説明

生化学反応カートリッジおよび生化学処理装置システム

【課題】 生化学反応カートリッジは、プローブによる検体中の標的DNAの検出を行なう際、大気中の塵埃や検査者の手の接触によって、生化学反応カートリッジのプローブ検出に関わる部位が汚染され、更に、蛍光検出型の生化学反応カートリッジの場合、DNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことで、蛍光色素の劣化が進行してしまい、精度良くプローブによる検体中の標的DNAの検出が行えなかった。
【解決手段】 検体を生化学処理するための溶液が内蔵された少なくとも一つの化学反応用チャンバと、生化学処理された検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部とを有する生化学反応カートリッジにおいて、少なくとも反応情報取り出し部を露出可能に覆う手段を設けたことを特徴とする生化学反応カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の細胞、微生物、染色体、核酸等を抗原抗体反応や核酸ハイブリダイゼーション反応等の生化学反応を利用して分析する装置および当該装置に組み込んで用いる生化学反応カートリッジを含む生化学処理装置システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する分析装置の多くは、抗原坑体反応を利用した免疫学的な方法又は核酸ハイブリダイゼーションを利用した方法を用いている。例えば、被検出物質と特異的に結合する抗体又は抗原等のタンパク質或いは一本鎖の核酸をプローブに使い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定し、被検出物質と抗原抗体反応又は核酸ハイブリダイゼーションを行う。そして、酵素、蛍光性物質、発光性物質等の検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等を用いて、抗原抗体化合物や二本鎖の核酸を検出して、被検物質の有無の検出或いは被検物質の定量を行っている。
【0003】
これらの技術を発展させたものとして、例えば米国特許第5,445,934号明細書には、互いに異なる塩基配列を有する多数のDNA(デオキシリボ核酸)プローブを、基板上にアレイ状に並べた所謂DNAマイクロアレイが開示されている。
【0004】
また、Anal.Biochem.、270(1)、p103−111、1999には、多種類のタンパク質をメンブレンフィルタ上に並べ、DNAマイクロアレイのような構成のタンパク質アレイを作製する方法が開示されている。このように、DNAマイクロアレイ、タンパク質アレイ等によって、極めて多数の項目の検査を一度に行うことが可能になってきている。
【0005】
また、様々な検体分析方法において、検体による汚染の軽減、反応の効率化、装置の小型化、作業の簡便化等の目的で、内部で必要な反応を行う使い捨て可能な生化学反応カートリッジも提案されている。例えば、特表平11−509094号公報においては、DNAマイクロアレイを含む生化学反応カートリッジ内に複数のチャンバを配し、差圧によって溶液を移動させ、カートリッジ内部で検体中のDNAの抽出或いは増幅、又はハイブリダイゼーション等の反応を可能にした生化学反応カートリッジが開示されている。
【0006】
通常DNAマイクロアレイは生化学反応カートリッジへ接着固定された状態で装着されている。生化学反応カートリッジの組み立ては、汚染を防止するためにクリーンルーム内で行なわれる。生化学反応カートリッジは、凹凸が形成された2枚の板とDNAマイクロアレイとで組み立てられ、内部の空間は密封状態となっている。
【0007】
生化学反応カートリッジ中のチャンバ内には、例えば、細胞壁を破壊するEDTAを含む第1の溶血剤や界面活性剤等のタンパク質変性剤を含む第2の溶血剤等の薬剤(溶液)を蓄積する必要があり、これらの薬剤は、生化学反応カートリッジを形成する一方の板のチャンバとなる部位に予め蓄積して組み立てる場合と組み立てた後、生化学反応カートリッジに外部のシリンジポンプや真空ポンプを用いて注入する場合とがある。
【0008】
しかしながら生化学反応カートリッジに装着されたDNAマイクロアレイのプローブが形成された面と対向する面は、常に外気に晒されていた。
【0009】
一方、生化学反応カートリッジ内部で溶液を移動する方法としては、重力、毛細管現象、電気泳動を利用したものが知られている。そして、小型で生化学反応カートリッジの内部に配設できるマイクロポンプとしては、特許第2832117号公報には発熱素子を利用したもの、特開2000−274375号公報には圧電素子を利用したもの、特表平11−509094号公報にはダイアフラムポンプが開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,445,934号明細書
【特許文献2】特許第2832117号公報
【特許文献3】特開2000−274375号公報
【特許文献4】特表平11−509094号公報
【非特許文献1】Lueking A,Horn M,Eickhoff H,Bussow K,Lehrach H,Walter G.、”Protein microarrays for gene expression and antibody screening”、Analytical Biochemistry、270(1)、p103−111、1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の生化学反応カートリッジの場合、DNAマイクロアレイのプローブが形成された面と対向する面は、生化学反応カートリッジに装着後、スキャナ等の読取装置にセットして、プローブ検出を行うまでの間、外気に晒されているので、DNAマイクロアレイのプローブが形成された面と対向する面が大気中の塵埃や検査者の手の接触等によって汚染される場合があった。DNAはサイズが小さいので、DNAマイクロアレイの裏面から検出を行なう場合、空気中の塵や人間の手による汚れがDNAマイクロアレイの裏面についていると、その部分の発光をさえぎるために、検出光の強度が見かけ上小さくなってしまい、正確な検出ができない場合があるという問題があった。
【0011】
特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジは、上記の問題以外に、DNAマイクロアレイ部に光があたってしまい、蛍光色素の劣化が進行してしまい、精度良くプローブ検出が行えない場合があった。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題点を解消した生化学反応カートリッジを含む生化学処理装置システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部とを有する生化学反応カートリッジであって、少なくとも反応情報取り出し部を露出可能に覆う手段を設けたことを特徴とする生化学反応カートリッジである。
【0014】
更に、本発明は、生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、生化学処理された生化学反応カートリッジを用いて検体を検出するステージと、該載置手段に載置された生化学反応カートリッジを生化学処理するステージおよび検出するステージに移動させる移動手段とを有する処理手段とを有する生化学処理装置であって、検出手段に移動された生化学反応カートリッジの検出反応情報取り出し部を外界と遮蔽する遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置である。
【0015】
又、本発明は、少なくとも検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、外界に露出した該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部と検出反応情報取り出し部を外界から遮蔽する遮蔽手段と、検体を注入する注入口とを有する生化学反応カートリッジと、生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、生化学処理された生化学反応カートリッジを用いて検体を検出するステージと、該載置手段に載置された生化学反応カートリッジを生化学処理するステージおよび検出するステージに移動させる移動手段とを有する生化学処理装置と、生化学反応カートリッジの注入口を介して生化学反応カートリッジに検体を注入する手段とからなる生化学処理装置システムであって、生化学処理装置は、載置手段に載置された生化学反応カートリッジの遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジのハンドリングの際に当該カートリッジのプローブ検出に必要な部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれや、当該部位が大気にさらされるおそれが著しく減少しあるいは皆無となり、当該部位が手からの汚れや大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなりあるいは皆無となった。
【0017】
また特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。
【0018】
この結果、正確にプローブ検出をすることができるようになった。また仮にシャッターが一度開いてしまい、プローブ検出の信頼性が落ちてしまう恐れがあるカートリッジについては、使用不可であることを操作者に認知させるようにすることあるいは強制的に使用不可の状態にすることによって、そのカートリッジを使用して測定することを未然に防ぐことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、検出部が外部に露出する生化学反応カートリッジを用いて検出を行う際、外部に露出する検出部を生化学反応カートリッジに装着し、生化学反応カートリッジ内部を密封した後、検出部が外界と接触することを、少なくとも生化学処理装置に載置する、あるいは、生化学処理装置あるいは検出装置で検出を行う直前まで防止する覆いを設けるものである。
【0020】
本発明に用いる生化学反応カートリッジは、生化学反応カートリッジ内のチャンバに、検体を処理する薬剤(溶液)および/またはチャンバを洗浄する薬剤(溶液)等を蓄積し、検体を注入後、薬剤等を用いて検体を処理した後、例えばDNAマイクロアレイ等の検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応情報取り出し部で検体の検出を行う。これらの検査は、生化学反応カートリッジ内での溶液の移動や種々の反応を制御した後に、プローブ検出まで行う処理装置を用いて行われることが多いが、生化学反応を行なう部分と検出する部分とが別れた生化学処理装置もある。
【0021】
このような生化学反応カートリッジは、検出反応情報取り出し部が外界に露出していると外界の影響を受けるので、生化学反応カートリッジにDNAマイクロアレイを装着後、少なくとも処理装置に生化学反応カートリッジを載置(セット)する直前までは、DNAマイクロアレイおよび/または電気的な接点等の検出部を外界から遮蔽しておくことが好ましい。
【0022】
一方、上記の生化学反応をおこさせる場合、外部から熱を供給する場合がありこの際には遮蔽を除去した方が温度の一定性や均一性の点で好ましいために遮蔽を除去することができることが好ましい。生化学反応を起させる場所と検出を行なう場所とは生化学処理装置の異なった場所にあるが、1台の生化学処理装置中で生化学反応を検出とを行なう場合は生化学反応時に遮蔽を解除し、その後検出まで解除した状態であっても問題はないが、生化学反応を起させる生化学処理装置と検出を行なう生化学処理装置が異なる場合、生化学反応をおこさせるため解除した遮蔽を再度覆っておくことが好ましい。
【0023】
検出反応情報取り出し部を外界から遮蔽するためには、外界に露出する検出反応情報取り出し部を、シールあるいはシャッター等により覆うことで達成することができる。蛍光を用いて検出を行うタイプの生化学反応カートリッジの場合、これらのシールあるいはシャッターは、光を透過しない材料であることが好ましい。
【0024】
外界との遮蔽にシャッターを用いる場合、検出反応情報取り出し部を覆うシャッターが動いて検出反応情報取り出し部を外界に露出した場合、当該生化学反応カートリッジの使用を中止するために、誤測定を防止する機構を設けることが好ましく、この誤測定を防止する機構として、検出反応情報取り出し部を覆うシャッターが動いて検出部を外界に露出するとシャッターが初期の状態に戻ることを防止するストッパーを設け、
(1)シャッターがストッパーの位置まで戻った状態で、シャッターが開いたことを示すマークが見える、あるいは、見えなくなるようにする。
(2)シャッターがストッパーの位置まで戻った状態で、検体を注入する注入口を塞ぐ。
(3)ストッパーによって生化学反応カートリッジがプローブ検出を行う処理装置に載置(セット)できなくする。
(4)一度セットされたシャッターが処理装置の検査ステージに配置された例えば、突き当て部材等によりシャッターを移動させる。
ことで達成することができる。
【0025】
本発明の生化学反応カートリッジを用いて検査する場合、処理装置(生化学処理装置)は、生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、生化学処理された生化学反応カートリッジを用いて検体を検出するステージと、該載置手段に載置された生化学反応カートリッジを生化学処理するステージおよび検出するステージに移動させる移動手段とを有する処理手段とを有し、検出手段に移動された生化学反応カートリッジの検出反応情報取り出し部を外界と遮蔽する遮蔽手段を解除する解除手段を有することが好ましい。
【0026】
本発明の検体の検出方法は、チャンバ内に少なくとも検体を処理するための薬剤(溶液)が蓄積され、検出反応情報取り出し部が遮蔽手段によって外界から遮蔽された生化学反応カートリッジに、検体を注入する工程と、生化学反応カートリッジを処理装置に載置する工程と、検体をハイブリダイゼーションする工程と、検体から検出反応情報を取り出す工程とを有し、少なくとも遮蔽手段を解除して検出部を外界に露出する工程が、生化学反応カートリッジを処理装置に載置する工程の直前、あるいは、生化学反応カートリッジを処理装置の検査ステージ移動する際あるいは移動後に行われるものである。
【0027】
更に本発明は、検体を生化学処理するための溶液が内蔵された少なくとも一つの化学反応用チャンバと、生化学処理された検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、外界に露出した該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部と前記検出反応情報取り出し部を外界から遮蔽する遮蔽手段と、検体を注入する注入口とを有する生化学反応カートリッジと、生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、生化学処理された生化学反応カートリッジを用いて検出反応情報取り出し部から検体の反応情報を検出するステージと、該載置手段に載置された生化学反応カートリッジを生化学処理するステージおよび検出反応情報取り出し部から検体の反応情報を検出するステージに移動させる移動手段とを有する生化学処理装置と、前記生化学反応カートリッジの注入口を介して前記生化学反応カートリッジに検体を注入する手段とからなる生化学処理装置システムであって、生化学処理装置は、載置手段に載置された生化学反応カートリッジの遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置システムである。
【0028】
更に、上述の生化学反応カートリッジは、外部に露出する検出部を生化学反応カートリッジに装着し、生化学反応カートリッジ内部を密封する工程と、
密封した後、検出部が外界と接触することを、少なくとも検出を行う直前まで、ある
いは検出装置にセットするまで防止する覆いを設けるものである。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
本発明の実施例1を、図面を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1は、生化学処理装置システムに含まれる生化学反応カートリッジ1の斜視図である。
【0031】
生化学反応カートリッジ1の上部には、注射器等を用いて血液等の検体を注入するための検体入口2が設けられ、ゴムキャップにより封止されている。また、カートリッジ1の側面には内部の溶液を移動するためにノズルを挿入して加圧或いは減圧を行う複数のノズル入口3が設けられ、各ノズル入口3にゴムキャップが固定され、反対側の面も同様の構成になっている。
【0032】
これらのゴムキャップは、大気が生化学反応カートリッジ1内に浸入することを防止するために設けられている。
【0033】
生化学反応カートリッジ1の本体はポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の透明又は半透明の合成樹脂により構成されている。なお、カートリッジ1内の反応物について、光学的な反応を必要としない場合には、本体の材質は透明でなくてもよい。
【0034】
図2は生化学反応カートリッジ1の平面断面図を示している。生化学反応カートリッジ1の片側の側面には10個のノズル入口3a〜3jが設けられ、反対側の側面にも10個のノズル入口3k〜3tが設けられている。各ノズル入口3a〜3tは、それぞれの空気が流れる空気流路4a〜4tを介して、溶液を貯蔵する場所又は反応を起こす場所であるチャンバ5に連通されている。
【0035】
図2では、ノズル入口3n、3p、3q、3sは使用しないため、チャンバ5に連通されておらず予備になっている。つまりは、ノズル入口3a〜3jは流路4a〜4jを介してチャンバ5a〜5jに連通され、反対側のノズル入口3k、3l、3m、3o、3r、3tは、それぞれ流路4k、4l、4m、4o、4r、4tを介してチャンバ5k、5l、5m、5o、5r、5tに連通されている。
【0036】
検体入口2は、チャンバ7に連通され、チャンバ5a、5b、5c、5kはチャンバ7に、チャンバ5g、5oはチャンバ8に、チャンバ5h、5i、5j、5r、5tはチャンバ9に連通されている。更に、チャンバ7は流路10を介してチャンバ8に、チャンバ8は流路11を介してチャンバ9に連通されている。流路10には、チャンバ5d、5e、5f、5l、5mが、それぞれ流路6d、6e、6f、6l、6mを介して連通されている。
【0037】
チャンバ9の底面には角孔が開けられ、この角孔に、平方インチ程度の大きさを持つガラス板等の固相表面に異なる種類のDNAプローブを数10から数10万種高密度に並べたDNAマイクロアレイ12が、プローブ面を上にしてに貼り付けられている。
【0038】
このDNAマイクロアレイ12を用いて検体DNAとハイブリダイゼーション反応を行うことによって、一度に数多くの遺伝子を検査することができる。また、これらのDNAプローブはマトリックス状に規則正しく並べられているので、それぞれのDNAプローブの情報は、DNAマイクロアレイ12上に配列されたDNAプローブの位置アドレス(何行・何列という位置)と対応させることで容易に取り出すことができる。
【0039】
検査の対象となる遺伝子としては、感染症ウィルス、細菌、疾患関連遺伝子のほかに、各個人の遺伝子多型等がある。
【0040】
図3(a)は、生化学反応カートリッジ1を底面側から見た図で、図3(b)は、DNAマイクロアレイ12が配された部分の生化学反応カートリッジ1の断面図である。DNAマイクロアレイ12は、生化学反応カートリッジ1のチャンバ9の角孔の開口部を覆うようにチャンバ9に貼り付けられている。生化学反応カートリッジ1のチャンバ9の角孔の開口部を覆うように貼り付けられたシール30は、少なくとも生化学反応カートリッジ1にDNAマイクロアレイ12を取り付け後に開口部に貼り付けられその後、測定を行うときに剥がされる。
【0041】
シール30により生化学反応カートリッジ1のチャンバ9の角孔の開口部を覆うことで、大気中の塵埃、検査者の皮脂等の汚れからDNAマイクロアレイ12の裏面を保護することができる。
【0042】
後述のプローブ検出部33(図4参照)によってDNAマイクロアレイ12は裏面側からスキャンされプローブ検出を行うものであるため、検査者が後述する処理装置に生化学反応カートリッジ1をセットする直前にシール30を剥がせることが好ましい。
【0043】
チャンバ5a、5bには、それぞれ細胞壁を破壊するEDTAを含む第1の溶血剤、界面活性剤等のタンパク質変性剤を含む第2の溶血剤が蓄積されている。チャンバ5cにはDNAが吸着するシリカコーティングされた磁性体粒子が蓄積され、チャンバ5l、チャンバ5mには、DNAの抽出の際にDNAの精製を行うために用いる第1、第2の抽出洗浄剤が蓄積されている。
【0044】
チャンバ5dには、DNAを磁性体粒子から溶出する低濃度塩のバッファから成る溶出液、チャンバ5gには、PCRで必要なプライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光剤を含むCy−3dUTP等の混合液が充填されている。チャンバ5h、5jには、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とを洗浄するための界面活性剤を含む洗浄剤、チャンバ5iには、DNAマイクロアレイ12を含むチャンバ9内を乾燥させるためのアルコールが蓄積されている。
【0045】
なお、チャンバ5eは血液のDNA以外の塵埃が溜まるチャンバ、チャンバ5fはチャンバ5l、5mの第1、第2の抽出洗浄剤の廃液が溜まるチャンバ、チャンバ5rは第1、第2の洗浄剤の廃液が溜まるチャンバであり、チャンバ5k、5o、5tは溶液がノズル入口に流れ込まないために設けたブランクのチャンバである。
【0046】
この生化学反応カートリッジ1に血液等の液体状の検体を注入して後述する処理装置にセットすると、カートリッジ1の内部でDNA等の抽出、増幅が行われ、更に、増幅した検体DNAとカートリッジ1の内部にあるDNAマイクロアレイ上のDNAプローブとの間でハイブリダイゼーションと、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識の洗浄とを行った後蛍光測定によりプローブ検出を行う。
【0047】
尚、検体の生化学反応カートリッジ1への注入は、処理装置にセットした後に行っても良い。
【0048】
図4は、生化学反応カートリッジ1内での溶液の移動や種々の反応を制御し、かつプローブ検出までを行う処理装置の概略図を示している。
【0049】
生化学反応カートリッジ1がセットされ、少なくとも後述するテーブル13とプローブ検出部33の2つの位置をキャリッジレール32に沿って移動可能なキャリッジ31は、図示しない駆動モーターによって駆動される。テーブル13上には、カートリッジ1内で検体からのDNA等を抽出する際に作動させる電磁石14、検体からのDNAをPCR(Polymerase Chain Reaction)などの方法で増幅させる際に温度制御するためのペルチェ素子15が配置され、また生化学反応カートリッジ1を上側から温度の制御を行うペルチェ素子16が配置されている。
【0050】
ペルチェ素子16による温度制御は、増幅した検体DNAとカートリッジ1の内部にあるDNAマイクロアレイ上のDNAプローブとのハイブリダイゼーションを行う際と、ハイブリダイゼーションしなかった検体DNAの洗浄を行う際とに行われる。
【0051】
処理装置に予め記憶されているプログラムにより制御部17を介して処理装置に組み込まれた各種の装置の動作は制御されている。
【0052】
テーブル13の両側には、電動シリンジポンプ18、19と、これらのポンプ18、19により空気を吐出或いは吸引するための出入口で、複数のポンプノズル20、21を片側に10個ずつ設けたポンプブロック22、23が配置されている。電動シリンジポンプ18、19とポンプノズル20、21の間には、図示しない複数の電動切換バルブが配置され、ポンプ18、19と共に制御部17に接続されている。また、制御部17は検査者が入力を行う入力部24に接続されている。制御部17は片側10個のポンプノズル20、21に繋がった電動切換バルブの開・閉の制御を行うことでポンプノズルの制御を行うことができる。
【0053】
本実施例では、血液を検体とし検査者が注射器により検体入口2のゴムキャップを貫通し血液を注入すると、血液はチャンバ7に流れ込む。その後に、検査者は生化学反応カートリッジ1をキャリッジ31にセットする。処理装置の入力部24から処理装置に、少なくとも処理開始の信号を送るとキャリッジ31がテーブル13の位置まで移動する。図示しない駆動モーターにより、ポンプブロック22、23が図4の矢印の方向に移動する。それによって、ポンプノズル20、21がカートリッジ1の両側のノズル入口3にゴムキャップを貫通して挿入される。
【0054】
また、ノズル入口3a〜3tは生化学反応カートリッジ1の2つの面つまり両側に集中しているため、電動シリンジポンプ18、19、電動切換バルブ、ポンプノズルを内蔵したポンプブロック22、23等の形状、配置を単純化することができる。更に、必要なチャンバ5や流路を確保しながら、ポンプブロック22、23によりカートリッジ1を同時に挟み込むという単純な動作だけで、ポンプノズル20、21を挿入することができ、ポンプブロック22、23の構成も簡単なものにすることができる。そして、ノズル入口3a〜3tを全て同じ高さ、即ち直線状に配置することにより、ノズル入口3a〜3tに接続する流路4a〜4tの高さは全て同じになり、流路の4a〜4tの作製が容易になる。
【0055】
プローブ検出部33は、よく知られたスキャナ等の検出装置となっている。生化学反応カートリッジ1内のDNAマイクロアレイ12がプローブ検出部33の読み取りレンズの真上に来るようにキャリッジ31は移動し、プローブ検出が行われる。
【0056】
検査者が入力部24で処理開始の命令を入力すると処理が始まる。制御部17はキャリッジ31をテーブル13の真上に移動させ、さらにポンプブロック22、23を図4の矢印の方向に移動させる。
【0057】
次に、血液を検体としチャンバ7に蓄えた生化学反応カートリッジ1を用いた処理装置による処理手順を図5に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0058】
生化学反応カートリッジ1のチャンバ9の角孔の開口部のシール30を剥がして、DNAマイクロアレイ12を露出させた後、生化学処理装置のキャリッジ31に生化学反応カートリッジ1をセットする。
【0059】
キャリッジ31がテーブル13の位置まで移動すると、図示しない駆動モーターにより、ポンプブロック22、23が図4の矢印の方向に移動する。それによって、ポンプノズル20、21がカートリッジ1の両側のノズル入口3にゴムキャップを貫通して挿入される。
<ステップS1(第1の溶血剤の流し込み、攪拌)>
制御部17はノズル入口3a、3kのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引して、チャンバ5aの第1の溶血剤を血液の入ったチャンバ7に流し込む。この際に、溶血剤の粘性や流路の抵抗にもよるが、ポンプ19からの空気の吸引をポンプ18からの空気の吐出を開始してから10〜200m秒後に開始するように制御すると、流れる溶液の先頭で溶液が飛び出すことがなく、溶液が円滑に流れる。
【0060】
このように、空気の供給、吸引のタイミングをずらすことによって、加圧、減圧を制御すれば溶液を円滑に流すことができるが、電動シリンジポンプ19による空気の吸引を、ポンプ18からの空気の開始時からリニアに増加させるなどの細かな制御を行えば、溶液を更に円滑に流すことが可能になる。以下の溶液の移動についても同様である。
【0061】
空気の供給の制御は、電動シリンジポンプ18、19を用いることで容易に実現でき、ノズル入口3a、3oのみを開にし、ポンプ18、19によって空気の吐出、吸引を交互に繰り返し、チャンバ7の溶液を流路10に流し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。或いは、ポンプ19から空気を連続して吐出し、気泡を発生させながら攪拌してもよい。
【0062】
図6は図2に示すチャンバ5a、7、5kを通る断面図であり、ノズル入口3aにポンプノズル20を挿入して加圧し、ノズル入口3kにポンプノズル21を挿入して減圧し、チャンバ5aの第1の溶血剤が血液の入ったチャンバ7に流れ込む様子を示している。
<ステップS2(第2の溶血剤の流し込み、攪拌)〜S3(磁性体粒子の流し込み、攪拌)>
次に、ステップS2で、ノズル入口3b、3kのみを開にし、同様にしてチャンバ5bの第2の溶血剤をチャンバ7に流し込む。その後、ステップS3で、ノズル入口3c、3kのみを開にし、同様にしてチャンバ5cの磁性体粒子をチャンバ7に流し込む。ステップS2、S3においては共に、ステップS1と同様にして攪拌を行う。ステップS3では、磁性体粒子にステップS1、S2で細胞が溶解して得られたDNAが磁性体粒子に付着する。
<ステップS4(電磁石ON、磁性体粒子とDNAの捕捉)>
そして、次に、電磁石14をオンにし、ノズル入口3e、3kのみを開にし、電動シリンジポンプ19から空気を吐出し、ポンプ18から空気を吸引してチャンバ7の溶液をチャンバ5eに移動する。この移動の際に、磁性体粒子とDNAを流路10の電磁石14の上で捕捉する。ポンプ18、19の吸引、吐出を交互に繰り返し、溶液をチャンバ7、5e間を2回往復させることにより、DNAの捕捉効率を向上させる。更に、回数を増やせば捕捉効率を一層高めることができるが、処理時間も余分に掛かることになる。
【0063】
このように、磁性体粒子を利用してDNAを、幅1〜2mm程度、高さ0.2〜1mm程度の小さい流路上で、しかも流れている状態で捕捉するので、極めて効率良く捕捉することができる。また、捕捉ターゲット物質がRNA或いはタンパク質の場合も同様である。
<ステップS5(第1の抽出洗浄液での洗浄、捕捉)>
次に、電磁石14をオフにし、ノズル入口3f、3lのみを開とし、電動シリンジポンプ19から空気を吐出し、ポンプ18から空気を吸引して、チャンバ5lの第1の抽出洗浄液をチャンバ5fに移動する。この際に、ステップS4で捕捉された磁性体粒子とDNAが抽出洗浄液と共に移動して洗浄が行われる。ステップS4と同様にして2回往復した後に、電磁石14をオンにし、同様にして2回往復させて磁性体粒子とDNAを流路10の電磁石14の上に回収し、溶液をチャンバ5lに戻す。
<ステップS6(第2の抽出洗浄液での洗浄、捕捉)>
その後、ノズル入口3f、3mを用いて、チャンバ5mの第2の抽出洗浄液に対して、ステップS5と同様の操作を行って更に洗浄する。
<ステップS7(抽出液を流し、磁性体粒子とDNAを分離)>
次に、電磁石14をオンにしたまま、ノズル入口3d、3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引することにより、チャンバ5dの溶出液をチャンバ8に移動する。
【0064】
このとき、溶出液の作用によって磁性体粒子とDNAが分離し、DNAのみが溶出液と共にチャンバ8に移動し、磁性体粒子は流路10に残る。このようにして、DNAの抽出、精製が行われる。抽出洗浄液が入ったチャンバと洗浄後の廃液が入るチャンバを用意したので、生化学反応カートリッジ1内でDNAの抽出、精製を行うことが可能になる。
<ステップS8(PCR用薬剤を流し込み、ペルチェ素子を制御してPCR)>
次に、ノズル入口3g、3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引してチャンバ5gのPCR用薬剤をチャンバ8に流し込む。更に、ノズル入口3g、3tのみを開にし、ポンプ18、19で空気の吐出、吸引を交互に繰り返し、チャンバ8の溶液を流路11に流して、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。そして、ペルチェ素子15を制御して、チャンバ8内の溶液を96℃の温度に10分保持した後に、96℃・10秒、55℃・10秒、72℃・1分の工程を30回繰り返し、溶出されたDNAにPCRを行って増幅する。
<ステップS9(ペルチェ素子を制御してハイブリダイゼーション、攪拌)>
次に、ノズル入口3g、3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引してチャンバ8の溶液をチャンバ9に移動する。更に、ペルチェ素子16を制御して、チャンバ9内の溶液を45℃で2時間保持しハイブリダイゼーションを行う。この際に、ポンプ18、19で空気の吐出、吸引を交互に繰り返し、チャンバ9の溶液を流路6tに移動し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行いながら、ハイブリダイゼーションを進める。
<ステップS10(第1の洗浄液での洗浄)>
次に、45℃を保持したまま、ノズル入口3h、3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引して、チャンバ9内の溶液をチャンバ5rに移動しながら、チャンバ5hの第1の洗浄液をチャンバ9を通してチャンバ5rに流し込む。ポンプ18、19の吸引、吐出を交互に繰り返して溶液をチャンバ5h、9、5r間を2回往復させ、最後にチャンバ5hに戻す。このようにして、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とが洗浄される。
【0065】
図7は図2のチャンバ5h、9、5rを通る断面図であり、ノズル入口3hにポンプノズル20が挿入されて加圧され、ノズル入口3rにポンプノズル21が挿入されて減圧され、チャンバ5hの第1の洗浄液がチャンバ9を通してチャンバ5rに流れ込む様子を示している。
<ステップS11(第2の洗浄液での洗浄)>
更に、45℃を保持したまま、ノズル入口3j、3rを用いてチャンバ5jの第2の洗浄液に対して、ステップS10と同じ工程を経て更に洗浄し、最後にチャンバ5jに戻す。このように洗浄液が入ったチャンバ5h、5jと、洗浄後の廃液が入るチャンバ5rを用意したので、生化学反応カートリッジ1内でDNAマイクロアレイ12の洗浄を行うことが可能になる。
<ステップS12(アルコールの移動、乾燥)>
最後に、ノズル入口3i、3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引してチャンバ5iのアルコールをチャンバ9を通してチャンバ5rに移動する。その後に、ノズル入口3i、3tのみを開にし、ポンプ18から空気を吐出し、ポンプ19から空気を吸引してチャンバ9内を乾燥させる。
【0066】
その後、制御部17によりポンプブロック22、23は生化学反応カートリッジ1から離れる方向に移動し、ポンプノズル20、21がカートリッジ1のノズル入口3から外れる。次にキャリッジ31をプローブ検出部33に移動し、本実施例では、蛍光測定によりプローブ検出を行う。
【0067】
本実施例では、生化学反応カートリッジ1の開口部は、生体カートリッジ1にDNAマイクロアレイ12を組み込んだ後は、通常は外部に対し閉じられており検出を行う時に開放される。
【0068】
次に、電流検出型DNAチップを使った生化学反応カートリッジの例を、図面を使って説明する。図8、9は、電流検出型DNAチップを使った生化学反応カートリッジの表側、裏側からみた全体構成図である。
【0069】
図8に示す生化学反応カートリッジ1の表側には、ハイブリダイゼーション液や洗浄液等をDNAチップに供給するインレット34と排出するアウトレット35が設けられている。生化学反応カートリッジ1を図示しない装置本体内にローディング後に、インレット34とアウトレット35は装置本体側の液体ハンドリング部とジョイントする構成となっている。電極36上にDNAプローブを固定化するため、DNAプローブの変性や失活を避けるために、外気中の塵埃や、皮脂等による汚染を避ける必要がある。よってシール30aにより前記電極36は外気にさらされないようになっている。また、シール30aを剥がすと検出用の接点電極36が露出する構成になっており、装置本体内にローディングされた後に装置本体側電極と接する構成となっている。
【0070】
図9に示す生化学反応カートリッジ1の裏側には、装置本体内にローディングされたときにヒータ素子に該当する部分が矩形にくり抜かれている。例えばDNAマイクロアレイ12が光を透過する材質であった場合、光によるプローブの劣化を招き、望ましくない。よってここにシール30bが貼付してある。シール30bを剥がすとDNAマイクロアレイ12の裏面が露出する構成になっている。
【0071】
DNAマイクロアレイ12には、図示しない金属電極例えば金電極が設けられており、各電極上にDNAプローブがスポッティング法により貼り付けられている。
【0072】
シール30bおよび後述のシャッターに光を透過しない材料を用いる場合、透明な材料を着色することが好ましい。着色する場合、外部からの光を遮蔽するためには黒色等の色が好ましい。尚、色だけではなく、厚みも考慮する必要があるが、光を遮蔽する程度は、生化学反応カートリッジの保管場所・保管時間等で異なるため特に詳細な説明は省略するが通常用いる方法が採用できることは言うまでもない。
【0073】
検出原理は、ハイブリダイゼーション液に挿入材(インターカレーター)を混ぜ、ハイブリダイゼーションしたターゲットDNAに付いている挿入材(インターカレーター)から、DNAプローブを伝わって電子が流れ、電流値を検出するという方式である。DNAプローブは液に浸った状態で電圧がかけられ検出が行われる。
【0074】
このように本発明は蛍光測定によりプローブ検出を行う形態の生化学反応カートリッジにおける検出に関わる部位近傍に限らず、電気的にプローブ検出を行う形態のカートリッジの検出に関わる部位に適用できる。
【0075】
また、ハイブリダイゼーションした物質の検出に関わる部位に限らず抗原抗体反応等の他の化学反応に関わる部位に本発明を適用してもよい。
【0076】
さらに検出に関わる部位のみに限らず、生化学反応カートリッジの機能上必要な部位近傍に本発明を適用してもよい。
【0077】
以上説明したように本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジをハンドリングする際に当該カートリッジのプローブ検出に関わる部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれや、当該部位が大気にさらされるおそれが著しく減少し、当該部位が手からの汚れや大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなった。また特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。以上より、精度良くプローブによる検体中の標的DNAの検出をすることができるようになった。
【0078】
以下の実施例を含んで本実施例では、DNAマイクロアレイは生化学反応カートリッジに予め接着固定されているが、溶血剤等の薬液の保管による劣化を防ぐため、ステージ31で検査の直前に生化学反応カートリッジのチャンバに注入することもできる。DNAマイクロアレイも検査直前に生化学反応カートリッジに装填することもできる。この場合、生化学反応カートリッジのDNAマイクロアレイを装填するチャンバ9の角孔の開口部に密封用のパッキングを形成し、DNAマイクロアレイを装填すると密封されるようにすることで達成することができる。
<実施例2>
本発明の実施例2を、図面を用いて詳細に説明する。
【0079】
図10は、開口部を覆ったシャッターは一度開口部を覆った後開けられた履歴のない未使用の生化学反応カートリッジ1を底面側から見た図である。図11は、図10のA−A断面図であり、シャッター37は、図10中の矢印aの方向にスライドできるようになっている。図12は、シャッター37が矢印aの方向に移動してストッパー42が矢印cの方向に突出した状態を示している。
【0080】
本実施例は、シール30に変えて、シャッター37を用いて開口部が覆われている。開口部を覆うシャッター37は、ストッパー38、使用可否表示窓39、ねじりコイルばね40、シャッターカバー41およびストッパー42に構成されている。
【0081】
シャッター37は、矢印aの方向にスライドすることによってDNAマイクロアレイ12の裏面側が露出される。また、シャッター37はねじりコイルばね40によって矢印bの方向に付勢されている。ストッパー38は、シャッター37の矢印bの方向への動作を規制するためのストッパーである。
【0082】
シャッターカバー41は、シャッター37の移動ガイドとしても機能とシャッター37が開いたときにシャッター37を収納可能な構成となっている。さらに検査者から見える部位に使用可否表示窓39が設けてある。使用可否表示窓39は、シャッター37が図10中矢印aの方向にある一定量以上スライドしたときに見えなくなる位置に配置されている。
【0083】
図12のようにシャッター37を矢印aの方向に引き、DNAマイクロアレイ12がセットできる状態にしてDNAマイクロアレイ12を生化学反応カートリッジに装着した後、ストッパー42を矢印cとは逆の方向に押しこみシャッター42をストッパー38に突き当たるまで押し込むことで速やかに開口部が閉じられる。その後シャッター42は、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前まで閉じられていることが好ましく、プローブによる検体中の標的DNAの検出を行なう直前にシャッター37がaの方向にスライドすることによってDNAマイクロアレイ12の裏面側が露出される。
【0084】
シャッター37は、DNAマイクロアレイ12を検査者が誤って手で触れたり、大気中の塵埃がDNAマイクロアレイ12に付着したりすることによって後工程のプローブによる検体中の標的DNAの検出の精度が悪くなってしまうことを防止している。
【0085】
図12は、生化学反応カートリッジにDNAマイクロアレイをセットし、シャッター37を閉じた後、シャッター37に対して図12中矢印aの方向に外力が加えられて移動した状態を表わしている。生化学反応カートリッジ1の筐体と一体または別体に形成されたバネ性を持つストッパー42は、矢印cの方向と逆方向にもともとチャージされており、シャッター37が矢印aの方向に一定量以上移動し、ストッパー42から離れると同時に矢印cの方向に解放され、シャッター37が戻るのを防止する役割を担っている。
【0086】
シャッター37が、DNAマイクロアレイ12の裏面が大気に触れてしまう位置まで動くとストパー42が開放される位置にストパー42を配置しておくことが好ましい。
【0087】
図12のように、シャッター37が、DNAマイクロアレイ12の裏面が大気に触れる位置まで移動すると、大気中の塵埃がDNAマイクロアレイ12に付着する、あるいは検査者によって触れられてしまう場合があり、正確なプローブによる検体中の標的DNAの検出の妨げとなってしまう場合がある。一度シャッター37が、DNAマイクロアレイ12の裏面が大気に触れる位置まで移動した場合、この生化学反応カートリッジを使用することは好ましくない。
【0088】
図13は、ストッパー42が、開放された状態でのシャッター37の状態を示す生化学反応カートリッジ1の底面図で、図14は、図13中のB−B断面を示す図で有る。
【0089】
ストッパー42は、解放されるとシャッター37の移動経路にはみだす位置に突出するので、シャッター37が元の位置に戻ることができないようになっている。シャッター37はストッパー42の位置までしか戻ることができず、この状態で使用可否表示窓39が見えない位置に形成されている。
【0090】
このために、使用可否表示窓39が見えない生化学反応カートリッジ1は使用不可であることを示している。使用可否表示窓39が見える生化学反応カートリッジ1は、シャッター37が開いたことがないので、DNAマイクロアレイ12は、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前まで大気に曝されていないことが保障される。
【0091】
この構成の生化学反応カートリッジ1のシャッター37は、生化学反応カートリッジ1をプローブ検出部33に移動する際に装置本体側に設けられた図示しない突き当て部材によって開かれる。
【0092】
シャッター37がプローブ検出部33に移動する際に開かれるので、DNAマイクロアレイ12は、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前まで大気にさらされることがない。すなわち、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前までDNAマイクロアレイ12は非常にクリーンな状態を保っていることになる。
【0093】
上記では、使用可否窓39は、シャッターが、プローブ検出部33が大気にさらされる位置まで移動すると見えなくなるように構成されているが、シャッターが、プローブ検出部33が大気にさらされる位置まで移動すると見えるようにすることができることは言うまでもない。
【0094】
尚、上述のように異なった生化学処理装置で生化学反応と検出とを行う場合、生化学反応時に解除したシャッターで再度検出部を覆う必要がある。この場合、図示しないが、生化学処理装置のストッパー42に対向する位置にストッパーを押し上げる押し棒のような機構を設けておき、シャッター37で検出部12を覆う際に、ストッパー42をこの押し棒で押し上げ、シャッター37を元の位置に移動させることで簡単に実現することができる。この場合、検出部は外界に曝されはするが、生化学処理装置が設置された部屋は、塵埃の管理が行なわれているので検出部が汚染されることはない。更に、シャッターも人手を介さずに移動させられるので、人的な汚染が検出部に付着することはない。
【0095】
以上説明したように本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジのハンドリングの際に当該カートリッジのプローブによる検体中の標的DNAの検出に必要な部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれや、当該部位が大気にさらされるおそれが著しく減少し、当該部位が手からの汚れや大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなった。また特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。以上より正確にプローブによる検体中の標的DNAの検出をすることができるようになった。また仮にシャッターが一度開いてしまい、プローブによる検体中の標的DNAの検出の信頼性が落ちてしまう恐れがあるカートリッジについては、使用不可であることを操作者に認知させるようにすることによって、そのカートリッジを使用して測定することを未然に防ぐことができるようになった。
<実施例3>
本発明の実施例3を、図面を用いて詳細に説明する。
【0096】
図15は、生化学反応カートリッジ1の全体斜視図、図16は、図15のD方向から見た裏面を示す図である。シャッター37は、図16中の矢印a、bの方向へスライド可能なコの字形状をしている。このような構成をとることで、検体入口2とDNAマイクロアレイ12の裏面側開口部とは、一方が開の状態の時に他方が閉の状態となる構成である。
【0097】
尚、詳細な説明は省略するが、実施例2と同様に、シャッター37を開けた状態で生化学反応カートリッジにDNAマイクロアレイをセットし、その後シャッター37を閉じる。
【0098】
図15、16は検体入口2が開口し、DNAマイクロアレイ12の裏面側開口部が閉じた状態すなわち未使用の状態を表わしている。
【0099】
本実施例は、上述の実施例2に対して、ストッパー38、使用可否表示窓39がなく、シャッターカバー49が追加され、シャッター37、シャッターカバー41の形状が変わったことである。
【0100】
図17、18は、誤ってシャッター37を矢印aの方向にスライドさせ、裏面側開口部の一部が外気に露出させてしまった状態の図である。シャッター37が、裏面側開口部の一部が外気に露出させる位置まで移動すると、チャージされていたストッパー42が飛び出し、シャッター37は、ストッパー42に引っ掛かり、もとの位置には戻れない。シャッター37は、ねじりコイルばね40によって矢印bの方向に付勢されている。この状態では、図17に示すように、検体入口2はシャッター37によって塞がれた状態になっている。
【0101】
上記構成によって、装置本体にセットする前にシャッター37が開くことなく扱われた生化学反応カートリッジ1は装置本体に設置後のキャリッジ31がプローブ検出部33に移動する動作と装置本体に設けられた図示しない装置本体側に設けられたシャッター37に対する突き当て部材によって、初めてシャッター37が開き、DNAマイクロアレイ12が大気にさらされることになる。すなわち、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前までDNAマイクロアレイ12は非常にクリーンな状態を保っていることになる。
【0102】
図19、20は、プローブによる検体中の標的DNAの検出時の生化学反応カートリッジ1を示す図である。装置本体に設けられた図示しない突き当て部材とキャリッジ31の動作によってシャッター37が開き、そこで初めてDNAマイクロアレイ12が外気にさらされる。
【0103】
尚、キャリッジ31が検出部まで移動後、突き当て部材を突き当てることでシャッター37を開くこともできることは言うまでもない。
【0104】
以上説明したように本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジのハンドリングの際に当該カートリッジのプローブによる検体中の標的DNAの検出に必要な部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれや、当該部位が大気にさらされるおそれが著しく減少し、当該部位が手からの汚れや大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなった。また特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。以上より正確にプローブによる検体中の標的DNAの検出をすることができるようになった。また仮にシャッターが一度開いてしまい、プローブによる検体中の標的DNAの検出の信頼性が落ちてしまう恐れがあるカートリッジについては、検体入口2をシャッター37によって塞ぐことにして強制的に使用不可の状態にすることによって、そのカートリッジを使用して測定することを未然に防ぐことができるようになった。
<第4の実施例>
実施例4を、図面を用いて詳細に説明する。
【0105】
図21は本実施例におけるカートリッジ1の横断面の一部を表わした図である。
【0106】
カートリッジ1内にその一端50aを固定されたばね蝶番50の他端50bは、図21中の矢印dの方向にシャッター37によってチャージされている。
【0107】
本実施例は、使用可否表示窓39、ストッパー42がなく、ばね蝶番50が追加された点が実施例2と異なっている。
【0108】
尚、詳細な説明は省略するが、本実施例でも実施例2と同様に、シャッター37を開けた状態で生化学反応カートリッジにDNAマイクロアレイをセットし、ばね蝶番50をシャッター37が移動できる位置まで押し下げてからシャッター37を閉じる。
【0109】
誤ってシャッター37を矢印aの方向にスライドさせ、DNAマイクロアレイ12の裏面開口部の一部が外気に露出してしまった場合、チャージされていたばね蝶番の一端50bがdの方向と逆向きに飛び出し、ばね蝶番50がキャリッジ31に生化学反応カートリッジ1をセットする際の障害物となり、生化学反応カートリッジ1をキャリッジ31にセットできなくなる(図22参照)。
【0110】
ばね蝶番50の開脚の角度は自然状態で180度となっており、そのときのばね蝶番50と生化学反応カートリッジ1とのキャリッジ31に対する取り付けに対する取り付け方向(図22中のeの方向)はやや角度を持たせてある(図22中α度)。それによってばね蝶番50がキャリッジ31からの外力を受けて再びチャージされることはない。この結果、生化学反応カートリッジ1がキャリッジ31にセットされることはない。
【0111】
上記構成をとることで、装置本体にセットする前にシャッター37が開いた履歴がない生化学反応カートリッジ1のみがキャリッジ31にセットできる。生化学反応カートリッジ1のシャッター37は、装置本体に設置後、キャリッジ31がプローブ検出部33に移動する際に、装置本体に設けられた図示しない装置本体側に設けられた突き当て部材によって、シャッター37が開かれる。DNAマイクロアレイ12は、シャッター37が開かれるまで大気にさらされることがない。このために、プローブによる検体中の標的DNAの検出の直前までDNAマイクロアレイ12は非常にクリーンな状態を保っていることになる。
【0112】
以上説明したように本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジのハンドリングの際に当該カートリッジのプローブによる検体中の標的DNAの検出に必要な部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれや、当該部位が大気にさらされるおそれが著しく減少し、当該部位が手からの汚れや大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなった。また特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。以上より正確にプローブによる検体中の標的DNAの検出をすることができるようになった。また仮にシャッターが一度開いてしまい、プローブによる検体中の標的DNAの検出の信頼性が落ちてしまう恐れがあるカートリッジについては、ばね蝶番によってキャリッジにセットできないようにすることで強制的に使用不可の状態にすることによって、そのカートリッジを使用して測定することを未然に防ぐことができるようになった。
<実施例5>
本発明の実施例5を、図面を用いて詳細に説明する。
【0113】
図23は、生化学反応カートリッジ1を底面から見た図で、図24は、図23のC−Cで切った生化学反応カートリッジ1の断面とキャリッジ31の断面とを表わした図であり、生化学反応カートリッジ1がセットされる前の状態を表わしている。
【0114】
本実施例は、使用可否表示窓39、ストッパー42がなく、ロックピン44、ロック穴45、ロックレバー46、ロックばね47が追加された点が実施例2と異なっている。
【0115】
ロックピン44は、図24中の矢印e、e'の方向に移動可能であり、圧縮ばねであるロックばね47によって矢印e方向に付勢されている。
【0116】
尚、詳細な説明は省略するが、実施例2と同様に、シャッター37を開けた状態で生化学反応カートリッジにDNAマイクロアレイをセットし、その後シャッター37を閉じることは言うまでもない。
【0117】
上記の構成では、生化学反応カートリッジ1をキャリッジ31にセットする前にはロックピン44はシャッター37に設けられたロック穴45に嵌合した状態となっている。ロックピン44は検査者の手で動かすことはできないように生化学反応カートリッジ1に内蔵されているため、生化学反応カートリッジ1を単体で扱っているときに、シャッター37が開くことはない。
【0118】
図25は生化学反応カートリッジ1がキャリッジ31にセットされた状態を表わしている。生化学反応カートリッジ1の筐体にはロックピン44近傍に図示しないスリットが切ってあり、生化学反応カートリッジ1をキャリッジ31にセットすると同時に、キャリッジ31に設けられたロックレバー46がそのスリットに入り込み、ロックピン44を図25中矢印e'方向に押し上げることによって、シャッター37のロックが解除される。
【0119】
以上説明したように本発明によれば、検査者が生化学反応カートリッジのハンドリングの際に当該カートリッジのプローブによる検体中の標的DNAの検出に必要な部位やその他カートリッジの機能上必要な部位を誤って触れてしまうおそれと、プローブによる検体中の標的DNAの検出前に当該部位が大気にさらされるおそれが皆無となった。それにより当該部位が手からの汚れによって汚染されることが皆無となり、また、大気中の塵埃等によって汚染されることが殆ど無くなった。さらに特に蛍光検出型の生化学反応カートリッジにおいてはDNAマイクロアレイ部に光があたってしまうことによる蛍光色素の劣化の進行を防止することができるようになった。以上より正確にプローブによる検体中の標的DNAの検出をすることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】生化学反応カートリッジの斜視図
【図2】生化学反応カートリッジの平面断面図
【図3】生化学反応カートリッジにシールが貼付されている図
【図4】生化学反応カートリッジ内での溶液の移動や種々の反応を制御する処理装置のブロック構成図
【図5】処理手順のフローチャート図
【図6】一部のチャンバの縦断面図
【図7】他の一部のチャンバの縦断面図
【図8】電流検出型DNAチップを使った生化学反応カートリッジにシールを貼付した図(表面)
【図9】電流検出型DNAチップを使った生化学反応カートリッジにシールを貼付した図(裏面)
【図10】実施例2における生化学反応カートリッジ底面を表わした図
【図11】実施例2における生化学反応カートリッジ断面図
【図12】実施例2における生化学反応カートリッジ断面図
【図13】実施例2における生化学反応カートリッジを表わした図
【図14】実施例2における生化学反応カートリッジ断面図
【図15】実施例3における生化学反応カートリッジ表わした図
【図16】実施例3における生化学反応カートリッジの底面を表わした図
【図17】実施例3における生化学反応カートリッジを表わした図
【図18】実施例3における生化学反応カートリッジの底面を表わした図
【図19】実施例3における生化学反応カートリッジを表わした図
【図20】実施例3における生化学反応カートリッジの底面を表わした図
【図21】実施例4における生化学反応カートリッジの断面図
【図22】実施例4における生化学反応カートリッジの断面図
【図23】実施例5における生化学反応カートリッジ底面を表わした図
【図24】実施例5における生化学反応カートリッジ断面とキャリッジ断面を表わした図
【図25】実施例5における生化学反応カートリッジ断面とキャリッジ断面を表わした図
【符号の説明】
【0121】
1 生化学反応カートリッジ
2 検体入口
3 ノズル入口
4 空気流路
5、7〜9 チャンバ
6、10、11 流路
12 DNAマイクロアレイ
13 テーブル
17 制御部
18、19 電動シリンジポンプ
20、21 ポンプノズル
22、23 ポンプブロック
24 入力部
31 キャリッジ
32 キャリッジレール
33 プローブ検出部
34 インレット
35 アウトレット
36 接点電極
37 シャッター
38 ストッパー
39 使用可否表示窓
40 ねじりコイルばね
41 シャッターカバー
42 ストッパー
44 ロックピン
45 ロック穴
46 ロックレバー
47 ロックばね
49 シャッターカバー
50 ばね蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部とを有する生化学反応カートリッジであって、
少なくとも前記反応情報取り出し部を露出可能に覆う手段を設けたことを特徴とする生化学反応カートリッジ。
【請求項2】
前記検出反応が、検体中の標的物質と特異的に反応するプローブを基板上に固定したプローブ担体と検体との反応によって行なわれ、前記検出反応の有無に関する情報が、前記標的物質と前記プローブとの結合に基づく光学的変化および電気的変化の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項3】
前記覆う手段がシールであることを特徴とする請求項1に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項4】
前記覆う手段がシャッターであることを特徴とする請求項1に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項5】
前記シャッターが開く動作を受けて作動する誤測定防止手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項6】
前記誤測定防止手段が、操作者に生化学反応カートリッジが使用不可能であることを認知させる手段であることを特徴とする請求項5に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項7】
前記誤測定防止手段が、検体を生化学反応カートリッジの検体注入口に注入することを禁止する検体注入禁止手段であることを特徴とする請求項5に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項8】
前記誤測定防止手段が、生化学反応カートリッジが生化学処理装置にセットされることを禁止するカートリッジセット禁止手段であることを特徴とする請求項5に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項9】
前記シャッターはロック機構によって動作を制限され、当該生化学反応カートリッジを生化学処理装置にセットすると同時にまたはセットした後に当該ロックが解除されることを特徴とする請求項5に記載の生化学反応カートリッジ。
【請求項10】
生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、前記生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、前記生化学処理された前記生化学反応カートリッジを用いて前記検体を検出するステージと、該載置手段に載置された前記生化学反応カートリッジを前記生化学処理するステージおよび前記検出するステージに移動させる移動手段とを有する処理手段とを有する生化学処理装置であって、
前記検出手段に移動された前記生化学反応カートリッジの検出反応情報取り出し部を外界と遮蔽する遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置。
【請求項11】
生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、前記生化学反応カートリッジ内の検体と溶液とを用いて検体を生化学処理するステージあるいは前記生化学処理された前記生化学反応カートリッジを用いて前記検体を検出するステージのいずれかを有し、
該載置手段に載置された前記生化学反応カートリッジを前記生化学処理するステージあるいは前記検出するステージに移動させる移動手段とを有する処理手段とを有する生化学処理装置であって、
前記生化学処理するステージあるいは前記検出するステージに移動された前記生化学反応カートリッジの検出反応情報取り出し部を外界と遮蔽する遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置。
【請求項12】
少なくとも検体中の標的物質の検出反応を行なうための反応チャンバと、外界に露出した該検出反応の有無に関する情報を取り出すための検出反応取り出し部と前記検出反応情報取り出し部を外界から遮蔽する遮蔽手段と、検体を注入する注入口とを有する生化学反応カートリッジと、前記生化学反応カートリッジを載置する載置手段と、前記生化学反応カートリッジ内の前記検体と前記溶液とを用いて検体を生化学処理するステージと、前記生化学処理された前記生化学反応カートリッジを用いて検体を検出するステージと、該載置手段に載置された前記生化学反応カートリッジを前記生化学処理するステージおよび前記検出するステージに移動させる移動手段とを有する生化学処理装置と、前記生化学反応カートリッジの注入口を介して前記生化学反応カートリッジに検体を注入する手段とからなる生化学処理装置システムであって、
前記生化学処理装置は、前記載置手段に載置された前記生化学反応カートリッジの前記遮蔽手段を解除する解除手段を有することを特徴とする生化学処理装置システム。
【請求項13】
外部に露出する検出部が、開閉可能な覆いで覆われた生化学反応カートリッジを用いた検出方法であって、
前記生化学反応カートリッジに検出部となるDNAマイクロアレイを装着し、前記生化学反応カートリッジを密封する工程と、
その後、前記検出部が外界と接触することを防止する覆いを設ける工程と、
前記生化学反応カートリッジを生化学反応カートリッジ処理装置に載置する工程と、
その後、前記生化学反応カートリッジの覆いを除去する工程とを有することを特徴とする生化学反応カートリッジを用いた検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−132965(P2006−132965A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319221(P2004−319221)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】