説明

現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法

【課題】現像剤の帯電立ち上がりを向上させ、現像剤の劣化に対して強いキャリアを用いることで画像を長期にわたり安定化させる。
【解決手段】現像剤は、トナーとキャリアと、を含み、キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層とを有し、該被覆層は、導電性微粒子と被覆樹脂とを含有し、前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、前記被覆樹脂は、シロキサン結合可能な特定のアクリル酸系エステル二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法に関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
【0004】
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0005】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0006】
二成分系現像剤を用いる現像装置の構成には、図12に示す構成がある(例えば、特許文献1)。
【0007】
図12に示す現像装置4の構成では、現像剤担持体としての現像スリーブ5が配置されている位置の下方に現像剤供給用のオーガ401が配置され、水平方向において現像剤供給用オーガ401の軸線に平行する攪拌用のオーガ402が配置されている。供給用および攪拌用の各オーガ401,402は軸方向端部でこれらオーガが配置されている空間同士が連通している。
【0008】
図12に示す構成においては、各スクリューオーガが相反する方向に現像剤を移送することにより、現像剤を各オーガが配置されているスペース間で循環させる。これにより、供給用オーガ401から現像スリーブ5に対して現像剤の汲み上げと現像後の現像スリーブ5に担持されている現像剤の回収とを行うようになっている。
【0009】
上述した現像剤の供給および回収を行うための構成として、現像スリーブ5の内部には周方向に沿って、現像スリーブ5に対向して磁気ブラシを穂立ちさせる現像主極および現像スリーブ上で現像剤を移動される搬送磁極そして現像後のスリーブ周面から現像剤を剥離するための反撥磁界を形成可能な剥離磁極が設けられており、反撥磁極を設けることにより奇数極、具体的には7極の磁石が用いられている。
【0010】
反撥磁極により現像スリーブ5の周面から剥離されて回収される現像剤は、一点鎖線の矢印F1で示すように、
一旦、供給用オーガ401に回収され、再度、搬送磁極により汲み上げられて現像スリーブ5の周面に供給されることになる。
これにより、現像剤は、同じ位置に存在する供給用の搬送路および回収用の搬送路間を循環しながらオーガの軸方向に搬送され、その過程で現像スリーブ側の磁極と多数回対向しながら移動する。現像剤は、磁極と対向した際に穂立ち状態とされ、磁極から離れると穂立ちが崩れて凝縮するという過程を繰り返すことによりキャリアとトナーとの摩擦接触が行われてトナーの摩擦帯電が行われる。
【0011】
穂立ち状態および穂立ちが崩れて凝縮することによる摩擦接触が繰り返される現像剤は、例えば、オーガの軸方向に搬送されることから、その方向での搬送過程においてトナーの消費量が多くなると搬送方向下流側でのトナーの濃度が低下する。
【0012】
例えば、画像面積が大きい画像を現像するような場合、オーガの軸方向でのトナーの消費は、供給される側で大量に消費されてしまう可能性が高く、搬送方向下流側では現像剤の含まれるトナー量が少なくなる。このため、現像スリーブの軸方向で一様なトナーの濃度を維持することができないことがある。トナーの濃度不足は画像品質の低下に繋がる。
【0013】
上述した不具合は、現像剤の供給搬送路と回収用搬送路とが共通して用いられることに原因がある。つまり、回収された現像剤はトナーが不足しており、このような現像剤を供給搬送路に再度搬送してしまうと、供給される現像剤内でのキャリアの含有比率が高くなってしまい、供給される現像剤中のキャリアとトナーとの比率が所定比率と異なることになる。
【0014】
そこで、図12に示した構成の一部を変更して、現像剤の供給搬送路と回収搬送路とを区別して供給搬送路内に回収された現像剤が混入しないようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0015】
図13には、特許文献1に開示されている現像装置の要部が示されており、同図において、現像装置4のハウジング内には、仕切り壁Sによって上下方向で仕切られて第1のオーガ6,第2のオーガ8をそれぞれ収容する攪拌室7、9が設けられている。
【0016】
一方、特許文献1に開示されているように、オーガを収容する攪拌室を仕切り壁により仕切るようにした構成に関する別の例として、特許文献2に開示された構成がある。
【0017】
図14は、特許文献2に開示された構成を示す図であり、同図において、現像装置4のハウジング内には、現像スリーブ5に対して現像剤を供給するため供給用オーガ8および現像剤の攪拌用オーガ11に加えて現像領域を通過した現像スリーブ5上の現像剤を回収する回収用オーガ6が設けられ、供給用オーガ8が位置する供給搬送路9と回収用オーガ6が位置する回収用搬送路7とは仕切り壁133によって仕切られ、攪拌用オーガ11が位置する攪拌搬送路10と回収用搬送路7とは仕切り壁134によって仕切られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に開示されている構成では、回収された現像剤が攪拌用のオーガ402によって軸方向に搬送されてそのまま供給用のオーガ401に向け搬送されることから、新たなトナーが補給された場合でも攪拌用のオーガ402による攪拌が不十分となりがちであり、トナーの帯電不足による画像濃度の不均一や濃度低下を来す虞がある。特に、回収される現像剤のトナー濃度が低下しやすい高印字率の画像形成時には顕著となる。
【0019】
一方、特許文献2に開示されている構成では、現像スリーブ5から回収される現像剤が回収用搬送路9に搬送され、供給用搬送路7に混入することがなく、さらには、回収された現像剤がそのまま攪拌用搬送路10内に入り込むこともなく、攪拌されたうえで供給用搬送路7に向け搬送されることから、図12に示した構成で生じる不具合を解消することが期待できる。
【0020】
しかし、これら特許文献1及び2に開示されている構成に用いられる現像剤担持体である現像スリーブの構成には、次のような問題がある。
【0021】
特許文献1及び2に開示されている現像スリーブは、内部に磁気ブラシ形成用、つまり現像剤を穂立ちさせる磁極を備えているが、その磁極数が、特許文献1においては、図示されているように5極とされ、そして特許文献2においては、図示されていないものの、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収する回収スクリューに向け現像剤が移動することが記載されていることから、図12に示した場合あるいは特許文献1と同様に、5又は7極程度であることが予想できる。
【0022】
一方、特許文献1に開示されている構成においては、図12に示した場合と違って、供給搬送路と回収搬送路とが共通していないで独立した構成となっていることからして、現像剤は、供給・回収搬送路間での循環作用が得られない。
【0023】
このため、回収される現像剤は、上述した磁極を通過する回数が5〜7回程度しかない状態のままで回収されることになり、穂立ち・穂立ちの崩れを繰り返す際の摩擦接触がきわめて低い状態が得られてしまう。この結果、摩擦接触の機会が要因となる摩擦帯電が不十分となり、トナーの帯電に長い時間が必要となるという問題が生じる。
【0024】
特許分権2に開示されている構成では、攪拌搬送路が独立して設けられていることから、回収された現像剤を対象とした攪拌効率の向上が望めるが、現像剤交換後や長時間の放置時にはトナーの帯電量も失われがちであることから、キャリアへの付着力低下を生じて飛散しやすくなり、結果として、装置内汚染を招く虞がある。
【0025】
ところで、この種の現像装置においては、現像領域を通過した現像スリーブ5上に残存する現像剤が回収された後、新たな現像剤の供給を受けることで現像剤スリーブ5上に担持される現像剤の濃度を一定に維持することが必要とされる。
【0026】
しかし、現像領域を通過した現像スリーブ5上から現像剤の回収が良好に行えないと、現像スリーブに担持される現像剤濃度が変化し、所定濃度の画像が得られないという問題が生じる。つまり、現像スリーブ5上に残存したままの現像剤濃度はトナーの消費により濃度が低下しており、このまま現像処理に供されると、濃度低下を起こしたゴースト画像が得られるなどの不具合が生じる。
【0027】
本発明は、上記従来の現像装置における問題に鑑み、現像剤の帯電立ち上がりを向上させ、また、現像方式を改善させることでトレードオフの関係が予想される現像剤の劣化に対して強い静電荷現像剤用キャリアを用いることで画像を長期にわたり安定化させる現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために本発明に係る現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法は、具体的には下記(1)〜(15)に記載の技術的特徴を有する。
【0029】
(1):像担持体に形成されている静電潜像に現像剤を供給する現像剤担持体を備え、前記現像剤は、トナーと、静電潜像現像剤用キャリアと、を含み、前記現像剤担持体は、前記現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段を内部に有し、前記静電潜像現像用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層と、を有し、該被覆層は、導電性微粒子と、被覆樹脂と、を含有し、前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、前記被覆樹脂は、下記のA成分及びB成分で表される二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする現像装置である。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【0033】
(2):前記被覆樹脂は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする上記(1)に記載の現像装置である。
【0034】
(3):前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも導電性被覆層を含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の現像装置である。
【0035】
(4):前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも二酸化スズを含む被覆層を有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の現像装置である。
【0036】
(5):前記現像剤担持体は、当該現像剤担持体の回転中心Pを中心に回転し、前記磁界発生手段は、当該磁界発生手段の回転中心P’を中心に回転し、前記P’は、前記像担持体と前記現像剤担持体との近接位置に対して、前記Pよりも近接配置されていることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の現像装置である。
【0037】
(6):前記現像剤担持体は、磁気遮蔽部材を内部に有し、該磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段における前記像担持体との対向側に対して反対側に、当該磁界発生手段の一部を覆うように配置されてなることを特徴とする上記(5)に記載の現像装置である。
【0038】
(7):上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の現像装置を具備してなることを特徴とする画像形成装置である。
【0039】
(8):少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする上記(7)に記載の画像形成装置である。
【0040】
(9):現像剤担持体に担持された現像剤を像担持体に形成されている静電潜像に供給する現像方法であって、前記現像剤は、トナーと、静電潜像現像剤用キャリアと、を含み、前記現像剤担持体は、前記現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段を内部に有し、前記静電潜像現像用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層と、を有し、該被覆層は、導電性微粒子と、被覆樹脂と、を含有し、前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、前記被覆樹脂は、下記のA成分及びB成分で表される二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする現像方法である。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【0044】
(10):前記被覆樹脂は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする上記(9)に記載の現像方法である。
【0045】
(11):前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも導電性被覆層を含むことを特徴とする上記(9)または(10)に記載の現像方法である。
【0046】
(12):前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも二酸化スズを含む被覆層を有することを特徴とする上記(9)乃至(11)のいずれかに記載の現像方法である。
【0047】
(13):前記現像剤担持体は、当該現像剤担持体の回転中心Pを中心に回転し、前記磁界発生手段は、当該磁界発生手段の回転中心P’を中心に回転し、前記P’は、前記像担持体と前記現像剤担持体との近接位置に対して、前記Pよりも近接配置されていることを特徴とする上記(9)乃至(12)のいずれかに記載の現像方法である。
【0048】
(14):前記現像剤担持体は、磁気遮蔽部材を内部に有し、該磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段における前記像担持体との対向側に対して反対側に、当該磁界発生手段の一部を覆うように配置されてなることを特徴とする上記(13)に記載の現像方法である。
【0049】
(15):上記(9)乃至(14)のいずれかに記載の現像方法を具備してなることを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、現像剤の帯電立ち上がりを向上させ、また、現像方式を改善させることでトレードオフの関係が予想される現像剤の劣化に対して強い静電荷現像剤用キャリアを用いることで画像を長期にわたり安定化させる現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例による現像装置が用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる現像装置の構成及び作用を説明するための模式図である。
【図3】図2に示した現像装置の要部外観を示す斜視図である。
【図4】図2に示した現像装置内での現像剤の流れを説明するための模式図である。
【図5】図3において矢印Jで示す方向からみた断面を示す模式図である。
【図6】図2に示した現像装置内での現像剤の流れに関する別例を説明するための模式図である。
【図7】図2に示した現像装置におけるトナー補給部の構成を説明するための要部斜視図である。
【図8】図3に示した現像装置における一部の部材を取り除いた状態を示す要部斜視図である。
【図9】図2に示した現像装置における特徴部を説明するための側面視的な模式である。
【図10】図9に示した特徴部に用いられる現像剤担持体の構成を説明するための斜視図である。
【図11】図9に示した現像剤担持体とこれに内包される磁界発生手段との支持構造を説明するための要部断面図である。
【図12】現像装置における現像剤供給機構の従来例を説明するための模式図である。
【図13】図12に示した従来例における不具合を解消するために従来知られている一構成を説明するための模式図である。
【図14】図13とは別の例を説明するための模式図である。
【図15】粉体抵抗測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明に係る現像装置は、像担持体に形成されている静電潜像に現像剤を供給する現像剤担持体を備え、前記現像剤は、トナーと、静電潜像現像剤用キャリアと、を含み、前記現像剤担持体は、前記現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段を内部に有し、前記静電潜像現像用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層と、を有し、該被覆層は、導電性微粒子と、被覆樹脂と、を含有し、前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、前記被覆樹脂は、下記のA成分及びB成分で表される二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする。
【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【0056】
次に、本発明に係る現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0057】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による現像装置を用いる画像形成装置を示しており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
【0058】
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0059】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニットを備えている。
【0060】
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0061】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体(像担持体)の表面にレーザ光を照射する。
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0062】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。
帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
【0063】
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
【0064】
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0065】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
【0066】
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
【0067】
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図1中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0068】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図1中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図1中右側に配設された一方の張架ローラ23は、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
【0069】
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0070】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路48に向けて送り出される。
【0071】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路46,48は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路48内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
【0072】
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0073】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0074】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ部100筐体の図1中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0075】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0076】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0077】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0078】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0079】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図1中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図1中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0080】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0081】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
【0082】
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、図2では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
【0083】
図2に示すように感光体1は図2中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
【0084】
現像装置4は、図2中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の静電潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0085】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81を備え、複数の磁極からなり図2中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82を内包している。現像ローラ5は本発明の特徴部であり詳細は後述する。
【0086】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2に示す紙面の手前側(以下、便宜上、図2中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0087】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクタブレード12を備えている。
【0088】
現像ローラ5の感光体1Yとの対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
【0089】
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0090】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
【0091】
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図2中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0092】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図2中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
【0093】
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
【0094】
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図2中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
【0095】
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0096】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクタブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
【0097】
現像ローラ5の直径はφ25(mm)、ドクタブレード12及び感光体1とのギャップは0.3(mm)程度となっている。
【0098】
現像後の現像剤は回収搬送路7にて回収が行われ、図2中手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第二仕切り壁134の開口部で、攪拌搬送路10へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路10における現像剤搬送方向上流側の第二仕切り壁134の開口部の付近で攪拌搬送路10の上側には、図7に示すように、後述するトナー補給口95から攪拌搬送路10にトナーが供給される。
【0099】
次に、3つの現像剤搬送路内での現像剤の循環について説明する。
図3は現像剤搬送路内の現像剤の流れを説明する現像装置4の斜視断面図である。図3中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0100】
また、図4は、現像装置4内の現像剤の流れの模式図であり、図3と同様、図4中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0101】
攪拌搬送路10から現像剤の供給を受けた供給搬送路9では、現像剤が移動しながら現像ローラ5に接触して供給される。
【0102】
そして、現像ローラ5に供給されずに供給搬送路9の搬送方向下流端まで移動した余剰現像剤は第一仕切り壁133の余剰開口部92より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印E)。
【0103】
一方、現像ローラ5に供給された現像剤は現像領域で現像に用いられた後、現像ローラ5から分離・離脱して、回収搬送路7に受け渡される。現像ローラ5から回収搬送路7に受け渡され、回収スクリュー6によって回収搬送路7の搬送方向下流端まで搬送された回収現像剤は第二仕切り壁134の回収開口部93より攪拌搬送路10に供給される(図4中矢印F)。
【0104】
そして、攪拌搬送路10では、供給搬送路9から供給された余剰現像剤と回収搬送路7に回収された回収現像剤と後述するトナー補給口95(図7参照)から補給されたトナーとが攪拌され、これら攪拌された現像剤は、攪拌スクリュー11の搬送方向下流側で、かつ、供給スクリュー8の搬送方向上流側に搬送され、第一仕切り壁133の供給開口部91より供給搬送路9に供給される(図4中矢印D)。
【0105】
なお、攪拌搬送路10の下方には、透磁率センサからなるトナー濃度センサ13(図2参照)が設けられ、センサ出力により不図示のトナー補給制御装置を作動し、不図示のトナー収容部からトナー補給を行っている。
【0106】
図4に示す現像装置4では、供給搬送路9と回収搬送路7とを備え、現像剤の供給と回収とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が供給搬送路9に混入することがない。このため、供給搬送路9の搬送方向下流側ほど現像ローラ5に供給される現像剤のトナー濃度が低下することを抑制することができる。また、回収搬送路7と攪拌搬送路10とを備え、現像剤の回収と攪拌とを異なる現像剤搬送路で行うので、現像済みの現像剤が攪拌の途中に落ちることがない。これにより、十分に攪拌がなされた現像剤が供給搬送路9に供給されるため、供給搬送路9に供給される現像剤が攪拌不足となることを抑制することができる。このように、供給搬送路9内の現像剤のトナー濃度が低下することを抑制し、供給搬送路9内の現像剤が攪拌不足となることを抑制することができるので現像時の画像濃度を一定にすることができる。
【0107】
なお、図4に示すように、現像装置4の下部から上部への現像剤の移動は矢印Dのみである。矢印Dで示す現像剤の移動は、攪拌スクリュー11の回転で攪拌搬送路10の下流側に現像剤を押し込むことによって、現像剤を盛り上がらせて供給搬送路9に現像剤を供給するものである。
【0108】
このような現像剤の移動は、現像剤に対してストレスを与えることになり、現像剤の寿命低下の一因となる。
【0109】
このように、現像剤を下方から上方に持ち上げる際に現像剤にストレスがかかり現像剤中のキャリアの膜削れやトナーのスペント化がその個所で発生し、それに伴い画像品質の安定性が保たれなくなってしまう。
【0110】
よって、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することで現像剤の長寿命化を図ることができる。現像剤の長寿命化を図ることにより、現像剤の劣化を抑制して常に画像濃度ムラの無い画像品質の安定した現像装置を提供することができる。
【0111】
本実施形態の現像装置4では、図2に示すように、供給搬送路9を攪拌搬送路10の斜め上方になるように配置している。斜め上方に配置することにより、供給搬送路9を攪拌搬送路10の垂直上方に設け現像剤を持ち上げるものに比べて、矢印Dで示す現像剤の移動における現像剤のストレスを軽減することができる。
【0112】
さらに、現像装置4では、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを斜めに配置することで、図2に示すように、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置している。換言すれば、攪拌搬送路10を構成する空間の一部が上下方向において供給搬送路9を構成する空間の一部に進出している。
【0113】
供給搬送路9を攪拌搬送路10に対して垂直上方に持ち上げることは、重力に逆らって現像剤を攪拌スクリュー11の圧力によって持ち上げるので現像剤にストレスがかかる。
【0114】
一方、攪拌搬送路10の上部壁面が供給搬送路9の下部壁面よりも高い位置となるように配置することで、攪拌搬送路10の最高点に存在する現像剤が供給搬送路9の最下点に向けて重力に逆らわず流れ込むことができるので、現像剤にかかるストレスを低減することができる。
【0115】
なお、図5に示すように、攪拌搬送路10の現像剤搬送路下流側の、攪拌搬送路10と供給搬送路9とが連通している部分の攪拌スクリュー11の軸にフィン部材を設けても良い。このフィン部材は攪拌スクリュー11の軸方向に平行な辺と、攪拌スクリューの軸方向に直交する辺とから構成される板状の部材である。このフィン部材で現像剤を掻き上げることにより、攪拌搬送路10から供給搬送路9に対して、より効率的な現像剤の受渡しを行うことができる。
【0116】
また、現像装置4では、現像ローラ5と供給搬送路9との中心間距離が、現像ローラ5と攪拌搬送路10との中心間距離よりも短くなるように、供給搬送路9と攪拌搬送路10とを配置している。これにより供給搬送路9から現像ローラ5に現像剤を無理なく供給することができ、装置の小型化を図ることもできる。
【0117】
また、攪拌スクリュー11は、図2中の手前側から見て時計回り方向(図2中矢印C方向)に回転しており、現像剤は攪拌スクリュー11の形状に沿って現像剤を持ち上げて供給搬送路9に移送させている。これにより、現像剤を効率良く持ち上げることが可能となり現像剤にかかるストレスもより低減することができる。
【0118】
図5は、現像装置4の供給スクリュー8の回転中心における断面を図3中の矢印J方向から見た断面説明図である。図5中Hは、現像剤担持体である現像ローラ5が、潜像担持体である感光体1にトナーを供給する現像領域を示している。この現像領域Hの現像ローラ5の回転軸の軸線方向の幅が現像領域幅αである。
【0119】
図5に示すように、現像装置4は攪拌搬送路10から供給搬送路9に現像剤を持ち上げる箇所である供給開口部91と、供給搬送路9から攪拌搬送路10に現像剤を落下させる余剰開口部92とがともに現像領域幅α内に設けられている。
【0120】
図6は、図4とは異なる構成の現像装置4内の現像剤の流れの模式図である。
図6に示す現像装置4は、供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅αの外側に設けている。供給開口部91を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は現像ローラ5よりも供給搬送路上流側領域β分長くなっている。また、余剰開口部92を現像領域幅αの外側に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は現像ローラ5よりも供給搬送路下流側領域γ分長くなっている。
【0121】
一方、図4に示す構成の現像装置4では、供給開口部91を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向上流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路上流側領域β分短くすることができる。また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けているため、供給搬送路9の搬送方向下流側は図6の現像装置4よりも供給搬送路下流側領域γ分短くすることができる。
【0122】
このように、図4の現像装置4は供給開口部91と余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、図6に示す現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることができる。
【0123】
次に、現像装置4の供給搬送路9、攪拌搬送路10及び回収搬送路7からなる現像剤搬送路へのトナーを補給する位置について説明する。図7は、現像装置4の外観斜視図である。
【0124】
図7に示すように、トナーを補給するトナー補給口95は、攪拌スクリュー11を備える攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に設けてられている。このトナー補給口95は現像ローラ5の幅方向端部よりも外側に設けてあるので、現像領域幅αよりも外側となっている。
【0125】
トナー補給口95を設けた箇所は供給搬送路9の搬送方向の延長線上であり、図6における供給搬送路下流側領域γの空いたスペースに該当する。余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0126】
また、トナー補給口95としては、攪拌搬送路10の搬送方向上流端部の上方に限らず、回収搬送路7の下流端部の上方に設けても良い。
【0127】
さらに、回収搬送路7から攪拌搬送路10へ現像剤の受渡しを行う箇所である回収開口部93(図4参照)の真上にトナー補給口95を設けるようにしても良い。回収開口部93の真上のスペースも余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースであるので、この位置にトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。さらに、受渡し部である回収開口部93では現像剤が混ざりやすいため、この位置で補給を行うことによってより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0128】
図4を用いて説明した現像装置4においては、上述したように、攪拌搬送路10の搬送方向下流端から供給搬送路9の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す供給開口部91と、供給搬送路9の下流端から攪拌搬送路10の搬送方向上流端に現像剤を受け渡す余剰開口部92とを現像領域幅α内に設けているため、従来の現像装置4に比べて、現像装置4の上部の省スペース化を図ることが出来、現像装置4全体の省スペース化を図ることができる。
【0129】
また、余剰開口部92を現像領域幅α内に設けることで空いたスペースにトナー補給口95を設けることにより、現像装置4の小型化を図ることができる。
【0130】
また、回収搬送路7から攪拌搬送路10への現像剤の受渡し部である回収開口部93の上方からトナー補給を行うことにより効率よく現像剤の攪拌を行うことができる。
【0131】
また、画像形成装置としての複写機のプリンタ部100の現像手段として、現像装置4を備えることにより、装置全体の省スペース化を図ることができる。
【0132】
現像剤補給手段である不図示のトナー補給制御装置は、不図示のトナー収容部内のトナーをトナー補給口95から現像装置4に補給する。本実施形態の現像装置4では、現像装置4のトナー補給口95からトナーとキャリアとを含む現像剤が補給される。以降、現像装置4に補給されるトナーとキャリアとが混合された現像剤をプレミックストナーと称する。このような補給現像剤に関しては、例えば、本出願人の先願である特開2008−203814号公報等に開示されている。
【0133】
図8は、現像装置4から、排出搬送部材である排出スクリュー2a、攪拌スクリュー11、回収スクリュー6、及び、ドクタブレード12を取り外した状態の手前側端部近傍の斜視説明図である。
【0134】
本実施形態の現像装置4では、供給搬送路9の搬送方向下流端に到達した余剰現像剤を供給搬送路9の搬送方向上流端に搬送する循環搬送路は攪拌搬送路10である。また、循環搬送路である攪拌搬送路10内の現像剤に対して搬送力を付与する循環搬送部材は攪拌スクリュー11である。さらに、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に設けられ、通過した現像剤が循環搬送路である攪拌搬送路10に受け渡される循環開口部は余剰開口部92である。また、現像装置4は、通過した現像剤が現像装置4の装置外に排出される現像剤排出手段としての現像剤排出口94を供給搬送路9に備える。現像剤排出口94を通過した現像剤は排出現像剤として排出搬送路2に受け渡され、排出スクリュー2aが回転することによって供給搬送路9の搬送方向(図2及び図8中の手前側に向かう方向)とは逆方向(図2及び図8中の奥側に向かう方向)に搬送される。
【0135】
排出搬送路2は、供給搬送路9の搬送方向下流側で排出仕切り壁135を挟んで供給搬送路9と隣り合うように配置され、現像剤排出口94は供給搬送路9と排出搬送路2とを連通するように排出仕切り壁135に設けられた開口である。
【0136】
また、現像装置4は、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達し、循環開口部である余剰開口部92に入らなかった現像剤を余剰開口部92の近傍で滞留させる現像剤滞留手段としての供給下流端壁面80(図4,6参照)を備えている。さらに、図4,6において、排出開口部である現像剤排出口94は、余剰開口部92よりも上方で、且つ、供給下流端壁面80によって滞留した滞留現像剤のうち、現像剤排出口94の位置に達した現像剤を通過させるように設けられている。言い換えると、供給搬送路9の搬送方向下流端近傍に到達した現像剤で、余剰開口部92に入ることができず、余剰開口部92から溢れ出た余剰現像剤が供給下流端壁面80によって塞き止められ滞留現像剤となる。そして、この滞留現像剤の嵩が増加したときに、余剰開口部92よりも上方に設けられた現像剤排出口94に到達した現像剤が現像剤排出口94を通って排出搬送路2に排出される。
【0137】
次に、上述した構成を対象として本実施形態の特徴部である現像ローラ5の要部について図9において説明する。
【0138】
現像ローラ5は、現像剤を担持する円筒状の現像スリーブ81と現像スリーブ81に内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラ82からなる。
【0139】
現像スリーブ81はアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
【0140】
表面は平滑でも構わないが高速機では現像剤のスリップを抑制するために下記の粗し処理・加工を施しても良い。
【0141】
〔粗し処理・加工〕
(A)V溝またはU溝等の溝押し出し加工・各種凹形状の機械加工またはレーザ加工またはエッジング加工
(B)ブラスト処理
(C)金属またはセラミック等の溶射処理
【0142】
磁石ローラ82は現像剤の搬送方向Pとは反対の矢印J方向に回転可能に設けられており、偶数個の磁石83を等間隔に配置し(図9に示す実施形態の構成では10個の磁石を配置)、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
【0143】
本実施形態では、磁石ローラ82と現像スリーブ81との駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブ81の表面に担持される現像剤と磁石ローラ82側の磁石83との対向回数が多くなることを条件として設定されるようになっている。
【0144】
上述した駆動関係の設定により得られる、磁石ローラ82の磁石に対する現像剤の対向回数の増加によって、現像剤が磁極と対向したときに穂立ちが形成され、磁極から離れた際に穂立ちが崩されるという現象を繰り返す回数が増加し、これによるトナーとキャリアと摩擦接触機会の増加によりトナーの帯電特性を向上させることができる。
【0145】
この場合の対向回数の増加は、上述したように、磁石ローラ83と現像スリーブ81との回転方向の設定や速度差の設定などによって得られる。つまり、両者が同じ方向に回転する場合には、両者間に速度差を設定することで磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができ、また、速度差を設定しないで相反する方向とした場合も同様に磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができる。
このような回転方向あるいは速度差による実験結果については、後述する実施例において説明する。
【0146】
上述した磁石83に関しては、従来の廉価なフェライト磁石が使用可能であるが、小型化や高速化のためにはより強力なサマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石等の希土類磁石の使用も可能である。磁石83は磁石ホルダ84に接着により支持し、その外周を図示しない熱収縮チューブ等で保護しても良い。
【0147】
磁石ホルダ84は磁性材料とすると磁石83の磁気力を若干向上可能である。但しコスト高であり一般に鉄を主成分とする磁性材料は高比重のため高速回転時は慣性モーメントが増大し駆動部の耐久性に問題が生じる場合がある。そのため磁石83の磁気力は若干低くなるが、非磁性かつ軽比重のアルミニウムやマグネシウムを材料としても良い。
【0148】
図9において、本実施形態における磁石ローラ82の回転中心P’と現像スリーブ81の回転中心Pとは本実施形態におけるキャリアとの組み合わせにおいては必ずしも偏心させる必要はないが、偏心させることで現像剤剥離性を改善することもできる。
【0149】
<静電潜像現像剤用キャリア>
本発明における静電潜像現像剤用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と該芯材粒子表面を被覆する被覆層とからなり、被覆層中に導電性微粒子を含有し、該被覆層中の樹脂成分が、モノマーA成分とモノマーB成分をラジカル共重合して得られる下記一般式(1)の共重合体(1)を加水分解し、シラノール基を生成し、触媒を用いて縮合することにより架橋、被覆した後、加熱処理して得られる静電潜像現像用キャリアである。
【0150】
【化7】

【0151】
ここで、上記一般式(1)中において、R、m、R、R、X、Yは以下に該当するものを示す。
【0152】
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びブチル基)
:炭素数1〜8のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びブチル基等)、または炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)
【0153】
なお、上記式で示される共重合体(1)は、下記A成分モノマー:Xモル%、下記B成分モノマー:Yモル%、が共重合してなるものである。
【0154】
A成分:
【0155】
【化8】

【0156】
前式中、
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基
【0157】
B成分:(架橋成分)
【0158】
【化9】

【0159】
前式中、
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基
:炭素数1〜8のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、又は炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)
【0160】
前記一般式(1)において、X=10〜90モル%であり、より好ましくは、30〜70モル%である。また、Y=10〜90モル%であるが、より好ましくは30〜70モル%である。
【0161】
・A成分
A成分は、側鎖にメチル基が多数存在する原子団・トリス(トリアルキルシロキシ)シランを有しており、樹脂全体に対してA成分の比率が高くなると表面エネルギーが小さくなり、トナーの樹脂成分、ワックス成分などの付着が少なくなる。A成分が10モル%未満だと十分な効果が得られず、トナー成分の付着が急増する。また、90モル%より多くなると、成分B(あるいはさらに後述する成分C)が減り、架橋が進まず、強靭性が不足すると共に、芯材粒子と被覆層(樹脂層)の接着性が低下し、キャリア被膜の耐久性が悪くなる。
【0162】
は炭素数1〜4のアルキル基であり、このようなモノマー成分としては、次式で示されるトリス(トリアルキルシロキシ)シラン化合物が例示される。
下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基である。
【0163】
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
【0164】
A成分の製造方法は特に限定されないが、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法や、特開平11−217389に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などにより得られる。
【0165】
・B成分
前述のとおり、B成分は、ラジカル重合性の2官能、又は3官能性のシラン化合物であり、Y=10〜90モル%であるが、より好ましくは30〜70モル%である。
B成分が10モル%未満だと、強靭さが十分得られない。一方、90モル%より多いと、被膜は固くて脆くなり、膜削れが発生し易くなる。また、環境特性が悪化する。加水分解した架橋成分がシラノール基として多数残り、環境特性(湿度依存性)を悪化させていることも考えられる。
【0166】
このようなB成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランが例示される。
【0167】
本発明は、前記A成分及びB成分にC成分としてアクリル系化合物(モノマー)を加えてもよい。
このようなC成分を加えたものとしては、下記一般式(2)の共重合体(2)が挙げられる。
【0168】
【化10】

【0169】
(一般式(2)中において、R、m、R、R、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
【0170】
A成分:
【0171】
【化11】

【0172】
X=10〜40モル%である。
【0173】
B成分:
【0174】
【化12】

【0175】
Y=10〜40モル%である。
【0176】
C成分:
【0177】
【化13】

【0178】
Z=30〜80モル%であり、かつ、60モル%<Y+Z<90モル%である。
【0179】
C成分は、被膜に可撓性を付与し、かつ、芯材と被膜(被覆層)との接着性を良好にするものであるが、C成分が30モル%未満だと十分な接着性が得られず、80モル%よりも大きくなると、X成分及びY成分のいずれかが10モル%以下となるため、キャリア被膜の撥水性、硬さと可撓性(膜削れ)を両立させることが難しくなる。
【0180】
C成分のアクリル系化合物(モノマー)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートが例示される。これらの内ではアルキルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。また、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0181】
被膜の架橋による高耐久化技術としては、特許第3691115号がある。特許第3691115号は、磁性粒子表面を、少なくとも末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびイミド基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するラジカル共重合性単量体との共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂で被覆したことを特徴とする静電荷像現像用キャリアであるが、被膜の剥がれ・削れにおいて十分な耐久性が得られていないのが現状である。
【0182】
その理由は十分明らかになっているとは言えないが、前述の共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂の場合、構造式からも分かるように、共重合体樹脂中のイソシアネート化合物と反応(架橋)する単位重量当りの官能基が少なく、架橋点において、ニ次元、あるいは三次元的な緻密な架橋構造を形成することが出来ない。そのために長時間使用すると、被膜剥がれ・削れなどが生じ(被膜の耐磨耗性が小さく)易く、十分な耐久性が得られていないと推察される。
【0183】
被膜の剥がれ・削れが生じると、キャリア抵抗低下による画像品質の変化、キャリア付着が起こる。また、被膜の剥がれ・削れは、現像剤の流動性を低下させ、汲み上げ量低下を引き起こし、画像濃度低下、トナー濃度アップに伴う時汚れ、トナー飛散の原因となっている。
【0184】
本発明における被覆層中の樹脂は、樹脂単位重量当たりでみても、二官能、あるいは三官能の架橋可能な官能基(点)を多数(単位重量当り、2倍〜3倍多い)有した共重合樹脂であり、これを更に、縮重合により架橋させたものであるため、被膜が極めて強靭で削れ難く、高耐久化が図れていると考えられる。
【0185】
また、イソシアネート化合物による架橋より、本発明における被覆層中の樹脂のシロキサン結合による架橋の方が結合エネルギーが大きく熱ストレスに対しても安定しているため、被膜の経時安定性が保たれていると推察される。
【0186】
架橋成分Bの縮重合触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒が挙げられるが、これら各種触媒のうち、優れた結果をもたらすチタン系触媒の中でも、特にチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が触媒として最も好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)の化学式は下記構造式1のとおりである。
【0187】
【化14】

【0188】
本発明における被覆層は、前述のシラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等の触媒、溶媒を含む被覆層用組成物を用いて形成することができる。具体的には、被覆層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、使用する芯材粒子のキューリー点未満の温度、好ましくは100〜350℃の温度で熱処理することにより、縮合による架橋反応が促進される。
100℃より低いと、縮合による架橋反応が進まず、十分な被膜強度が得られない。一方、350℃よりも高温になると、樹脂が炭化してくる等の理由のため、被膜が削れ易くなる。
【0189】
・導電性微粒子
キャリアの静抵抗を抑えるためには、一般に導電性微粒子の処方量を増加させることで静抵抗及び動的抵抗値を下げられ得るが、導電性微粒子の種類によっては目標とする動的抵抗を達成するためには相当量の処方量を必要とする。その際には静抵抗値が目標値を下回ったり、処方量が増えることでコート膜からの遊離を引き起こしたり、さらにはコストの面でも問題が発生してしまう。
そこで、上記のような問題を起こさず、適量で静抵抗を下げることを可能とする導電性微粒子として、粉体比抵抗が1〜50Ω・cmを有するものが好ましく、具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ)等の基体表面に導電性被覆層を設けることで、キャリアの静抵抗を抑えることができる。様々な被覆層の検討を行った結果、導電性被覆層としては、二酸化スズを用いると、二酸化スズの質量比率を調整することで導電性微粒子の粉体比抵抗を所望の値に下げることができ、キャリアの静抵抗を効果的に抑えることが可能となる。
【0190】
このように、上記の粉体比抵抗を有する導電性微粒子を効果的に用いることで、キャリアの静抵抗を容易に抑えることができ、長期に渡り安定した帯電付与能力を有し、膜の硬度及び靭性(可撓性&弾力性)の双方に優れ耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れて、キャリア抵抗や現像剤の汲み上げ量の変化が少なく、トナー組成物のスペントによる帯電変動が少なく、かつ、帯電の環境変動を抑制し、さまざまな使用環境においても画像濃度変動、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じない、という諸特性を同時に満足するキャリアを提供することを可能としたものである。
【0191】
導電性微粒子は、前記被覆層中において被覆樹脂成分の固形分以上含有することが好ましく、より好ましくは、1.0倍以上2.5倍以下である。
【0192】
・芯材
本発明における静電荷現像剤用キャリアでは、芯材は、公知のものであれば特に限定されず、フェライト、Cu−Znフェライト、Mnフェライト、Mn−Mgフェライト、Mn−Mg−Srフェライト、マグネタイト、鉄、ニッケル等が挙げられ、キャリアの用途、使用目的に合わせ適宜選択して用いることができる。また、芯材の平均粒子径は、15〜100μmであることが好ましい。平均粒子径が15μm未満である場合は、静電潜像担持体へのキャリア付着が発生しやすくなる。また、平均粒子径が100μmを超える場合は、キャリアスジ等が発生し、画質が低下しやすい。
【0193】
体積固有抵抗は、1×10Ω・cm以上1×1014cm以下、好ましくは1×10Ω・cm以上1×1012cm以下であることで現像剤の剥離改善効果が顕著である。
体積抵抗が1×10Ω・cm未満では、剥離性は良いが、トナー現像時にキャリアも現像してしまうため好ましくなく、1×1014を超えると、現像剤剥離改善が少なく、さらにエッジ効果が強く好ましくない。
【0194】
体積固有抵抗は、図15に示すように、電極間距離2mm、表面積2cm×4cmの電極32a、電極32bを収容したフッ素樹脂製容器からなるセル31にキャリア33を充填し、三協パイオテク社製:タッピングマシンPTM−1型を用いて、タッピングスピード30回/minにて1分間タッピング操作を行う。両極間に1000Vの直流電圧を印加し、ハイレジスタンスメーター4329A(4329A+LJK 5HVLVWDQFH 0HWHU;横川ヒューレットパッカード株式会社製)により直流抵抗を測定して電気抵抗率RΩ・cmを求め、LogRを算出する。
【0195】
1kOeの磁場における磁化が40Am/kg以上90Am/kg以下、好ましくは60Am/kg以上90Am/kg以下であることで効果が顕著である。
40Am/kg未満では、磁極マグによるキャリア拘束力が小さくなるため、遠心力によるキャリア付着が問題となる。特にマグ磁極が多く、磁石が回転する本発明においては、キャリア付着が課題となるため好ましくない。90Am/kgを超えると、現像剤剥離時にキャリアを拘束する力が増え、ゴースト画像が悪化するため好ましくない。
【0196】
なお、前記磁気モーメントは、以下のようにして測定することができる。B−Hトレーサー(BHU−60/理研電子(株)製)を使用し、円筒セル(内径7mm、高さ10mm)にキャリア芯材粒子1.0gを詰めて装置にセットする。磁場を徐々に大きくし3000エルステッドまで変化させ、次に徐々に小さくして零にした後、反対向きの磁場を徐々に大きくし3000エルステッドとする。更に徐々に磁場を小さくして零にした後、最初と同じ方向に磁場をかける。このようにして、B−Hカーブを図示し、その図より1000エルステッドの磁気モーメントを算出する。
【0197】
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する前の位置で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、図9中符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0198】
一方、偏心方向と反対側では磁気力を低く抑えることができる。このため、現像スリーブ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
【0199】
このような偏心構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0200】
また、磁石ローラ82を偏心させることにより現像スリーブ81と磁石ローラ82の間には隙間空間Uが構成され、この空間Uには、磁気遮蔽部材に相当する磁気シールド板85が配置されている。
【0201】
磁気シールド板85は比透磁率が100〜100000程度の強磁性体でかつ保持力が100以下の軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、フェライト、アモルファス等の材質が選択可能である。更には、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂材料に前記軟磁性体を分散し溶解・成形した材質も使用可能である。
【0202】
磁気シールド板85はその磁気特性から磁石ローラ82からの吸引力に晒される。後述するように両端2箇所の支持のため吸引力が強く強度が弱い場合は中央部が撓み、磁石ローラ82に接触する懸念がある。吸引力を低減するために現像スリーブ81に接触しない範囲で磁石ローラ82より離間して配置するのが良い。また、その厚さは0.2mm〜2mm程度が使用可能であるが強度的観点から1mm程度が好適である。
【0203】
ところで、磁気シールド板85は、上述したように、磁石ローラ82の回転時に磁極と対向する毎に撓みを起こし、いわゆる、長手方向で振動を生起することになる。そこで、本実施形態では、上述したように撓みによる磁石ローラ82との接触を避けると共に、撓み振動を抑える構成も採用している。
【0204】
現像スリーブ内において磁石ローラとの間に磁気シールド部材を設ける構成に関しては、例えば、実開昭60−39053号公報において提案されている。
【0205】
しかし、この構成においては、磁石ローラからの磁力を現像スリーブ表面に及ぼさせる場合と及ぼさせない場合とを選択することが主眼となっている。
【0206】
具体的には、複数の現像ローラのうちで、使用状況にある現像ローラに対しては磁気シールド部材を現像領域から離脱させて磁力を作用できるようにし、不使用状況にある場合には上述した場合と逆に磁気シールド部材を現像領域に対向させて磁力が及ばないようにしている。
【0207】
このため、磁石ローラの回転は行われず、単に現像スリーブの回転においてその表面での磁気ブラシの穂立ちおよび穂立ちの解消が意図されているに過ぎず、磁極に対する現像剤の対向回数に関する構成は何もなく、現像剤中でのキャリアに対するトナーの帯電付着を促す過程で現像剤の剥離を容易化する考えはないものである。
【0208】
一方、磁石ローラが回転しない現像装置においては、図12や図13に示した従来構成のように磁極数を奇数とすることで同極による反発磁界を形成して現像剤を剥離することは公知であり、容易に実行可能である。
【0209】
しかし、本実施形態においては、磁石ローラを回転させることが前提となっており、しかも、上述したように、奇数個の磁極を設けた場合の反撥磁界を利用する場合と違って、図9に示すように、磁極数は偶数個である。このため、奇数個の磁極を用いた場合の同極による反撥磁界を形成して現像剤を剥離することができない。
【0210】
そこで、偶数個の磁極を用いた場合に現像剤を剥離するには、現像スリーブ81に対して可撓性を有するスクレーパを当接させて現像剤を剥ぎ取る方式が考えられるが、本実施形態では、現像剤の剥離位置に対向する磁極を現像スリーブ81の内面から離すように磁石ローラ82を偏心させている。これにより、スクレーパを用いた場合のように、機械的な耐久性に問題が生じるのを防ぐことができる。
【0211】
ところで、現像剤の剥離作用を磁力の強さの違いにより得るようにした構成としては、特開昭57−190974号公報、特公平04−65379号公報において提案されている。
【0212】
しかし、このような磁石ローラの偏心構造を用いて現像剤剥離を完全に行うためには現像スリーブ81を大径化し偏心量を大きくする必要があり装置の大型化になってしまう虞がある。
【0213】
本実施形態では、現像スリーブの大型化を招かないように、現像スリーブに対して偏心した回転する磁石ローラ近傍に磁気シールド板85を固定配置したものである。
【0214】
従って、上記提案にかかる構成を併せた場合と違って、本実施形態では、回転による磁極と現像剤との対向回数の増加および偶数極数を設定した場合を対象として現像剤の剥離を行う反撥磁界が形成されない状況下において磁力の作用を偏心により抑制することに限らず、磁気シールド板を設けることで現像剤の磁気的吸引をほとんどなくすようにしている点に特徴を持つものである。
【0215】
以上の本実施形態を換言すると、現像剤担持体は、当該現像剤担持体の回転中心Pを中心に回転し、磁界発生手段は、当該磁界発生手段の回転中心P’を中心に回転し、前記P’は、像担持体と前記現像剤担持体との近接位置に対して、前記Pよりも近接配置されていることを特徴とする。また、現像剤担持体は、磁気遮蔽部材を内部に有し、該磁気遮蔽部材は、磁界発生手段における像担持体との対向側に対して反対側に、当該磁界発生手段の一部を覆うように配置されてなることを特徴とする。
【0216】
次に、図9において本実施形態での現像剤の移送について説明する。
供給スクリュー8により現像ローラ5に供給された現像剤は磁石ローラ82の磁気力により現像スリーブ81上に吸着され磁力線に沿って配列される。つまり磁石83上では、符号B1で示すように磁気穂が発生し、磁石83間では、符号B2で示すように磁気穂は転倒する。
【0217】
磁石ローラ82の回転方向を符号Jで示すように、現像スリーブ81の回転方向(I)に対して相反する方向とした場合、磁石ローラ82が回転する間、磁気穂は、所謂フリップフラップ状に自転し、磁石ローラ82の回転方向である矢印Jで示す方向と反対の矢印F方向に進行する。この際、現像スリーブ81は補助的に矢印I方向に比較的低速で回転させても良い。
【0218】
現像剤はドクタ12により磁気穂高さを一定に規制され、余剰の現像剤は矢印Mの流れで供給スクリュー8に戻され軸方向に搬送されながら再び現像ローラ5へと供給される。
【0219】
現像ドクタ12を通過した現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を増大しキャリアが感光体ドラムに移行するのを抑制する。磁石ローラ82が高回転なほど感光体ドラム1の対向部において現像剤は活発に撹拌されるため静電潜像に応じて効率良くトナーを転移できる。
【0220】
現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を減少させ供給搬送路7にて自重により現像スリーブ81より離脱するが、僅かに残留する吸着力により現像スリーブ81に残留する現像剤もある。
【0221】
磁気シールド板85近傍において磁石83から発せられる磁力線は、より透磁率の高い磁気シールド板85内を通過し現像スリーブ81外部への漏れ磁界はなくなる。
【0222】
ここで残留した現像剤は全て落下し、現像スリーブ81は次の現像剤搬送の準備を完了する。これにより一度現像に使用された現像剤が再び現像領域に向けてそのまま搬送されることがないので、現像剤のトナー濃度が低下するという問題を抑制することができる。
【0223】
ところで、磁気シールド板85の幅、つまり、磁石ローラ82の周方向に沿った幅が小さい時、磁石ローラ82の回転に伴い振動が発生するという問題が予測される。
【0224】
磁気シールド板85に作用する磁石83が単極となってしまい、磁石83が磁気シールド板85の周方向に沿った幅内で回転方向上流側に位置する場合と回転方向下流側に位置する場合で磁気シールド板85に働く吸引力の方向が入れ替わるためである。振動は現像装置に伝播し横縞状の異常画像や騒音となった。
【0225】
そこで、本実施形態では、磁気シールド板85の上述した周方向での幅に対応する設置角度(R°)と、磁極83の配置角度(Q°)との関係を次の関係に設定している。
【0226】
R° > Q°
ただし、R°:磁石ローラ82の回転中心から磁気シールド板85の周方向での各端部を結ぶ線で形成される角度
Q°:磁石ローラ82の回転中心から二つの磁石の中心を結ぶ線で形成される角度
これにより磁気シールド板85には常に複数の磁石83から吸引力が発生しその力は平均化され振動を抑制することが可能となった。
【0227】
本実施形態は以上のような構成であるので、装置の小型化が図れる。つまり本実施形態にかかる構成である磁気シールド板を用いないで、本実施形態による作用と同様に、現像剤を現像スリーブ81から完全に剥離するには、内包されている磁石ローラ82の偏心量を大きくして、磁力が及ぶのを抑制しなければならない。
【0228】
しかし、磁石ローラ82は、現像剤搬送という機能を発揮させるためには小径化することに限界があり、これに代えて、現像スリーブ81を大径化する必要がある。
【0229】
磁石ローラ83の径は、本実施形態の場合、φ17.6mm程度であるが、磁気シールド板85を設けない場合には、現像スリーブ81の径がφ28〜30mm程度必要となる。
【0230】
これに対して、磁気シールド板85を設けた場合には、現像スリーブ81の径をφ25mmとすることができ、これによって、現像装置の小型化が可能となり、特に、図1に示すようにタンデム方式のカラーレーザ複写機の場合、複写機全体の小型化が可能となる結果が得られる。
【0231】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の長手方向の構成について図10により説明すると次の通りである。
【0232】
図10において、右下が画像形成装置の奥側に相当する、回転可能な現像スリーブ81の両端にフランジ86を圧入し、現像スリーブ81とフランジ86は一体的に回転が可能である。画像形成装置手前側のフランジ86にはバイアス印可ブラシ88を押圧し現像バイアスを現像スリーブ81へと印可する。
【0233】
画像形成装置奥側のフランジ86には従動ギヤ89を固定し、図示しない駆動ギヤから現像スリーブ81へ駆動を伝達する。さらに両端にはサポータ87を備え、サポータ87が現像装置4に固定支持される。
【0234】
次に、本実施形態に用いられる現像ローラ5の奥側の長手断面構造について図11により説明すると次の通りである。なお、手前側断面についてもほぼ同様の構成なので説明は省略する。
【0235】
図11において、フランジ86には玉軸受91の外輪を圧入し、玉軸受91の内輪にはサポータ87が圧入されることで現像スリーブ81が回転可能に支持される。
【0236】
一方、サポータ87の中心付近で玉軸受91と偏心した位置に玉軸受92と93の外輪を圧入し、磁石ローラ82に圧入したシャフト90を支持する。シャフト90の先端には図示しないカップリングまたはギヤを装着して駆動を磁石ローラへ伝達する。なお、玉軸受91と92は長手方向での位置をずらし現像ローラの小径化を図っている。磁気シールド板85には図示しないサポータ87から突出したピンを挿入することで固定支持する。
【0237】
<現像剤>
本発明において、現像剤は、上述した静電荷現像剤用キャリア及びトナーを含有する。この現像剤を用いて画像を形成すると、優れた画像品質を得ることができる。
【0238】
<トナー>
トナーは、公知のものであれば特に限定されず、モノクロトナー、カラートナー、フルカラートナー等が挙げられる。トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するが、さらに、離型剤を含有する、いわゆるオイルレストナーであってもよい。オイルレストナーは、定着ロールにトナー固着防止用オイルを塗布しない定着システムにおいても用いることができる。一般的に、オイルレストナーは、離型剤がキャリアの表面に移行するいわゆるスペントが生じやすいが、本発明で用いられる静電荷現像剤用キャリアは、耐スペント性が優れているため、長期にわたり良好な品質を維持することができる。特に、オイルレスフルカラートナーにおいては、ガラス転移温度の低い結着樹脂を用いることがあるため、一般的にスペントしやすいが、本発明で用いられる静電荷現像剤用キャリアを用いることにより、この問題を解決することができる。
【0239】
本発明で用いられる現像剤において、トナーは、カラートナーであることが好ましい。本発明で用いられる静電荷現像剤用キャリアは、被覆膜にカーボンブラックを含有しないので、磨耗等に伴うカーボンブラックによる画像の色汚れを生じない。したがって、色再現性が重要視されたカラー現像剤に用いることが好ましい。なお、カラートナーとしては、一般的にカラー単色で用いられるトナーの他に、フルカラー用として用いられるイエロー、マゼンダ、シアン、レッド、グリーン、ブルー等のトナーが挙げられる。
【0240】
トナーに用いられる結着樹脂としては、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその誘導体の単独重合体、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を単独又は二種以上混合して用いることができる。また、圧力定着用結着樹脂としては、公知のものを混合して用いることができる。具体的には、低分子量のポリエチレン、低分子量のポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等を単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0241】
トナーに用いられる着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーを得ることができる公知の顔料又は染料であれば、特に限定されない。
【0242】
黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。
【0243】
橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
【0244】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
【0245】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
【0246】
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
【0247】
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等がある。
【0248】
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
【0249】
また、これら着色剤は、単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0250】
トナーに用いられる離型剤としては、公知のものを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナバワックス、エステルワックス等が挙げられる。
【0251】
トナーは、必要に応じて、帯電制御剤を含有することができる。具体的には、ニグロシン、炭素数が2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報参照)、C.I.Basic Yellow 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yellow 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料、これらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩、ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、モノアゾ染料の金属錯塩(特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報及び特公昭45−26478号公報参照)、サルチル酸(特公昭55−42752号公報及び特公昭59−7385号公報参照)、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸の亜鉛、アルミニウム、コバルト、クロム、鉄等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、フッ素を含有する四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、色を損なう有色の帯電制御剤を用いることは好ましくなく、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に用いられる。
【0252】
トナーは、必要に応じて、外添剤を添加することができる。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機微粒子や樹脂微粒子を用いることができる。これらを母体トナー粒子に外添することにより、転写性、耐久性をさらに向上させることができる。トナーの表面が微粒子で覆われることにより、転写性や耐久性を低下させる離型剤を覆うことができると共に、接触面積が低下する。これらの無機微粒子は、表面が疎水化処理されていることが好ましく、疎水化処理されたシリカ、酸化チタン等の金属酸化物微粒子が好適に用いられる。
【0253】
樹脂微粒子としては、ソープフリー乳化重合法を用いて得られる平均粒子径が0.05〜1μm程度のポリメタクリル酸メチルやポリスチレンの微粒子が好適に用いられる。さらに、疎水化処理されたシリカ及び酸化チタンを併用し、疎水化処理されたシリカの添加量より疎水化処理された酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性にも優れたトナーを得ることができる。
【0254】
無機微粒子と併用して、比表面積が20〜50m/gのシリカや平均粒子径がトナーの平均粒子径の1/100〜1/8である樹脂微粒子のような粒子径が大きい外添剤をトナーに外添することにより、耐久性を向上させることができる。これは、トナーが現像装置内でキャリアと混合・攪拌されることにより帯電し、現像に用いられる過程で、トナーに外添された金属酸化物微粒子は、母体トナー粒子内に埋め込まれる傾向にあるが、これらの金属酸化物微粒子より大きな粒子径の外添剤をトナーに外添することにより、金属酸化物微粒子が埋め込まれることを抑制するためである。無機微粒子や樹脂微粒子は、トナー中に含有(内添)されることにより、外添した場合より効果は減少するが、転写性や耐久性を向上させることができると共に、トナーの粉砕性を向上させることができる。また、外添と内添を併用することにより、外添した微粒子が埋め込まれることを抑制することができるため、優れた転写性が安定して得られると共に、耐久性も向上する。
【0255】
なお、疎水化処理剤としては、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロロエチルトリクロロシラン、p−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、p−クロロフェニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ノニルトリクロロシラン、(4−イソプロピルフェニル)−トリクロロシラン、(4−t−ブチルフェニル)−トリクロロシラン、ジベンジルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジノニルジクロロシラン、ジデシルジクロロシラン、ジドデシルジクロロシラン、ジヘキサデシルジクロロシラン、(4−t−ブチルフェニル)オクチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジデセニルジクロロシラン、ジノネニルジクロロシラン、ジ−2−エチルヘキシルジクロロシラン、ジ(3,3’−ジメチルベンジル)ジクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリデシルクロロシラン、ジオクチルメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、4−イソプロピルフェニルジエチルクロロシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等が挙げられる。これらの他に、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤も用いることができる。また、クリーニング性の向上等を目的とする外添剤として、脂肪酸の金属塩、ポリフッ化ビニリデンの微粒子等の滑剤等も併用することができる。
【0256】
トナーの製造方法は、粉砕法、重合法等の公知の方法を用いることができる。
粉砕法を用いる場合、トナーを混練する装置としては、バッチ式の2本ロール、バンバリーミキサー、KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械社製)、2軸押出し機(KCK社製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工社製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所社製)等の連続式の2軸押出し機、コ・ニーダ(ブッス社製)等の連続式の1軸混練機が好適に用いられる。これらを用いて得られた溶融混練物は、冷却した後、粉砕される。なお、粉砕は、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて微粉砕することができる。なお、粉砕は、平均粒子径が3〜15μmになるように行うことが好ましい。さらに、粉砕物は、風力式分級機等を用いて、平均粒子径が5〜20μmになるように分級されることが好ましい。次に、母体トナー粒子へ外添剤の添加が行われることが好ましい。このとき、母体トナー粒子と外添剤を、ミキサー類を用いて混合・攪拌することにより、外添剤が解砕されながら、トナーの表面に被覆される。なお、無機微粒子、樹脂微粒子等の外添剤を均一かつ強固に母体トナー粒子に付着させることにより、耐久性を向上させることができる。
【実施例】
【0257】
次に、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、部は、重量部である。
【0258】
実験に用いた現像装置及び現像剤にかかる構成を示す。
[現像装置]
<現像装置A>
従来の現像装置においては固定配置された磁石ローラは10極の磁極を有しており、図9において現像スリーブの回転中心Pと磁石マグP’の中心が一致している。また、磁気遮蔽部材である磁気シールド板85は備えない。
<現像装置B>
現像装置Aにおいて、回転中心PとP’をTだけ離し、磁石マグローラ83を偏心させた。
<現像装置C>
現像装置Bにおいて、磁石マグローラ83を偏心させることでできた空間に磁気遮蔽部材である磁気シールド板85を設置した。
<現像装置D>
図14に示した構成の現像装置を対象として用いた。図14に示す構成においては、磁石ローラが固定されている。
【0259】
[樹脂]
(樹脂A)
撹拌機付きフラスコにトルエン500gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe(式中、Meはメチル基である。)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン211g(500ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン124.0g(500ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は35,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.5mm/sであり、比重は0.91であった。
【0260】
(樹脂B)
樹脂Aに対して20重量%のシリコーン樹脂溶液SR2410(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を併用した。なお該シリコーン樹脂溶液と樹脂Aとの比率は重量部にして2:8とした。
【0261】
(樹脂C)
20重量%のシリコーン樹脂溶液SR2410(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)のみを用いた。
【0262】
[導電性微粒子]
(導電性微粒子A)
導電性微粒子としては酸化アルミニウムを主原料とするEC−700(チタン工業社製)を用いた。
【0263】
(導電性微粒子B)
酸化アルミニウム(住友化学製AKP−30)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100gと五酸化りん3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12重量%アンモニア水とを、懸濁液のPHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次にこの乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理し導電性微粒子Bを得た。
【0264】
(導電性微粒子C)
主原料を硫化バリウムとするパストラン4300(三井金属社製)を用いた。
【0265】
(実施例1)
前記樹脂Aを500部、アミノシランSH6020(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)1部、導電性微粒子Aを樹脂固形分に対して1倍量、及びトルエン300部を、ホモミキサーを用いて15分間分散させることにより、被覆膜形成溶液を得た。芯材として、重量平均粒子径が35μmの焼成フェライト粉を用い、被覆膜(被覆層)の平均膜厚hが0.5μmになるように、スピラコーター(岡田精工社製)を用いて、コーター内温度40℃で被覆膜形成溶液を芯材の表面に塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉中に、300℃で1時間放置して焼成した。冷却後、目開きが63μmの篩を用いて解砕しキャリアを得た。
【0266】
ポリエステル樹脂100部、5部のC.I.ピグメントイエロー180、サリチル酸亜鉛2部及びカルナバワックス3部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、2本ロールを用いて120℃で40分間溶融混練した。冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、エアージェット粉砕機を用いて微粉砕した。得られた微粉末を分級して、重量平均粒子径が5μmの母体トナー粒子を作った。さらに、この母体トナー粒子100部に、表面を疎水化処理したシリカ1部及び表面を疎水化処理した酸化チタン1部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合することにより、トナーを得た。なお、ポリエステル樹脂としては、数平均分子量3800、重量均分子量20000、ガラス転移温度60℃、軟化点122℃のものを用いた。
【0267】
トナー7部とキャリア93部を混合攪拌することにより、現像剤を得た。
現像装置は現像装置Aを用い、磁石ローラを600rpmで回転させた際、現像スリーブは300rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は15回程度得られた。
【0268】
(実施例2〜13及び比較例1〜3)
実施例1に対し、下記表1の様に組み合わせ検討をおこなった。
【0269】
【表1】

【0270】
以下に、評価方法及び評価条件を示す。
【0271】
(経時安定)
経時安定性は、単色による10万枚のランニングを行い、ランニング後のキャリアの帯電低下率を見た。帯電についてはブローオフ装置TB−200(東芝ケミカル社製)を用いて測定した。低下率が30%以下のものについては◎、30%を超えて50%以下のものについては○、それ以外については×として評価した。
【0272】
(立ち上がり)
立ち上がりは、ランニングをしていない状態で常温で1週間放置させ、ランニング10枚目前後での帯電量を測定した。ランニング前に対して帯電が2倍以上なら◎、1.5倍以上2倍未満なら○、それ以外については×として評価した。
【0273】
(画質評価)
画像の精細性は、画像面積が5%、1文字の大きさが2mm×2mm程度の文字チャートを出力し、再現性を評価した。再現性が非常に良好なものを◎、良好なものを○、実用上使用できないものを×として判定し、◎、○を合格とし、×を不合格とした。
【0274】
評価結果を下記表2に示す。
【0275】
【表2】

【0276】
以上のように、本発明によれば、現像剤の帯電立ち上がりを向上させ、また、現像方式を改善させることでトレードオフの関係が予想される現像剤の劣化に対して強い静電荷現像剤用キャリアを用いることで画像を長期にわたり安定化させる現像装置および現像方法、並びに、画像形成装置および画像形成方法を提供することができることがわかった。
また、特に上述の現像装置Cにかかる構成によれば、現像剤担持体内で回転可能に設けられ、かつ、現像剤担持体の断面中心に対して潜像担持体に対し接近する向きに偏心させてある磁界発生手段を備え、その磁界発生手段の偏心により形成される現像剤担持体内での隙間空間に磁界発生手段の一部を覆うことができる磁気遮蔽部材が設けられているので、像剤担持体表面への磁力を及びにくくして現像剤の剥離を容易化することができる。特に、剥離のしやすさによる現像剤の回収を容易化するに際して、偏心により得られる隙間空間内に磁気遮蔽部材を設けるだけの簡単な構成で済むことにより装置の大型化や現像剤を掻き取る構造などを要することなく確実に行わせることができる。
【符号の説明】
【0277】
(図1について)
1 感光体
4 現像装置
14 張架ローラ
15 駆動ローラ
16 二次転写バックアップローラ
17 中間転写ユニット
18Y,M,C,K プロセスカートリッジ
21 光書込ユニット
22 二次転写装置
23 張架ローラ
24 紙搬送ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取センサ
44給紙カセット
42給紙ローラ
43 ペーパーバンク
45 分離ローラ
46,48 給紙路
47搬送ローラ対
49 レジストローラ対
50 手差し給紙ローラ
51 手差しトレイ
53 手差し給紙路
62Y,M,C,K 一次転写バイアスローラ
90 ベルトクリーニング装置
100 プリンタ部
110 中間転写ベルト
200 給紙装置
300 スキャナ
400 原稿自動給送装置
500 フルカラープリンタ(複写機)
(図2〜図10について)
1 現像スリーブ
2a 排出スクリュー
4 現像装置
5 現像ローラ
6 回収スクリュー
7 回収搬送路
8 供給スクリュー
9 供給搬送路
10 攪拌搬送路10
11 攪拌スクリュー11
12 ドクタブレード
13 トナー濃度センサ
80 供給下流端壁面
82 磁石ローラ
83 磁石
84 磁石ホルダ
85 磁気シールド板
91 供給開口部
92 余剰開口部
93 回収開口部
95 トナー補給口
133 第一仕切り壁
134 第二仕切り壁
135 排出仕切り壁
(図11について)
5 現像ローラ
86 フランジ
87 サポータ
88 バイアス印可ブラシ
89 従動ギヤ
90 シャフト
91 玉軸受
92,93 玉軸受
(図12について)
4 現像装置
5 現像スリーブ
401 現像剤供給用オーガ
402現像剤攪拌用オーガ
(図13について)
4 現像装置
6 第1のオーガ
8 第2のオーガ
7,9 攪拌室
S 仕切り壁
(図14について)
4 現像装置
5 現像スリーブ
6 回収用オーガ
7 回収用搬送路
8 供給用オーガ
9 供給搬送路
10 攪拌搬送路
11 攪拌用オーガ
133 仕切り壁
134仕切り壁
(図15について)
31 セル
32a 電極
32b 電極
33 キャリア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0278】
【特許文献1】特許第3127594号公報
【特許文献2】特開2007−101797号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されている静電潜像に現像剤を供給する現像剤担持体を備え、
前記現像剤は、トナーと、静電潜像現像剤用キャリアと、を含み、
前記現像剤担持体は、前記現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段を内部に有し、
前記静電潜像現像用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層と、を有し、
該被覆層は、導電性微粒子と、被覆樹脂と、を含有し、
前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、
前記被覆樹脂は、下記のA成分及びB成分で表される二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする現像装置。
【化1】

【化2】

(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【請求項2】
前記被覆樹脂は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも導電性被覆層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも二酸化スズを含む被覆層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体は、当該現像剤担持体の回転中心Pを中心に回転し、
前記磁界発生手段は、当該磁界発生手段の回転中心P’を中心に回転し、
前記P’は、前記像担持体と前記現像剤担持体との近接位置に対して、前記Pよりも近接配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、磁気遮蔽部材を内部に有し、
該磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段における前記像担持体との対向側に対して反対側に、当該磁界発生手段の一部を覆うように配置されてなることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の現像装置を具備してなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
少なくとも前記現像装置および像担持体が纏めて収容されるプロセスカートリッジを備えたことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
現像剤担持体に担持された現像剤を像担持体に形成されている静電潜像に供給する現像方法であって、
前記現像剤は、トナーと、静電潜像現像剤用キャリアと、を含み、
前記現像剤担持体は、前記現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段を内部に有し、
前記静電潜像現像用キャリアは、磁性を有する芯材粒子と、該芯材粒子表面を被覆する被覆層と、を有し、
該被覆層は、導電性微粒子と、被覆樹脂と、を含有し、
前記導電性微粒子は、前記被覆層中に前記被覆樹脂の重量以上含有されてなり、
前記被覆樹脂は、下記のA成分及びB成分で表される二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含有することを特徴とする現像方法。
【化3】

【化4】

(式中において、R、m、R、R、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:1〜8の整数
:炭素数1〜4のアルキル基
:炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【請求項10】
前記被覆樹脂は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項9に記載の現像方法。
【請求項11】
前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも導電性被覆層を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の現像方法。
【請求項12】
前記導電性微粒子は、アルミナ基体の表面に少なくとも二酸化スズを含む被覆層を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の現像方法。
【請求項13】
前記現像剤担持体は、当該現像剤担持体の回転中心Pを中心に回転し、
前記磁界発生手段は、当該磁界発生手段の回転中心P’を中心に回転し、
前記P’は、前記像担持体と前記現像剤担持体との近接位置に対して、前記Pよりも近接配置されていることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の現像方法。
【請求項14】
前記現像剤担持体は、磁気遮蔽部材を内部に有し、
該磁気遮蔽部材は、前記磁界発生手段における前記像担持体との対向側に対して反対側に、当該磁界発生手段の一部を覆うように配置されてなることを特徴とする請求項13に記載の現像方法。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれかに記載の現像方法を具備してなることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−194374(P2012−194374A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58236(P2011−58236)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】