説明

甘味食品の加熱攪拌装置とその運転方法

【課題】漬け込み糖蜜の糖分が充分吸収・浸透した美味しい甘味食品を得る。
【解決手段】食品収容タンク(16)に投入された甘味食品(M)を加熱攪拌することにより、高粘度に煮詰める加熱攪拌装置において、その食品収容タンク(16)の底面又は胴面へ付属一体化させた屈折計(R)により、甘味食品(M)の加熱攪拌中に変化する糖度をリアルタイムに測定検知すると共に、その屈折計(R)が甘味食品(M)の予じめ設定された目標仕上がり糖度を測定検知した出力電気信号に基いて、その甘味食品(M)の加熱攪拌を自動停止させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は和菓子の餡やカスタードクリーム、ジャム、スイートポテト、その他の甘味食品を対象とする加熱攪拌装置と、その糖度に基く運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被測定物とプリズムとの境界面に光を照射して、その境界面での反射光像を光学センサー(CCDなどのイメージセンサー)により検知し、これからの出力信号に基いて被測定物の屈折率(糖度や濃縮度)を測定する屈折計は、特開2003−344283号や特開2004−170218号、特開2004−271360号、特開2005−77329号などに数多く見られるとおり、既に周知であると言える。
【特許文献1】特開2003−344283号公報
【特許文献2】特開2004−170218号公報
【特許文献3】特開2004−271360号公報
【特許文献4】特開2005−77329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、被測定物が例えば和菓子の餡で代表されるように、高粘度に煮詰められる甘味食品である場合、加熱攪拌装置での加熱攪拌作用中に変化する餡の糖度を、その食品収容タンクの上方から差し込み浸漬させた上記屈折計によって、リアルタイムでの自動的に正しく測定することは、実際上不可能である。
【0004】
蓋し、甘味食品の餡はこれから水分を蒸発させ煮詰めるため、加熱によって100℃まで沸騰されることとなり、その中へ上方から上記屈折計を差し込み浸漬させると、その屈折計のプリズムへ高粘度の餡が不動状態に付着一体化することや、電子回路素子の発熱により屈折計の内部温度が上昇することとも相俟って、その光学センサーの最大定格温度(通例約60℃)をはるかに越えてしまうからであり、殊更加熱攪拌装置が据え付けられる作業場所の外気温も高くなる夏期には、又その食品収容タンクの深い大型品については、上記屈折計を到底使用することができない。
【0005】
そこで、上記餡を対象とする従来の加熱攪拌方法では、その餡の材料である煮豆と水並びに砂糖を所定の重量比率として、加熱攪拌装置の食品収容タンクへ投入した上、熟練作業者の経験に基き設定した加熱力(加熱温度)のもとに、所要時間だけ加熱攪拌することにより水分を蒸発させ、その煮詰まる頃に作業者が、上記特開2003−344283号のような手持ち式の屈折計を使って、これに食品収容タンクから採取した餡を付着させて透視し、その目標とする仕上がり糖度の測定値を得られた時点で、作業を終了している。
【0006】
これを逆説的に言えば、餡の糖度を加熱攪拌作用中でのリアルタイムに測定せず、その仕上がり時の糖度だけを目標とする加熱攪拌方法である。
【0007】
しかし、このような加熱攪拌方法ではたとえ加熱温度検知センサーとその温度調整コントローラーにより加熱力(加熱温度)を、又タイマーにより所要時間を各々如何に調整制御したとしても、生豆と延いては餡の種類が千差万別であることとも相俟って、常に均一な高品質の美味しい餡を得ることができず、その餡の仕上がり状態に必らずバラツキを生ずることになる。
【0008】
即ち、豆類やその他の穀物は一般的に、それ自身よりも糖度の高い糖蜜に漬け込まれると、その糖蜜の糖分を吸収する性質があるところ、漬け込み糖蜜から上記煮豆に向かう糖分の吸収・浸透作用は、決して短時間での一気に行なわれず、或る程度の時間を必要とし、且つ温度によっても大きく影響されるのである。
【0009】
図22は餡の材料である19.5Kgの煮豆と6Kgの水並びに9Kgの砂糖を加熱攪拌装置の食品収容タンクへ投入し、加熱攪拌した漬け込み糖蜜の糖度変化グラフであるが、これに基いて説明すると、餡の材料である煮豆自身の糖度とその食品収容タンクへの漬け込み糖蜜の糖度とが、平衡状態となった下げ止まり時点(P)から、今焦げ付かない範囲内での強い加熱力のもとに、糖蜜の糖度を実線のように高めると、その短時間での急激な温度変化により、糖蜜から煮豆に向かう糖分の吸収・浸透作用が追従できず、むしろ煮豆が拒絶反応を起して、その煮豆と糖蜜との糖度差(D)が大きくなり過ぎるのである。
【0010】
そうすると、糖蜜の糖度が図22の実線に示す如く、既に仕上がりの数値に到達していても、煮豆自身の糖度は同図の点線で示すように未だ低く、糖分の吸収・浸透状態が不完全な悪い餡として、その仕上がり後に離水することとなる結果、餡の表面に水分が浮き出し、腐敗が速くなるばかりでなく、甘さの強い執拗な食感を与えることにもなる。
【0011】
それだからと言って、逆に上記煮豆とその漬け込み糖蜜との糖度差(D)が、余りにも小さい場合には、いたづらに長時間加熱攪拌しなければならず、その攪拌により煮豆の澱粉粒子を圧潰してしまい、高粘度に練り過ぎることとなって、やはり均一な高品質の餡に仕上げることができない。
【0012】
何れにしても、従来の餡を加熱攪拌する方法では、漬け込み糖蜜から煮豆に向かう糖分の吸収・浸透作用を考慮しておらず、その糖分の吸収・浸透状態が悪いため、屈折計の境界線(目盛り)も不鮮明にボヤケてしまうこととなり、餡の仕上がり糖度を上記手持ち式の屈折計によって正確に測定することができないのである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような課題の抜本的な解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備え、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌することにより、高粘度に煮詰める加熱攪拌装置において、
【0014】
上記食品収容タンクの底面又は胴面へ屈折計を、甘味食品と常時接触する差し込み状態に付属一体化させて、上記甘味食品の加熱攪拌中に変化する糖度を、その屈折計でのリアルタイムに測定検知すると共に、
【0015】
上記屈折計が甘味食品の予じめ設定された目標仕上がり糖度を測定検知した出力電気信号に基き、その甘味食品の加熱攪拌を自動停止させるように構成したことを特徴とする。
【0016】
上記請求項1に従属する請求項2では、食品収容タンクの加熱源を蒸気として、その蒸気ジャケットにより食品収容タンクの底面と胴面を包囲し、
【0017】
上記食品収容タンクへ屈折計の断熱保護筒を、その蒸気ジャケットの貫通状態に溶接一体化すると共に、
【0018】
屈折計の鏡筒をステンレス鋼から段付き円筒状に造形して、その細い先端側の検知部だけを上記断熱保護筒の中心から食品収容タンクの内部へ差し込み固定したことを特徴とする。
【0019】
又、請求項3では上記甘味食品における加熱攪拌装置の運転方法として、食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備えた加熱攪拌装置により、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌して、高粘度に煮詰めるに当り、
【0020】
その加熱攪拌中に変化する甘味食品の現在糖度を、上記食品収容タンクに付属一体化された屈折計でのリアルタイムに測定検知し、
【0021】
その屈折計が上記現在糖度の下げ止まり時点を検知した以後には、その検知出力信号を受けた屈折計自身に内蔵のCPU又はこれと別個なマイクロコンピューターのCPUにより、その現在糖度の測定値を予じめ決められた一定単位時間毎に、その単位時間前のそれと比較して、上記比較単位時間よりも長い一定単位時間当りの糖度上昇変化率を演算すると共に、
【0022】
その比較演算された平均値が予じめ決められた一定の糖度上昇変化率を保つように、上記CPUから出力される演算結果の信号に基き、上記加熱源の加熱力と攪拌羽根の回転速度を自動的に調整制御し、
【0023】
上記屈折計が甘味食品の予じめ設定された目標仕上がり糖度を検知した最終時点において、上記マイクロコンピューターのCPUにより加熱と攪拌羽根の回転を自動停止させることを特徴とする。
【0024】
上記請求項3に従属する請求項4では、甘味食品を餡とし、その煮豆の漬け込み糖蜜における一定単位時間当りの糖度上昇変化率を、1分当りのブリックス値:1〜2として予じめ設定したことを特徴とする。
【0025】
更に、請求項5では同じく甘味食品における加熱攪拌装置の運転方法として、食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備えた加熱攪拌装置により、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌して、高粘度に煮詰めるに当り、
【0026】
その加熱攪拌中に変化する甘味食品の現在糖度と現在温度を、上記食品収容タンクに付属一体化された屈折計と加熱温度検知センサーでのリアルタイムに各々測定検知して、その測定値を何れも表示パネルに刻々と表示更新し、
【0027】
上記加熱温度検知センサーから検知出力された現在温度と、予じめ設定された加熱温度とを、操作盤に内蔵する加熱温度調整コントローラーにより常時比較して、その比較結果の出力信号に基き加熱力と攪拌羽根の回転速度を、予じめ設定された調整度まで自動的に開閉制御すると共に、
【0028】
上記屈折計が予じめ設定された甘味食品の目標仕上がり糖度を検知した最終時点において、上記表示パネルから操作盤へ伝送される指令信号により、加熱と攪拌羽根の回転を自動停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の構成によれば、甘味食品の糖度を測定検知する屈折計が、食品収容タンクにおける底面又は胴面の一定位置に付属一体化されているため、その外気に触れない同じ温度条件のもとで、甘味食品の加熱攪拌中に刻々と変化する糖度を、リアルタイムでの正確に安定良く測定検知することができるのであり、手持ち式の屈折計による従来技術の課題が完全に解消される。
【0030】
しかも、屈折計が甘味食品の予じめ設定された目標仕上がり糖度を測定検知した出力電気信号に基き、その甘味食品の加熱攪拌作用を自動停止させるようになっているため、甘味食品の種類により千差万別の作業終了時点を気遣う必要がなく、その種別に応じた常時高品質の仕上がり状態を得られる効果がある。
【0031】
特に、請求項2の構成を採用するならば、食品収容タンクに溶接一体化された断熱保護筒により、屈折計を甘味食品の加熱源である蒸気から完全な断熱状態に包囲することができ、その結果加熱温度の悪影響による糖度測定値の誤差が発生せず、しかも食品収容タンクをその屈折計の付属する状態として、支障なく転倒させ得る効果がある。
【0032】
又、請求項3の自動運転方法によれば、屈折計が甘味食品における現在温度の下げ止まり時点を検知した以後には、予じめ決められた一定な糖度上昇変化率を保って上昇することとなるように、その甘味食品の加熱力と攪拌力が自動的に調整制御されるため、仕上がり糖度のバラツキがない美味しい甘味食品を短時間での熱効率良く量産することができる。
【0033】
その場合、請求項4の構成を採用して、和菓子の餡を自動運転により加熱攪拌するならば、漬け込み糖蜜の糖分が煮豆自身に充分吸収・浸透した高品質な製品を得られる。
【0034】
他方、請求項5の手動運転方法によれば、屈折計と加熱温度検知センサーが食品収容タンクに付属一体化されており、これらにより測定検知された甘味食品の現在糖度と現在温度が、表示パネルに刻々と表示更新されるため、これを目視観察して便利良く作業でき、やはり屈折計が甘味食品の目標仕上がり糖度を検知した時には、その加熱攪拌作用が自動停止される結果、甘味食品の種類により千差万別の作業終了時点を気遣う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面に基いて本発明の詳細を説明すると、図1〜10は2軸式の横型加熱攪拌装置を示しており、(1)は型鋼材から枠組み一体化された水平な据付け台であって、その作業床への据付け高さ調整用となる複数の脚座(2)を備えているほか、その据付け台(1)の両端部からは駆動側タンク支持ボックス(3)と従動側タンク支持ボックス(4)との左右一対が、各々一体的に立設されている。
【0036】
そして、上記駆動側タンク支持ボックス(3)内の下段位置には図3、4のように、インバーター(5)により回転速度(図例では約13.3〜67r.p.m)を制御される攪拌羽根回転用の駆動モーター(ギャードモーター)(6)が据え付け固定されている。(7)はその駆動モーター(6)の出力スプロケット、(8)は駆動側タンク支持ボックス(3)の上面に搭載された操作盤、(9)はその操作盤(8)の表面に取り付けられた表示パネルである。
【0037】
他方、上記従動側タンク支持ボックス(4)内の下段位置には食品収容タンク転倒用の駆動モーター(ブレーキ付きモーター)(10)が、同じく中段位置にはウォーム減速機(11)が図5、6のように各々据え付け固定されている。(12)はそのウォーム減速機(11)の入力スプロケット(13)と、食品収容タンク転倒用駆動モーター(10)の出力スプロケット(14)との上下相互間に巻き掛けられた伝動チェン、(15)は同じくウォーム減速機(11)の出力ギヤを示している。
【0038】
(16)はステンレス鋼板から図8〜10のような2連の円弧底面を有する擬似倒立カマボコ型に造形された食品収容タンクであり、そのフラットな両端面には上記駆動側タンク支持ボックス(3)並びに従動側タンク支持ボックス(4)と向かい合う駆動側ギヤケース(17)と従動側ギヤケース(18)との左右一対が、各々溶接により付属一体化されている。
【0039】
そして、上記2連の円弧底面と対応位置する前後一対の平行な攪拌羽根軸(19)が図7のように、食品収容タンク(16)と両ギヤケース(17)(18)を水平に貫通横架しており、その両攪拌羽根軸(19)の両端部が上記ギヤケース(17)(18)へ左右一対づつのボールベアリング(20)(21)によって、同じく両攪拌羽根軸(19)の両端部付近が食品収容タンク(16)のフラットな両端面へ、共通する左右一対の軸受メタル(22)(23)によって各々回転自在に支持されている。
【0040】
(24)はステンレス鋼板から成る攪拌羽根の複数(図例では5枚)づつであって、その各個の取付ボス(25)が前後一対の上記攪拌羽根軸(19)へ通し込まれた上、押圧ボルト(26)によって取り付け一体化されている。その場合、食品収容タンク(16)内に臨む各攪拌羽根(24)は図8のような平面から見て、上記攪拌羽根軸(19)の回転軸線と直交しない一定な交叉角度(α)の傾斜状態にあり、しかも両攪拌羽根軸(19)の隣り合う前後相互間ではその攪拌羽根(24)の傾斜状態が逆向きに設定されている。
【0041】
このような前後一対の攪拌羽根軸(19)に対する攪拌羽根(24)の逆向き配列によって、甘味食品(M)を図8の矢印(A)で示す如く、その何れか一方の攪拌羽根軸(19)に沿って右方向へ移送すると共に、残る他方の攪拌羽根軸(19)に沿って左方向へ移送して、その自動的な循環流動作用により、甘味食品(M)を食品収容タンク(16)内での全体的に万遍なく攪拌できるようになっている。尚、その両攪拌羽根軸(19)上の攪拌羽根(24)同士が、干渉しないように配列設置されていることは言うまでもない。
【0042】
(27)は上記駆動側のタンク支持ボックス(3)とギヤケース(17)に跨がる貫通状態の攪拌駆動軸用ベアリングケースであって、その中途部から一体的に張り出す接合フランジ(28)が駆動側ギヤケース(17)の中心部へ取り付け固定されており、食品収容タンク(16)を転倒させる時の回動支点軸となる。
【0043】
(29)は上記従動側のタンク支持ボックス(4)とギヤケース(18)に跨がる食品収容タンク転倒用回動鞘軸であって、その基端部から一体的に張り出す接合フランジ(30)が従動側ギヤケース(18)の中心部へ取り付け固定されている。その場合、上記ベアリングケース(27)と回動鞘軸(29)とは言わば左右一対として、互いに同じ水平軸線(X−X)上に対応位置しており、その軸線(X−X)上において回動し得るようになっている。
【0044】
(31)は上記ベアリングケース(27)を駆動側タンク支持ボックス(3)へ回動自在に支持するピローブロック、(32)はそのベアリングケース(27)内のボールベアリング(33)により回転自在に支持された水平な攪拌駆動軸であって、その駆動側タンク支持ボックス(3)内へ張り出す一端部がピローブロック(34)によって支持されている一方、同じく攪拌駆動軸(32)が駆動側ギヤケース(17)内へ張り出す他端部には、比較的径小な駆動ギヤ(35)が嵌め付け一体化されている。
【0045】
(36)は上記攪拌駆動軸(32)の中途部に嵌め付け一体化された伝動スプロケットであって、上記攪拌羽根回転用駆動モーター(6)の出力スプロケット(7)と対応位置しており、その上下相互間には伝動チェン(37)が巻き掛けられている。(38)はこれを緊張させるアイドルスプロケットである。
【0046】
又、上記攪拌駆動軸(32)の中途部には図3、4のような伝動スプロケット(36)と並列するI字状の回転検知アーム(39)も嵌め付け一体化されており、これを近接センサー(40)により検知し、その検知出力信号を受けた回転速度制御用インバーター(5)が、上記攪拌羽根回転用駆動モーター(6)と延いては攪拌羽根(24)の回転速度を自動制御し得るようになっている。(41)は駆動側タンク支持ボックス(3)に対する近接センサー(40)の取付ステーである。
【0047】
そして、上記攪拌羽根軸(19)の前後何れか一方が駆動側ギヤケース(17)内へ臨む一端部には、上記攪拌駆動軸(32)上の駆動ギヤ(35)と常時噛合する比較的径大な伝動ギヤ(42)が嵌め付け一体化されているほか、同じく攪拌羽根軸(19)の前後一対が従動側ギヤケース(18)内へ臨む他端部には、2個の中間アイドルギヤ(43)(44)を介して常時噛合する等速回転ギヤ(45)(46)の対応的な前後一対が嵌め付け一体化されている。
【0048】
そのため、上記駆動側タンク支持ボックス(3)内の攪拌羽根回転用駆動モーター(6)から伝動チェン(37)と攪拌駆動軸(32)、駆動ギヤ(35)、伝動ギヤ(42)並びに等速回転ギヤ(45)(46)を経て、前後一対の攪拌羽根軸(19)が相反方向へ回転駆動されることになり、その攪拌羽根(24)の相反する傾斜指向状態とも相俟って、甘味食品(M)を効率良く攪拌することができる。
【0049】
更に、上記食品収容タンク転倒用回動鞘軸(29)は図5、6のようにピローブロック(47)を介して、従動側タンク支持ボックス(4)へ回動自在に支持されており、その従動側タンク支持ボックス(4)内へ張り出す先端部には上記ウォーム減速機(11)の出力ギヤ(15)と常時噛合する比較的径大な入力ギヤ(48)が嵌め付け一体化されている。
【0050】
そのため、上記従動側タンク支持ボックス(4)内の食品収容タンク転倒用駆動モーター(10)から伝動チェン(12)とウォーム減速機(11)、出力ギヤ(15)、入力ギヤ(48)並びに回動鞘軸(29)を経て、上記駆動側ギヤケース(17)と従動側ギヤケース(18)とが付属一体化された食品収容タンク(16)を、図2の鎖線で示すように前方へ転倒させることができ、煮詰まり仕上がった甘味食品(M)を便利良く取り出せるのである。
【0051】
その場合、上記回動鞘軸(29)の中空内部には蒸気流通用の芯管(49)が差し込まれていると共に、その芯管(49)の中途部から張り出す接合フランジ(50)が、上記回動鞘軸(29)の先端部へ取り付け固定されており、互いに一体回動し得るようになっている。
【0052】
しかも、その芯管(49)の中途部からは図5、6のようなほぼV字状をなす一対の回動検知アーム(51)(52)が一体的に立設されており、これを対応的な一対の近接センサー(53)(54)により検知して、その検知出力信号を受けた食品収容タンク転倒用駆動モーター(10)が停止し、その食品収容タンク(16)を水平な使用状態と、これから一定角度(β)(図例では約100度)だけ前方へ転倒した傾斜状態に自づと位置決めできるようになっている。(55)(56)は従動側タンク支持ボックス(4)に対する近接センサー(53)(54)の取付ステーである。
【0053】
先に一言した食品収容タンク(16)は一例として約400リットルの容量を有し、その擬似倒立カマボコ型をなす2連の円弧底面と胴面が、図10に示すようなほぼU字状の蒸気ジャケット(57)によって包囲されている。(58)はその蒸気ジャケット(57)の内部を補強する複数のスペーサーリブ、(59)は同じく蒸気ジャケット(57)における上端部同士の連通接続管である。
【0054】
そして、その蒸気ジャケット(57)の底面中央部に開口する蒸気導入口(60)と、上記食品収容タンク転倒用回動鞘軸(29)の芯管(49)から外部へ導出された分岐管(61)とが、図1のようなフレキシブルホース(62)などを介して連通接続されていると共に、同じく芯管(49)が上記従動側タンク支持ボックス(4)から露出する先端部には、スイベルジョイント(旋回継手)(63)とニップル(64)とが連通配管されており、図外のボイラーから上記食品収容タンク(16)の蒸気ジャケット(57)へ、図1、6の矢印(B)で示す如く蒸気が供給されて、これにより甘味食品(M)を加熱できるようになっている。尚、(65)はその蒸気供給バルブ、(66)はスチームトラップ、(67)はエヤートラップ、(68)は安全弁、(69)は圧力計、(70)はボールバルブである。
【0055】
更に、上記食品収容タンク(16)の円弧底面又は胴面、好ましくはその両面のコーナー位置には、図10のようなステンレス鋼の断熱保護筒(71)が蒸気ジャケット(57)を斜め下方から貫通する状態に溶接一体化されており、その中心に差し込まれた屈折計(糖度検知センサー)(R)が甘味食品(M)と接触して、加熱攪拌中に変化する甘味食品(M)の糖度を、リアルタイムに測定できるようになっている。(72)はその断熱保護筒(71)に対する屈折計(R)の着脱可能な固定ボルト、(73)は屈折計(R)とその断熱保護筒(71)との内外相互間に充填された耐熱合成樹脂(テフロン)(登録商標)のシール材である。
【0056】
茲に、糖度を測定する屈折計(R)は図11に抽出して示す如く、ステンレス鋼から段付き円筒状に造形された鏡筒(74)を備え、その鏡筒(74)における上記食品収容タンク(16)の内部へ差し込まれた細い先端側が検知部として、ここにはプリズム(75)や光源(LED)(76)、反射ミラー(77)のほか、対物レンズ(78)とリレーレンズ(79)並びに円筒状の遮光シャーシ(80)から成る光学組立体も内蔵設置されており、光源(76)から甘味食品(M)とプリズム(75)との境界面へ光を入射し、そのプリズム(75)から光を出射させるようになっている。(81)は甘味食品(M)の加熱温度検知センサーであって、サーミスターや白金測温抵抗体などから成り、上記プリズム(75)と甘味食品(M)との境界面付近に位置する関係として、やはり鏡筒(74)の検知部に内蔵設置されている。
【0057】
他方、同じく鏡筒(74)の食品収容タンク(16)から張り出した太い基端側は測定部として、ここには上記プリズム(75)から出射した光を検知するイメージセンサー(82)のほか、その検知出力信号から測定された屈折率を糖度(ブリックス値)に変換する電子回路や、上記加熱温度検知センサー(81)により検知された甘味食品(M)の温度に応じた温度補正係数を算出する電子回路、そのブリックス値と温度補正係数との両信号を比較演算して、最終の正確な糖度(ブリックス値)を算出する電子回路を備えたセンサー基板(CPU)(83)も内蔵設置されている。(84)は配線コネクターであり、上記加熱攪拌装置の操作盤(8)や表示パネル(9)へ接続使用されることになる。
【0058】
上記屈折計(R)による糖度の測定原理自体は周知であると言えるが、本発明の場合これを食品収容タンク(16)の内部へ、図10のような下方から甘味食品(M)と常時接触する差し込み状態に付属一体化させてあり、加熱攪拌中に変化する甘味食品(M)の糖度(ブリックス値)をその屈折計(R)によって、同じく甘味食品(M)の加熱温度を上記加熱温度検知センサー(81)によって、何れもリアルタイムでの自動的に測定検知し、その検知した現在糖度と現在温度を、上記屈折計(R)に内蔵設置されているセンサー基板(CPU)(83)からの出力電気信号として、外部の上記操作盤(8)や表示パネル(9)へ伝送できるようになっている。
【0059】
そのため、加熱攪拌中にある甘味食品(M)の糖度をその屈折計(R)により、常時一定の取付位置において、しかも外気に触れない同じ温度条件のもとで、正確に安定良く測定検知することができ、このことには上記屈折計(R)の細い先端側をなす検知部が断熱保護筒(71)により包囲されたことや、同じく屈折計(R)の太い基端側をなす測定部が食品収容タンク(16)から遠く張り出し露呈して、断熱状態にあることも役立つ。
【0060】
食品収容タンク(16)からアットランダムに採取した甘味食品(M)の一部を、プリズムに付着させることにより、そのタンク(16)の外部において人為的に仕上がり糖度の測定値を読み取る手持ち式の屈折計と異なり、その糖度の測定値に誤差を生ずるおそれがないのである。
【0061】
尚、上記加熱温度検知センサー(81)を屈折計(R)自身の検知部へ内蔵設置した図示の実施形態6よれば、甘味食品(M)の温度に応じた温度補正係数を算出して、その糖度の一層高精度な測定結果を得られる利点があるが、上記加熱温度検知センサー(81)はこれを屈折計(R)と別個独立して、食品収容タンク(16)への差し込み状態に取り付け一体化してもさしつかえない。
【0062】
本発明の第1実施形態では、図12の機能ブロック図に示すマイクロコンピューター(85)を上記操作盤(8)に内蔵設置しており、その加熱攪拌装置の自動運転方法として、図13のフローチャートから明白なように、上記屈折計(R)からの現在糖度検知出力信号と加熱温度検知センサー(81)からの現在温度検知出力信号に基いて、食品収容タンク(16)の蒸気ジャケット(57)に対する供給蒸気量(加熱力)と攪拌羽根(24)の回転速度を自動的に調整制御するようになっている。
【0063】
更に言えば、甘味食品(M)の目標とする仕上がり糖度や一定単位時間(1分)当りの糖度上昇変化率(ブリックス値:1〜2)、攪拌羽根(24)の初期回転速度、最少の供給蒸気量とこれに切り換える時の沸騰温度(100℃)、その他の必要な設定値が予じめの入力データとして、マイクロコンピューター(85)のRAMに記憶されている一方、同じくコンピューター(85)のROMにはCPUの演算処理上必要な制御プログラムが記憶されているほか、クロックジェネレータが上記単位時間(1分)よりも短かい一定単位時間(2秒)毎に、そのCPUを働かせるようになっている。
【0064】
そして、蒸気ジャケット(57)への供給蒸気量を最多とし、攪拌羽根(24)の回転速度を低速として、甘味食品(M)の加熱攪拌作用を開始することにより、やがて供給蒸気量を切り換える沸騰温度(100℃)に到達した時点(P1)では、これを検知した加熱温度検知センサー(81)からの出力信号に基いて、その沸騰状態を維持すべく、上記蒸気ジャケット(57)への供給蒸気量を最少に調整制御する。
【0065】
このような開始当初からの経過中、甘味食品(M)の刻々と変化する糖度を屈折計(R)によって測定検知しており、その現在糖度の検知出力信号を受けたコンピューター(85)のCPUが、クロックジェネレータでの一定単位時間(2秒)毎に働いて、その単位時間(2秒)前の糖度測定値と比較することにより、やがて現在糖度の下げ止まり時点(それまでの一方的な下降から上昇へ変化する転換時点)(P2)を知得する。
【0066】
その下げ止まり時点(P2)の知得後には、予じめ決められた一定単位時間(1分)当りの糖度上昇変化率を一定(ブリックス値:1〜2)に保つべく、小刻みな一定単位時間(2秒)毎に働くコンピューター(85)のCPUが、その単位時間(2秒)前の糖度測定値と比較して、上記単位時間(1分)当りの平均的な糖度上昇変化率を演算し、その演算結果の出力信号に基き蒸気ジャケット(57)への供給蒸気量と攪拌羽根(24)の回転速度を、その糖度の上昇変化に応じて調整制御すると共に、上記甘味食品(M)の現在糖度が目標とする仕上がりの測定値に到達した最終時点(P3)において、その蒸気の供給と攪拌羽根(24)の回転を自動停止するようになっている。
【0067】
冒頭に述べた従来技術との対比上、高粘度に煮詰められる和菓子の餡を代表例に挙げて、その加熱攪拌装置の自動運転方法を具体的に説明すると、次のとおりである。
【0068】
即ち、7.5Kgの小豆を炊き上げると、その外部からの吸水作用により膨潤軟化して、19.5Kgの煮豆になるため、このように予じめ炊き上げ用意した19.5Kgの煮豆と、9Kgの砂糖並びに6Kgの水を餡の材料として、上記加熱攪拌装置の食品収容タンク(16)へ投入する。
【0069】
他方、その加熱攪拌装置の運転パラメーターとして、図13のフローチャートに示すような仕上がり糖度(ブリックス値:58)やその糖度における下げ止まり時点(P2)からの上昇変化率(1分当りのブリックス値:1〜2)、インバーター(5)により制御される攪拌羽根(24)の初期回転速度、最少の供給蒸気量(蒸気供給バルブの開度:10%)並びにその最少の供給蒸気量へ切り換える時の沸騰温度(100℃)、その他の必要な設定値を入力しておく。これらの入力データは熟練作業者の豊富な経験から得られた最適の数値である。
【0070】
そして、上記加熱攪拌装置の運転を開始し、最多の供給蒸気量(蒸気供給バルブの開度:100%)により加熱すると共に、初期の低速回転される攪拌羽根(24)によって、煮豆の漬け込み糖蜜になる砂糖と水を混合・攪拌すると、図14のグラフに示す如く、約9分経過後沸騰温度(100℃)に到達するため、その到達時点(P1)を検知した上記加熱温度検知センサー(81)からの出力信号に基いて、最少の供給蒸気量に切り換え制御し、その沸騰状態を維持することにより、水分の蒸発を進行させる。
【0071】
このような運転開始からの経過中、上記砂糖と水から成る漬け込み糖蜜の糖度は、上記屈折計(R)でのリアルタイムに測定検知されているが、運転の開始時点では煮豆の水分が食品収容タンク(16)の内部へ流出していないため、その漬け込み糖蜜の糖度はブリックス値:60(計算式:糖度=砂糖の重量/砂糖+水の重量)として、未だ高い状態にある。
【0072】
しかし、加熱による水分の蒸発が進むに連れて、上記漬け込み糖蜜の糖分は煮豆自身に吸収・浸透する一方、その煮豆から水分が逆に流出するため、同図のグラフから明白なように、上記漬け込み糖蜜の糖度は徐々に下降することとなり、運転の開始から約15分経過後には下げ止まるのである。
【0073】
茲に、糖度の下げ止まり時点(P2)はそれまでの一方的な下降から上昇へ変化する転換時点として、煮豆自身の糖度とその漬け込み糖蜜の糖度とが平衡状態になったことを意味し、この下げ止まり時点(P2)の現在糖度を測定検知した上記屈折計(R)からの出力信号に基き、その後には供給蒸気量を最多として、100℃以上に強く加熱することにより、水分の蒸発を積極的に促進させるのである。
【0074】
そうすれば、上記漬け込み糖蜜の糖度はその下げ止まり時点(P2)から一方的に上昇するが、余りにも短時間での一気に上昇させ過ぎると、その漬け込み糖蜜から煮豆自身に向かう糖分の吸収・浸透作用が追従できず、拒絶反応を起すおそれがあるため、上記屈折計(R)からの現在糖度検知出力信号を受けたマイクロコンピューター(85)のCPUが、その現在糖度の測定値を一定の単位時間(2秒)毎に、その単位時間(2秒)経過前のそれと比較演算して、これよりも長い一定単位時間(1分)当りの糖度上昇変化率を知得する。
【0075】
そして、そのCPUによる比較演算の結果、平均値としての上記糖度上昇変化率が予じめ決められた一定のブリックス値:1〜2よりも大きい場合には、図13のフローチャートから明白なように、供給蒸気量を減少又はその蒸気の供給を停止させるべく制御する一方、逆に糖度上昇変化率が小さい場合には、供給蒸気量を増加又は現状のままに維持制御して、その一定単位時間(1分)当りの糖度上昇変化率を予じめ決められた一定値に保つと共に、攪拌羽根(24)の回転速度もその糖度の上昇変化に応じて、徐々に低下させるべく調整制御する。
【0076】
上記一定単位時間(1分)当りの糖度上昇変化率として設定されたブリックス値:1〜2は、この数値範囲内であれば、煮豆自身の糖度がその漬け込み糖蜜の糖度に追従できる程度として、豊富な経験から知得されたものである。
【0077】
又、これをその平均値として把握した所以は、食品収容タンク(16)の一定な取付位置にある上記屈折計(R)が、万一の攪拌洩れにより固形状態として残る砂糖を検知し、その測定値の誤差を生ずるおそれなしとせず、これを予防するためである。
【0078】
このような過程でも水分の蒸発が進行し、遂には餡として煮詰まり、目標とする仕上がり糖度のブリックス値:58を測定検知できた時点(P3)において、蒸気の供給と攪拌が自動停止されることになる。その終了するまでの所要時間は約46分であり、最後に食品収容タンク(16)を転倒させて、その内部から仕上がり状態の餡を取り出すことは言うまでもない。
【0079】
図示の実施形態では、クロックジェネレータによるマイクロコンピューター(CPU)(85)の小刻みな作動時間(比較単位時間)を2秒とし、上記下げ止まり時点(P2)からの糖度上昇変化率を1分当りのブリックス値:1〜2として予じめ設定しているが、これらの数値はあくまでも最適な一例を示すに過ぎず、生豆やその餡(甘味食品)の種別に応じて、適当に選定・変更することができ、このことは目標とする仕上がり糖度の数値についても同様である。
【0080】
尚、コンピューター(85)のCPUをクロックジェネレータでの一定単位時間(2秒)毎に働かせる代りに、上記屈折計(R)に内蔵設置されているセンサー基板(CPU)(83)を一定単位時間(2秒)毎に働かせ、これがその単位時間(2秒)前の糖度測定値と比較することにより、上記一定単位時間(1分)当りの平均的な糖度上昇変化率(ブリックス値:1〜2)を演算して、その演算結果の出力信号を上位のメイン基板に相当する上記コンピューター(85)のCPUへ伝送すると共に、そのコンピューター(85)のCPUが制御プログラムに従って、上記蒸気ジャケット(57)への供給蒸気量と攪拌羽根(24)の回転速度を調整制御するように設定しても良い。
【0081】
先の図12〜14に説示した第1実施形態の自動運転方法では、煮豆漬け込み糖蜜の糖度が下げ止まり時点(P2)に到達した以後、屈折計(R)からの現在糖度検知出力信号と、これを受けたマイクロコンピューター(85)のCPUが、小刻みな一定単位時間(2秒)毎に比較演算した一定単位時間(1分)当りの平均的な糖度上昇変化率に基いて、食品収容タンク(16)の蒸気ジャケット(57)に対する供給蒸気量と、攪拌羽根(24)の回転速度とを自動的に調整すべく、フィードフォワード制御しているが、図12、13と対応する図15、16の第2実施形態に示す如く、その加熱攪拌装置を手動運転することも可能である。
【0082】
即ち、本発明の第2実施形態では図15の機能ブロック図から明白なように、屈折計(R)でのリアルタイムに測定検知された現在糖度と、加熱温度検知センサー(81)により同じく検知された現在温度とが、そのセンサー基板(CPU)(83)からデジタル値として出力され、加熱攪拌装置の表示パネル(9)へ刻々と表示更新されるようになっている。
【0083】
又、その表示パネル(9)には加熱温度調整コントローラー(図示省略)が内蔵設置されており、これが上記加熱温度検知センサー(81)からの検知出力信号を受けて、その現在温度と予じめ決められた設定温度とを比較した結果に基き、蒸気ジャケット(57)に対する供給蒸気の自動遮断バルブ(ソレノイドバルブ)(86)をオン・オフ(開閉)制御するようになっている。(87)は同じく供給蒸気量の手動調整バルブである。
【0084】
そこで、上記加熱攪拌装置を手動運転する場合には、やはり熟練作業者の経験に基く最適な数値として、目標とする餡の仕上がり糖度と加熱温度を、表示パネル(9)上の対応的な矢印ボタン(88)とスイッチボタン(89)(90)により、各々予じめ設定すると共に、蒸気ジャケット(57)への供給蒸気量と攪拌羽根(24)の回転速度を、操作盤(8)上の対応する調整ボリューム(91)(92)によって、各々予じめ設定しておく。
【0085】
尚、図12〜14の上記第1実施形態と同じく、餡の材料になる煮豆(小豆)と砂糖並びに水を所定の重量比率として、加熱攪拌装置の食品収容タンク(16)へ投入することは言うまでもない。
【0086】
そして、上記加熱攪拌装置の運転を開始し、食品収容タンク(16)の蒸気ジャケット(57)へ供給される蒸気により加熱し乍ら、煮豆の漬け込み糖蜜になる砂糖と水を攪拌羽根(24)の回転により混合・攪拌すると、その進行過程において変化する漬け込み糖蜜の現在糖度が上記屈折計(R)により、同じく現在温度がその加熱温度検知センサー(81)により、何れもリアルタイムに測定検知されて、上記表示パネル(9)に刻々と表示更新されることになる。
【0087】
そのため、図14の上記グラフに準じて変化する漬け込み糖蜜の糖度と加熱温度、その糖度の下げ止まり時点(P2)を表示パネル(9)から目視観察することができ、又これに基いて、加熱攪拌中に供給蒸気量や攪拌羽根(24)の回転速度を、操作盤(8)上における調整ボリューム(91)(92)の手動操作により、最適となるように設定変更することも可能である。
【0088】
何れにしても、その設定された加熱温度と上記加熱温度検知センサー(81)から検知出力された現在温度とが、図16のフローチャートに示す如く、加熱温度調整コントローラーによって常時比較され、その比較結果の出力信号に基き、供給蒸気の自動遮断バルブ(86)を開閉制御するようになっており、予じめ調整ボリューム(91)(92)により調整された度合いの蒸気量が、蒸気ジャケット(57)へ供給されるのである。
【0089】
そして、上記屈折計(R)が予じめ設定された目標の仕上がり糖度を検知した時には、その表示パネル(9)から操作盤(8)へ伝送される指令信号により、加熱攪拌装置の運転(蒸気の供給と攪拌)が自動停止されることになる。
【0090】
本発明の加熱攪拌装置では上記第1、2実施形態の何れにあっても、屈折計(糖度検知センサー)(R)が食品収容タンク(16)の内部へ、その下方からの差し込み状態として付属一体化されており、これにより甘味食品(M)の糖度を自づとリアルタイムに測定検知するようになっているため、又その甘味食品(M)の目標とする仕上がり糖度を予じめ設定し、その仕上がり糖度の測定値を得られた時点で、加熱攪拌装置の運転を自動停止するようになっているため、上記和菓子の餡を初め、カスタードクリームやジャム、スイートポテト、その他の高粘度に煮詰められる各種甘味食品(M)を、その糖度のバラツキがない高品質の美味しい状態に仕上げ得るのである。
【0091】
殊更、上記第1実施形態の自動運転方法によれば、屈折計(R)が糖度の下げ止まり時点(P2)を検知した以後、その一定単位時間当りの糖度上昇変化率を一定に保つべく自動制御しているため、例えば餡の加熱攪拌作業に供した場合、漬け込み糖蜜から煮豆に向かう糖分の吸収・浸透作用と、逆な煮豆から漬け込み糖蜜に向かう水分の流出作用とが、一切の抵抗なく円滑に営なまれ、漬け込み糖蜜の糖分が煮豆自身に充分吸収・浸透した優れた餡を、いたづらな長時間を要さずに、熱効率良く量産できるのである。
【0092】
先の図1〜16では蒸気を加熱源とする加熱攪拌装置と、その運転方法について説明したが、その蒸気に代る図17〜20のようなインバーター(93)(94)によって加熱制御される電磁誘導加熱コイル(95)(96)や、図21のようなガスーバーナー(97)からの直火、更にはこれらが組み合わされたハイブリッド形態を加熱源とする加熱攪拌装置についても、本発明を適用実施することができる。
【0093】
特に、電磁誘導加熱コイル(95)(96)を加熱源として、食品収容タンク(16)の円弧底面と胴面へ臨むように付属一体化させる場合には、上記屈折計(R)の鏡筒(74)に磁界が発生・集中して、これを加熱してしまうことの予防上、その電磁誘導加熱コイル(95)(96)を図20の矢印で示す如く、磁界が互いに打ち消し合うように巻き曲げることを要する。又、ガスの直火を加熱源とする加熱攪拌装置の場合には、そのかまど本体壁(タンク支持ボックス)(98)と、これから食品収容タンク(16)に差し込み貫通させた上記屈折計(R)との相互間へ、断熱筒(99)を介挿設置することにより、その屈折計(R)を包囲状態に保つ。
【0094】
更に、図1〜10は2軸式の横型加熱攪拌装置を示しているが、その攪拌羽根軸(19)の1本だけを倒立カマボコ型食品収容タンク(16)の中央部へ、水平に貫通横架させた1軸式の横型加熱攪拌装置(図示省略)や、図21に併せて示すようなボール鍋型の食品収容タンク(16)へ、その真上や斜め上方から錨状の攪拌羽根(24)を差し込んだ言わば竪型加熱攪拌装置についても、本発明を広く適用実施することができる。
【0095】
尚、図17〜21の各種変形実施形態におけるその他の構成と運転方法は、図1〜16の上記第1、2実施形態と実質的に同一であるため、その図17〜21に図1〜16との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の加熱攪拌装置を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】駆動側タンク支持ボックスの内部を抽出して示す側面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】従動側タンク支持ボックスの内部を抽出して示す側面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】攪拌羽根軸の回転駆動系統を示す断面図である。
【図8】食品収容タンクを抽出して示す平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】図8の10−10線断面図である。
【図11】屈折計を抽出して示す断面図である。
【図12】本発明に係る第1実施形態の自動運転方法を示す機能ブロック図である。
【図13】同じく運転フローチャートである。
【図14】図13に対応する糖度と温度の変化を示すグラフである。
【図15】本発明に係る第2実施形態の手動運転方法を示す機能ブロック図である。
【図16】同じく運転フローチャートである。
【図17】電磁誘導加熱コイルを加熱源とする加熱攪拌装置の断面模式図である。
【図18】図17の制御回路図である。
【図19】図17の電磁誘導加熱コイルと屈折計との配置関係を示す側面図である。
【図20】図19の底面図である。
【図21】ガスを加熱源とする加熱攪拌装置の断面模式図である。
【図22】従来の運転方法による糖度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0097】
(1)・据付け台
(3)・駆動側タンク支持ボックス
(4)・従動側タンク支持ボックス
(5)(93)(94)・インバーター
(6)・攪拌羽根回転用駆動モーター
(7)・出力スプロケット
(8)・操作盤
(9)・表示パネル
(10)・食品収容タンク転倒用駆動モーター
(11)・ウォーム減速機
(15)・出力ギヤ
(16)・食品収容タンク
(17)・駆動側ギヤケース
(18)・従動側ギヤケース
(19)・攪拌羽根軸
(24)・攪拌羽根
(27)・攪拌駆動軸用ベアリングケース
(29)・食品収容タンク転倒用回動鞘軸
(32)・攪拌駆動軸
(35)・駆動ギヤ
(39)・回転検知アーム
(40)(53)(54)・近接センサー
(42)・伝動ギヤ
(43)(44)・中間アイドルギヤ
(45)(46)・等速回転ギヤ
(48)・入力ギヤ
(49)・蒸気流通用芯管
(51)(52)・回動検知アーム
(57)・蒸気ジャケット
(60)・蒸気導入口
(61)・分岐管
(62)・フレキシブルホース
(63)・スイベルジョイント
(65)・蒸気供給バルブ
(71)・断熱保護筒
(72)・取り付け固定ボルト
(73)・シール材
(74)・鏡筒
(75)・プリズム
(76)・光源(LED)
(77)・反射ミラー
(78)・対物レンズ
(79)・リレーレンズ
(80)・遮光シャーシ
(81)・加熱温度検知センサー
(82)・イメージセンサー
(83)・センサー基板(CPU)
(84)・配線コネクター
(85)・マイクロコンピューター(CPU)
(86)・自動遮断バルブ
(87)・手動調整バルブ
(91)(92)・調整ボリューム
(M)・甘味食品
(R)・屈折計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備え、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌することにより、高粘度に煮詰める加熱攪拌装置において、
上記食品収容タンクの底面又は胴面へ屈折計を、甘味食品と常時接触する差し込み状態に付属一体化させて、上記甘味食品の加熱攪拌中に変化する糖度を、その屈折計でのリアルタイムに測定検知すると共に、
上記屈折計が甘味食品の予じめ設定された目標仕上がり糖度を測定検知した出力電気信号に基き、その甘味食品の加熱攪拌を自動停止させるように構成したことを特徴とする甘味食品の加熱攪拌装置。
【請求項2】
食品収容タンクの加熱源を蒸気として、その蒸気ジャケットにより食品収容タンクの底面と胴面を包囲し、
上記食品収容タンクへ屈折計の断熱保護筒を、その蒸気ジャケットの貫通状態に溶接一体化すると共に、
屈折計の鏡筒をステンレス鋼から段付き円筒状に造形して、その細い先端側の検知部だけを上記断熱保護筒の中心から食品収容タンクの内部へ差し込み固定したことを特徴とする請求項1記載の甘味食品の加熱攪拌装置。
【請求項3】
食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備えた加熱攪拌装置により、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌して、高粘度に煮詰めるに当り、
その加熱攪拌中に変化する甘味食品の現在糖度を、上記食品収容タンクに付属一体化された屈折計でのリアルタイムに測定検知し、
その屈折計が上記現在糖度の下げ止まり時点を検知した以後には、その検知出力信号を受けた屈折計自身に内蔵のCPU又はこれと別個なマイクロコンピューターのCPUにより、その現在糖度の測定値を予じめ決められた一定単位時間毎に、その単位時間前のそれと比較して、上記比較単位時間よりも長い一定単位時間当りの糖度上昇変化率を演算すると共に、
その比較演算された平均値が予じめ決められた一定の糖度上昇変化率を保つように、上記CPUから出力される演算結果の信号に基き、上記加熱源の加熱力と攪拌羽根の回転速度を自動的に調整制御し、
上記屈折計が甘味食品の予じめ設定された目標仕上がり糖度を検知した最終時点において、上記マイクロコンピューターのCPUにより加熱と攪拌羽根の回転を自動停止させることを特徴とする甘味食品における加熱攪拌装置の運転方法。
【請求項4】
甘味食品を餡とし、その煮豆の漬け込み糖蜜における一定単位時間当りの糖度上昇変化率を、1分当りのブリックス値:1〜2として予じめ設定したことを特徴とする請求項3記載の甘味食品における加熱攪拌装置の運転方法。
【請求項5】
食品収容タンクとその下方からの加熱源並びに食品収容タンク内での回転駆動される攪拌羽根とを備えた加熱攪拌装置により、その食品収容タンクに投入された甘味食品を加熱攪拌して、高粘度に煮詰めるに当り、
その加熱攪拌中に変化する甘味食品の現在糖度と現在温度を、上記食品収容タンクに付属一体化された屈折計と加熱温度検知センサーでのリアルタイムに各々測定検知して、その測定値を何れも表示パネルに刻々と表示更新し、
上記加熱温度検知センサーから検知出力された現在温度と、予じめ設定された加熱温度とを、操作盤に内蔵する加熱温度調整コントローラーにより常時比較して、その比較結果の出力信号に基き加熱力と攪拌羽根の回転速度を、予じめ設定された調整度まで自動的に開閉制御すると共に、
上記屈折計が予じめ設定された甘味食品の目標仕上がり糖度を検知した最終時点において、上記表示パネルから操作盤へ伝送される指令信号により、加熱と攪拌羽根の回転を自動停止させることを特徴とする甘味食品における加熱攪拌装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−275332(P2007−275332A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106110(P2006−106110)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】