生物活性水、生物活性水製造装置、生物活性化方法
【課題】高濃度の気体を長期に亘って水中に安定に保持することができ、動物、植物、微生物などの生物に対する活性作用が高い生物活性水を提供する。
【解決手段】生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在している。また、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化する。
【解決手段】生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在している。また、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体が高濃度で水に含有された生物活性水、及びその製造装置、並びに生物活性水を用いた生物活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業、水産養殖業、工場排水や閉鎖域の水を浄化する分野では、水の酸素濃度を上げるため水中での空気のばっ気、純酸素のばっ気が行われてきた。近年、直径数十ミクロンのマイクロバブルを供給し供給量を増やす工夫も行われている。
【0003】
例えば、特許文献1や2では、マイクロバブルを連続的に発生させて溶存酸素量を増加し、水耕栽培での植物の生長を促進している。また、特許文献3では、魚介類の飼育水にマイクロバブルを含ませて微生物の処理能力を向上し、アンモニア性窒素を効率的に除去している。また、特許文献4では、アンモニア性の窒素を含んだ排水にマイクロバブルを含ませて好気性微生物の処理効率を向上している。
【0004】
しかしながら、酸素等の気体の水への溶解濃度を向上させるマイクロバブル技術は、マイクロバブルは浮力が大きいために水からすぐに分離されてしまうので、気体の溶解度を向上させるのには非効率であった。また、マイクロバブル発生装置を停止すると水中の気体量が急激に低下し、飽和濃度以上でマイクロバブル水が生成しても数分で飽和濃度まで低下し飽和溶解濃度以上の濃度を維持することができなかった。
【0005】
マイクロバブル技術や従来の飽和水には、例えば、以下の課題が挙げられる。
(1)魚介類等の飼育水槽内の大量の飼育水をマイクロバブルで気体の飽和溶解濃度に上げるには、マイクロバブルが即座に水中から大気中に分離されるため非効率であり、またかなりの時間を要する。
(2)気体の濃度を維持させるためには、設備を連続稼働させなければいけないので、多大なランニングコストが必要である。
(3)酸素の飽和濃度水は動植物により酸素が消費されると、溶解濃度が低下し、水産養殖の場合、養殖水槽内では酸素濃度が不足する現象が発生し飼育が困難になる。魚介類の養殖では、酸素不足の領域ができて過密養殖が困難になり、植物栽培では、植物の根への酸素供給量のばらつきにより植物の生長にばらつきがでる。また、酸素が行き渡らないところができ嫌気性雰囲気下による育成障害や病気が発生する。
(4)硝化菌によるアンモニア窒素排水処理は、酸素が急激に消費されるためにすぐに酸素欠乏状態になり、マイクロバブルで酸素補給しても非効率であるため、酸素不足を解消するまでには至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−236762号公報
【特許文献2】特開2002−142582号公報
【特許文献3】特開2007−325558号公報
【特許文献4】特開2008−006415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高濃度の気体を長期に亘って水中に安定に保持することができ、動物、植物、微生物などの生物に対する活性作用が高い生物活性水、生物活性水製造装置、及び生物活性化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする生物活性水である。
【0009】
請求項2に係る発明は、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の生物活性水である。
【0010】
請求項3に係る発明は、気体が酸素及びオゾンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0011】
請求項4に係る発明は、気体が窒素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0012】
請求項5に係る発明は、気体が炭酸ガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置Aである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合部3で生成した気液混合液を加圧状態を維持して貯留する圧力保持容器30と、気液混合液から分離された気体を排出することにより気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構31と、圧力保持容器30に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構32とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置Bである。
【0015】
請求項8に係る発明は、気液混合部をベンチュリ管12により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0016】
請求項9に係る発明は、気液混合部を電気分解手段13により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0017】
請求項10に係る発明は、水を含有する液体を冷却する冷却部を気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0018】
請求項11に係る発明は、水を含有する液体を浄化する浄化フィルターを気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0019】
請求項12に係る発明は、水を含有する液体を脱気する脱気部を気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0020】
請求項13に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化することを特徴とする生物活性化方法である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在することにより、気体を高濃度で長期に亘って水中に安定に保持することができ、この高濃度の気体を生物の活性化に利用することができるので、生物活性化作用の高い水を得ることができるものである。すなわち、気体がナノサイズの気泡(ナノバブル)となることにより消滅や合体することなく水中に長期間安定に存在しており、飽和溶解濃度以上の気体が存在する、いわゆる過飽和状態を長期間維持することができる。そして、動植物や微生物などの生物が生物活性水中の気体を消費してもナノバブルが崩壊して気体が水に溶解して飽和溶解濃度に戻すことができるので、飽和溶解濃度を長期間維持して生物に気体を作用させることができ、長期に亘って生物を活性化させることができるものである。
【0022】
また、気泡界面における水素結合の距離が短くなって気泡の周囲で強固な水素結合を形成した水分子が気体をナノサイズの気泡として取り囲み、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないと共に水からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、ナノサイズの気泡を水中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。すなわち、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に強固な結合を形成するので、気泡界面における水素結合が強固になって気泡を安定化させることができるものである。また、水素結合の強固な殻で包み込まれ安定に水中に保持された気泡は内圧が高くなっており、外力が与えられると気泡が崩壊して気体を発生させて水に溶解したり水から放出したりする。このように水素結合の強固な界面構造によって水中に大量に保持された気体を生物の活性化に利用することができ、生物活性作用の高い水を得ることができるものである。そして、薬品等を使用せずに、資源が豊富であり人体に安全である水を使用して生物を活性化することができるので、環境に優しく安全な生物活性水を安価に得て、生物の活性化に利用することができるものである。
【0023】
請求項2の発明によれば、気泡を形成している気体の圧力が高圧になることにより、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、高濃度の気体を気泡として水中に閉じ込めることができるものである。また、内部圧が高いことにより、静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、気泡を含有する生物活性水に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡界面の殻が崩壊して気体が発生し、気体が溶解したり分離したりするため、この気体を利用して生物を活性化させることができるものである。
【0024】
請求項3の発明によれば、生物活性作用の高い気体である酸素又はオゾンを効率よく利用することができ、生物により溶解水中の気体が消費されてもナノサイズの気泡から酸素又はオゾンが供給されて補充されるので、長期間飽和溶解濃度を維持して生物を活性化することができるものである。そして、気体として酸素を用いた場合は生物に酸素を直接与えて活性化することができ、オゾンを用いた場合はオゾンの殺菌消毒作用を利用して有害な菌の増殖を抑え、その結果、生物を活性化することができるものである。
【0025】
請求項4の発明によれば、窒素の作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、窒素を供給すれば植物の成長を促進したり嫌気性微生物を活性化したりすることができるものであり、気体として窒素を用いた上記のような生物活性水によれば、長期間に亘って高濃度の窒素が水中に保持され、この保持された窒素を植物や微生物などに供給し続けて長期間活性化することができるものである。
【0026】
請求項5の発明によれば、炭酸ガスの作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、気体として炭酸ガスを用いた上記のような生物活性水によれば、特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物に二酸化炭素を供給することができ、また、嫌気性生物に二酸化炭素を与えて活性化することができるものであり、長期間に亘って高濃度の炭酸ガスが水中に保持され、この保持された炭酸ガスを植物や微生物などに供給し続けて長期間活性化することができるものである。
【0027】
請求項6の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した生物活性水を安定に得ることができ、生物活性水を効率よく簡単に製造することができるものである。そして、装置を稼動させて連続的に生物活性水を得ることができ、この生物活性水を生物に連続して供給することが可能になるものである。
【0028】
請求項7の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した生物活性水を安定に得ることができ、生物活性水を効率よく簡単に製造することができるものである。そして、装置を稼動させてバッチ式に生物活性水を得ることができ、大量の生物活性水を一度に得ることが可能になるものである。
【0029】
請求項8の発明によれば、ベンチュリ管を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0030】
請求項9の発明によれば、電気分解手段を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0031】
請求項10の発明によれば、冷却状態で気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0032】
請求項11の発明によれば、液体が浄化されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0033】
請求項12の発明によれば、液体が脱気されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0034】
請求項13の発明によれば、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動といった外力を制御して気液混合液中の気泡から気体を発生させて、生体活性を高めることができ、得たいタイミングで生物活性水の活性作用を高めて利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の生物活性水を利用して動物(魚介類)を活性化させる水産養殖の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の生物活性水を利用して植物を活性化させる水耕栽培の一例を示す概略図である。
【図3】(a)は、本発明の生物活性水を利用して微生物を活性化させる好気水浄化設備の一例を示す概略図であり、(b)は、従来の好気水浄化設備の一例である。
【図4】本発明の生物活性水を利用して微生物を活性化させる水浄化設備の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の生物活性水製造装置の実施の形態の一例(生物活性水製造装置A)を示す概略図である。
【図6】生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図9】(a)〜(d)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図10】生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図11】本発明の生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図12】本発明の生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図13】本発明の生物活性水製造装置の実施の形態の他の一例(生物活性水製造装置B)を示す概略図である。
【図14】生物活性水製造装置Bの一部を示す概略図である。
【図15】本発明の生物活性水製造装置Bの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、(a)及び(b)は生物活性水製造装置Bの一部の概略図である。
【図16】生物活性水(気液混合液)における気泡の気液界面の概念説明図である。
【図17】生物活性水(気液混合液)と窒素飽和水との赤外吸収スペクトルの差分を示すグラフである。
【図18】生物活性水(気液混合液)中に含まれる気体容量を示すグラフである。
【図19】走査型電子顕微鏡(SEM)による生物活性水(気液混合液)の写真である。
【図20】生物活性水(気液混合液)の安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0037】
本発明の生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって、この気体が飽和溶解濃度で溶解した溶解水に存在しているものである。すなわち、本発明の生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって水に混合された気液混合液として構成されている。
【0038】
一般に、気体が水に溶解する現象は知られているが、その飽和溶解濃度は二酸化炭素が溶解する場合などを除いて多くない。そして、多量の気体を水の中に存在させることはできず、気体が水中に存在する上限の量は飽和溶解濃度である。しかしながら、本発明の生物活性水においては、気体が水に飽和溶解濃度で溶解し、さらに飽和溶解濃度を超えた気体はナノサイズの気泡となって水中に安定に存在して気液混合液となっている。つまり、気体は飽和溶解濃度で水に溶解すると共にナノサイズの気泡となって存在している。したがって、飽和溶解濃度以上の気体が水中に存在しており、長期に亘って大量の気体を水中に安定に保持することができ、生物活性作用の高い水を得ることができるものである。すなわち、気体はナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく水中に安定に存在しており、この安定な微細気泡を用いて生物を活性化させることができるのである。
【0039】
そして、通常、水中に存在する気泡は液体である水からの圧力により崩壊して水に溶解してしまうが、上記のような気液混合液では水には飽和溶解濃度で気体が溶解しているので、気体がそれ以上溶解することができず、気泡が崩壊して気泡中の気体が溶解することがない。崩壊しないナノサイズの気泡は液体からの圧力に応じるようにその内圧が高くなっており、内圧が高くなることで液体圧力との均衡が保たれ、ナノサイズの大きさを維持したまま気泡が安定に水中に存在する。また、ナノサイズの気泡は極めて微細なサイズになっているため浮力を受けることがなく、気泡が上昇して水から外部に分離することがない。よって、ナノサイズの気泡が長期に亘って安定に水中に存在するのである。そして、このナノサイズの気泡に外力を与えて水から気体を発生させ、この気体を水に溶解したり分離したりすることができ、大量の気体を生物の活性化に利用することができるものである。
【0040】
生物活性水は、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっている。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。水分子においては、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成する。そして、生物活性水に存在するナノサイズの気泡の周囲、すなわち気泡との界面に存在する水分子においては、水分子の水素結合の距離が、水分子が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっているのである。このように、生物活性水が常温常圧の条件で存在する場合において、気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した水分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、気泡を水中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、気泡が安定に存在した生物活性水を長期間に亘って利用可能となる。また、ナノオーダーサイズの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し水に安定して存在させることが可能となるものである。
【0041】
生物活性水である気液混合液は水又は水を主成分とする液体を用いて得られるものである。ここで、気液混合液を構成する液体には水が含まれていればよく、液体が水のみからなっていてもよいし、水が他の成分を溶解や分散させて水溶液や懸濁液の状態になっていてもよい。なお、水としては純度の高い水に限られることはなく、水道水、井戸水、地下水、河川や池の水などをはじめ、生物に与えることが可能なあらゆる水を使用することができる。このように、資源が豊富な水を用いて生物活性水を容易に得ることができるものである。また、生物活性水は気体を用いて活性化することができるものであるため薬品等を用いることなく生物を活性化させることができる。したがって、薬品等を使用せずに環境に優しく生物を活性化することができるものである。もちろん生物活性水に薬品を添加してもよく、その場合は薬品の使用量を低減することができる。また、水は入手が容易であり、安価であるので低コストで簡単に生物活性水を生成することができる。さらに、水は人体に安全であるので安全性の高い生物活性水を得ることができるものである。
【0042】
生物活性水に含まれる気泡はナノサイズの気泡であり、具体的には1000nm以下の気泡(いわゆるナノバブル)である。気泡がナノサイズとなり微細なものになることで強固な気泡界面の構造を形成することができ、高濃度の気体を液体中に保持することができるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡には浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。気泡のサイズがナノサイズよりも大きくなると気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された水は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された水は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。よって、気液混合液の判別はSEMや密度測定などによって行うこととなる。なお、ナノサイズの気泡の下限は1nmである。
【0043】
気泡との界面における水分子の水素結合の距離としては、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下となるように生物活性水を生成することが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。気液混合液中の気泡界面における水素結合の距離は、後述するように、気液混合液の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
【0044】
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある水分子は、通常、氷のように固体やハイドレート結晶構造になるものであるが、上記のような気液混合液においては、気泡界面において局所的に上記のような距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により水分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で水が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在して生物活性水を利用しやすくするものである。
【0045】
生物活性水にあっては、気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧が、0.12MPa以上になることが好ましく、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
【0046】
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができ、気体を高濃度で水中に保持することができる。一方、一旦、生物活性水に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が崩壊して大量の気体が水に溶解したり水から放散したりするため、この発生した大量の気体を用いて生物の活性に利用することができるものである。生物活性水を構成する気液混合液中の気泡の内圧は、後述するように気液混合液中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
【0047】
気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、オゾン、酸素、窒素、炭酸ガス(二酸化炭素)、空気、アルゴン、水素、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタン、塩素、二酸化塩素などの気体を単一で又は混合して用いることができる。
【0048】
気体として好ましいものの一つは酸素である。その場合、生物活性作用の高い気体である酸素を上記のような生物活性水によって効率よく利用することができる。また、生物により溶存水中の酸素が消費されてもナノサイズの気泡から酸素が供給されて補充されるので、長期間飽和溶解濃度を維持して生物を活性化することができる。
【0049】
飽和溶解濃度で酸素が水に溶け込んだ酸素飽和水は多量の酸素を与えて生物を活性化することができるが、通常の酸素飽和水では動植物や微生物などの生物は酸素を消費するため飽和溶解濃度を維持することができなくなる。しかしながら、酸素を気体として用いた上記のような生物活性水によれば、生物が水に溶存している酸素を消費しても、ナノサイズの気泡が次々に崩壊して気体が水に溶け込んで酸素を補充して飽和溶解状態にすることができるので、酸素飽和溶解濃度を長期間に亘って維持することができ、生物活性化を長期間に亘り持続する生物活性水を得ることができるものである。
【0050】
また、気体としてオゾンを用いることも好ましい。その場合、オゾンの殺菌消毒作用を利用して有害な菌の増殖を抑え、その結果、生物を活性化ことができる。すなわち、オゾンが水に溶解したオゾン水は殺菌水・除菌水として一般に知られているが、オゾンは水中では不安定であるため、飽和溶解濃度のオゾン水を生成したとしても、オゾンが消滅・分解して飽和溶解濃度を維持することができない。しかしながら、オゾンを気体として用いた上記のような生物活性水によれば、オゾンが消滅・分解してもナノサイズの気泡が次々に崩壊して気体が水に溶け込んでオゾンを補充して飽和溶解状態にすることができるので、オゾン飽和溶解濃度を長期間に亘って維持することができ、生物活性化を長期間に亘り持続する生物活性水を得ることができるものである。そして、この殺菌効果を利用し、生物、特に動植物の殺菌消毒を行うことができるものである。
【0051】
また、生物活性水に用いる酸素としては純度の高い気体酸素に限られるものではなく、酸素を含む気体であってもよい。そのような酸素を含む気体としては空気を用いることが好ましい。空気には酸素が含まれており、この空気中の酸素を生物に作用させて活性化させることができる。そして、空気を用いれば、ボンベなどの特殊な機器を用いることなく生物活性水を得ることができるものであり、簡単で安価に生物活性の高い生物活性水を得ることができるものである。
【0052】
また、気体として窒素を用いることも好ましい。その場合、窒素の作用により効率よく生物を活性化することができる。窒素は植物の肥料の三要素の一つであり、窒素を供給することにより植物が活性化されて成長が促進する。そこで、気体として窒素を用いた上記のような生物活性水を用いれば、長期間に亘って高濃度の窒素が水中に保持され、この保持された窒素を植物に供給し続けて長期間活性化することができるものである。また、嫌気性微生物は酸素条件を嫌い窒素条件を好むものであり窒素を供給すれば嫌気性微生物が精力的に働くことになる。そこで、生物活性水を用いれば、窒素を長期に供給し続けて微生物を活性化することができるものである。
【0053】
また、気体として炭酸ガス(二酸化炭素)を用いることも好ましい。その場合、炭酸ガスの作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、気体として炭酸ガスを用いた上記のような生物活性水によれば、特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物に二酸化炭素を供給することができる。また、嫌気性生物に二酸化炭素を与えれば、酸素を嫌い二酸化炭素を好む微生物を精力的に働かせるようにすることができる。このように、長期間に亘って高濃度の炭酸ガスが水中に保持され、この保持された炭酸ガスを植物や微生物などに供給し続けて長期間生物を活性化することができるものである。
【0054】
上記のような生物活性水は、液体として純水を用いた場合、体積1cm3中に存在する気泡界面の面積は1.2m2程度となり、また、気泡の界面におけるゼータ電位がマイナスとなる。
【0055】
生物活性水は、そのまま生物に供給してもよいし、外力を与えて気体を発生し発泡させて発泡水のような状態にして生物に供給してもよい。また、生物活性水を他の成分と混合するなどして用いてもよい。例えば、通常の水(ナノサイズの気泡が含まれていない水)と混合して用いることもできるし、肥料成分などを添加して生物活性肥料を調製したり、医薬成分などを添加して魚などの動物を治療する生物活性薬剤を調整したりすることもできる。
【0056】
本発明の生物活性化方法は、上記のような生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動を制御して生物活性水に外力を与えて水中の気泡を崩壊させて、生物活性水中の気体を利用して生物を活性化するものである。上述のように、生物活性水には多量の気体が気泡となって水中に存在しており、この気泡は外力により崩壊したり合体したりする。そこで、生物活性水に外力を与えて発生する気体を利用するものである。
【0057】
気泡を崩壊させる外力としては、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線及び振動からなる群から選ばれる少なくとも1種のものを制御して用いることが好ましい。それにより効率よく気体を発生させて気体を利用したり、気体を水から分離したりすることができるものである。
【0058】
圧力変化により外力を与える場合、加圧装置又は減圧装置に生物活性水を入れることにより生物活性水にかかる圧力を常圧よりも高くしたり低くしたりして衝撃を与えることができる。すなわち、圧力が変化された生物活性水(気液混合液)は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また気体が水から放出するのである。圧力変化としては、液体の圧力を+0.01MPa以上の圧力にすること、又は−0.01MPa以下の圧力にすること、つまり液体圧力と気泡内圧との圧力差を絶対値で0.01以上にすることが好ましい。圧力変化がこの条件を満たさないと気体の発生量が少なくなるおそれがある。また、これらの圧力を交互に変動させたりして外力を与えてもよい。
【0059】
温度変化により外力を与える場合、生物活性水を加温してもよいし冷却してもよい。また、加温と冷却を交互に繰り返し行って外力を与えてもよい。
【0060】
加温により外力を与える場合、ヒーターなどの加温手段をオンにして常温常圧で製造された生物活性水、すなわち気液混合液の温度を上昇させる。温度が上昇された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また気体が水から放出するものである。加温する温度としては、気体発生の速度に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、生物活性水を10〜30℃程度以上に上昇するように加温し、徐々に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、生物活性水を1〜10℃程度以上に上昇するように加温する。
【0061】
また、冷却により外力を与える場合、冷却熱交換器をオンにして常温常圧で製造された生物活性水の温度を低下させる。温度が低下された気液混合液は、冷却により気体の飽和溶解濃度が上がり気泡が崩壊して水に気体がより多く溶解するようになる。冷却する温度としては、例えば、生物活性水の温度が1〜30℃程度で温度が低下するように冷却する。
【0062】
また、衝撃波により外力を与えることもできる。衝撃波としては、電波、マイクロ波などを用いることができ、例えば衝撃波としてマイクロ波を用いる場合、マイクロ波発生装置を用い、マイクロ波発振子から生物活性水にマイクロ波の振動を与えることができる。このとき、振動波を与えられた生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。マイクロ波の周波数としては、周波数915KHz、2.4〜2.5GHz、5.7〜5.9GHzのいずれかであることが好ましい。周波数の範囲がこの範囲を外れると気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0063】
また、超音波により外力を与える場合、超音波発生装置を用い、超音波振動子から生物活性水に超音波振動が与えることができる。このとき、振動された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。超音波の周波数としては、周波数16KHz以上2.4GHz未満であることが好ましい。周波数の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0064】
また、赤外線により外力を与える場合、赤外線照射器を用い、赤外線照射器の照射口から生物活性水に赤外線を与えることができる。このとき、赤外線が照射された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。赤外線の波長としては、波長3〜1000μmであることが好ましい。波長の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0065】
また、撹拌により圧力を変化させてもよい。撹拌により外力を与える場合、撹拌装置を用い、生物活性水を撹拌装置に入れて撹拌させることができる。また、生物活性水を送りながら連続的に撹拌により外力を加えるようにしてもよい。このとき、振動された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。気体を液体から放出させたい場合の撹拌条件としては、液体が回転中心からの距離rに反比例する円周速度v=C(const)/rで回転してつくる渦運動である自由渦運動の撹拌の場合、圧力p=const−ρ÷2×C^2÷r^2および2×π×C=constの2式から圧力上昇値pが求められるが、渦運動している全域において絶対圧でpが-0.1MPa以下の領域があることが好ましい。また、撹拌条件としては、液体が回転中心からの距離rに比例する円周速度v=rω (ω:一定角速度)で回転してつくる渦運動である強制渦運動の撹拌の場合、圧力p=ρ÷2×ω^2×r^2+constの式から圧力上昇値pが求められるが、渦運動している全域において絶対圧でpが-0.1MPa以下の領域があることが好ましい。撹拌による外力がこれより強くても弱くても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。撹拌の場合、気液混合液に振動を与えることができる。
【0066】
このように、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動といった外力を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させることによって、気泡として存在している大量の気体をこれらの手段で瞬時に多量に水に溶解させたり、水から放出させたりすることができ、簡単に効率よく気体を発生させて生物の活性化に利用することができるものである。
【0067】
図1〜4は、本発明による生物活性水を利用した例である。各図における生物活性水製造装置Xには後述の生物活性水製造装置A又はBを用いることができる。そして、生物活性水製造装置Xから得た生物活性水BWを動物(魚Fs)や植物Plや微生物に供給するようにしている。
【0068】
図1は、生物活性水により魚介類を養殖する一例である。
【0069】
魚介類の養殖には、液体に養殖用の水(真水、海水、河川の水、地下水など)を用い、気体として酸素(又は空気)を用いた生物活性水BWを利用することができる。
【0070】
図示の形態では、魚Fsを養殖する水槽50(飼育水槽)の上流側の水流路52に、生物活性水製造装置Xから生物活性水が吐出される吐出部7を接続し、この上流の水流に注入して水槽50に生物活性水BWを供給するようにしている。それにより、通常の酸素濃度以上の酸素が生物活性水BWによって与えられて魚Fsの育成速度が向上する。特に、高密度養殖を行う場合、酸素不足を解消することができる。また、水温が高い条件での養殖においては酸素濃度が低下しやすいが、このような場合でも生物活性水BWを供給することで魚介類の飼育水の酸素濃度を高く維持することができる。そして生物活性水BW中の気体は長期間に亘って安定に保持され液体から分離しないので、長期に亘って水槽50内にある水の気体溶解濃度を高濃度に維持し、水槽50での酸素不足を防止することができる。
【0071】
一般的に、陸上での魚介類の養殖では、図1のような掛け流し養殖が行われている。掛け流し養殖とは、水槽50を陸上に載置し、水をポンプ51(掛け流し用ポンプ)で水槽50に供給し水槽50からオーバーフローさせて、養殖の水として必要な溶存酸素濃度を確保し、水の清浄度を保つ養殖方法である。オーバーフローされた水は放流路53から外部に放流される。図示のように、掛け流し養殖では、上流側の水流路52における水流に生物活性水BWを供給するものである。このとき、生物活性水BWは物理的衝撃や大きな温度変化で大きな気泡となり気体が水中から放散するため、比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。また、従来、掛け流し養殖では飼育水槽の酸素濃度を安定させるため大量の水を汲み上げ供給することを必要としていたが、生物活性水BWを利用した養殖方法によれば、少量の水で養殖を行うことができ、ポンプ等の動力費の低減が可能となる。
【0072】
魚介類の養殖はこれに限られず、同様に生物活性水を魚介類に供給することによって、海洋での生簀養殖や、魚介類の輸送などを行うことができる。例えば、海洋での生簀養殖においては、生簀に生物活性水を供給することにより、水温上昇と過密養殖における水の溶存酸素の低下を防止又は抑制することができる。また、魚類の活魚輸送では輸送車の水槽に酸素供給する必要があるが、生物活性水を供給することで少量の酸素または空気で高濃度の溶存酸素を維持することができる。そして、生物が酸素を消費しても酸素溶解度が飽和溶解濃度に維持されるので、生物活性作用を維持することが可能となる。
【0073】
また、気体として、酸素以外にオゾン、又は酸素とオゾンとの混合気体を使用することもできる。その場合、水槽中の水を殺菌消毒し、魚介類の飼育水槽で発生する魚病を抑制して魚介類を活性化することができる。
【0074】
また、気体として炭酸ガスを用いることもできる。養殖での魚類の魚病の検査においては、炭酸ガスを水に溶解させた液体(炭酸ガス水)が魚の麻酔として使われている。その際、炭酸ガス水は炭酸ガスボンベを用いて濃度管理を行って調製しており、炭酸ガス濃度の管理が行いにくいという問題がある。しかし、炭酸ガスを溶解させた生物活性水は長期にわたり安定であり、この生物活性水を定量で水槽に供給することにより魚類の麻酔を簡単に行うことができるものである。また、魚類の活魚輸送において、輸送車の水槽に炭酸ガスで生成した生物活性水を供給し、上記の麻酔効果を利用して魚を仮死状態で搬送することも可能である。
【0075】
図2は、生物活性水により植物を栽培する一例である。
【0076】
植物の栽培には、液体に栽培用の水(真水、海水、河川の水、地下水など)を用い、気体として酸素(又は空気)、窒素、又は炭酸ガスを用いた生物活性水BWを利用することができる。
【0077】
図示の形態では、植物Plの養分を溶かした水を植物Plを固定した栽培槽60に循環させ育成する水耕栽培の一例が示されている。溶液タンク64に貯留された水(養分を含んだ水)は、循環ポンプ61により水流路62を通り栽培槽60に送られる。その際、水流路62に吐出部7を介して接続された生物活性水製造装置Xから生物活性水BWが水に注入される。栽培槽60の水は循環流路63を通って溶液タンク64に送られる。こうして、水が循環されて水耕栽培が行われる。
【0078】
植物Plの根は水に浸かっており水とともに養分を吸収する。この水の溶存酸素を高めると収穫量が30%程度向上するとの知見もある。そこで、栽培槽60の上流側の水流に生物活性水製造装置Xから吐出される生物活性水BWを供給すれば、この生物活性水BWによって栽培槽60中の水の酸素濃度を向上させることができ、植物Plの栽培効率を向上することができるものである。なお、図1の場合と同様に、生物活性水BWは物理的衝撃と大きな温度変化で大きな気泡となり気体が水中から放散するため比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。
【0079】
一般的に、水中の溶存酸素を向上させる場合、直径数十ミクロンのマイクロバブル供給が使用されているが、マイクロバブルは浮力で上昇するため、水耕栽培のような長い流路では途中で気体が水から放散しロスがあった。しかしながら、生物活性水BWを利用した栽培方法では、浮力がないナノバブルを利用しているため水路の途中で放散することなく供給した気体が有効に使えることとなる。
【0080】
同様に、土壌での植物栽培にも生物活性水を利用することができ、通常の水やりと同じようにして生物活性水を供給することで、植物の根の環境が好気雰囲気となり水耕栽培と同じく活性化の効果を得ることができる。
【0081】
また、気体として窒素や炭酸ガスを用いることもできる。窒素を供給すれば成長に必要な養分の一つが供給されて植物の成長を促進することができる。また、炭酸ガスを供給すれば、光合成のために必要な二酸化炭素を供給することができる。特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物、例えば観賞用の海草・水草に効果的に二酸化炭素を供給することができるものである。
【0082】
次に、図3により、生物活性水を利用した水浄化設備について説明する。
【0083】
一般的に終末処理場等の水浄化設備としては微生物を利用した生物処理方式が用いられている。水のBOD(生物化学的酸素要求量)等の汚れは好気性の微生物を利用して行われるため処理水槽中の水の酸素濃度が高く維持される必要がある。そこで、気体として酸素(又は空気)を用いた生物活性水を浄化設備に利用する。
【0084】
図3(b)は、一般的な接触酸化方式の水浄化設備の一例である。この水浄化設備は、処理槽70の内部中央に、隙間を空けた板材を積層して形成した接触板71を配置し、この接触板71に微生物を固定化(生物膜を形成)し、隙間に水を回流させることで、水の浄化を行っている。通常、接触板71の下方に、散気管73から送られた空気を処理槽70内の水に供給する散気盤74を設けて酸素の供給を行っており、その際、気泡の上昇する水流で処理槽70内の水の回流を作っている。図中、水の流れ(旋回流)を矢印で示している。また「B」は、気泡(マイクロサイズ以上の気泡)である。なお処理槽70は、上部に配置された円筒形状の円筒部70aと、下部に配置された円錐形状(断面逆三角形状)の円錐部70bとで形成されている。この方式では散気される気泡は数ミリから数十ミリと大きく酸素の溶解効率は低い。純酸素等の供給も行われているが、気泡径が大きいために溶存効率が低いという問題がある。一方、生物活性水を利用すれば、ナノサイズの気泡には浮力がないので、供給した気体が回流途中で放散することなく有効に使えることとなる。
【0085】
図3(a)は、生物活性水BWを利用した水浄化設備の一例である。この水浄化設備では生物活性水製造装置Xの吐出部7が処理槽70に接続されている。図示の形態では、撹拌翼72の回転により回流を作っているが、ポンプにより回流を作ってもよい。生物活性水BWは物理的衝撃と大きな温度変化で気体が大きな気泡となり気体が水中から放散するため比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。そのため、図示の形態では、回流を作る撹拌翼72の前段(円錐部70b)ではなく、ゆっくりとした流れになる回流の後段である、円筒部70aの高さ略中央の内周側に吐出部7が接続されている。このように生物活性水BWを供給することで、ロスがない酸素供給を行うことができる。なお、生物活性水BWの供給位置はこの位置に限定されるものではない。また、従来の散気管74等の方式の水浄化設備、担体流動方式等の水浄化設備に生物活性水BWを供給するようにしてもかまわない。
【0086】
図4は、生物活性水BWを利用した、嫌気と好気の水浄化設備の一例である。この水浄化設備は、図3(a)の水浄化設備と同様に構成されるのに加え、生物活性水製造装置Xに供給する気体を切替える気体切替手段75が設けられている。気体切替手段75は生物活性水BWを生成するための気体を切替えるものであり、後述の生物活性水製造装置X(A又はB)における気体供給部2と兼用させたり、気体供給部2に接続したりして構成することができる。この気体の切替により酸素を含む気体と窒素とが切替えられて生物活性水BWが生成される。
【0087】
水浄化設備でアンモニア等の窒素成分を除去するには好気性と嫌気性の微生物処理を繰り返し行うことが一般的である。その際、好気の処理槽の後段に嫌気の処理槽を設け、これらの処理槽を循環させる循環方式と、一つの処理槽で好気と嫌気を所定時間で切り替えて処理する一槽方式とがある。図示の設備にあっては、生物活性水BWを利用して一槽方式で水浄化処理を行うことができるものであり、酸素気体を含む生物活性水BWaと窒素気体のみを含む(酸素を含まない)生物活性水BWbとを交互に供給することで好気と嫌気の切替時の時間短縮を図ることができる。嫌気での気体は特に窒素に限定されるものでなく、炭酸ガスや、アルゴンなどの不活性ガスなどを用いてもよい。
【0088】
また、閉鎖水域の浄化に生物活性水を利用することもできる。酸素などの気体を含んだ生物活性水を海洋、湖沼での閉鎖水域に供給することで、貧酸素による汚れの蓄積を浄化することができるものである。
【0089】
次に、生物活性水製造装置について説明する。以下の生物活性水製造装置(A又はB)はいずれも、図1〜4における生物活性水製造装置Xとして利用できるものである。
【0090】
図5は、生物活性水製造装置の実施の形態の一例である生物活性水製造装置Aを示す概略図である。生物活性水製造装置Aとしては、水に気体がナノサイズの気泡になって存在する気液混合液(気液混合水)を生成する気液混合液製造装置を用いる。
【0091】
図5の生物活性水製造装置A(気液混合液製造装置)は、水を含む液体を圧送して連続的に気液混合液を製造するものであり、水道配管や貯水槽などの水供給源から水又は水を含む液体を取り入れる入液部1と、入液部1から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7とを備えており、各部は流路6に接続して設けられている。
【0092】
流路6は、装置の各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプやホースなどの管体で構成される。流路6は、気液混合部3より上流側の流路6a、減圧部5より下流側の流路6c、その間の各部を結ぶ流路6bにて構成されている。
【0093】
入液部1は、装置の外部にある水供給源から装置の内部に水を含む液体を入れるためのものであり、図示の形態では、水道配管などの水供給源に通じる外部流路19と接続された流路6aの入口として構成されている。この入液部1には、開閉して液体の流入量や圧力を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0094】
気体供給部2は、液体が流れる流路6などに接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、図示の形態では気液混合部3に接続される管体などにより構成されている。そして、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を気液混合部3に接続して気体供給部2を形成することができる。あるいは気体として、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを気液混合部3に接続して気体供給部2を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部2をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。気体供給部2の接続位置は、図示のように気液混合部3に接続してもよく、気液混合部3よりも上流側の流路6に接続してもよい。
【0095】
気液混合部3は、入液部1から送られてきた液体を圧送するとともにこの液体に注入された気体と液体を混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。図示の形態では、気液混合部3はポンプ11で構成して設けてある。気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
【0096】
上記のような気液混合部3を構成するポンプ11により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には水分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0097】
図6は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図2において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸21の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
【0098】
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細なナノサイズの気泡BNが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡BNが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
【0099】
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
【0100】
気液混合部3による加圧は、気液混合部3を複数設けて、複数回加圧してもよい。液体を送りながら複数回加圧することにより、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、気液混合部3を二つ以上のポンプ11やベンチュリ管で構成することができるものである。
【0101】
ここで、図7(a)のように、気液混合部3(又は気液混合部3の一部)をベンチュリ管12で構成し、ベンチュリ管12の側管を気体供給部2として機能させて、急激な加圧を液体にかけて気体を液体に注入することもできる。このようにベンチュリ管12を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示のベンチュリ管12は、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に小さくなる流入側管部12aと、ベンチュリ管12内において断面積が最も小さくなる絞り管部12bと、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に大きくなる流出側管部12cとから構成されている。絞り管部12bに気体供給部2の一端が接続してあり、この気体供給部2から供給された気体は、絞り管部12b内において液体に注入されるようになっている。
【0102】
また、図7(b)のように、気体供給部2と気液混合部3(又は気液混合部3の一部)とを兼用して電気分解手段13で構成し、電気分解して発生する気体を水に供給しナノサイズの気泡にして混合するようにしてもよい。この場合、液体に注入される気体は水の電気分解により発生する水素と酸素になる。電気分解により発生した気泡はナノサイズの気泡となり液体である水中に存在する。このように電気分解手段13を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。また、電気分解手段13の下流側にさらにポンプ11を設けてもよく、その場合、電気分解手段13によって気体が発生し供給された液体は、ポンプ11の作用によって確実にナノサイズの気泡を発生させることができる。図示の電気分解手段13では流路6aから送られた水が電気分解手段13の電気分解槽に貯留され、陽極(+)と陰極(−)とによって電圧が印加されて水が電気分解するようになっている。電気分解により気体が供給された液体(水)は流路6bから下流側に送られる。
【0103】
気体分離部4は上記のようにして気体が混合された液体から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡(マイクロサイズ以上の気泡)を取り除くものである。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0104】
気体分離部4は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0105】
気体分離部4としては、具体的には、図8のような構成にすることができる。(a)は、気液混合部3と連続して地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、気液混合部3と連続すると共に気液混合部3と合わせた形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、気液混合部3とは別体にし、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。
【0106】
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
【0107】
減圧部5としては、図9のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
【0108】
例えば図9(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
【0109】
減圧された液体は流路6cを通って吐出部7に送られる。なお、その際、図10のように、吐出部7と減圧部5との間に、流路6に加えて、気液混合部3における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、気液混合部3からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
【0110】
上記のように構成された生物活性水製造装置Aにあっては、入液部1から入った水を含有する液体に、気体供給部2により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ11で構成された気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から気体分離部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部4で気液混合液中のナノサイズを超える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を連続的に生成することができ、この気液混合液を生物活性水として利用することができるものである。そして、装置を稼動させて連続的に生物活性水を得ることができるものであり、この生物活性水を生物に連続して供給することが可能になるものである。すなわち、バッチ式の生物活性水製造装置ではバッチ式で生物活性水を製造するため生物活性水を1バッチ分しか連続して吐出することができないが、連続式の生物活性水製造装置であれば連続して(半永久的に)生物活性水を造り出して生物に供給することができるものである。
【0111】
なお、気液混合部3よりも下流側の流路6(6b及び6c)は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくして、生物活性水を簡単に得ることができる。
【0112】
図11は、生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、この装置では、水を含有する液体の前処理を行う前処理部14を設けてある。気液混合液を生成する際に水をあらかじめ処理しておくことによって、気液の混合を一層効率よく行うことができる。この装置では前処理部14が、入液部1と気液混合部3との間の流路6に設けられている。その他の構成は、図5の装置と同じである。
【0113】
前処理部14は、液体の温度を冷却する冷却部、異物など液体中の不純物を取り除く浄化フィルター、又は液体中に含まれる気体を取り除く脱気部などによって構成され、気液混合部3において気体と液体とを混合しやすくするために、入液部1から送られてくる液体に前処理を行うものである。この前処理部14で前処理を行うことにより、気体と液体の混合性を高めて、より多くのナノサイズの気泡を生成することができるものであり、高濃度に気体が混合した気液混合液を生成して生物活性水の活性作用をさらに向上することができるものである。
【0114】
例えば、前処理部14として冷却部を用いた場合は、入液部1から送られた液体は冷却部で冷却され、冷却された状態のまま気液混合液が生成される。冷却部は、例えば、流路6に冷却熱交換器を巻き付けて取り付けるなどして形成することができる。冷却状態の水を用いて液体と気体の混合を行うと、ナノサイズの気泡が形成され、そのナノサイズの気泡は液体が冷却されているために安定化されて崩壊することなく下流側に送られることになり、ナノサイズの気泡を形成する気体量を高めて高濃度の気液混合液を生成することができる。そして、生物活性水は常温よりも温度が低い状態で生成される。この冷却状態の生物活性水を吐出部7から吐出して利用する。冷却温度としては、液体の温度が常温以下となるようにする程度であればよく、例えば、0〜25℃にすることができる。吐出された生物活性水はそのまま使用してもよいし、冷却状態を保つように冷却して貯留してもよい。冷却したまま貯留すると、気泡を長期に安定に保持することができる。そして、外気温や使用時の温度により気液混合液の温度が上昇して液中の気泡が崩壊して、気体が溶解したり発泡したりして、生物活性作用を高めることができるものである。
【0115】
また、前処理部14として浄化フィルターを用いた場合は、入液部1から送られた液体は浄化フィルターでゴミなどの異物が取り除かれて浄化され、浄化された水で気液混合液が生成される。浄化フィルターは、例えば、流路6の内部に網目状(メッシュ状)のフィルターを取り付けたり、樹脂等が充填されたフィルター管を流路6に設けたりして液体を通すものなどによって形成することができる。具体的には、中空糸膜フィルターや不織布フィルターや糸巻きフィルターなどを利用することができる。そして、この浄化された水で気液混合液を生成することによって、異物などの不純物がない清浄な液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって生物活性水に安定に存在するので、生物活性作用を高めることができるものである。
【0116】
また、前処理部14として脱気部を用いた場合は、入液部1から送られた液体は脱気部で液体内の気体が取り除かれて気体のない状態にされ、気体が含有されていない状態の水で気液混合液が生成される。脱気部は、例えば、流路6の内部に向かって超音波を照射する超音波装置や、急激に液体を減圧して内部の気体を放出させる減圧装置などによって形成することができる。また、中空糸脱気膜などの脱気フィルターを用いて脱気してもよい。そして、気体が取り除かれた水で気液混合液を生成することによって、気体が含有されておらず気体が欠乏状態となった液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって生物活性水に安定に存在するので、生物活性作用を高めることができるものである。
【0117】
そして、前処理部14は、上記の冷却部と浄化フィルターと脱気部とのいずれか二つ以上を併用して構成することができる。この場合、単独の処理方法で前処理部14を構成した場合に比べてさらに気液の混合性が高まり、高濃度の気体を液体に混合させることがより可能になるものである。具体的には、例えば、中空糸膜フィルターなどの脱気浄化フィルターを用いれば浄化フィルターと脱気部とを兼用することができる。
【0118】
図12は、生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、この装置では、吐出部7と減圧部5との間の流路6cに、気液混合液である生物活性水に外力を与える外力制御部15を設けてある。
【0119】
外力制御部15は、温度変化を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、超音波を照射する超音波制御部、赤外線を照射する赤外線制御部、又は振動を制御する振動制御部などによって構成され、減圧部から送られてくる生物活性水にスイッチをオンして外力を与えて、生物活性水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を水に溶解したり、気体を水から分離したりするものである。
【0120】
例えば、外力制御部15として振動を付与する振動制御部を用いた場合は、常温で生成した生物活性水に振動制御部をオンすることにより振動を与え、生物活性水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を水に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を水に溶解させれば、気体の溶解による生物活性作用の向上を発揮して生物を活性化することができ、また、気体を発泡させれば発泡作用で生物を活性化することができる。
【0121】
そして、外力が与えられてナノサイズの気泡が崩壊した生物活性水は吐出部7から吐出され、生物に供与されたり容器に溜められたりする。吐出部7から吐出された生物活性水は、ナノサイズの気泡の崩壊によって生物活性作用が高められている。上記では、外力制御部15として振動を制御したものを説明したが、温度制御、圧力制御、衝撃波、超音波、赤外線などを制御してもよく、外力の条件としては、上記で説明した生物活性化方法の外力条件と同様の条件にすることができる。
【0122】
この装置にあっては、気液混合液である生物活性水を製造した後、すぐにナノサイズの気泡を崩壊させて生物の活性化に利用することができ、また、任意の量でナノサイズの気泡を破裂し一体化させて放散することができるので、発泡による生物の活性作用の度合いを制御して効率よく生物を活性化することができるものである。
【0123】
図13は、生物活性水製造装置の実施の形態の他の一例である生物活性水製造装置Bを示す概略図である。
【0124】
この生物活性水製造装置B(気液混合液製造装置)は、気液混合液をバッチ式で製造するものであり、水道配管や貯水槽などの水供給源から水又は水を含む液体を取り入れる入液部1と、入液部1から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧しながら液体と気体とを混合して加圧状態の気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合部3で生成した気液混合液を加圧状態を維持して密閉状態で貯留する圧力保持容器30と、気液混合部の逆流を防止する逆流防止機構33と、気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構31と、圧力保持容器30に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構32とを備え、圧力保持容器30には液体が流れる流路6が接続されている。
【0125】
流路6の上流側(圧力保持容器30と反対側)は、入液部1と接続した外部流路19を介して水道配管や水貯留槽などの水供給源に接続されており、この液体供給源から供給される液体が流路6を通って下流側(圧力保持容器30側)に向かって送られる。液体を流路6に送り出すための圧力としては水道配管のように加圧された液体供給源の圧力を用いてもよいし、ポンプ11の汲み上げの圧力を用いてもよい。
【0126】
気体供給部2は、図5の装置と同様の構成にすることができ、気液混合部3よりも上流側の位置で流路6に接続してあればよく、この装置では、気体供給部2の接続位置を気液混合部3及び逆流防止機構33よりも上流側の位置にしてあるが、逆流防止機構33と気液混合部3との間の流路6に接続したり、気液混合部3に直接接続したりしてもよい。
【0127】
気液混合部3は、流路6に設けられ、気体供給部2によって気体が供給された液体を加圧しながら液体と気体とを混合し、気体を微細なナノサイズの気泡にして液体中に分散・混合させて、加圧状態の気液混合液を生成するものである。この装置ではポンプ11で気液混合部3を形成してある。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできるが、気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。また、ポンプ11を用いる場合は、水供給源に貯蔵されている大気圧の水を汲み上げることもできる。ポンプ11としては、上記で説明した、図6のようなものを用いることができる。また、この装置にあっても、図7で示したものと同様に、気液混合部3をベンチュリ管12で構成したり、電気分解手段13で構成したりしてもよい。
【0128】
圧力保持容器30は生成した気液混合液を貯留するためのものである。圧力保持容器30は、加圧状態で送られる気液混合液の圧力を維持できるように密閉性のある容器として形成されており、例えば、耐圧性容器などで構成される。
【0129】
そして、気液混合部3であるポンプ11の駆動の開始と停止とにより所定量の気液混合液が生成される。すなわち、ポンプ11に接続されたポンプ電源をオンにするとポンプ11の駆動が開始し、気液混合部3内において液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができる。生成した気液混合液は、流路6を通って順次に圧力保持容器30に送り出される。そして、圧力保持容器30に貯留された気液混合液の量が所定量に達するとポンプ電源をオフにしてポンプ11の駆動を停止し、液体の送り出しをストップする。なお、気液混合部3が電源制御する機構のものでない場合(例えばベンチュリ管12のみの場合)は、流路6への液体の送出の開始又は停止によって気液混合部3の駆動が自動的に開始又は停止される。
【0130】
上記のような気液混合部3により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から圧力保持容器30に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0131】
生成した気液混合液は圧力保持容器30に送り出されるが、その際、気液混合液が圧力保持容器30とは反対側(上流側)に流出したりして急激に減圧したりすることがある。加圧状態の気液混合液が急激に減圧するとナノサイズの気泡が崩壊して気体が分離してしまうおそれがある。そこで、この装置にあっては、気液混合部3から送り出されて圧力保持容器30に貯留される気液混合液の加圧状態を維持するように逆流防止機構33を流路6に設けてある。
【0132】
逆流防止機構33は、この装置では電動バルブ33aで構成し、気液混合部3よりも上流側(前段)の流路6に設けてあるが、これに限らず、逆流防止機構33を気液混合部3と圧力保持容器30との間の流路6、すなわち気液混合部3の後段の流路6に設けるようにしてもよい。このように逆流防止機構33を設けることによって、気液混合液が逆流することなく加圧状態を維持したまま送り出されて圧力保持容器30に貯留されるので、ナノサイズの気泡が崩壊されることを防止できる。
【0133】
この逆流防止機構33は、気液混合液が所定量生成されて気液混合部3の駆動が停止したときに、気液混合液の加圧状態を維持することが好ましい。すなわち、ポンプ11などの気液混合部3の駆動が停止すると、液体を送り出す圧力が消失して気液混合液が上流側に逆流して気液混合液が急減に減圧することがある。気液混合液が急激に減圧するとナノサイズの気泡が崩壊して気体が分離してしまうおそれがある。そこで、ポンプ11の駆動が停止した後も、逆流防止機構が気液混合液の加圧状態を維持して急激に減圧することを防止するものである。
【0134】
逆流防止機構33としては、電動バルブ33aに限られるものではなく、逆流防止弁であってもよい。電動バルブ33aで構成した場合、電気的に弁の開閉の制御を制御することができるため、電気制御で確実に弁の開閉を制御して気液混合液の加圧状態を確実に維持し、気液混合液が逆流で不用意に減圧してナノサイズの気泡が崩壊するようなことを防止することができる。一方、逆流防止弁で構成した場合、簡単な構成で気液混合液が逆流して減圧することを防ぐことができ、容易に気液混合液の加圧状態を維持してナノサイズの気泡を崩壊することを防止できる。
【0135】
圧力保持機構31は、圧力保持容器30に貯留される加圧状態の気液混合液の圧力を、少なくとも気液混合部3が駆動する間、気液混合液から分離された気体を排出することにより一定に維持するものである。圧力保持機構31としては、気体排出弁など、弁の開閉によって容器内の気体を排出するもので構成することができる。気液混合部3で生成した気液混合液は生成した後、順次に圧力保持容器30に送られるので、圧力保持容器30では加圧状態の気液混合液が徐々に量を増しながら貯留される。一方、圧力保持容器30は密閉状態になっており、加圧状態の気液混合液が増えると容器内の圧力が次第に上がる。気液混合液の圧力が上がりすぎるとナノサイズの気泡が圧力変化の衝撃により崩壊するおそれがある。また、気液混合部3での加圧よりも高い加圧が不均一にかけられた場合は、気泡径を変化させるなどしてナノサイズの気泡を不安定化させるおそれがある。また、圧力保持容器30の圧力上昇が伝わって気液混合部3で加圧する圧力が高くなって気液混合部3で生成するナノサイズの気泡の量が変化するおそれがある。さらに、ナノサイズを超える気泡が液体から排出されて容器内(容器上部)の気体量が増えて加圧度が一定にならないことがある。しかし、圧力保持機構31で気液混合部3の駆動中、圧力保持容器30に貯留された気液混合液の加圧状態を一定にすることにより、気液混合液に不要な加圧がかかったりしてナノサイズの気泡が崩壊することを防止することができ、また、ナノサイズの気泡の生成量を安定にすることができ、ナノサイズの気泡の量が安定した気液混合液を生成することができるものである。
【0136】
圧力保持機構31は、圧力保持容器30で貯留された加圧状態の気液混合液から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡を取り除くようにするものであることが好ましい。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0137】
マイクロサイズの気泡の除去は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにして行うことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、この浮力を利用してマイクロサイズの気泡を取り除くのである。液体から取り除かれ放出された気泡は気体となって容器上部に集積する。このようにして放出された気体は、気体を排出する管などで排出することができ、気体排出弁として構成された圧力保持機構31により取り除くことができる。このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0138】
図14は、圧力保持容器30でマイクロサイズの気泡Bを取り除く様子を示す概略図である。なお、説明の便宜のため気泡Bを拡大して描写してある。圧力保持容器30に貯留された液体Lq中の気泡Bには浮力が働き、気泡Bが液面まで上昇する。液面に到達した気泡Bは液体外に放出され容器上部の気体と一体になって容器上部に滞留する。こうして滞留した気体は圧力保持機構31である気体排出弁から排出される。
【0139】
圧力保持容器30の深さD、すなわち所定量の気液混合液を貯留したときの圧力保持容器30の底面から気液混合液の上面までの距離は、10〜900mmであることが好ましい。下記の気泡の上昇速度を考慮すると、圧力保持容器30の深さがこの範囲になることで、貯留量を十分にするとともに、マイクロサイズの気泡を浮力で簡単に取り除くことができる。
【0140】
気泡の上昇速度Vは、ストークスの法則から、
V(m/s)=1/18×g×d/γ
[g(m/s2):重力加速度、 d(m):気泡の直径、 γ(m2/s):水の動粘性係数]
である。
【0141】
また、気液混合液を圧力保持容器30に加圧状態(0.15MPa以上)を維持して一定時間貯留することが好ましい。気液混合液を圧力保持容器30に所定時間(0.1〜1秒程度以上)、静置条件で保持して貯留することにより、マイクロサイズの気泡を浮力で確実に取り除くことができる。なお、圧力保持容器30の容量としては、0.5〜10L程度にすることができる。
【0142】
ところで、ストークスの式にあてはめると、気泡の上昇速度Vは、気泡直径が20μmの場合、V=0.243mm/secとなり、気泡直径が10μmの場合、V=0.06mm/secとなり、気泡直径が1μmの場合、V=0.0006mm/secとなる。
【0143】
例えば内径100mmの円筒形状のタンクの場合、20μmの気泡が水と完全に分離するためには、気泡上昇速度から、気泡は10分(600秒)放置で0.243×600=145mm浮上移動するので、タンク底から水面までの距離が145mm以下であれば、20μmの気泡が分離できることになる。この場合、タンク容量は約1Lになる。
【0144】
1μmの気泡の分離について同じように計算すると、10分放置で0.06×600=0.36mm、1時間放置で2.16mm、24時間放置で51mm、気泡が上昇することになる。
【0145】
しがたって、ナノサイズを超える大きさの気泡(1μm以上の気泡)は、D(深さ)<V(気泡上昇速度)×T(静置時間)となるように圧力保持容器30の深さDを設定したり、T(静置時間)>D(深さ)/V(気泡上昇速度)となるように圧力保持容器30内で気液混合液を静置する時間Tを設定したりすることによって取り除くことができるものである。
【0146】
こうして、気液混合部3の駆動の開始と停止とにより生成した気液混合液は、圧力保持容器30に所定の量で貯留される。そして、気液混合液を外部に取り出して利用するために圧力保持容器30で大気圧まで減圧を行う。
【0147】
減圧機構32は、圧力保持容器30に貯液された気液混合液の圧力を調整するものであり、加圧状態の気液混合液の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧・混合により生成した気液混合液は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧機構32を設け、加圧された状態の気液混合液を大気圧まで低下させる際に、減圧機構32で圧力調整をしながら大気圧まで徐々に減圧をし、外部に吐出可能にするようにしているものである。減圧機構32は、圧力保持容器30の上側に設けられて容器上部に滞留した気体を徐々に外部に放出する減圧開閉弁などにより構成できる。
【0148】
この装置では、減圧機構32と圧力保持機構31とが兼用して設けられた形態を示しているが、圧力保持機構31とは別に減圧機構32を設けて、圧力保持容器30の上部に貯留する気体を徐々に排出して圧力調整してもよい。減圧機構32を別に設けた場合は、それぞれの弁によって気液混合液の貯留時と減圧時の圧力調整を適切な条件で行うことが簡単になり、加圧度維持と減圧とを容易に行うことができるものである。
【0149】
減圧機構32にあっては、減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして気液混合液を減圧することができ、それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を大気圧まで減圧することができる。減圧開閉弁で気体を放出する際には、直径0.1〜1mm程度、長さ5mm以上程度の細管(緩減圧管)を減圧開閉弁に接続してこの細管から気体を放出してもよい。細管で気体を放出することにより容易に徐々に減圧することができる。
【0150】
このように、生物活性水製造装置Bでは、圧力保持容器30で減圧することにより、大量の気液混合液(生物活性水)を一度に減圧することが可能であり、また生成した生物活性水を圧力保持容器30に大気圧の状態で(又は大気圧近傍の圧力で、あるいは加圧状態で)貯留しておいて必要なときに外部に取り出して利用することが可能であり、生物活性水を簡単に大量に生成して利用することができるものである。また密閉状態を形成する圧力保持容器30で減圧するので、減圧後も密閉状態を維持することができ、気液混合液を安定に貯水することができるものである。すなわち、連続式で液体を送りながら減圧して気液混合液を生成した場合、保存容器に気液混合液を入れる際の衝撃でナノサイズの気泡が崩壊したり、保存容器が開放状態となっていて気体が分離しやくなったりして、液体中に気体を長期に安定に保持できないおそれがある。また、保存容器を圧力調整で密閉状態にしようとすると圧力変化の衝撃を気液混合液に与えて気泡が崩壊してしまうおそれがある。しかしながら、上記の装置によりバッチ式で生成する場合は、圧力保持容器30をそのまま保存容器として用いることができ、連続式の場合に比べて、大量の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく安定に長期に保存することが可能になるものである。また、気液混合液の減圧を細い流路管などで行う場合、流路管にゴミなどが詰まって故障が発生してしまうおそれがあるが、圧力保持容器30で減圧をすれば配管が詰まるようなことがなく安定して気液混合液を生成することができるものである。
【0151】
大気圧まで減圧された気液混合液は、圧力保持容器30の下部に設けられた取出弁34を開いて取出流路35を通って吐出部7から外部に取り出される。この取出弁34は圧力保持容器30を密閉状態にして貯留する際には閉じられており、気液混合液を外部に取り出す際に開かれるものである。
【0152】
上記のように構成された生物活性水装置Bにあっては、水供給源から送られた水を含有する液体に、気体供給部2で気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から圧力保持容器30へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、圧力保持容器30内で気液混合液中のナノサイズを超える気泡を取り除いた後、該液体を減圧機構32の圧力調整により最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を生成することができるものである。
【0153】
なお、このバッチ式の生物活性水製造装置Bにあっても、図15(a)に示すように、冷却部、浄化フィルター及び脱気部から選ばれる少なくとも一つにより構成される前処理部14を設けてもよい。それにより気液の混合効率が高まって生物活性水の活性作用が向上するものである。前処理部14としては、図11の形態と同様の構成にすることができる。
【0154】
また、図15(b)に示すように、取出流路35に温度制御部、圧力制御部、衝撃波制御部、超音波制御部、赤外線制御部、又は振動制御部といった外力制御部15を設け、圧力保持容器30に貯留された生物活性液を外部に取り出す際に外力を与えて吐出してもよい。それによりナノサイズの気泡の崩壊や発泡などが発生して生物活性作用を高めて生物活性水を外部に取り出することができるものである。外力制御部としては、図12の形態と同様の構成にすることができる。
【0155】
図16は、生物活性水として製造された気液混合液が、安定化されるメカニズムを説明する概念説明図である。図示のように、気泡Bと液体Lqの界面には水素結合距離が通常よりも短い氷やハイドレートのような強固な水分子の結合で境膜構造(結晶構造体)の保護膜Mが形成されており、気液相互の物質移動が阻止されて気泡が安定な状態になったものと考えられる。そして、気液混合液内の気泡(ナノバブル)の内圧は、ヤングラプラスの式から求められる圧力以上となっている。このように気泡界面の水素結合距離が短く、気泡の内圧が高くなることによって、気泡が安定した気液混合液となるものである。そして、気泡の内圧が高いためにより多くの気体を気泡中に入れることが可能となり、高濃度の気体が混合した気液混合液を生物活性水として得ることができるものである。
【実施例】
【0156】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0157】
[生物活性水の製造]
図5の生物活性水製造装置Aを用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として純水を用いてナノサイズの気泡を含有する生物活性水(気液混合液)を生成した。
【0158】
生物活性水製造装置Aとしては、気液混合部3がポンプ11で構成されたものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図6のようなポンプ11aを用いた。
【0159】
気体と液体の比(水に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0160】
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図9(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気液混合液を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気液混合液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液(生物活性水)が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0161】
[水素結合の距離]
図17は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた生物活性水(気液混合液))と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。
【0162】
[気体量]
液体として純水を、気体として各種の気体を用い、生物活性水(気液混合液)中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
【0163】
図18は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、例えば水素と水を用いた気液混合液の場合、25℃の純水1Lに水素が、飽和溶解量として17.6mL溶解し、528mLの気体が微細な気泡として存在することが確認された。すなわち、気液混合液に含有する気体量は過飽和溶解量の30倍であった。また同様に、過飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、メタンでは17倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液は飽和溶解濃度以上の高濃度で気体を水中に保持することが可能であり、この高濃度の気体を生物の活性化に利用することができるものである。
【0164】
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した生物活性水(気液混合液)を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
【0165】
図19は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、水素、メタン、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。
【0166】
[気泡の内圧]
生物活性水(気液混合液)中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素、メタン、又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
【0167】
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
【0168】
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
【0169】
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
【0170】
w1 + w2 =1リットル (式A)
また、質量については次の関係式が成り立つ。
【0171】
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(窒素分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
【0172】
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
【0173】
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
【0174】
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
【0175】
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、生物活性水では、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。
【0176】
【表1】
【0177】
[気泡の分布量]
気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
【0178】
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
【0179】
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
【0180】
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
【0181】
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体の主成分がメタンの場合は1.8×10^16個、アルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
【0182】
[生物活性水の安定性]
図20は、空気と水とを混合して生成した生物活性水(気液混合液)について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過してもほぼ一定であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、生物活性水が安定であることが確認された。
【0183】
[加温による外力]
上記のように製造した生物活性水(気液混合液)をヒーターにより加温し、気液混合液の温度を25℃から40℃に昇温すると、温度の上昇に伴ってナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0184】
[超音波による外力]
上記のように製造した生物活性水(気液混合液)に、40kHzランジュバン型振動子を用い出力100Wで超音波を照射した。時間0.05秒程度の瞬間照射で、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が瞬間的に発生した。数秒間(0.5〜30秒程度)超音波を照射することにより、ほぼ全てのナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が急激に発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0185】
同様に100、200、400、800kHzの超音波発生器で超音波を照射した場合も液体表面から気体が放出されるのが確認できた。一方、2.4GHzの超音波照射では気体の放出が確認できなかった。
【0186】
[マイクロ波による外力]
2450MHz帯の出力300W〜300kWのマイクロ波電力応用装置を使用し、数秒間(0.1〜20秒程度)照射したところ出力全域で液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0187】
マグネトロンによるマイクロ波の照射では、水分子の分子間の振動子が振動エネルギーを吸収し振動するためにエネルギー準位が上がり、水素結合が切れる状態が発生し、気体が放出されると考えられる。周波数915KHzまたは5.7〜5.9GHzのマイクロ波においても気泡の界面の水素結合が不安定になり気泡が崩壊し、液体表面から気体が放出されると考えられる。
【0188】
[赤外線による外力]
特に波長3μmから1mmまでの遠赤外線は気泡界面で電磁波を吸収し、熱エネルギーが与えられるため強固な水素結合の結合距離が長くなるとともに気泡内部温度が上昇する。このため、気泡が当然に崩壊するのであり、遠赤外線にて気泡を崩壊させ、液体表面から気体を放出できる。
【符号の説明】
【0189】
1 入液部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 気体分離部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
12 ベンチュリ管
13 電気分解手段
14 前処理部
15 外力制御部
21 回転体
30 圧力保持容器
31 圧力保持機構
32 減圧機構
A、B、X 生物活性水製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体が高濃度で水に含有された生物活性水、及びその製造装置、並びに生物活性水を用いた生物活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業、水産養殖業、工場排水や閉鎖域の水を浄化する分野では、水の酸素濃度を上げるため水中での空気のばっ気、純酸素のばっ気が行われてきた。近年、直径数十ミクロンのマイクロバブルを供給し供給量を増やす工夫も行われている。
【0003】
例えば、特許文献1や2では、マイクロバブルを連続的に発生させて溶存酸素量を増加し、水耕栽培での植物の生長を促進している。また、特許文献3では、魚介類の飼育水にマイクロバブルを含ませて微生物の処理能力を向上し、アンモニア性窒素を効率的に除去している。また、特許文献4では、アンモニア性の窒素を含んだ排水にマイクロバブルを含ませて好気性微生物の処理効率を向上している。
【0004】
しかしながら、酸素等の気体の水への溶解濃度を向上させるマイクロバブル技術は、マイクロバブルは浮力が大きいために水からすぐに分離されてしまうので、気体の溶解度を向上させるのには非効率であった。また、マイクロバブル発生装置を停止すると水中の気体量が急激に低下し、飽和濃度以上でマイクロバブル水が生成しても数分で飽和濃度まで低下し飽和溶解濃度以上の濃度を維持することができなかった。
【0005】
マイクロバブル技術や従来の飽和水には、例えば、以下の課題が挙げられる。
(1)魚介類等の飼育水槽内の大量の飼育水をマイクロバブルで気体の飽和溶解濃度に上げるには、マイクロバブルが即座に水中から大気中に分離されるため非効率であり、またかなりの時間を要する。
(2)気体の濃度を維持させるためには、設備を連続稼働させなければいけないので、多大なランニングコストが必要である。
(3)酸素の飽和濃度水は動植物により酸素が消費されると、溶解濃度が低下し、水産養殖の場合、養殖水槽内では酸素濃度が不足する現象が発生し飼育が困難になる。魚介類の養殖では、酸素不足の領域ができて過密養殖が困難になり、植物栽培では、植物の根への酸素供給量のばらつきにより植物の生長にばらつきがでる。また、酸素が行き渡らないところができ嫌気性雰囲気下による育成障害や病気が発生する。
(4)硝化菌によるアンモニア窒素排水処理は、酸素が急激に消費されるためにすぐに酸素欠乏状態になり、マイクロバブルで酸素補給しても非効率であるため、酸素不足を解消するまでには至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−236762号公報
【特許文献2】特開2002−142582号公報
【特許文献3】特開2007−325558号公報
【特許文献4】特開2008−006415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高濃度の気体を長期に亘って水中に安定に保持することができ、動物、植物、微生物などの生物に対する活性作用が高い生物活性水、生物活性水製造装置、及び生物活性化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする生物活性水である。
【0009】
請求項2に係る発明は、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の生物活性水である。
【0010】
請求項3に係る発明は、気体が酸素及びオゾンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0011】
請求項4に係る発明は、気体が窒素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0012】
請求項5に係る発明は、気体が炭酸ガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置Aである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合部3で生成した気液混合液を加圧状態を維持して貯留する圧力保持容器30と、気液混合液から分離された気体を排出することにより気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構31と、圧力保持容器30に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構32とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置Bである。
【0015】
請求項8に係る発明は、気液混合部をベンチュリ管12により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0016】
請求項9に係る発明は、気液混合部を電気分解手段13により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0017】
請求項10に係る発明は、水を含有する液体を冷却する冷却部を気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0018】
請求項11に係る発明は、水を含有する液体を浄化する浄化フィルターを気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0019】
請求項12に係る発明は、水を含有する液体を脱気する脱気部を気液混合部3の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置A(又はB)である。
【0020】
請求項13に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化することを特徴とする生物活性化方法である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在することにより、気体を高濃度で長期に亘って水中に安定に保持することができ、この高濃度の気体を生物の活性化に利用することができるので、生物活性化作用の高い水を得ることができるものである。すなわち、気体がナノサイズの気泡(ナノバブル)となることにより消滅や合体することなく水中に長期間安定に存在しており、飽和溶解濃度以上の気体が存在する、いわゆる過飽和状態を長期間維持することができる。そして、動植物や微生物などの生物が生物活性水中の気体を消費してもナノバブルが崩壊して気体が水に溶解して飽和溶解濃度に戻すことができるので、飽和溶解濃度を長期間維持して生物に気体を作用させることができ、長期に亘って生物を活性化させることができるものである。
【0022】
また、気泡界面における水素結合の距離が短くなって気泡の周囲で強固な水素結合を形成した水分子が気体をナノサイズの気泡として取り囲み、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないと共に水からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、ナノサイズの気泡を水中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。すなわち、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に強固な結合を形成するので、気泡界面における水素結合が強固になって気泡を安定化させることができるものである。また、水素結合の強固な殻で包み込まれ安定に水中に保持された気泡は内圧が高くなっており、外力が与えられると気泡が崩壊して気体を発生させて水に溶解したり水から放出したりする。このように水素結合の強固な界面構造によって水中に大量に保持された気体を生物の活性化に利用することができ、生物活性作用の高い水を得ることができるものである。そして、薬品等を使用せずに、資源が豊富であり人体に安全である水を使用して生物を活性化することができるので、環境に優しく安全な生物活性水を安価に得て、生物の活性化に利用することができるものである。
【0023】
請求項2の発明によれば、気泡を形成している気体の圧力が高圧になることにより、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、高濃度の気体を気泡として水中に閉じ込めることができるものである。また、内部圧が高いことにより、静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、気泡を含有する生物活性水に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡界面の殻が崩壊して気体が発生し、気体が溶解したり分離したりするため、この気体を利用して生物を活性化させることができるものである。
【0024】
請求項3の発明によれば、生物活性作用の高い気体である酸素又はオゾンを効率よく利用することができ、生物により溶解水中の気体が消費されてもナノサイズの気泡から酸素又はオゾンが供給されて補充されるので、長期間飽和溶解濃度を維持して生物を活性化することができるものである。そして、気体として酸素を用いた場合は生物に酸素を直接与えて活性化することができ、オゾンを用いた場合はオゾンの殺菌消毒作用を利用して有害な菌の増殖を抑え、その結果、生物を活性化することができるものである。
【0025】
請求項4の発明によれば、窒素の作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、窒素を供給すれば植物の成長を促進したり嫌気性微生物を活性化したりすることができるものであり、気体として窒素を用いた上記のような生物活性水によれば、長期間に亘って高濃度の窒素が水中に保持され、この保持された窒素を植物や微生物などに供給し続けて長期間活性化することができるものである。
【0026】
請求項5の発明によれば、炭酸ガスの作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、気体として炭酸ガスを用いた上記のような生物活性水によれば、特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物に二酸化炭素を供給することができ、また、嫌気性生物に二酸化炭素を与えて活性化することができるものであり、長期間に亘って高濃度の炭酸ガスが水中に保持され、この保持された炭酸ガスを植物や微生物などに供給し続けて長期間活性化することができるものである。
【0027】
請求項6の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した生物活性水を安定に得ることができ、生物活性水を効率よく簡単に製造することができるものである。そして、装置を稼動させて連続的に生物活性水を得ることができ、この生物活性水を生物に連続して供給することが可能になるものである。
【0028】
請求項7の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した生物活性水を安定に得ることができ、生物活性水を効率よく簡単に製造することができるものである。そして、装置を稼動させてバッチ式に生物活性水を得ることができ、大量の生物活性水を一度に得ることが可能になるものである。
【0029】
請求項8の発明によれば、ベンチュリ管を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0030】
請求項9の発明によれば、電気分解手段を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0031】
請求項10の発明によれば、冷却状態で気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0032】
請求項11の発明によれば、液体が浄化されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0033】
請求項12の発明によれば、液体が脱気されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、生物活性水の活性作用を向上することができるものである。
【0034】
請求項13の発明によれば、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動といった外力を制御して気液混合液中の気泡から気体を発生させて、生体活性を高めることができ、得たいタイミングで生物活性水の活性作用を高めて利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の生物活性水を利用して動物(魚介類)を活性化させる水産養殖の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の生物活性水を利用して植物を活性化させる水耕栽培の一例を示す概略図である。
【図3】(a)は、本発明の生物活性水を利用して微生物を活性化させる好気水浄化設備の一例を示す概略図であり、(b)は、従来の好気水浄化設備の一例である。
【図4】本発明の生物活性水を利用して微生物を活性化させる水浄化設備の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の生物活性水製造装置の実施の形態の一例(生物活性水製造装置A)を示す概略図である。
【図6】生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図8】(a)〜(c)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図9】(a)〜(d)はそれぞれ、生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図10】生物活性水製造装置Aの一部を示す概略図である。
【図11】本発明の生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図12】本発明の生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図13】本発明の生物活性水製造装置の実施の形態の他の一例(生物活性水製造装置B)を示す概略図である。
【図14】生物活性水製造装置Bの一部を示す概略図である。
【図15】本発明の生物活性水製造装置Bの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、(a)及び(b)は生物活性水製造装置Bの一部の概略図である。
【図16】生物活性水(気液混合液)における気泡の気液界面の概念説明図である。
【図17】生物活性水(気液混合液)と窒素飽和水との赤外吸収スペクトルの差分を示すグラフである。
【図18】生物活性水(気液混合液)中に含まれる気体容量を示すグラフである。
【図19】走査型電子顕微鏡(SEM)による生物活性水(気液混合液)の写真である。
【図20】生物活性水(気液混合液)の安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0037】
本発明の生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって、この気体が飽和溶解濃度で溶解した溶解水に存在しているものである。すなわち、本発明の生物活性水は、気体がナノサイズの気泡となって水に混合された気液混合液として構成されている。
【0038】
一般に、気体が水に溶解する現象は知られているが、その飽和溶解濃度は二酸化炭素が溶解する場合などを除いて多くない。そして、多量の気体を水の中に存在させることはできず、気体が水中に存在する上限の量は飽和溶解濃度である。しかしながら、本発明の生物活性水においては、気体が水に飽和溶解濃度で溶解し、さらに飽和溶解濃度を超えた気体はナノサイズの気泡となって水中に安定に存在して気液混合液となっている。つまり、気体は飽和溶解濃度で水に溶解すると共にナノサイズの気泡となって存在している。したがって、飽和溶解濃度以上の気体が水中に存在しており、長期に亘って大量の気体を水中に安定に保持することができ、生物活性作用の高い水を得ることができるものである。すなわち、気体はナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく水中に安定に存在しており、この安定な微細気泡を用いて生物を活性化させることができるのである。
【0039】
そして、通常、水中に存在する気泡は液体である水からの圧力により崩壊して水に溶解してしまうが、上記のような気液混合液では水には飽和溶解濃度で気体が溶解しているので、気体がそれ以上溶解することができず、気泡が崩壊して気泡中の気体が溶解することがない。崩壊しないナノサイズの気泡は液体からの圧力に応じるようにその内圧が高くなっており、内圧が高くなることで液体圧力との均衡が保たれ、ナノサイズの大きさを維持したまま気泡が安定に水中に存在する。また、ナノサイズの気泡は極めて微細なサイズになっているため浮力を受けることがなく、気泡が上昇して水から外部に分離することがない。よって、ナノサイズの気泡が長期に亘って安定に水中に存在するのである。そして、このナノサイズの気泡に外力を与えて水から気体を発生させ、この気体を水に溶解したり分離したりすることができ、大量の気体を生物の活性化に利用することができるものである。
【0040】
生物活性水は、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっている。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。水分子においては、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成する。そして、生物活性水に存在するナノサイズの気泡の周囲、すなわち気泡との界面に存在する水分子においては、水分子の水素結合の距離が、水分子が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっているのである。このように、生物活性水が常温常圧の条件で存在する場合において、気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した水分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、気泡を水中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、気泡が安定に存在した生物活性水を長期間に亘って利用可能となる。また、ナノオーダーサイズの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し水に安定して存在させることが可能となるものである。
【0041】
生物活性水である気液混合液は水又は水を主成分とする液体を用いて得られるものである。ここで、気液混合液を構成する液体には水が含まれていればよく、液体が水のみからなっていてもよいし、水が他の成分を溶解や分散させて水溶液や懸濁液の状態になっていてもよい。なお、水としては純度の高い水に限られることはなく、水道水、井戸水、地下水、河川や池の水などをはじめ、生物に与えることが可能なあらゆる水を使用することができる。このように、資源が豊富な水を用いて生物活性水を容易に得ることができるものである。また、生物活性水は気体を用いて活性化することができるものであるため薬品等を用いることなく生物を活性化させることができる。したがって、薬品等を使用せずに環境に優しく生物を活性化することができるものである。もちろん生物活性水に薬品を添加してもよく、その場合は薬品の使用量を低減することができる。また、水は入手が容易であり、安価であるので低コストで簡単に生物活性水を生成することができる。さらに、水は人体に安全であるので安全性の高い生物活性水を得ることができるものである。
【0042】
生物活性水に含まれる気泡はナノサイズの気泡であり、具体的には1000nm以下の気泡(いわゆるナノバブル)である。気泡がナノサイズとなり微細なものになることで強固な気泡界面の構造を形成することができ、高濃度の気体を液体中に保持することができるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡には浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。気泡のサイズがナノサイズよりも大きくなると気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された水は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された水は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。よって、気液混合液の判別はSEMや密度測定などによって行うこととなる。なお、ナノサイズの気泡の下限は1nmである。
【0043】
気泡との界面における水分子の水素結合の距離としては、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下となるように生物活性水を生成することが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。気液混合液中の気泡界面における水素結合の距離は、後述するように、気液混合液の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
【0044】
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある水分子は、通常、氷のように固体やハイドレート結晶構造になるものであるが、上記のような気液混合液においては、気泡界面において局所的に上記のような距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により水分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で水が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在して生物活性水を利用しやすくするものである。
【0045】
生物活性水にあっては、気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧が、0.12MPa以上になることが好ましく、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
【0046】
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができ、気体を高濃度で水中に保持することができる。一方、一旦、生物活性水に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が崩壊して大量の気体が水に溶解したり水から放散したりするため、この発生した大量の気体を用いて生物の活性に利用することができるものである。生物活性水を構成する気液混合液中の気泡の内圧は、後述するように気液混合液中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
【0047】
気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、オゾン、酸素、窒素、炭酸ガス(二酸化炭素)、空気、アルゴン、水素、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタン、塩素、二酸化塩素などの気体を単一で又は混合して用いることができる。
【0048】
気体として好ましいものの一つは酸素である。その場合、生物活性作用の高い気体である酸素を上記のような生物活性水によって効率よく利用することができる。また、生物により溶存水中の酸素が消費されてもナノサイズの気泡から酸素が供給されて補充されるので、長期間飽和溶解濃度を維持して生物を活性化することができる。
【0049】
飽和溶解濃度で酸素が水に溶け込んだ酸素飽和水は多量の酸素を与えて生物を活性化することができるが、通常の酸素飽和水では動植物や微生物などの生物は酸素を消費するため飽和溶解濃度を維持することができなくなる。しかしながら、酸素を気体として用いた上記のような生物活性水によれば、生物が水に溶存している酸素を消費しても、ナノサイズの気泡が次々に崩壊して気体が水に溶け込んで酸素を補充して飽和溶解状態にすることができるので、酸素飽和溶解濃度を長期間に亘って維持することができ、生物活性化を長期間に亘り持続する生物活性水を得ることができるものである。
【0050】
また、気体としてオゾンを用いることも好ましい。その場合、オゾンの殺菌消毒作用を利用して有害な菌の増殖を抑え、その結果、生物を活性化ことができる。すなわち、オゾンが水に溶解したオゾン水は殺菌水・除菌水として一般に知られているが、オゾンは水中では不安定であるため、飽和溶解濃度のオゾン水を生成したとしても、オゾンが消滅・分解して飽和溶解濃度を維持することができない。しかしながら、オゾンを気体として用いた上記のような生物活性水によれば、オゾンが消滅・分解してもナノサイズの気泡が次々に崩壊して気体が水に溶け込んでオゾンを補充して飽和溶解状態にすることができるので、オゾン飽和溶解濃度を長期間に亘って維持することができ、生物活性化を長期間に亘り持続する生物活性水を得ることができるものである。そして、この殺菌効果を利用し、生物、特に動植物の殺菌消毒を行うことができるものである。
【0051】
また、生物活性水に用いる酸素としては純度の高い気体酸素に限られるものではなく、酸素を含む気体であってもよい。そのような酸素を含む気体としては空気を用いることが好ましい。空気には酸素が含まれており、この空気中の酸素を生物に作用させて活性化させることができる。そして、空気を用いれば、ボンベなどの特殊な機器を用いることなく生物活性水を得ることができるものであり、簡単で安価に生物活性の高い生物活性水を得ることができるものである。
【0052】
また、気体として窒素を用いることも好ましい。その場合、窒素の作用により効率よく生物を活性化することができる。窒素は植物の肥料の三要素の一つであり、窒素を供給することにより植物が活性化されて成長が促進する。そこで、気体として窒素を用いた上記のような生物活性水を用いれば、長期間に亘って高濃度の窒素が水中に保持され、この保持された窒素を植物に供給し続けて長期間活性化することができるものである。また、嫌気性微生物は酸素条件を嫌い窒素条件を好むものであり窒素を供給すれば嫌気性微生物が精力的に働くことになる。そこで、生物活性水を用いれば、窒素を長期に供給し続けて微生物を活性化することができるものである。
【0053】
また、気体として炭酸ガス(二酸化炭素)を用いることも好ましい。その場合、炭酸ガスの作用により効率よく生物を活性化することができるものである。すなわち、気体として炭酸ガスを用いた上記のような生物活性水によれば、特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物に二酸化炭素を供給することができる。また、嫌気性生物に二酸化炭素を与えれば、酸素を嫌い二酸化炭素を好む微生物を精力的に働かせるようにすることができる。このように、長期間に亘って高濃度の炭酸ガスが水中に保持され、この保持された炭酸ガスを植物や微生物などに供給し続けて長期間生物を活性化することができるものである。
【0054】
上記のような生物活性水は、液体として純水を用いた場合、体積1cm3中に存在する気泡界面の面積は1.2m2程度となり、また、気泡の界面におけるゼータ電位がマイナスとなる。
【0055】
生物活性水は、そのまま生物に供給してもよいし、外力を与えて気体を発生し発泡させて発泡水のような状態にして生物に供給してもよい。また、生物活性水を他の成分と混合するなどして用いてもよい。例えば、通常の水(ナノサイズの気泡が含まれていない水)と混合して用いることもできるし、肥料成分などを添加して生物活性肥料を調製したり、医薬成分などを添加して魚などの動物を治療する生物活性薬剤を調整したりすることもできる。
【0056】
本発明の生物活性化方法は、上記のような生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動を制御して生物活性水に外力を与えて水中の気泡を崩壊させて、生物活性水中の気体を利用して生物を活性化するものである。上述のように、生物活性水には多量の気体が気泡となって水中に存在しており、この気泡は外力により崩壊したり合体したりする。そこで、生物活性水に外力を与えて発生する気体を利用するものである。
【0057】
気泡を崩壊させる外力としては、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線及び振動からなる群から選ばれる少なくとも1種のものを制御して用いることが好ましい。それにより効率よく気体を発生させて気体を利用したり、気体を水から分離したりすることができるものである。
【0058】
圧力変化により外力を与える場合、加圧装置又は減圧装置に生物活性水を入れることにより生物活性水にかかる圧力を常圧よりも高くしたり低くしたりして衝撃を与えることができる。すなわち、圧力が変化された生物活性水(気液混合液)は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また気体が水から放出するのである。圧力変化としては、液体の圧力を+0.01MPa以上の圧力にすること、又は−0.01MPa以下の圧力にすること、つまり液体圧力と気泡内圧との圧力差を絶対値で0.01以上にすることが好ましい。圧力変化がこの条件を満たさないと気体の発生量が少なくなるおそれがある。また、これらの圧力を交互に変動させたりして外力を与えてもよい。
【0059】
温度変化により外力を与える場合、生物活性水を加温してもよいし冷却してもよい。また、加温と冷却を交互に繰り返し行って外力を与えてもよい。
【0060】
加温により外力を与える場合、ヒーターなどの加温手段をオンにして常温常圧で製造された生物活性水、すなわち気液混合液の温度を上昇させる。温度が上昇された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また気体が水から放出するものである。加温する温度としては、気体発生の速度に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、生物活性水を10〜30℃程度以上に上昇するように加温し、徐々に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、生物活性水を1〜10℃程度以上に上昇するように加温する。
【0061】
また、冷却により外力を与える場合、冷却熱交換器をオンにして常温常圧で製造された生物活性水の温度を低下させる。温度が低下された気液混合液は、冷却により気体の飽和溶解濃度が上がり気泡が崩壊して水に気体がより多く溶解するようになる。冷却する温度としては、例えば、生物活性水の温度が1〜30℃程度で温度が低下するように冷却する。
【0062】
また、衝撃波により外力を与えることもできる。衝撃波としては、電波、マイクロ波などを用いることができ、例えば衝撃波としてマイクロ波を用いる場合、マイクロ波発生装置を用い、マイクロ波発振子から生物活性水にマイクロ波の振動を与えることができる。このとき、振動波を与えられた生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。マイクロ波の周波数としては、周波数915KHz、2.4〜2.5GHz、5.7〜5.9GHzのいずれかであることが好ましい。周波数の範囲がこの範囲を外れると気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0063】
また、超音波により外力を与える場合、超音波発生装置を用い、超音波振動子から生物活性水に超音波振動が与えることができる。このとき、振動された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。超音波の周波数としては、周波数16KHz以上2.4GHz未満であることが好ましい。周波数の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0064】
また、赤外線により外力を与える場合、赤外線照射器を用い、赤外線照射器の照射口から生物活性水に赤外線を与えることができる。このとき、赤外線が照射された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。赤外線の波長としては、波長3〜1000μmであることが好ましい。波長の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0065】
また、撹拌により圧力を変化させてもよい。撹拌により外力を与える場合、撹拌装置を用い、生物活性水を撹拌装置に入れて撹拌させることができる。また、生物活性水を送りながら連続的に撹拌により外力を加えるようにしてもよい。このとき、振動された生物活性水の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が水に溶解し、また、気体が水から放出するものである。気体を液体から放出させたい場合の撹拌条件としては、液体が回転中心からの距離rに反比例する円周速度v=C(const)/rで回転してつくる渦運動である自由渦運動の撹拌の場合、圧力p=const−ρ÷2×C^2÷r^2および2×π×C=constの2式から圧力上昇値pが求められるが、渦運動している全域において絶対圧でpが-0.1MPa以下の領域があることが好ましい。また、撹拌条件としては、液体が回転中心からの距離rに比例する円周速度v=rω (ω:一定角速度)で回転してつくる渦運動である強制渦運動の撹拌の場合、圧力p=ρ÷2×ω^2×r^2+constの式から圧力上昇値pが求められるが、渦運動している全域において絶対圧でpが-0.1MPa以下の領域があることが好ましい。撹拌による外力がこれより強くても弱くても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。撹拌の場合、気液混合液に振動を与えることができる。
【0066】
このように、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動といった外力を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させることによって、気泡として存在している大量の気体をこれらの手段で瞬時に多量に水に溶解させたり、水から放出させたりすることができ、簡単に効率よく気体を発生させて生物の活性化に利用することができるものである。
【0067】
図1〜4は、本発明による生物活性水を利用した例である。各図における生物活性水製造装置Xには後述の生物活性水製造装置A又はBを用いることができる。そして、生物活性水製造装置Xから得た生物活性水BWを動物(魚Fs)や植物Plや微生物に供給するようにしている。
【0068】
図1は、生物活性水により魚介類を養殖する一例である。
【0069】
魚介類の養殖には、液体に養殖用の水(真水、海水、河川の水、地下水など)を用い、気体として酸素(又は空気)を用いた生物活性水BWを利用することができる。
【0070】
図示の形態では、魚Fsを養殖する水槽50(飼育水槽)の上流側の水流路52に、生物活性水製造装置Xから生物活性水が吐出される吐出部7を接続し、この上流の水流に注入して水槽50に生物活性水BWを供給するようにしている。それにより、通常の酸素濃度以上の酸素が生物活性水BWによって与えられて魚Fsの育成速度が向上する。特に、高密度養殖を行う場合、酸素不足を解消することができる。また、水温が高い条件での養殖においては酸素濃度が低下しやすいが、このような場合でも生物活性水BWを供給することで魚介類の飼育水の酸素濃度を高く維持することができる。そして生物活性水BW中の気体は長期間に亘って安定に保持され液体から分離しないので、長期に亘って水槽50内にある水の気体溶解濃度を高濃度に維持し、水槽50での酸素不足を防止することができる。
【0071】
一般的に、陸上での魚介類の養殖では、図1のような掛け流し養殖が行われている。掛け流し養殖とは、水槽50を陸上に載置し、水をポンプ51(掛け流し用ポンプ)で水槽50に供給し水槽50からオーバーフローさせて、養殖の水として必要な溶存酸素濃度を確保し、水の清浄度を保つ養殖方法である。オーバーフローされた水は放流路53から外部に放流される。図示のように、掛け流し養殖では、上流側の水流路52における水流に生物活性水BWを供給するものである。このとき、生物活性水BWは物理的衝撃や大きな温度変化で大きな気泡となり気体が水中から放散するため、比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。また、従来、掛け流し養殖では飼育水槽の酸素濃度を安定させるため大量の水を汲み上げ供給することを必要としていたが、生物活性水BWを利用した養殖方法によれば、少量の水で養殖を行うことができ、ポンプ等の動力費の低減が可能となる。
【0072】
魚介類の養殖はこれに限られず、同様に生物活性水を魚介類に供給することによって、海洋での生簀養殖や、魚介類の輸送などを行うことができる。例えば、海洋での生簀養殖においては、生簀に生物活性水を供給することにより、水温上昇と過密養殖における水の溶存酸素の低下を防止又は抑制することができる。また、魚類の活魚輸送では輸送車の水槽に酸素供給する必要があるが、生物活性水を供給することで少量の酸素または空気で高濃度の溶存酸素を維持することができる。そして、生物が酸素を消費しても酸素溶解度が飽和溶解濃度に維持されるので、生物活性作用を維持することが可能となる。
【0073】
また、気体として、酸素以外にオゾン、又は酸素とオゾンとの混合気体を使用することもできる。その場合、水槽中の水を殺菌消毒し、魚介類の飼育水槽で発生する魚病を抑制して魚介類を活性化することができる。
【0074】
また、気体として炭酸ガスを用いることもできる。養殖での魚類の魚病の検査においては、炭酸ガスを水に溶解させた液体(炭酸ガス水)が魚の麻酔として使われている。その際、炭酸ガス水は炭酸ガスボンベを用いて濃度管理を行って調製しており、炭酸ガス濃度の管理が行いにくいという問題がある。しかし、炭酸ガスを溶解させた生物活性水は長期にわたり安定であり、この生物活性水を定量で水槽に供給することにより魚類の麻酔を簡単に行うことができるものである。また、魚類の活魚輸送において、輸送車の水槽に炭酸ガスで生成した生物活性水を供給し、上記の麻酔効果を利用して魚を仮死状態で搬送することも可能である。
【0075】
図2は、生物活性水により植物を栽培する一例である。
【0076】
植物の栽培には、液体に栽培用の水(真水、海水、河川の水、地下水など)を用い、気体として酸素(又は空気)、窒素、又は炭酸ガスを用いた生物活性水BWを利用することができる。
【0077】
図示の形態では、植物Plの養分を溶かした水を植物Plを固定した栽培槽60に循環させ育成する水耕栽培の一例が示されている。溶液タンク64に貯留された水(養分を含んだ水)は、循環ポンプ61により水流路62を通り栽培槽60に送られる。その際、水流路62に吐出部7を介して接続された生物活性水製造装置Xから生物活性水BWが水に注入される。栽培槽60の水は循環流路63を通って溶液タンク64に送られる。こうして、水が循環されて水耕栽培が行われる。
【0078】
植物Plの根は水に浸かっており水とともに養分を吸収する。この水の溶存酸素を高めると収穫量が30%程度向上するとの知見もある。そこで、栽培槽60の上流側の水流に生物活性水製造装置Xから吐出される生物活性水BWを供給すれば、この生物活性水BWによって栽培槽60中の水の酸素濃度を向上させることができ、植物Plの栽培効率を向上することができるものである。なお、図1の場合と同様に、生物活性水BWは物理的衝撃と大きな温度変化で大きな気泡となり気体が水中から放散するため比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。
【0079】
一般的に、水中の溶存酸素を向上させる場合、直径数十ミクロンのマイクロバブル供給が使用されているが、マイクロバブルは浮力で上昇するため、水耕栽培のような長い流路では途中で気体が水から放散しロスがあった。しかしながら、生物活性水BWを利用した栽培方法では、浮力がないナノバブルを利用しているため水路の途中で放散することなく供給した気体が有効に使えることとなる。
【0080】
同様に、土壌での植物栽培にも生物活性水を利用することができ、通常の水やりと同じようにして生物活性水を供給することで、植物の根の環境が好気雰囲気となり水耕栽培と同じく活性化の効果を得ることができる。
【0081】
また、気体として窒素や炭酸ガスを用いることもできる。窒素を供給すれば成長に必要な養分の一つが供給されて植物の成長を促進することができる。また、炭酸ガスを供給すれば、光合成のために必要な二酸化炭素を供給することができる。特に光合成のために水中にて二酸化炭素を必要とする海藻や水中植物、例えば観賞用の海草・水草に効果的に二酸化炭素を供給することができるものである。
【0082】
次に、図3により、生物活性水を利用した水浄化設備について説明する。
【0083】
一般的に終末処理場等の水浄化設備としては微生物を利用した生物処理方式が用いられている。水のBOD(生物化学的酸素要求量)等の汚れは好気性の微生物を利用して行われるため処理水槽中の水の酸素濃度が高く維持される必要がある。そこで、気体として酸素(又は空気)を用いた生物活性水を浄化設備に利用する。
【0084】
図3(b)は、一般的な接触酸化方式の水浄化設備の一例である。この水浄化設備は、処理槽70の内部中央に、隙間を空けた板材を積層して形成した接触板71を配置し、この接触板71に微生物を固定化(生物膜を形成)し、隙間に水を回流させることで、水の浄化を行っている。通常、接触板71の下方に、散気管73から送られた空気を処理槽70内の水に供給する散気盤74を設けて酸素の供給を行っており、その際、気泡の上昇する水流で処理槽70内の水の回流を作っている。図中、水の流れ(旋回流)を矢印で示している。また「B」は、気泡(マイクロサイズ以上の気泡)である。なお処理槽70は、上部に配置された円筒形状の円筒部70aと、下部に配置された円錐形状(断面逆三角形状)の円錐部70bとで形成されている。この方式では散気される気泡は数ミリから数十ミリと大きく酸素の溶解効率は低い。純酸素等の供給も行われているが、気泡径が大きいために溶存効率が低いという問題がある。一方、生物活性水を利用すれば、ナノサイズの気泡には浮力がないので、供給した気体が回流途中で放散することなく有効に使えることとなる。
【0085】
図3(a)は、生物活性水BWを利用した水浄化設備の一例である。この水浄化設備では生物活性水製造装置Xの吐出部7が処理槽70に接続されている。図示の形態では、撹拌翼72の回転により回流を作っているが、ポンプにより回流を作ってもよい。生物活性水BWは物理的衝撃と大きな温度変化で気体が大きな気泡となり気体が水中から放散するため比較的穏やかな水流に供給することが好ましい。そのため、図示の形態では、回流を作る撹拌翼72の前段(円錐部70b)ではなく、ゆっくりとした流れになる回流の後段である、円筒部70aの高さ略中央の内周側に吐出部7が接続されている。このように生物活性水BWを供給することで、ロスがない酸素供給を行うことができる。なお、生物活性水BWの供給位置はこの位置に限定されるものではない。また、従来の散気管74等の方式の水浄化設備、担体流動方式等の水浄化設備に生物活性水BWを供給するようにしてもかまわない。
【0086】
図4は、生物活性水BWを利用した、嫌気と好気の水浄化設備の一例である。この水浄化設備は、図3(a)の水浄化設備と同様に構成されるのに加え、生物活性水製造装置Xに供給する気体を切替える気体切替手段75が設けられている。気体切替手段75は生物活性水BWを生成するための気体を切替えるものであり、後述の生物活性水製造装置X(A又はB)における気体供給部2と兼用させたり、気体供給部2に接続したりして構成することができる。この気体の切替により酸素を含む気体と窒素とが切替えられて生物活性水BWが生成される。
【0087】
水浄化設備でアンモニア等の窒素成分を除去するには好気性と嫌気性の微生物処理を繰り返し行うことが一般的である。その際、好気の処理槽の後段に嫌気の処理槽を設け、これらの処理槽を循環させる循環方式と、一つの処理槽で好気と嫌気を所定時間で切り替えて処理する一槽方式とがある。図示の設備にあっては、生物活性水BWを利用して一槽方式で水浄化処理を行うことができるものであり、酸素気体を含む生物活性水BWaと窒素気体のみを含む(酸素を含まない)生物活性水BWbとを交互に供給することで好気と嫌気の切替時の時間短縮を図ることができる。嫌気での気体は特に窒素に限定されるものでなく、炭酸ガスや、アルゴンなどの不活性ガスなどを用いてもよい。
【0088】
また、閉鎖水域の浄化に生物活性水を利用することもできる。酸素などの気体を含んだ生物活性水を海洋、湖沼での閉鎖水域に供給することで、貧酸素による汚れの蓄積を浄化することができるものである。
【0089】
次に、生物活性水製造装置について説明する。以下の生物活性水製造装置(A又はB)はいずれも、図1〜4における生物活性水製造装置Xとして利用できるものである。
【0090】
図5は、生物活性水製造装置の実施の形態の一例である生物活性水製造装置Aを示す概略図である。生物活性水製造装置Aとしては、水に気体がナノサイズの気泡になって存在する気液混合液(気液混合水)を生成する気液混合液製造装置を用いる。
【0091】
図5の生物活性水製造装置A(気液混合液製造装置)は、水を含む液体を圧送して連続的に気液混合液を製造するものであり、水道配管や貯水槽などの水供給源から水又は水を含む液体を取り入れる入液部1と、入液部1から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7とを備えており、各部は流路6に接続して設けられている。
【0092】
流路6は、装置の各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプやホースなどの管体で構成される。流路6は、気液混合部3より上流側の流路6a、減圧部5より下流側の流路6c、その間の各部を結ぶ流路6bにて構成されている。
【0093】
入液部1は、装置の外部にある水供給源から装置の内部に水を含む液体を入れるためのものであり、図示の形態では、水道配管などの水供給源に通じる外部流路19と接続された流路6aの入口として構成されている。この入液部1には、開閉して液体の流入量や圧力を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0094】
気体供給部2は、液体が流れる流路6などに接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、図示の形態では気液混合部3に接続される管体などにより構成されている。そして、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を気液混合部3に接続して気体供給部2を形成することができる。あるいは気体として、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを気液混合部3に接続して気体供給部2を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部2をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。気体供給部2の接続位置は、図示のように気液混合部3に接続してもよく、気液混合部3よりも上流側の流路6に接続してもよい。
【0095】
気液混合部3は、入液部1から送られてきた液体を圧送するとともにこの液体に注入された気体と液体を混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。図示の形態では、気液混合部3はポンプ11で構成して設けてある。気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
【0096】
上記のような気液混合部3を構成するポンプ11により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には水分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0097】
図6は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図2において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸21の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
【0098】
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細なナノサイズの気泡BNが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡BNが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
【0099】
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
【0100】
気液混合部3による加圧は、気液混合部3を複数設けて、複数回加圧してもよい。液体を送りながら複数回加圧することにより、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、気液混合部3を二つ以上のポンプ11やベンチュリ管で構成することができるものである。
【0101】
ここで、図7(a)のように、気液混合部3(又は気液混合部3の一部)をベンチュリ管12で構成し、ベンチュリ管12の側管を気体供給部2として機能させて、急激な加圧を液体にかけて気体を液体に注入することもできる。このようにベンチュリ管12を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示のベンチュリ管12は、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に小さくなる流入側管部12aと、ベンチュリ管12内において断面積が最も小さくなる絞り管部12bと、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に大きくなる流出側管部12cとから構成されている。絞り管部12bに気体供給部2の一端が接続してあり、この気体供給部2から供給された気体は、絞り管部12b内において液体に注入されるようになっている。
【0102】
また、図7(b)のように、気体供給部2と気液混合部3(又は気液混合部3の一部)とを兼用して電気分解手段13で構成し、電気分解して発生する気体を水に供給しナノサイズの気泡にして混合するようにしてもよい。この場合、液体に注入される気体は水の電気分解により発生する水素と酸素になる。電気分解により発生した気泡はナノサイズの気泡となり液体である水中に存在する。このように電気分解手段13を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。また、電気分解手段13の下流側にさらにポンプ11を設けてもよく、その場合、電気分解手段13によって気体が発生し供給された液体は、ポンプ11の作用によって確実にナノサイズの気泡を発生させることができる。図示の電気分解手段13では流路6aから送られた水が電気分解手段13の電気分解槽に貯留され、陽極(+)と陰極(−)とによって電圧が印加されて水が電気分解するようになっている。電気分解により気体が供給された液体(水)は流路6bから下流側に送られる。
【0103】
気体分離部4は上記のようにして気体が混合された液体から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡(マイクロサイズ以上の気泡)を取り除くものである。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0104】
気体分離部4は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0105】
気体分離部4としては、具体的には、図8のような構成にすることができる。(a)は、気液混合部3と連続して地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、気液混合部3と連続すると共に気液混合部3と合わせた形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、気液混合部3とは別体にし、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。
【0106】
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
【0107】
減圧部5としては、図9のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
【0108】
例えば図9(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
【0109】
減圧された液体は流路6cを通って吐出部7に送られる。なお、その際、図10のように、吐出部7と減圧部5との間に、流路6に加えて、気液混合部3における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、気液混合部3からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
【0110】
上記のように構成された生物活性水製造装置Aにあっては、入液部1から入った水を含有する液体に、気体供給部2により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ11で構成された気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から気体分離部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部4で気液混合液中のナノサイズを超える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を連続的に生成することができ、この気液混合液を生物活性水として利用することができるものである。そして、装置を稼動させて連続的に生物活性水を得ることができるものであり、この生物活性水を生物に連続して供給することが可能になるものである。すなわち、バッチ式の生物活性水製造装置ではバッチ式で生物活性水を製造するため生物活性水を1バッチ分しか連続して吐出することができないが、連続式の生物活性水製造装置であれば連続して(半永久的に)生物活性水を造り出して生物に供給することができるものである。
【0111】
なお、気液混合部3よりも下流側の流路6(6b及び6c)は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくして、生物活性水を簡単に得ることができる。
【0112】
図11は、生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、この装置では、水を含有する液体の前処理を行う前処理部14を設けてある。気液混合液を生成する際に水をあらかじめ処理しておくことによって、気液の混合を一層効率よく行うことができる。この装置では前処理部14が、入液部1と気液混合部3との間の流路6に設けられている。その他の構成は、図5の装置と同じである。
【0113】
前処理部14は、液体の温度を冷却する冷却部、異物など液体中の不純物を取り除く浄化フィルター、又は液体中に含まれる気体を取り除く脱気部などによって構成され、気液混合部3において気体と液体とを混合しやすくするために、入液部1から送られてくる液体に前処理を行うものである。この前処理部14で前処理を行うことにより、気体と液体の混合性を高めて、より多くのナノサイズの気泡を生成することができるものであり、高濃度に気体が混合した気液混合液を生成して生物活性水の活性作用をさらに向上することができるものである。
【0114】
例えば、前処理部14として冷却部を用いた場合は、入液部1から送られた液体は冷却部で冷却され、冷却された状態のまま気液混合液が生成される。冷却部は、例えば、流路6に冷却熱交換器を巻き付けて取り付けるなどして形成することができる。冷却状態の水を用いて液体と気体の混合を行うと、ナノサイズの気泡が形成され、そのナノサイズの気泡は液体が冷却されているために安定化されて崩壊することなく下流側に送られることになり、ナノサイズの気泡を形成する気体量を高めて高濃度の気液混合液を生成することができる。そして、生物活性水は常温よりも温度が低い状態で生成される。この冷却状態の生物活性水を吐出部7から吐出して利用する。冷却温度としては、液体の温度が常温以下となるようにする程度であればよく、例えば、0〜25℃にすることができる。吐出された生物活性水はそのまま使用してもよいし、冷却状態を保つように冷却して貯留してもよい。冷却したまま貯留すると、気泡を長期に安定に保持することができる。そして、外気温や使用時の温度により気液混合液の温度が上昇して液中の気泡が崩壊して、気体が溶解したり発泡したりして、生物活性作用を高めることができるものである。
【0115】
また、前処理部14として浄化フィルターを用いた場合は、入液部1から送られた液体は浄化フィルターでゴミなどの異物が取り除かれて浄化され、浄化された水で気液混合液が生成される。浄化フィルターは、例えば、流路6の内部に網目状(メッシュ状)のフィルターを取り付けたり、樹脂等が充填されたフィルター管を流路6に設けたりして液体を通すものなどによって形成することができる。具体的には、中空糸膜フィルターや不織布フィルターや糸巻きフィルターなどを利用することができる。そして、この浄化された水で気液混合液を生成することによって、異物などの不純物がない清浄な液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって生物活性水に安定に存在するので、生物活性作用を高めることができるものである。
【0116】
また、前処理部14として脱気部を用いた場合は、入液部1から送られた液体は脱気部で液体内の気体が取り除かれて気体のない状態にされ、気体が含有されていない状態の水で気液混合液が生成される。脱気部は、例えば、流路6の内部に向かって超音波を照射する超音波装置や、急激に液体を減圧して内部の気体を放出させる減圧装置などによって形成することができる。また、中空糸脱気膜などの脱気フィルターを用いて脱気してもよい。そして、気体が取り除かれた水で気液混合液を生成することによって、気体が含有されておらず気体が欠乏状態となった液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって生物活性水に安定に存在するので、生物活性作用を高めることができるものである。
【0117】
そして、前処理部14は、上記の冷却部と浄化フィルターと脱気部とのいずれか二つ以上を併用して構成することができる。この場合、単独の処理方法で前処理部14を構成した場合に比べてさらに気液の混合性が高まり、高濃度の気体を液体に混合させることがより可能になるものである。具体的には、例えば、中空糸膜フィルターなどの脱気浄化フィルターを用いれば浄化フィルターと脱気部とを兼用することができる。
【0118】
図12は、生物活性水製造装置Aの実施の形態の他の一例を示す概略図であり、この装置では、吐出部7と減圧部5との間の流路6cに、気液混合液である生物活性水に外力を与える外力制御部15を設けてある。
【0119】
外力制御部15は、温度変化を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、超音波を照射する超音波制御部、赤外線を照射する赤外線制御部、又は振動を制御する振動制御部などによって構成され、減圧部から送られてくる生物活性水にスイッチをオンして外力を与えて、生物活性水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を水に溶解したり、気体を水から分離したりするものである。
【0120】
例えば、外力制御部15として振動を付与する振動制御部を用いた場合は、常温で生成した生物活性水に振動制御部をオンすることにより振動を与え、生物活性水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を水に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を水に溶解させれば、気体の溶解による生物活性作用の向上を発揮して生物を活性化することができ、また、気体を発泡させれば発泡作用で生物を活性化することができる。
【0121】
そして、外力が与えられてナノサイズの気泡が崩壊した生物活性水は吐出部7から吐出され、生物に供与されたり容器に溜められたりする。吐出部7から吐出された生物活性水は、ナノサイズの気泡の崩壊によって生物活性作用が高められている。上記では、外力制御部15として振動を制御したものを説明したが、温度制御、圧力制御、衝撃波、超音波、赤外線などを制御してもよく、外力の条件としては、上記で説明した生物活性化方法の外力条件と同様の条件にすることができる。
【0122】
この装置にあっては、気液混合液である生物活性水を製造した後、すぐにナノサイズの気泡を崩壊させて生物の活性化に利用することができ、また、任意の量でナノサイズの気泡を破裂し一体化させて放散することができるので、発泡による生物の活性作用の度合いを制御して効率よく生物を活性化することができるものである。
【0123】
図13は、生物活性水製造装置の実施の形態の他の一例である生物活性水製造装置Bを示す概略図である。
【0124】
この生物活性水製造装置B(気液混合液製造装置)は、気液混合液をバッチ式で製造するものであり、水道配管や貯水槽などの水供給源から水又は水を含む液体を取り入れる入液部1と、入液部1から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧しながら液体と気体とを混合して加圧状態の気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合部3で生成した気液混合液を加圧状態を維持して密閉状態で貯留する圧力保持容器30と、気液混合部の逆流を防止する逆流防止機構33と、気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構31と、圧力保持容器30に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構32とを備え、圧力保持容器30には液体が流れる流路6が接続されている。
【0125】
流路6の上流側(圧力保持容器30と反対側)は、入液部1と接続した外部流路19を介して水道配管や水貯留槽などの水供給源に接続されており、この液体供給源から供給される液体が流路6を通って下流側(圧力保持容器30側)に向かって送られる。液体を流路6に送り出すための圧力としては水道配管のように加圧された液体供給源の圧力を用いてもよいし、ポンプ11の汲み上げの圧力を用いてもよい。
【0126】
気体供給部2は、図5の装置と同様の構成にすることができ、気液混合部3よりも上流側の位置で流路6に接続してあればよく、この装置では、気体供給部2の接続位置を気液混合部3及び逆流防止機構33よりも上流側の位置にしてあるが、逆流防止機構33と気液混合部3との間の流路6に接続したり、気液混合部3に直接接続したりしてもよい。
【0127】
気液混合部3は、流路6に設けられ、気体供給部2によって気体が供給された液体を加圧しながら液体と気体とを混合し、気体を微細なナノサイズの気泡にして液体中に分散・混合させて、加圧状態の気液混合液を生成するものである。この装置ではポンプ11で気液混合部3を形成してある。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできるが、気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。また、ポンプ11を用いる場合は、水供給源に貯蔵されている大気圧の水を汲み上げることもできる。ポンプ11としては、上記で説明した、図6のようなものを用いることができる。また、この装置にあっても、図7で示したものと同様に、気液混合部3をベンチュリ管12で構成したり、電気分解手段13で構成したりしてもよい。
【0128】
圧力保持容器30は生成した気液混合液を貯留するためのものである。圧力保持容器30は、加圧状態で送られる気液混合液の圧力を維持できるように密閉性のある容器として形成されており、例えば、耐圧性容器などで構成される。
【0129】
そして、気液混合部3であるポンプ11の駆動の開始と停止とにより所定量の気液混合液が生成される。すなわち、ポンプ11に接続されたポンプ電源をオンにするとポンプ11の駆動が開始し、気液混合部3内において液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができる。生成した気液混合液は、流路6を通って順次に圧力保持容器30に送り出される。そして、圧力保持容器30に貯留された気液混合液の量が所定量に達するとポンプ電源をオフにしてポンプ11の駆動を停止し、液体の送り出しをストップする。なお、気液混合部3が電源制御する機構のものでない場合(例えばベンチュリ管12のみの場合)は、流路6への液体の送出の開始又は停止によって気液混合部3の駆動が自動的に開始又は停止される。
【0130】
上記のような気液混合部3により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から圧力保持容器30に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0131】
生成した気液混合液は圧力保持容器30に送り出されるが、その際、気液混合液が圧力保持容器30とは反対側(上流側)に流出したりして急激に減圧したりすることがある。加圧状態の気液混合液が急激に減圧するとナノサイズの気泡が崩壊して気体が分離してしまうおそれがある。そこで、この装置にあっては、気液混合部3から送り出されて圧力保持容器30に貯留される気液混合液の加圧状態を維持するように逆流防止機構33を流路6に設けてある。
【0132】
逆流防止機構33は、この装置では電動バルブ33aで構成し、気液混合部3よりも上流側(前段)の流路6に設けてあるが、これに限らず、逆流防止機構33を気液混合部3と圧力保持容器30との間の流路6、すなわち気液混合部3の後段の流路6に設けるようにしてもよい。このように逆流防止機構33を設けることによって、気液混合液が逆流することなく加圧状態を維持したまま送り出されて圧力保持容器30に貯留されるので、ナノサイズの気泡が崩壊されることを防止できる。
【0133】
この逆流防止機構33は、気液混合液が所定量生成されて気液混合部3の駆動が停止したときに、気液混合液の加圧状態を維持することが好ましい。すなわち、ポンプ11などの気液混合部3の駆動が停止すると、液体を送り出す圧力が消失して気液混合液が上流側に逆流して気液混合液が急減に減圧することがある。気液混合液が急激に減圧するとナノサイズの気泡が崩壊して気体が分離してしまうおそれがある。そこで、ポンプ11の駆動が停止した後も、逆流防止機構が気液混合液の加圧状態を維持して急激に減圧することを防止するものである。
【0134】
逆流防止機構33としては、電動バルブ33aに限られるものではなく、逆流防止弁であってもよい。電動バルブ33aで構成した場合、電気的に弁の開閉の制御を制御することができるため、電気制御で確実に弁の開閉を制御して気液混合液の加圧状態を確実に維持し、気液混合液が逆流で不用意に減圧してナノサイズの気泡が崩壊するようなことを防止することができる。一方、逆流防止弁で構成した場合、簡単な構成で気液混合液が逆流して減圧することを防ぐことができ、容易に気液混合液の加圧状態を維持してナノサイズの気泡を崩壊することを防止できる。
【0135】
圧力保持機構31は、圧力保持容器30に貯留される加圧状態の気液混合液の圧力を、少なくとも気液混合部3が駆動する間、気液混合液から分離された気体を排出することにより一定に維持するものである。圧力保持機構31としては、気体排出弁など、弁の開閉によって容器内の気体を排出するもので構成することができる。気液混合部3で生成した気液混合液は生成した後、順次に圧力保持容器30に送られるので、圧力保持容器30では加圧状態の気液混合液が徐々に量を増しながら貯留される。一方、圧力保持容器30は密閉状態になっており、加圧状態の気液混合液が増えると容器内の圧力が次第に上がる。気液混合液の圧力が上がりすぎるとナノサイズの気泡が圧力変化の衝撃により崩壊するおそれがある。また、気液混合部3での加圧よりも高い加圧が不均一にかけられた場合は、気泡径を変化させるなどしてナノサイズの気泡を不安定化させるおそれがある。また、圧力保持容器30の圧力上昇が伝わって気液混合部3で加圧する圧力が高くなって気液混合部3で生成するナノサイズの気泡の量が変化するおそれがある。さらに、ナノサイズを超える気泡が液体から排出されて容器内(容器上部)の気体量が増えて加圧度が一定にならないことがある。しかし、圧力保持機構31で気液混合部3の駆動中、圧力保持容器30に貯留された気液混合液の加圧状態を一定にすることにより、気液混合液に不要な加圧がかかったりしてナノサイズの気泡が崩壊することを防止することができ、また、ナノサイズの気泡の生成量を安定にすることができ、ナノサイズの気泡の量が安定した気液混合液を生成することができるものである。
【0136】
圧力保持機構31は、圧力保持容器30で貯留された加圧状態の気液混合液から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡を取り除くようにするものであることが好ましい。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0137】
マイクロサイズの気泡の除去は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにして行うことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、この浮力を利用してマイクロサイズの気泡を取り除くのである。液体から取り除かれ放出された気泡は気体となって容器上部に集積する。このようにして放出された気体は、気体を排出する管などで排出することができ、気体排出弁として構成された圧力保持機構31により取り除くことができる。このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0138】
図14は、圧力保持容器30でマイクロサイズの気泡Bを取り除く様子を示す概略図である。なお、説明の便宜のため気泡Bを拡大して描写してある。圧力保持容器30に貯留された液体Lq中の気泡Bには浮力が働き、気泡Bが液面まで上昇する。液面に到達した気泡Bは液体外に放出され容器上部の気体と一体になって容器上部に滞留する。こうして滞留した気体は圧力保持機構31である気体排出弁から排出される。
【0139】
圧力保持容器30の深さD、すなわち所定量の気液混合液を貯留したときの圧力保持容器30の底面から気液混合液の上面までの距離は、10〜900mmであることが好ましい。下記の気泡の上昇速度を考慮すると、圧力保持容器30の深さがこの範囲になることで、貯留量を十分にするとともに、マイクロサイズの気泡を浮力で簡単に取り除くことができる。
【0140】
気泡の上昇速度Vは、ストークスの法則から、
V(m/s)=1/18×g×d/γ
[g(m/s2):重力加速度、 d(m):気泡の直径、 γ(m2/s):水の動粘性係数]
である。
【0141】
また、気液混合液を圧力保持容器30に加圧状態(0.15MPa以上)を維持して一定時間貯留することが好ましい。気液混合液を圧力保持容器30に所定時間(0.1〜1秒程度以上)、静置条件で保持して貯留することにより、マイクロサイズの気泡を浮力で確実に取り除くことができる。なお、圧力保持容器30の容量としては、0.5〜10L程度にすることができる。
【0142】
ところで、ストークスの式にあてはめると、気泡の上昇速度Vは、気泡直径が20μmの場合、V=0.243mm/secとなり、気泡直径が10μmの場合、V=0.06mm/secとなり、気泡直径が1μmの場合、V=0.0006mm/secとなる。
【0143】
例えば内径100mmの円筒形状のタンクの場合、20μmの気泡が水と完全に分離するためには、気泡上昇速度から、気泡は10分(600秒)放置で0.243×600=145mm浮上移動するので、タンク底から水面までの距離が145mm以下であれば、20μmの気泡が分離できることになる。この場合、タンク容量は約1Lになる。
【0144】
1μmの気泡の分離について同じように計算すると、10分放置で0.06×600=0.36mm、1時間放置で2.16mm、24時間放置で51mm、気泡が上昇することになる。
【0145】
しがたって、ナノサイズを超える大きさの気泡(1μm以上の気泡)は、D(深さ)<V(気泡上昇速度)×T(静置時間)となるように圧力保持容器30の深さDを設定したり、T(静置時間)>D(深さ)/V(気泡上昇速度)となるように圧力保持容器30内で気液混合液を静置する時間Tを設定したりすることによって取り除くことができるものである。
【0146】
こうして、気液混合部3の駆動の開始と停止とにより生成した気液混合液は、圧力保持容器30に所定の量で貯留される。そして、気液混合液を外部に取り出して利用するために圧力保持容器30で大気圧まで減圧を行う。
【0147】
減圧機構32は、圧力保持容器30に貯液された気液混合液の圧力を調整するものであり、加圧状態の気液混合液の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧・混合により生成した気液混合液は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧機構32を設け、加圧された状態の気液混合液を大気圧まで低下させる際に、減圧機構32で圧力調整をしながら大気圧まで徐々に減圧をし、外部に吐出可能にするようにしているものである。減圧機構32は、圧力保持容器30の上側に設けられて容器上部に滞留した気体を徐々に外部に放出する減圧開閉弁などにより構成できる。
【0148】
この装置では、減圧機構32と圧力保持機構31とが兼用して設けられた形態を示しているが、圧力保持機構31とは別に減圧機構32を設けて、圧力保持容器30の上部に貯留する気体を徐々に排出して圧力調整してもよい。減圧機構32を別に設けた場合は、それぞれの弁によって気液混合液の貯留時と減圧時の圧力調整を適切な条件で行うことが簡単になり、加圧度維持と減圧とを容易に行うことができるものである。
【0149】
減圧機構32にあっては、減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして気液混合液を減圧することができ、それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を大気圧まで減圧することができる。減圧開閉弁で気体を放出する際には、直径0.1〜1mm程度、長さ5mm以上程度の細管(緩減圧管)を減圧開閉弁に接続してこの細管から気体を放出してもよい。細管で気体を放出することにより容易に徐々に減圧することができる。
【0150】
このように、生物活性水製造装置Bでは、圧力保持容器30で減圧することにより、大量の気液混合液(生物活性水)を一度に減圧することが可能であり、また生成した生物活性水を圧力保持容器30に大気圧の状態で(又は大気圧近傍の圧力で、あるいは加圧状態で)貯留しておいて必要なときに外部に取り出して利用することが可能であり、生物活性水を簡単に大量に生成して利用することができるものである。また密閉状態を形成する圧力保持容器30で減圧するので、減圧後も密閉状態を維持することができ、気液混合液を安定に貯水することができるものである。すなわち、連続式で液体を送りながら減圧して気液混合液を生成した場合、保存容器に気液混合液を入れる際の衝撃でナノサイズの気泡が崩壊したり、保存容器が開放状態となっていて気体が分離しやくなったりして、液体中に気体を長期に安定に保持できないおそれがある。また、保存容器を圧力調整で密閉状態にしようとすると圧力変化の衝撃を気液混合液に与えて気泡が崩壊してしまうおそれがある。しかしながら、上記の装置によりバッチ式で生成する場合は、圧力保持容器30をそのまま保存容器として用いることができ、連続式の場合に比べて、大量の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく安定に長期に保存することが可能になるものである。また、気液混合液の減圧を細い流路管などで行う場合、流路管にゴミなどが詰まって故障が発生してしまうおそれがあるが、圧力保持容器30で減圧をすれば配管が詰まるようなことがなく安定して気液混合液を生成することができるものである。
【0151】
大気圧まで減圧された気液混合液は、圧力保持容器30の下部に設けられた取出弁34を開いて取出流路35を通って吐出部7から外部に取り出される。この取出弁34は圧力保持容器30を密閉状態にして貯留する際には閉じられており、気液混合液を外部に取り出す際に開かれるものである。
【0152】
上記のように構成された生物活性水装置Bにあっては、水供給源から送られた水を含有する液体に、気体供給部2で気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から圧力保持容器30へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、圧力保持容器30内で気液混合液中のナノサイズを超える気泡を取り除いた後、該液体を減圧機構32の圧力調整により最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を生成することができるものである。
【0153】
なお、このバッチ式の生物活性水製造装置Bにあっても、図15(a)に示すように、冷却部、浄化フィルター及び脱気部から選ばれる少なくとも一つにより構成される前処理部14を設けてもよい。それにより気液の混合効率が高まって生物活性水の活性作用が向上するものである。前処理部14としては、図11の形態と同様の構成にすることができる。
【0154】
また、図15(b)に示すように、取出流路35に温度制御部、圧力制御部、衝撃波制御部、超音波制御部、赤外線制御部、又は振動制御部といった外力制御部15を設け、圧力保持容器30に貯留された生物活性液を外部に取り出す際に外力を与えて吐出してもよい。それによりナノサイズの気泡の崩壊や発泡などが発生して生物活性作用を高めて生物活性水を外部に取り出することができるものである。外力制御部としては、図12の形態と同様の構成にすることができる。
【0155】
図16は、生物活性水として製造された気液混合液が、安定化されるメカニズムを説明する概念説明図である。図示のように、気泡Bと液体Lqの界面には水素結合距離が通常よりも短い氷やハイドレートのような強固な水分子の結合で境膜構造(結晶構造体)の保護膜Mが形成されており、気液相互の物質移動が阻止されて気泡が安定な状態になったものと考えられる。そして、気液混合液内の気泡(ナノバブル)の内圧は、ヤングラプラスの式から求められる圧力以上となっている。このように気泡界面の水素結合距離が短く、気泡の内圧が高くなることによって、気泡が安定した気液混合液となるものである。そして、気泡の内圧が高いためにより多くの気体を気泡中に入れることが可能となり、高濃度の気体が混合した気液混合液を生物活性水として得ることができるものである。
【実施例】
【0156】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0157】
[生物活性水の製造]
図5の生物活性水製造装置Aを用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として純水を用いてナノサイズの気泡を含有する生物活性水(気液混合液)を生成した。
【0158】
生物活性水製造装置Aとしては、気液混合部3がポンプ11で構成されたものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図6のようなポンプ11aを用いた。
【0159】
気体と液体の比(水に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から脱気泡部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0160】
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図9(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気液混合液を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気液混合液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液(生物活性水)が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0161】
[水素結合の距離]
図17は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた生物活性水(気液混合液))と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。
【0162】
[気体量]
液体として純水を、気体として各種の気体を用い、生物活性水(気液混合液)中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
【0163】
図18は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、例えば水素と水を用いた気液混合液の場合、25℃の純水1Lに水素が、飽和溶解量として17.6mL溶解し、528mLの気体が微細な気泡として存在することが確認された。すなわち、気液混合液に含有する気体量は過飽和溶解量の30倍であった。また同様に、過飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、メタンでは17倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液は飽和溶解濃度以上の高濃度で気体を水中に保持することが可能であり、この高濃度の気体を生物の活性化に利用することができるものである。
【0164】
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した生物活性水(気液混合液)を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
【0165】
図19は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、水素、メタン、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。
【0166】
[気泡の内圧]
生物活性水(気液混合液)中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素、メタン、又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
【0167】
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
【0168】
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
【0169】
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
【0170】
w1 + w2 =1リットル (式A)
また、質量については次の関係式が成り立つ。
【0171】
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(窒素分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
【0172】
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
【0173】
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
【0174】
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
【0175】
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、生物活性水では、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。
【0176】
【表1】
【0177】
[気泡の分布量]
気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
【0178】
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
【0179】
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
【0180】
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
【0181】
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体の主成分がメタンの場合は1.8×10^16個、アルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
【0182】
[生物活性水の安定性]
図20は、空気と水とを混合して生成した生物活性水(気液混合液)について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過してもほぼ一定であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、生物活性水が安定であることが確認された。
【0183】
[加温による外力]
上記のように製造した生物活性水(気液混合液)をヒーターにより加温し、気液混合液の温度を25℃から40℃に昇温すると、温度の上昇に伴ってナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0184】
[超音波による外力]
上記のように製造した生物活性水(気液混合液)に、40kHzランジュバン型振動子を用い出力100Wで超音波を照射した。時間0.05秒程度の瞬間照射で、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が瞬間的に発生した。数秒間(0.5〜30秒程度)超音波を照射することにより、ほぼ全てのナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が急激に発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0185】
同様に100、200、400、800kHzの超音波発生器で超音波を照射した場合も液体表面から気体が放出されるのが確認できた。一方、2.4GHzの超音波照射では気体の放出が確認できなかった。
【0186】
[マイクロ波による外力]
2450MHz帯の出力300W〜300kWのマイクロ波電力応用装置を使用し、数秒間(0.1〜20秒程度)照射したところ出力全域で液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0187】
マグネトロンによるマイクロ波の照射では、水分子の分子間の振動子が振動エネルギーを吸収し振動するためにエネルギー準位が上がり、水素結合が切れる状態が発生し、気体が放出されると考えられる。周波数915KHzまたは5.7〜5.9GHzのマイクロ波においても気泡の界面の水素結合が不安定になり気泡が崩壊し、液体表面から気体が放出されると考えられる。
【0188】
[赤外線による外力]
特に波長3μmから1mmまでの遠赤外線は気泡界面で電磁波を吸収し、熱エネルギーが与えられるため強固な水素結合の結合距離が長くなるとともに気泡内部温度が上昇する。このため、気泡が当然に崩壊するのであり、遠赤外線にて気泡を崩壊させ、液体表面から気体を放出できる。
【符号の説明】
【0189】
1 入液部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 気体分離部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
12 ベンチュリ管
13 電気分解手段
14 前処理部
15 外力制御部
21 回転体
30 圧力保持容器
31 圧力保持機構
32 減圧機構
A、B、X 生物活性水製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする生物活性水。
【請求項2】
気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の生物活性水。
【請求項3】
気体が酸素及びオゾンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項4】
気体が窒素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項5】
気体が炭酸ガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合液を加圧状態を維持して貯留する圧力保持容器と、気液混合液から分離された気体を排出することにより気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構と、圧力保持容器に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置。
【請求項8】
気液混合部をベンチュリ管により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置。
【請求項9】
気液混合部を電気分解手段により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置。
【請求項10】
水を含有する液体を冷却する冷却部を気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項11】
水を含有する液体を浄化する浄化フィルターを気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項12】
水を含有する液体を脱気する脱気部を気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化することを特徴とする生物活性化方法。
【請求項1】
気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする生物活性水。
【請求項2】
気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の生物活性水。
【請求項3】
気体が酸素及びオゾンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項4】
気体が窒素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項5】
気体が炭酸ガスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生物活性水。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を製造する装置であって、水を含有する液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧し液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合部で生成した気液混合液を加圧状態を維持して貯留する圧力保持容器と、気液混合液から分離された気体を排出することにより気液混合液の加圧度を一定にする圧力保持機構と、圧力保持容器に貯留された加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧機構とを備えてなることを特徴とする生物活性水製造装置。
【請求項8】
気液混合部をベンチュリ管により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置。
【請求項9】
気液混合部を電気分解手段により構成することを特徴とする請求項6又は7に記載の生物活性水製造装置。
【請求項10】
水を含有する液体を冷却する冷却部を気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項11】
水を含有する液体を浄化する浄化フィルターを気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項12】
水を含有する液体を脱気する脱気部を気液混合部の前段に備えてなることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の生物活性水製造装置。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物活性水を用い、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波、赤外線、振動からなる群から選ばれる少なくとも1種を制御して生物活性水中の気泡を崩壊させて生物を活性化することを特徴とする生物活性化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図19】
【公開番号】特開2011−88050(P2011−88050A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242421(P2009−242421)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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