説明

現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】現像カートリッジ内で、トナーを滞留させることなく撹拌する。
【解決手段】トナーTを収容する現像剤収容室61と、現像剤収容室61と連通部63で連通した現像室62とを形成する現像ケース35と、現像室62内に設けられた供給ローラ38と、現像剤収容室61内で供給ローラ38の回転軸に平行な回転軸を中心に回転自在に設けられ、回転方向上流側の端部より下流側の端部が内側に位置する複数の羽根72を有するアジテータ70と、アジテータ70に基端81が支持され、先端82が現像剤収容室61の底壁65に摺接される可撓性シート部材80とを備えて現像カートリッジ30Bを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トナーにより像を用紙上に形成して、このトナー像を定着して画像を得る画像形成装置においては、トナーが分子間力などにより凝集しないように、トナーを収容している容器内でトナーを撹拌している。
例えば、特許文献1に開示されている画像形成装置においては、回転軸に対して一定の角度をなして固定された撹拌板を複数設け、この撹拌板の一端部を連結する撹拌軸を回転軸と平行に設け、撹拌板と撹拌軸によりトナーを撹拌している。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−8756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置においては、撹拌板に沿って溜まったトナーを撹拌軸がすくい上げることでトナーを均一に撹拌できるとしているものの、複数の撹拌板は回転軸に対して一方向に一定の角度で傾斜しているため、撹拌板によってトナーは回転軸のいずれか一方の端部に向かって搬送されることとなり、この端部にトナーが滞留しがちとなる。また、撹拌板から滑り落ちて撹拌板の形状に沿ってトナー収容室の底面に溜まったトナーは、撹拌軸が通過する部分においては、撹拌されるものの、底面近傍のトナーは撹拌されにくい。このようなトナーの滞留は、特にトナー収容室内のトナーが少なくなってきたときに顕著である。
そして、トナーの滞留は、結果として画像を不鮮明にしたり、不要な部分にトナーが載るカブリの要因となる。
【0005】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、トナー収容室内でトナーが滞留しにくく、トナーの残量が少なくなっても良好に撹拌可能な現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための本発明の現像装置は、現像剤を収容する現像剤収容室と、この現像剤収容室と連通部で連通した現像室とを形成する現像ケースと、前記現像室内に設けられた供給ローラと、前記現像剤収容室内で前記供給ローラの回転軸に平行な回転軸を中心に回転自在に設けられ、回転方向上流側の端部より下流側の端部が内側に位置する複数の羽根を有する現像剤撹拌部材と、前記現像剤撹拌部材に基端が支持され、先端が前記現像剤収容室の底壁に摺接される可撓性シート部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような現像装置によれば、現像剤撹拌部材に設けられた羽根により、現像剤収容室にある現像剤は、現像剤攪拌部材の軸方向の外側から内側に向かって搬送される。そして、この内側に向けて搬送された現像剤は、可撓性シート部材が現像剤収容室の底壁を摺りながら現像室側の供給ローラに向けて搬送する。
そうすると、供給ローラには、軸方向の内側、つまりほぼ中央付近に多くの現像剤が搬送され、軸方向の両端付近には、現像室から搬送される現像剤が少ない。そのため、現像室内では、供給ローラの軸方向内側から外側へ向けて現像剤が流れ、この流れた現像剤は、余剰分が供給ローラの軸方向両端から、現像剤収容室へこぼれ落ちる。
このようにして、現像剤収容室においては、軸方向外側から内側へ、現像室においては、軸方向内側から外側への現像剤の流れができ、現像ケース内の全体においてトナーが流動し、軸方向端部においても滞留が起こりにくい。従って、現像ケース内の現像剤が、滞留することなく良好に撹拌される。
【0008】
前記した課題を解決するプロセスカートリッジは、前記した本発明の現像装置と、前記現像装置と結合する感光体ケースと、この感光体ケースに設けられ前記現像ローラと互いに押圧される感光体ドラムとを有してなる感光体カートリッジと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記した課題を解決する本発明の画像形成装置は、前記したプロセスカートリッジと、前記感光体ドラムを露光する露光装置と、前記プロセスカートリッジへ記録シートを搬送する搬送手段と、前記プロセスカートリッジで前記記録シートに形成された現像剤像を定着する定着手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の現像装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置によれば、現像剤撹拌部材に設けられた羽根と、可撓性シート部材により、現像ケース内で、供給ローラの軸方向の内外に向かう流れと、現像剤収容室と現像室の間で行き来する流れとが実現でき、現像剤が滞留することなく良好に撹拌される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図面において、図1は、本発明の実施形態に係るレーザプリンタの要部側断面図である。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体ケーシング2内に用紙3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に画像を形成するための画像形成部5などを備えている。
本体ケーシング2の前側(以下の説明において、図1における右を前、左を後とする。)には、開閉自在なフロントカバー2aが設けられており、フロントカバー2aを開いたときにできる開口から、後述するプロセスカートリッジ30が着脱自在となっている。
【0012】
<フィーダ部の構成>
フィーダ部4は、搬送手段の一例であり、本体ケーシング2内の底部に着脱可能に装着される給紙トレイ11と、給紙トレイ11の下部において前方が持ち上がるように揺動自在に設けられた用紙押圧板12と、用紙押圧板12を下側から持ち上げるリフトレバー12aを備えている。また、給紙トレイ11の前方の上方には給紙ローラ13および給紙パット14が設けられ、給紙ローラ13に対向してピンチローラ15が設けられている。さらに、給紙ローラ13の上縁の後方にはレジストローラ16が設けられている。
【0013】
そして、このように構成されるフィーダ部4では、給紙トレイ11内の用紙3が、リフトレバー12aおよび用紙押圧板12によって持ち上げられて給紙ローラ13側に寄せられ、この給紙ローラ13および給紙パット14で送り出されて各種ローラ13〜16を通った後一枚ずつ画像形成部5に搬送される。
【0014】
<画像形成部の構成>
画像形成部5は、スキャナ部20、プロセスカートリッジ30、定着部40などを備えている。
【0015】
<スキャナ部の構成>
スキャナ部20は、露光装置の一例であり、本体ケーシング2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず。)、回転駆動されるポリゴンミラー21、レンズ22,23、反射鏡24,25などを備えている。レーザ発光部から発光される画像データに基づくレーザビームは、鎖線で示すように、ポリゴンミラー21、レンズ22、反射鏡24、レンズ23、反射鏡25の順に通過あるいは反射して、プロセスカートリッジ30の感光ドラム32の表面上に高速走査にて照射される。
【0016】
<プロセスカートリッジの構成>
プロセスカートリッジ30は、スキャナ部20の下方に配設され、本体ケーシング2に対して着脱自在に装着される構造となっている。このプロセスカートリッジ30は、感光ドラム32を支持した感光体カートリッジ30Aと、この感光体カートリッジ30Aに着脱自在に装着され、内部に現像剤としてのトナーを収容した現像カートリッジ30Bとからなる。
感光体カートリッジ30Aは、外枠を構成する感光体ケース31内に、感光ドラム32、スコロトロン型帯電器33および転写ローラ34が主に設けられている。
【0017】
現像カートリッジ30Bは、現像装置の一例であり、感光体カートリッジ30Aに対して着脱自在に装着されており、現像ケース35に、現像ローラ36、供給ローラ38、ブレード組立体39およびアジテータ70を備えている。このうち、現像ローラ36、供給ローラ38およびアジテータ70は、現像ケース35に回転可能に支持されている。そして現像ケース35内のトナーTは、供給ローラ38の矢印方向(反時計方向)への回転により、現像ローラ36に供給され、このとき、供給ローラ38と現像ローラ36との間で正に摩擦帯電される。現像ローラ36上に供給されたトナーTは、現像ローラ36の矢印方向(反時計方向)への回転に伴って、層厚規制のためのブレード組立体39と現像ローラ36との間に進入し、一定厚さの薄層として現像ローラ36上に担持される。
【0018】
感光ドラム32は、現像カートリッジ30Bと結合する感光体ケース31に、矢印方向(時計方向)へ回転可能に支持されている。この感光ドラム32は、ドラム本体が接地されるとともに、その表面部分が正帯電性の感光層により形成されている。
【0019】
スコロトロン型帯電器33は、感光ドラム32の上方に、感光ドラム32に接触しないように、所定間隔を隔てて対向して配置されている。このスコロトロン型帯電器33は、タングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器であり、感光ドラム32の表面を一様に正極性に帯電させるように構成されている。
【0020】
転写ローラ34は、転写手段の一例であり、感光ドラム32の下方において、この感光ドラム32に対向して接触するように配置され、感光体ケース31に、矢印方向(反時計方向)へ回転可能に支持されている。この転写ローラ34は、金属製のローラ軸に、導電性のゴム材料が被覆されて構成されている。転写ローラ34には、転写時に、定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0021】
そして、感光ドラム32の表面は、スコロトロン型帯電器33により一様に正帯電された後、スキャナ部20からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。ここで、「静電潜像」とは、一様に正帯電されている感光ドラム32の表面のうち、レーザビームによって露光されて電位が下がっている露光部分をいう。次いで、現像ローラ36の回転により、現像ローラ36上に担持されているトナーが、感光ドラム32に対向して接触する時に、感光ドラム32の表面上に形成される静電潜像に供給される。そして、トナーTは、感光ドラム32の表面上で選択的に担持されることによって可視像化され、これによって反転現像によりトナー像が形成される。
【0022】
その後、感光ドラム32と転写ローラ34とは、用紙3を両者間で挟持して搬送するように回転駆動され、感光ドラム32と転写ローラ34との間を用紙3が搬送されることにより、感光ドラム32の表面に担持されているトナー像が用紙3上に転写される。
【0023】
<定着部の構成>
定着部40は、定着手段の一例であり、プロセスカートリッジ30の下流側に配設され、加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向して配置され加熱ローラ41との間で用紙3を挟持する加圧ローラ42を備えている。そして、このように構成される定着部40では、用紙3上に転写されたトナーを、用紙3が加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する間に熱定着させ、その後、その用紙3を、排紙パス44に搬送するようにしている。排紙パス44に送られた用紙3は、排紙ローラ45によって排紙トレイ46上に排紙される。
【0024】
次に現像カートリッジ30Bの詳細について説明する。図2は、現像カートリッジの拡大断面図であり、図3は、現像カートリッジを分解した状態を上から見た図であり、図4は、アジテータの図3におけるZ矢視図である。
図2に示すように、現像カートリッジ30Bは、現像ケース35内に、現像剤収容室61と、現像室62とに区画され、現像剤収容室61と現像室62とは、連通部63により連通している。
図3に示すように、連通部63は、供給ローラ38の全幅(正確には軸部38aを含まないローラ部分の軸方向の全長さ)にわたって形成されており、現像ケース35内の全幅で、現像剤収容室61と現像室62との間でトナーTが相互に行き来できるように構成されている。なお、連通部63の幅は、最大印字幅以上の幅を有していることで、後述するようにトナーTが、少なくとも印字幅の範囲で滞留することなく流動して、印字範囲において良好なトナーTを提供することができる。
【0025】
現像剤収容室61には、トナーTが収容されている。このトナーTを撹拌するため、現像剤収容室61内には、現像剤撹拌部材としてのアジテータ70が配置されている。
アジテータ70は、現像ケース35の両側壁35a,35bに回転可能に支持されている。アジテータ70は、公知の撹拌部材と同様に図示しないモータから回転駆動力が付与されることで、現像剤収容室61内で回転してトナーTを撹拌するようになっている。
【0026】
現像ケース35の底壁は、供給ローラ38の前側で立ち上がって立壁35cを形成している。立壁35cは、現像ケース35の3分の1程度の高さまで形成され、現像カートリッジ30Bの使用時における姿勢において、供給ローラ38のローラ面の最上部とほぼ同じ高さとなっている。このように、供給ローラ38のローラ面の最上部と同じ高さであることで、現像室62内には、供給ローラ38上にトナーTが積もり、供給ローラ38の軸方向の全体にわたってトナーがまんべんなく供給されやすくなっている。この観点から、立壁35cは、現像カートリッジ30Bの使用時の姿勢において、供給ローラ38のローラ面の最上部より高く形成されるのがより望ましい。
現像剤収容室61の形状は、その底壁65が、ほぼアジテータ70の回転軌跡に沿うように円筒状の表面をなし、立壁35cの最上部からは、この円筒状に形成された底壁65に接するように傾斜壁35dが形成されている。
なお、立壁35cおよび傾斜壁35dは、現像室62と現像剤収容室61とを仕切る部分である。
【0027】
現像ケース35の上壁からは、立壁35cの最上部に向けて仕切壁35eが下がるように形成されており、立壁35cと仕切壁35eの間が前記した連通部63となっている。
また、現像ケース35の側壁35a,35bには、トナーTの残量を光学的に検出するための透明な検出窓66が設けられている(図2に側壁35a側のみ図示)。
なお、図3に示すように、レーザプリンタ1の本体には、一方の検出窓66の近傍に発光部91を備え、他方の検出窓66に受光部92を備え、この発光部91および受光部92からなる光センサにより、トナーTの残量を検出している。
【0028】
アジテータ70は、回転支軸71と、羽根72と、連結部73と、ワイパー取付部74と、ワイパー75と可撓性シート部材80とを備えて構成されている。
回転支軸71は、供給ローラ38の軸方向、つまり現像ケース35の左右方向に沿って延びる軸であり、両端が現像ケース35の側壁35a,35bに枢支されている。
【0029】
羽根72は、トナーTを撹拌しつつ搬送する板状の部材であり、回転支軸71に複数枚固定されている。羽根72の板面の方向は、回転支軸71の軸方向に対し斜めに固定されており、詳細には、回転支軸71に近い側が回転支軸71の軸方向中央(単に内側という)に寄り、遠い側が回転支軸71の両端(端に外側という)に寄るように斜めになっている。羽根72の回転支軸71に対する角度θは、望ましくは40〜60°であり、最も望ましくは45°である。このような角度にすることで、トナーTを効率良く内側に寄せることができる。すなわち、角度θが小さすぎると、トナーTを内側に移動させることができないし、大きすぎると、トナーTを内側に移動させることはできるが、一回転で移動させることができる距離がわずかになり、効率が悪くなる。
なお、羽根72は、トナーTを内側に移動させるのに十分な剛性を有して構成されている。
【0030】
アジテータ70は、図2に示す矢印Rのように、底壁65に溜まったトナーTを現像室62側に送るため図2における時計回りに回転される。羽根72は、このアジテータ70の回転方向との関係でいうと、回転方向の上流側の端部より下流側の端部が内側に位置する向きに斜めになっている。
【0031】
図3に示すように、羽根72は、連通部63の幅に対応する幅にわたって、互いに一定の間隔を隔てて設けられている。また、回転支軸71の軸方向中心を境に左右両側に4枚ずつ左右対称に配設されている。もっとも、羽根72は必ずしも左右対称に配置される必要はなく、一定の間隔で設けられている必要もない。羽根72は、現像剤収容室61内にあるトナーTをおよそ外側から内側へ搬送できるように回転方向上流側の端部より下流側の端部が内側に位置するように構成されていればよい。
【0032】
羽根72は、図2に示すように、回転支軸71から離れた先端72aが、現像剤収容室61の底壁65に沿った輪郭を有している。このため、現像剤収容室61の底壁65に溜まったトナーTを可能な限りすべて掃くように撹拌することができるようになっている。また、図3に示すように、回転方向上流側の端部が、外側に隣接する羽根72の下流側の端部と、回転支軸71の軸方向において長さLだけオーバーラップしている。このため、底壁65に溜まったトナーTを、余すことなく羽根72で掃いて、内側に効率的に搬送することができるようになっている。
【0033】
連結部73は、回転支軸71の軸方向に延び、羽根72の回転方向下流側の部分を互いに連結する部材である。連結部73は、図2における下面に平面部を有する短冊状の部材である。この下側の平面部は、可撓性シート部材80を貼り付ける貼着部73aである。
連結部73は、回転支軸71から離れた位置で羽根72を連結しており、そのため、図4に示すように、回転支軸71との間にトナー流通孔(通路)79が形成されている。
【0034】
ワイパー取付部74は、回転支軸71の軸方向両端付近に2カ所設けられている。ワイパー取付部74も、図2に示すように、羽根72に対して、回転方向下流側に位置するように設けられている。
【0035】
ワイパー75は、検出窓66に付着したトナーTを拭き取る部材であり、厚さ2mm程度の塩化ビニルシートやゴムシートなど、可撓性の部材が用いられる。ワイパー75は、検出窓66に対向する、外側方向の縁部75aが直線に形成され、ほぼ矩形をなしている。ワイパー75は、前記したワイパー取付部74に取り付けられる。
【0036】
可撓性シート部材80は、現像剤収容室61の底壁65に溜まったトナーTを現像室62へ向けて掻き取りながら搬送する部材である。可撓性シート部材80は、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの可撓性に富んだ樹脂製のシートなどからなる。
可撓性シート部材80の長さ(貼着部73aに貼着される基端81から先端82までの大きさ)が、先端82が底壁65に摺接できる大きさに形成されている。また、この長さは、可撓性シート部材80が現像室62に向いたときに、現像室62内でその先端82が伸びきれる大きさに形成されている。これにより、可撓性シート部材80は、その先端82が底壁65から傾斜壁35dを摺接した後、現像室62内で撓みが回復して伸びきるように作用することで勢いよくトナーTを現像室62に搬送できるようになっている。
【0037】
そして、幅方向の大きさは、先端82側が現像剤収容室61の全幅に合うように形成され、基端81側が、貼着部73aの幅に合うように形成されている。貼着部73aは、現像剤収容室61の幅よりは若干小さく形成されているので、可撓性シート部材80の基端81側の幅も現像剤収容室61の幅よりは若干小さく形成されている。このように、基端81の幅が小さく、両端から所定距離離間した内側部分においてのみ可撓性シート部材80がアジテータ70に固定されていることで、可撓性シート部材80は、両端付近が撓むので、トナーTの搬送力が若干弱くなっている。すなわち、可撓性シート部材80は、その両端部におけるトナーTの搬送力が中央部に比べ小さくなっている。
【0038】
以上のように構成されたレーザプリンタ1における本発明の作用効果について説明する。
印刷を依頼する端末からの指示により、レーザプリンタ1は用紙3の供給、用紙3へのトナー像の転写および定着を行う。この際に、トナーTは、現像剤収容室61内でアジテータ70に攪拌されつつ供給ローラ38に供給される。
【0039】
図5は、トナーが十分に多いときの現像カートリッジの動作を説明する断面図であり、図6は、トナーが少ないときの現像カートリッジの動作を説明する断面図であり、図7(a)は、図6(b)の状態におけるトナーの流れを示す図2のA−A断面図に相当する図であり、図7(b)は、ワイパー部分の拡大図であり、図7(c)は、(a)のVII−VII断面図であり、図8(a)は、図7のVIII−VIII断面図であり、図8(b)は、供給室内でのトナーの流れを概念的に示す図2のA−A断面図に相当する図であり、図9は、トナーの流れを概念的に示した図2のA−A断面図に相当する図である。
【0040】
図5(a)に示すように、トナーTが多いときには、アジテータ70が回転すると、羽根72の先端72aが現像剤収容室61の底(底壁65)に溜まったトナーTに入り込む。
そして、図5(b)に示すように、羽根72が回転して先端72aが現像室62に向くときには、可撓性シート部材80が底壁65に先端82を摺接させながら回転するので、トナーTが十分に現像室62に搬送される。また、このとき、余分なトナーTは、回転支軸71と連結部73の間のトナー流通孔79を通って底壁65へ落ち始める。
【0041】
そして、図5(c)に示すように、さらにアジテータ70が回転して、先端72aが上に向いた姿勢となると、可撓性シート部材80がさらにトナーTを現像室62へ向けて押し込むが、現像室62には必要以上にトナーTが入ることができないので、トナー流通孔79から底壁65へ向けてトナーTが流れ落ちる。このとき、トナーTが雪崩のように流れ落ちるため、単にトナーTを押し動かすだけの場合と異なり、トナーTが細かい各粒子に分散した状態が維持される。
【0042】
図6(a)に示すように、トナーTが少ないときには、アジテータ70の羽根72は、先端72aがトナーTに入り込んで現像室62側に押していく。そして、図6(b)に示すように羽根72の先端72aが上を向く時には、羽根72に載っていたトナーTが、羽根72の表面を伝って内側へ流れ落ちる。この状態を示したのが図7(a)および(b)である。図7(a)および(b)に示すように、羽根72の先端72aが後方(現像室62側)から上に向くにつれて、羽根72は上向きになり、トナーTは、この羽根72の上に掬われるようにして載る。ところが、羽根72は、回転方向の上流側よりも下流側が内側を向くように回転支軸71に対して傾斜しているため、トナーTは、羽根72が上向きになったときには羽根72の表面を滑り落ちて内側に移動する。
【0043】
さらに、アジテータ70が回転すると、可撓性シート部材80は、その先端82を底壁65に摺接させながら少ないトナーTを掻き集め、図6(c)に示すように、傾斜壁35dの後端に位置したところでトナーTを勢いよく現像室62に搬送する。このとき、トナーTは、現像剤収容室61内で内側に寄せられていたから、内側に寄った後すぐに現像室62に搬送されることになる。そのため、図8(a)に示すように、供給ローラ38には、中央に多くのトナーTが搬送され、供給ローラ38の中央付近が盛り上がるようにトナーTが載る。また、可撓性シート部材80の搬送力が、中央よりも両端付近の方が小さくなっていることも相俟って、供給ローラ38の中央に多くのトナーTが搬送される。
アジテータ70がさらに回転すると、可撓性シート部材80は、図6(d)に示すように、先端82が現像室62内で伸びきる。
【0044】
供給ローラ38に載ったトナーTは、供給ローラ38の表面付近のものは、供給ローラ38の表面に載って現像ローラ36に搬送され、余剰のものは、供給ローラ38の回転に伴ってその上で転がされるように撹拌される。撹拌されたトナーTは、高い方から低い方へ流動しようとするので、図8(a)、(b)のように供給ローラ38の中央から両端(外側)へ向かって流れる。供給ローラ38の両端へ流れたトナーTは、さらに現像剤収容室61側へこぼれ落ちる。
もちろん、すべてのトナーTがこの流れに従うわけではなく、供給ローラ38の中央の上部から現像剤収容室61に戻るように落ちるものもあるが、供給ローラ38の中央に多くのトナーTを搬送した結果、上述したような軸方向への流れも発生する。
【0045】
現像剤収容室61に戻ったトナーTは、羽根72が再度底壁65付近を撹拌するときに、内側に寄せられ、上述したのと同じように現像室62への移動と、現像剤収容室61への還流とを繰り返す。
【0046】
以上のようにして、本実施形態のレーザプリンタ1によれば、図9に示すように、トナーTは、現像剤収容室61内では、内側に寄るように移動し、現像室62内では、内側から外側へ離れるように移動する。そのため、現像カートリッジ30B内で、トナーTが滞留することなく循環して、トナーTを良好な状態に保つことができる。
【0047】
本実施形態のレーザプリンタ1は、上述のように、トナーTの撹拌が良好に行われるだけでなく、以下に説明するように、トナーTの残量を的確に検知できる。
【0048】
まず、トナーTの残量の判定方法について説明すると、トナーTの残量は、光センサの光の通過の有無のみで判断されるわけではなく、光が通過してから次に光が遮断されるまでの時間で判断される。光が遮断されるまでの時間が短い場合には、トナーTが再度底壁65に落ちてきたということであるので、残量はまだ多いと判断することができ、光が遮断されるまでの時間が長い場合には、なかなかトナーTが落ちてこないか、羽根72の通過によって初めて遮断されるということなので、残量が少ないと判断することができる。
【0049】
本実施形態の現像カートリッジ30Bでは、ワイパー75が羽根72の回転方向下流側に取り付けられている。そして、可撓性シート部材80も、羽根72の回転方向下流側に取り付けられている。そのため、図6(b)および(c)に示すように、羽根72によるトナーTの撹拌と、可撓性シート部材80によるトナーTの掃き出しが終わるのと同時にワイパー75が検出窓66を拭き取るようになっている。このようにして、検出窓66が有効に利用される時間が可及的に長くなっているので、本実施形態のレーザプリンタ1は、トナーTの残量を的確に判断することができる。
【0050】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、回転支軸71から離れた連結部73に可撓性シート部材80を固定したが、羽根72自体に可撓性シート部材80の取付部を形成しておき、係る取付部に可撓性シート部材80を固定してもよい。また、回転支軸71に可撓性シート部材80を固定することもできる。
また、連通部63は、必ずしも現像剤収容室61の全幅にわたって形成されなくともよいが、現像剤収容室61の全幅にわたって形成されることで、現像カートリッジ30B内でのトナーTの滞留を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザプリンタの要部側断面図である。
【図2】現像カートリッジの拡大断面図である。
【図3】現像カートリッジを分解した状態を上から見た図である。
【図4】アジテータの図3におけるZ矢視図である。
【図5】トナーが十分に多いときの現像カートリッジの動作を説明する断面図である
【図6】トナーが少ないときの現像カートリッジの動作を説明する断面図である。
【図7】(a)は、図6(b)の状態におけるトナーの流れを示す図2のA−A断面図に相当する図であり、(b)は、ワイパー部分の拡大図であり、(c)は、(a)のVII−VII断面図である。
【図8】(a)は、図7のVIII−VIII断面図であり、(b)は、供給室内でのトナーの流れを概念的に示す図2のA−A断面図に相当する図である。
【図9】トナーの流れを概念的に示した図2のA−A断面図に相当する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザプリンタ
3 用紙
4 フィーダ部
5 画像形成部
6 現像ローラ
20 スキャナ部
30 プロセスカートリッジ
30A 感光体カートリッジ
30B 現像カートリッジ
31 感光体ケース
32 感光ドラム
35 現像ケース
35c 立壁
35d 傾斜壁
35e 仕切壁
36 現像ローラ
38 供給ローラ
40 定着部
61 現像剤収容室
62 現像室
63 連通部
65 底壁
66 検出窓
70 アジテータ
71 回転支軸
72 羽根
73 連結部
75 ワイパー
79 トナー流通孔
80 可撓性シート部材
81 基端
82 先端
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する現像剤収容室と、この現像剤収容室と連通部で連通した現像室とを形成する現像ケースと、
前記現像室内に設けられた供給ローラと、
前記現像剤収容室内で前記供給ローラの回転軸に平行な回転軸を中心に回転自在に設けられ、回転方向上流側の端部より下流側の端部が内側に位置する複数の羽根を有する現像剤撹拌部材と、
前記現像剤撹拌部材に基端が支持され、先端が前記現像剤収容室の底壁に摺接される可撓性シート部材と、
を備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記複数の羽根は、前記連通部の幅に対応する幅にわたって、互いに一定の間隔を隔てて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記可撓性シート部材は、前記先端が前記連通部へ向いたときに、前記現像室内で伸びきれる幅および長さに形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記可撓性シート部材は、その両端部における現像剤搬送力が中央部に比べ小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記複数の羽根は、前記回転軸に対し40〜60度の角度をなしていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤撹拌部材の回転軸と、前記可撓性シート部材との間に、前記現像剤が通過可能な通路が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像ケースは、前記現像室と前記現像剤収容室を仕切る部分の高さが前記供給ローラの最上部よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記羽根は、回転方向上流側の端部が、外側に隣接する羽根の下流側の端部と、前記現像剤撹拌部材の回転軸の方向においてオーバーラップしていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の現像装置と、
前記現像装置と結合する感光体ケースと、この感光体ケースに設けられ前記現像ローラと互いに押圧される感光体ドラムとを有してなる感光体カートリッジと、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジと、
前記感光体ドラムを露光する露光装置と、
前記プロセスカートリッジへ記録シートを搬送する搬送手段と、
前記プロセスカートリッジで前記記録シートに形成された現像剤像を定着する定着手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−203533(P2008−203533A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39566(P2007−39566)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】