説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】現像ローラに熱が蓄積するのを抑制する現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置2は、感光体11にトナーを供給する現像ローラ20を備え、現像ローラ20は磁極部材20bと現像スリーブ20cを有する。現像スリーブ20cは現像スリーブ20c表面側から順に第1層20dと第2層20eを有し、第1層20dの熱伝導率は第2層20eの熱伝導率より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置に係る現像装置において、現像ローラは、支軸となるシャフトに設けられた磁極部材と、磁極部材の外周に間隔を有して配置されるとともに回転自在に設けられるスリーブと、このスリーブ両端を支持するフランジとを備える。磁極部材は、回転しないように現像装置内に固設され、スリーブ外周面に所定の磁力分布を形成する。そして、現像装置内にてスリーブが回転し、現像剤が順次感光体に供給され、感光体上の静電潜像を現像している。
【0003】
ここで、現像装置内での現像剤同士の衝突、現像剤の撹拌スクリューへの衝突・摩擦、撹拌スクリューや現像ローラの摺動、現像ローラ上の現像剤の層厚を規制する規制ブレード等において熱が発生する。この熱が撹拌スクリューやスリーブに蓄積され、蓄積された熱によって、現像剤が撹拌スクリューやスリーブに固着してしまうおそれがある。さらに現像剤が溶融して流動性が悪くなると、感光体上で現像される画像に悪影響がおよび、用紙に形成される画像に不良が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、現像ローラは、磁極部材と、磁極部材の外周に所定の間隔を有するスリーブとを備え、このスリーブは、磁極部材に近いスリーブ下層と、磁極部材から遠いスリーブ表面層とを有している。このスリーブ下層は、スリーブ表面層に比べて熱伝導率が大きい材料で形成されている。これにより、スリーブに蓄積される熱は、スリーブ表面層からスリーブ下層に向けて移動して、その後にスリーブ下層から磁極部材に放散される。こうして、現像装置内で発生する熱は、スリーブに蓄積されることなく放散され、スリーブ表面でのトナーの固着を軽減している。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、スリーブ下層と磁極部材との間隔には、空気が介在することになり、通常空気層は熱伝導率が非常に小さく断熱作用を有する。従って、スリーブに蓄積した熱がスリーブ下層から放散されるにしても、空気層の断熱作用によって、磁極部材に十分に放熱され難く、スリーブ表面の昇温が抑制されがたいという問題があった。
【特許文献1】特開2004−109215号公報(段落[0038]〜[0040]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、現像ローラ等の回転体に熱が蓄積するのを抑制する現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、現像剤を担持する回転体を備え、前記回転体の表面側から順に第1層と第2層を有し、前記第1層の熱伝導率は前記第2層の熱伝導率より小さいことを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、現像装置内の熱は第2層で吸熱され、この第2層の熱は、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、第2層表面から放散されうる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記第1及び第2層はバインダー樹脂層と熱伝導率の大きい金属粒子を有し、前記第1層の前記バインダー樹脂層に対する前記金属粒子の割合が、前記第2層の前記バインダー樹脂層に対する前記金属粒子の割合より小さいことを特徴としている。この構成によれば、現像装置内の熱は第2層で吸熱され、この第2層の熱は、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、第2層表面から放散されうる。また、第1層と第2層は金属粒子の割合を異ならせるだけで、回転体に形成される。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、前記第2層の上側に第3層を有し、前記第2層の熱伝導率は前記第3層の熱伝導率より小さいことを特徴としている。この構成によれば、現像装置内の熱は第3層で吸熱され、この第3層の熱は、第3層より熱伝導率の小さい第2層によって、第2層から第1層に伝導するのを抑制され、第2層に熱伝導しても、第2層の熱は、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、各層の熱は熱伝導率の相対的に大きい第3層表面から放散されうる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、上記の構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、現像装置内の熱は第2層で吸熱され、この第2層の熱は、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、第2層表面から放散されうる。従って、回転体に熱が蓄積されるおそれがなく、回転体の昇温が抑制され、回転体へのトナーの付着が防止される。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、現像装置内の熱は第2層で吸熱され、この第2層の熱は、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、第2層表面から放散されうる。従って、回転体に熱が蓄積されるおそれがなく、回転体の昇温が抑制され、回転体へのトナーの付着が防止される。また第1層と第2層は金属粒子の割合を異ならせるだけで、簡単にかつ迅速に回転体に形成することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、現像装置内の熱は第3層で吸熱され、この第3層の熱は、第3層より熱伝導率の小さい第2層によって、第2層から第1層に伝導するのを抑制され、第2層に伝導した熱も、第2層より熱伝導率の小さい第1層によって、第1層から回転体に伝導するのを抑制され、熱伝導率の相対的に大きい第3層表面から放散されうる。従って、回転体に熱が蓄積されるおそれがなく、回転体の昇温が抑制され、回転体へのトナーの付着が防止される。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、回転体に熱が蓄積するのを抑制する現像装置を備える画像形成装置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。本発明の実施形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の内部構成を概略的に示す平面図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンタであり、回転自在である像担持体としての感光体11a〜11dは、感光層を形成する感光材料として、有機感光体(OPC感光体)が用いられ、ブラック(B)、イエロー(Y)、シアン(C)及びマゼンタ(M)の各色に対応させて配される。感光層はアモルファスシリコンでもよい。各感光体11a〜11dの周囲に、現像装置2a〜2d、露光ユニット12、帯電器13a〜13d及び除電器14a〜14dが配設される。
【0018】
現像装置2a〜2dは、感光体11a〜11dの右方に対向して配置され、感光体11a〜11dにトナーを供給する。帯電器13a〜13dは、現像装置2a〜2dの感光体回転方向上流側であって感光体11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体11a〜11d表面を一様に帯電させる。また除電器14a〜14dは、現像装置2a〜2dの感光体回転方向下流側であって感光体11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体11a〜11d表面に現像後に残った電荷を除電する。
【0019】
露光ユニット12は、パーソナルコンピュータ等から画像入力部(図略)に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、各感光体11a〜11dを走査露光するためのものであり、現像装置2a〜2dの下方に設けられる。露光ユニット12には、レーザ光源、ポリゴンミラーが設けられ、各感光体11a〜11dに対応して反射ミラー及びレンズが設けられる。レーザ光源から出射されたレーザ光が、ポリゴンミラー、反射ミラー及びレンズを介して、帯電器13a〜13dの感光体回転方向下流側において、各感光体11a〜11dの表面に照射される。照射されたレーザ光により、各感光体11a〜11d表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置2a〜2dによりトナー像に現像される。
【0020】
中間転写ベルト17は、駆動ローラ25、従動ローラ27、及びテンションローラ6に張架されている。この中間転写ベルト17に接触するように各感光体11a〜11dが中間転写ベルト17の下方で搬送方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。各1次転写ローラ26a〜26dは、中間転写ベルト17を挟んで各感光体11a〜11dと対向して中間転写ベルト17に圧接し、1次転写ニップ部を形成する。この各1次転写ニップ部において、中間転写ベルト17の回転とともに所定のタイミングで各感光体11a〜11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これによって、中間転写ベルト17表面にはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされ、カラートナー像が形成される。ベルトクリーニング31が転写後に中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0021】
2次転写ローラ34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラ25と対向し、中間転写ベルト17に圧接して2次転写ニップ部を形成する。この2次転写ニップ部において、バイアス電位(トナーの帯電極性と逆極性)が印加された2次転写ローラ34によって、中間転写ベルト17上に形成されたトナー像が用紙に2次転写される。
【0022】
画像形成装置1の下部には、用紙Pを収納する給紙カセット32が配設され、給紙カセット32の右方には、手差しの用紙を供給するスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを中間転写ベルト17で形成される2次転写ニップ部に搬送する第1搬送路33が配設される。またスタックトレイ35の左方には、スタックトレイ35から繰り出された用紙を2次転写ニップ部に搬送する第2搬送路36が配設される。画像形成装置1の左上部には、トナー像が転写された用紙Pに対して定着処理を行う定着装置18と、定着処理の行われた用紙を用紙排出部37に搬送する第3搬送路39とが配設される。
【0023】
給紙カセット32は、装置の外部(図1において手前側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にしたもので、収納されている用紙Pがピックアップローラ33b及び捌きローラ33aにより1枚ずつ第1搬送路33側に繰り出される。
【0024】
第1搬送路33と第2搬送路36とはレジストローラ33cの手前で合流しており、レジストローラ33cにより、2次転写ニップ部における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写ニップ部に搬送される。2次転写ニップ部に搬送された用紙Pは、中間転写ベルト17上のトナー像を転写され、定着装置18に搬送される。
【0025】
定着装置18は、ヒータにより加熱される定着ベルトと、定着ベルトに圧接して配設された加圧ローラ等とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。定着された用紙Pは、必要に応じて第4搬送路40で反転されて用紙の裏面にも2次転写ニップ部でトナー像が転写されて、定着装置18で再度定着され、排出ローラ19aにより用紙排出部37に排出される。
【0026】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる現像装置の構成を示す断面平面図である。なお、以下の説明では、図1に示す感光体11aに対応する現像装置2aの構成及び動作について説明するが、現像装置2b〜2dの構成及び動作については現像装置2aと同様であり、説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略する。
【0027】
図2に示すように、現像装置2は、現像ローラ20、磁気ローラ21、現像容器22、撹拌部材23、及び規制ブレード24等により構成されている。
【0028】
現像容器22は、現像装置2の外郭を構成し、その下部の現像剤収容部22cにおいて磁性キャリアとトナーからなる現像剤を貯留し、また撹拌部材23と磁気ローラ21及び現像ローラ20を回転可能に保持している。現像容器22には、現像ローラ20を感光体11に向けて露出させる開口22aが形成されている。
【0029】
現像ローラ20は、感光体11に対向し、一定の隙間を設けて感光体11の図2の右方に配される。磁気ローラ21は、一定の隙間を設けて現像ローラ20に対向し、現像ローラ20の右斜め下方に配される。また、磁気ローラ21は、現像ローラ20に接近した対向位置において、現像ローラ20にトナーを供給するトナー供給領域Tを形成している。撹拌部材23は磁気ローラ21の略下方に配される。また、規制ブレード24は磁気ローラ21の左斜め下方にて現像容器22に固定保持されている。
【0030】
撹拌部材23は、第1ミキサー23aと第2ミキサー23bの2本で構成される。第2ミキサー23bが磁気ローラ21の下方に設けられ、第1ミキサー23aが第2ミキサー23bの右方に隣接して設けられる。第1ミキサー23aは磁性キャリアとトナーからなる現像剤を撹拌して現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。これによりトナーは磁性キャリアに保持される。また、第1ミキサー23aと第2ミキサー23bを仕切る現像容器22の仕切り壁22bの長手方向(図2の紙面奥行き方向)の両端部分には、穴(図略)が設けられ、第1ミキサー23aが回転すると、帯電した現像剤が仕切り壁22bに設けた一方の穴から第2ミキサー23bに搬送され、現像剤が第1ミキサー23aと第2ミキサー23bとを循環する。第2ミキサー23bが回転して、現像剤が磁気ローラ21に供給される。
【0031】
規制ブレード24は、磁気ローラ21の表面に対して所定の間隔を設けて、トナー供給領域Tの磁気ローラ21の回転方向上流側に配設され、後述する磁気ローラ21表面に形成される磁気ブラシの層厚規制を行うためのものである。
【0032】
磁気ローラ21は、ローラ軸21aと磁極部材M及び磁気スリーブ21bを備え、撹拌部材23により撹拌された現像剤を担持し、担持した現像剤からトナーのみを現像ローラ20に供給するものである。磁極部材Mは、断面扇形に形成された極性の異なる複数の磁石が交互に配設され、ローラ軸21aに接着等により固着される。ローラ軸21aは、磁気スリーブ21b内で、磁極部材Mと磁気スリーブ21bの間に所定の隙間を設けて、現像容器22に回転不能に支持される。磁気スリーブ21bは、図示しないモータとギヤからなる駆動機構により、現像ローラ20と同方向(図2の時計回り方向)に回転し、また直流電圧56aに交流電圧56bを重畳したバイアス56を印加される。磁気スリーブ21b表面において、帯電した現像剤は磁極部材Mの磁力によって磁気ブラシを形成して担持され、磁気ブラシは規制ブレード24によって所定の高さに調節される。
【0033】
ここで、磁気スリーブ21bが回転すると、磁気ブラシは、磁極部材Mによって磁気スリーブ21b表面に担持されて搬送され、トナー供給領域Tで現像ローラ20に接触すると、磁気ブラシのトナーのみが、磁気スリーブ21bに印加されたバイアス56に応じて、現像ローラ20に供給される。尚、磁気スリーブ21bは、現像ローラ20と同方向に回転するので、トナー供給領域Tにおいて、現像ローラ20に対して反対方向に回転駆動されることにより、現像ローラ20にトナーのみを供給しやすくなる。
【0034】
現像ローラ20は、ローラ軸20a、磁極部材20b及び現像スリーブ20c等を備えて構成されている。ローラ軸20aは、現像スリーブ20c内で、磁極部材20bと現像スリーブ20cの間に所定の隙間を設けて、現像容器22に回転不能に支持される。磁極部材20bは、磁石よりなり、ローラ軸20aに接着等により固着され、トナーを現像スリーブ20c表面に担持する。現像スリーブ20cは、図示しないモータとギヤからなる駆動機構により、図2の矢印方向(時計回り方向)に回転する。また、現像スリーブ20cには、直流電圧55aに交流電圧55bを重畳した現像バイアス55が印加される。ここで、現像バイアス55を印加された現像スリーブ20cが図2の時計回り方向に回転すると、現像部Dにおいて、現像バイアス電位と感光体11の露光部位の電位との電位差により、現像スリーブ20c表面に担持されたトナーが感光体11に飛翔する。飛翔したトナーが感光体11上の露光部位に付着し、静電潜像が現像される。
【0035】
現像後に、感光体11の潜像形成に供されなかった現像スリーブ20c表面の未現像トナーは、現像スリーブ20cの時計回り方向の回転によって、現像部Dからトナー供給領域Tまで搬送され、磁気スリーブ21b表面の磁気ブラシに接触すると、磁気ブラシによって現像スリーブ20c表面から掻き取られて、磁気ローラ21側に回収される。
【0036】
次に、図3に基づいて回転体としての現像スリーブ20cの構成を詳しく説明する。図3は現像ローラを概略的に示す断面平面図である。
【0037】
現像スリーブ20cは、現像ローラ20の基幹を構成するものであり、アルミニウム、ステンレス鋼等の剛性を備える材料で円筒形状に形成される。現像スリーブ20cには、その表面側から順に第1層20dと第2層20eが設けられる。この第1層20dと第2層20eによって、熱蓄積しやすい材料からなる現像スリーブ20cに熱が伝導されることを抑えている。
【0038】
第1層20dは、第2層20eの熱伝導率より小さい材料で、現像スリーブ20c表面に設けられる。本実施形態では、第1層20dは、硬質ウレタンホームを10μmの厚さで現像スリーブ20c表面に塗布している。第2層20eは、層厚3〜20μmのニッケルを第1層20d表面に無電解メッキ処理を施している。この場合、第1層(硬質ウレタンホーム)20dの熱伝導率は0.025W/m・Kであり、第2層(無電解ニッケルメッキ)20eの熱伝導率は90W/m・Kであり、第1層20dの熱伝導率が第2層20eの熱伝導率に対して小さくなり、第1層20dは第2層20eの熱を現像スリーブ20cに伝導するのを抑えている。
【0039】
上記第1実施形態によれば、現像装置2は、感光体11にトナーを供給する現像ローラ20を備え、現像ローラ20は磁極部材20bと現像スリーブ20cを有する。現像スリーブ20cは現像スリーブ20c表面側から順に第1層20dと第2層20eを有し、第1層20dの熱伝導率は第2層20eの熱伝導率より小さい。
【0040】
この構成によると、現像スリーブ20cの外周面の熱は第2層20eで吸熱され、この第2層20eの熱は、第2層20eより熱伝導率の小さい第1層20dによって、第1層20dから現像スリーブ20cに伝導するのを抑制され、第2層20e表面から放熱することが可能になる。従って、現像スリーブ20cに熱が蓄積されるおそれがなく、現像スリーブ20cの昇温が抑制され、現像スリーブ20cへのトナーの付着が防止される。
【0041】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態である現像スリーブに施した第1及び第2層を概略的に示す断面平面図である。第1実施形態と異なる、第1及び第2層の構成について主に説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0042】
現像スリーブ20cは、現像ローラ20の基幹を構成するものであり、アルミニウム、ステンレス鋼等の剛性を備える材料で円筒形状に形成される。現像スリーブ20cには、その表面側から順に第1層20dと第2層20eが設けられる。この第1層20dと第2層20eによって、熱蓄積しやすい材料からなる現像スリーブ20cに熱が伝導されることを抑えている。
【0043】
第1及び第2層20d、20eは、それぞれバインダー樹脂層61と金属粒子62を有する。バインダー樹脂層61は、フェノール樹脂等を材料にして、金属粒子62を互いに固定させるのに用いられる。フェノール樹脂は、熱伝導率が0.2W/m・Kであり、その層厚が10〜15μmであるのがよい。金属粒子62は、アルミニウム等の熱伝導性の大きい粉末からなり、アルミニウム粉末では、熱伝導率が200W/m・Kであり、平均粒径が40〜60μmであるのがよい。第1層20dは現像スリーブ20c表面に塗布され、第2層20eは第1層20d表面に塗布される。
【0044】
本実施形態では、第1及び第2層20d、20eのバインダー樹脂層61は同じ層厚にして、第1層20dの金属粒子62としてアルミニウム粉末の含有率が3wt%(質量パーセント)であり、第2層20eの金属粒子62としてアルミニウム粉末の含有率が40wt%(質量パーセント)としている。夫々このような含有率にすることにより、第1層20dの熱伝導率は0.2W/m・Kとなり、第2層20eの熱伝導率は10W/m・Kとなり、第1層20dの熱伝導率が第2層20eの熱伝導率より小さい。
【0045】
従って、現像スリーブ20cの外周面の熱は第2層20eで吸熱され、この第2層20eの熱は、第2層20eより熱伝導率の小さい第1層20dによって、第1層20dから現像スリーブ20cに伝導するのを抑制され、第2層20e表面から放熱することが可能になる。従って、現像スリーブ20cに熱が蓄積されるおそれがなく、現像スリーブ20cの昇温が抑制され、現像スリーブ20cへのトナーの付着が防止される。
【0046】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態の第1及び第2層構成のさらに上層に第3層を形成したものである。図5は、第3実施形態である3層構成を概略的に示す断面平面図である。
【0047】
現像スリーブ20cはアルミニウム、ステンレス鋼等の金属材からなり、第1層20dは、バインダー樹脂層61と、アルミニウム粉末の含有率が3wt%である金属粒子62とを有し、第2層20eは、バインダー樹脂層61と、アルミニウム粉末の含有率が40wt%である金属粒子62とを有する。第3層20fは、層厚3〜20μmのニッケルを第2層20e表面に無電解メッキ処理によって形成される。
【0048】
従って、第1層20dの熱伝導率は0.2W/m・Kであり、第2層20eの熱伝導率は10W/m・Kであり、第3層20fの熱伝導率は90W/m・Kである。
【0049】
上記の3層構成によれば、現像スリーブ20cの外周面の熱は第3層20fで吸熱され、この第3層20fの熱は、第3層20fより熱伝導率の小さい第2層20eによって、第2層20eから第1層20dに伝導するのを抑制され、第2層20eに伝導した熱も、第2層20eより熱伝導率の小さい第1層20dによって、第1層20dから現像スリーブ20cに伝導するのを抑制され、熱伝導率の相対的に大きい第3層20f表面から放熱することが可能になる。従って、現像スリーブ20cに熱が蓄積されるおそれがなく、現像スリーブ20cの昇温が抑制され、現像スリーブ20cへのトナーの付着が防止される。
【0050】
尚、上記実施形態では、現像ローラ20は、磁極部材20bと現像スリーブ20cを有し、回転体としての現像スリーブ20cが金属材からなる構成を示したが、本発明はこれに限らず、回転体が円筒状の形状に拘らずに、また合成樹脂で構成されても、その熱伝導率が大きいのなら、合成樹脂製の現像ローラ表面に相対的に熱伝導率の小さい第1層を設ける構成にしてもよい。さらに、回転体を現像ローラ20の現像スリーブ20cに適用したが、本発明はこれに限らず、磁気ローラの回転スリーブに適用することができる。この場合も上記同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の全体構成を概略的に示す平面図である。
【図2】は、本発明の第1実施形態である現像装置を概略的に示す断面平面図である。
【図3】は、本発明の第1実施形態である現像装置の現像ローラを概略的に示す断面平面図である。
【図4】は、本発明の第2実施形態である現像スリーブに設けた第1及び第2層を概略的に示す断面平面図である。
【図5】は、本発明の第3実施形態である現像スリーブに設けた第1〜第3層を概略的に示す断面平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 画像形成装置
2a〜2d 現像装置
11a〜11d 感光体
20 現像ローラ
20a、21a ローラ軸
20b 磁極部材
20c 現像スリーブ(回転体)
20d 第1層
20e 第2層
20f 第3層
21 磁気ローラ
21b 磁気スリーブ
23 撹拌部材
24 規制ブレード
61 バインダー樹脂層
62 金属粒子
M 磁極部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する回転体を備え、前記回転体の表面側から順に第1層と第2層を有し、前記第1層の熱伝導率は前記第2層の熱伝導率より小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第1及び第2層はバインダー樹脂層と熱伝導率の大きい金属粒子を有し、前記第1層の前記バインダー樹脂層に対する前記金属粒子の割合が、前記第2層の前記バインダー樹脂層に対する前記金属粒子の割合より小さいことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第2層の上側に第3層を有し、前記第2層の熱伝導率は前記第3層の熱伝導率より小さいことを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−54899(P2010−54899A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221000(P2008−221000)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】