説明

産業機械

【課題】 移動機構の揺動を抑えて移動機構を移動させることができ、制御対象物による測定誤差を低減できる産業機械を提供する。
【解決手段】 三次元測定機1は、被測定物を載置するテーブル11と、テーブル11に対して移動可能な支持部213を有し、支持部213で支持されて所定の軸方向へ移動可能に設けられ、プローブ12を所定の軸方向へ移動させる移動機構2と、移動機構2を制御する制御装置と、門型フレーム21に取り付けられ、移動機構2と制御装置とを接続するケーブルを案内して収納するケーブルベア3とを備えるものであって、ケーブルベア3の重心を通ってZ軸方向に延びる重心軸線O−Oが、X軸方向において、支持部213の中心を通ってZ軸方向に延びる支持案内軸P−Pと一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物を測定するために設けられた制御対象物としてのプローブを互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる移動機構と、この移動機構を制御する制御装置と、移動機構に取り付けられ、移動機構と制御装置とを接続するケーブルを案内して収納するケーブル案内装置とを備える産業機械としての三次元測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この三次元測定機では、移動機構は、制御装置によってY軸方向に移動され、プローブをY軸方向に移動させる門型フレームと、制御装置によってX軸方向に移動され、プローブをX軸方向に移動させるXスライダと、制御装置によってZ軸方向に移動され、プローブをZ軸方向に移動させるZ軸スピンドルとを備える。
【0003】
門型フレームとXスライダとZ軸スピンドルとは、それぞれに設けられた駆動モータによって駆動される。例えば、門型フレームは、被測定物を載置するガイド部材としてのテーブルに対して移動可能な支持部を有し、その支持部に支持されて、駆動モータによって駆動される。
門型フレームとXスライダとZ軸スピンドルとはそれぞれ、駆動モータのモータ速度に基づくフィードバック信号が制御装置に送信されるフィードバック信号線と、駆動モータのモータ速度を制御する駆動信号が制御装置から送信される駆動信号線などが入ったケーブルを介して制御装置に接続される。
【0004】
このような三次元測定機では、図1に想像線で示すように、ケーブル案内装置は、門型フレームから所定の離間距離Lだけ離れた位置に取り付けられている。離間距離Lは、ケーブル案内装置の重心を通ってZ軸方向に延びる重心軸線O1−O1と、支持部の中心を通ってZ軸方向に延びる支持案内軸P−Pとの間の距離である。
門型フレームが制御装置によって移動されると、その移動に応じてケーブル案内装置が変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−159151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の三次元測定機では、門型フレームに対して、ケーブル案内装置の重量と離間距離Lとの積で算出されるモーメントが門型フレームの移動方向を中心軸とした回転方向に加わる。このため、門型フレームは、その移動に際して、移動方向を中心軸とした回転方向に揺動する。よって、プローブが門型フレームの移動方向について被測定物を測定するときに測定誤差が生じる。
また、特に、制御装置の近くでは配線量も増え、ケーブル案内装置の重量も増える。このため、前述の揺動がより顕著に現れる。
さらに、設計上の公差などにより、門型フレームの移動方向にわたって離間距離Lも一定ではない。そうすると、門型フレームに加わるモーメントも門型フレームの位置ごとに異なり、前述の揺動がより複雑になる。
【0007】
本発明の目的は、移動機構の揺動を抑えて移動機構を移動させることができ、制御対象物による測定誤差を低減できる産業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の産業機械は、被測定物を載置するガイド部材と、前記ガイド部材に対して移動可能な支持部を有し、前記支持部で支持されて所定の軸方向へ移動可能に設けられ、制御対象物を所定の軸方向へ移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置と、前記移動機構に取り付けられ、前記移動機構と前記制御装置とを接続するケーブルを案内して収納するケーブル案内装置とを備える産業機械であって、前記ケーブル案内装置の重心を通って鉛直方向に延びる重心軸線が、前記移動機構の移動方向および鉛直方向と互いに直交する水平方向において、前記支持部の中心を通って鉛直方向に延びる支持案内軸と一致していることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ケーブル案内装置の重心軸線が、水平方向において、移動機構の支持案内軸と一致しているため、移動機構に対して、ケーブル案内装置の重量に起因して移動機構の移動方向を中心軸としたモーメントが発生することを抑えられる。よって、移動機構が、その移動方向を中心として揺動することなくその方向に沿って移動でき、制御対象物によるその方向に関する測定誤差を低減できる。
【0010】
本発明の産業機械において、前記ケーブル案内装置は、前記ガイド部材を挟んで前記移動機構と反対側に取り付けられることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、ガイド部材や移動機構の内部を加工してケーブル案内装置を収納するスペースを作らなくて済み、ガイド部材を挟んで移動機構と反対側のすでに空いているスペースを利用してケーブル案内装置を収納しておくことができる。このため、産業機械をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る三次元測定機を示す正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る三次元測定機を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1と図2に示す産業機械としての三次元測定機1は、図示しない被測定物を上面に載置するガイド部材としてのテーブル11と、被測定物を測定するために三次元測定機1に設けられた制御対象物としてのプローブ12を移動させる移動機構2と、移動機構2を制御する図示しない制御装置と、移動機構2に取り付けられたケーブル案内装置としてのケーブルベア3とを備える。
テーブル11は基台13上に支持されており、テーブル11の図1中左側部分は基台13よりも図1中左側に突出した突出部11Aとなっている。プローブ12は、被測定物の表面に接触される測定子12Aを備える。
【0014】
移動機構2は門型フレーム21とXスライダ22とZ軸スピンドル23とを備える。
門型フレーム21は、テーブル11における図1の左右方向(X軸方向)の両端から図1の上下方向(Z軸方向)に延出し、図1の紙面手前および奥方向(Y軸方向)に沿ってスライド移動可能に設けられるコラム211A,211Bと、各コラム211A,211Bで支持され、X軸方向に沿って延出する水平ビーム212とを備える。
【0015】
図1中左側のコラム211Aは、テーブル11に対して移動可能な1対の支持部213,213を有し、各支持部213,213には、図示しない荷重受けエアベアリングが設けられている。
各支持部213,213はテーブル11の突出部11A上を移動可能であり、コラム211Aは、突出部11A上で各支持部213,213によって支持されている。これにより、門型フレーム21は支持部213,213によって支持され、制御装置によってY軸方向に移動される。この門型フレーム21のY軸方向への移動によってプローブ12がY軸方向に移動される。
【0016】
Xスライダ22は、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、門型フレーム21の水平ビーム212にX軸方向へスライド移動可能に設けられている。Xスライダ22は制御装置によってX軸方向に移動され、このX軸方向への移動によってプローブ12がX軸方向に移動される。
Z軸スピンドル23は、水平ビーム212内を通ってXスライダ22の内部に挿入されてZ軸方向へスライド移動可能に設けられ、下端でプローブ12を支持する。Z軸スピンドル23は制御装置によってZ軸方向に移動され、このZ軸方向への移動によってプローブ12がZ軸方向に移動される。
【0017】
ケーブルベア3は、テーブル11を挟んで門型フレーム21と反対側に取り付けられる。ケーブルベア3は、内部に収納空間が形成された可撓性の延出収納部31と屈曲収納部32とを備え、移動機構2と制御装置とを接続する後述するケーブルを案内して収納する。
延出収納部31は、図1の紙面手前側から見たときにL字形をしており、コラム211Aの下部に連結されている。延出収納部31は、X軸方向に延びる連結部31Aを有している。
図2に示すように、屈曲収納部32は、左側方から見るとU字形をしており、一方の端部32Aを介して延出収納部31の連結部31Aに連結されている。屈曲収納部32の下直線部32Bは図示しない載置部材上に載置され、他方の端部32Cが載置部材に固着されている。
また、図1に示すように、連結部31Aと屈曲収納部32とは、テーブル11の突出部11Aの下方であってかつ基台13の図1中左側方のスペースに配置されている。
【0018】
門型フレーム21を駆動する図示しない駆動モータに関するフィードバック信号線と駆動信号線などが入った図示しないケーブルが、コラム211Aの下部から延出されて延出収納部31内に収納され、続いて屈曲収納部32内にもそのU字形状に合わせて収納される。
また、図1と図2に一点鎖線で示すように、ケーブルベア3の図示しない重心を通って鉛直方向としてのZ軸方向に延びる重心軸線O−Oは、水平方向としてのX軸方向において、支持部213の中心を通ってZ軸方向に延びる支持案内軸P−Pと一致している。
【0019】
門型フレーム21が図示しない制御装置によってY軸方向に移動されると、コラム211AがY軸方向に移動される。コラム211Aの移動に応じて、主に屈曲収納部32がその可撓性によってY軸方向に変形し、内部に収納されているケーブルに捻じれなどが生じないようにされている。このとき、屈曲収納部32が主にY軸方向に変形するため、ケーブルベア3全体の図示しない重心のY軸方向における位置は変化するが、X軸方向における位置はほとんど変化しない。
【0020】
そうすると、X軸方向において、重心軸線O−Oが支持案内軸P−Pとほぼ一致したまま、コラム211AがY軸方向に移動される。このため、コラム211Aは、Y軸を中心として揺動することなくY軸に沿って移動し、それによって門型フレーム21が、Y軸を中心として揺動することなくY軸に沿って移動する。この門型フレーム21のY軸方向への移動により、プローブ12が、Y軸を中心として揺動することなくY軸に沿って被測定物のY軸方向の測定を行う。
【0021】
以上のような本実施形態の三次元測定機1では、以下の効果がある。
本実施形態の三次元測定機1では、ケーブルベア3の重心軸線O−Oが、X軸方向において、門型フレーム21の支持案内軸P−Pと一致している。このため、ケーブルベア3が図1に想像線で示すような従来の位置に配置されている場合と比べて、コラム211Aに対して、ケーブルベア3の重量に起因してY軸を中心とした図1中反時計方向へのモーメントが発生することを抑えられる。よって、コラム211Aひいては門型フレーム21が、Y軸を中心として揺動することなくY軸に沿って移動でき、プローブ12によるY軸方向に関する測定誤差を低減できる。
【0022】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、プローブ12をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に沿って移動させる三次元測定機1について説明したが、アーム先端や加工工具などを少なくとも1軸方向、例えばX軸方向に移動させる産業ロボットや加工機械などであってもよい。
また、前記実施形態では、ケーブル案内装置として、ケーブルベア3について説明したが、ケーブルベア3以外にも、帯状の薄いプラスチックやスチール等で形成されているものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は産業機械に利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…三次元測定機(産業機械)
2…移動機構
3…ケーブルベア(ケーブル案内装置)
11…テーブル(ガイド部材)
12…プローブ(制御対象物)
213…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置するガイド部材と、前記ガイド部材に対して移動可能な支持部を有し、前記支持部で支持されて所定の軸方向へ移動可能に設けられ、制御対象物を所定の軸方向へ移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置と、前記移動機構に取り付けられ、前記移動機構と前記制御装置とを接続するケーブルを案内して収納するケーブル案内装置とを備える産業機械であって、
前記ケーブル案内装置の重心を通って鉛直方向に延びる重心軸線が、前記移動機構の移動方向および鉛直方向と互いに直交する水平方向において、前記支持部の中心を通って鉛直方向に延びる支持案内軸と一致していることを特徴とする産業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の産業機械において、
前記ケーブル案内装置は、前記ガイド部材を挟んで前記移動機構と反対側に取り付けられることを特徴とする産業機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−42267(P2012−42267A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182214(P2010−182214)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】