説明

甲状腺ホルモン受容体アゴニストを含有する安定な経口医薬組成物

医薬組成物
ある種の甲状腺ホルモン受容体結合性化合物が、腸溶性コーティング、酸化防止剤のいずれか、または腸溶性コーティングおよび酸化防止剤の両方と共に製剤化される、組成物が記載されている。このような製剤は、in vivoでの望ましくない反応生成物の形成を防止するよう作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関する。特に、それだけに限らないが、医薬組成物の薬理活性成分を安定化するための製剤戦略に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬理活性剤については、経口経路の投与が好ましい。しかし、このような薬剤が患者の血流に到達するには、普通は、少なくとも上部消化管(すなわち、胃および小腸)の内容物に曝されてしまう。ある種の薬剤は、胃の酸性環境に敏感である。このような感受性により、普通は薬剤の酸介在加水分解が起こる。加水分解に敏感な薬剤を含有する組成物に腸溶性コーティングを施すことが知られている。このようなコーティングは、一般に酸性ポリマーを含み、このポリマーは、低pH(すなわち胃内)では実質的に非帯電性で不溶性であるが、より高いpH値では(すなわち小腸内を通過するとき)イオン化され、可溶性も増す。
【0003】
以下の構造式を有する化合物1Aは、
【化1】

WO第01/60784号に記載されている(IUPAC名3−[[3,5−ジブロモ−4−[4−ヒドロキシ−3−(1−メチルエチル)−フェノキシ]−フェニル]−アミノ]−3−オキソプロピオン酸)。化合物1Aおよび一連の関連化合物は、甲状腺ホルモン受容体、具体的にはTRβ受容体のアゴニストとして記載されている。このような化合物は、代謝機能不全と関連する疾患もしくはトリヨードチロニン(T)調節遺伝子の発現に依存する疾患の治療または予防に有用なはずである。このような疾患としては、例えば、肥満、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、心不整脈、うつ病、骨粗しょう症、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺癌、ならびに緑内障およびうっ血性心不全が挙げられる。
【0004】
化合物1Aを用いた製剤開発研究を行っている際に、本発明者等は、望ましくない変換が化合物中で起こっていることを意外にも見出した。フェノール環(すなわち、上記に示した場合の左側の環)上のヒドロキシル基に対するオルト位でニトロ(−NO)基を含有する反応生成物が生成されていた。調査の結果、この反応生成物は、変換が起こらなかった化合物1Aと比較して、驚くべきことに遺伝毒性の潜在性を含めて、特性が変化したことが判明した。さらに調査したところ、反応生成物は、経口投与後に、in vivoで生成できることが判明した。そのため、本発明者等は、経口投与後のニトロ化反応生成物の形成を阻害することを目的として、ニトロ化反応生成物の生成に至るプロセスを調査しようとした。
【0005】
ある種のフラボノイド化合物は、亜硝酸塩の存在下において酸性条件下で生じる、チロシンのニトロ化またはDNA塩基からの塩基脱アミノ化生成物の形成を阻害できることが(例えば、Oldrieve et al., Chem. Res. Toxicol. 1998, 11, 1574から)知られている。in vitroでヒト唾液中での亜硝酸塩および過酸化水素の存在下におけるヒドロキシフェニル酢酸およびタンパク質のニトロ化は、還元種によって阻害できることが示されている(Takahama et al. Arch. Oral Biol. 2003, 48, 679)。しかし、これらの開示内容から、当業者が、このようなニトロ化反応が、化合物1Aによって例証される構造的に異なる甲状腺ホルモン受容体アゴニスト等の他の化合物において起こり得るかどうかを予見することはできない。さらに、これらの開示内容は、このような反応がin vivoで有意になり得ることについては指摘しておらず、かつこのようなニトロ化反応生成物の潜在的な特性(例えば、遺伝毒性)の予見に関しても示唆していない。
【0006】
先行技術は、前記化合物1A等の甲状腺ホルモン受容体結合性化合物が、経口投与時に潜在的に毒性のある反応生成物に変換する恐れがあること、またはこのような変換がどのように起こり得るのか、あるいはこのような問題をどのように対処し得るのかについては、開示または示唆していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明の一目的は、経口投与後にある種の甲状腺ホルモン受容体結合性化合物がニトロ化する上記問題が軽減された医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、
(i)その立体異性体すべて、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含む次式Iの化合物、
【化2】

(式中、ZはHであるか、または亜硝酸塩によるニトロ化反応を介してNOにより置換できる代替基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、または1〜6個の炭素原子を有するアルキルもしくは3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、
Xは、酸素(−O−)、硫黄(−S−)、カルボニル(−CO−)、メチレン(−CH−)または−NH−であり、
およびRは、同一または異なるものであって、水素、ハロゲン、1〜4個の炭素原子を有するアルキルまたは3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、RおよびRの内の少なくとも一方は水素以外であり、
は、水素または低級アルキルであり、
Aは、酸素(−O−)、メチレン(−CH−)、−CONR−、−NR−、または−NRCO−であり、
は、Hまたは低級アルキルであり、
は、カルボン酸(−COH−)、またはそのエステルもしくはそのプロドラッグであり、
Yは、(−CHであり、式中nは0、1、2、3、4もしくは5であり、1個もしくは複数の前記CH基は場合によりハロゲンで置換してもよく、またはYは−C=C−であり、これはcisもしくはtransであってよく、および
は、水素、またはアルカノイル基もしくはアロイル基、あるいは遊離フェノール構造(式中R=Hである)を生成するために生物変換できる他の基である)
(ii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤、および
(iii)腸溶性コーティング
を含む、経口投与に適した医薬組成物を提供する。
【0009】
式Iの化合物は、甲状腺ホルモン受容体アゴニストとして特に有用である。具体的に、このような化合物の多くは、(TRαよりも)TRβ受容体で向上した活性を示す。
【0010】
本発明のこの第1の態様の組成物は、化合物1Aのニトロ化反応生成物が、亜硝酸塩によるニトロ化反応を介して、経口投与時に形成されるという、上記の調査の結果としての本発明者等の驚くべき知見に基づいている。亜硝酸塩によるニトロ化反応では、反応を進めるには、適度に低いpH(約2)が必要となる。組成物に腸溶性コーティング(すなわち、酸性の胃内では原形を保ち、pHが中性により近い小腸内を組成物が通過するときのみに溶解するもの)を施すことにより、ニトロ化反応は有意に阻害される。腸溶性コーティングの存在は、式Iの薬理活性化合物が胃の酸性媒体に曝されるのを防ぎ、それにより亜硝酸塩試薬が前記活性化合物の周辺で形成されるのを防ぐ。そのため、腸溶性コーティングの重要性は、経口投与時の式Iの化合物のニトロ化反応を減弱させることである。ニトロ化反応減弱化について理解し、その減弱化を試みようとする本発明者等の動機は、製剤開発研究中に、化合物1Aのニトロ化反応生成物が意外にも生成されることであったことを強調すべきである。また、このようなニトロ化反応は、例えば以下に示す化合物GC−1を含め、式(I)の他の化合物でも起こる。このニトロ化反応生成物が検出されていなければ、その潜在的な遺伝毒性を決定する根拠がなかったと思われる。このような反応生成物における潜在的な毒性(または他の望ましくない特性)に対する知識がなければ、当然ながら、その形成を防止しようとする気にもならなかったと思われる。
【0011】
本発明の適用性は、化合物1Aの安定化に限らない。より正しくは、本発明のこの第1の態様による組成物はすべて、経口投与時に起こりがちなニトロ化反応を減弱させることにより、ある程度安定化するはずである。式Iの任意の化合物のニトロ化は、化合物の薬理学的および/または毒物学的プロファイルに変化を起こし得るか、あるいは同様にその薬物動態に影響を与え得る。このような化合物のニトロ化反応生成物は、潜在的に遺伝毒性になり得る。ある種の場合には、酸性媒体のさらなる反応(例えば、それ自体が潜在的に遺伝毒性であるアニリンの遊離)も防ぐことができる。さらに、副次的な(すなわち、上記に示した場合の右側の)環におけるニトロ化反応も、求電子性芳香族置換反応により、低pHで起こる恐れがある。腸溶性コーティングは、これらのニトロ化反応生成物の形成も抑制または防止するであろう。いずれにせよ、式Iの化合物のこのような化学修飾を制御および/または防止できれば、一般に、製剤担当者にとって有用な手段となろう。
【0012】
本発明の第1の態様の組成物により、式Iの化合物の放出を胃から腸内へ通過した時点に限ることができ、この通過時に腸溶性コーティングは溶解し始めるか、および/または透過性を示し始める。しかし、腸内のpHは、亜硝酸によるニトロ化を有意な程度まで起こすほど低くないため、経口投与時の式Iの化合物のニトロ化は、有意に減弱する。
【0013】
本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用する「アルカノイル」という用語は、カルボニル基に連結するアルキルのことである。本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用する「アロイル」という用語は、カルボニル基に連結するアリールのことである。別段の指示がない限り、単独でまたは他の基の一部として本明細書で使用する「アルキル」または「アルク(alk)」という用語は、直鎖においては1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子(この場合、「低級アルキル」という用語を使用し得る)を含有する、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルまたはイソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等の、直鎖炭化水素および分枝鎖炭化水素の両方を含む。本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用する「アリール」という用語は、(フェニル、または1−ナフチルおよび2−ナフチルを含むナフチル等の)環部において6〜10個の炭素原子を含有する単環式および二環式芳香族基を指し、場合により、利用できる炭素原子を介して、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキニル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノおよび/またはカルボキシ、もしくはそのアルキルエステルから選択される1個、2個または3個の基で置換してもよい。別段の指示がない限り、本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用する「シクロアルキル」という用語は、1つの環と、前記環を形成する合計3〜7個の炭素原子、好ましくは3〜6個の炭素原子を含有する、飽和環状炭化水素基または部分不飽和(1または2個の二重結合を含有)環状炭化水素基を含み、例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用する「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素、ならびにCFを指し、塩素または臭素が好ましい。
【0014】
亜硝酸塩によるニトロ化反応を介してNOにより置換できる代替基は、例えば、ハロ(例えば、ヨード、クロロ、ブロモまたはフルオロが挙げられ、前者が好ましい)および擬ハロゲン(例えばSCN、OCN、NCS、NCOおよびN)から選択することができる。
【0015】
腸溶性コーティングは、こうした目的のために製造された任意の市販のポリマーを使用して形成されるのが好ましい。このようなポリマーの例としては、アクリレート系ポリマー、メタクリレート系ポリマーまたはそれらのコポリマー(例えば、Degussa/RoehmよりEudgragit(登録商標)の商品名で販売されている一連の腸溶性コーティングポリマー等)、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネートおよびカルボキシメチルエチルセルロースを挙げることができる。1つの具体的な実施形態では、腸溶性コーティングは、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーを含む。このようなコポリマーの構成モノマーは、1:1の比で存在できる。腸溶性コーティングは、タルク等の流動促進成分も含有していることが好ましい。可塑剤が含まれるのも有益である。適当な可塑剤は、クエン酸トリエチルである。
【0016】
USP溶解装置IIを用いて、900mlもしくは500mlいずれかの人工胃液または0.1N HCL中で、37℃で、毎分50回転の撹拌速度で放出を測定したとき、式Iの化合物の5%以下、より好ましくはほぼ0%が、少なくとも1時間、より好ましくは2時間、最も好ましくは3時間かかって放出されるように、腸溶性コート組成物が製剤されるのが好ましい。好ましい実施形態では、pH6.8の緩衝媒体(例えば、pH6.8の人工腸液)中で測定を行ったとき、式Iの化合物の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくはほぼすべてが、好ましくは1時間以内、より好ましくは45分以内に放出される。
【0017】
状況によっては、不活性コーティングが、式Iの化合物を含有する組成物のその部分と腸溶性コーティング(iii)との間に施されるのが好ましいこともあり得る。腸溶性コーティングは、通常酸性ポリマーで構成されており、したがってその本質から、ある種の有効成分に有害な変化を起こす可能性がある。間に施した不活性コーティング(ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の、例えばセルロース誘導体から作られているもの)は、こうした相互作用を阻害する傾向がある。不活性コートは、当然ながら、式Iの化合物を放出できるようにするために、腸媒体内で可溶性(あるいは分散性)となるべきである。
【0018】
本明細書で使用する「腸溶性コーティング」という用語は、剤形がその他の点では基本的に完成したとき組成物/剤形(例えば、錠剤)に施されるコーティング、および剤形製造の中間段階で施されるコーティングを含むことが意図されている。このため、式Iの化合物を賦形剤と共に顆粒に製剤し、次いで錠剤に圧縮するか、または例えばゼラチンカプセル等のカプセルに充填する等のさらなる処理を行う前に腸溶性コーティングを施す、組成物が含まれる。同様に、WO第00/22909号に記載されているような方式は、それほどには好ましくないが、式Iのある種の化合物に関する本発明の第1の態様により組成物を調製するのに適当となり得る。この方式では、薬理活性成分と相対的に疎水性のカルボン酸(例えばC〜C30脂肪族カルボン酸)との間の複合体が、pHを調整して溶液から共沈させて調製される。
【0019】
式Iのある種の化合物では、Xは酸素または−CH−である。あるいは、またはさらに、Aは−NH−、−O−、−CH−またはCONR−であってよい。式Iのいくつかの好ましい化合物では、Rはイソプロピル、ヨードまたはHである。さらに、またはあるいは、RおよびRが、それぞれ独立にハロゲンまたはアルキルであることが好ましいこともあり得る。この場合、RおよびRは、それぞれ独立にCl、Br、Iまたはメチルであることが好ましい。ある種の好ましい実施形態では、R=Rである。R=R=BrまたはClが特に好ましい。
【0020】
式Iの化合物では、RはHまたはメチルであることが好ましく、Hが特に好ましい。
【0021】
式Iのある種の化合物では、Yは−(CH−であり、nは1または2である。あるいは、またはさらに、Aは−NRCO−であってよく、RはHである。式Iの特に好ましい化合物では、Yは−(CH−で、n=1であり、AはNHCOまたはCONHであり、RはCOOH、またはCOOHの対応する塩、エステルまたはプロドラッグの形態である。
【0022】
本発明の選択された実施形態では、化合物(i)は、以下のもの、
【化3】

またはそれらの医薬として許容できる塩もしくはエステルから選択される式を有している。
【0023】
当業者であれば理解されようが、上記のニトロ化反応により、上記構造式に示されているような左側のベンゼン環の最下部で、すなわちOHに対してオルト位でニトロ基が導入されることになろう。したがって、大抵の場合は、置換される基はHであると思われるが、亜硝酸塩によるニトロ化反応により置換できる代替基、例えばフェノール性ヒドロキシ基に対してオルト位のヨード基等も意図されている。本発明者等は、水素の置換よりは遅いが、これが簡易反応であることを示した。
【0024】
式Iの化合物がエステルの形で存在するとき、そのアルキルエステルが好ましい。式Iの化合物が、医薬として許容できる塩の形で存在するとき、このような塩としては、化合物が少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、例えば、鉱酸等(例えば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)の無機強酸と、非置換であるか、例えばハロゲンにより置換される1〜4個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸等(例えば酢酸)、飽和もしくは不飽和ジカルボン酸等(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸等(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸)、アミノ酸等(例えばアルパラギン酸もしくはグルタミン酸、またはリジンもしくはアルギニン)または安息香酸等の強い有機カルボン酸と、あるいは非置換であるか、例えばハロゲンによって置換される(Cl−C4)アルキルまたはアリールスルホン酸等(例えば、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸等)の有機スルホン酸との酸付加塩が挙げられる。
【0025】
対応する酸付加塩は、所望される場合、追加的に存在する塩基性中心を有するように形成することもできる。
【0026】
式Iの化合物が少なくとも1個の酸性基(例えばCOOH)を有するとき、塩基との塩を形成することもできる。適当な塩基との塩としては、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等(例えばナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩)の金属塩、あるいはアンモニアとの塩、あるいはモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジもしくはトリ低級アルキルアミン(例えばエチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルもしくはジメチルプロピルアミン)またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン等(例えばモノ、ジもしくはトリエタノールアミン)の有機アミンとの塩である。さらに、対応する内部塩を形成してもよい。
【0027】
塩基性基を含む式Iの化合物の好ましい塩としては、一塩酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩または硝酸塩が挙げられる。酸性基を含む式Iの化合物の好ましい塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩、ならびに医薬として許容できる有機アミンが挙げられる。
【0028】
化合物(i)は、所望される場合、当然ながら溶媒和することができ、例えば、本発明では水和物が使用できる。
【0029】
本発明の第1の態様のある種の実施形態では、組成物は、酸化防止剤も含む。このような実施形態は、化合物1Aのニトロ反応生成物は、フリーラジカルが介在する亜硝酸塩による反応を介して、経口投与時に形成されるという、上記調査の結果としての、本発明者等の意外な発見に基づくものである。やはり上記した、非ビアリールエーテル化合物GC−1が、生理的に適切な条件下において、容易にニトロ化されることも本発明者らにより決定された。酸化防止剤を本発明の第1の態様の組成物に組み込むことにより、フリーラジカルの形成を阻害し、かつ/または形成されるフリーラジカルを除去し、腸溶性コーティングにも関わらず起こる任意のニトロ化反応を減弱させるという結果を伴う。
【0030】
酸化防止剤は、水溶性であることが好ましい。このような酸化防止剤としては、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、プロピオン酸、または前記酸いずれかの塩、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。好ましい酸化防止剤は、アスコルビン酸またはそのナトリウム塩であり、ニトロ化反応に対して特に有意な阻害作用を有していることが判明した。
【0031】
あるいは、酸化防止剤は、非水溶性であってもよい。このような酸化防止剤は、α−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、オレイン酸エチルおよび没食子酸プロピルから選択することができる。
【0032】
本質的ではないが、化合物(i)および酸化防止剤(ii)は実質的に均一に混合するのが好ましくなり得る。このことは、化合物(i)が亜硝酸塩(および/または亜硝酸、ならびに/あるいは任意の窒素含有および酸素含有フリーラジカル種)と任意に接触するとき、酸化防止剤がこのような接触部の周辺に存在しやすく、このため、起こり得る任意のニトロ化反応をより良好に減弱できることを確実にするための一助となる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、
(i)上記のような、式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステル、
(ii)少なくとも1種の酸化防止剤、および
(iii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤
を含む、経口投与に適した医薬組成物が提供される。
【0034】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、組成物は固体組成物である。本発明の第1の態様に関して記載されているように、式Iの好ましい特徴は、第2の態様(および必要に応じて、以下に記載する他の態様)に関しても適用される。
【0035】
本発明の第2の態様の組成物は、好ましくは腸溶性コーティングも含む。腸溶性コーティングは、本発明の第1の態様に関して前記したとおりとすることができる。
【0036】
第3の態様では、本発明は、経口投与に適した医薬組成物を安定化させる方法であって、
(i)上記のような、式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステル、および、
(ii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤
を含む前記医薬組成物に腸溶性コーティングを施すことを含む方法をさらに提供する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、上記のように、式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含有する経口投与に適した医薬組成物において、前記化合物のニトロ化の減少または防止のため、腸溶性コーティングまたは酸化防止剤、あるいは腸溶性コーティングおよび酸化防止剤の両方の使用を提供する。
【0038】
本発明は、治療法で使用するための、本発明の組成物も提供する。
【0039】
本発明は、代謝機能不全と関連する疾患またはトリヨードチロニン(T)調節遺伝子の発現に依存する疾患の予防、抑制または治療する薬の調製における本発明の組成物の使用も提供する。その疾患は、肥満、高コレステロール血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、心不整脈、うつ病、骨粗しょう症、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺癌、ならびに緑内障およびうっ血性心不全から選択され得る。
【0040】
同様に、本発明は、代謝機能不全と関連する疾患またはトリヨードチロニン(T)調節遺伝子の発現に依存する疾患の予防、阻害または治療する方法であって、このような予防、阻害または治療を必要とする対象に本発明の組成物を投与することを伴う方法も提供する。
【0041】
直前に記載した使用および方法において、薬剤または組成物は、30分〜1カ月の投与間隔で投与することができる。投与間隔は、より好ましくは1〜7日間、さらにより好ましくは1〜3日間である。化合物(i)の一般成人の用量範囲は、1日当たり約1μg〜約2000μgとなろう。多くの化合物(i)の1日量は、300μg未満となろう。化合物(i)の用量は、好ましくは1日当たり約1μg〜約200μg、より好ましくは1日当たり約1〜約100μgである。例えば、化合物(i)は、1日当たり1回、2回、3回または4回で投与してもよい。組成物の単位用量当たりの化合物(i)の量は、好ましくは1〜200μg、より好ましくは1〜100μg、より好ましくは1、5、10、20、25または50μgである。例えば、単位用量当たりの化合物(i)の量は、10〜100μg、例えば20〜80μg、通常は25〜50μgであってよい。
【0042】
本発明の第1または第2の態様による組成物は、脂質低下薬、抗糖尿病薬、抗うつ剤、骨吸収抑制剤、食欲抑制剤および/または抗肥満薬から選択されるさらなる薬理活性成分も含んでよい。
【0043】
さらなる薬理活性成分は、その代謝効果が高まるように、化合物(i)との相加効果または相乗効果を有する傾向にある。
【0044】
酸化防止剤を含有する上記の組成物では、酸化防止剤の量は、非常に広範囲にわたって変化し得る。酸化防止剤は、好ましくは少なくとも0.0001mmol、例えば0.0005mmol、より好ましくは少なくとも0.01mmol存在する。酸化防止剤の量は、例えば、組成物の用量当たり0.0001〜15mmol、例えば0.0005〜10mmol、通常は0.01〜4mmolであってよい。
【0045】
以下により詳細に示すように、平均的なヒトは、1時間当たり唾液中の亜硝酸塩を約0.1mmol飲み込む。組成物中に酸化防止剤が上記の量存在することにより、本発明の組成物が、比較的長期間、胃内に滞留する場合でも、化合物(i)に対して有用な安定化効果がもたらされるはずである。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、経口投与に適した複合薬であって、
(1)前記のような、式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含む第1の医薬組成物、および
(2)少なくとも1種の酸化防止剤を含む第2の医薬組成物
を含み、
前記第1および第2の医薬組成物は各々、少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤を含有し、かつ前記第1および第2の医薬組成物は、同時、順次または別個に投与することができる複合薬を提供する。
【0047】
本発明の複合薬は、化合物(i)の安定化をもたらすためには、酸化防止剤は、化合物(i)が酸および亜硝酸塩源と接触するときだけ存在すべきであるという事実を利用している。複合薬の組成物2種が、胃内に滞留する各々の期間が重なるように時間的に接近して投与されるならば、化合物(i)は、ニトロ化反応に対して少なくともある程度の安定化を享受するはずである。組成物、少なくとも第1の組成物は、固体組成物であることが好ましい。
【0048】
次に、単に例証として添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0049】
上記のように、化合物1Aの開発中に、5’−ニトロ反応生成物の形成が非生物的(すなわち非酵素的)経路を介して起こっていることが確定された。ニトロ反応生成物の毒性は、親化合物と比較して、問題となる程度まで変化することが確定された。そのため、ニトロ化反応がどのように起こっているのかを確定し、これをin vivoで制御または防止する方式を工夫することが重要であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
【実施例1】
【0051】
化合物1Aの反応生成物の遺伝毒性
【0052】
1.1 序論
化合物1Aの25μgカプセル製剤の開発中、これまで検出されなかった不純物が数バッチで認められた。不純物の範囲は親化合物の0.8〜1.2%の範囲であった。この不純物は、ニトロ類似体として特定され、以降、反応生成物1Bと称する。
【0053】
したがって、この不純物/反応生成物のin vivo形成に対する理論的可能性が確認された。そこで、ハーモナイゼーション国際会議(ICH)基準の一連の試験において、この推定反応生成物の遺伝毒性作用について試験した。
【0054】
本実施例は、反応生成物1Bを用いて行った遺伝毒性試験を要約しており、この不純物/反応生成物への臨床的暴露についての知見が関係している。
【0055】
1.2 遺伝毒性
1.2.1 反応生成物1B
1.2.1.1 予備エームス試験
反応生成物1Bは、S−9代謝活性剤の存在下および不在下において複製培養物中で試験した。水中に溶解したアジ化ナトリウムは別として、陽性対照品は、複製培養物中で試験し、DMSO中で調製した。陰性(溶媒)対照は、5つの複製培養物中で試験した。
【0056】
反応生成物1Bは、試験したS.typhimurium株およびE.coli株各々に対して細胞毒性を示した。細胞毒性は、最小から著しいものまで、復帰突然変異体の平均数の減少および/または細菌叢バックグラウンド濃度の低下から明らかになった。陰性対照と比較したとき、ヒスチジン復帰突然変異体値は、S−9代謝活性化の存在下および不在下それぞれにおいて、菌株TA100の反応生成物1B処理培養物中で上昇した。予想どおり、陽性対照化合物で処理した培養物において、ヒスチジンおよびトリプトファン復帰突然変異体数の有意な増加が認められた。
【0057】
結論として、反応生成物1Bは、この試験で陽性反応を示した。
【0058】
1.2.1.2 SalmonellaおよびEscherichia coliにおけるエームス復帰突然変異試験
反応生成物1Bは、微生物変異原性試験において評価し、Salmonella typhimurium(ヒスチジン)およびEscherichia coli(トリプトファン)の各菌株でフレームシフト変異または塩基対置換変異を誘発する可能性を決定した。
【0059】
反応生成物1Bは、濃度範囲決定試験、続いて突然変異本試験で各菌株を用いて試験した。反応生成物1Bは、濃度範囲決定試験および突然変異本試験では、各々、S−9代謝活性化あり・なし両方で、最大濃度3000および1000μg/プレート以下で評価した。試験した各細菌の菌株で、細胞毒性が認められた。ヒスチジン突然変異体の平均数は、S−9代謝活性化の存在下および不在下で、濃度範囲決定試験および突然変異本試験での両方において、試験株TA100の反応生成物1B処理培養物中で有意に上昇した(約2〜3倍)。
【0060】
株TA100中で復帰突然変異体が反応生成物1Bに誘発されて対照値よりも増加したことは、陽性反応を示している。
1.2.1.3 実施したエームス試験の要約
要約すれば、化合物1Aの芳香族ニトロ不純物/反応生成物、すなわち反応生成物1Bは、予備エームス試験で試験し、対照値を超える復帰突然変異体の濃度依存的増加を誘発することが判明した。増加は、対照の2.5〜3倍、すなわち陽性反応とみなされた。この結果は、エームス本試験で確認された。
【0061】
1.2.1.4 一次ヒトリンパ球における細胞遺伝学的試験
in vitro細胞遺伝学的試験は、反応生成物1Bが培養したヒトリンパ球において染色体異常を誘発する可能性を調査するために行われた。濃度範囲決定試験の細胞毒性結果に基づき、評価用には、代謝酵素活性化なしでの24時間の暴露には5〜30μg/mlの濃度、Aroclor1254誘発ラット肝臓(S9画分)代謝活性化を用いた5時間の暴露には2.5〜20μg/mlの濃度を選択した。
【0062】
S−9代謝活性化の存在下において反応生成物1Bに5時間暴露した場合では、染色体異常の頻度は、統計的に有意に増加した。最高濃度20μg/mlでは、染色体異常の頻度は溶媒対照の2.5%と比較して10.5%で、分裂指数の減少は約51%であった。
【0063】
S−9代謝活性化の不在下において反応生成物1Bに24時間暴露した場合は、染色体異常の頻度は、統計的に有意に増加した。評価した最高濃度の40μg/mlでは、染色体異常の頻度は溶媒対照の2.5%と比較して7.5%で、分裂指数の減少は約48%であった。
【0064】
予想通り、各試行において陽性対照は、損傷した分裂中期の頻度の統計的に有意な増加を誘発した。このため、この試験の有効性が示された。
【0065】
結論として、反応生成物1Bは、in vitro細胞遺伝学的試験に関する国際ガイドラインで推奨されている最大濃度まで試験したとき、分裂中のヒトリンパ球に対して染色体異常誘発性であった。
【0066】
1.2.1.5 マウスにおける経口小核試験
反応生成物1Bは、マウス骨髄小核試験で評価し、in vivo遺伝毒性の可能性を決定した。マウスの各群には、3日間連続で、反応生成物1Bを1日1000、1500または2000mg/kg経口投与した(すなわち、ICHおよびOECDの国際規制ガイドラインで必要とされる最大用量レベル以下)。大腿骨髄試料は、小核多染性赤血球(MN−PCE)の評価のため、最後に投薬してから約24時間ですべての動物から採取した。
【0067】
いずれの動物も試験中に死亡せず、薬物関連の臨床的兆候は認められなかった。多染性赤血球(PCE)の有意な減少で判断したとき、骨髄毒性は認められなかった。MN−PCEの頻度は、1000および1500mg/kgで統計的に増加した。
【0068】
結論として、用量非依存的陽性反応がマウス中で見出された。
【0069】
1.3 反応生成物1Bへの臨床暴露
ヒトボランティアに化合物1Aの単回経口用量を投与した後、反応生成物1Bを血漿中で検出することができた。同様に、対象に化合物1Aの1日量を2週間投与した試行では、反応生成物1Bが何人かの対象中で検出することができた。
【0070】
結論として、ヒトに化合物1Aを投与した後、潜在的に変異誘発性のニトロ反応生成物1Bが血漿中で検出することができた。これは、比較的短期間(例えば、上記のように14日間)投与を行う場合にも当てはまる。潜在的遺伝毒性物質は、通常、変異原性作用において用量非依存性であり、そのため反応生成物1Bが低濃度で存在する場合でも、臨床的関連性がある。さらに、式Iの化合物は、通常長期間投与されると思われるので、ニトロ反応生成物の蓄積による潜在的な遺伝毒性効果を回避しようとする場合には、前記ニトロ反応生成物が形成されるのを防止することが決定的に重要となる。
【0071】
1.4 要約および結論
化合物1Aの不純物/反応生成物、すなわち反応生成物1Bは、in vitroヒト末梢リンパ球で染色体異常を、およびin vivoマウス小核試験で用量非依存的に小核を誘発することが判明した。
【0072】
さらに、反応生成物1Bは、化合物1Aを短期間投与した後で、ヒト血漿中で検出することができた。したがって、潜在的遺伝毒性物質は、非常に低濃度で遺伝毒性効果を与えることができ、かつ化合物1A等の式Iの化合物は、通常長期間投与されると思われるため、ニトロ反応生成物の形成の防止は、明らかに相当に有益なはずである。
【実施例2】
【0073】
硝酸塩および亜硝酸塩−供給源およびニトロ化機構
【0074】
2.1 序論
考え得るニトロ化源は、非古典的な亜硝酸塩経路である。この経路は、まずUemura等(1978, J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 9, 1076)によって報告された。亜硝酸塩経路は、適度に低いpH(約2)で進むことができ、硝酸塩経路と比較して、水に対する耐性がある。亜硝酸塩経路は、ヒドロキシル化ベンゼン含有化合物と反応できるフリーラジカル種の生成をもたらす(Beake et al.(1992)J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2, 10, 1653)。
【0075】
本発明者等は、この経路が、胃および腸内で式Iの経口投与化合物がニトロ化するための主な経路である可能性が高いと考えた。
【0076】
食品添加物以外の供給源からの硝酸塩および亜硝酸塩の1日の平均摂取量が、すでに推定されている(T. Hambridge, WHO Food Additives Series: 50, Nitrate and Nitrite)。
【0077】
亜硝酸塩の内在源に関する限りでは、硝酸塩は、口内の硝酸還元酵素の作用により唾液中の硝酸塩から生成されることが知られている(Benjamin (2000) Ann. Zootech. 49, 207)。これにより、唾液中の亜硝酸塩の濃度が約200μMとなる。平均的なヒトは1時間当たり約500mlの唾液を飲み込む。このため、1日当たり亜硝酸塩約2.4mmol(110mg)を摂取していることになる。これは、亜硝酸塩約1.6mg/kg/日となる(体重70kgの平均的な成人の場合)。
【0078】
2.2 in vivoニトロ化試験
ラットにてin vivoで行った実験では、化合物1Aを硝酸塩・亜硝酸塩溶液(ラット1匹当たり各54mgおよび4mg)と共に投与したとき、化合物1Aの投薬量の約6%がニトロ化されていることが判明した。
【0079】
2.3 酸化防止剤
上記に示したように、化合物1A(したがって、式Iの化合物等の他のヒドロキシル化ベンゼン含有化合物)のニトロ化機構は、亜硝酸塩を経由するため、フリーラジカルが介在すると仮定された。したがって、ニトロ化反応は、フリーラジカルスカベンジャー/酸化防止剤によって阻止できると考えられた。
【0080】
一般的に、本発明によれば、任意の酸化防止剤が使用できる。「真性」酸化防止剤とは、フリーラジカルと反応することによって(ラジカル種に単一電子を与えることによって)、ラジカル介在連鎖反応を妨害する物質である。このような真性酸化防止剤の一例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)がある。このような種の他の例としては、フェルラ酸、ルチン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、アピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレート等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。このような種の多くは、天然に存在する、例えば、フラボノイド型またはtrans−スチルベン型酸化防止剤である。還元剤は、保護するために使用している当該化合物よりも低い酸化還元電位を有する種であり、および/またはニトロ化デコイとして作用し得る。このようにして作用する作用剤の一例としては、アスコルビン酸がある。さらに、ある種の作用剤は、「酸化防止剤の共力剤」である。これらの作用剤は、酸化防止剤の効果を高めるものであり、これらも本発明の組成物に含め得る。一例としてはエデト酸ナトリウムがある。
【0081】
酸化防止剤は、溶解度特性に応じて分類することもできる。水溶性酸化防止剤としては、アスコルビン酸(またはそのナトリウム塩)、フマル酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム(KOS−SOK)、プロピオン酸(CHCHCOH)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)および亜硫酸ナトリウム(NaSO)が挙げられる。非水溶性酸化防止剤としては、α−トコフェロール、パルチミン酸アスコビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、オレイン酸エチルおよび没食子酸プロピルが挙げられる。
【0082】
2.4 ニトロ化反応およびその阻害
L−チロシンは、ニトロ化反応生成物に変換される可能性があり、ここではNO基が、環ヒドロキシル基に対してオルト位で置換されることが知られている。L−チロシンのニトロ化の程度を決定するための実験手順を、化合物1Aのニトロ化と選択した酸化防止剤によるその阻害とを決定するために使用した。L−チロシンの実験手順は周知である(1998, Chem. Res. Toxicol., 11, 1578)。簡単に言うと、化合物1A(50μM)溶液をリン酸緩衝液の存在下または不在下において、37℃にて、様々なpH値でNaNO(2500μM)および/またはNaNO(様々な濃度)の各溶液に曝した。ニトロ化反応により、化合物1Aの5’−ニトロ反応生成物の形成に至る。この反応生成物は、HPLCを用いて検出および定量化することができ、前記反応生成物は、親化合物と比較して(使用した条件下で)保持時間が減少している。次いで、酸化防止性阻害剤をNaNOおよび1A含有試験液に添加し、ニトロ化試験を繰り返した。
【0083】
図1は、50nM〜50μMの反応生成物1Bの存在下における1A(50μM)の一連の標準HPLCクロマトグラムを示している。分析は、以下の条件で、HPLC−MS/MSで行った。
【0084】
HPLC条件
装置:Waters Alliance2795LC
保護カラム:Waters Sentry Guard Column、Symmetry C18 3.5μm、2.1×10mm
カラム:Waters Symmetry C18 3.5μm、2.1×50mm
カラム温度:45℃
注入量:5μl
オートサンプラー温度:10℃
流量:0.2ml/分
移動相:A=10mM酢酸アンモニウム(酢酸でpH=4.5に調整)
B=アセトニトリル

質量分析条件
装置: Micromass QuattroミクロAPI
モード: ESI−
実験: MRM(多重反応監視)
化合物1AのMRM遷移: m/z486.0>399.9(t=3.47分)
反応生成物1BのMRM遷移: m/z531.0>444.8(t=3.91分)
定量限界(LOQ)
MRMでの化合物1AのLOQは、アセトニトリル50%:水50%中で10nMである。
MRMでの反応生成物1BのLOQは、アセトニトリル50%:水50%中で1nMである。
【0085】
使用した条件下で、反応生成物の保持時間は減少しており、親化合物1Aは約3.5分で溶出し、反応生成物は約4分で溶出することがはっきりと分かる。
【0086】
1Aを様々な濃度のNaNOおよび/またはNaNOでインキュベートしたとき、表1の結果が得られた。
【0087】
【表1】

【0088】
これらのデータに基づき、いくつかの結論を出すことができる。第一に、適当な酸性条件下では、化合物1Aを有意にニトロ化するには亜硝酸塩だけで十分であることが明確に示されている。陰性対照に示されるように(1〜4行)、亜硝酸塩および硝酸塩が不在のとき、ニトロ化の結果は認められない。第二に、リン酸緩衝液の存在により、亜硝酸塩による反応を実際に有意に阻害することができ、pH2の緩衝液よりもpH2のHCL溶液中ではるかに大きな程度まで反応が起こる。第三に、pH2(HClまたは緩衝液)での硝酸塩は、化合物1Aを適度にニトロ化することができない。第四に、硝酸塩は、亜硝酸塩による反応を有意な程度まで阻害すると思われる。(1桁以上;太字の数字参照)。
【0089】
このため、これらのデータは、経口投与時に、式Iの化合物(例えば、化合物1A)等のヒドロキシル化ベンゼン含有化合物で認められるニトロ化反応が、硝酸塩よりも亜硝酸塩により介在されていることを確認している。また前記データは、ニトロ化反応にとっての酸性環境の重要性を明確に示している。本発明の腸溶性コート組成物は、酸性媒体が前記組成物に含有される薬理活性成分に到達するのを減少させるか、または防止する。したがって、このような製剤化の手法は、そうしなければ起こると思われるニトロ化反応を有意に減少できる。
【0090】
亜硝酸塩の存在下で、選択した酸化防止性阻害剤を化合物1Aに添加したとき、表2の結果が得られた。使用した酸化防止剤の量は、全般的に化合物1Aの量の約10〜20倍とした。
【0091】
【表2】

【0092】
表2のデータにより、いくつかの重要な結論を導くことができる。亜硝酸塩が酸性化されない限り、亜硝酸塩の濃度を8倍まで上昇させても、化合物1Aはまったくニトロ化しないか、それがごくわずかであることは明らかである。さらに重要なことに、試験化合物がほぼ完全にニトロ反応生成物に変換されることが判明している、pHおよび亜硝酸塩濃度条件下で、BHT(非水溶性)またはアスコルビン酸塩(水溶性)の存在により、亜硝酸塩介在ニトロ化が本質的に完全に阻害されること(太字の数字参照)が分かる。
【0093】
そのため、概して、本明細書に報告されたデータは、硝酸塩(NO)ではなく亜硝酸塩(NO)が、式Iの化合物(例えば化合物1A)等のヒドロキシル化ベンゼン含有化合物で認められたin vivoニトロ化の有力源であることを明確に示している。この亜硝酸塩介在ニトロ化は、フリーラジカル機構を介して進み、酸性媒体でのみ問題となる程度まで起こる。酸化防止剤をヒドロキシ化ベンゼン含有化合物を含む組成物に組み込むと、このニトロ化反応が有意な程度まで阻害される。さらに、またはあるいは、腸溶性コーティングにより組成物を保護することで、酸性化した亜硝酸塩とヒドロキシ化ベンゼン含有化合物との接触が防止されると思われる。したがってニトロ化に対して該化合物を安定化させるための有力な戦略がもたらされる。
【実施例3】
【0094】
化合物1Aの腸溶性コート製剤
【0095】
3.1 粉砕前後の化合物1Aの粒径測定
粉砕前の化合物1Aは、錠剤の含量均一性に影響を与えると思われる、約100μmより大きい粒径を高比率で含有していたので、化合物1Aを粉砕した。2×2gの化合物1Aの粉砕には、Retsch MM2000を使用した。直径100μm、密度1.5g/cmの球形粒子の質量は約1μgである。
【0096】
粒径分布は、Malvern MasterSizer2000、すなわちレーザー回折技術で測定した。粉末試料は、Tween20および水の中に分散させる。
【0097】
粉砕前の化合物1A:測定により、メジアン直径d(0.5)が101μmおよび103μmであることが明らかとなった。90%の四分位数d(0.9)は158μmおよび159μmであった。
【0098】
粉砕後の化合物1A:粉砕後、d(0.5)は20μm、d(0.9)は85μmであった。これは、許容できる粒径分布であった。
【0099】
3.2 錠剤の処方
製造した医薬品は、白色、円形(直径7mm)、凸状であり、錠剤当たりの化合物1A(以降、「1A」)が2つの強度、50μgおよび300μgの腸溶性フィルムコーティング錠剤であった。医薬品の完全な組成を以下の表3.1示す。
【0100】
【表3.1】

【0101】
核錠の目標重量は140mgで、フィルムの目標重量は12mgであった。
【0102】
バッチ処方
50μg/錠剤および300μg/錠剤のバッチ処方(表3.2参照)は、錠剤製造中では核錠6000個(840g)およびコーティング中では核錠5700個(798g)を示している。
【0103】
【表3.2】

【0104】
3.3 製造
1A腸溶性コート錠剤の製造プロセスのフロー図が図2に示されている。50μgおよび300μgの1Aを含有する核錠を製造した。核錠は、「基剤粒状体」(1A含有)、マンニトール、ヒプロメロースおよびステアリン酸マグネシウムの混合物である。「基剤粒状体」は、粉砕した1Aをヒプロメロース水溶液中に懸濁し、分散液をMCCにスプレーすることにより製造する。1Aの過多量6%は、損失により使用される。水を蒸発させた後、乾燥生成物をふるいにかける。粉末混合物は、適当な破砕強度と崩壊時間を有する円形で凸状の錠剤に圧縮する。錠剤は重量140mg、直径7mmである。
【0105】
核錠は、耐胃液性を得るためにコーティングする。ポリマーは、メタクリル酸−アクリル酸エチルの水性コポリマー分散液(Eudragit L30 D−55)とする。タルクは、流動促進剤としてポリマー分散液に添加され、クエン酸トリエチルは、可塑剤として機能する。
【0106】
各賦形剤の機能は、以下の表に記載されている。
【0107】
【表3.3】

【0108】
3.4 腸溶性コート組成物の分析
腸溶性コート錠剤の含量および不純物等を評価するのに適当な方式は、以下の通りである。化合物1Aは、試料溶媒中で撹拌することによって錠剤から抽出する。不溶性粒子を除去するために遠心分離した後、上清中の1A、個別関連物質および全関連物質の量は、表3.4に記載の装置条件を用いて決定することができる。1Aおよびその関連物質の量は、逆相クロマトグラフィーおよびUV検出によって決定する。
【0109】
【表3.4】

【0110】
溶解試験は以下のように実行することができる。溶解試験は、2つのステップに分かれる。第1のステップは、腸溶性コーティングの抵抗性を試験し、第2のステップは、溶解速度を試験する。コーティングの抵抗性は、0.1M塩酸中で3時間試験する。溶解速度は、pH6.8の50mMリン酸ナトリウム緩衝液中で1時間試験する。採取した試料を遠心分離して、分析前に不溶性粒子を除去する。
【0111】
組成物から放出した1Aの量は、表3.5にしたがって、逆相クロマトグラフィーおよびUV検出により決定できる。
【0112】
【表3.5】

【0113】
0.1M HClでの溶解試験後、化合物1Aの放出を検出できないことが判明した。しかし、溶解試験をpH6.8の媒体中で繰り返したとき、試験した各錠剤については、実質的に完全に、錠剤が溶解され、化合物1Aが放出された。
【0114】
したがって、このような腸溶性コート組成物は、in vivoで使用したとき、経口投与後に、胃において活性成分が酸性亜硝酸塩含有媒体に曝されるのを阻止し、それにより潜在的に遺伝毒性をもつ、このような活性成分の反応生成物の生成を防ぐか、有意に減少させるであろう。
【実施例4】
【0115】
式Iの追加化合物のニトロ化
【0116】
以下の式Iの追加化合物について試験を行い、ニトロ化の傾向を決定した。
【化4】

【0117】
あらゆる例において、上記実施例2.4のように、様々な濃度の硝酸塩および亜硝酸塩の溶液に暴露することでニトロ化することが判明した。
【実施例5】
【0118】
臨床試験
【0119】
化合物IAの臨床的に関連する投与量は、単回用量で溶液の形でヒト対象に投与した。有意な数の対象においてニトロ化反応生成物が検出された。化合物を腸溶性コート錠剤の形で投与したとき、ニトロ化生成物の劇的な減少が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】様々な濃度の5’−ニトロ反応生成物の存在下において化合物1Aの一連の標準HPLCトレースを示す図である。
【図2】化合物1Aを含有する腸溶性コート錠剤の製造プロセスを例示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)次式Iの化合物、

(式中、Zは、Hであるか、または亜硝酸塩によるニトロ化反応を介してNOにより置換できる代替基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、または1〜6個の炭素原子を有するアルキルもしくは3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、
Xは、酸素(−O−)、硫黄(−S−)、カルボニル(−CO−)、メチレン(−CH−)または−NH−であり、
およびRは、同一または異なるものであって、水素、ハロゲン、1〜4個の炭素原子を有するアルキルまたは3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、RおよびRの内の少なくとも一方は水素以外であり、
は、水素または低級アルキルであり、
Aは、酸素(−O−)、メチレン(−CH−)、−CONR−、−NR−、または−NRCO−であり、
は、Hまたは低級アルキルであり、
は、カルボン酸(−COH)、またはそのエステルもしくはそのプロドラッグであり、
Yは、(−CHであり、式中nは0、1、2、3、4もしくは5であり、1個もしくは複数の前記CH基は場合によりハロゲンで置換してもよく、またはYは−C=C−であり、これはcisもしくはtransであってよく、ならびに
は、水素、またはアルカノイル基もしくはアロイル基、あるいは遊離フェノール構造(式中R=Hである)を生成するために生物変換できる他の基である)
またはその医薬として許容できる塩もしくはエステル、
(ii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤、および
(iii)腸溶性コーティング
を含む、経口投与に適した医薬組成物。
【請求項2】
Xが酸素または−CH−である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Aが−NH−、−O−、−CH−または−CONR−である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
がH、ヨードまたはイソプロピルである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
およびRがそれぞれ独立にハロゲンまたはアルキルである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
およびRがそれぞれ独立にCl、Br、Iまたはメチルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
がHまたはメチルである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
Yが−(CH−であり、nが1または2である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
Aが−NRCO−であり、RがHである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ZがHである、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
化合物(i)が、以下のもの

またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
化合物(i)が、以下のもの、

またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
化合物(i)が、以下のもの、

またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
不活性コーティングが、前記化合物(i)を含有する組成物のその部分と、前記腸溶性コーティング(iii)との間に施される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記腸溶性コーティングが、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーまたはアクリレート−メタクリレートコポリマーを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
腸溶性錠剤の形態をしており、以下の成分、すなわちマンニトール、微晶質セルロース、ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム、水、メタクリル酸−アクリル酸エチル(1:1)コポリマー、タルクおよびクエン酸トリエチルを含有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
USP装置IIを用いて、人工胃液または0.1N HCl500ml中、37℃で、毎分50回転の撹拌速度にて放出を測定したとき、式Iの前記化合物の5%以下が少なくとも1時間かかって放出される、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
酸化防止剤も含有する、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記酸化防止剤が、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、プロピオン酸、または前記酸のいずれかの塩、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、α−トコフェロール、バルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、オレイン酸エチルおよび没食子酸プロピルから選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記化合物(i)および前記酸化防止剤が実質的に均一に混合されている、請求項18または19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
(i)次式Iの化合物、

(式中、Zは、Hであるか、または亜硝酸塩によるニトロ化反応を介してNOにより置換できる代替基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、または1〜6個の炭素原子を有するアルキルもしくは3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択され、
Xは、酸素(−O−)、硫黄(−S−)、カルボニル(−CO−)、メチレン(−CH−)または−NH−であり、
およびRは、同一または異なるものであって、水素、ハロゲン、1〜4個の炭素原子を有するアルキルまたは3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキルであり、RおよびRの内の少なくとも一方は水素以外であり、
は、水素または低級アルキルであり、
Aは、酸素(−O−)、メチレン(−CH−)、−CONR−、−NR−、または−NRCO−であり、
は、Hまたは低級アルキルであり、
は、カルボン酸、またはそのエステルもしくはそのプロドラッグであり、
Yは、(−CHであり、式中nは0、1、2、3、4もしくは5であり、1個もしくは複数の前記CH基は場合によりハロゲンで置換してもよく、またはYは−C=C−であり、これはcisもしくはtransであってよく、ならびに
は、水素、またはアルカノイル基もしくはアロイル基、あるいは遊離フェノール構造(式中R=Hである)を生成するために生物変換できる他の基である)
またはその医薬として許容できる塩もしくはエステル、
(ii)少なくとも1種の酸化防止剤、および
(iii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤
を含む、経口投与に適した医薬組成物。
【請求項22】
前記化合物(i)が請求項2から13のいずれか一項に記載されている通りである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
固体組成物である、請求項21または22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記酸化防止剤が前記化合物(i)と実質的に均一に混合されている、請求項21から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記酸化防止剤が、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、プロピオン酸、または前記酸のいずれかの塩、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、α−トコフェロール、バルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、オレイン酸エチルおよび没食子酸プロピルから選択される、請求項21から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記酸化防止剤が、1用量当たり0.0001〜15mmolの量で存在する、請求項18から25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
脂質低下薬、抗糖尿病薬、抗うつ剤、骨吸収抑制剤、食欲抑制剤および/または抗肥満薬から選択される薬理活性成分も含む、請求項1から26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
経口投与に適した医薬組成物を安定化する方法であって、
(i)請求項1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステル、および
(ii)少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤
を含む前記医薬組成物に、腸溶性コーティングを施すことを含む方法。
【請求項29】
請求項1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含有する経口投与に適した医薬組成物において、前記化合物のニトロ化を減少または防止するための腸溶性コーティングの使用。
【請求項30】
請求項1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含有する経口投与に適した医薬組成物において、前記化合物のニトロ化を減少または防止するための酸化防止剤の使用。
【請求項31】
治療法で使用するための、請求項1から27のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
代謝機能不全と関連する疾患、もしくはトリヨードチロニン(T)調節遺伝子の発現に依存する疾患を予防、抑制または治療するための薬剤の調製における、請求項1から27のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項33】
代謝機能不全と関連する疾患、もしくはトリヨードチロニン(T)調節遺伝子の発現に依存する疾患を予防、抑制または治療する方法であって、このような予防、抑制または治療が必要な対象に請求項1から26のいずれかに記載の組成物を投与することを伴う方法。
【請求項34】
(1)請求項1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物、またはその医薬として許容できる塩もしくはエステルを含む第1の医薬組成物、および
(2)少なくとも1種の酸化防止剤を含む第2の医薬組成物
を含み、前記第1および第2の医薬組成物は各々、少なくとも1種の医薬として許容できる賦形剤を含有しており、かつ前記第1および第2の医薬組成物は、同時、順次、または別々に投与し得る、
経口投与に適した複合薬。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−531359(P2009−531359A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501929(P2009−501929)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002688
【国際公開番号】WO2007/110226
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(500561610)カロ バイオ アクチェブラーグ (17)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】