説明

現像剤収納容器

【課題】安定した開封性能と製造コストがより掛からない現像剤補給容器の提供。
【解決手段】現像剤収納部と、排出口と該排出口を封止するシール部材とを有し、前記シール部材は、前記排出口を密閉し、その一端を折り返して自由端とし、前記自由端はシール部材の引き出し方向と直交する方向を規制する規制部を通して引き出され、前記自由端を引くことで前記シール部材を引き剥がして前記排出口が開封するよう構成され、前記シール部材は、自由端の引き出し方向に向かって塑性変形の引き伸ばしが可能であり、引き伸ばしによって、引き延ばし方向と直交する前記シール部材の幅が減少することが可能であって、前記シール部材は前記排出口を密閉している時のシール部材引き出し方向と直交する方向の幅が、前記規制部の同方向の規制幅よりも広く前記排出口の周囲に固着され、引き伸ばされた時には規制幅と同等以下にまで狭くなって引き出されるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電式複写機、プリンタ等の画像形成装置の現像装置に現像剤(現像剤とは、磁性トナー、非磁性トナー等の一成分トナーやキャリア成分を含めた二成分系現像剤のことを言う)を供給するために用いられる現像剤収納容器(現像剤補給容器)又は現像カートリッジ及びプロセスカートリッジとそれらの製造方法に関し、特に現像剤補給容器の現像剤排出口を封止するための現像剤シール部材(ここでは、単に「シール部材」と言う)とその固着方法に関するものである。
【0002】
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置としては、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ等が含まれる。
【0003】
又、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。又は、プロセスカートリッジとは、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち少なくとも1つと電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。又は、プロセスカートリッジとは、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して電子写真画像形成装置本体に着脱可能とするものをいう。更に、本発明は、画像形成装置本体に着脱可能であり、少なくとも現像手段を有するカートリッジに適用することができる。
【背景技術】
【0004】
従来、静電式複写機、プリンタ等の画像形成装置には粉末の現像剤が使用され、現像剤の補給には現像剤補給容器が用いられているが、この現像剤の補給容器は一般に合成樹脂等で作られた円筒状若しくは直方体等の本体と、本体から粉末の現像剤を現像装置に補給するために開口している本体の開口部を封止するシール部材によって構成されている。特に、この現像剤補給容器に感光体ドラム、クリーナー、帯電器等を一体化させたプロセスカートリッジも作られている。
【0005】
これらのシール部材の固着方法としては、主に熱溶着による接着や、両面テープ等に代表される粘着材を用いた接着、予め粘着付与剤を処理して圧着にて接着する、等が一般的に採用されている。
【0006】
このようなシール部材を現像剤補給容器に熱溶着にて固着する場合、その固着手段及び方法として、その主たる一例としてヒートシール、もう1つの主たる例としてインパルスシールにて固着する手段及び方法がある。
【0007】
ここで、ヒートシールについて概要を述べると、予め電熱線等によって蓄熱されたシール治具を溶着対象(シール部材及び現像剤補給容器)に圧着してシール部材と現像剤補給容器を溶着する。シール治具の圧着面には、その形跡として溶着跡を残すための熱溶着パターンが形成されており、そのシール治具を一定の時間圧着させることによってシール部材を固着する。
【0008】
一方のインパルスシールについて概要を述べると、非溶着時のシール治具はほぼ常温状態であり、圧着時のみ通電することにより加熱昇温してシール部材を溶着し、通電が終了すると直ちに常温に戻る。そのシール治具は、母体となるヒーター取り付けブロックと、熱溶着パターン(溶着跡)を形成するヒーターリボンから構成されている。
【0009】
ヒーターリボンは、厚さ0.3mm程度のニッケル−クロム鋼、ステンレス等の板金であり、熱溶着パターンの形状と電極から導電するための取付板が一体となった形で形成されたものである。
【0010】
一般的にはヒーター取付ブロック、ヒーターリボン、共に導電性の金属が用いられるために、治具組立の際は絶縁性シートやカバーが介在・被覆される。この絶縁シートとして、主にテフロンクロス基材の保護テープ等が用いられている。
【0011】
シール部材としては、例えば一軸延伸発泡ポリプロピレン(以下、「1軸延伸発泡PP」と記す)にシーラント層をラミネートしたフィルム(ここでは、「カバーフィルム」と呼ぶ。図12の符号4)や、ポリエステル・延伸ナイロン・低密度ポリエチレンにシーラント層をラミネートしたフィルム(ここでは、「イージーピールフィルム」と呼ぶ。各図の符号1が相当する。)等が一般的に用いられ、シーラント層としてはエチレン=酢酸ビニル共重合体系のものが用いられている。
【0012】
或は、ポリエステルPETを基材としてナイロンやアルミ箔等の極薄い層厚(5〜50μm程度)のもの、及び接着面には同様に極薄い層厚の酢酸ビニル共重合系(EVA等)の接着層(5〜50μm程度)のシーラント材を積層した軟質の一枚式フィルム(総厚さ約100〜200μm程度のもの)が用いられる例もある。
【0013】
又、最近ではこれらのシール部材を直線的に、安定的に開封するための補助手段として、予め『ハーフカット』と呼ばれる(シール部材を貫通しない)切りこみ線を加工し、この切りこみ線に沿って開封されるシール部材も用いられている。
【0014】
更に、シール部材の方式としては、1枚のフィルムでシールし、使用開始時に前記フィルムのシール部を剥離して開封するイージーピール方式(図13、図14参照)と、前記フィルムを引き裂いて開封する方式(図16参照)もある。フィルムを引き裂く方式では、カバーフィルムとテアテープを一体化して、使用開始時にテアテープを引っ張り、カバーフィルムをテアテープで引き裂いて開封するテアテープ方式と呼ばれるもの(例えば、特許文献1参照)や、1枚の引き裂きシール部材を用いる方法(例えば、特許文献2〜6参照)等があり、何れも開封強度の低下や開口幅の制御が可能といった利点があるため、最近良く使用されている。
【0015】
以上に述べたようなシール部材を用いた現像剤補給容器やプロセスカートリッジの使用済品を再使用するためには、物流等で現像剤の洩れや飛散等がないように再びシール部材を固着する必要が生じる。先に述べたイージーピール方式においては、通常使用済(開封済)ならシール部材は無い状態なので、そのまま新しいシール部材を固着することが可能である、テアテープ方式のように現像剤を排出する開口部の大きさの規制をさせているものについては、補給容器に残されるシール部材の一部をすべて取り去ってから再シールを行うのが望ましく、一般的である。
【0016】
又、最近では予め薄手の開口窓枠部材にシール部材を固着したものをそのまま再シールに用いる場合も増加している。
【0017】
尚、その他のシール部材の先行例として抜粋して挙げると次の5つがある。その1つは、伸縮性のあるシール部材に開閉が可能なファスナー(チャック)を構成することにより、現像剤補給の際に起こり得る汚れ等を抑え、再シール可能といった内容のもの(例えば、特許文献7参照)である。もう1つは、伸縮性シートと非伸縮性シートを貼り合わせたシール部材で、両シート間に空気を入れて貼り合わせていない部分を膨らませることができる構成によって膨らんだ部分で確実にシール部分を密着させ、シール開封時は空気を抜いてから、シートを引き出すようにしている。更に、このシール部材を繰り返し再使用が可能なものにしている(例えば、特許文献8参照)。
【0018】
更に例を挙げると、伸縮性フィルムと非伸縮性ベースフィルムを張り合わせることにより、シール部材を現像剤容器から引き抜くと、シール部材が自ら渦巻き状にくるまって、フィルムに付着した現像剤で手等を汚さないようにする、といった例もある(例えば、特許文献9参照)。
【0019】
一方、伸縮性のあるシール部材を用いたその他の先行例として更に2つ挙げると、伸縮性のシール部材を、変形が可能な現像剤容器に備えた切刃がシール部材を切り開く構成のもの(例えば、特許文献10参照)や、伸縮性のシール部材を、現像剤容器に備えた針状突起で開封する構成(例えば、特許文献11)もある。
【0020】
以上により、使用済の現像剤補給容器やプロセスカートリッジ等に伸縮性のあるシール部材を用いる場合の先行例では、特に汚れ性の不具合についての対策が講じられており、更に対応するための新たな構成追加が必要となっている。
【0021】
【特許文献1】特許第2629945号公報
【特許文献2】特開昭59−013262号公報
【特許文献3】実開昭63−060164号公報
【特許文献4】特開平8−328369号公報
【特許文献5】特開平11−072999号公報
【特許文献6】特開平11−102105号公報
【特許文献7】特開平9−068859公報
【特許文献8】特開2003−021962号公報
【特許文献9】特開平4−133265公報
【特許文献10】特開平9−222795公報
【特許文献11】特公平4−166865公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は斯かる従来の技術に対し、別の不具合から対策を講じたもので、構成をより簡易なものにしたものである。
【0023】
最近の現像剤補給容器やプロセスカートリッジは、画像形成装置本体のコンパクト化や市場競争に伴って、年々より省スペース化や更なる小型化、延ては製造コストの削減が要求されている。これはシール部材やシールされる部品(現像剤補給容器のシールされる面の広さ、大きさ)及びその周囲(シール部材の引き出し口の部分として割り当てられるスペース等)にも同じことが要求されている。
【0024】
その具体例の1つとして、図1の略図に示すように、シール部材が固着可能な範囲E内における、方向Wxのシール部材の幅L1に対し、シール引き出し口の幅L2を小さくせざるを得ない場合も発生している。又、図9に示すようなシール部材1を引き裂いて開封するシール部材においては、その引き裂き幅L1よりもシール引き出し口の幅L2(図1参照)を小さくせざるを得ない場合も発生する。
【0025】
このような場合、対応としては次の1〜3が考えられる。
【0026】
1. シール部材の方向Wxの幅L1をシール引き出し口の幅L2に合わせる。
【0027】
2. 前述のテアテープ方式(図12参照)にすることにより、現像剤排出口の幅を規制することを前提として、方向Wxの幅L1をシール引き出し口の幅(図1参照)L2に合わせる。
【0028】
3. 前述のイージーピール方式(図10参照)やテアテープ方式(図9参照)等にとらわれず、軟体の薄いフィルムタイプのシール部材を無理やりに引き抜く構成とし、Tシール引き出し口でシール部材(方向Wxの幅)が窄められて多少のしわが寄ったりしても強引に引き抜けるようにする。
【0029】
以上のような対応を採った場合、以下、番号に対応して次のような不具合が新たに発生する。
【0030】
1. シール部材の方向Wxの幅L1を狭くしなければならないため、画像形成に必要な量の現像剤を、充分に補給するための排出口の幅が確保できない懸念が発生し、設計の自由度が狭くなる。
【0031】
2. 上記1と同じ懸念が発生する。と同時に、特にテアテープ方式を採用した場合、前述のカバーフィルムとテアテープの2つを組み合わせた形態(図9参照)を採用すると製造工程が少なくともイージーピール方式よりも増えて、材料費も増加する方向となる。
【0032】
尚、1枚式のシール部材でのテアテープ方式を採用した場合においても、再使用(再シール)する場合は、開封後(使用済)の現像剤補給容器に残ったシール部材の一部分を取り除く工程が必要となり、加工費が増加する方向となってしまう。
【0033】
3. 多少のしわが発生してもシール部材を強引に引き抜くようにした場合、特にしわの寄った部分に現像剤が万一付着した状態でシール部材を引き抜いたときに、現像剤が飛散して周囲を汚すことが考えられ、現像剤補給容器やプロセスカートリッジにおける操作汚れ性に対する保証レベルを落とす方向になるため、安易に実施することはできない。
【0034】
又、既に市場に出回っている現像剤補給容器又はプロセスカートリッジは既に商品としての形状や大きさが決まっており、しかも、多種多様なシール形式、且つ、様々な方向Wx寸法となっているため、再シールする際にシール部材の大きさ(特に、方向Wxの幅L1)の統一化が図れず、製品ごとに個別に寸法を設定しなければならないため、製造コストが増加する方向となる。
【0035】
因に、先行例に述べた伸縮性のシール部材(特許文献10、11参照)、又はそれに非伸縮性部材を組み合わせたもの(特許文献7〜9参照)を採用した場合も、新たな構成部品の追加、そのための現像剤補給容器内のスペースを確保できない、等、仕様上で既製品への再シールに適用するのは非常に困難である。
【0036】
以上に述べた懸念や不具合を解消するために、本発明は、方向Wxの幅が減少可能なシール部材を用いて、安定した開封性能と製造コストがより掛からない現像剤補給容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するため、請求項1,2記載の発明は、電子写真画像形成装置本体に現像剤を補給する現像剤補給容器において、
前記現像剤を補給する現像剤収納部と、収納した現像剤を排出するための排出口と前記排出口を封止するシール部材とを有し、
前記シール部材は、前記排出口を密閉し、その一端を折り返して自由端とし、前記自由端はシール部材の引き出し方向と直交する方向を規制する規制部を通して引き出され、前記自由端を引くことで前記シール部材を引き剥がして(又は引き裂いて)前記排出口が開封するよう構成され、
前記シール部材は、自由端の引き出し方向に向かって塑性変形の引き伸ばしが可能であり、引き伸ばしによって、引き延ばし方向と直交する前記シール部材の幅が減少することが可能であって、
前記シール部材は前記排出口を密閉している時のシール部材引き出し方向と直交する方向の幅が、前記規制部の同方向の規制幅よりも広く前記排出口の周囲に固着され、引き伸ばされた時には前記規制幅と同等以下にまで狭くなって引き出されることを特徴とする。
【0038】
以上の手段により、シール部材(又は再シール部材)を引き剥がす(又は引き裂いて引き出す)時に、シール部材が方向Wyに引き伸ばされながら、直交する方向Wxの幅はシール引き出し口を通過する手前で減少するため、シール幅(又は引き裂き幅)より狭いシール引き出し口でも適用ができる。
【0039】
請求項3記載の発明は、前記シール部材が引き出し方向への引き剥がし力が20Nのときの、伸び変形後の長さが150%〜400%、シール部材短手方向の幅が50%以上90%以下、且つ、厚さが50μm以下、10μm以上であることを特徴とする。
【0040】
以上の手段により、シール部材の引き伸ばし長さ(Wy方向)やシール部材の幅(Wx方向)のバラツキを少なくでき、シール幅(又は引き裂き幅)より狭いシール引き出し口への適用がより容易にできる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、シール部材の塑性変形による引き伸ばし及び直交する幅方向の減少が可能なシール部材を用いて、製造コストがより掛からない現像剤補給容器を提供し、且つ、過去に発売した様々な大きさの現像剤補給容器に対し、既存の様々な大きさのシール部材よりも少ない種類のシール部材でシール又は再シールができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0043】
<実施の形態1>
本実施の形態の現像剤補給容器に用いるシール部材1について図2を用いて説明する。図2は現像剤補給容器2(シール部材1が固着される範囲のみ略図式に表現している。補給容器の形状については図1、図3、図17を参照のこと)にシール部材1を置き、固着した状態を表した図である。
【0044】
図2(b)は、シール部材を固着した状態を表す図である。固着時は開口2aよりもシール部材1の封止部1gの範囲においては、方向Wxの幅L4は開口2aを覆って塞ぐように大きくしてある。本実施の形態では開口2aの幅L9を34mmとし、シール部材1の封止部1gの幅L4を40mmとした。
【0045】
またシール部材1の引き出し部1hの、方向Wxの幅L3は20mmとした。一方、シール引き出し口22の幅L5(図1、図17のL2に相当)は本発明では32mmとした。
【0046】
この状態では、シール部材1は開口2aを封止しており、少なくともシール部材の引き出し部1hの部分はシール引き出し口22を通過可能である(結果的にシール部材は問題なく引き出しできるが、詳細は後述する)。
【0047】
本例のシール部材1はその一例として、無延伸ポリプロピレンのフィルムを用いた。
【0048】
尚、シール部材の方向Wの幅や厚さは特に規定しないが、塑性延伸が可能で、シール部材の幅L4が引っ張りによる引き伸ばし作用と同時に発生するWx方向の幅の減少によって、シール引き出し口の幅L5と同等以下に幅が小さくなって通過すれば良い。よって、例えば一軸延伸ポリプロピレンのフィルムでも良い。
【0049】
ここで、図11〜図13も用いて説明する。尚、図11はシール引き出し口の状態を示す略断面図である。図12は斜め上方から観た引き出し口キャップの斜視図、図13は斜め下方から観た引き出し口キャップの斜視図である。
【0050】
シール引き出し口22の引き出し間口2bをシール部材1が通過するときは、引き出し口22内に嵌合した引き出し口キャップ8とシール部材1が摩擦しながら(シール部材1に付着した現像剤を拭き取りながら)通過する。引き出し口キャップ8は、厚さ寸法L7を引き出し間口寸法L6よりも厚くしている。本実施の形態においては、シール引き出し口22の厚さ方向の引き出し間口寸法L6は3.5mmであり、引き出し口キャップの厚さL7が4.3mmで、0.8mmの締まり嵌め組み立てとしている。
【0051】
この締まり嵌めの状態を詳細に述べると、シール引き出し口22に引き出し口キャップ8を挿入すると、引き出し口キャップ8のひれ8aが図11に示すように撓んだ状態となって組み立てられる。
【0052】
引き出し口キャップ8の方向Wxの幅は31. 9mmとし、シール引き出し口の幅L5(図11ではL2に相当し、実施の形態は32mmである)に入るようにした。又、シール引き出し口22で、前述の0.8mmの締まり嵌め状態により、シール部材との摩擦作用が働いて開封強度は約1〜3N増加するような構成にした。
【0053】
因に、締まり嵌めの量が1mmになっても、開封強度(摩擦強度)は変わらないことを確認しているため、例えばシール部材の厚さがバラついて300μmになっても著しい弊害はない構成とした。拭き取り部材の材質は特に限定しないが、ポリプロピレンやポリエチレン等、表面の滑り性が比較的良い材質を用いるのが好ましく、本実施の形態ではポリエチレン製とした。
【0054】
シール部材1の材質は例えば、イソプレンゴムやクロロプレンゴム等の合成ゴムの物でも構わない。
【0055】
又、シール部材を開封するために引っ張るとき、シール部材の固着された部分が剥がされるときの剥がれ抵抗力によってシール部材が引き伸ばされ、封止部1gや引き出し部1hの幅(方向Wx)は縮小する作用が得られるが、上記締まり嵌め量を増やすことによってシール部材の引き伸ばし抵抗力を稼ぐ方法もあり、特に封止部を引き裂いてシール部材を引き出すのに有効である(後述する実施の形態2を参照)。
【0056】
シール部材の材質も特に限定はせず、結果的に塑性変形で引き伸ばしが可能であり、且つ、引き伸ばしながら方向Wxの幅が減少する材質のものであれば良いが、無延伸又は1軸延伸のポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルム等のシート材を用いるのが好ましい。本実施の形態においては、無延伸のポリプロピレンフィルムで厚さ30μm、シール部材の幅を引き出し部1hの幅L3を20mm、封止部1gの幅を40mmとし、伸び率は実測で約2倍〜4倍の範囲で塑性引き伸ばしが可能で、方向Wxの幅減少率が約70%〜80%になるものを用いた。
【0057】
次に、本例のシール部材1と現像剤補給容器2との組み立てについて引き続き図2を用いて説明する。
【0058】
本例のシール部材1は現像剤補給容器2の現像剤排出開口2aを封止する封止部1gと、封止部1gから延出し折り返された引き出し部1hを有しており、開封時、この引き出し部1hを引っ張ることでシール部材1を引き出す構成としている。
【0059】
封止部1gと引き出し部1hの幅は、図2に示すように、基本的には引き出し部1hの幅がシール引き出し口22の幅L5よりも狭い方が好ましく、本実施の形態では、封止部のみシール引き出し口22の幅L5よりも大きいことが望まれるが、前述した引き出し口キャップ8の締まり嵌め量を増やすことによってシール部材引き出し抵抗力を上げて、その抵抗力で引き伸ばし作用をもたらせて、結果的にシール部材の方向Wxの幅を減少させて、シール引き出し口22の幅L5よりも小さくしても良い。
【0060】
ここで、図3も用いて説明する。図3はシール部材を引き出すための把手部材を組み合わせた状態を表す図である。
【0061】
尚、シール部材1を実際に引き伸ばしながら幅Wxを減少させる際、本実施の形態においては、シール部材1を全面に渡って均一な引き伸ばし作用が得られるよう、図3に示すような把手部材2cにシール部材1(引き出し部1h)の自由端1fを両面テープ2dで固着し、人の手のみでシール部材を把持したときよりはシール部材全面に均一な引き伸ばし力が掛かるようにした(把手無しでも引き伸ばしても本発明の作用効果は得られるが、実施の形態の結果をより安定的に検証するために把手を用いることにした)。尚、把手は硬質のプラスチックを用い、現像剤容器と同じ材質のポリスチレンにて形成した。
【0062】
以上に述べたシール部材を用いて、現像剤容器への固着を行う。固着方法についても特に限定はしないが、本実施の形態では、好ましい一例として接着剤や粘着付与剤を塗布して圧着した例を述べる。
【0063】
ここで、本実施の形態に用いるシール治具としての特徴を述べる(図4及び図5を参照)。
【0064】
シール治具3は、少なくとも開口2aを取り囲むように設けられ、現像剤の漏れを防止するための圧着面(シール部)3sが形成されている。以下、詳細を説明する。
【0065】
シール部材1の開封時の強度を低下させるために、シール部3sの一部分であるシールの短手部3a及び圧着部3pにおいては山型形状(シール治具3の両端付近の山型形状)とした。
【0066】
本発明では、シール部材1を現像剤容器上にセットし、シール治具3でシール部材1を圧着固定する。その際、現像剤補給容器のシール範囲E(図2参照)には予め、粘着剤(接着剤)や両面テープ等の接合材を塗布又は貼り付けを施しておく。尚、粘着剤(接着剤)は天然ゴム系又は合成ゴム系を用いるのが、よりシール性を達成する上で好ましいが、例えばアクリル系の粘着両面テープ等でも接着は可能である。本実施の形態においては、ゴム系の粘着剤を塗布したものにシール部材を圧着固定した。
【0067】
又は、例えばシール部材に粘着付与剤をコーティングしたものを用いて圧着固定しても良い。
【0068】
そのシール部材1を現像剤補給容器2に組み立てた状態は、図4及び図5に示すように、シール治具と同じ圧着部(シール圧着形状)3Pが形成され、シール部3sは圧着部3Pとなって開口2aを囲繞するように固着した状態となる。
【0069】
シール条件は、エア圧力:0. 2MPa(直径100ミリメートルのエアシリンダを用いる)、圧着時間:2secとした。このシール条件は、本例に限られたものではなく、シール部材1及び容器2の材質、シール面積、シール幅(接着範囲)等により適宜選択することが望ましい。
【0070】
又、シール治具3については加工性が良く、耐久性があればどの材質でも構わないが、本例では真鍮を用いた。
【0071】
次に、本例のシール部材1の開封状態を図6〜図8に示す。
【0072】
図6はシール部材1の開封途中状態を示す斜視図、図7はシール部材1の開封終了状態を示す斜視図、図8はシール部材の塑性変形する状況を表すイメージ図である。
【0073】
図6に示すように、シール部材1の引き出し部1hを折り返して引張り(図8の「1. 」と「2. 」も参照)、シール部材1の封止部が剥がれるとシール部材1はWyの方向に引き伸ばされながら(塑性変形によって伸びながら)方向Wxの幅は減少(収縮)する(図8の「3. 」と「4. 」も参照)。
【0074】
この時の方向Wx幅は歪みが残るために、引き伸ばし前の状態に比べると若干広がったままになるが、予めシール引き出し口の方向W幅と、開封操作性を良好に維持できる現像剤補給容器の保管期間(即ち、シール部材を引き伸ばしたままの状態が維持される最長の期間)と、保管期間後の残留するシール部材の伸び分を把握して寸法、材質を明確にすることにより問題なくシール引き出し口を通過できる。
【0075】
本実施の形態においても、予め、以上に述べた方向W幅と保管期間と残留する伸び分を把握した上で実施したため、固着前は20mm、固着後は54mm(250%の伸び)、開封後は30mmと、シール引き出し口の幅32mmを問題なく通過し、開封操作が行え、現像剤を排出させることができた。
【0076】
尚、圧着後のシール性について述べると、接着強度においては従来の固着技術に対し低くなる場合もあり得るが、シール部材が伸縮できるため、物流の様々な状況(例えば、大気圧変動や落下時の衝撃等)に合わせてシール部材が変形と復元作用をできるため、シール性についても問題なく維持することができる。
【0077】
一方、本例の現像剤補給容器を用いて、開封テストを行った結果、開封強度20〜30N程度で安定しており、開封強度としては、従来品との大きな違いはなかった。但し、シール部材が引っ張り方向にも伸縮が可能なため、封止部を剥がし終える付近で瞬発的な鞭打ち現象(瞬間的に一気に収縮する現象が)表れる場合があった。この現象は特に速いスピードで開封操作を行ったときやより強い固着条件でより強固にシール部材を圧着したときに起こり易くなることが判明した。
【0078】
<実施の形態2>
よって、本実施の形態2では、以上に述べた実施の形態1のシール部材に伸縮抑制部材6を貼り合わせた(図8参照)。
【0079】
伸縮抑制部材6は、シール部材のほぼ全長に渡って貼ることによって、開封操作時の引き出し(引っ張り)による伸びを抑える。伸縮抑制部材6の限定事項は、それ自身が目に見えて伸縮が確認できるような伸縮性がなければ、特に限定しないが、シール部材を折り返して引き出すため耐屈曲性があれば良く、シール引き出し口22から弊害なく引き出せる薄いシート状であれば良い。
【0080】
又、シール部材1との接着性についても特に強い接着強度は必要なく、引き出し操作において相互がずれない程度に接着していれば良い。よって、粘着剤成分(ゴム系、アクリル系等)も特に限定しない。本実施の形態においては、アクリル系粘着剤をラミネートしたポリエステル基材の粘着テープ(厚さ50μm)を用いた。
【0081】
それ以外の形態内容については実施の形態1と同じであるため省略する。
【0082】
その結果、実施の形態1と同じ良好な結果が得られたことに加えて、シール部材の引き出し方向への伸びが無くなり、引っ張り速度や接着強度のバラツキに影響されることなく抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】シール部材の幅とシール引き出し口の幅の不具合を示す略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る現像剤補給容器に用いるシール部材の固着前と固着後の状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における圧着部に関するシール部材、シール治具の略断面解説図である。
【図4】本発明の実施の形態における治具形状を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるシール部材の固着方法の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における現像剤補給容器のシール部材の開封途中状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態における現像剤補給容器のシール部材の開封終了状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるシール部材の塑性変形の状況を表すイメージ図である。
【図9】従来のシール部材の方式を示す一例図である。
【図10】従来のシール部材の方式を示す一例図である。
【図11】シール引き出し口の状態を示す略断面図である。
【図12】斜め上方から見た引き出し口キャップの斜視図である。
【図13】斜め下方から見た引き出し口キャップの斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
A レーザービームプリンタ
B プロセスカートリッジ
E 範囲(シール部材1の固着可能な範囲)
Wx 方向(引き伸ばし方向)
Wy 方向(引き伸ばし方向と直交する方向)
1 シール部材
1f 自由端
1g 封止部
1h 引き出し部
2 現像剤補給容器
2a 開口
2b 引き出し間口
2c 把手部材
2d 両面テープ
3 シール治具
3s シール部(圧着面)
3a 短手部
3P 圧着部
4 カバーフィルム
5 テアテープ
7 開口窓枠部材
8 引き出し口キャップ
8a ひれ部
35 開閉部材
35a ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真画像形成装置本体に現像剤を補給する現像剤補給容器において、
前記現像剤を補給する現像剤収納部と、収納した現像剤を排出するための排出口と前記排出口を封止するシール部材とを有し、
前記シール部材は、前記排出口を密閉し、その一端を折り返して自由端とし、前記自由端はシール部材の引き出し方向と直交する方向を規制する規制部を通して引き出され、前記自由端を引くことで前記シール部材を引き剥がして前記排出口が開封するよう構成され、
前記シール部材は、自由端の引き出し方向に向かって塑性変形の引き伸ばしが可能であり、引き伸ばしによって、引き延ばし方向と直交する前記シール部材の幅が減少することが可能であって、
前記シール部材は前記排出口を密閉している時のシール部材引き出し方向と直交する方向の幅が、前記規制部の同方向の規制幅よりも広く前記排出口の周囲に固着され、引き伸ばされた時には前記規制幅と同等以下にまで幅が減少して引き出されることを特徴とする現像剤補給容器。
【請求項2】
電子写真画像形成装置本体に現像剤を補給する現像剤補給容器において、
前記現像剤を補給する現像剤収納部と、収納した現像剤を排出するための排出口と前記排出口を封止するシール部材とを有し、
前記シール部材は、前記排出口を密閉し、その一端を折り返して自由端とし、前記自由端はシール部材の引き出し方向と直交する方向を規制する規制部を通して引き出され、前記自由端を引くことで前記シール部材を引き裂いて前記排出口を開封するよう構成され、
前記シール部材は、自由端の引き出し方向に向かって塑性変形の引き伸ばしが可能であり、引き伸ばしによって、引き延ばし方向と直交する前記シール部材の幅が減少することが可能であって、
前記シール部材は前記排出口を密閉している時のシール部材引き出し方向と直交する方向の引き裂き幅が、前記規制部の同方向の規制幅よりも広く前記排出口の周囲に固着され、引き伸ばされた時には前記規制幅と同等以下にまで幅が減少して引き出されることを特徴とする現像剤補給容器。
【請求項3】
前記シール部材の、引き出し方向への引き剥がし力が20Nのときの、伸び変形後の長さが150%〜400%、シール部材短手方向の幅が50%以上90%以下、且つ、厚さが50μm以下、20μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の現像剤補給容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−220986(P2006−220986A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35218(P2005−35218)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】