャップをP(mm)としたとき、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域で現像剤の密度M/ρ/Pを60%以下に設定されることを特徴とする現像装置。
【請求項11】
前記現像剤担持体がドクターブレードと対向する位置での法線方向磁束密度の最大値を20mT以下になるように前記磁石ローラの偏心量が設定されていることを特徴とする請求項10記載の現像装置。
【請求項12】
前記現像剤が前記現像剤担持体に供給されてから現像に使用されるまでに現像剤担持体上で該現像剤の磁気穂が回転する交番回数が30回以上となるように、漸増剤担持体の速度、磁石の回転速度および磁石数が設定されていることを特徴とする請求項9乃至11のうちの一つに記載の現像装置。
【請求項13】
現像剤担持体上の現像剤搬送速度と現像剤担持体の速度の差が1.2以下とされていることを特徴とする請求項9乃至12のうちの一つに記載の現像装置。
【請求項14】
像担持体に形成された静電潜像をトナーとキャリアを含む現像剤により可視像処理する現像装置として請求項9乃至13のうちの一つに記載の現像措置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
露光により像担持体に形成された静電潜像を可視像処理するために用いられるトナーとキャリアとを含み、現像時には、像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成される穂立ち部に含まれて前記像担持体に向けて搬送される現像剤であって、
該現像剤は、少なくとも、トナーを構成する結着樹脂の主成分として、非晶質および結晶質のポリエステル樹脂、着色剤および離型剤を含み、これら主成分を含むトナーの硬度として、微小硬度計において硬度2〜20N/mm2を設定されていることを特徴とする現像剤。
【請求項2】
前記トナーのガラス転移温度が、30℃〜50℃であることを特徴とする請求項1記載の現像剤。
【請求項3】
前記トナーの軟化温度が、95℃〜115℃であることを特徴とする請求項1または2記載の現像剤。
【請求項4】
前記トナーに含まれる離型剤の融点が、55℃〜75℃であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項5】
前記トナーに含まれる離型剤が、3〜12重量部含まれることを特徴とする請求項1乃至4のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項6】
前記トナーに含まれる離型剤の酸価が、3〜20mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項7】
前記トナーに含まれる離型剤の針入度が5以下であることを特徴とする請求項1乃至6のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項8】
前記トナーに含まれる非晶質ポリエステル樹脂の酸価が5から40mgKOH/gであることを特徴とする請求項1乃至7のうちの一つに記載の現像剤。
【請求項9】
像担持体に形成された静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を接触させて可視像処理する現像装置であって、
前記現像剤として請求項1乃至8のうちの一つに記載の現像剤を用いることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
像担持体に形成された静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を接触させて可視像処理する際に用いる現像剤として請求項1乃至8のうちの一つに記載の現像剤を用いる現像装置であって、
前記二成分系現像剤は、前記像担持体と対向する回転可能な現像剤担持体の表面に担持され、該現像剤担持体の内部で前記像担持体に接近する向きに自らの回転中心を偏心させた複数の回転可能な磁石により前記現像剤担持体表面に形成された磁気穂を回転させながら前記静電潜像に接触させるに際に、現像剤担持体上での密度をM(mg/cm2)とし、嵩密度をρ(mg/cm3)とし、像担持体と現像剤担持体とのギャップをP(mm)としたとき、像担持体と現像剤担持体とが対向する現像領域で現像剤の密度M/ρ/Pを60%以下に設定されることを特徴とする現像装置。
【請求項11】
前記現像剤担持体がドクターブレードと対向する位置での法線方向磁束密度の最大値を20mT以下になるように前記磁石ローラの偏心量が設定されていることを特徴とする請求項10記載の現像装置。
【請求項12】
前記現像剤が前記現像剤担持体に供給されてから現像に使用されるまでに現像剤担持体上で該現像剤の磁気穂が回転する交番回数が30回以上となるように、漸増剤担持体の速度、磁石の回転速度および磁石数が設定されていることを特徴とする請求項9乃至11のうちの一つに記載の現像装置。
【請求項13】
現像剤担持体上の現像剤搬送速度と現像剤担持体の速度の差が1.2以下とされていることを特徴とする請求項9乃至12のうちの一つに記載の現像装置。
【請求項14】
像担持体に形成された静電潜像をトナーとキャリアを含む現像剤により可視像処理する現像装置として請求項9乃至13のうちの一つに記載の現像措置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−101254(P2013−101254A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245487(P2011−245487)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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