説明

理美容室用椅子及び昇降軸の昇降装置

【課題】 理美容室用椅子について、座部のスムーズな上昇が行えるものを提供する。
【解決手段】 本願発明は、ポンプ6に接続されたサージタンク7と、ポンプ6とサージタンク7の間に設けられた逆止弁8とを備えた理美容室用椅子を提供する。サージタンク7は、内容積を拡縮することが可能であり、弾性部を備えると共に当該弾性部から内容積を縮小するよう付勢を受ける。サージタンク7は、ポンプ6からの流体圧を受けることにより弾性部の付勢に抗し内容積を拡大し、ポンプ6からシリンダ4へ送られる流体の少なくとも一部を収容すると共に、流体圧の低下に伴い、弾性部の上記付勢にて内容積を縮小し、流体をシリンダ4へ送り出す。逆止弁8は、ポンプ6からの流体圧によりポンプ6とサージタンク7を連絡し、上記サージタンク7の流体圧の上昇によりポンプ6とサージタンク7を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、理美容室用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理容室或いは美容室の、理髪や施術を受ける者が座る椅子については、座部の高さを調整することが可能なものが一般的である。
このような座部の高さ調整を行うことが可能な理美容室用の椅子として、座部を支持する支柱(昇降軸)を、油圧にて昇降させるものが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
この椅子は、特許文献1の図3及び同図1に示す通り、座部を支持する昇降軸を油圧ポンプにて、昇降させるものである。具体的には、この椅子は、図5へ示す通り、座部と、座部を支持する昇降軸3と、昇降軸を受容するシリンダ4と、操作レバー5(ステップ)と、昇降軸3を昇降させる流体圧を操作レバー5の操作により発生させてオイル(動作油)をシリンダへ送り込む油圧ポンプ6とを備える。油圧ポンプ6とシリンダ4とは通路9によって連絡している。また、油圧ポンプ6と通路9の間には、逆止弁8が設けられ、オイルが油圧ポンプ6側へ逆流しないよう構成されている。
これらの椅子において、操作レバー5を繰り返し踏み込むことによって、油圧ポンプ6が逐次油圧を発生させ、通路9を通じてシリンダ4にオイルを送り、昇降軸3を上昇させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平15−259929号公報
【特許文献2】実用新案登録第3072541号公報
【0004】
しかし、この椅子は、油圧ポンプ6にて加圧したオイルのほぼ全てを直ちに、油圧をシリンダ4内へ送り込むものであるため、踏み込み毎に、段階的(間欠的)且つ鋭敏に昇降軸3が上昇する。このため、座部に座する者にとって、上昇・急停止が、小刻みに繰り返されることになり、がくんがくんと体が上方に移動させられ、極めて不快である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、理容美容用椅子の昇降について、上記のぎこちない上昇をスムーズなものとすることによって、上記の問題の解決を図った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明は、座部1と、座部1を支持する昇降軸3と、昇降軸3を受容するシリンダ4と、操作レバー5と、昇降軸3を昇降させる流体圧を操作レバーの操作により発生させて流体をシリンダ4へ送り込むポンプ6とを備えた理美容室用椅子について、次のものを提供する。
即ち、この椅子は、ポンプ6に接続されたサージタンク7と、ポンプ6とサージタンク7の間に設けられた逆止弁8とを備える。サージタンク7は、内容積を拡縮することが可能であり、弾性部を備えると共に当該弾性部から内容積を縮小するよう付勢を受ける。サージタンク7は、ポンプ6からの流体圧を受けることにより弾性部の付勢に抗して内容積を拡大し、ポンプ6からシリンダ4へ送られる流体の少なくとも一部を収容すると共に、ポンプ6から受ける流体圧の低下に伴い、弾性部の上記付勢にて内容積を縮小し、流体をシリンダ4へ送り出す。逆止弁8は、ポンプ6からの流体圧によりポンプ6とサージタンク7とを連絡し、上記サージタンク7の流体圧の上昇によりポンプ6とサージタンク7とを遮断する。
【0007】
本願第2の発明は、上記本願第1の発明にあって、次の構成を備えた理美容室用椅子を提供する。
即ち、記のサージタンク7は、可動部分を備える。また、可動部分は、弾性部の上記付勢を受けるものであり、可動部分の変位にて、サージタンク7の内容積が拡縮する。
【0008】
本願第3の発明は、上記第1又は第2の発明にあって、次の構成を備えた理美容室用椅子を提供する。
即ち、この椅子は、逆止弁8とサージタンク7とを連絡する第1の通路と、第1の通路から分岐してシリンダ4へ通じる第2の通路とを備える。第1の通路が形成する流体の流路の横断面積は、第2の通路が形成する流体の流路の横断面積より大きい。
上記の流路の横断面積とは、通路を移動する流体の移動方向と交差する面(仮想面)にて、流体を切った際の流体の断面積をいう。
【0009】
本願第4の発明は、上記第3の発明にあって、次の構成を備えた理美容室用椅子を提供する。
即ち、上記のポンプ6は、流体の貯留室60aと、貯留室60aに接続された加圧室60bと、加圧室60bから貯留室60aに流体が逆流するのを防ぐ副逆止弁67と、操作レバー5の操作にて摺動し加圧室内を加圧するピストンロッド61と、ピストンロッド61を加圧室内から後退させる方向に付勢する弾性体68とを備える。ピストンロッド61を弾性体68の付勢に抗して摺動させることにより、加圧室60b内の流体圧を上昇させることが可能である。加圧室60bの流体圧が貯留室60aの流体圧より高くなったとき、副逆止弁67は、貯留室60aと加圧室60bとを閉鎖し、加圧室60bの流体圧より貯留室60aの流体圧が高くなったとき、副逆止弁67は、貯留室60aと加圧室60bとを連絡して、流体を加圧室60bへ供給する。サージタンク7は、前記の逆止弁8を介して、ポンプ60の上記加圧室60bと接続されている。加圧室60bの流体圧がサージタンク7内の流体圧より高くなった際、逆止弁8は、加圧室60bと第1の通路80とを連絡し、加圧室60b内の流体圧よりサージタンク7内の流体圧が高くなったとき、逆止弁8は、加圧室60bと第1の通路80とを遮断する。サージタンク7は、弾性部71の付勢により可動部分70を変位させて内容積を縮小し、第2の通路からサージタンク内の流体をシリンダ内へ送り、昇降軸3を上昇させる。
【発明の効果】
【0010】
本願の上記第1〜4発明によって、ポンプからの流体全てを一度に昇降軸を支持するシリンダ内へ送り込むのではなく、流体の少なくとも一部を、拡大・縮小が可能なサージタンクへ一旦収容した後、弾性部の反発力(付勢)を利用して、上記シリンダへ送るものであるため、ポンプで発生させた流体圧の急激なシリンダーへの移動を緩衝することができ、スムーズに昇降軸を上昇させることができる。即ち、従来の理美容室用の椅子にない、内容積を拡縮可能なサージタンクをポンプと昇降軸のシリンダとの間に設けることによって、スムーズな座部の上場動作を行うことが可能となった。
また、上記本願第2の発明は、サージタンクを拡縮させるより具体的な手段を提供し得た。
更に、上記本願第3の発明は、ポンプによる流体の加圧時、上記第2通路からシリンダへ直ちに送り込まれる流体に比べて、サージタンク内へ滞留しサージタンクの内容積の拡大に作用した後第2通路からシリンダへ送られる流体の量を多く設定したものであり、これによって、緩衝効果をより高めて、よりスムーズな昇降軸の上昇を行うことが可能となった。
また上記本願第4の発明は、上記ポンプ6として具体的な手段を提供した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本願発明の好ましい実施の形態について、説明する。図1〜図4へ本願発明の一実施の形態を示す。図1は、本願発明に係る理美容室用椅子の一実施の形態を示す全体側面図である。図2は図1に示す椅子においてポンプの作動開始状態を示す要部略縦断面図である。図3は図1に示す椅子においてポンプの作動終了時の状態を示す要部略縦断面図である。図4は、上記椅子の要部略平面図である。尚、図2及び図3において、図面の煩雑を避けるため、付すべきハッチングの一部を省略して描いてある。
説明の便宜上、図面において、適宜、Uは上方を、Sは下方を、Fは前方を、Bは後方を示す。
【0012】
図1へ示す通り、この理美容室用椅子は、理髪や施術される者が座る座部1と、座部1を支持する脚部2とを備える。
以下各部の構成について説明する。
【0013】
脚部2は、座部1に接続された昇降軸3と、昇降軸3を収容する昇降装置20と、昇降装置20を覆うケーシング21とを備える。
図2へ示す通り、昇降装置20は、昇降軸3を受容するシリンダ4と、シリンダ4へ流体を送り込むポンプ6と、ポンプ6に接続されたサージタンク7と、ポンプ6とサージタンク7との間に設けられた逆止弁8と、サージタンク7とシリンダ4とを連絡する流体の通路9とを内蔵し、その外部にポンプ6の操作レバー5を備える。尚、図2及び図3において、上記のケーシング21を外した状態を示している。
【0014】
上記のポンプ6は、油圧ポンプである。ポンプ6は、オイルタンク60と、ピストンロッド61と、弾性体68とを備える。
オイルタンク60は、脚部2内部において上記のシリンダ4と隔されて設けられている。
オイルタンク60は、オイル(作動油)を貯留する貯留室60aと、副逆止弁67を介して貯留室60aに接続され且つオイルを加圧する加圧室60bとを備える。この実施の形態において、加圧室60bは、貯留室60aの下方に位置する。
副逆止弁67は、加圧室60bから貯留室60aへオイルが逆流するのを防ぐチェック弁として設けられている。この実施の形態において、副逆止弁67は、弁体としてボール67aを有するものであり、当該ボール67aの変位にて、弁の開閉を行う。
オイルタンク60(の貯留室60a)には、オイルタンク60内部から外部へ通じる貫通孔62が設けられている。
この貫通孔62は、オイルタンク60の上部において外部へ通じるものであり、上記のピストンロッド61を受容する。貫通孔62は、ピストンロッド61にて塞がれると共に、オイルタンク60内にて上下に摺動することができるようピストンロッド61を保持する。
オイルには、タービン油や、サラダ油を用いることができる。
【0015】
ピストンロッド61の後端(上端)は、貫通孔62によって、オイルタンク60の外部へ露出する。オイルタンク60内において、ピストンロッド61の先端には、円柱状のスタッドバルブ63が設けられている。またピストンロッド61のオイルタンク60内に収容される部分について、スタッドバルブ63より上方にスタッドバルブより外径が大きいフランジ部64が設けられている。
オイルタンク60の内部に、上記スタッドバルブ63を嵌めることが可能な筒状のシリンダ部65が設けられている。シリンダ部65は、その内径をスタッドバルブ63の外径と等しくする。
上記のスタッドバルブ63の下端には、下方に突出する突起66が設けられている。
【0016】
このシリンダ部65は、オイルタンク60内に固定されたものであり、上下に開口端を備える。筒状のシリンダ部65の後端(上端)は、貯留室60a内にて開口し、シリンダ部65の先端(下端)は、加圧室60b内にて開口する。
オイルタンク60内において、シリンダ部65の後端(上端)よりその内部へ、ピストンロッド61のスタッドバルブ63が挿入される。貯留室60aと加圧室60bとは、上記の副逆止弁67以外に、このシリンダ部65の内部にて連絡するものであるが、上記の通り、スタッドバルブ63の挿入により、当該連絡は断たれている。
スタッドバルブ63の内部には、スッタドバルブ60の側面において、一端が開口し他端が当該開口部より上部に開口する内部通路63aを備える。
【0017】
上記のピストンロッド61が降下することにより、スタッドバルブ63はシリンダ部65の奥(下方)へ変位し、加圧室60b内の油圧が貯留室60a内の油圧より高まった際、上記の副逆止弁67は、閉弁する。逆に、ピストンロッド61が上昇し、スタッドバルブ65のシリンダ部65内へ入り込んでいる幅が浅くなる方向(上方)へ変位し、加圧室60b内の油圧が貯留室60a内の油圧より低くなった際、チェック弁67は、開弁する。チェック弁67の当該開弁により、貯留室60aと加圧室60bとが連絡し、貯留室60aから加圧室60bへオイルが供給される。
上記のシリンダ部62の上端と、上記フランジ部64との間に、上記の弾性体68が介される。この実施の形態において、弾性体68は、コイル状のスプリングであり、当該弾性体68の付勢を受けて、フランジ部64が、その下方に位置するシリンダ部64に対して上方に遠ざかろうとする。即ち、弾性体68によって、ピストンロッド61は、貫通孔62からオイルタンク60(の貯留室60a)の外部へ出る方向(上方)に付勢される。
【0018】
オイルタンク60の上記加圧室60bは、前記の逆止弁8を介して、サージタンク7に接続されている。
逆止弁8は、この実施の形態において、ボール81を弁体とするものであり、当該ボール81の変位にて弁の開閉を行う。
この実施の形態において、サージタンク7は、オイルタンク60の加圧室60bの下部に位置する。逆止弁8とサージタンク7との間は、第1の通路80にて連絡している。また、第1の通路80から前述の通路9(以下第2の通路9と呼ぶ。)が分岐している。
第1の通路80が形成する流体の流路の横断面積は、第2の通路9が形成する流体の流路の横断面積より大きい。
【0019】
サージタンク7は、可動部分を有し、可動部分の変位にて、内容積を拡大し縮小する(拡縮する)。具体的には、サージタンク7は、可動部分としてピストン70を備える。ピストン70は、逆止弁8側に近接・離反する(上下に移動する)ことによって、サージタンク7の内容積を拡縮する。
また、サージタンク7は、弾性部71を備える。弾性部71には、バネを採用することができる。弾性部71は、ピストン70をサージタンク7の内容積を縮小する方向(上方)へ付勢する。バネは、60〜100kgの反発力を有するものが好ましい。特に、昇降軸3が支える座部1及び着座する人の体重を考慮して80kg程度の反発力を有するものを採用するのが好ましい。
【0020】
上記の逆止弁8は、加圧室60b側の油圧がサージタンク9側の油圧よりも高いとき、開弁して、ポンプ6(の加圧室60b)と第1の通路80とを連絡し、シリンダ部66のオイルをサージタンク7内へ導入することができる。また、逆止弁8は、加圧室60b側の油圧がサージタンク9側の油圧よりも低くなったとき、閉弁して、ポンプ6(加圧室60b)と第1の通路80とを遮断する。
【0021】
前記のシリンダ4は、上方に開放されたものであり、上方より昇降軸3が挿入されている。即ち、昇降軸3によって、シリンダ4の上部は塞がれている。
シリンダ4内の油圧が上昇することで、昇降軸3は、シリンダ4に対して上昇する。受圧面となるシリンダ4の下端部には、シリンダ4の側面に通じる導通路30が形成されている。シリンダ4の内周面は、シリンダ4内周面には、シリンダの径外方向に凹んだオイルの退避路40が形成されている。
シリンダ4内を昇降軸3が上昇し、上記の導通路30のシリンダ4側面での開口部が、上記の退避路40へ到達したとき、シリンダ4内のオイルは、導通路30を通じ退避路40から他(オイルタンク60の貯留室60a内)へ逃がされ、それ以上昇降軸3を上昇させない。
【0022】
上記の操作レバー5は、昇降装置20の外部(表面)に軸止されている。即ち、操作レバー5は、この軸止部分を中心として揺動可能である。この操作レバー5は、上記ピストンロッド61のオイルタンク60より外部へ露出する部分(上端)と当接する。操作レバー5をステップとして踏み込むことにより、ピストンロッド61をオイルタンク60内へ押し込むこと(図1)、即ちピストンロッド61を降下させることができる。
操作レバー5について詳述すると、図4へ示す通り、操作レバー5は、軸止部50と、軸止部50に設けられた平面視コの字形の押圧部51と、軸止部50に設けられたステップ部52とを有する。図2へ示す通り、軸止部50は、昇降装置20のピストンロッド61と反対側において、昇降装置20側面へ軸止され、押圧部51が昇降装置20を取り囲む。ステップ部52は、昇降装置20に対して軸止部50の反対側に伸びる。上記の押圧部51が、ピストンロッド61と当接する。
上記のステップ部52を踏み込むことにより、軸止部50が回動し、押圧部51が、ピストンロッド61の上端を下方に押す。
尚、操作レバー5(押圧部50)として、特開平15−259929号(特許文献1)に示すストッパー機構を備えたものを採用するのが好ましい。
【0023】
以下、この椅子の座部1の上昇の動作について説明する。
操作レバー5(ステップ部52)を踏み込むことにより、図2へ示す通り、弾性体68の付勢に抗してピストンロッド61を下方へ移動させる。これにて、スタッドバルブ63が、加圧室60bを加圧し、加圧室60b内の油圧を上昇させる。加圧室60b内の油圧がサージタンク7(第1の通路80側)の流体圧より高くなると、逆止弁8はそのボール81を(下方に)変位させ、逆止弁8を開弁し、オイルタンク60の加圧室60b内のオイルは、第1の通路80に入る。このとき、オイルは、サージタンク7に導入されるが、その一部が第2の通路9から直接シリンダ4内へ導入される。但し、前述の通り、第1の通路80の流路断面を、第2の通路9の流路断面より大きく設定することにより、オイルは、第2の通路9から直接シリンダ4へ送られるものより、一旦サージタンク7内に送られるもののほうが多い。第2の通路9は、内径を0.5mm〜1.5mmとするのが好ましく、特に1.2mmとするのが好ましい。
また、このとき副逆止弁67は閉弁している。
【0024】
上記操作レバー5の踏み込み後、加圧室60b内のオイルが逆止弁8を通じて第1通路80側へ移動し、加圧室60bの内圧が、サージタンク7内より低下すると、逆止弁8は閉弁する。そして、サージタンク7は、弾性部71の付勢により可動部分70を変位させて内容積を縮小し、第2の通路9からサージタンク内のオイルをシリンダ4内へ送り、シリンダ4内の油圧を高めて昇降軸3を上昇させる。
次の踏み込みのために、操作レバー5の踏み込みを止めると、弾性体68の付勢にて、ピストンロッド61は上昇する。ピストンロッド61の上昇に伴いスタッドバルブ63が上昇することにより、加圧室60bに負圧が発生し、副逆止弁67が開弁して、貯留室60aからオイルが加圧室60bへ供給される。
上記の昇降軸3の上昇によりシリンダ4内に発生した負圧によって、サージタンク7内の油圧が、上記の加圧室60b内の油圧より低くなると、即ち、加圧室60b内の油圧がサージタンク7(第1の通路80側)の油圧より高くなると、逆止弁8がボール81を変位させて開弁する。
【0025】
図1に示す通り、このような踏み込み動作を繰り返すことによって、昇降軸3を上昇させ、座部1を上方へ移動させることができる。
一方、座部1を下げるときは、操作レバー5を上記より深く踏み込んで、スタッドバルブ63を降下させ、突起66にて逆止弁8のボール81押し下げる。このように、逆止弁8のボール80を変位させ逆止弁8を強制的に開弁状態として、シリンダ4内のオイルを第2の通路9から、オイルタンク60内へ逆流させる。これによって、シリンダ4内からオイルを抜き、昇降軸3を降下させて座部1を下げることができる。上記の踏み込みに際して、スタッドバルブ63内の内部通路63aを通じて、加圧室60b内のオイルが貯留室60aへ逃がされる。
【0026】
上記において、貯留室60aと加圧室60bとの間の流体圧(油圧)の大小関係による副逆止弁67の開閉の状況、更に、加圧室60bとサージタンク7との間の流体圧(油圧)の大小関係による逆止弁8の開閉の状況は、流体(オイル)の移動が安定した状況(静的な状況)を基準に説明した。しかし、各部の流体圧の変動直後に、一時的に、貯留室60aと加圧室60bとの間の流体圧(油圧)の大小関係と、副逆止弁67の開閉の状況とが、更に、加圧室60bとサージタンク7との間の流体圧(油圧)の大小関係と、逆止弁8の開閉の状況とが、上記と整合しない状況を発生させることも考えられるが、本願発明においては、これを許容するものである。即ち、流体圧変動後、流体の移動が安定した状態において、上述した各部の関係が成立すればよいのである。
また、上記の実施の形態において、貯留室60aの内圧(油圧)より加圧室60bの内圧(油圧)が高くなったとき、副逆止弁67はボールを変位させて閉弁するものとした。この他、例えば、加圧室60bの内圧(油圧)にボール67aを付勢するバネの反発力(付勢力)を加えた力が、貯留室60aの内圧(油圧)より、高くなったとき、副逆止弁67を閉弁し、加圧室60bの内圧(油圧)にボール67aを付勢するバネの反発力を加えた力が、貯留室60aの内圧(油圧)より低くなったとき、開弁するものとして実施することが可能である。
同様に、上記の実施の形態において、サージタンク7(第1の通路80側)の内圧が加圧室60bの内圧より高くなったとき、逆止弁8はボール81を変位させて閉弁するものとした。この場合も、サージタンク7(第1の通路80側)の内圧に上記ボール81を付勢するバネの反発力(付勢力)を加えた力が、加圧室60bの内圧より高くなったとき、逆止弁8はボール81を変位させて閉弁するものとし、サージタンク7(第1の通路80側)の内圧に上記ボール81を付勢するバネの反発力(付勢力)を加えた力が、加圧室60bの内圧より低くなったとき逆止弁8はボール81を変位させて開弁するものとして実施可能である。即ち、副逆止弁67と、逆止弁8の開閉の基準は、上記の実施の形態に限定するものではない。
【0027】
上記の実施の形態において、流体をオイルとし、ポンプ6を油圧ポンプとしたが、オイルに代え、空気などの気体や加圧可能な他の流体を用いるものとし、そのような流体を加圧することが可能なポンプを採用して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の一実施の形態の椅子を示す全体側面図である。
【図2】上記椅子の要部略縦断面図である。
【図3】上記椅子の要部略縦断面図である。
【図4】上記椅子の要部略平面図である。
【図5】従来の椅子の要部略縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 座部
3 昇降軸
4 シリンダ
5 操作レバー
6 ポンプ
7 サージタンク
8 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、座部を支持する昇降軸と、昇降軸を受容するシリンダと、操作レバーと、昇降軸を昇降させる流体圧を操作レバーの操作により発生させて流体をシリンダへ送り込むポンプとを備えた理美容室用椅子において、
ポンプに接続されたサージタンクと、ポンプとサージタンクの間に設けられた逆止弁とを備え、
サージタンクは、内容積を拡縮することが可能であり、弾性部を備えると共に当該弾性部から内容積を縮小するよう付勢を受け、
サージタンクは、ポンプからの流体圧を受けることにより弾性部の付勢に抗して内容積を拡大し、ポンプからシリンダへ送られる流体の少なくとも一部を収容すると共に、ポンプから受ける流体圧の低下に伴い、弾性部の上記付勢にて内容積を縮小し、流体をシリンダへ送り出すものであり、
逆止弁は、サージタンクからポンプへの流体の逆流を防止するものであり、
逆止弁は、ポンプからの流体圧を受けることによりポンプとサージタンクとを連絡し、サージタンクの流体圧の上昇によりポンプとサージタンクとを遮断するものであることを特徴とする理美容室用椅子。
【請求項2】
上記のサージタンクは、可動部分を備え、
可動部分は、弾性部の上記付勢を受けるものであり、可動部分の変位にて、サージタンクの内容積が拡縮するものであることを特徴とする請求項1記載の理美容室用椅子。
【請求項3】
逆止弁とサージタンクとを連絡する第1の通路と、第1の通路から分岐してシリンダへ通じる第2の通路とを備え、
第1の通路が形成する流体の流路の横断面積は、第2の通路が形成する流体の流路の横断面積より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の理美容室用椅子。
【請求項4】
上記のポンプは、流体の貯留室と、貯留室に接続された加圧室と、加圧室から貯留室に流体が逆流するのを防ぐ副逆止弁と、操作レバーの操作にて摺動し加圧室内を加圧するピストンロッドと、ピストンロッドを加圧室内から後退させる方向に付勢する弾性体とを備え、
ピストンロッドを弾性体の付勢に抗して摺動させることにより、加圧室内の流体圧を上昇させることが可能であり、
加圧室の流体圧が貯留室の流体圧より高くなったとき、副逆止弁は、貯留室と加圧室とを閉鎖し、加圧室の流体圧より貯留室の流体圧が高くなったとき、副逆止弁は、貯留室と加圧室とを連絡して、流体を加圧室へ供給するものであり、
サージタンクは、前記の逆止弁を介して、ポンプの上記加圧室と接続され、
加圧室の流体圧がサージタンク内の流体圧より高くなった際、逆止弁は、加圧室と第1の通路とを連絡し、加圧室内の流体圧よりサージタンク内の流体圧が高くなったとき、逆止弁は、加圧室と第1の通路とを遮断し、
サージタンクは、弾性部の付勢により可動部分を変位させて内容積を縮小し、第2の通路からサージタンク内の流体をシリンダ内へ送り、昇降軸を上昇させるものであることを特徴とする請求項3記載の理美容院の椅子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、座部を支持する昇降軸と、昇降軸を受容するシリンダと、操作レバーと、昇降軸を昇降させる流体圧を操作レバーの操作により発生させて流体をシリンダへ送り込むポンプとを備えた理美容室用椅子において、
ポンプに接続されたサージタンクと、ポンプとサージタンクの間に設けられた逆止弁とを備え、
サージタンクは、内容積を拡縮することが可能であり、弾性部を備えると共に当該弾性部から内容積を縮小するよう付勢を受け、
サージタンクは、ポンプからの流体圧を受けることにより弾性部の付勢に抗して内容積を拡大し、ポンプからシリンダへ送られる流体の少なくとも一部を収容すると共に、ポンプから受ける流体圧の低下に伴い、弾性部の上記付勢にて内容積を縮小し、流体をシリンダへ送り出すものであり、
逆止弁は、サージタンクからポンプへの流体の逆流を防止するものであり、
逆止弁は、ポンプからの流体圧を受けることによりポンプとサージタンクとを連絡し、サージタンクの流体圧の上昇によりポンプとサージタンクとを遮断するものであることを特徴とする理美容室用椅子。
【請求項2】
上記のサージタンクは、可動部分を備え、
可動部分は、弾性部の上記付勢を受けるものであり、可動部分の変位にて、サージタンクの内容積が拡縮するものであることを特徴とする請求項1記載の理美容室用椅子。
【請求項3】
逆止弁とサージタンクとを連絡する第1の通路と、第1の通路から分岐してシリンダへ通じる第2の通路とを備え、
第1の通路が形成する流体の流路の横断面積は、第2の通路が形成する流体の流路の横断面積より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の理美容室用椅子。
【請求項4】
上記のポンプは、流体の貯留室と、貯留室に接続された加圧室と、加圧室から貯留室に流体が逆流するのを防ぐ副逆止弁と、操作レバーの操作にて摺動し加圧室内を加圧するピストンロッドと、ピストンロッドを加圧室内から後退させる方向に付勢する弾性体とを備え、
ピストンロッドを弾性体の付勢に抗して摺動させることにより、加圧室内の流体圧を上昇させることが可能であり、
加圧室の流体圧が貯留室の流体圧より高くなったとき、副逆止弁は、貯留室と加圧室とを閉鎖し、加圧室の流体圧より貯留室の流体圧が高くなったとき、副逆止弁は、貯留室と加圧室とを連絡して、流体を加圧室へ供給するものであり、
サージタンクは、前記の逆止弁を介して、ポンプの上記加圧室と接続され、
加圧室の流体圧がサージタンク内の流体圧より高くなった際、逆止弁は、加圧室と第1の通路とを連絡し、加圧室内の流体圧よりサージタンク内の流体圧が高くなったとき、逆止弁は、加圧室と第1の通路とを遮断し、
サージタンクは、弾性部の付勢により可動部分を変位させて内容積を縮小し、第2の通路からサージタンク内の流体をシリンダ内へ送り、昇降軸を上昇させるものであることを特徴とする請求項3記載の理美容室用椅子
【請求項5】
昇降軸と、昇降軸を受容するシリンダと、操作レバーと、昇降軸を昇降させる流体圧を操作レバーの操作により発生させて流体をシリンダへ送り込むポンプとを備えた昇降軸の昇降装置において、
ポンプに接続されたサージタンクと、ポンプとサージタンクの間に設けられた逆止弁とを備え、
サージタンクは、内容積を拡縮することが可能であり、弾性部を備えると共に当該弾性部から内容積を縮小するよう付勢を受け、
サージタンクは、ポンプからの流体圧を受けることにより弾性部の付勢に抗して内容積を拡大し、ポンプからシリンダへ送られる流体の少なくとも一部を収容すると共に、ポンプから受ける流体圧の低下に伴い、弾性部の上記付勢にて内容積を縮小し、流体をシリンダへ送り出すものであり、
逆止弁は、サージタンクからポンプへの流体の逆流を防止するものであり、
逆止弁は、ポンプからの流体圧を受けることによりポンプとサージタンクとを連絡し、サージタンクの流体圧の上昇によりポンプとサージタンクとを遮断するものであることを特徴とする昇降軸の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223450(P2006−223450A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39085(P2005−39085)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000149789)株式会社大廣製作所 (11)
【Fターム(参考)】