説明

生体認証装置

【課題】
IDカード等による複数登録生体データの検索を行うことなく、予め登録されている複数の登録生体データに対して、得られた生体情報との照合を行いながらも、精度を十分保ちつつ、認証処理を高速に行い、認証者にとって使い勝手の良い生体認証装置を提供することである。
【解決手段】
認証者の生体情報を取得する生体情報入力部と、その認証者に関する特徴情報を取得する特徴情報取得部と、その認証者の操作情報を取得する操作情報入力部と、事前に登録されている生体データとその生体データに関連付けられた特徴データを保存する生体データ登録部と、特徴情報取得部で得られた特徴情報に従って生体データ登録部から照合する生体データ群を抽出する生体データ群抽出部と、照合を行う生体データ照合部で構成し、生体情報入力部で取得された生体情報と生体データ群抽出部で抽出された生体データとの照合を操作情報に従って精度を可変して認証を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を用いて個人の認証を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば、特開平11-338947号公報がある。該公報には「[課題]指紋等の個人認証情報による本人確認を現行方式に付加し、本人なら暗証番号を忘れたり通帳やカードを携帯せずとも取引可能なサービスを提供する。
[解決手段]指紋等の個人認証情報を登録した利用者は、指紋採取機能を備えた金融取引端末4で、暗証番号を忘れた場合や通帳,カードを携帯しない場合も取引できる。計算センタには、通常の暗証番号データベース2,元帳データベース3,照合手段6,取引実行手段7に加え、氏名,個人認証情報,口座番号,暗証番号を格納した個人認証用データベース1と個人認証手段5がある。通帳,カードなしの取引の場合、入力した氏名と採取した指紋特徴が個人認証手段5に転送され、氏名で検索した個人認証情報と照合し、一致すれば該当する口座番号と暗証番号が照合手段6に送られ、以降通常の手順で暗証番号を照合し取引が行われる。暗証番号を忘れた場合、通帳,カードを挿入し指紋を入力して取引を行う。」と記載されている(要約)。
【0003】
また、他の背景技術として、例えば、特開2002-14934号公報がある。該公報には「[課題]顧客識別が容易な本人認証システムを提供する。[解決手段] 顧客を識別する本人認証システムであって、前記顧客の複数の生体情報を記憶する手段と、前記顧客の複数の生体情報を読み取る手段と、前記読み取った複数の生体情報を前記記憶した複数の生体情報と照合する手段と、前記読み取った複数の生体情報のそれぞれが、前記記憶した複数の生体情報のうち少なくとも1つと合致した場合、サーバーに合致したことを情報として送る手段と、を有することを特長とする本人認証システム。」と記載されている(要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-338947号公報
【特許文献2】特開2002-14934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀行の金融取引システムや、施設の利用管理システム等において、本人の確認を行うための認証手段として生体認証装置が普及してきている。
【0006】
生体認証装置では、住所・氏名といった個人情報や、使用者に対して予め付与されるID(Identification)カード等を介して、関連づけられた1つの登録生体データを検索し、主に指紋や静脈、虹彩などの生体情報を、センサを用いて採取して、登録生体データと生体情報を照合することによって認証を行っている。このような生体認証装置に関し、例えば、特許文献1に記載されている。
【0007】
この認証においては、例えば、使用者の生体情報と登録データを比較し、このデータの一致率を算出し、この一致率がある所定値より高いか高くないかで本人であるかどうかの認証を行っている。
【0008】
また、他の技術として、例えば、特許文献2に記載のように、予め登録されている複数の登録生体データ全てに対して、得られた生体情報との照合を行うことで、予めIDカードなどを用意することなく認証ができる技術がある。
【0009】
上記のような技術において、予めIDカード等を用意するなどが必要となることは、使用者の利便性の低下につながる。また、予めIDカードなどを用意することなく認証ができる技術に関しても、予め登録されている生体データの数が大きくなればなるほど、認証にかかる時間が長くなる、もしくは認証処理を高速に行うためにはシステムの複雑化と高コストを招くという欠点がある。
【0010】
一方、生体情報を用いた認証システムでは、正確に認証を行うための精度を十分保つ必要がある。そのために、使用者の生体情報を正確に得る必要があり、生体情報を繰返し取得するなどの利便性の低下と認証時間がかかるといったことが生じる。また同様に精度を十分に保つためには、登録生体データ1つ1つのデータ量を大きくする必要があり、多くの登録生体データと照合する場合には、認証時間が長くなる。
【0011】
本発明の目的は、使い勝手の良い生体認証装置を提供することである。例えば、IDカード等による複数登録生体データの検索を行うことなく、予め登録されている複数の登録生体データに対して、得られた生体情報との照合を行いながらも、精度を十分保ちつつ、認証処理を高速に行い、認証者にとって使い勝手の良い生体認証装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は特許請求の範囲に記載の発明により達成される。
例えば、本発明における生体認証装置は、認証者の生体情報を取得する生体情報入力部と、その認証者に関する特徴情報を取得する特徴情報取得部と、事前に登録されている生体データとその生体データに関連付けられた特徴データを保存する生体データ登録部と、特徴情報取得部で得られた特徴情報に従って生体データ登録部から照合する生体データ群を抽出する生体データ群抽出部と、生体情報入力部で取得された生体情報と生体データ群抽出部で抽出された生体データとの照合を行う生体データ照合部とから構成され、該生体データ照合部は、照合する精度を可変することを特徴としている。
【0013】
さらに、例えば、本発明における生体認証装置は、認証者の操作情報を取得する操作情報取得部を持ち、生体データ照合部は、操作情報取得部から得られる操作情報に従って、照合する精度を可変することを特徴としている。
【0014】
また、例えば、本発明における生体認証装置は、生体データ照合部において操作情報取得部から得られる操作情報に従って、生体情報入力部から得られる生体情報と生体データ群抽出部で抽出された生体データとの照合を行う第1次認証を行い、第1次認証で認証者が登録者であると認証され、認証者が次の操作を行い、操作情報取得部から第1次認証で得られた操作情報とは違う操作情報が入力され、あらかじめ設定される第1次認証で得られた操作情報の優先度より新たに得られた操作情報の優先度が高いときに、新に得られた操作情報に従って精度を可変し、第1次認証で認証した1対の生体データと生体情報を用いて照合を行う第2次認証を実行することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使い勝手の良い生体認証装置を提供することができる。例えば、複数の登録生体データを用いて照合するので、IDカード等による複数登録生体データの検索を行うことがなく、特徴情報を用いて登録生体データの絞込みを行い、操作情報に応じて精度を可変して照合することで、精度を十分保ちつつ、認証処理を高速に行い、認証者にとって使い勝手の良い生体認証装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】生体情報と操作情報を用いた生体認証装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明における生体認証装置の生体データ登録部に保存されている生体データの例を示す図
【図3】本発明における生体認証装置の処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の好適な実施例を説明する。
【0018】
図1は、本発明における実施の形態を示すブロック図である。図1において、101は生体情報入力部、102は特徴情報取得部、103は操作情報取得部、104は生体データ照合部、105は生体データ群抽出部、106は生体データ登録部である。
【0019】
図1において、生体情報入力部101は、認証者の生体情報をセンサ等により例えば、指紋、掌紋、静脈、音声、虹彩、顔画像などの生体情報を取得する。特徴情報取得部102は、認証者の特徴をセンサ等により例えば、性別、身長、体重などの特徴情報を取得する。生体データ登録部106には予め取得されている複数の生体データが格納なれており、生体データ群抽出部105は、特徴情報取得部102から得られる特徴情報から例えば図2に示すように、生体データ登録部106から関連する登録生体データを抽出する。
【0020】
ここで図2に用いて、生体データ群抽出部105の動作を説明する。201は登録生体データ全体の集合を示しており、202は男性の生体データの集合、203は身長170cmから180cmの登録者の生体データの集合、204は眼鏡を着けている登録者の集合を示している。生体データ群抽出部105は、例えば特徴情報取得部102から認証者が男性、170cm、そして眼鏡をかけているとの特徴情報が得られると、図2の205に示されるように得られた特徴の全てが重なった部分の集合の生体データを抽出することになり、登録データ全体を認証に用いるよりも小さい生体データ群を抽出することができる。
【0021】
さて、図1において、操作情報取得部103は、例えば、ドアの開閉ボタンの押下、銀行の取引システムでの預金引き出しボタンの押下などの認証者の機器の操作情報を取得する。そして、生体データ照合部104は、生体情報入力部101で得られた生体情報と生体データ群抽出部105で抽出された生体データを、操作情報取得部103で得られた操作情報に従って、例えばPC(Personal Computer)のログインの認証精度は、ログイン後のPCによる金融決算をする場合の認証精度より低くするというように、精度と利便性が最適となるように予め操作毎に決められた精度で照合を行う。照合の結果、認証者の生体情報が登録生体データと一致しない場合には、照合していない登録データに対して照合を行う。このとき、変装などによるなりすましとみなし、照合自体を行わない、もしくは精度を高めて照合を実施してもよい。そして、照合の結果、認証者が認証されたのかされないのかを出力する。
【0022】
次に、図3のフローチャートを用いて、本発明の実施の形態を補足説明する。図3において、処理301から303までの前述の動作説明に沿ってはじめに行われた認証が第1次認証である。このとき、認証に使用された1対の生体情報と生体データおよび操作情報が保持される。第1次認証が行われた後、認証者による新たな操作が行われると、保持されている操作の優先度と新たな操作の優先度を比較し、新たな操作の優先度が高い場合には、再度照合を行う。このときの照合には、事前に取得され保持されている生体情報と生体データを用いることで認証者の利便性を損なうことはない。また、操作の優先度に従って、第1次認証よりも高い精度にて照合が行われる。照合の結果、本人として認証できない場合には、モニタに認証できませんなどの表示を行い、認証者に操作が拒否されたことを通知する。本人として認証された場合には、操作が承認され、認証者は認証が行われたことを意識することなく、操作を実行できる。この処理305から310までの認証が第2次認証である。この第2次認証は、認証者が意識的に一連の操作を終了するまで繰返し行われる。
【符号の説明】
【0023】
101 生体情報入力部
102 特徴情報取得部
103 操作情報取得部
104 生体データ照合部
105 生体データ群抽出部
106 生体データ登録部
201 登録生体データ全体の集合
202 男性の生体データの集合
203 身長170cmから180cmの登録者の生体データの集合
204 眼鏡を着けている登録者の集合
205 男性かつ身長170cmから180cmかつ眼鏡を着けている登録者の集合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証者の生体情報を取得する生体情報入力部と、
該認証者に関する特徴情報を取得する特徴情報取得部と、
事前に登録されている生体データとその生体データに関連付けられた特徴データを保存する生体データ登録部と、
該特徴情報取得部で得られた特徴情報に従って生体データ登録部から照合する生体データ群を抽出する生体データ群抽出部と、
該生体情報入力部で取得された生体情報と該生体データ群抽出部で抽出された生体データとの照合を行う生体データ照合部と、
を有し、
該生体データ照合部は、照合する精度を可変すること
を特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
請求項1において、
認証者の操作情報を取得する操作情報取得部を有し、
該生体データ照合部は、該操作情報取得部から得られる操作情報に従って、照合する精度を可変することを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
請求項2において、
該生体データ照合部は、該操作情報取得部から得られる操作情報に従って、該生体情報入力部から得られる生体情報と該生体データ群抽出部で抽出された生体データとの照合を行う第1次認証を行い、第1次認証で認証者が登録者であると認証され、認証者が次の操作を行い、該操作情報取得部から第1次認証で得られた操作情報とは違う操作情報が入力され、あらかじめ設定される第1次認証で得られた操作情報の優先度より新たに得られた操作情報の優先度が高いときに、新に得られた操作情報に従って精度を可変し、第1次認証で認証した1対の生体データと生体情報を用いて照合を行う第2次認証を実行することを特徴とする生体認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−76289(P2011−76289A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225853(P2009−225853)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】