説明

画像データの撹拌装置およびその復元装置

【課題】画像の動きやシーンの複雑さに依存せず、任意の攪拌強度で攪拌できる符号化画像データの撹拌装置およびその復号装置を提供する。
【解決手段】符号化画像データaから撹拌対象符号データa1を抽出し、データ撹拌部2にて、該データa1を与えられた任意の撹拌強度で撹拌する。たとえば、DC係数がCd、攪拌強度をSとすると、攪拌後のDC係数Cd’は、Cd’=(2*[Cd/S]+1)*S-Cdにて求めることができる。この場合、撹拌された符号データの復号は、Cd =(2*[Cd’/S]+1)*S-Cd’にて行うことができる。画像データの符号化時にデータの撹拌をして、撹拌された符号化データを得ることもできる。また、画像データを画像データ変換時にデータ撹拌し、これをデータ逆変換して撹拌後の画像データとして得ることもできる。さらに、動きベクトルを撹拌することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は符号化データを含む画像データの撹拌装置およびその復元装置に関し、映像の特徴に依存せずに任意の強度で画像データの撹拌ができる画像データの撹拌装置およびその復元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データの撹拌装置、すなわちスクランブル装置の従来の一例として、下記の特許文献1に記されているものがある。この文献には、画像の動きベクトルの最終ビットやDCT係数の符号の最終ビットを反転することにより、該動きベクトルやDCT係数の正負を入れ替えてスクランブルすることが開示されている。
【特許文献1】特開平6−90451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した従来技術では、画像の動きベクトルの最終ビットを反転した場合、動き量が大きい場合は反対方向に大きく変化するが、動きベクトルが0の場合はスクランブルしても変化がないため、動きがないシーンではスクランブル効果が得られないという課題、また動きが緩やかなシーンほどスクランブルされる動き量が少なくなるため、スクランブル効果が小さくなる課題があった。 また、DCT係数の符号の最終ビットを反転した場合には、画像中のエッジなどの空間的な変化が大きな領域ではスクランブル効果は大きいが、平坦部ではDCT係数値が小さくなるため、スクランブル効果は小さくなるという課題があった。
【0004】
このように、従来技術では、スクランブルの強度が画像の特徴に依存するため、安定したスクランブルの効果が得られないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、前記した従来技術の課題を解消し、画像の動きやシーンの複雑さに依存せずに任意の強度で撹拌することができる画像データの撹拌装置およびその復元装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明は、符号化画像データを入力する符号化画像データ入力手段と、該符号化画像データの符号化情報を抽出する符号化情報抽出手段と、攪拌強度を指定する手段と、該抽出された符号化情報を該指定された攪拌強度に従って符号化情報を攪拌する撹拌手段とを具備した画像データの撹拌装置を提供した点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、画像データを入力する画像データ入力手段と、画像データを周波数空間に変換する変換手段と、前記変換手段により変換された周波数情報を抽出する手段と、攪拌強度を指定する手段と、該指定された攪拌強度に従って該抽出された周波数情報の値を変更し、該周波数情報を攪拌する撹拌手段と、攪拌後の変換係数を逆変換して画像データに復元する手段を具備した画像データの撹拌装置を提供した点に第2の特徴がある。
【0008】
また、上記の撹拌装置で攪拌された画像データを入力する画像データ入力手段と、画像データを周波数空間に変換する変換手段と、指定された変換係数の値を変更して攪拌を復元する撹拌復元手段と、該復元後の変換係数を逆変換して攪拌前の画像データに復元する手段を具備した画像データの撹拌復元装置を提供した点に第3の特徴がある。
【0009】
また、画像データを入力する画像データ入力手段と、画像データを周波数空間である変換係数に変換する変換手段と、攪拌強度を指定する手段と、該指定された攪拌強度に従って指定された変換係数の値を変更し、該変換係数を攪拌する撹拌手段と、攪拌後の変換係数と他の符号化情報を用いて画像を符号化する手段を具備した画像データの撹拌装置を提供した点に第4の特徴がある。
【0010】
さらに、上記撹拌装置で得られた撹拌後の符号化画像データを復元する装置を提供した点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、指定した撹拌(スクランブル)強度で安定的に画面を攪拌することができるため、画像データの動きや、シーンの複雑さに影響されない撹拌をすることができる。また、画像の内容を予測できないように撹拌処理することができる。
【0012】
さらに、MPEGなどで圧縮された符号化画像データのみならず、符号化されていない画像データについても攪拌が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、符号化画像データaは符号化画像情報抽出部1に入力され、撹拌画像領域に属する符号化データのうちの攪拌に用いる符号化データa1が抽出される。該撹拌対象符号データa1はデータ撹拌部2に入力される。一方、撹拌対象とならない符号化データa3は、符号化データ生成部3に入力される。データ撹拌部2では、撹拌対象符号データa1に対して指定された攪拌強度により撹拌処理を行う。撹拌方法としては、符号化画像データに含まれるDCT係数や動きベクトル量などを攪拌させることで実現することが可能である。
【0015】
さらに、撹拌処理後のデータa2は、符号化データ生成部3に入力される。符号データ生成部3では、撹拌されたデータa2と、撹拌対象とならなかった符号化データa3とを合わせて、撹拌後の符号化画像データa4が生成される。
【0016】
前記符号化画像情報抽出部1では、入力符号化画像データaの特定画像領域、特定符号化階層、特定の符号化モード等における符号化ブロックの符号化情報を抽出することができる。
【0017】
次に、本実施形態の構成および機能をより具体例で説明する。図2は、一具体例を示すブロック図である。
【0018】
図において、符号化画像データaは部分復号部4に入力され、部分的に復号された部分復号画像データbは符号化データ抽出部5に入力する。画像データ以外の部分復号データgは部分符号化部8に送られる。符号化データ抽出部5は、撹拌対象データ情報qに従って、撹拌処理対象となる符号化データcを抽出し、データ撹拌部6に送る。一方、撹拌処理対象とならない符号化データdは、符号化データ生成部7に送られる。前記部分復号部4には、撹拌対象領域情報pを与えて撹拌対象領域のみを部分復号しても、あるいは符号化データaの全領域を部分復号してもよい。
【0019】
データ撹拌部6は、与えられた撹拌強度Sに従って、あるいは予め内部にセットされている撹拌強度に従って、前記符号化データcを撹拌(スクランブル)する。符号化データ生成部7では、データ撹拌部6で撹拌処理されたデータeと撹拌処理対象とならなかった符号化データdとが合成され、合成された符号化データfは部分符号化部8に送られる。部分符号化部8は、該合成符号化データfと前記画像データ以外の部分復号データgとを合成した後部分的に符号化して、撹拌後の符号化画像データhとして出力する。
【0020】
前記符号化データ抽出部5では、たとえば、MPEG符号化データの場合には、撹拌処理対象符号化データcとして、DCT係数などを利用することが可能である。 前記データ撹拌部6では、撹拌処理対象符号化データcに対して撹拌処理を行う。攪拌方法としては、擬似乱数を発生させる鍵系列などを用いてDCT係数を攪拌強度に応じて攪拌することができる。
【0021】
前記符号化データ生成部7では、データ撹拌部6で撹拌処理された符号化データeと撹拌処理対象とならなかった符号化データdとを合わせて符号化データfを生成する。例えば、MPEGデータでは各ブロックのDCT係数データは8×8ブロックレイヤーの各々に位置している。このため、DCT係数が撹拌された場合は、GOP(Group of Pictures)やマクロブロック情報は攪拌前のまま利用し、ブロック情報のレイヤーについては撹拌されたDCT係数情報を格納することができる。
【0022】
前記撹拌対象領域情報pとしては、本出願人による特許出願である特願2006-187924号に記載のような特定画像領域や、特定符号化階層や、特定符号化モードに限定することも可能である。
【0023】
図3(a)に示すように、前記特定画像領域の場合は、特定画像領域に関する符号化データを対象に攪拌する。たとえば、画像9中の特定画像領域10の8×8ブロック群について、該ブロックに関する符号化情報が得られるブロックレイヤーの情報に対して攪拌を行うことができる。これにより特定の画像領域のみを撹拌することができる。
【0024】
また、同図(b)に示すように、前記特定符号化階層の場合、例えばGOP層のうち、特定のGOPだけを撹拌対象とすることや、ピクチャー層のうち特定のピクチャー(例えばIピクチャのみなど)を撹拌対象とすることができる。これにより、特定のピクチャーの画像全体を撹拌することができるほか、その画像を参照画像として用いている符号化画像まで自動的に撹拌することができる。
【0025】
さらに、同図(c)に示すように、前記特定符号化モードの場合は、例えばイントラ符号化モードのブロックのみを撹拌対象とすることができる。この場合も撹拌処理対象となった符号化モードを用いたブロックが撹拌されるほか、このブロックを参照するすべてのブロックも自動的に撹拌される。たとえば、イントラ符号化ブロックのみを攪拌対象とすることにより、その後の前方向予測、双方向予測ブロックすべてに攪拌効果が得られるため、少ない攪拌対象ブロックにより、すべてのブロックを攪拌対象としたときと同等の効果を得ることが可能である。また、前方向予測を用いたインター符号化ブロックも攪拌対象とした場合は、より強固な攪拌効果が得られる。
【0026】
また、前記撹拌対象領域情報pとしては、時間的に特定した画像のみを攪拌処理対象にしたり、前記の特定画像領域、特定符号化階層、特定符号化モードなどを組み合わせることも可能である。
【0027】
なお、攪拌方式や攪拌領域については、あらかじめ決定しておく方法が利用できるが、それ以外の方法としては、たとえばMPEGデータのユーザデータ領域に暗号化するなどの手法を用いて格納することが可能である。更に複数の撹拌方式や鍵系列を用い、これらの情報を符号化の階層(例えばGOP層、マクロブロック層など)で変更することも可能である。例えば、MPEG符号化において、IピクチャとPピクチャで鍵系列を変更することなどがこれに当たる。これにより、より撹拌の強度を強化させることができる。また、鍵系列は符号化画像領域に応じて変更することも可能である。例えば、鍵系列を、画面の上半分と下半分で変更するなどの手法が利用できる。
【0028】
さらに、撹拌方式や撹拌領域情報を電子透かしにより秘匿情報として画像データに埋め込むことも可能である。これにより、透かし情報が読み取れない限り、撹拌方式や撹拌領域情報を得ることができないため、非常に強固な撹拌が可能となる。
【0029】
次に、本実施形態の具体的な実施例を以下に説明する。
(実施例1)DC成分の攪拌
【0030】
図4は、圧縮画像データに対してDC成分を用いて画像を攪拌する実施例を示す。
【0031】
符号化動画像データと撹拌対象領域情報pとは、VLD(可変長復号)などで構成される部分復号部11に入力され、部分復号部11から得られる撹拌対象領域の変換係数iがDC成分抽出部12に入力される。該DC成分抽出部12には撹拌対象領域情報pで指示される撹拌対象領域の中のDC成分jのみが抽出され、撹拌対象領域外の情報k、すなわちAC成分は部分符号化部14に入力される。DC成分抽出部12で抽出された攪拌対象のDC成分jはDC成分攪拌部13に入力され、撹拌方式qに従って攪拌される。部分符号化部14では攪拌されたDC成分j’と、それ以外の情報k、m(AC成分k、撹拌対象領域外の符号化情報mなど)をあわせて部分符号化し、攪拌後の符号化画像データhとして出力する。
【0032】
前記DC成分攪拌部13における撹拌方法qとしては、いくつかの手法が考えられる。
DC成分を攪拌強度に応じて攪拌するために、以下の様にDC係数を攪拌強度Sに対して変更する。この場合、DC係数値を攪拌強度の範囲で変更することができる。たとえばDC係数がCd、攪拌強度をSとして、攪拌後のDC係数Cd’をCd±S/2の範囲に変更することができる。
【0033】
変更の方法としては、以下のような方法が利用できる。この場合、攪拌強度Sを8から128までの8の倍数として、
Cd’=(2*[Cd/S]+1)*S-Cd (1)
として求めることができる。ここで、[X]は整数演算を示す。
【0034】
たとえば、S=16、Cd=34の場合、Cd’=46になる。これは、攪拌強度S=16により、DC係数を1−16、17−32、33−48、・・・のバンドに分割し、DC係数が対応するバンドにおいて、補数計算により、攪拌後の係数を求めることと等価である。上の例ではCd=34のため、33−48のバンドにおいて補数は46になる(図5参照)。このように変換することにより、一意に変更することができる。
逆にCd’からCdを復元する場合は、逆に
Cd =(2*[Cd’/S]+1)*S-Cd’(2)
として求めることができる。
たとえば、上の例では、S=16の場合、Cd’=46で、Cd=34に戻る。
【0035】
なお、攪拌については、輝度成分Y、色差成分Cb、Crいずれも適用が可能で、どれか1つあるいは組み合わせて利用することができる。
【0036】
Sが大きい場合は、変換範囲も大きくなるため、大きく異なった値に変換される。逆にSが小さい場合は、変換範囲が限られるため、変換量は小さい。これにより、攪拌強度Sの大小により、攪拌効果の大小を制御することが可能となる。例えば、図6に示すように、Sが大きい32の場合には、1−32、33−64、65−96、・・・のバンドに分割され、例えばCd=2は、1−32のバンドにおいて、補数31に変換される。一方、Sが小さい4の場合には、1−4、4−8、9−12、・・・のバンドに分割され、例えばCd=2は、1−4のバンドにおいて、補数3に変換される。
【0037】
次に、この技術をMPEG符号化データにて適用した場合について述べる。たとえばMPEG-1で符号化した場合、符号化データのDC成分はDCT係数上のDC成分が該当する。また、MPEG-1のマクロブロック層で撹拌した場合、マクロブロック単位で撹拌することができるため、特定の小領域で撹拌することが可能である。また、スライス層で撹拌した場合はスライス単位で撹拌することが可能なため、ブロック単位よりもまとまった単位で撹拌できる。
【0038】
また、上記の方法では、攪拌したDC成分も攪拌前と同じ符号化仕様内に収まるため、MPEG-1などの国際標準規格に準拠した符号化データが入力された場合でも攪拌後についてもMPEG-1規格に準拠することが可能であり、攪拌後の符号化データをMPEG-1規格に準拠した再生手段で再生することが可能である。
【0039】
本実施例の方法により、DC成分のみを攪拌することにより、動きやシーンの複雑さに依存せずに、攪拌することが可能である。また、人間の視覚でもっとも重要なDC成分を攪拌することにより、AC成分をそのまま攪拌しない場合でも、攪拌領域については、内容を予測できない程度に攪拌することが可能である。
(実施例2)AC成分の攪拌
【0040】
図7は圧縮画像データに対してAC成分を用いて画像を攪拌する実施例を示す。
【0041】
符号化画像データは部分復号部21に入力され、部分復号部21から得られる量子化変換係数がAC成分抽出部22に入力される。それ以外の情報は部分符号化部25に入力される。AC成分抽出部22では、量子化変換係数のうちAC成分のみが抽出され、攪拌対象のAC成分は逆量子化されてAC成分攪拌部23に入力され、AC成分が攪拌される。それ以外の情報は部分符号化部25に入力される。AC成分攪拌部23で攪拌されたAC成分は攪拌対象外情報とともにAC成分符号化データ生成部24で符号化される。部分符号化部25では符号化されたAC成分とそれ以外の情報をあわせて攪拌後の符号化データとして出力する。
【0042】
AC成分の攪拌方法としては、(実施例1)で述べたDC成分の攪拌と同様な手法を用いることが可能である。
【0043】
すなわち、特定のAC係数Caに対して、(1)式のような方式により、AC係数を攪拌強度Sに応じてCaが属するバンドにおいて補数となる値を変換後の係数Ca’として用いる。
Ca’=(2*[Ca/S]+1)*S-Ca (3)
なお、AC係数は負数になることがあるので、この場合は、絶対値については同様に計算して、その後負数におきかえればよい。また、復元する際は(2)式のような方式によりAC係数を復元することができる。
Ca =(2*[Ca’/S]+1)*S-Ca’(4)
【0044】
なお、AC係数については、どのAC係数を対象とするかはさまざまな手法で決定することができる。第1の方法としては、非零AC係数のうち最も低い周波数のAC係数を用いる方法がある。これは低周波成分は視覚的に影響力が大きいためである。第2の方法としては、非零AC係数のうち、最も絶対値が大きい係数を用いる方法がある。この場合も、視覚的に影響力が大きい係数を利用することで第1の方法と同様な効果が得られる。第3の方法としては、疑似乱数発生が可能な鍵系列を用いて決定される非零AC係数を用いることができる。この場合は、AC係数がランダムに選ばれる。類似した画像が連続するような場合には第1、第2の方法では、特定の係数が選ばれるため、攪拌効果が低下する可能性があるが、第3の手法の場合は、ランダム性が確保できるため、攪拌効果を向上させることが可能である。図8に第3の方法により攪拌する例を示す。この場合、攪拌強度S=32で、鍵系列により非零AC係数のうち(x,y)=(3,1)の位置に存在する係数Ca=-2が選ばれている。そこで(3)式を用いて変換すると絶対値は30になるため、負数として−30になる。
【0045】
なお、AC係数については、上記の手法を組み合わせて、複数のAC係数を攪拌することも可能である。たとえば、第1と第2の手法を組み合わせて2つの係数を対象にすることや、第1の手法において、低い周波数から順次2つの係数を対象とすることも可能である。
【0046】
また、変形例として、AC係数とDC係数両方を攪拌対象にすることも可能である。この場合、単独の場合にくらべて効果を高めることが可能である。
【0047】
さらに、本攪拌手法は別の攪拌手法と組み合わせることも可能である。たとえば、特願2006-187924号に記載したようにブロック間で変換係数を鍵系列を用いて攪拌することや、ブロック内の変換係数を鍵系列を用いて攪拌する手法と組み合わせることが可能である。たとえば、ブロック間で変換係数を攪拌する場合、まず、実施例1や実施例2で述べたDC成分やAC成分を攪拌強度に従って別の値に変更し、さらにそのブロックすべての変換係数を鍵系列で指定される別のブロックと交換することが可能である。また、ブロック内の攪拌については、まず、実施例1や実施例2で述べたDC成分やAC成分を攪拌強度に従って別の値に変更し、さらにそのブロック内のAC成分を鍵系列に従って攪拌することができる。このような攪拌手法の組み合わせによって、より解読が困難な攪拌が可能となる。
【0048】
また、攪拌したAC成分も攪拌前と同じ符号化仕様内に収まるため、MPEG-1などの国際標準規格に準拠した符号化データが入力された場合でも攪拌後についてもMPEG-1規格に準拠することが可能であり、攪拌後の符号化データをMPEG-1規格に準拠した再生手段で再生することが可能である。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態は、符号化時に撹拌処理をするようにした点に特徴がある。
【0050】
図9に、入力された画像データを符号化する時に、撹拌処理も合わせて行う方式を示す。画像データはDCTや量子化器やVLCなどで代表される第1の符号化部121に入力される。符号化出力のうち撹拌対象データおよび攪拌強度がデータ撹拌部122に入力される。また撹拌対象外データについては第2の符号化部123に入力される。データ撹拌部122では符号化データが撹拌され、第2の符号化部123に入力される。第2の符号化部123では撹拌された符号化データと撹拌されていない符号化データを合わせて再符号化し、符号化データとして出力する。例えば、Iピクチャが撹拌対象で、時間的に後に位置するPピクチャが撹拌対象外の場合、撹拌されたIピクチャデータの後に撹拌されていないPピクチャデータが後に続くように符号化出力を行う。
【0051】
この場合も第1実施形態の図4、図8で説明したのと同様に、適切な撹拌方法を利用することで、撹拌しない場合と撹拌した場合でMPEGやJPEGなどの規格を撹拌後も遵守することが可能である。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。この実施形態は、撹拌された符号化データを撹拌時の逆の方法を用いて撹拌前の符号化データに復元するようにしたものである。
【0053】
図10を用いて説明する。撹拌された符号化データはVLDなどで構成される部分復号部131に入力される。部分復号後のデータは、撹拌対象領域に属する符号化情報については撹拌復元部132に入力させる。また、攪拌対象外の符号化情報はそのまま部分符号化部133に入力させる。攪拌復元部132では、(2)式などを用いて、撹拌された符号化情報を元の符号化情報に復元する。戻された符号化情報は撹拌対象外の符号化情報と共に部分符号化部133により撹拌前の符号化データとして出力される。
【0054】
例えば、Iピクチャが撹拌されており、その後に続くPピクチャが撹拌対象外であった場合、撹拌復元部132には撹拌されたIピクチャが入力されて復元され、撹拌前のIピクチャ情報が出力される。部分符号化部133は、撹拌前のIピクチャの後に撹拌されていないPピクチャ情報を合わせて符号化して出力する。
【0055】
なお、適切な撹拌方法を選択した場合、上記の方法で撹拌復元された符号化データは撹拌される前の符号化データと同一の符号化データに復元することが可能である。例えば、上の例で述べたIピクチャの場合、撹拌前のIピクチャ符号化データに完全に復元することにより、撹拌前の符号化データに戻すことが可能になる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。この実施形態は、撹拌された符号化データを撹拌時の逆の方法を用いて撹拌される前の画像データに復元するようにしたものである。
【0057】
図11を用いて説明する。撹拌された符号化データは第1の復号部141に入力される。第1の復号部141で復号された符号化データは、撹拌対象領域に属する符号化情報については撹拌復元部142に入力される。また、攪拌対象外の符号化情報はそのまま第2の復号部143に入力される。攪拌復元部142では、例えば、(2)式のような方式により撹拌された符号化情報を元の符号化情報に復元する。戻された符号化情報は撹拌対象外の符号化情報と共に、逆量子化や逆DCTで構成される第2の復号部143により撹拌前の画像データとして出力される。
【0058】
例えば、Iピクチャが撹拌されており、その後に続くPピクチャが撹拌対象外であった場合、撹拌復元部142には撹拌されたIピクチャが入力されて、撹拌前のIピクチャ符号化データが出力される。第2の復号部143には撹拌前のIピクチャの後に撹拌されていないPピクチャ情報が順に復号されて復元された画像が出力される。
【0059】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。この実施形態は、画像データを攪拌して、攪拌された画像データを得るものである。
【0060】
図12を用いて説明する。画像データは画像データ抽出部151に入力され、攪拌対象領域の画像データが抽出される。もし対象が画面全体の場合はすべての画像データが対象になる。また、対象外の画像データについては、変換係数逆変換部154に入力される。攪拌対象画像データは画像データ変換部152に入力される。画像データ変換部では、対象画像データが周波数変換される。たとえば、ブロック単位で変換が可能なDCTやWavelet変換などを用いることができる。周波数変換された変換係数は、データ攪拌部153で攪拌される。データ攪拌部153では、各ブロックの変換係数を攪拌強度に応じて攪拌する。攪拌方法としては、実施例1や実施例2で述べたように、変換係数のDC成分やAC成分をそれぞれ(1)式や(3)式を用いて攪拌することが可能である。AC係数の指定方法については、実施例2で述べたような手法(最低周波数の非零AC係数、絶対値が最大の非零AC係数、鍵系列で指定された非零AC係数)などを用いて指定することができる。また、DC成分とAC成分を組み合わせて複数の係数を攪拌することも可能である。さらに、最低周波数から高い周波数に向けて2個の非零AC係数を用いるなど複数のAC係数を対象とすることも可能である。データ攪拌された変換係数は変換係数逆変換部154に入力される。ここでは、データ攪拌された変換係数を逆変換して画像データに戻すとともに、画像データ抽出部151で対象外となった画像データと合わせて、攪拌後の画像データとして出力する。
【0061】
この出力された画像データを例えば記憶装置に記憶して保存する場合、他者が該記憶装置から該画像データを読み出しても内容のわかるまたは予測できる画像を得ることができず、画像データを守秘することができる。
【0062】
上記のようにして撹拌された画像データから攪拌前の画像データへ復元する方法を図13を用いて説明する。攪拌された画像データは画像データ抽出部161に入力され、攪拌された領域の画像データが抽出される。もし対象が画面全体の場合はすべての画像データが対象になる。また、対象外の画像データについては、変換係数逆変換部164に入力される。攪拌対象画像データは画像データ変換部162に入力される。画像データ変換部では、対象画像データが周波数変換される。たとえば、ブロック単位で変換が可能なDCTやWavelet変換などを用いることができる。周波数変換された変換係数は、攪拌復元部163で攪拌される。攪拌復元部163では、各ブロックにおいて指定された変換係数を攪拌前に戻す。攪拌復元方法としては、実施例1や実施例2で述べたように、変換係数のDC成分やAC成分をそれぞれ(2)式や(4)式を用いて復元することが可能である。攪拌が復元された変換係数は変換係数逆変換部164に入力される。ここでは、変換係数を逆変換して画像データに戻すとともに、画像データ抽出部161で対象外となった画像データと合わせて、攪拌後の画像データとして出力する。
【0063】
次に、本発明の第6実施形態を説明する。この実施形態は、符号化画像データの動きベクトル量を攪拌して、攪拌された符号化画像データを得るものである。
【0064】
図14は圧縮画像データに対して動きベクトルを用いて画像を攪拌する実施例を示す。
【0065】
符号化画像データは部分復号部171に入力され、部分復号部171から得られる動きベクトル情報が動きベクトル抽出172に入力される。それ以外の情報は部分符号化部174に入力される。動きベクトル抽出部112では、攪拌対象の動きベクトルが動きベクトル攪拌部173に入力され、動きベクトルが攪拌される。それ以外の情報は部分符号化部174に入力される。部分符号化部174では攪拌された動きベクトル成分とそれ以外の情報をあわせて攪拌後の符号化データとして出力する。
【0066】
動きベクトルの攪拌方法としては、(実施例1)で述べたDC成分の攪拌と類似した手法を用いることが可能である。
【0067】
すなわち、動きベクトルMVに対して、(1)式のような方式により、動きベクトルMVを攪拌強度S‘に応じてMVが属するバンドにおいて補数となる値を変換後の係数MV’として用いる。
MV’=(2*[MV/S’]+1)*S’-MV (5)
たとえば、動きベクトル範囲が±32の場合、攪拌強度S’=8とすると、MV=(15, -25)の場合、MV’=(9, -31s)となる。なお、動きベクトルは負数になることがあるので、この場合は、絶対値については同様に計算して、その後負数に置き換えている。また、復元する際は(6)式のような方式により攪拌前の動きベクトルMVを復元することができる。
MV =(2*[MV’/S’]+1)*S’-MV’(6)
【0068】
また、変形例として、動きベクトルのほかに実施例1や実施例2で述べたAC係数とDC係数などと組み合わせて攪拌することも可能である。この場合、単独の場合にくらべて効果を高めることが可能である。
【0069】
また、攪拌した動きベクトルも攪拌前と同じ符号化仕様内に収まるため、MPEG-1などの国際標準規格に準拠した符号化データが入力された場合でも攪拌後についてもMPEG-1規格に準拠することが可能であり、攪拌後の符号化データをMPEG-1規格に準拠した再生手段で再生することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一具体例の構成を示すブロック図である。
【図3】撹拌対象領域情報の具体例の説明図である。
【図4】第1実施例の概略の構成を示すブロック図である。
【図5】撹拌強度S=16の場合のバンドと補数の関係を説明する図である。
【図6】撹拌強度S=32、S=4の場合のバンドと補数の関係を説明する図である。
【図7】第2実施例の概略の構成を示すブロック図である。
【図8】撹拌強度に応じたAC成分の撹拌の一例の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5実施形態の概略の構成(撹拌装置)を示すブロック図である。
【図13】本発明の第5実施形態の概略の構成(復元装置)を示すブロック図である。
【図14】本発明の第6実施形態の概略の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・符号化画像情報抽出部、2・・・データ撹拌部、3・・・符号データ生成部、11,21・・・VLD、12・・・DC成分抽出部、13・・・DC成分撹拌部、14,25・・・VLC、22・・・AC成分抽出部、23・・・AC成分撹拌部、24・・・AC成分符号化データ生成部、121・・・第1の符号化部、122・・・データ撹拌部、123・・・第2の符号化部、131・・・部分復号部、132・・・撹拌復元部、133・・・部分符号化部、141・・・第1の復号部、142・・・撹拌復元部、143・・・第2の復号部、151・・・画像データ抽出部、152・・・画像データ変換部、153・・・データ撹拌部、154・・・変換係数逆変換部、161・・・画像データ抽出部、162・・・画像データ変換部、163・・・撹拌復元部、164・・・変換係数逆変換部、171・・・部分復号部、172・・・動きベクトル抽出部、173・・・動きベクトル撹拌部、174・・・部分符号化部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化画像データを入力する符号化画像データ入力手段と、
該符号化画像データの符号化情報を抽出する符号化情報抽出手段と、
攪拌強度を指定する手段と、
該抽出された符号化情報を該指定された攪拌強度に従って符号化情報を攪拌する撹拌手段とを具備したことを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記撹拌手段は、前記撹拌強度に応じて符号化情報中の指定された符号化パラメータの値を変更することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項3】
請求項2に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記符号化パラメータは、符号化ブロックの変換係数値または動きベクトル量であることを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項4】
画像データを入力する画像データ入力手段と、
画像データを周波数空間に変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された周波数情報を抽出する手段と、
攪拌強度を指定する手段と、
該指定された攪拌強度に従って該抽出された周波数情報の値を変更し、該周波数情報を攪拌する撹拌手段と、
攪拌後の変換係数を逆変換して画像データに復元する手段を具備したことを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項5】
請求項4に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記周波数情報はブロックの変換係数値であり、前記撹拌手段は、該変換係数の一部を別の値に変更することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項6】
請求項5に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記撹拌手段は、前記変換係数値を変更すると共に、鍵系列を用いて、ブロック間ですべての変換係数を攪拌することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項7】
請求項5に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記撹拌手段は、前記変換係数値を変更すると共に、鍵系列を用いて、ブロック内で変換係数の位置を攪拌することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項8】
請求項5に記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記撹拌手段は、前記変換係数値を変更し、鍵系列を用いて、ブロック間ですべての変換係数を攪拌すると共に、ブロック内で変換係数の位置を攪拌することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記変換係数として、非零DC係数を用いることを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項10】
請求項5ないし8のいずれかに記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記変換係数として、非零AC係数のうち、絶対値が最大のもの、最も周波数が低いもの、および鍵系列を用いて決定されるものうちの少なくとも一つを用いることを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項11】
請求項5ないし8のいずれかに記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記変換係数として、非零AC係数およびDC係数を用いることを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項12】
請求項5ないし12のいずれかに記載の符号化画像データの撹拌装置において、
前記変換係数は、前記攪拌強度に応じて決定される変更幅の中で変換係数値に対して補数となる値に変更することを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項13】
請求項4の撹拌装置で攪拌された画像データを入力する画像データ入力手段と、
画像データを周波数空間に変換する変換手段と、
指定された変換係数の値を変更して攪拌を復元する撹拌復元手段と、
該復元後の変換係数を逆変換して攪拌前の画像データに復元する手段を具備したことを特徴とする画像データの撹拌復元装置。
【請求項14】
画像データを入力する画像データ入力手段と、
画像データを周波数空間である変換係数に変換する変換手段と、
攪拌強度を指定する手段と
該指定された攪拌強度に従って指定された変換係数の値を変更し、該変換係数を攪拌する撹拌手段と、
攪拌後の変換係数と他の符号化情報を用いて画像を符号化する手段を具備したことを特徴とする画像データの撹拌装置。
【請求項15】
請求項14の撹拌装置で攪拌された符号化画像データを入力する符号化画像データ入力手段と、
該符号化画像データを部分復号して符号化情報を抽出する符号化情報抽出手段と、
該抽出された符号化情報を該指定された復元方式に従って攪拌前の符号化情報に復元する手段とを具備したことを特徴とする画像データの撹拌復元装置。
【請求項16】
請求項14の撹拌装置で攪拌された符号化画像データを入力する符号化画像データ入力手段と、
該符号化画像データを部分復号して符号化情報を抽出する符号化情報抽出手段と、
該抽出された符号化情報を該指定された復元方式に従って攪拌前の符号化情報に復元する手段と、
該復元された符号化情報を攪拌前の画像データに復号する手段とを具備したことを特徴とする画像データの撹拌復元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−118560(P2008−118560A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301944(P2006−301944)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】