説明

現像剤担持体

【課題】高温高湿下や低温低湿下においても、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つ、トナーのチャージアップを抑制できる現像剤担持体を提供する。
【解決手段】基体と該基体の表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体であって、該樹脂層はアクリル樹脂及び導電性粒子を少なくとも含有し、該アクリル樹脂は特定の構造の2つのユニットを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いる現像剤担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は、高画質化や低消費量化という点からトナーの小粒径化や球形化が主流になってきている。このように小粒径化・球形化したトナーを用いた場合、現像剤担持体上のトナー層の形成は、使用環境やトナーの物性、現像剤担持体表面の状態に依存し、トナーの摩擦帯電量を制御しにくくなってきている。トナーの摩擦帯電量を制御する方法として、現像剤担持体の表面に荷電制御剤を含有させた樹脂層を設ける方法が知られている。
【0003】
特許文献1では、ビニル重合性モノマー及び含窒素ビニルモノマーが含まれる共重合体を樹脂層中に含有させた現像剤担持体を提案している。このような構成によると、トナーに対する摩擦帯電付与能を高くできる。
【0004】
特許文献2では、少なくとも熱硬化性樹脂と、水酸基と第4級アンモニウム塩基を有するアクリル樹脂からなる樹脂層を有する現像剤担持体を提案している。このような構成によると、摩擦帯電付与能が高く、且つ、イオン導電性を有した樹脂層が得られる。
【0005】
しかし、高画質化のためには、静電潜像に対して忠実に現像する目的で、トナーに対してより迅速に高い摩擦帯電を与え、安定してトナーの摩擦帯電量分布を均一に制御することが必要となる。また、低湿下ではトナーのチャージアップが起こりやすくなるため、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を与える一方、トナーが有する過剰な電荷をより現像剤担持体に拡散させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−126004号公報
【特許文献2】特開2010−8878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温高湿下や低温低湿下においても、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できる現像剤担持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る現像剤担持体は、基体と、該基体の表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体において、該樹脂層はアクリル樹脂及び導電性粒子を含有しており、
該アクリル樹脂は下記式(1)で示されるユニット及び下記式(2)で示されるユニットを有していることを特徴とする:
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。]、
【0011】
【化2】

【0012】
[式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R4、R5およびR6のうち少なくとも一つは炭素数6乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至5のアルキル基を示す。A-はアニオンを示す。]。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温高湿下や低温低湿下においても、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る現像装置の断面図である。
【図2】本発明に係る現像装置の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の更に他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明について詳述する。本発明に係る現像剤担持体は、少なくとも基体と、該基体表面に形成された樹脂層を有している。前記樹脂層は所定のユニットを有するアクリル樹脂及び導電性粒子を含んでいる。
【0016】
〔アクリル樹脂〕
本発明に係るアクリル樹脂は下記式(1)で示されるユニット及び下記式(2)で示されるユニットとを有する。
【0017】
【化3】

【0018】
[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。]、
【0019】
【化4】

【0020】
[式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R4、R5およびR6のうち少なくとも一つは炭素数6乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至5のアルキル基を示す。A-はアニオンを示す。]。
【0021】
上記のアクリル樹脂を含む樹脂層を備えた現像剤担持体が、低湿下においてトナーのチャージアップを有効に抑制できる理由は明らかではない。しかしながら、式(1)中のカルボキシル基の存在により、過剰に帯電したトナーの電荷が現像剤担持体に、より効率的に拡散させられていると本発明者らは推測している。
【0022】
一方、本発明に係るアクリル樹脂が含む式(2)で示されるユニットは、トナーに対する優れた摩擦帯電付与能を樹脂層に与えている。加えて、式(2)で示されるユニットがイオン導電性を有しているため、樹脂層の導電性が向上し、トナーのチャージアップを抑制できる。R4、R5およびR6から選ばれる少なくとも一つの基が炭素数19以上のアルキル基である場合、アクリル樹脂自身が結晶化しやすくなる。その結果、導電性粒子が樹脂層中で不均一に存在しやすくなり、現像剤担持体としての帯電安定性を相対的に低下させる場合がある。また、R4、R5およびR6の全てが炭素数5以下のアルキル基であると、現像剤担持体のトナーに対する摩擦帯電付与能を相対的に低下させる場合がある。
【0023】
式(2)で示されるユニットとして、次の構造を有するものがより好ましい。
4、R5及びR6から選ばれる少なくとも一つの基が、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、またはテトラデシル基から選ばれる何れかの長鎖アルキル基であり、R4、R5及びR6のうちで上記の長鎖アルキル基でない残りの基が炭素数1〜5の低級アルキル基。このように、R4、R5、及びR6の少なくとも1つに長鎖アルキル基が導入されていることにより、式(2)で示されるユニットが現像剤担持体の樹脂層表面に多く存在する傾向がある。その結果、トナーに対する摩擦帯電付与能が向上する効果を奏する。特に、R4がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基からなる群から選ばれるいずれかであり、且つR5及びR6が炭素数1〜5のアルキル基であるユニットが好ましい。この範囲内にあることで、トナーに対する摩擦帯電付与能が高く、且つ導電性粒子が樹脂層中でより均一に存在できる。その結果、トナーに対する迅速な摩擦帯電付与とトナーのチャージアップ抑制のバランスがより良化する。
【0024】
また、A-は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸の如き有機酸類におけるアニオンである。溶媒への均一分散性の観点から、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含むアニオンであることが好ましい。
【0025】
本発明で使用可能なアクリル樹脂は、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合して製造できる。第4級アンモニウム塩基を有するモノマーとしては、下記の式(3)に示すモノマーが挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
[式中の、R2は、水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R4、R5、及びR6のうち少なくとも一つは炭素数6乃至18のアルキル基、その他の基は炭素数1乃至5のアルキル基を示す、A−は、アニオンを示す。]。
【0028】
式(3)で表されるモノマーとしては、好ましくは、R4、R5、R6の少なくとも一つの基がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基のいずれかであることが好ましい。特に、R4がオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基のいずれかであり、R5、R6が炭素数1〜5のアルキル基であることが、より好ましい。A-は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸類におけるアニオンである。溶媒への均一分散性の観点から、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含むアニオンであることが好ましい。
【0029】
本発明で使用可能なアクリル樹脂の製造工程においては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法を用いることができる。反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合法で使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールである。その他、必要に応じてキシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の他溶媒を混合して使用しても構わない。溶媒とモノマー成分の比は、溶媒100質量部に対してモノマー成分30質量部以上400質量部以下で行うのが、モノマーの反応速度の観点から好ましい。
【0030】
モノマーの重合は、例えば、不活性ガス雰囲気下において、モノマーを重合開始剤の存在下で50℃以上100℃以下に加熱して行うことができる。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。重合開始剤は単独で、または2種以上のモノマーを組み合わせて用いることができる。通常は重合開始剤をモノマー溶液に添加して重合を開始するが、未反応モノマーを低減するために重合開始剤の一部を重合の途中に添加しても良い。また、紫外線や電子線の照射によって重合を促進させる方法も使用することが可能であり、これらの手法を組み合わせても構わない。
【0031】
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下とすることが、未反応モノマーの低減や反応速度の適正化の観点から好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。重合反応の温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、モノマー成分の組成に応じて設定することができるが、温度40℃以上150℃以下で行うのが、反応速度の適正化や溶媒の揮発を防ぐ点で好ましい。
【0032】
また、式(3)のモノマーは、下式(4)で表されるモノマーを4級化剤で4級化したものを用いることができる。
【0033】
【化6】

【0034】
[式中の、R2は、水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R4、R5はアルキル基を示す。]。
【0035】
4級化剤としては、以下の如き有機酸化合物が挙げられる。ブチルブロマイド、2−エチルヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、ラウリルブロマイド、ステアリルブロマイド、ブチルクロライド、2−エチルヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ラウリルクロライド、ステアリルクロライド等のアルキルハライド、p−トルエンスルホン酸メチル、ジメチル硫酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸メチル。4級化剤の使用量は、式(4)で表される単量体1モルに対して、0.8モル以上1.0モル以下が、未反応の4級化剤を無くし、多くのモノマーを4級化できるため好ましい。かかるモノマーの4級化は、例えば、モノマーと4級化剤とを、溶媒中、温度60℃以上90℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0036】
また、式(4)のモノマーを重合させた後に、前記4級化剤で4級化させることによって、所望の第4級アンモニウム塩基含有重合体を得ることも可能である。その他に、例えば、式(4)で表される単量体をメチルクロライドの如きアルキルハライドで4級化を行い重合させる。得られた第4級アンモニウム塩基含有重合体を、p−トルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸の如き酸で処理して対イオン交換を行い、目的のアニオン種とした第4級アンモニウム塩基含有重合体とすることも可能である。
【0037】
上記アクリル樹脂中の各ユニットのモル比率は、アクリル樹脂中の式(1)ユニットのモル数をa、式(2)ユニットのモル数をbとした時、b/(a+b)が0.3以上0.9以下であることが好ましい。b/(a+b)を0.3以上とすることで、アクリル樹脂の摩擦帯電付与能が向上し、また、第4級アンモニウム塩構造によるイオン導電性の効果を高めやすい為、トナーに対する迅速な摩擦帯電付与能が向上する。b/(a+b)を0.9以下とすることで、トナーの電荷が現像担持体へ拡散しやすくなり、トナーのチャージアップを抑制できる。
【0038】
本発明に用いられるアクリル樹脂は、式(1)及び式(2)で示されるユニット以外に、他のユニットを含有しても良い。他のユニットは、単数でも複数でもよい。アクリル樹脂中に含有する他のユニットの含有率は、アクリル樹脂を構成するユニット総数[モル]の30モル%以下であることが好ましい。他のユニットの含有率を30モル%以下とすることで、式(1)及び式(2)で示されるユニットの導入による前記の効果を得やすい。
〔その他の樹脂〕
本発明の現像剤担持体を構成する樹脂層にアクリル樹脂以外の樹脂を含有させてもよく、特に熱硬化性樹脂を含有することで樹脂層の耐久性・環境安定性が向上する。熱硬化性樹脂としては、強靭性・耐久性の面から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。中でも、樹脂層の耐摩耗性を向上させる点、環境安定性に優れる点、アクリル樹脂との相溶性に優れることからフェノール樹脂がより好ましい。
【0039】
これらの樹脂にアクリル樹脂を混合させる場合、アクリル樹脂は樹脂溶液として、または、樹脂粒子として、混合させることができる。アクリル樹脂粒子として混合させる場合、樹脂層中での樹脂粒子の存在を均一にするために、樹脂粒子の質量平均粒径(D4)は5μm以下であることが好ましい。
【0040】
〔導電性粒子〕
本発明では樹脂層の抵抗値を調整するために、下記に挙げる導電性粒子を樹脂層中に含有させる。導電性粒子の材質としては、金属、導電性金属酸化物、導電性カーボンブラック等が挙げられる。上記導電性粒子は2種以上混合して使用してもよい。また、導電性粒子の配合量は、樹脂総量100質量部に対して20質量部以上100質量部以下が好ましい。この範囲とすることで樹脂層の強度を損なうこと無く、抵抗値を所望のレベルとすることが可能となる。本発明における現像剤担持体表面の樹脂層の体積抵抗値の目安としては、10-1Ω・cm以上104Ω・cm以下である。
【0041】
〔凹凸付与粒子〕
本発明においては、樹脂層中に表面粗さを均一にし、且つ適切な表面粗さを維持するために、凹凸付与粒子を添加してもよい。凹凸付与粒子としては、球状のものが好ましい。球状粒子であることで、より少ない添加量で所望の表面粗さが得られるとともに、表面形状の均一な凹凸面が得られる。さらに、樹脂層が摩耗した場合でも樹脂層の表面粗さの変化が少なく、現像剤担持体上のトナー層厚の変化が起きにくい。
【0042】
凹凸付与粒子として、特に限定するものではないが、具体的には以下のものが挙げられる。EPDM、NBR、SBR、CR、シリコーンゴム等のゴム粒子;ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー(TPE)の如きエラストマー粒子;PMMA、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂の如き樹脂粒子;アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫等の酸化物粒子;炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子の如き導電性粒子、その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物の粒子状物。
【0043】
〔基体〕
本発明に用いられる現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材の如き部材が挙げられる。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属または合金を円筒状あるいは円柱状に成型し、研磨、研削の如き処理を施したものが好適に用いられる。
【0044】
また、感光体ドラムに直接接触させる現像方法を用いる場合の基体としては、導電性軸体と導電性軸体の周囲に設けられた弾性層を有する円柱状部材が好ましく用いられる。導電性軸体としては、導電性を有するものが用いられ、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス(SUS)を挙げることができる。弾性層としては、シリコーンゴム、EPDM若しくはウレタンの如きエラストマー、又はその他の樹脂成型体が用いられる。
【0045】
また、磁性トナーを用いる現像方法においては、トナーを現像剤担持体上に磁気的に吸引かつ保持するために、磁石が内設されているマグネットローラを現像剤担持体内に配置する。その場合、基体を円筒状としその内部にマグネットローラを配置すればよい。
【0046】
〔樹脂層の形成〕
樹脂層の形成方法は、例えば、樹脂層用の各成分を有機溶剤中に分散混合して塗料化し、基体上に塗工し、乾燥固化あるいは硬化することにより形成可能である。各成分の塗料液中への分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
【0047】
本発明では、現像剤担持体表面の粗さとして、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が0.4μm以上2.0μm以下であることが好ましい。現像剤担持体表面のRaをこの範囲にすることで、現像剤担持体上のトナーの搬送量を適正に維持でき、安定してトナーに摩擦帯電を付与できる。樹脂層の厚さは、4μm以上20μm以下であることが均一な膜厚を得るために好ましいが、特にこの厚さに限定されるものではない。
【0048】
〔現像装置〕
次に、本発明の現像剤担持体が組み込まれる現像装置について説明する。図1は、本発明の現像剤担持体を有する一実施形態の現像装置の模式断面図であり、トナー504として磁性トナーを有する一成分系現像剤を用いている。図1において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像担持体、例えば、電子写真感光体ドラム501は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ508は、現像剤を収容している現像剤容器としてのホッパ503によって供給された、トナー504を担持して矢印A方向に回転する。それによって、現像スリーブ508と感光体ドラム501とが対向している現像領域Dにトナー504を搬送する。図1に示すように、現像スリーブ508内には、トナー504を現像スリーブ508上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石が内接されているマグネットローラ505が配置されている。
【0049】
本発明の現像装置で用いられる現像スリーブ508は、基体としての金属製円筒管506上に被覆された樹脂層507を有する。ホッパ503中には、トナー504を攪拌するための攪拌翼510が設けられている。513は、現像スリーブ508とマゲネットローラ505とが非接触状態にあることを示す間隙である。トナー504は、現像剤を構成する磁性トナー相互間及び現像スリーブ508上の樹脂層507との摩擦により、感光体ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図1の例では、現像領域Dに搬送されるトナー504の層厚を規制するために、トナー層厚規制部材として強磁性金属製の磁性規制ブレード502を使用している。現像スリーブ508の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ508に臨むように、ブレード502をホッパ503から垂下している。マグネットローラ505の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上にトナー504の薄層が形成される。この磁性規制ブレード502に代えて非磁性規制ブレードを使用することもできる。
【0050】
このようにして、現像スリーブ508上に形成されるトナー504の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光体ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。本発明の現像剤担持体は、以上のようなトナーの薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。現像領域Dにおいて、トナー層の厚みが現像スリーブ508と感光体ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち、接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0051】
上記現像スリーブ508に担持されたトナー504を飛翔させるため、上記現像スリーブ508には、バイアス手段としての現像バイアス電源509により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(トナー504が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。
【0052】
また、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。ここで、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、トナー504は少なくとも現像スリーブ508との摩擦により帯電する。
【0053】
図2は、トナー504として磁性トナーを有する一成分系現像剤を用いる他の現像装置を示す模式断面図である。図2の現像装置では、トナー層厚規制部材として弾性規制ブレード511を使用している。この弾性規制ブレード511は、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料からなる。この弾性規制ブレード511を現像スリーブ508の回転方向と逆方向の向きで圧接させている。これらの現像装置では、現像スリーブ508に対して、トナー層を介してトナー層厚規制部材を弾性的に圧接することによって、現像スリーブ上にトナーの薄層を形成する。
【0054】
図3は、トナー504として非磁性一成分現像剤を用いる場合の現像装置を示す模式断面図である。現像スリーブ内の磁石は存在せず、基体として金属の円筒管が用いられており、非磁性トナーは層厚規制ブレード511、或いはスリーブコート層507との摩擦により摩擦帯電され、現像スリーブ508の表面上に担持され搬送される。更に図3においては剥ぎ取り部材512が設置されている。
【0055】
図2及び3の現像装置における他の基本的構成は、図1に示した現像装置と同じであり、同符号のものは、同一の部材であることを示す。
【0056】
〔現像剤〕
次に、本発明の現像剤担持体を組み込んだ現像装置に用いられるトナー粒子を有する現像剤について説明する。本発明に係るトナー粒子は、粉砕法、或いは重合法によって製造することができる。粉砕法を用いたトナーでは、種々の方法で球形化処理、表面平滑化処理を施すと、磁性体を内包しやすくなる。その結果、トナーの転写性が向上し、トナーの消費量を抑制することが可能である。球形化度を高めたトナー粒子は、一般的に高帯電量であり使用状況によっては摩擦帯電量が高くなり過ぎてチャージアップを生じる場合がある。特に、本発明で用いられる現像剤担持体は、このような球形化度を高めたトナー粒子に対して適切な摩擦帯電付与能力を維持することができる。よって、このような高球形化度を有するトナーとの組合せでは、本発明の現像剤担持体はさらに好適に用いることができる。
【0057】
また、本発明に使用できるトナーは、さらに高画質のため、より微小な潜像ドットを忠実に現像するためには、本発明のトナーの質量平均粒径は3μm以上10μm以下であることが好ましい。トナーには離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。その中でも、定着性の観点から、融点の低いワックスを用いることが好ましい。トナーの結着樹脂としては以下のものが挙げられる。ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエ−テル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂。さらに、トナーには、環境安定性、摩擦帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナの如き無機微粉体を外添すること、すなわちトナー表面近傍に存在させていることが好ましい。無機微粉体の添加量は、トナー中に0.1質量%乃至5.0質量%、好ましくは0.5質量%乃至4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明する。まず、以下に本発明に関わる測定方法について述べる。
【0059】
<アクリル樹脂の分析方法>
アクリル樹脂のポリマーの構造は、熱分解GC/MS装置「Voyager」(商品名、サーモエレクトロン社製)で分析して求めた。なお、熱分解温度:600℃、カラム:HP−1(15m×0.25mm×0.25μm)、Inlet:300℃、Split:20.0、注入量:1.2ml/min、昇温:50℃(4min)−300℃(20℃/min)の条件で行った。
【0060】
<現像剤担持体表面の算術平均粗さRaの測定方法>
現像剤担持体表面の算術平均粗さRaはJIS B0601(2001)に基づき、表面粗さ計:「サーフコーダーSE−3500」(商品名、小坂研究所製)を用いて測定した。なお、測定条件としては、カットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとし、軸方向3点(長手方向の中心部、両端部から各50mmの位置)×周方向3点(120度間隔)=9点について測定し、その平均値を当該試料の現像剤担持体表面の算術平均粗さRaとした。
【0061】
<樹脂層の膜厚の測定方法>
樹脂層の膜厚の測定には、レーザー光にて円筒の外径を測定するレーザー寸法測定器(株式会社キーエンス製)を用いた。コントローラ:「LS−5500」(商品名)及びセンサーヘッド:「LS−5040T」(商品名)を用いた。現像剤担持体固定治具及び現像剤担持体送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、現像剤担持体の外径寸法を測定した。なお、測定は、現像剤担持体長手方向に対し均等に30分割して30箇所測定し、更に現像剤担持体を周方向に90°回転させた後更に30箇所、計60箇所について行った。得られた測定値の平均値を当該試料の外径寸法とした。樹脂層形成前に基体の外径を測定しておき、樹脂層形成後に再び外径を測定し、その差分を樹脂層の膜厚とした。
【0062】
<樹脂層の体積抵抗値の測定方法>
100μmの厚さのPETシート上に、7μm乃至20μmの樹脂層を形成し、抵抗率計:「ロレスタAP」(商品名、三菱化学製)にて4端子プローブを用いて樹脂層の体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、温度20℃乃至25℃、湿度50%RH乃至60%RHとした。
【0063】
<1.アクリル樹脂溶液A−1の製造例>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の材料を混合して、均一になるまで攪拌した。
・ジメチルアミノエチルメタクリレート:36.5質量部、
・ラウリルブロマイド(4級化剤):63.5質量部、
・エタノール:50質量部。
【0064】
撹拌を続けながら、70℃まで昇温した後5時間攪拌してジメチルアミノエチルメタクリレートの4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、共重合成分として、メタクリル酸21.9質量部を上記反応溶液に添加し、均一になるまで撹拌した。一方、エタノール50質量部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部をエタノール50質量部に溶解させた溶液を滴下ロートに入れた。撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温し、滴下ロート中の重合開始剤溶液を1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下で5時間還流して、反応させ、さらにAIBNを0.2質量部添加した後1時間反応させた。更に、この溶液をエタノールで希釈して固形分40%のアクリル樹脂溶液A−1を得た。得られたアクリル樹脂の構造を表1に示す。
【0065】
<2.アクリル樹脂溶液A−2〜A−16及びa−1〜a−4の製造例>
使用原料を表1に示す成分としたこと以外は、アクリル樹脂溶液A−1の製造例の場合と同様にして、アクリル樹脂溶液A−2〜A−16及びa−1〜a−4を得た。なお、アクリル樹脂溶液A−16に関しては、溶液生成後、イオン交換樹脂によりアニオンを臭素イオンからp-トルエンスルホン酸イオンへのイオン交換を行った。またアクリル樹脂溶液a−1の場合はメタクリル酸を使用しなかった。得られたアクリル樹脂A−2〜A−16及びa−1〜a−4の構造を表1に示す。
【0066】
<3.アクリル樹脂粒子A−17の製造例>
アクリル樹脂溶液A−1の製造例の場合と同様の条件で重合反応を実施した。反応終了後、乾燥、粉砕工程を経て質量平均粒径(D4)4.0μmのアクリル樹脂粒子A−17を得た。
【0067】
<4.アクリル樹脂以外の樹脂>
以下の樹脂を使用した。
B−1:レゾール型フェノール樹脂:「J−325」(商品名、大日本インキ化学工業社製、固形分60%)、
B−2:ブチル化メラミン樹脂:「L−109−65」(商品名、大日本インキ化学工業社製、固形分60%)。
【0068】
<5.トナーの製造例>
・スチレン:76質量部、
・n−ブチルアクリレート:24質量部、
・ジビニルベンゼン:0.5質量部、
・飽和ポリエステル樹脂(Mn=11000、Mw/Mn=2.6、酸価=12mgKOH/g、Tg=72℃):7質量部、
・サリチル酸アルミニウム化合物(「ボントロンE−88」、商品名、オリエント化学社製):0.5質量部、
・磁性酸化鉄(平均粒径0.2μm、保磁力11.2KA/m、残留磁化8.8Am2/kg、飽和磁化80.3Am2/kg):90質量部。
【0069】
この混合物を温度130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機:「ターボミルT250」(商品名、ターボ工業社製)を用いて微粉砕を行なった後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行った微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置:「エルボジェット分級機」(商品名、日鉄鉱業社製)で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、質量平均粒径(D4)6.3μm、円形度が0.966であるトナー粒子を得た。このトナー粒子100質量部に疎水性コロイダルシリカ1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー:「FM−75」(商品名、三井三池化工機社製)にて混合分散させることで、磁性一成分トナー1を得た。
【0070】
〔実施例1〕
<塗料中間体の作製>
以下の材料を混合し、直径0.8mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミル:「スターミル」(商品名、アシザワファインテック社製)にて1時間分散して塗料中間体を得た。
・アクリル樹脂溶液A−1:固形分として100質量部、
・導電性粒子:「TGP−7」(商品名、東海カーボン社製):50質量部、
・エタノール:150質量部。
【0071】
<樹脂層用塗料の作製>
次に、塗料中間体に凹凸付与粒子:「ニカビーズICB−0520」(商品名、日本カーボン社製)を5質量部添加し、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分間分散して樹脂層用塗料を得た。樹脂層用塗料の体積抵抗値は0.4Ω・cmであった。
【0072】
<樹脂層の形成>
次いで、この樹脂層用塗料にエタノールを添加することで固形分濃度を30%に調整した。外径10.0mm、長さ255mmのアルミニウム製の円筒管を回転台に立てて回転させ、両端部(駆動側25mm、非駆動側9mm)にマスキングを施し、エアスプレーガンを一定速度40mm/秒で下降させながら、樹脂層用塗料を円筒管表面に塗工し樹脂層を形成させた。なお、塗工条件は温度30℃/湿度35%RHの環境下にて、樹脂層用塗料は恒温槽で温度28℃に制御した状態で使用した。続いて熱風乾燥炉により温度150℃で30分間加熱して樹脂層を硬化させ、Ra=0.96μm、樹脂層の厚さが10μmである現像剤担持体D−1を作製した。表2に現像剤担持体(現像スリーブ)D−1の樹脂層の処方を挙げた。
【0073】
<画像評価>
現像剤担持体D−1にマグネットローラを挿入した後、レーザービームプリンタLaserJet1505n(商品名;ヒューレット・パッカード社製)のカートリッジに組み込んだ。前記トナーを用い、温度30℃/湿度80%RHの環境下(H/H)でトナーの摩擦帯電量、温度15℃/湿度10%RHの環境下(L/L)でトナーの摩擦帯電量とゴーストを評価した。結果は表2に示したように、H/Hでのトナーの摩擦帯電量は高く、L/Lでのトナーの摩擦帯電量はH/Hに対して微増であり、ゴーストも良好であった。すなわち、本発明の現像剤担持体を用いることで、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
なお、H/HとL/Lでのトナーの帯電量、L/Lでのゴーストは以下のように評価した。
【0074】
(1)H/Hでのトナーの摩擦帯電量(μC/g)
上記のカートリッジをH/Hの環境下で一日間放置した。放置後、カートリッジをLaserJet1505nに装填し、ベタ黒画像を1枚出力した。画像出力直後の現像剤担持体表面に付着しているトナーをファラデーケージに採取し、その帯電量をエレクトロメータ:「KEITHLEY 616」(商品名、東陽テクニカ製)にて測定した。また採取質量から質量当たりのトナーの摩擦帯電量を求めた。
【0075】
(2)L/Lでのトナーの帯電量(μC/g)
上記のカートリッジをL/Lの環境下で一日間放置した。放置後、カートリッジをLaserJet1505nに装填してベタ黒画像を1枚出力し、画像出力直後の現像剤担持体表面に付着しているトナーの帯電量を測定した。続いて、ベタ白画像を連続モードで50枚出力した後、現像剤担持体表面に付着しているトナーの帯電量を測定した。帯電量の測定は、H/Hの場合と同様に実施した。
【0076】
(3)L/Lでのゴースト評価
上記のカートリッジをL/Lの環境下で一日間放置した。放置後、カートリッジをLaserJet1505nに装填し、ゴーストの評価を行った。出力画像として、先端の現像剤担持体一周分に相当する領域を白地にベタ黒の象形画像(四角形、丸形など)を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用いた。そして、ハーフトーン上に象形画像のゴーストがどのように出現するかによりランク付けを行った。
A:濃淡差が全く見られない。
B:見る角度によってわずかな濃淡差が確認できる程度。
C:ゴーストが目視で明確に確認される。
D:ゴーストがはっきり濃淡として現れ、現像剤担持体二周分以上の濃淡差が確認される。
【0077】
尚、ゴーストは、現像工程において消費されずに現像剤担持体上に残っているトナーと、現像剤担持体上に新たに供給されたトナーとの現像能力の差(摩擦帯電量の差)によって生じる現象である。トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つ、トナーのチャージアップを抑制できれば、上記の摩擦帯電量の差を小さくでき、ゴーストを良化できる。
【0078】
〔実施例2〜実施例19、比較例1〜比較例6〕
表2に挙げた処方にて実施例1と同様に、現像剤担持体D−2〜D−19及びd−1〜d−6を作製し、評価を行った。実施例15〜実施例17及び比較例1では、塗料中間体の作製時にアクリル樹脂以外の樹脂(B−1またはB−2)も添加した。樹脂層用塗料の固形分濃度は、適宜調節して作製した。現像剤担持体の物性と各種評価結果を表2に記す。
【0079】
上記の結果から分かるように、本発明の現像剤担持体を用いることで、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
【0080】
実施例2〜実施例9を比較すると、ユニット(2)の長鎖アルキル基の炭素数が大きくなるほど、H/Hでのトナーの帯電量が高くなることが分かる。すなわち、ユニット(2)の長鎖アルキル基の炭素数が大きくなるほど、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与できることがわかった。一方で、比較例5のようにユニット(2)の長鎖アルキル基の炭素数を大きくしすぎると、L/L環境下ではトナーがチャージアップし、ゴーストが悪化した。これは、ユニット(2)の長鎖アルキル基の炭素数を大きくすることで、アクリル樹脂自体の結晶化が起こりやすくなり、樹脂層中の導電性粒子が均一に存在しなくなったことに起因すると推測している。また、比較例4では、ユニット(2)の長鎖アルキル基の炭素数が小さいために、H/Hでのトナーの摩擦帯電量は低かった。すなわち、比較例4では、トナーに対して迅速な摩擦帯電を付与できなかった。
【0081】
実施例1と実施例10〜14を比較すると、ユニット(1)の比率が高くなるほどトナーチャージアップ抑制に効果があり、ユニット(2)の比率が高くなるほどトナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与できることが分かった。
【0082】
実施例14では、ユニット(1)としてアクリル酸構造のものを用いたが、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
【0083】
実施例15と実施例16では、アクリル樹脂とアクリル樹脂以外の樹脂を現像剤担持体の樹脂層に用いたが、両者ともにトナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
【0084】
実施例17及び実施例18では、アクリル樹脂のアニオン種を変更したが、臭素を用いたものと同様、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
【0085】
実施例19では、アクリル樹脂溶液ではなくアクリル樹脂粒子を添加したが、アクリル樹脂溶液を添加したものと同様、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与でき、且つトナーのチャージアップを抑制できた。
【0086】
比較例1では本発明のアクリル樹脂を使用しなかったために、H/Hではトナーの帯電量が低く、L/Lでのトナーの帯電量はH/Hに対して大幅に増加し、ゴーストが悪化した。これは、トナーに対して迅速な摩擦帯電を付与できなかったこと、樹脂層のイオン導電性がなく、トナーがチャージアップしたことに起因している。
【0087】
比較例2及び比較例3では、ユニット(1)の成分を使用しなかった。そのため、トナーのチャージアップを抑制できず、L/Lでのトナーの帯電量はH/Hに対して大幅に増加し、ゴーストが悪化した。
【0088】
比較例6は導電性粒子を使用しなかったために、トナーに対して迅速に高い摩擦帯電を付与できず、またトナーのチャージアップも抑制できなかった。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【符号の説明】
【0091】
501・・・・像担持体(感光体ドラム)
502・・・・トナー層厚規制部材(磁性規制ブレード)
503・・・・ホッパ
504・・・・トナー
505・・・・マグネットローラ
506・・・・金属製円筒管(基体)
507・・・・樹脂層
508・・・・現像剤担持体(現像スリーブ)
509・・・・電源
510・・・・攪拌翼
511・・・・トナー層厚規制部材(弾性規制ブレード)
512・・・・剥ぎ取り部材
513・・・・現像スリーブとマグネットローラの間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体の表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体において、該樹脂層はアクリル樹脂及び導電性粒子を含有しており、
該アクリル樹脂は下記式(1)で示されるユニット及び下記式(2)で示されるユニットを有していることを特徴とする現像剤担持体:
【化1】

[式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。]、
【化2】

[式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R4、R5およびR6のうち少なくとも一つは炭素数6乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至5のアルキル基を示す。A-はアニオンを示す。]。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−221311(P2011−221311A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90966(P2010−90966)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】