説明

生分解性樹脂組成物、生分解性フィルムおよび生分解性成形体

【課題】加工時に臭気が少なく、物理的性質に優れ生分解性成分の溶出も少ない生分解性フィルムや生分解性成形体を製造できる生分解性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】生分解性樹脂組成物は、(A)熱可塑性合成樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)生分解性有機物とを配合してなり、前記(A)成分の配合量が組成物全量基準で49質量%以下であり、前記(B)成分と前記(C)成分の配合割合((B)/(C))が質量比で3/7から7/3までの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂組成物、該組成物からなる生分解性フィルム、および該組成物からなる生分解性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック製品は世界中で広く使用されているが、その一方で廃プラスチックの処理が問題となっている。例えば、プラスチックを土壌に廃棄すると完全に分解されるまでに約400年もの歳月を要すると言われている。また、プラスチックを焼却すると有毒ガスを発生することも多く、大気や土壌の汚染につながる。さらに、焼却により発生する炭酸ガスが地球温暖化を促進するという問題も指摘されている。
そこで、廃棄後自然に分解する生分解性のプラスチックが種々開発されている。例えば、一般のプラスチック材料の代わりに、澱粉40〜80%を主要な原料とした生分解性の澱粉樹脂が提案されている(特許文献1参照)。また、澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とを主成分とする澱粉樹脂からなる生分解性シートが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−296076号公報
【特許文献2】特許第3832668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の澱粉樹脂からなる容器は、一般的なプラスチック製品と比べて、剛性や耐衝撃性といった物理的性質が十分ではなく、また加工時の臭気の問題もある。さらに、この容器を殺菌処理すると澱粉の溶出が起こるおそれもある。特許文献2に記載の生分解性シートにも同様の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、加工時に臭気が少なく、物理的性質に優れ生分解性成分の溶出も少ない生分解性フィルムや生分解性成形体を製造できる生分解性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のような生分解性樹脂組成物、生分解性フィルム、および生分解性成形体を提供するものである。
(1)(A)熱可塑性合成樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)生分解性有機物とを配合してなり、前記(A)成分の配合量が組成物全量基準で49質量%以下であり、前記(B)成分と前記(C)成分の配合割合((B)/(C))が質量比で3/7から7/3までの範囲であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(2)上述の(1)に記載の生分解性樹脂組成物において、前記(A)成分がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の生分解性樹脂組成物において、前記(B)成分がタルク、炭酸カルシウム、クレイ、沈降性硫酸バリウム、シリカ、カオリン、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、雲母、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、グラファイトおよびゼオライトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の生分解性樹脂組成物において、前記(C)成分が、デンプン、セルロース、ポリ乳酸、およびカゼインから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(5)上述の(1)から(4)までのいずれか1つに記載の生分解性樹脂組成物において、さらに、(D)バインダー成分が配合されてなることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(6)上述の(5)に記載の生分解性樹脂組成物において、前記(D)成分が、流動パラフィン、金属石鹸、シリコーン、側鎖結晶性ポリオレフィン、ステアリン酸、およびポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
(7)上述の(1)から(6)までのいずれか1つに記載の生分解性樹脂組成物を原料として製造されたことを特徴とする生分解性フィルム。
(8)上述の(7)に記載の生分解性フィルムにおいて、該フィルムの片面あるいは両面には、前記(A)成分と前記(B)成分とを配合してなる樹脂層が積層され、前記樹脂層には、前記(C)成分が配合されていないことを特徴とする生分解性フィルム。
(9)上述の(1)から(6)までのいずれか1つに記載の生分解性樹脂組成物を原料として熱成形、プレス成形、および射出成形のいずれかの成形法により製造されたことを特徴とする生分解性成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生分解性樹脂組成物は、加工時の臭気も少なく、また、該組成物を用いて製造された生分解性フィルムや生分解性成形品は物理的性質に優れるとともに、生分解性成分の溶出も少ない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の生分解性樹脂組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、(A)熱可塑性合成樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)生分解性有機物とを配合してなるものである。以下、詳細に説明する。
【0009】
(A)成分:
本発明における(A)成分は、熱可塑性合成樹脂である。熱可塑性合成樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、オレフィンとビニルモノマーとの共重合体、変性オレフィン共重合体、縮合系高分子化合物、付加重合反応によって得られる重合体など、種々のものを例示することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体、ブロックポリプロピレン、高圧法低密度ポリエチレンなどの単独重合体、共重合体などが挙げられる。
オレフィンとビニルモノマーとの共重合体としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー(エチレン/カルボン酸含有ビニルモノマー共重合体の金属イオン置換体(例えば:エチレン/アクリル酸共重合体のナトリウムイオン中和物等))、およびエチレン/ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0010】
変性オレフィン共重合体としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、および無水マレイン酸変性ポリエチレンなどが挙げられる。
縮合系高分子化合物としては、ポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
付加重合反応によって得られる重合体(極性ビニルモノマーやジエン系モノマーから得られた重合体)としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルアルコール等の単独重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体,水添重合体であるSEBS,アクリロニトリル/スチレン共重合体、およびハイインパクトポリスチレン(ゴム変性)などが挙げられる。その他、石油樹脂や熱可塑性エラストマーも挙げられる。
上述の各熱可塑性合成樹脂は、1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。上述した各樹脂の中では、成形性や物理的性質の点で、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0011】
(B)成分:
本発明における(B)成分は、無機フィラーである。無機フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、沈降性硫酸バリウム、シリカ、カオリン、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、雲母、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、グラファイトおよびゼオライトなどが好ましく挙げられる。これらは1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中では、剛性やコストの点でタルクが好ましい。
【0012】
(C)成分:
本発明における(C)成分は、生分解性有機物である。生分解性有機物としては、デンプン、セルロース、ポリ乳酸、およびカゼインなどが挙げられる。これらの中では、生分解性の点でデンプンが好ましい。デンプンとしては、ジャガイモ、コムギ、トウモロコシ、サツマイモ、コメ、キャッサバ、クズ、カタクリ、緑豆、サゴヤシ、およびワラビ等から得られるものが挙げられる。
このような(C)成分を配合することで、本組成物に生分解性を持たせることができるだけでなく、比重を下げ二次加工性を向上させることもできる。
【0013】
本発明の生分解性樹脂組成物は、上述した(A)から(C)までの各成分を配合してなるものであるが、(A)成分の配合量は、組成物全量基準で、49質量%以下でなければばらない。この配合量が49質量%を超えると、生分解性が低下してしまう。
(A)成分の好ましい配合量は、40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。一方、(A)成分の配合量が少なすぎると、樹脂組成物の成形性が悪化したり、また、製造されたフィルムや成形品の物理的性質が低下するおそれがある。それ故、(A)成分の配合量は30質量%以上であることが好ましく35質量%以上であることがより好ましい。
【0014】
本組成物における(B)成分と(C)成分の配合割合((B)/(C))は、質量比で3/7から7/3までの範囲であり、好ましくは5/5から6/4までである。この配合割合を変えることで、フィルムや成形品とした場合に必要とされる要求特性を容易に調整できる。具体的には、配合割合((B)/(C))が3/7未満であると、加工時に臭気が強くなるおそれがある。また容器等の成形品とした場合に、剛性が劣るようになる。
一方、配合割合((B)/(C))が7/3を超えると、容器等の成形品を製造した場合に、物理的性質(耐衝撃性等)が劣るようになるとともに、生分解性が低下するおそれがある。最も好ましい割合は、(B)/(C)が1/1の場合である。
【0015】
また、(B)成分の配合量は、成形品としたときの剛性や、(C)成分の分散性の観点より組成物全量基準で20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。ただし、耐衝撃性の観点より40質量%以下であることが好ましく、
30質量%以下であることがより好ましい。
本組成物における(A)成分と(B)成分の配合割合((A)/(B))は、物理的性質の観点より、質量比で8/2から5/5までの範囲が好ましく、より好ましくは7/3から6/4までである。
【0016】
(C)成分の配合量は、生分解性や二次加工性の観点より組成物全量基準で5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。ただし、押出加工時の臭気や製品(フィルムや成形品)としたときの溶出の観点より20質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
本組成物における(A)成分と(C)成分の配合割合((A)/(C))は、加工性の観点より質量比で8/2から5/5までの範囲が好ましく、より好ましくは7/3から6/4までである。
【0017】
(D)成分:
本組成物には、必要に応じて(D)成分としてバインダー成分を配合することができる。バインダー成分は、上述した(A)から(C)までの各成分の分散性をより向上させる効果を発揮させる成分である。
このような(D)成分としては、例えば、流動パラフィン、金属石鹸、シリコーン、側鎖結晶性ポリオレフィン、ステアリン酸、およびポリグルタミン酸などが挙げられる。ここで、側鎖結晶性ポリオレフィンとは、例えば特開平11−199641に記載されている分岐状ポリオレフィンを意味する。
このような(D)成分を配合すると、例えば、本組成物を押出加工した際に、押出機中に該組成物の堆積が生じないので、大量生産性能が向上する。
(D)成分の好ましい配合量は、組成物全量基準で1質量%以上5質量%以下程度である。
また、(D)成分以外にさらに添加剤として、酸化防止剤、滑剤、核剤、および紫外線吸収剤などを配合してもよい。
【0018】
本組成物は、通常の押出成形により薄膜状とすることができ生分解性フィルムとして提供できる。押出成形としては、インフレーション法やTダイ法などを好ましく適用できる。この生分解性フィルムは単層からなるフィルムでもよいが、(C)成分である生分解性有機物の溶出を防ぐ観点より、該フィルムの片面あるいは両面に(C)成分を配合しない樹脂層((A)成分と(B)成分とを配合してなる層)を積層することが好ましい。該樹脂層が該フィルムの片面に積層される際の厚みとしては、該フィルム自身の厚み100に対して5から10までの範囲の厚みを有することが好ましい。該樹脂層を該フィルムの両面に積層する場合でも、各々の該樹脂層が上述の厚み範囲を有することが好ましい。このような積層フィルムであっても、全体として本発明の生分解性フィルムとして提供できる。
該樹脂層の該フィルムに対する積層方法は、押出ラミネート法でもよく共押出法でもよい。また、この(C)成分を含まない樹脂層の原料は、本組成物から単に(C)成分を含まないだけの組成物を調製すればよい。
【0019】
なお、本発明の生分解性樹脂フィルムには、厚みの極めて薄いフィルム状のものから、厚みのあるシート状のもの、すなわち生分解性「樹脂シート」までが含まれる。
生分解性樹脂フィルムからヒートシールにより袋を形成する場合は、剛性を抑える必要からその厚みは90μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上80μm以下であり、さらに好ましくは、30μm以上60μm以下である。
【0020】
一方、本組成物は、いったん所定の厚みの樹脂シートを成形した後、熱成形、プレス成形、および射出成形など通常の成形法により容器等の生分解性成形体とすることができる。このような容器等の成形体とするための樹脂シートとしては、その厚みは、剛性を保つ必要性から100μm以上であることが好ましく200μm以上であることがより好ましく300μm以上であることがさらに好ましい。ただし、容器等を製造するので、成形性の観点より1400μm以下であることが好ましく、1200μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
以下の組成で生分解性樹脂組成物を調製し、該組成物から樹脂シートを製造した後、さらに該樹脂シートから容器を製造した。なお、比較用として、下記(C)成分を配合しないで(他の成分の相対配合割合は全く同じ)、同様に樹脂組成物を調製し、樹脂シートおよび容器を製造した。
・ポリプロピレン樹脂((A)成分):43.9質量%
(プライムポリマー社製 プライムポリプロ F―724NP(ランダムPP))
・タルク((B)成分):27質量%
・コンスターチ((C)成分):27質量%
・ステアリン酸マグネシウム((D)成分):1質量%
・流動パラフィンワックス((D)成分):1質量%
・酸化防止剤:0.1質量%
(商品名:イルガホス168、日本チバガイギー株式会社製)
【0022】
具体的には、上述の各成分を高速回転混合機にて混合・加熱し、2軸造粒機にて加工温度180℃ペレットを作製した。次いで、得られたペレットをL/Dが28の40Φ押出機にて押出温度を175℃に設定し、厚み0.8mm、幅330mmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを口径=80Φ、深さ60mmの金型にて真空成形をおこない容器を得た。ペレットや樹脂シートの製造中、さらには得られた容器について(C)成分(生分解性成分)に基づく臭気は全く感じられなかった。この容器について、以下の方法で物理的性質、臭気、生分解性および生分解性成分の溶出性について評価した。
【0023】
(1)物理的性質の評価方法
上述の容器に水を150mL入れ、電子レンジにて3分間沸騰させた。そして、容器の変形の有無および容器が溶融しないかどうかについて目視で確認した。
また、上述の容器を作製する際、真空成形後に不要部分を分離する工程(トリミング工程)において、容器に割れが生じるかどうかを目視で確認した。容器の耐衝撃性が低いと割れが生じやすい。
(2)臭気の評価方法
上述の容器に95℃のお湯を150mL入れた後、ガラス板にて蓋をして自然冷却させた。お湯の温度が常温(25℃)まで下がったところで試飲して(生分解性成分に基づく)臭気の有無を確認した。
(3)生分解性の評価方法
修正MITI試験法(OECD301C)に準拠して生分解率を測定した。
(4)生分解性成分の溶出性評価方法
物理的性質と同様に、容器に水を入れ電子レンジにて3分間沸騰させた後にお湯を捨て、容器の内面の膨潤度合いや平滑性(ぬめり)を目視や手で確認して、生分解性成分(生分解性有機物)の溶出の有無を判断した。
【0024】
〔評価結果〕
(1)物理的性質
比較用の容器と同様に変形や溶融は全くなかった。また、比較用用の容器と同じく、上述のトリミング工程において割れは発生しなかった。従って、本実施例の容器は、比較用の容器とくらべ耐熱性や耐衝撃性について何ら遜色がないと言える。
(2)臭気
比較用の容器と同様に臭気は全く感じられなかった。
(3)生分解性
27%(分解率)と良好な数値を示した。比較用の容器には全く生分解性は認められなかった。
(4)生分解性成分の溶出性
生分解成分の溶出は全く認められなかった。
【0025】
〔実施例2〕
(A)成分として、ポリプロピレン樹脂の代わりにポリエチレン樹脂(宇部興産製R−300)を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製し、樹脂シートおよび容器を製造した後、同様の評価を行った。比較用の樹脂組成物等についても同様である。ペレットや樹脂シートの製造中、さらには得られた容器について(C)成分(生分解性成分)に基づく臭気は全く感じられなかった。
【0026】
〔評価結果〕
(1)物理的性質
比較用の容器と同様に変形や溶融は全くなかった。また、比較用用の容器と同じく、上述のトリミング工程において割れは発生しなかった。従って、本実施例の容器は、比較用の容器とくらべ耐熱性や耐衝撃性について何ら遜色がないと言える。
(2)臭気
比較用の容器と同様に臭気は全く感じられなかった。
(3)生分解性
27%(分解率)と良好な数値を示した。比較用の容器には全く生分解性は認められなかった。
(4)生分解性成分の溶出性
生分解成分の溶出は全く認められなかった。
【0027】
〔実施例3〕
実施例1の樹脂組成物を用いてペレットを製造し、さらにインフレーション成形法により厚み50μmのフィルムを製造した。また、(C)成分を配合しない比較用の組成物についても同様にしてフィルムを製造した。ペレットやフィルムの製造中、さらには得られたフィルムについても(C)成分(生分解性成分)に基づく臭気は全く認められなかった。
得られたフィルムの物理的性質(耐衝撃性、引張特性)は、JIS K 7124、JIS K 7127に基づいて測定した。生分解性については、実施例1と同様にして評価した。生分解性成分の溶出性についてはフィルム袋を作製し95℃のお湯を入れシールして1日放置してお湯と接触した内面を実施例1同様の評価をおこない生分解成分の溶出がないかどうか確認した。
【0028】
〔評価結果〕
得られたフィルムは、比較用に製造したフィルムとくらべて、耐衝撃性、引張特性(強度、伸び等)のいずれも同等であった。従って、一般なレジ袋としても使用可能であることが理解できる。
また、生分解性についても27%(分解率)と良好であり、また、生分解性成分の溶出も認められなかった。なお、比較用に製造したフィルムには全く生分解性はなかった。
【0029】
〔比較例1〕
以下の配合組成で実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、樹脂シートおよび容器を製造した後、同様の評価を行った。
・ポリプロピレン樹脂((A)成分):43.9質量%
・タルク((B)成分):54質量%
・ステアリン酸マグネシウム((D)成分):1質量%
・流動パラフィンワックス((D)成分):1質量%
・酸化防止剤:0.1質量%
(商品名:イルガホス168、日本チバガイギー株式会社製)
〔評価結果〕
得られた容器は衝撃強度が低く、トリミング工程において割れが発生した。
【0030】
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法により以下の配合組成((B)成分なし)で樹脂組成物を調製し、樹脂シートを製造した。
・ポリプロピレン樹脂((A)成分):30質量%
・コンスターチ((C)成分):54質量%
・ステアリン酸マグネシウム((D)成分):1質量%
・流動パラフィンワックス((D)成分):1質量%
・酸化防止剤:0.1質量%
(商品名:イルガホス168、日本チバガイギー株式会社製)
〔評価結果〕
上述の配合組成を有するペレットから樹脂シートを製造する際に澱粉の臭気がひどく、その後の容器製造を断念した。また、ダイスのリップ口に大量の澱粉の焼け物が堆積しシート化自体も困難であった。従って、容器の評価を行うことはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性合成樹脂と、(B)無機フィラーと、(C)生分解性有機物とを配合してなり、
前記(A)成分の配合量が組成物全量基準で49質量%以下であり、
前記(B)成分と前記(C)成分の配合割合((B)/(C))が質量比で3/7から7/3までの範囲である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物において、
前記(A)成分がポリオレフィン系樹脂である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の生分解性樹脂組成物において、
前記(B)成分がタルク、炭酸カルシウム、クレイ、沈降性硫酸バリウム、シリカ、カオリン、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、雲母、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、グラファイトおよびゼオライトから選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物において、
前記(C)成分が、デンプン、セルロース、ポリ乳酸、およびカゼインから選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物において、
さらに、(D)バインダー成分が配合されてなる
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の生分解性樹脂組成物において、
前記(D)成分が、流動パラフィン、金属石鹸、シリコーン、側鎖結晶性ポリオレフィン、ステアリン酸、およびポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物を原料として製造された
ことを特徴とする生分解性フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の生分解性フィルムにおいて、
該フィルムの片面あるいは両面には、前記(A)成分と前記(B)成分とを配合してなる樹脂層が積層され、
前記樹脂層には、前記(C)成分が配合されていない
ことを特徴とする生分解性フィルム。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物を原料として熱成形、プレス成形、および射出成形のいずれかの成形法により製造された
ことを特徴とする生分解性成形体。

【公開番号】特開2011−225643(P2011−225643A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94149(P2010−94149)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】