説明

画像レーダ装置

【課題】1偏波送信・2偏波受信の信号から2偏波送信・2偏波受信の信号を推定する際の適切な反復処理を可能にした画像レーダ装置を提供する。
【解決手段】受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定する成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段が、1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により非線形の方程式を解き共分散行列を推定する手段10,11,12,13,13a、反復処理される共分散行列の推定値から2偏波送信・2偏波受信の信号の共分散行列推定不可能領域を判定する手段16、共分散行列推定可能領域で共分散行列の連続する2回の反復推定結果を比較する共分散行列の同一性を検定する手段17、前記比較結果を受けて、反復処理される共分散行列推定値が収束していることに基づき反復処理の終了を判定する手段18を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターゲットでの水平偏波と垂直偏波の直交した偏波特性を観測するポラリメトリ方式の画像レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットの偏波特性を観測するポラリメトリックレーダに関しては、例えば下記非特許文献1に記載のようなものが古くから知られている。従来のこのポラリメトリックレーダを用いると、ターゲットの電波散乱の偏波特性を観測することができるため、ターゲット識別などに有効であることが知られている。航空機や衛星搭載に、このポラリメトリックレーダを搭載して合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)の観測を実施すると、地表面の偏波特性を計測することができるため、土地被覆や地勢の観測に極めて有用であることが知られている。
【0003】
しかし、従来のこのポラリメトリックレーダの観測においては、水平偏波と垂直偏波を交互に送信する必要があるため、単偏波の観測と比較すると、PRF(Pulse Repetition Frequency; パルス送信周波数)が2倍になってしまう問題がある。特に合成開口レーダにおいては、このことによって観測幅が半減してしまうため、一度に観測できる領域が狭くなる問題がある(アジマス分解能同等の条件で比較した場合)。
【0004】
そこで、送信偏波を1つに限定してPRFの倍増を防ぎ、かつ、できるだけポラリメトリの情報を失わないことを目的とする方式が下記非特許文献2に記載されている。非特許文献2において、この方式はコンパクトポラリメトリ方式と命名されており、本明細書においても、同方式をコンパクトポラリメトリ方式と呼ぶこととする。コンパクトポラリメトリ方式は、1偏波送信・2偏波受信の2チャネル分の信号から、従来のポラリメトリ方式(コンパクトポラリメトリ方式と区別するため、以下ではフルポラリメトリ方式と呼ぶ)の2偏波送信・2偏波受信で得られる信号を推定する方式である。
【0005】
コンパクトポラリメトリ方式においては、まず、送信偏波が水平偏波(H偏波)成分と垂直偏波(V偏波)成分を同時に含むこと(円偏波又は45°直線偏波などを選択する)が原則である。さらに、この1偏波送信・2偏波受信の2チャネル分の信号からフルポラリメトリの信号を推定するためには、非線型な連立方程式を反復的な手法で解く必要がある。コンパクトポラリメトリ方式の成立条件の一つに、観測対象がある種の対称性を示す必要がある。この対称性は、森林、植生、雪面、海氷、地面、水面などの自然ターゲットについては一般に成立することが多いが、市街地など人口構造物の多い領域では成立しないことが多い。従って、コンパクトポラリメトリ方式によって推定されたフルポラリメトリの信号の推定精度は、地表面の種類によって異なる特徴がある。
【0006】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年
【非特許文献2】J. C. Souyris, P. Imbo, R. Fjortoft, S. Mingot and J. S. Lee, ”Compact Polarimetry based on symmetry properties of geophysical media: the π/4 mode,”IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, Vol.43, No.3, pp.634-646, Mar. 2005
【非特許文献3】大内和夫著、「合成開口レーダの基礎−リモートセンシングのための−」、東京電機大学出版局、2004年
【非特許文献4】K. Conradsen, A. Nielsen, J. Schou and H. Skriver, "A test statistic in the complex Wishart distribution and its application to change detection in polarimetric SAR data," IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, Vol.41, No.1, pp.4-19, Jan. 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、コンパクトポラリメトリ方式の成立条件としては、観測対象がある種の対称性を示すことが要求される。事前に観測領域の状態が既知であれば、観測領域におけるコンパクトポラリメトリ方式の成立性を予測できるが、これから観測しようとする領域の情報が完全に既知であると仮定するのは適当ではない。そこで、1偏波送信・2偏波受信の2チャネル分の信号からフルポラリメトリ方式の信号を推定する過程において、コンパクトポラリメトリ方式の成立性を判定する手段が必要である。また、コンパクトポラリメトリ方式によるフルポラリメトリ信号の推定においては、非線型な連立方程式を反復的な手法で解くプロセスが含まれるが、反復を終結するための収束判定法が必要である。
【0008】
この発明は、1偏波送信・2偏波受信の2チャネル分の信号からフルポラリメトリ(FP)方式の信号を推定する過程において、コンパクトポラリメトリ(CP)方式の成立性の判定、またコンパクトポラリメトリ方式によるフルポラリメトリ信号の推定における非線型な連立方程式を反復的に処理して解く際の反復を終結するための収束判定を行い、適切な反復処理を可能にした画像レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、異なる偏波面をもつ2つのアンテナと、前記2つのアンテナに給電し1偏波送信を行う送信手段と、前記偏波送信により生じるターゲットでの電波散乱の偏波信号を前記2つのアンテナで同時に受信する2偏波受信を行う受信手段と、前記受信手段で受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定する成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段と、を備え、前記成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段が、受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により非線形の方程式を解き共分散行列を推定する共分散行列演算手段と、反復処理される共分散行列の推定値から、1偏波送信・2偏波受信の信号から、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定することが不可能な領域を判定する成立性判定手段と、共分散行列が推定可能な領域において共分散行列の連続する2回の反復の推定結果を比較する共分散行列同一性検定手段と、前記共分散行列同一性検定手段の比較結果を受けて、反復処理される共分散行列推定値が収束していることに基づき反復処理の終了を判定する反復処理終了判定手段と、を備えたことを特徴とする画像レーダ装置にある。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、1偏波送信・2偏波受信の2チャネル分の信号からフルポラリメトリ方式の信号を推定する過程において、コンパクトポラリメトリ方式の成立性の判定、またコンパクトポラリメトリ方式によるフルポラリメトリ信号の推定における非線型な連立方程式を反復的に処理して解く際の反復を終結するための収束判定を行う、適切な反復処理を可能にした画像レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1から図5はこの発明に係わる画像レーダ装置の動作と原理を説明するための図、図6と図7はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の構成を示すブロック図及び機能をフローチャート形式で示した図である。
【0012】
図1はフルポラリメトリ方式の送受信部の基本構成、図3はコンパクトポラリメトリ方式の画像レーダ装置の基本構成をそれぞれ示すブロック図である。図1において、送信機1は偏波切換器2及び送受切換器3aと3bを介して、それぞれ水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5に接続されている。水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5には送受切換器3aと3bを介して、それぞれ水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7が接続されている。また図3では図1の偏波切換器2の代わりに分波器8が接続され、さらに水平偏波受信機6、垂直偏波受信機7に偏波特性2次統計量推定手段9が接続されている。
【0013】
また図5は図3の偏波特性2次統計量推定手段9の機能をフローチャート形式で示した図であり、初期化手段10、共偏波相関係数算出手段11、交差偏波電力算出手段12、共偏波電力算出手段13、共分散行列算出手段13a、反復回数計測手段14を含む。初期化手段10、共偏波相関係数算出手段11、交差偏波電力算出手段12、共偏波電力算出手段13及び共分散行列算出手段13aが共分散行列演算手段を構成する。また図2と図4はそれぞれフルポラリメトリ方式、コンパクトポラリメトリ方式の動作を説明するためのタイムチャートである。
【0014】
まず図1と図2を用いてフルポラリメトリ方式の原理とフルポラリメトリ方式による観測量の性質について説明する。前述のとおり、フルポラリメトリ方式によれば、ターゲットの偏波特性を観測することができるが、あるターゲットの偏波特性は、式(1)の散乱行列S(scattering matrix)で表される。
【0015】
【数1】

【0016】
ここでhとvはそれぞれ水平偏波(H偏波)、垂直偏波(V偏波)を意味しており、例えばhvは垂直偏波送信、水平偏波受信(これをHV偏波成分・HV偏波チャネルなどと呼ぶことがある)を示している。送受信アンテナの偏波状態を、それぞれ複素ベクトルE、Eで表すと、散乱行列がSで与えられる散乱体による散乱波を受信した場合の受信電圧Vと受信電力Pはそれぞれ次式で表される。
【0017】
【数2】

【0018】
ここで、||E||=||E||=1とする(|| ||はベクトルノルム)。また、Kは偏波状態以外のアンテナ特性や距離等で決まる定数、Rは受信アンテナに付加された整合負荷であり、Tは転置を表す。なお、以下では送受信の偏波状態に着目して議論を進めるため、偏波状態に関係のない係数K,Rの項は無視した次式の表現を用いる。
【0019】
【数3】

【0020】
式(2)、(3)より、ターゲットの散乱行列が観測できれば、任意の送受信偏波の組み合わせで観測した場合の受信電圧と電力を計算によって求めることが可能であることが分かる。散乱行列を次式のように列ベクトルkで表現したものを”散乱ベクトル”と呼ぶ。モノスタティック構成のレーダを考えてShv=Svhとして、散乱ベクトルは次式で表現する。
【0021】
【数4】

【0022】
なお、後の式展開を見易くするため、h=Shh,x=Shv,v=Svvという表記をここで併せて導入しておく。
【0023】
図1はフルポラリメトリ方式の送受信部の基本構成を示すブロック図である。動作を説明する。送信機1でパルス信号を生成し、偏波切換器2が当該パルス信号を送受切換器3aに送る。すると当該パルス信号は、送受切換器3aを介して水平偏波アンテナ4から空間に放射される。空間に放射されたパルス信号は観測対象によって散乱される。観測対象によって散乱された散乱波を水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5でそれぞれ受信する。
【0024】
水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5で受信された各受信信号は、送受切換器3aと3bを介してそれぞれ水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7に送られる。水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7において、水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5が受信した散乱波の受信信号のそれぞれに対して、位相検波処理とA/D変換処理を実施し、それぞれの受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号を出力する。
【0025】
次いで、送信機1がパルス信号を再び生成すると、偏波切換器2は当該パルス信号を今度は送受切換器3bに送る。すると当該パルス信号は、送受切換器3bを介して垂直偏波アンテナ5から空間に放射される。観測対象によって散乱された散乱波を水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5において受信された散乱波の受信信号に対して、水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7で同様の処理を繰り返すことにより、受信信号を得る。
【0026】
図2は水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5の各時刻の動作モードについて示している。図中の各インターバル1,2は、4つの偏波チャネルにおける受信信号の一組を得るのに要する動作のひとまとめである。インターバルの時間をT[秒]とする。インターバル1、インターバル2の観測を複数回反復してデータを蓄積した後、合成開口の処理などにより高分解能のレーダ画像を再生する。合成開口の処理は、例えば、上記非特許文献3などに記載されており公知である。また、アレイアンテナなどの使用により、十分に高い角度分解能を得られる場合は合成開口処理を実施せずに、ビームをスキャンすることによって実開口画像を得ることも可能であり、また対象が移動しているような場合は、逆合成レーダの処理によって画像を再生することも可能である。
【0027】
上記のようにして観測されるポラリメトリック合成開口レーダ画像の各画素の値は、シングルルック画像の場合、式(4)に示す散乱ベクトルkで表現される(シングルルック画像とは、合成開口処理によって得られた合成開口レーダ画像の原画像)。一方、ポラリメトリック合成開口レーダ画像の場合、マルチルック処理(合成開口レーダ画像に特有なスペックル雑音を低減するための、パワーの次元での空間平均処理)は次式で定義される共分散行列の次元で成立する。従ってマルチルック後の各画素の値は、下記の3×3行列で表現される。
【0028】
【数5】

【0029】
ここで、< >は空間平均、上付きの*は複素共役、上付きのHは共役転置をそれぞれ表す。また、ここでも表記を簡易にするため、H=<|h|>,X=<|x|>,V=<|v|>,P=<hv>をそれぞれ定義する。なお、H,X,Vは、それぞれHH偏波成分、HV(又はVH)偏波成分、VV偏波成分の強度であり、PはHH偏波成分とVV偏波成分の相関である。また、後の説明に必要なので、HH偏波成分とVV偏波成分の相関係数ρhvをここで定義しておく。
【0030】
【数6】

【0031】
観測対象である地表面にはある”対称性”が存在している。フルポラリメトリの観測量、とりわけ共分散行列Cは、この対称性に起因するいくつかの性質を示すことがある。例えば地表面が、電波の入射面について左右対称である場合、次式の関係が成立することが知られている。
【0032】
【数7】

【0033】
このような性質はリフレクション・シンメトリ(Reflection Symmetry:反射対称)と呼ばれる。植生、森林、水面、土壌面など、大抵の自然な地表面において、リフレクション・シンメトリが成立することが知られている。式(7)より、リフレクション・シンメトリが成立する領域において、共分散行列は次式のような形で表される。
【0034】
【数8】

【0035】
以上でフルポラリメトリ方式の原理とフルポラリメトリ方式による観測量の性質についての説明を終え、次に、図3、図4、図5を用いてコンパクトポラリメトリ方式の原理を説明する。前述の通り、コンパクトポラリメトリにおいては、送信偏波を1つに固定し、直交2偏波で受信する。受信偏波の組み合わせについては、理論上は異なる2偏波であればどのような組み合わせでもよいが、H偏波とV偏波の組み合わせ、あるいは左旋円偏波(L偏波)と右旋円偏波(R偏波)の組み合わせとするのが現実的である。
【0036】
一方、コンパクトポラリメトリにおいて送信偏波の選択は重要な鍵を握る。送信偏波を一つ省くため、コンパクトポラリメトリで得られる情報量は、フルポラリメトリに対して低下することは避けられない。従って、できるだけ情報量の低下を防ぐように送信偏波を選択することが重要である。上述の非特許文献2によれば、HH偏波チャネルとVV偏波チャネル及びこれらの2つのチャネルの相関係数に特に多くの情報が含まれるため、送信波はH偏波成分とV偏波成分を同時に含むことが望ましく、円偏波(L偏波又はR偏波)あるいは45°傾いた直線偏波(π/4偏波)を用いるのが良いとされている。
【0037】
図3は、コンパクトポラリメトリ方式の基本構成を示すブロック図である。動作を説明すると、送信機1でパルス信号を生成し、分波器8が当該パルス信号を送受切換器3aと3bに送る。すると、当該パルス信号は、送受切換器3aと3bを介してそれぞれ、水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5から同時に空間に放射される。導波管長の調整、あるいは移相器を用いて位相の調整をすることで、両アンテナ4,5からの送信パルスの位相を同相又は90°ずらすようにする。
【0038】
同相にそろえた場合、放射される送信パルスの偏波は45°直線偏波(π/4偏波と呼ぶ)であり、90°ずらした場合、放射される送信パルスの偏波は円偏波となる。空間に放射されたパルス信号は観測対象によって散乱される。なお、原理上は、両アンテナ4,5からの送信パルスの位相差が既知であれば、位相差はどのような値でも問題はない。
【0039】
観測対象によって散乱された散乱波を水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5でそれぞれ受信する。水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5で受信された各受信信号は、送受切換器3aと3bを介してそれぞれ水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7に送られる。水平偏波受信機6と垂直偏波受信機7において、水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5が受信した散乱波の受信信号のそれぞれに対して、位相検波処理とA/D変換処理を実施し、それぞれの受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号を出力する。
【0040】
図4は水平偏波アンテナ4と垂直偏波アンテナ5の各時刻の動作モードについて示している。フルポラリメトリ方式の場合と異なり、H偏波アンテナ(4)とV偏波アンテナ(5)から同時にパルスを送信する。そのため、インターバルの時間はフルポラリメトリ方式の場合と比較するとT/2[秒]とすることができる。
【0041】
送信偏波を円偏波(L偏波)とした場合と45°直線偏波の場合の観測量とフルポラリメトリ方式の観測量の関係を以下にまとめる。ここでは、特にコンパクトポラリメトリの観測量における共分散行列と、フルポラリメトリの共分散行列の各要素との関係が重要である。円偏波(L偏波)送信の場合、H偏波アンテナとV偏波アンテナで受信する信号はそれぞれ以下の通りとなる。
【0042】
【数9】

【0043】
フルポラリメトリ方式の散乱ベクトルと同様にベクトル表記すると、シングルルックの観測量は次式のように表される。
【0044】
【数10】

【0045】
すると、マルチルックによって得られる共分散行列Gは、次式で表される。
【0046】
【数11】

【0047】
また、π/4偏波送信の場合、H偏波アンテナとV偏波アンテナで受信する信号はそれぞれ以下の通りとなる。
【0048】
【数12】

【0049】
従って、シングルルックの観測量をベクトル表記すると次式のようになる。
【0050】
【数13】

【0051】
マルチルックによって得られる共分散行列Gπ/4は、次式で表される。
【0052】
【数14】

【0053】
偏波特性2次統計量推定手段9は、コンパクトポラリメトリ観測で得られる共分散行列Gを用いてフルポラリメトリ観測で得られる共分散行列Cを推定するための手段である。以下では図5を用いて偏波特性2次統計量推定手段9の動作を説明する。
【0054】
上述の非特許文献2においては、π/4偏波送信を前提として定式化されているので、本明細書では、L偏波送信を前提として説明するが、いずれも本質的に同じである。コンパクトポラリメトリとフルポラリメトリの共分散行列の各要素との関係は、式(11)に示す通り、独立な方程式4つで表される。ところが、推定したい未知数は9つ(H,X,V,P,<hx>,<xv>;P,<hx>,<xv>は複素数であるためそれぞれ変数を2つ含む)あるため、このままでは、これらの未知数の値を推定することは不可能である。そこで、観測対象に対して、以下の2つの前提条件を課す。
【0055】
1)観測対象はリフレクション・シンメトリの条件を満たす
前述の通り、観測対象の地表面が、森林や植生など自然な領域であれば、多くの場合にリフレクション・シンメトリが成立する。従って、この条件を前提としても地表面上の広範に渡る領域で問題は無いと予想される。すると、式(7)より、
【0056】
【数15】

【0057】
であるから、推定すべき共分散行列は、式(8)の形で表され、変数は(H,X,V,P)の5つに絞られる。なおこのとき式(11)においては、次式の近似が成立する。
【0058】
【数16】

【0059】
2)ポラリゼーション・ステート・エクストラポレーション(Polarization State Extrapolation:偏波状態外挿)モデルの条件を満たす
ポラリゼーション・ステート・エクストラポレーションモデルとは、非特許文献1において提案されたモデルであり、HH偏波とVV偏波の相関係数ρhvと各偏波成分H,X,Vの強度が次式の関係を満たすとするものである。
【0060】
【数17】

【0061】
式(16)のモデルは、HH偏波とVV偏波の相関が高い場合は、交差偏波の発生率が低いという観察に基づいたものである。このモデル式により、方程式が1つ追加され、式(15)と併せて独立な方程式が5つ立てられるので、5つの変数H,X,V,Pを求めることができる。式(15),(16)で構成される非線型連立方程式を変数H,X,V,Pについて解くことによりフルポラリメトリの共分散行列Cを推定できるが、ここでは、ρhvを媒介変数として、式(6)も利用して推定する。まず、式(6)に式(15)を代入して次式の関係を得る。
【0062】
【数18】

【0063】
式(16)に式(15)を代入して整理すると次式の関係が得られる。
【0064】
【数19】

【0065】
以上のようにして得られた式(17)、(18)の非線形連立方程式を用い、反復的な手法で共分散行列Cを推定することができる。以上を踏まえて、偏波特性2次統計量推定手段9の動作を図5に従って説明する。
【0066】
まず、初期化手段10は、相関係数ρhvと交差偏波電力Xの推定値を初期化する。交差偏波電力Xは、共偏波電力H,Vと比較して小さいことが多いため、まずは(ハット)X=0を仮定して、初期化手段10は、式(17)より相関係数ρhvを次式によって初期化する。
【0067】
【数20】

【0068】
さらに、相関係数の推定値(ハット)ρhv(0)の初期値と式(18)から、交差偏波電力Xの推定値を初期化する。
【0069】
【数21】

【0070】
共偏波相関係数算出手段11は、n(n:正の整数)番目のステップにおいて、n−1番目のステップにおける交差偏波電力の推定値(ハット)X(n-1)を用いて、次式によって共偏波相関係数の推定値を更新する。
【0071】
【数22】

【0072】
次に、交差偏波電力算出手段12は、式(18)より相関係数の推定値(ハット)ρhv(n)を用いて、(ハット)X(n)を次式によって推定する。
【0073】
【数23】

【0074】
さらに、共偏波電力算出手段13は、n番目のステップにおいて、式(15)より共偏波電力(ハット)H(n),(ハット)V(n)ならびに共偏波の相関(ハット)P(n)を次式によって推定する。
【0075】
【数24】

【0076】
以上により、n回目の反復完了時の共分散行列の推定値は次式で表される。共分散行列算出手段13aはこの次式によって共分散行列を推定、演算する。
【0077】
【数25】

【0078】
反復回数計測手段14は、反復回数nが予め設定した値以上になった時点で反復を終了する。上述の非特許文献1によれば反復を2〜3回で終了すると記載されているが、その具体的な根拠については示されていない。
【0079】
本実施の形態では、この反復的解法のための収束判定法を中心に、コンパクトポラリメトリ方式の性能向上方法を示す。
【0080】
図6と図7は上述のようにこの実施の形態1による画像レーダ装置の構成を示すブロック図及び図6の成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段の機能をフローチャート形式で示した図である。両図において上記図1〜図5に示したものと同一もしくは相当部分は同一符号で示し、説明を省略する。図6において15は偏波特性2次統計量推定手段9に代わる成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段である。また、図7において、初期化手段10、共偏波相関係数算出手段11、交差偏波電力算出手段12、共偏波電力算出手段13及び共分散行列算出手段13aが共分散行列演算手段を構成する。16は成立性判定手段、17は共分散行列同一性検定手段、18は収束判定手段である。収束判定手段18は反復処理終了判定手段を構成する。
【0081】
次に図7を用いて本実施の形態1の動作を説明する。初期化手段10から共分散行列算出手段13aまでの動作は基本的に上記説明と同様である。成立性判定手段16は、各画素においてコンパクトポラリメトリ方式による共分散行列推定方式の成立性を判定する。コンパクトポラリメトリ方式による共分散行列推定が成立するためには、観測対象の領域がリフレクション・シンメトリの性質を有しており、かつ、ポラリゼーション・ステート・エクストラポレーション・モデルによく合致している必要がある。ところが、市街地領域など人工構造物の多いところなどでは、この成立条件が満たされない場合が多い。成立条件が満たされない領域における推定結果は信頼性の低いものであるため、予め共分散行列推定が成立しない領域を判定する処理が必要である。
【0082】
成立性判定手段16は、そのような問題に対処するために導入する処理を行う。具体的には、ある画素におけるn回目の反復後の共分散行列の推定値の中で、(ハット)H<0,(ハット)V<0,(ハット)X<0,|(ハット)ρ|>1のいずれかが成立する場合、この画素とその周囲M×N画素の領域は成立条件を満たさない領域と判定する。ここで、M,Nは自然数であり、画像の分解能などに合わせて適当な値を設定することとする。なお、成立条件を満たさない領域の形状は矩形である必要は無く、任意の形状としてもかまわない。ここで、成立条件を満たさない領域であると判定された領域については、その後の反復においては共分散行列推定処理の対象外とする。
【0083】
共分散行列同一性検定手段17は成立性判定手段16において成立条件を満たさないと判定された領域以外の画素について、n回目の反復終了後に、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-1)との同一性検定を実施する。共分散行列同一性検定手段17における同一性検定の処理の詳細については後述する。共分散行列同一性検定手段17における同一性検定の結果は収束判定手段18に送られる。
【0084】
収束判定手段18は、成立性判定手段16において成立条件を満たさないと判定された領域以外の画素のうち、共分散行列同一性検定手段17において、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-1)の同一性の仮定が棄却された画素の割合が十分に小さくなった時点(設定値以下、例えば0.1%以下程度)で、収束したと判定し処理を終了する。収束したと判定されなければ共偏波相関係数算出手段11に戻り、反復処理を続ける。
【0085】
以下では、共分散行列同一性検定手段17における同一性検定の処理の詳細を説明する。まず、サンプル共分散行列の統計的性質について、簡単に説明する。p次元の複素ベクトルk,k,…,kが互いに独立であり、p変量複素正規分布N(0,Σ)に従うとき、
【0086】
【数26】

【0087】
は複素Wishart分布W(p,n, Σ)に従う(ただし、n≧p)。複素Wishart分布の確率密度関数は次式で表される。
【0088】
【数27】

【0089】
ただし、|X|は行列Xの行列式であり、Γ(n)は次式で定義される。
【0090】
【数28】

【0091】
次に、サンプル共分散行列(ハット)Σ=X/nと(ハット)Σ=Y/mが、同一であるか否かを判定する方法について説明する。サンプル共分散行列はいずれも乱数であるから、両者が同一の分布に従う実現値であるかを判定する必要がある。そこで、XとYは、互いに独立なランダム共分散行列であり、それぞれ、W(p,n, Σ)とW(p,m, Σ)に従うとして、以下の仮説検定によって同一性を判定する。
・帰無仮説H=Σ
・対立仮説H≠Σ
【0092】
なお、この検定方法は、例えば上記非特許文献4等に記載されており、既知である。この仮説検定においては、検定統計量として次の尤度比を用いる。
【0093】
【数29】

【0094】
ここで尤度関数はそれぞれ次式で定義される。
【0095】
【数30】

【0096】
なお、最尤推定値はそれぞれ、次式で得られる。
【0097】
【数31】

【0098】
特に、帰無仮説が真である場合、X〜W(p,n, Σ),Y〜W(p,m, Σ)であり、X+Y〜W(p,n+m,Σ)であるから、Σの最尤推定量は、(ハット)Σ=(X+Y)/(n+m)となる点に注意いただきたい。以上により、尤度比Qは次式のように表される。
【0099】
【数32】

【0100】
さらに、対数尤度比は次式で表される(ただし、以下ではn=mとする)。
【0101】
【数33】

【0102】
ここで、−lnQ≧0であり、帰無仮説が真である場合に小さい値をとる。対数尤度比に関しては、以下の累積分布関数が得られる。
【0103】
【数34】

【0104】
従って、有意水準αとした場合の棄却域は、次式で表される。
【0105】
【数35】

【0106】
結局、共分散行列同一性検定手段17は、式(37)に基づいて(ハット)C(n)と(ハット)C(n-1)の同一性の仮定を検定する。
【0107】
以上より、本実施の形態においては、観測対象において、コンパクトポラリメトリ方式による共分散行列の推定が成立しているか否かを判定する成立性判定手段16を備え、共分散行列推定の反復処理の過程で、前回の反復と今回の反復における推定値の同一性を検定して、連続する2回の反復で推定値が同一とみなせる画素が支配的となった場合に、反復処理を終了することを目的に、共分散行列同一性検定手段17及び収束判定手段18を備えるように構成した。
【0108】
これにより、コンパクトポラリメトリ方式による共分散行列の推定結果の精度について、精度が期待できる領域とできない領域を自動的に判定でき、また、十分に処理が収束した時点で反復処理を完了できる効果を奏する。上記非特許文献1に記載の方式では、反復処理を2〜3回実施して完了することになるが、これでは処理完了時の推定精度が何も保証されない。しかしながら、本実施の形態1によれば、推定が困難な領域と推定が可能な領域を識別することが可能となり、さらに、推定結果は十分に収束していることが保証されるという効果を奏する。
【0109】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置の図6の成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段15の機能をフローチャート形式で示した図である。装置全体の構成は図6に示すものと同じである。図8において上記図7に示したものと同一もしくは相当部分は同一符号で示し、説明を省略する。19は共分散行列振動判定手段、18aは収束・振動判定手段である。なお収束・振動判定手段18aは図7の収束判定手段18に、反復処理における共分散行列の振動、反復状態を判定して反復処理の終了を判定する機能を追加したものである。収束判定手段18と同様、収束・振動判定手段18aが反復処理終了判定手段を構成する。
【0110】
前記実施の形態1においては、推定が収束した場合に反復を終了する手段を示したが、反復の過程において、推定結果が振動的な振る舞いをしてしまい収束しない画素も発生する。そこで、本実施の形態においては、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-1)との同一性の仮定が棄却された画素のうち、振動している画素が支配的になった場合も、これ以上収束しないと判定して、反復を打ち切る。
【0111】
具体的には、共分散行列振動判定手段19において、反復回数n≧2の場合、成立条件を満たす画素について、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-2)の同一性検定を実施する。検定方法は前記実施の形態1に示した方法と同様である。共分散行列振動判定手段19の検定結果は、収束・振動判定手段18aに送られる。
【0112】
収束・振動判定手段18aにおいては、共分散行列同一性検定手段17において、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-1)の間の同一性の仮定が棄却された画素の数MM1と、共分散行列振動判定手段19において、(ハット)C(n)と(ハット)C(n-2)の間の同一性の仮定が棄却されなかった画素の数MM2がほぼ同数である場合は、振動していると判定して、反復を打ち切る。ここで、ほぼ同数であるとは、例えば「MM2がMM1の99%以上、100%以下である」などと定義すればよい。
【0113】
本実施の形態においては、推定結果が振動的になっている画素を検出するために、共分散行列振動判定手段19を備えるので、推定結果が振動的になってしまい、収束しない場合に、反復を終了できる効果を奏する。
【0114】
なお、実施の形態2において、反復処理終了判定手段として、図8の収束・振動判定手段18aの代わりに振動判定手段(図示省略)を設け、振動判定手段において、共分散行列同一性検定手段17の比較結果に基づく共分散行列推定値の収束による反復処理の終了判定とは無関係に、上述の振動の判定条件に基づいて反復処理の終了を判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】フルポラリメトリ方式の送受信部の基本構成を示すブロック図である。
【図2】フルポラリメトリ方式の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】コンパクトポラリメトリ方式の画像レーダ装置の基本構成を示すブロック図である。
【図4】コンパクトポラリメトリ方式の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】図3の偏波特性2次統計量推定手段の機能をフローチャート形式で示した図である。
【図6】この発明による画像レーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態1における図6の成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段の機能をフローチャート形式で示した図である。
【図8】この発明の実施の形態2における図6の成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段の機能をフローチャート形式で示した図である。
【符号の説明】
【0116】
1 送信機、2 偏波切換器、3a,3b 送受切換器、4 水平偏波アンテナ、5 垂直偏波アンテナ、6 水平偏波受信機、7 垂直偏波受信機、8 分波器、9 偏波特性2次統計量推定手段、10 初期化手段、11 共偏波相関係数算出手段、12 交差偏波電力算出手段、13 共偏波電力算出手段、13a 共分散行列算出手段、15 成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段、16 成立性判定手段、17 共分散行列同一性検定手段、18 収束判定手段、18a 収束・振動判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる偏波面をもつ2つのアンテナと、
前記2つのアンテナに給電し1偏波送信を行う送信手段と、
前記偏波送信により生じるターゲットでの電波散乱の偏波信号を前記2つのアンテナで同時に受信する2偏波受信を行う受信手段と、
前記受信手段で受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定する成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段と、
を備え、
前記成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段が、
受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により非線形の方程式を解き共分散行列を推定する共分散行列演算手段と、
反復処理される共分散行列の推定値から、1偏波送信・2偏波受信の信号から、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定することが不可能な領域を判定する成立性判定手段と、
共分散行列が推定可能な領域において共分散行列の連続する2回の反復の推定結果を比較する共分散行列同一性検定手段と、
前記共分散行列同一性検定手段の比較結果を受けて、反復処理される共分散行列推定値が収束していることに基づき反復処理の終了を判定する反復処理終了判定手段と、
を備えたことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項2】
共分散行列が推定可能な領域において反復処理される共分散行列の推定結果が振動状態で変動している画素を検出する共分散行列振動判定手段をさらに備え、
反復処理終了判定手段が、推定結果が振動状態で変動している画素が支配的になった場合にも反復処理の終了を判定することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項3】
共分散行列同一性検定手段は、サンプルの共分散行列がWishart分布に従う処理結果に基づく尤度比検定による仮説検定を用いて、連続する2回の反復における共分散行列推定結果の同一性を判定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像レーダ装置。
【請求項4】
共分散行列同一性検定手段は、サンプルの共分散行列がWishart分布に従う処理結果に基づく尤度比検定による仮説検定を用いて、連続する2回の反復における共分散行列推定結果の同一性を判定し、
共分散行列振動判定手段は、サンプルの共分散行列がWishart分布に従う処理結果に基づく尤度比検定による仮説検定を用いて、n番目の反復とn−2番目(n:正の整数)の反復における共分散行列推定結果の同一性を判定し、
反復処理終了判定手段は、前記共分散行列振動判定手段において、n番目の反復とn−2番目の反復における推定値の同一性の仮定が棄却されなかった画素の数が、共分散行列同一性検定手段において、n番目の反復とn−1番目の反復における推定値の同一性の仮定が棄却された画素の数の内の所定の範囲の割合にある場合は、推定値が振動していると判定して反復を終了することを特徴とする請求項2記載の画像レーダ装置。
【請求項5】
異なる偏波面をもつ2つのアンテナと、
前記2つのアンテナに給電し1偏波送信を行う送信手段と、
前記偏波送信により生じるターゲットでの電波散乱の偏波信号を前記2つのアンテナで同時に受信する2偏波受信を行う受信手段と、
前記受信手段で受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定する成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段と、
を備え、
前記成立性・収束判定型偏波特性2次統計量推定手段が、
受信した1偏波送信・2偏波受信の信号の反復処理により非線形の方程式を解き共分散行列を推定する共分散行列演算手段と、
反復処理される共分散行列の推定値から、1偏波送信・2偏波受信の信号から、2偏波送信・2偏波受信で得られる信号の共分散行列を推定することが不可能な領域を判定する成立性判定手段と、
共分散行列が推定可能な領域において共分散行列の連続する2回の反復の推定結果を比較する共分散行列同一性検定手段と、
共分散行列が推定可能な領域において反復処理される共分散行列の推定結果が振動状態で変動している画素を検出する共分散行列振動判定手段と、
推定結果が振動状態で変動している画素が支配的になった場合に反復処理の終了を判定する反復処理終了判定手段と、
を備えたことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項6】
共分散行列演算手段が、
2偏波の相関係数、交差偏波電力の推定値を初期化するための初期化手段と、
前回の交差偏波電力の推定値を用いて共偏波の相関係数を推定する共偏波相関係数算出手段と、
前記相関係数の推定値から交差偏波電力を推定する交差偏波電力算出手段と、
共分散行列の近似式に基づき共偏波の電力及び共偏波の相関を推定する共偏波電力算出手段と、
推定された共偏波の電力及び共偏波の相関から共分散行列を推定する共分散行列算出手段と、
を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の画像レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−85164(P2010−85164A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252801(P2008−252801)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】