説明

現像装置および画像形成装置

【課題】現像ローラの外径を小さくした場合であっても、画質の低下を抑制可能な現像装置を提供する。
【解決手段】マグネットローラ230Yが、磁気ブラシを形成する現像極234Yと、現像極234Yの前記搬送方向の上流側において隣接する規制極233Yとを含み、それを外套するスリーブ240Y表面における磁束密度であって、その法線方向における成分をBr、その回転軸延長上から眺めたときの接線方向における成分をBθ、前記回転軸延長上から、表面に存する2点間の相対的位置をこれらの各点とスリーブ240Yの回転軸中心とを結んで成る角度θで示すとき、スリーブ240Y表面の規制極233Yと現像極234Yとの間に存する部分であって、Brの値が0[mT]となる位置を起点として、前記搬送方向下流側で角度θ=5[°]となる位置において、2.5≦∂Br/∂θ≦5.5かつ-3.5≦∂Bθ/∂θ≦-0.5の条件を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置における現像装置に関し、特に現像ローラにおけるマグネットローラの磁極分布に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置の現像装置として、キャリアとトナーからなる2成分の現像剤を用いて感光体ドラムの周面に形成された静電潜像を現像する、いわゆる2成分式現像装置が普及している。
通常、このような現像装置における現像ローラは、回転駆動される円筒状の現像スリーブと、この現像スリーブ内に内挿され、回転しないように装置筺体に固定された円柱状のマグネットローラとからなる。
【0003】
マグネットローラは、その周方向に沿って複数の磁石が配されてなり、その磁力によってキャリアが当該現像スリーブの外周面上に担持されて搬送され、感光体ドラムと対向する位置(現像位置)で起立して磁気ブラシが形成される。キャリアに静電吸着されて搬送されてきたトナーが、当該現像位置において、現像スリーブと感光体ドラムとの電位差により感光体ドラム側に移動し、その周面に形成された静電潜像が現像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−47489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、画像形成装置のコンパクト化が推進されるのに伴い、現像装置に対しても省スペース化の要請が強く、現像ローラの外径も縮小される方向へと向かっている。
しかしながら、現像ローラの外径を小さくすると、磁気ブラシが現像スリーブ上をスリップするなどして、現像位置に到るまでに現像スリーブ上から現像剤が剥離する現象が生じことが判明した。
【0006】
図7は、イエローのトナーを収納する現像装置において、上記の剥離現象が生じている状況を示す図である。
現像スリーブ500は、感光体ドラムに対向する位置において、装置ハウジング504に設けられた開口部から外部に露出するようになっており、図7は当該開口部から現像スリーブ500の表面を見たときの斜視図である。
【0007】
同図に示すように、現像剤が付着している部分501はわずかであり、現像スリーブ上から現像剤が剥げ落ちてしまっている部分503が大きな割合を占めている。
このような剥離現象が発生すると、感光体ドラム上に形成された静電潜像の現像不良を来たし、画質を低下させる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、現像ローラの外径を小さくした場合であっても、画質の低下を抑制可能な現像装置および当該現像装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、周面に複数の磁極を有する固定マグネット体を外套し、一方向に回転されることにより、前記マグネット体と協働して、所定の受取位置で磁性粒子を含んだ現像剤を受け取り、磁気ブラシを形成して搬送する円筒状のスリーブを備えた現像装置において、前記複数の磁極は、前記磁気ブラシを形成する現像極と、前記現像極の前記搬送方向の上流側において隣接し、当該現像極とは逆極性の規制極とを含み、前記スリーブ表面における磁束密度であって、その法線方向における成分をBrとし、当該スリーブをその回転軸延長上から眺めたときの接線方向における成分をBθとし、さらに、前記回転軸延長上からスリーブを眺めたとき、表面に存する2点間の相対的位置を、これらの各点と当該スリーブの回転軸中心とを結んで成る角度θで示すとき、前記スリーブ表面の規制極と現像極との間に存する部分における、Brの値が0[mT]となる位置を起点として、前記搬送方向下流側において、前記角度θの値が5[°]となる位置において、2.5≦∂Br/∂θ≦5.5かつ−3.5≦∂Bθ/∂θ≦−0.5の条件を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記条件を満足することにより、現像極付近において、現像スリーブ上から現像剤が剥げ落ちる現象の発生が抑制され、画像の低下を抑制することができる。
また、前記固定マグネット体は、円筒状であって、その外径は、10[mm]以上、14[mm]以下であることを特徴とすることが望ましい。
なお、本発明は、上記現像装置を備えた画像形成装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における実施の形態に係る現像装置を備える画像形成装置の一例であるタンデム型カラープリンタの構成を説明するための概略図である。
【図2】上記現像装置の構造を示す断面図である。
【図3】(a)は、上記現像装置の現像ローラの法線方向における磁束密度を示すグラフであり、(b)は、上記現像ローラの接線方向における磁束密度を示すグラフである。
【図4】(a)は、図3(a)の位置Pdにおける拡大図であり、(b)は、図3(b)の位置Pdにおける拡大図である。
【図5】外径が14[mm]の現像ローラにおける、∂Br/∂θおよび∂Bθ/∂θと、デベ剥げの発生状況との関係を示す図である。
【図6】外径が10[mm]の現像ローラにおける、∂Br/∂θおよび∂Bθ/∂θと、デベ剥げの発生状況との関係を示す図である。
【図7】従来の現像装置において、現像スリーブ上から現像剤が剥離する現象を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る定着装置を備える画像形成装置の一例であるタンデム型カラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の構成を説明するための概略図である。
【0012】
同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着部5および制御部60を備えており、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックからなるトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像形成を実行する。
【0013】
以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
<画像プロセス部>
画像プロセス部3は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部3Y,3M,3C,3K、光学部10、中間転写ベルト11などを備えている。
【0014】
作像部3Yは、感光体ドラム31Y、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラ34Y、感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを備えており、不図示の駆動源により矢印B方向に回転駆動される感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。他の作像部3M〜3Kについても、作像部3Yと同様の構成になっており、同図では符号の表記を省略している。
【0015】
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
光学部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、感光体ドラム31Y〜31Kを露光走査させる。
【0016】
この露光走査により、帯電器32Y〜32Kにより帯電された感光体ドラム31Y〜31K上に静電潜像が形成される。各静電潜像の形成は、現像器33Y〜33Kにより現像して得られた感光体ドラム31Y〜31K上のY〜K色のトナー像が、中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わせて一次転写されるように、タイミングをずらして実行される。
【0017】
一次転写ローラ34Y〜34Kにより作用する静電力により中間転写ベルト11上に各色のトナー像が順次転写されフルカラーのトナー像が形成され、さらに二次転写位置46方向に移動する。
一方、給紙部4は、記録シートSを収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートSを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートSを二次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対44などを備えており、中間転写ベルト11上のトナー像の移動タイミングに合わせて給紙部4から記録シートSを二次転写位置に給送し、二次転写ローラ45の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シートS上に二次転写される。
【0018】
二次転写位置46を通過した記録シートSは、定着部5に搬送され、記録シートS上のトナー像(未定着画像)が、定着部5における加熱・加圧により記録シートSに定着された後、排出ローラ対71を介して排出トレイ72上に排出される。
<現像器の構成>
上記現像器33Y〜33Kは、供給するトナーの色が異なる以外は、いずれも同様の構成であるため、以下、現像器33Yを例に挙げて説明し、その他の現像器については説明を省略する。
【0019】
図2は、現像器33Yの横断面図である。
現像器33Yは、トナーとキャリアを含む2成分現像剤を使用したものであって、現像槽となるハウジング134Y内に、攪拌部材133Y、供給部材132Y、現像ローラ131Y、規制部材241Yを配してなる。
供給部材132Yは、現像ローラ131Yの下方に位置するスクリューであり、回転しつつ現像ローラ131Yに現像剤(不図示)を供給する。
【0020】
攪拌部材133Yは、供給部材132Yの横に並ぶように設けられたスクリューであり、回転しつつハウジング50内の現像剤(不図示)を攪拌して固化を防ぐと共に流動性を保持して、攪拌した現像剤(不図示)を供給部材52に搬送する。
現像ローラ131Yは、感光体ドラム31Yにトナーを運ぶローラであって、円筒形の現像スリーブ240Yと、現像スリーブ240Yの内部にローラ軸方向に沿って挿通されるマグネットローラ230Yを備えている。
【0021】
現像スリーブ240Yは、内径が15[mm]、外径が16[mm]の円筒状の部材であって、アルミニウムなどの非磁性材料で構成され、不図示の駆動源により矢印C方向に回転駆動される。
マグネットローラ230Yは、複数のマグネットピースが円柱状の軸芯220Yに設けられてものである。
【0022】
より具体的には、現像スリーブの回転方向に沿って、キャッチ極231Y(S極)、搬送極232Y(N極)、規制極233Y(S極)、現像極234Y(N極)および剥離極235Y(S極)がこの順で隣接して配されている。
なお、軸芯220Yは、回転しないようにローラ軸方向の両端部がハウジング134Yに固定されている。
【0023】
本実施の形態に係るマグネットローラ230Yは、省スペース化を図るために、従来のマグネットローラの外径よりも小さく設定されている。
より具体的には、従来のマグネットローラの外径が、28[mm]であったのに対し、本実施の形態に係るマグネットローラ230Yでは、外径が14[mm]に設定されている。
なお、従来のマグネットローラを外套する現像スリーブは、外径が30[mm]、内径が29[mm]となっている。
【0024】
規制部材241Yは、板状であり、その先端が現像スリーブ511の周面との間に所定の間隔を有するように配置され、現像位置に搬送される現像剤量を規制する。
本実施の形態に係る現像装置では、上記所定の間隔は、例えば0.5〔mm〕に設定されている。
以下、トナーが感光体ドラム31Yに搬送される原理について説明する。
【0025】
(1)ハウジング134Y内において、攪拌部材133Yおよび供給部材132Yで攪拌され、磁性キャリアと擦り合わされることにより、適切に帯電されたトナーは、磁性キャリアに吸着し、キャッチ極231Yの磁力によりマグネットローラ230Yに担持される。
現像スリーブ240Yは、表面に微小な凹凸が設けられているため、現像スリーブ240Yが矢印C方向に回転するのに伴い、現像剤(トナー+磁性キャリア)はマグネットローラ230Yに担持されながら回転方向上流側に搬送される。
【0026】
(2)現像剤が搬送極232Yまで到達したとき、キャッチ極231YがS極、搬送極232YがN極であるため、この2極間には引き合う力が働き、現像剤はなめらかに搬送極232Y側へ移動する。
(3)さらに、回転方向下流側へ現像剤が搬送されると、規制極233Y上に到達する。
【0027】
ここでは、搬送極232YがN極、規制極233YがS極であるために現像剤はなめらかに規制極233Yへ移動する。
当該規制極233Yの鉛直方向上流には規制部材241Yが設けられており、搬送されてきた現像剤の量が適切に調整される。
(4)続いて、規制部材241Yを通過した現像剤は、現像極234Yに移動する。
【0028】
このとき、現像スリーブ240Yの法線方向における磁束密度が大きくなり、表面にトナー粒子を静電的吸着した磁性キャリアがブラシ状に起立する、いわゆる磁気ブラシが形成される。
また、この位置は、マグネットローラ230Yと感光体ドラム31Yとの対向する位置であり、マグネットローラ230Yに印加された現像バイアスと、感光体ドラム31Yと表面電位との関係により、磁気ブラシのトナーが感光体ドラム31Y側に誘引され、当該感光体ドラム31Y上の静電潜像が現像される。
【0029】
(5)当該現像によりトナーが消費された現像剤は、現像極234Y(N極)から回転方向下流側の剥離極235Y(S極)に移動する。
さらに、この現像剤は、現像スリーブ240Yの搬送力によって回転方向下流側のキャッチ極231Yに移動しようとするが、剥離極235YはS極であり、キャッチ極231YもS極であるため、この2極間には反発力が働き、現像剤はキャッチ極231Yに移動することができず、下方のハウジング134Yへと落下する。
【0030】
以上のように、各マグネットピースは、個々の役割を果たし、機能を保っている。
しかしながら、コンパクト化のため従来よりもマグネットローラ230Yの外径を小さく設定した本実施の形態における現像器33Yでは、現像位置において、現像剤が現像スリーブ上から剥離する現象(以下では、デベロッパー(現像剤)が剥げるという意味で、「デベ剥げ」と略す。)が生じ易いことが判明した。
【0031】
これは、マグネットローラ230Yの径が小さくなったため、それだけ隣接する規制極233Y(S極)と現像極234Y(N極)との周面上における間隔が小さくなり、両者間において引き合う周方向の強い磁力が生じ、これが磁気ブラシの形成を阻害して、上記のようにデベ剥げが生じたものと考えられる。
このようなデベ剥げが生じると、感光体ドラム31Y上に形成された静電潜像の現像不良が生じて、画像の濃度が低下し、もしくは、デベ剥げが発生するときに飛散するトナーにより、本来白地である部分に画像が形成される、いわゆる地肌かぶりなどの問題が生じ、その結果、画質を低下させる。
【0032】
そこで、発明者は、鋭意検討の末、デベ剥げの発生を抑制可能なマグネットローラ230Yの磁束条件を導き出した。
本実施の形態における現像器33Yは、マグネットローラ230Yが後述の磁束条件1を満足するように構成されている。
以下、上記磁束条件1の導出方法について詳細に説明する。
【0033】
先ず、発明者は、マグネットローラの外径を、従来よりも小さい14[mm]に維持した上で、キャッチ極(S極)、搬送極(N極)、規制極(S極)、現像極(N極)および剥離極(S極)の各着磁強度や周方向における幅を変えるなどして、複数のマグネットローラを試作した。
そして、デベ剥げが発生するマグネットローラと発生しないマグネットローラの磁気特性を、磁気特性測定装置(中部電機製)を用いて調査した。
【0034】
この装置には、磁力測定用のガウスメーターが、マグネットローラを回転自在に外套する現像スリーブから一定の距離を保つように固定されている。
当該現像スリーブは、上記実施の形態における現像スリーブ240Yと同一のものである。
この状態で、マグネットローラの中心部の軸に固定されたマグネットピースを回転させることにより、マグネットローラの全周における磁気特性を測定することができる。
【0035】
ここで、上記磁気特性とは、現像スリーブ表面における磁束密度であって、当該表面の法線方向における成分Brと、現像スリーブの回転軸延長上から眺めたときにおける当該表面の接線方向における成分Bθのことである。
図3(a)は、デベ剥げが発生している現像スリーブにおいて、上記法線方向成分Brが、周方向においてどのように変化しているのかを示すグラフである。
【0036】
ここで、同図の縦軸は、上記法線方向に作用する磁束の密度Brの値を示しており、+側はN極性を示し、−側はS極性を示す。
複数のピークが存在するが、これらは各マグネットピースの位置と対応している。
つまり、ピーク点P1は、キャッチ極の位置に対応し、ピーク点P2は、搬送極の位置に対応し、ピーク点P3は、規制極の位置に対応し、ピーク点P4は、現像極の位置に対応し、ピーク点P5は、剥離極の位置に対応している。
【0037】
また、横軸は、現像スリーブの回転軸延長上から当該現像スリーブを眺めたとき、その表面に存する2点間の相対的位置を、これらの各点と当該現像スリーブの回転軸中心とを結んで成る角度θの値で示したものである。
ここでは、角度θの基準位置、即ち、0[°]となる位置を、規制極と現像極との間においてBrの値が0となる位置と一致させて表示している。
【0038】
また、図3(b)は、上述のデベ剥げが発生している現像スリーブにおいて、上記接線方向成分Bθが、周方向においてどのように変化しているのかを示すグラフである。
同図の縦軸は、上記接線方向成分Bθの値を示す。
ここで、+の側は、現像剤をマグネットローラの回転方向下流側に移動させようとする磁束の密度の大きさを示し、−の側は、現像剤を回転方向上流側に移動させようとする磁束の密度の大きさを示す。
【0039】
また、横軸は、図3(a)と同様に、上記角度θの値を示す。
発明者は、実際にデベ剥げが発生している規制極から現像極にかけての領域に着目した。
すると、デベ剥げの発生が特に顕著であったのは、法線方向磁東密度(Br)が0[mT]となる位置の近傍であって、上記角度θの値が5[°]となる付近であることが判明した。
【0040】
図4(a)および(b)は、デベ剥げが発生している2本のマグネットローラと、デベ剥げが発生していない1本のマグネットローラとにおける、角度θの値が5[°]となる位置周辺の磁気特性を示すグラフである。
より具体的には、図4(a)は、上記3本のマグネットローラにおける、Brとθとの関係を示し、図4(b)は、上記3本のマグネットローラにおける、Bθとθとの関係を示している。
【0041】
図4(a)をみると、デベ剥げが未発生のマグネットローラは、0[mT]位置(角度θの値が0[°]の位置)からのBrの立ち上がり方が急激で、傾きが大きいことがわかる。
また、図4(b)をみると、デベ剥げが発生している他のマグネットローラよりも、デベ剥げが未発生のマグネットローラの方が、角度θの値が10[°]から30[°]の間で生じるBθのピーク点が、角度θの値が0[°]により近い位置で生じ、角度θの値が5[°]周辺において、他のものよりも比較的変化が大きいことがわかる。
【0042】
そこで、発明者は、角度θに対するBrおよびBθの変化率の違いの観点から、試験結果をまとめ直すと共に、さらに、試験サンプル数を増やすことにした。
図5は、その試験結果を示すグラフである。
同グラフ中の横軸は、角度θが5[°]の周辺における∂Br/∂θの値、つまり、Brをθで偏微分した値を示す。
【0043】
また、縦軸は、角度θが5[°]の周辺における∂Bθ/∂θの値、つまり、Bθをθで偏微分した値を示す。
ここで、凡例の○は、デベ剥げが未発生であることを示し、△は軽微なデベ剥げが発生したことを示し、×はデベ剥げが発生したことを示す。
この結果から、デベ剥げを防止するには、以下の磁束条件を満足することが必要であることが判明した。
(磁束条件1)
2.5≦∂Br/∂θ≦5.0
かつ、
−3.5≦∂Bθ/∂θ≦−0.5
以上の条件は、軽微なデベ剥げの発生を許容した条件であるため、さらに、デベ剥げの発生を抑制するためには、以下の条件を満足することが好ましい。
(磁束条件2)
3.0≦∂Br/∂θ≦5.0
かつ
−3.0≦∂Bθ/∂θ≦−1.0
これにより、デベ剥げの発生を防止できることができ、安定した画質を得ることができる。
【0044】
さらに、発明者は、マグネットローラの外径が小さくなった場合にも、上記条件が適用できるか否かを確認するために、上記と同様の試験を、外径が10[mm]のマグネットローラに対して実施した。
なお、当該マグネットローラを外套する現像スリーブは、外径が12[mm]、内径が11[mm]となっている。
【0045】
図6は、その結果を示すグラフである。
このグラフの見方は、図5と同様であるため、同グラフについての説明は省略する。
同グラフに示すように、外径が10[mm]のマグネットローラおいても、上記磁束条件1を満足する範囲では、デベ剥げが未発生であるか、もしくは、軽微なデベ剥げのみが発生していることがわかる。
【0046】
さらに、上記磁束条件2では、軽微なデベ剥げの発生もなく、デベ剥げが全く発生していないことがわかる。
このように、マグネットローラの外径を10[mm]においても、磁束条件1および2を満足する構成とすることにより、デベ剥げの発生を抑制することができる。
以上のことから、マグネットローラの外径が、少なくとも10[mm]以上、14[mm]以下の範囲においては、上記磁束条件1または2を満足することにより、デベ剥げの発生を抑制することができるものと考えられる。
【0047】
発明者は、このような結果が得られた理由について、以下のように考察した。
即ち、現像極は、磁気ブラシを形成するために、他極よりBrが大きくなるように構成されており、∂Br/∂θの値の大きさは、磁気ブラシの成長スピードに影響を与えているものと考えられる。
つまり、∂Br/∂θの値が大きい場合、磁気ブラシの成長スピードが速く、また、∂Br/∂θの値が小さい場合、磁気ブラシの成長スピードが遅いことが予想される。
【0048】
このため、∂Br/∂θの値が大きすぎる場合、磁気ブラシは、早い時点で高さが高くなり、感光体ドラム31Yとの対向位置に達するまでの間に、振動などの影響を受け易く、現像スリーブ240Yの表面からスリップし易くなり、デベ剥げが発生し易くなるものと考えられる。
一方、∂Br/∂θの値が小さすぎる場合、磁気ブラシは、現像極の中央部分に到達するまでに、高さが低い状態が長く続くことになる。
【0049】
ここで、現像スリーブ240Y上にある現像剤を、微小な現像剤の塊が、いくつも点在しているものと解すれば、上述のような磁気ブラシの成長が遅い状態は、当該塊の裾野が広がっている状態と考えられる。
このような状態の現像剤の塊が回転方向にいくつも点在すると、それぞれの裾野同士が互いに接触して、互いに繋がろうとすることが予想される。
【0050】
これにより、磁束密度の周方向成分Bθの影響を受けやすくなり、デベ剥げが発生し易くなるものと思われる。
また、縦軸に示された∂Bθ/∂θの値が、小さすぎる場合、現像剤を周方向に移動させようとする磁束密度の増加度合いが少ないので、現像剤が規制極付近に留まり易くなり、デベ剥げが発生すると考えられる。
【0051】
一方、縦軸に示された∂Bθ/∂θの値が、大きすぎる場合、現像剤を周方向に移動させようとする磁束密度の増加度合いが大き過ぎるために、現像剤が現像スリーブの動きに追従せずに、先に移動してしまうために、デベ剥げが発生するものと考えられる。
なお、このようなデベ剥げの発生は、画質向上のために現像極の高磁力化を図った場合においても発生することが確認されており、このような場合にも、マグネットローラ230Yを後述の磁束条件1を満足するように構成することで、デベ剥げの発生を抑制することができることが確認された。
<変形例>
本発明は、上述のような実施の形態に限られるものではなく、次のような変形例も実施することができる。
【0052】
(1)上記実施の形態では、現像器33Yは、トナーとキャリアを含む2成分現像剤を使用したものであるとしたが、場合によっては一成分の磁性トナーを使用してもよい。
(2)また、上記実施の形態では、感光体ドラム31Yと現像スリーブ240Yとが、互いに対向する部分において、カウンター方向に回転している構成となっているが、これに限られず、同方向に回転させてもよい。
【0053】
(3)なお、上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、モノクロプリンタなどでもよく、要するに、周面に複数の磁極を有する固定マグネット体を外套し、一方向に回転されることにより、前記マグネット体と協働して、所定の受取位置で磁性粒子を含んだ現像剤を受け取り、磁気ブラシを形成して搬送する円筒状のスリーブを備えた現像装置および、当該現像装置を備える画像形成装置一般に適用することができる。
【0054】
また、上記実施の形態および上記変形例の内容を、可能な限りそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、磁性粒子を含んだ現像剤を感光体ドラムに搬送するために、マグネットローラを内包する現像ローラを備える現像装置および当該現像装置を備える画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 プリンタ
3 画像プロセス部
4 給紙部
5 定着部
10 光学部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
3Y,3M,3C,3K 作像部
31 感光体ドラム
32 帯電器
33 現像器
34 一次転写ローラ
35 クリーナ
41 給紙カセット
42 ローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 二次転写ローラ
46 二次転写位置
50 ハウジング
52 供給部材
60 制御部
71 排出ローラ対
72 排出トレイ
131 現像ローラ
132 供給部材
133 攪拌部材
134 ハウジング
220 軸芯
230 マグネットローラ
231 キャッチ極
232 搬送極
233 規制極
234 現像極
235 剥離極
240 現像スリーブ
241 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に複数の磁極を有する固定マグネット体を外套し、一方向に回転されることにより、前記マグネット体と協働して、所定の受取位置で磁性粒子を含んだ現像剤を受け取り、磁気ブラシを形成して搬送する円筒状のスリーブを備えた現像装置において、
前記複数の磁極は、
前記磁気ブラシを形成する現像極と、
前記現像極の前記搬送方向の上流側において隣接し、当該現像極とは逆極性の規制極とを含み、
前記スリーブ表面における磁束密度であって、その法線方向における成分をBrとし、当該スリーブをその回転軸延長上から眺めたときの接線方向における成分をBθとし、
さらに、前記回転軸延長上からスリーブを眺めたとき、表面に存する2点間の相対的位置を、これらの各点と当該スリーブの回転軸中心とを結んで成る角度θで示すとき、
前記スリーブ表面の規制極と現像極との間に存する部分における、Brの値が0[mT]となる位置を起点として、前記搬送方向下流側において、前記角度θの値が5[°]となる位置において、
2.5≦∂Br/∂θ≦5.5
かつ
−3.5≦∂Bθ/∂θ≦−0.5
の条件を満足することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記固定マグネット体は、円筒状であって、その外径は、10[mm]以上、14[mm]以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230334(P2012−230334A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100173(P2011−100173)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】