説明

画像処理により細胞運動特性を評価する方法、そのための画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】 細胞運動特性を迅速かつ効率的に評価し、試薬の投与等の条件による細胞の状況を確認できるようにする。
【解決手段】 培養環境下にある細胞について、第1の時点と、それより一定時間だけ後の第2の時点とにおける位相差画像に画像処理を行って第1、第2の細胞抽出画像を形成し、両画像の差分をとった差分画像を形成し、差分画像において前後の時点での細胞の重心の移動方向を検出し、それよりその方向を基準方向として求め、基準方向に対して細胞の重心位置から角度φの方向における差分画像中での画素値の変化量を360°にわたって所定の角度毎に求めることにより1つの細胞部分の変化量を求め、この変化量を同じ条件でN個の細胞について求め、角度φの方向における細胞の画素値の変化量をN個の細胞について平均した値を各角度φ毎に求め、360°の範囲にわたる角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理による細胞運動特性を評価する方法、そのための画像処理装置及び画像処理プログラムに関し、特に、細胞外マトリクスや細胞の置かれている環境等の変化に対する細胞輪郭を抽出する方法、細胞運動特性を画像処理により定量的に評価するための方法、そのための画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や薬品を生体組織に投与した時の細胞への影響を確認するには、細胞を撮影した画像を用いて細胞の運動特性を評価することが有効であり、そのために細胞の輪郭を効果的に描出することが必要である。
【0003】
コンピュータを用いた画像処理により細胞の輪郭を抽出するものとして、例えばNIHimaging(NIH社のフリーソフトウェア)が知られており、これはマニュアル操作であれば位相差画像でも画像処理できるものであるが、時系列データを自動的に処理することはできず、細胞の運動特性を評価することができない。
【0004】
また、他のソフトウェアとして、image pro(日本ローバー社)があり、これによれば蛍光画像などある程度コントラストの高い細胞画像を画像処理でき、重心点の移動など位置変化というような細胞の単純な運動評価をある程度行えるものの、形態変化まで評価することはできない。
【0005】
画像処理により細胞の輪郭を抽出することについて、特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1には、同一視野の細胞の位相差画像と蛍光画像とをそれぞれ処理し、その結果に基づいて細胞輪郭を抽出することについて記載されている。位相差画像では細胞の縁に明るい縁取りがあり、モルフォロジのclose−openingフィルタを用い、フィルタを適用した画像と元画像の輝度差をとることによってハローを描出し、二値化、細線化処理を行って細胞輪郭のエッジとする。さらに、この画像エッジを用いてGVF−fieldを算出し、ノイズの影響を受け難いGVF画像を得る。蛍光画像としては、96穴プレート内の細胞に蛍光マーカーを付与したcDNAを注入・培養し、光学顕微鏡によって撮影した蛍光画像とし、cDNAが注入され核が光る注目細胞をマーカーとして用いる。モルフォロジを用いて蛍光画像を二値化し核の輪郭を描出して初期輪郭として用いる。
これら両処理により得られた結果に基づいて、GVF Snakesにより細胞輪郭を描出する。
【0007】
特許文献1に記載のものでは、細胞の静止画像として蛍光画像と位相差画像とを併せて用いており、迅速に画像処理を行う上では難点があり、また、細胞の培養環境下における時系列画像を用いるのではないため、細胞の運動特性を評価することはできないものであった。
【特許文献1】特開2004−54347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術においては、時系列細胞画像データから、注目する細胞を自動的に抽出し、その細胞の輪郭を描出し、形態変化および細胞重心位置変化から、細胞運動特性を迅速かつ効率的に定量的な評価を行うことが可能でなく、画像処理により迅速かつ効率的に細胞の運動特性を評価することが課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従来技術における前述の課題を解決すべくなしたものであり、本発明による画像処理により細胞の運動特性を評価する方法は、培養環境下にある細胞を第1の時点で撮影して得られた位相差画像である第1の原画像に画像処理を行って第1の細胞抽出画像を形成することと、該培養環境下にある細胞を第1の時点より一定時間だけ後の第2の時点で撮影して得られた位相差画像である第2の原画像に前記第1の細胞の場合と同じ画像処理を行って第2の細胞抽出画像を形成することと、前記第1の細胞抽出画像と第2の細胞抽出画像との差分をとった差分画像を形成することと、該差分画像において前後の時点での細胞の重心の移動方向を検出しそれによりその方向を基準方向として求めることと、該基準方向に対して細胞の重心位置から角度φの方向における前記差分画像中での画素値の変化量を360°にわたって所定の角度毎に求めることと、により1つの細胞部分の変化量を求めることを同じ条件でN個の細胞について行い、角度φの方向における細胞の画素値の変化量をN個の細胞について平均した値を各角度φ毎に求め、360°の範囲にわたる角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして表示するようにしたものである。
【0010】
前記第1の細胞抽出画像を形成することは、前記第1の原画像をエッジ処理することと、
該エッジ処理された画像を2値化処理することと、該2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消すことと、膨張処理及び追跡処理を行った画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行うことと、の各ステップからなり、前記第2の細胞抽出画像を形成することが前記第2の原画像について前記第1の細胞抽出画像を形成する場合と同じステップからなるようにしてもよい。
【0011】
前記角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして極座標により表示するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明による細胞の運動特性を評価するための画像処理装置は、細胞を時系列的に撮影した位相差画像を取り込む画像取得手段と、該画像取得手段により取り込まれた細胞の画像のうち第1の時点における画像とそれより一定時間後の第2の時点における画像についてそれぞれ画像処理を行って細胞部分が背景部分から分離され抽出された第1の細胞抽出画像及び第2の細胞抽出画像を形成するための細胞抽出手段と、前記第1の細胞抽出画像と前記第2の細胞抽出画像との差分画像を形成する差分画像形成手段と、該差分画像形成手段により形成された差分画像において前記第1の時点から第2の時点への細胞の図心の移動方向を求め、該細胞の図心の移動方向を基準として角度φの方向における差分画像中での画素値の変化量をN個の細胞画像について平均したものを角度φにおける細胞部分が変化した量として求める細胞部分変化量演算手段と、各角度方向での細胞部分が変化した量を複数の細胞について平均したものを角度毎に基準方向から360°の範囲にわたって求める統計演算手段と、該統計演算手段により360°の角度φの範囲にわたって所定角度φについて求められた細胞部分が変化した量を表示する表示手段と、からなるものである。
【0013】
前記細胞抽出手段は、前記第1の原画像をエッジ処理するエッジ処理手段と、該エッジ処理手段によりエッジ処理された画像を2値化処理する2値化処理手段と、該2値化処理手段により2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消す膨張・追跡処理手段と、該膨張・追跡処理手段により膨張処理及び追跡処理が行われた画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行う塗りつぶし手段と、からなるようにしてもよい。
【0014】
前記細胞部分が変化した量を表示する表示手段が該細胞部分が変化した量を極座標により表示するようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明による細胞の運動特性を評価するための画像処理プログラムは、培養環境下にある細胞を第1の時点で撮影して得られた位相差画像である第1の原画像に画像処理を行って第1の細胞抽出画像を形成することと、該培養環境下にある細胞を第1の時点より一定時間だけ後の第2の時点で撮影して得られた位相差画像である第2の原画像に前記第1の細胞の場合と同じ画像処理を行って第2の細胞抽出画像を形成することと、前記第1の細胞抽出画像と第2の細胞抽出画像との差分をとった差分画像を形成することと、該差分画像において前後の時点での細胞の重心の移動方向を検出しそれによりその方向を基準方向として求めることと、該基準方向に対して細胞の重心位置から角度φの方向における前記差分画像中での画素値の変化量を360°にわたって所定の角度毎に求めることと、により1つの細胞部分の変化量を求めることを同じ条件でN個の細胞について行い、角度φの方向における細胞の画素値の変化量をN個の細胞について平均した値を各角度φ毎に求め、360°の範囲にわたる角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして表示するようにした細胞の運動特性の評価をコンピュータ上で実行するためのものである。
【0016】
前記第1の細胞抽出画像を形成することは、前記第1の原画像をエッジ処理することと、該エッジ処理された画像を2値化処理することと、該2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消すことと、膨張処理及び追跡処理を行った画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行うことと、からなり、前記第2の細胞抽出画像を形成することが前記第2の原画像について前記第1の細胞抽出画像を形成する場合と同様に行うものであるようにしてもよい。
【0017】
前記角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして極座標により表示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、時系列的な細胞の位相差画像について差分画像を形成し、差分画像の360°の角度範囲にわたる角度方向についての細胞の画素値の変化量を求めて表示することにより、培養環境下において種々の条件にある細胞の形状・形態変化等を含む運動特性の定量的評価を迅速かつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の画像処理による細胞輪郭の抽出においては、培養環境下において位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等により撮影した細胞の時系列位相差画像について画像処理を行って細胞の輪郭を抽出する。また、細胞の輪郭が抽出された画像を用いて細胞の運動特性を評価する。その際、細胞の移動方向は、細胞質の突出した部分(周辺部分)であるラメリポディア(葉状仮足)の変化の方向と一致するという性質を用いる(この点については、シーツ.MPらの「Cell migration by graded attachment to substrates and contraction」Semin Cell Biol.Jun;5(3)149‐55(1994)に説明されている)。
【0020】
本発明による細胞の運動特性の評価は、全体として図1(a)〜(c)に示すフローにしたがって行う。図1(a)は細胞の輪郭の抽出を行うフローを示しており、運動特性を評価する対象としては、培養環境下にある細胞を位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等により時系列的に撮影した位相差画像を用いる。
【0021】
例として角膜上皮の細胞について時系列的に撮影したあるフレームの細胞原画像は図2に示されるようなものである。最初にこの原画像のエッジ処理を行う。エッジ処理は微分フィルタ、ソーベルフィルタ、ブリューウィットフィルタ等を用いることによりなされる。エッジ処理がなされた画像に対し、ヒストグラムにより2値化を行う。
【0022】
2値化処理の際に細胞の輪郭線が途切れることがあり、その輪郭線の途切れを繋げるために膨張処理を行う。膨張処理後の画像は図3に示すようになり、細胞の周りにノイズがある。このノイズを消すために、追跡処理を行う。追跡処理は画像上の全物体の輪郭線の長さを測り、短いものを画像上から消す処理であり、それにより細胞ではないノイズとなる部分を消去することになる。追跡処理を行った画像は図4のようになる。
【0023】
追跡処理を行った画像に対して、外形線抽出処理を行い、細胞の輪郭を確定した後、細胞の輪郭の内側を白で塗りつぶし、背景を黒として表示する塗りつぶし処理を行う。塗りつぶし処理後の画像は図5のようになる。図2のような細胞の原画像に対し、図1のフローのような画像処理により図5のように細胞部分とその背景部分とが分離され、細胞抽出画像が得られることになる。
【0024】
このような細胞抽出画像を形成する画像処理を、時系列に撮影された複数フレームの画像について行い、図1(b)、(c)に示すフローにより細胞の運動特性の評価を行う。ある1つの細胞について図1(a)のフローの画像処理によって得られたある時点(時刻1)における細胞抽出画像1と、それより一定時間だけ後の時点(時刻2)における細胞抽出画像2との画像データから、その差分をとり、それによって得られた差分画像を用いて細胞の運動特性を評価する。
【0025】
差分画像は図6に示すようになる。図6において、Aは移動により画像中から減少した細胞の部分を示し、Cは画像中から増加した細胞の部分を示し、Bは画像中においては共通した不変の部分(ミクロには移動している)を示している。時刻1において、細胞は(A+B)の領域を占め、時刻2において細胞は移動して(B+C)の領域を占めていることになる。時刻1における細胞の領域の図心をG、時刻2における細胞の領域の図心をG′とすると、GからG′に向かうベクトルは細胞の移動方向を示している。
【0026】
図7において、図6におけるGからG′に向かう細胞の移動方向を基準方向(S)として右方にした状態を示すと、細胞の画像はその分だけ図6の状態から回転している。図7において、細胞の変化しない部分(B)の図心をG″として、G″から基準方向に対して角度φの方向(P)における画素値の変化量(画像中での細胞部分の変化量)を求める。この細胞部分の変化量は細胞質の突出した部分(周辺部分)であるラメリポディアの変化の指標となる量である。なお、基準方向はGからG′に向かう方向であり、G″はG、G′とは異なる。G″がGG′上にない場合には、G″から基準方向に平行な方向を考えればよい。
【0027】
基準方向に対し角度φの方向での細胞部分の変化量を求めるのは、図7で細胞の増加した部分(C)または減少した部分(A)を通過するPの方向の線の部分における画素の増減の量を求めることになる。角度φの方向(P)に関するこの細胞の部分の増減の量をI(φ)とする。ここで、nは細胞についての番号である。N個の細胞について同様の測定を行い、その平均値を求める(図1(b)、(c)のフロー)。すなわち、
【0028】
【数1】

である。
【0029】
このようにして求めた平均値I(φ)を、例えばφについて1°刻みで求めて0°〜359°にわたって表示する。直行座標で表示すると図8のようになる。これを極座標により表示することにより、図での細胞の運動特性がより把握し易くなるが、この点については、後述する。なお、I(φ)を求める角度φについて、等角度間隔にする例を示したが、細胞の種類や、観察、撮影条件等に応じて、等間隔でなく、細胞の運動を方向をもとに適宜規定した所定角度としてもよい。
【0030】
本発明は図1(a)〜(c)のフロー図に示される細胞の運動特性を評価する方法であるとともに、このよう細胞の運動特性を評価するための装置でもあり、この装置は、概略的に図9に示すような構成である。図9において、細胞の運動特性を評価するための装置は、撮影装置10、画像処理装置20、表示装置30を備えている。撮影装置10は培養環境下にある細胞の位相差顕微鏡等による時系列的にCCDカメラ等により撮影し、画像データを生成するものであり、画像処理装置20は、撮影装置10により生成された細胞の時系列的な画像を画像処理可能な画像データとして取り込むための画像取得手段21、画像取得手段21により取り込まれた時系列的な細胞画像の各フレームの画像データから細胞部分が背景部分から分離され抽出された画像を形成するための細胞抽出手段22、一定の時間間隔をおいて前後する2つのフレームの細胞抽出画像の差分画像を形成するための差分画像形成手段23、差分画像から細胞の運動方向を求めその方向を基準方向として角度をなす方向での画像中で細胞部分が変化した量を求める細胞部分変化量演算手段24、各角度方向での細胞部分が変化した量を複数の細胞について平均したものを角度毎に基準方向から0°〜360°の範囲にわたって求める統計演算手段25を備えている。画像処理装置20は、パーソナルコンピューにおいて、図1(a)〜(c)のフローによる細胞の運動特性の評価を行うように、プログラムを設定することにより実現される。このように、コンピュータ上で細胞の運動特性の評価を行うためのプログラムも本発明の一形態となる。
【0031】
〔実際の例についての検証〕
本発明による細胞の輪郭抽出、運動特性の評価の手法について、その有効性を確認するために実際の例に適用することを試みた。対象となる細胞は、シャーレ内で、温度37°C、CO濃度5%の環境下おいて12時間培養したものであり、同じ条件による細胞に試薬としてBSA、フィブロネクチンをそれぞれ投与し、それぞれの場合に、本発明の手法により細胞輪郭の抽出、運動特性の評価を行った。BSAは同じ条件で投与し、フィブロネクチンについては濃度を、(a)0[μl/mg]、(b)0.5[μl/mg]、(c)1[μl/mg]、(d)5[μl/mg]というように代えて投与し、それぞれの場合についてラメリポディア変化量を求めた。その結果をそれぞれ極座標で表示すると、図10(a)〜(d)に示すようになった。
【0032】
図10(a)〜(d)のように極座標で表示すると、図8のように直交座標で表示した場合よりも、投与する試薬の条件の相違により細胞の運動特性が異なることがより図上で把握し易くなる。本発明による細胞の運動特性の評価によれば、差分画像から細胞の運動方向を求めるとともに、この方向を基準として角度をなす方向についての細胞の変化の状況を把握することができるので、細胞の運動による細胞の形状・形態の変化が詳細に把握できる。図10(a)〜(d)の例では、試薬の濃度の変化により運動特性の相違がみられるという例であるが、試薬の種類によっては、基準方向と細胞の形状・形態の変化のし方がさらに多様な様相を示すことも示される。そのようなことから、本発明は、投与された試薬に応じて細胞の運動特性がどのようになるかを的確に把握し得るものとして大きな意義を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による細胞運動特性評価のフローを示す図であり、(a)1フレームの細胞の輪郭抽出のフロー、(b)2フレームの細胞輪郭の画像からの細胞の運動特性評価のフロー、(c)である。
【図2】細胞の原画像である。
【図3】2値化、膨張処理を行った後の画像である。
【図4】追跡処理を行った後の画像である。
【図5】塗りつぶし処理を行った後の画像である。
【図6】2つのフレームの画像の差分画像である。
【図7】差分画像からの細胞の運動特性の評価について説明する図である。
【図8】細胞に薬品を投与した時の細胞の運動特性の評価の結果の例を直行座標で表示した図である。
【図9】本発明による細胞の運動特性の評価を行うための装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】細胞に試薬としてBSA、フィブロネクチンをそれぞれ投与して、本発明の手法により細胞の運動特性の評価を行った結果を極座標により表示したものであり、BSAは同じ条件で投与し、フィブロネクチンについては濃度がそれぞれ、(a)0[μl/mg](b)0.5[μl/mg](c)1[μl/mg](d)5[μl/mg]としたものである。
【符号の説明】
【0034】
10 撮影装置
20 画像処理装置
21 画像取得手段
22 細胞抽出手段
23 差分画像形成手段
24 細胞部分変化量演算手段
25 統計演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養環境下にある細胞を第1の時点で撮影して得られた位相差画像である第1の原画像に画像処理を行って第1の細胞抽出画像を形成することと、
該培養環境下にある細胞を第1の時点より一定時間だけ後の第2の時点で撮影して得られた位相差画像である第2の原画像に前記第1の細胞の場合と同じ画像処理を行って第2の細胞抽出画像を形成することと、
前記第1の細胞抽出画像と第2の細胞抽出画像との差分をとった差分画像を形成することと、
該差分画像において前後の時点での細胞の重心の移動方向を検出しそれによりその方向を基準方向として求めることと、
該基準方向に対して細胞の重心位置から角度φの方向における前記差分画像中での画素値の変化量を360°にわたって所定の角度毎に求めることと、
により1つの細胞部分の変化量を求めることを同じ条件でN個の細胞について行い、角度φの方向における細胞の画素値の変化量をN個の細胞について平均した値を各角度φ毎に求め、360°の範囲にわたる角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして表示することを特徴とする画像処理により細胞の運動特性を評価する方法。
【請求項2】
前記第1の細胞抽出画像を形成することが前記第1の原画像をエッジ処理することと、
該エッジ処理された画像を2値化処理することと、
該2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消すことと、
膨張処理及び追跡処理を行った画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行うことと、
の各ステップからなり、前記第2の細胞抽出画像を形成することが前記第2の原画像について前記第1の細胞抽出画像を形成する場合と同じステップからなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理により細胞運動特性を評価する方法。
【請求項3】
前記角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして極座標により表示したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の画像処理により細胞運動特性を評価する方法。
【請求項4】
細胞を時系列的に撮影した位相差画像を取り込む画像取得手段と、
該画像取得手段により取り込まれた細胞の画像のうち第1の時点における画像とそれより一定時間後の第2の時点における画像についてそれぞれ画像処理を行って細胞部分が背景部分から分離され抽出された第1の細胞抽出画像及び第2の細胞抽出画像を形成するための細胞抽出手段と、
前記第1の細胞抽出画像と前記第2の細胞抽出画像との差分画像を形成する差分画像形成手段と、
該差分画像形成手段により形成された差分画像において前記第1の時点から第2の時点への細胞の図心の移動方向を求め、該細胞の図心の移動方向を基準として角度φの方向における差分画像中での画素値の変化量をN個の細胞画像について平均したものを角度φにおける細胞部分が変化した量として求める細胞部分変化量演算手段と、
各角度方向での細胞部分が変化した量を複数の細胞について平均したものを角度毎に基準方向から360°の範囲にわたって求める統計演算手段と、
該統計演算手段により360°の角度φの範囲にわたって所定角度φについて求められた細胞部分が変化した量を表示する表示手段と、
からなることを特徴とする細胞の運動特性を評価するための画像処理装置。
【請求項5】
前記細胞抽出手段が前記第1の原画像をエッジ処理するエッジ処理手段と、
該エッジ処理手段によりエッジ処理された画像を2値化処理する2値化処理手段と、
該2値化処理手段により2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消す膨張・追跡処理手段と、
該膨張・追跡処理手段により膨張処理及び追跡処理が行われた画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行う塗りつぶし手段と、
からなることを特徴とする請求項4に記載の細胞の運動特性を評価するための画像処理装置。
【請求項6】
前記細胞部分が変化した量を表示する表示手段が該細胞部分が変化した量を極座標により表示するものであることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の細胞の運動特性を評価するための画像処理装置。
【請求項7】
培養環境下にある細胞を第1の時点で撮影して得られた位相差画像である第1の原画像に画像処理を行って第1の細胞抽出画像を形成することと、
該培養環境下にある細胞を第1の時点より一定時間だけ後の第2の時点で撮影して得られた位相差画像である第2の原画像に前記第1の細胞の場合と同じ画像処理を行って第2の細胞抽出画像を形成することと、
前記第1の細胞抽出画像と第2の細胞抽出画像との差分をとった差分画像を形成することと、
該差分画像において前後の時点での細胞の重心の移動方向を検出しそれによりその方向を基準方向として求めることと、
該基準方向に対して細胞の重心位置から角度φの方向における前記差分画像中での画素値の変化量を360°にわたって所定の角度毎に求めることと、
により1つの細胞部分の変化量を求めることを同じ条件でN個の細胞について行い、角度φの方向における細胞の画素値の変化量をN個の細胞について平均した値を各角度φ毎に求め、360°の範囲にわたる角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして表示するようにした細胞の運動特性の評価をコンピュータ上で実行するための画像処理プログラム。
【請求項8】
前記第1の細胞抽出画像を形成することが前記第1の原画像をエッジ処理することと、
該エッジ処理された画像を2値化処理することと、
該2値化処理された画像に膨張処理を行って輪郭線の途切れを繋げるとともに追跡処理を行ってノイズを消すことと、
膨張処理及び追跡処理を行った画像において細胞の輪郭線を抽出し該抽出された細胞の輪郭線の内側と外側とを異なる階調となるように塗りつぶし処理を行うことと、
からなり、前記第2の細胞抽出画像を形成することが前記第2の原画像について前記第1の細胞抽出画像を形成する場合と同様に行うものであるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の細胞の運動特性の評価をコンピュータ上で実行するための画像処理プログラム。
【請求項9】
前記角度φに応じた細胞の画素値の変化量を細胞の運動特性を示すものとして極座標により表示したものであることを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の細胞の運動特性の評価をコンピュータ上で実行するための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−222073(P2007−222073A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46766(P2006−46766)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年(平成17年)9月18日 社団法人日本機械学会発行の「2005年度年次大会講演論文集(6) 通計番号No.05−1」に発表
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】