説明

画像処理回路

【課題】画質を劣化させずに簡易なハードウェア構成で画像データの圧縮率を高める。
【解決手段】LCDソースドライバ2は、RGBデータ受信回路4と、RGB/YCC変換回路5と、BTC符号化回路6と、符号化データメモリ7と、BTC復号化回路8と、YCC/RGB変換回路9と、LCD駆動回路10とを有する。画素ブロック内の画像の変化量が閾値を超えるか否かを検出し、閾値を超える場合には画像の変化が激しいと判断して、画素ブロック内の各画素を3つの代表値に変換して符号化する3レベル最大最小除外BTC符号化処理を行い、変化量が閾値以下の場合には、平坦な画像と判断して、画素ブロック内の各画素を2つの代表値に変換して符号化する2レベル差分BTC符号化処理を行う。3レベル最大最小除外BTC符号化処理では、画素ブロック内の最大値MAXと最小値MINを除いた画素値の平均値に基づいて閾値を計算するため、実際の輝度および色合いに合致した3つの代表値を選択できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを符号化する画像処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
PCで生成した画像のような人工的な画像では、文字やウィンドウ枠などの人工的な絵文字情報を正しく表示できないと、違和感を感じやすい。特に、文字情報を違和感なく表示することは重要である。
【0003】
特許文献1では、画素ブロック内の4レベルの代表値を設定して画像の品質保持を図っている。ところが、特許文献1の技術では、画像が本来的に3レベルの値からなる場合には、その画像を正しく表示できない。特許文献1では、4レベルの代表値を選択するにあたり、最大と最小の2つの代表値を保存し、残りの2つの代表値は、最大・最小の代表値から補間して予想することで、保存メモリの削減を図っている。このため、この補間による予想が実際のデータとうまく一致するときには問題ないが、画像が本来的に3レベルの値からなる場合は、実際の画像とは異なる画像が生成されてしまう。
【0004】
このような問題に対処するには、代表値を正しく予想することが大切である。しかしながら、特許文献2においても、2つの代表色から等間隔で補間して代表値を選定している。ここでは、3レベルでの補間も含んでいるが、等間隔で補間する点は同じである。
【0005】
非特許文献1ではビットマップ情報をRGBで共通に利用し、かつ代表値を4ビット精度および差分モード時に5ビット精度とすることで、高い圧縮効果を実現している。しかしその一方で次のような問題がある。
【0006】
ビットマップ情報をRGBで1つに共通化するために、量子化テーブル、代表色、修飾子の組み合わせを最適に選択する必要があり、これは非常に探索負担が大きい。特に、携帯機器用LCDドライバICの内蔵RAMに格納されるビット圧縮データを生成するのは、ハードウェアの負担が非常に大きい。
【0007】
また、ビットマップ共通化は、輝度と色を個別に制御することができないから、色の急激な変化に対しては4×2ブロックの大きなサイズのアーティファクト(カラーバウンディング:色固定)として知覚されてしまうという問題がある。また、8ビットの高階調を実現するには、差分モード時でも代表値で5ビット精度しか確保されず、大きな問題となる。量子化テーブルの精度は平坦な画像の場合でも高くとれないため、8ビット精度を保証するこができないためである。
【特許文献1】米国特許7058218公報
【特許文献2】米国特許7043087公報
【非特許文献1】Jacob Stroem, Thomas Akenine-Moeller. iPACKMAN: High-Quality, Low-Complexity texture Compression for Mobile Phones, ACM Graphics Hardware 2005, pp. 63- 70.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画質を劣化させずに簡易なハードウェア構成で画像データの圧縮率を高めることが可能な画像処理回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、隣接する複数画素からなる画素ブロックのそれぞれごとに、前記画素ブロック内の複数画素の画素値同士の差分が所定の閾値を超えたか否かを判定する活動量検出手段と、前記画素ブロックのそれぞれごとに、前記所定の閾値を設定する閾値設定手段と、前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えたと判定された前記画素ブロック内の各画素値をn(nは2以上の整数)個の代表値に変換してビット圧縮する第1の符号化処理を行い、前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えなかったと判定された前記画素ブロック内の各画素値を前記n個以下の代表値に変換してビット圧縮する第2の符号化処理を行う符号化手段と、を備え、前記閾値設定手段は、前記画素ブロック内の各画素値の最大値および最小値を除いた残りの画素値に基づいて、前記画素ブロック内の各画素値の平均値を計算する平均値計算手段と、前記画素ブロック内の各画素値の最大値および最小値と、前記平均値計算手段で計算された平均値と、に基づいて、前記閾値を計算する閾値計算手段と、を有することを特徴とする画像処理回路が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画質を劣化させずに画像データの圧縮率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は本実施形態による画像処理回路を内蔵した液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。図1の液晶表示装置は、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)1と、液晶パネル1を駆動するLCDソースドライバ2と、LCDソースドライバ2にRGBの画像データを供給するRGBデータ送信回路3とを備えている。RGBデータ送信回路は、例えばアプリケーションプロセッサである。
【0013】
LCDソースドライバ2は、RGBデータ受信回路4と、RGB/YCC変換回路5と、BTC符号化回路6と、符号化データメモリ7と、BTC復号化回路8と、YCC/RGB変換回路9と、LCD駆動回路10とを有する。
【0014】
RGBデータ受信回路4は、RGBデータ送信回路3から送信された画像データを受信する。RGB/YCC変換回路5は、RGBの画像データを、輝度データYおよび色差データCb,CrからなるYCCデータに変換する。BTC符号化回路6は、輝度データYおよび色差データCb,Crに対応する符号化データを生成する。生成された符号化データは、符号化データメモリ7に格納される。
【0015】
BTC復号化回路8は、符号化データメモリ7に格納されている符号化データを読み出して、輝度データYおよび色差データCb,Crを復元する。YCC/RGB変換回路9は、復元された輝度データYおよび色差データをRGBの画像データに変換する。LCD駆動回路10は、変換された画像データをアナログ画素電圧に変換して液晶パネル1に供給する。
【0016】
図2は図1のBTC符号化回路6の内部構成の一例を示すブロック図である。図2のBTC符号化回路6は、4Hラインメモリ11と、16画素保存レジスタ12と、変化量計算部13と、最大最小計算部14と、閾値計算部15と、代表値計算部16と、ビットマップ計算部17と、圧縮データ保存レジスタ18とを有する。
【0017】
4Hラインメモリ11は、4水平ライン分の画像データを格納するだけのメモリ容量を有する。16画素保存レジスタ12は、4Hラインメモリ11に格納された画像データのうち、1画素ブロック(4×4=16画素)分の画像データを格納する。
【0018】
変化量計算部13は、画素ブロック内の輝度データYの変化量と色差データCb,Crの変化量を計算する。最大最小計算部14は、画素ブロック内の輝度データYの最大値および最小値と、色差データCb,Crの最大値および最小値とを計算する。
【0019】
閾値計算部15は、画素ブロック内の輝度データYの閾値と色差データCb,Crの閾値とを計算する。代表値計算部16は、画素ブロック内の輝度データYの代表値と色差データCb,Crの代表値とを計算する。
【0020】
ビットマップ計算部17は、画素ブロック内の輝度データYの符号化データのビットマップと色差データCb,Crの符号化データのビットマップとを計算する。
【0021】
圧縮データ保存レジスタ18は、画素ブロック内の輝度データYの符号化データと色差データCb,Crの符号化データを格納する。圧縮データ保存レジスタ18に格納された1画素ブロック分の符号化データは、符号化データメモリ7に転送される。
【0022】
図3は図1のBTC復号化回路8の内部構成の一例を示すブロック図である。図3のBTC復号化回路8は、圧縮データ保存レジスタ21と、フラグ抽出部22と、代表値抽出部23と、ビットマップ抽出部24と、16画素保存レジスタ25と、4Hラインメモリ26とを有する。
【0023】
圧縮データ保存レジスタ21は、符号化データメモリ7に格納されている1画素ブロック分の符号化データを保存する。符号化データは、後述するように、圧縮形式を示すフラグ情報と、代表値を表すビット列と、16画素分の符号情報を示すビットマップとを含んでいる。このような符号化データに対して、フラグ抽出部22はフラグ情報を抽出し、代表値抽出部23は代表値を表すビット列を抽出し、ビットマップ抽出部24はビットマップを抽出する。
【0024】
抽出された各ビット列は、輝度データYと色差データCb,Crに変換された後に16画素保存レジスタ25に格納される。16画素保存レジスタ25に格納された輝度データYおよび色差データCb,Crは、4Hラインメモリ26に格納される。4Hラインメモリ26に格納された符号化データは、YCC/RGB変換回路9にてRGBの画像データに変換された後、LCD駆動回路10内の1Hラインメモリ27に転送される。
【0025】
図4は図1のBTC復号化回路8の内部構成の変形例を示すブロック図である。図4のBTC復号化回路8は、YCC/RGB変換回路9と4Hラインメモリ26の接続順序が図3と逆になっている。
【0026】
図4の場合、4Hラインメモリ26に格納された画像データを1H(1水平ライン)単位で1Hラインメモリ27に転送でき、転送効率がよくなる。また、図4の場合、BTC復号化回路8の回路構成はランダムロジックであり、BTC復号化回路8の外側に規則構造からなる4Hラインメモリ26と1Hラインメモリ27をまとめたため、効率的なレイアウト設計が行える。
【0027】
本実施形態による画像処理回路は、図1のBTC符号化回路6とBTC復号化回路8の少なくとも一方を含むことを特徴としている。
【0028】
図5は本実施形態による画像処理回路の概略的な処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図1のRGB/YCC変換回路5とBTC符号化回路6の処理動作に対応する。
【0029】
まず、RGBの画像データをYCCの色空間に変換する(ステップS1)。次に、画素ブロック内での画像の変化量を計算する(ステップS2)。
【0030】
次に、輝度データYと色差データCb,Crのそれぞれについて、画素ブロック内での変化量が予め定めた閾値未満であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0031】
変化量が閾値未満であれば、画素ブロックに対して後述する2レベル差分BTCによる符号化処理を行う(ステップS4)。変化量が閾値未満ということは、画素ブロック内が平坦な画像であることを示しており、画素ブロック内の各画素の輝度データおよび色差データをそれぞれ2レベルで表現しても差し支えないため、各画素の輝度データYおよび色差データCb,Crをそれぞれ2レベルに置き換えた符号化データを生成する。
【0032】
一方、変化量が閾値以上であれば、画素ブロックに対して後述する3レベル最大最小除外BTCによる符号化処理を行う(ステップS5)。変化量が閾値以上ということは、画素ブロック内の画像の変化が激しいことを示している。そこで、画素ブロック内の各画素を3レベルで表現することにする。なお、色情報は、輝度情報ほど人間が敏感に差異を視覚できないため、色差データCb,Crについては、変化量が閾値以上であっても、2レベルで表現してもよい。
【0033】
上述した図3において、ステップS1は色情報変換手段に、ステップS3は活動量検出手段に、ステップS4,S5は符号化手段に対応する。
【0034】
以下、図5の処理動作を詳述する。図6は4×4画素からなる画素ブロックの一例を示す図である。図6中の各画素の数字は輝度データYの値を表している。図6では、画素ブロック内に3種類の輝度データ値が存在する例を示している。
【0035】
図6において、輝度データYの最大値MAXと最小値MINの差分は、255−0=255である。この差分を画像データの変化量Δとして定義する。この変化量Δが小さければ、画像は平坦であることを示し、変化量が大きければ、画像の変化が激しいことを示す。
【0036】
変化量Δが小さければ、画素ブロック内にレベルの異なる2つの代表値を設けることにする。この場合、代表値同士の値は似通っているため、それぞれの代表値をそのままビット列で表現するのではなく、2つの代表値の中央値と、これら代表値の差分値とで表すことにする。すなわち、代表値1=中央値+差分値、代表値2=中央値−差分値とする。
【0037】
中央値は例えば8ビットで表現されるが、変化量Δが小さいことが前提であるため、差分値として8ビットを設ける必要はなく、例えば差分は5ビットで足りる。このようにしても、8ビット精度で2つの代表値を計算できるため、8ビットの精度が保証できる。
【0038】
一方、変化量Δが大きい場合、人間の視覚は8ビット精度で認識できないことから、荒く4ビットにしても支障はない。そこで、この場合は、レベルの異なる3つの代表値を設けるものの、各代表値のビット幅を削減する。携帯電話等に用いられる小サイズ画面に高精細画像を表示する場合、画素ブロックを3レベルで表現することで、画像のエッジ変化のギザギザ感を緩和でき、高画質を維持できる。
【0039】
変化量は、輝度データYと色差データCb,Crのそれぞれについて計算されるが、各データの変化量の最大値MAXを最終的な変化量としてもよい。すなわち、輝度データYの変化量をΔY、色差データCbの変化量をΔCb、色差データCrの変化量をΔCrとすると、最終的な変化量Δ=MAX(ΔY,ΔCb,ΔCr)としてもよい。
【0040】
自然画像における青空は、変化量Δ=15以下であることが経験的にわかっている。また、青空と地上の境界では、変化量Δ=31以下であることも経験的にわかっている。そこで、例えば、これらの経験的な値を参考にして、図5のステップS3における閾値Δthを設定する。なお、後述するように、閾値Δthは、所定のアルゴリズムに従って計算してもよい。以下では、輝度データYと色差データCb,Crごとに別個に変化量と閾値を設定する例について説明する。
【0041】
図7は図6の画素ブロックに対応する符号化データを示す図である。図7の符号化データは、図1のBTC符号化回路6により生成される。
【0042】
図6の場合、変化量Δが255−0=255であり、変化量Δは閾値Δthよりも大きいと判定され、3レベル最大最小除外BTC符号化処理が行われる。画素ブロック内の各画素は、3つの代表値で表される。3つの代表値は、図7に示すように、それぞれ4ビットで表現される。3つの代表値”0000”、”1000”、”1111”はLSB側4ビットを省略したビット列である。これら3つの代表値には、実際には4ビットに圧縮することによる調整値として8が足される。これにより、代表値”0000”は値8を表し、代表値”1000”は128+8=136を表し、代表値”1111”は240+8=248を表すことになる。
【0043】
8を足さなかった場合、全体として輝度が暗くなることから、上述した調整値が必要となる。3つの代表値は、それぞれ4ビットで保存されるが、実際にはLSB側に4ビットの”1000”を加えて8ビットとして利用される。
【0044】
図6の画素ブロックは3つの代表値で表されるため、これら代表値を識別する情報としては2ビットで足りる。そこで、画素ブロックのビットマップを表す情報は、図7に示すように各画素を2ビットとして、計2×16=32ビットで表される。
【0045】
以上より、図6の画素ブロックの符号化データは、図7に示すように、3つの代表値を表す計4×3=12ビットのビット列と、画素ブロックのビットマップを表す32ビットのビット列とを合わせた計44ビットで表される。
【0046】
なお、3つの代表値を4ビットに圧縮する際、圧縮の仕方を変えれば、必ずしも調整値を加える必要はなくなる。したがって、調整値を任意に変更できるようにしてもよい。
【0047】
本実施形態は、iPACKMANのような全サーチによる最適化を行わずに、後述する決定的なアルゴリズムにより計算を行うため、ハードウェアで実現する場合のハードウェアの規模縮小が図れる。
【0048】
図8は画素ブロックの他の例を示す図、図9は図8の画素ブロックに対応する符号化データを示す図である。図8の画素ブロック内の各数字は輝度データYの値を示している。
【0049】
図8の画素ブロックの変化量Δは、145−115=30である。この場合、変化量Δが閾値よりも小さいと判断され、2レベル差分BTC符号化処理が行われる。画素ブロック内の各画素は2つの代表値で表される。
【0050】
図8の画素ブロック内の輝度データYの平均値は130である。平均値以上の値を持つ画素(図8の白ヌキ部)の平均値(上平均値)は135、平均値未満の値を持つ画素(図8の斜線部)の平均値(下平均値)は125である。上平均値と平均値との差分値は5で、下平均値と平均値との差分値は−5である。したがって、平均値130と差分値5だけで、各画素の値をおおまかに表現できる。そこで、図8の画素ブロックを符号化する際には、平均値130を表すビット列と、平均値からの差分値5を表すビット列とで、画素ブロック内の2つの代表値を表す。
【0051】
図8の画素ブロックのように、画像の変化が小さい場合、図6のように変化の激しい画像と比べて、画素単位での変化に気づきやすい。このため、代表値を表すビット列のビット幅を増やして画素単位のビット精度を上げる。具体的には、図9に示すように、平均値を表すビット列は8ビットで表現する。また、平均値からの差分値はあまり大きな値にならないため、図9に示すように5ビットのビット列で表現する。
【0052】
また、図8の画素ブロックは2つの代表値しかないため、これら2つの代表値の識別は1ビットで行える。したがって、図9に示すように、ビットマップは計16ビットで表現する。
【0053】
この結果、図8の画素ブロックに対応する符号化データは、図9に示すように、平均値を表す8ビットと、差分値を表す5ビットと、ビットマップを表す16ビットの計29ビットになる。
【0054】
次に、色差データCb,Crの符号化処理について説明する。図10は画素ブロックの一例を示す図、図11は図10の画素ブロックを2×2画素のサブブロックごとに間引いた例を示す図、図12は画素ブロックを4つのサブブロックの値だけで表した図である。
【0055】
図11および図12は、4×4画素の画素ブロックを2×2画素のサブブロックに分割して、各サブブロック内の画素値を等しくする間引き処理を行った例を示している。このような間引き処理は、420間引きとして一般に知られている。
【0056】
サブブロックの値は、サブブロックを構成する4つの画素の平均値である。例えば、図10の画素ブロック内の左上のサブブロックの値は、(128+255+0+128)/4=128になる。
【0057】
図12は図10の画素ブロックを4つの画素値だけで表現しているが、420間引きを行えば、4つの画素値だけで画素ブロックの全画素の値を表現できるため、データ量を大幅に削減できることがわかる。
【0058】
図13は420間引きを行った後の符号化処理を示す図である。図10の画素ブロックは、変化量Δが大きい例を示すが、色差データは輝度データYよりも空間的変化が緩やかであるため、輝度データYのように3つの代表値を設ける必要はない。そこで、本実施形態では2つの代表値を設け、各代表値のビット長を、LSB側4ビットを省略して4ビットとする。また、各代表値を表すビット列に、データ圧縮の調整値として8を加えることとする。
【0059】
図13の例では、2つの代表値を表すビット列を”0000”と”1111”とする例を示しているが、これらビット列は実際にはLSB側に”0100”を加えた値を持つ。すなわち、”0000”は値8を表し、”1111”は値248を表す。
【0060】
また、画素ブロックを表すビットマップは、図13に示すように、わずか4ビット”0100” (左上から右下への順番)で表現できる。結果として、図10の画素ブロックは、4×2+4=12ビットで表現できる。
【0061】
一方、図14は画素ブロック内の画像が平坦な場合(変化量が閾値よりも小さい場合)の符号化処理の一例を示す図である。画素ブロック内の変化量が小さい場合は、図9と同様に、画素ブロック内の平均値を表すビット列と、平均値からの差分値を表すビット列と、ビットマップを表すビット列とを含む符号化データを生成する。
【0062】
図14の場合、平均値を表すビット列は8ビットで表現し、平均値を表すビット列は5ビットで表現し、ビットマップを表すビット列は4ビットで表現する。これにより、画素ブロック内の画素値が8ビット精度になるようにする。
【0063】
ここで、差分値は量子化(圧縮)していないことに注意されたい。ビット幅を削減するには、差分値も量子化するのが望ましく、差分値を量子化する公知技術も存在する。差分値を量子化する必要性があるのは、差分値が画素値と同じ範囲の値を取りうるためである。
【0064】
本実施形態では、最大値MAXと最小値MINの差分である変化量が閾値Δthよりも小さい場合しか、差分値を符号化しないため、差分値は画素値よりはるかに小さな値しか取らない。これにより、差分値のビット幅を画素値のビット幅よりも少なくしても、画素値のビット幅の精度を確保できる。
【0065】
図9等では、閾値Δth=30としており、差分値は−15〜+15の範囲内であり、差分値は4ビットで表現できる。図9では、閾値Δthが31を超える場合も考慮して、差分値を5ビットで表現しているが、Δthを30以下に限定してよければ差分値を4ビットで表現できる。
【0066】
図15は画素ブロックの変化量Δが閾値Δthよりも大きい場合の輝度データYと色差データCb,Crの符号化データの一例を示す図であり、図7と図13の符号化データを組み合わせたものである。図15の場合、輝度データYの符号化データが44ビットで、色差データCb,Crの符号化データが各12ビットであり、計68ビットの符号化データになる。
【0067】
図16は画素ブロックの変化量Δが閾値Δthよりも小さい場合の輝度データYと色差データCb,Crの符号化データの一例を示す図であり、図9と図14の符号化データを組み合わせたものである。図16の場合、輝度データYの符号化データが29ビットで、色差データCb,Crの符号化データが各17ビットであり、計63ビットの符号化データになる。
【0068】
図17は図15および図16の符号化データの先頭ビットに圧縮形式を示すフラグ情報を追加した符号化データの一例を示す図である。このフラグ情報は、図15のように3つの代表値を設けて符号化データを生成する3レベル最大最小除外BTC符号化処理を行った場合には0になり、図16のように2つの代表値を設けて符号化データを生成する2レベル差分BTC符号化処理を行った場合には1になる。
【0069】
なお、先にも述べたが、Y、Cb、Crそれぞれに独立に判定を行えばフラグは3つ必要で、Y、Cb、Crそれぞれで代表値とビットマップの選択を行う構成となる。ここではΔ=MAX(ΔY、ΔCb、ΔCr)と1つの最大Δで判定したフラグの構成例を示している。3つの独立したΔ判定を排除するわけではないが、最大Δでデータを構成することにより、後に図22で示すようにデータサイズを調整しやすいというメリットがある。もし独立してフラグ3つで取り扱いたいなら、これら3フラグ値の組み合わせに関する符号化データの構成があるので、その最大サイズで考える必要がある。
【0070】
図17(a)は図15に対応する符号化データを示し、図17(b)は図16に対応する符号化データを示している。
【0071】
図18は図5で説明した閾値の決め方を説明する図である。まず、画素ブロック内の最大値MAXと最小値MINを検出し、これら最大値MAXと最小値MINを除いた残りの画素値の平均値AVE’を計算する。最大値MAXと最小値MINを除いて平均値AVE’を計算することにより、平均値AVE’が最大値MAXまたは最小値MINの影響を受けなくなり、実際の輝度および色に近い平均値を検出できる。
【0072】
PCで生成した画像の場合、絵や文字が表示される割合が多く、最大値MAXや最小値MINが他の画素値とかけ離れた値になることがある。この場合、最大値MAXと最小値MINを用いて平均値を計算しても、実際の輝度や色とは異なった値である可能性が高い。
【0073】
また、PCで生成した画像に表示されるウィンドウ枠等の絵情報は、広範囲にわたって同じ色であることが多い。このため、最大値MAXと最小値MINを用いて平均値を計算すると、ウィンドウ枠の色やサイズ等によって、平均値が大きく変化してしまい、実際の画面全体の輝度や色合いとは異なったものになる。
【0074】
これに対して、自然画像の場合は、最大値MAXと最小値MINを考慮に入れて平均値を計算しても、実際の輝度や色との違いはそれほど感じられない。
【0075】
最大値MAXと最小値MINを除いて平均値AVE’を計算した後、図18に示すように、平均値AVE’と最小値MINとの中間値を低レベル閾値Th_lowとし、平均値AVE’と最大値MAXとの中間値を高レベル閾値Th_highとする。得られた低レベル閾値Th_lowと高レベル閾値Th_highは、画素ブロック内で3つの代表値を計算する場合に用いられる。
【0076】
本実施形態のように、最大値MAXと最小値MINを除いて平均値を計算すると、特にPCで生成した画像を符号化する場合に効果が大きい。PCで生成した画像の場合、画面全体に現れる輝度や色の数はそれほど多くないため、上述したように3レベルの符号化を行うことにより、画質を低下させずに圧縮率を高めることができる。
【0077】
一方、自然画像の場合、画像内に同じ値が存在する確率は低いため、低レベル閾値と高レベル閾値で区分けされる各領域の平均値を代表値とすることも考えられる。本実施形態では、処理の簡略化のために、PCで生成した画像でも自然画像でも、最大値MAXと最小値MINを除いて平均値を計算する。これにより、PCで生成した画像と自然画像で処理方法を変えなくて済み、ハードウェア構成を簡略化できるとともに、符号化処理に要する演算量も削減でき、高速に符号化処理を行うことができる。したがって、本実施形態は、携帯電話等のハードウェア性能が高くなく、メモリ容量も限られている電子機器に応用すると、より効果が大きい。
【0078】
図19は画素ブロックの各画素を3つの代表値で表す処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、画像ブロック中の最大値MAXと最小値MINを検出する(ステップS11)。次に、高レベル閾値Th_highおよび低レベル閾値Th_lowと、最大値MAXおよび最小値MINの中間値MINとを計算する(ステップS12)。このステップS12の詳細な処理手順は後述する。
【0079】
次に、画素ブロック内の3つの代表値V_plus,V_mid,V_minusを計算する(ステップS13)。これら3つの代表値は以下の(1)〜(3)式で表される。
V_plus=Round1(MAX,bit) …(1)
V_mid=Round1(MID,bit) …(2)
V_plus=Round1(MIN,bit) …(3)
【0080】
関数Round1は、ビット幅の削減を行う関数であり、引数のbitは、削減後のビット幅を示している。
【0081】
例えば、128は8ビットでは”10000000”であるが、4ビット”1000”で表される。実際にはビット圧縮時の調整値として8が加算されるため、V_mid=Round1(10000000,4)=128+8=136となる。同様に、V_plus=248、V_minus=8となる。これらV_plus、V_mid、V_minusが代表値となる。
【0082】
次に、画素ブロック中の各画素を3つの代表値に振り分ける処理を行う(ステップS14〜S7)。まず、ステップS14では、画素値を高レベル閾値Th_highおよび低レベル閾値Th_lowと比較する。そして、画素値が高レベル閾値Th_high以上であれば、代表値V_plusを選択する(ステップS15)。画素値が低レベル閾値Th_lowより大きくて高レベル閾値Th_high未満であれば、代表値V_midを選択する(ステップS16)。画素値が低レベル以下であれば、代表値V_minを選択する(ステップS17)。
【0083】
図20は図19のステップS18の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、画素値の総計を計算する変数SUMと、画素値の数を計測する変数CNTとをともにゼロに初期設定する(ステップS21)。
【0084】
次に、画素値が最大値MAXまたは最小値MINか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22の判定がNOであれば、変数SUMに画素値を加算し、変数CNTを1だけ増やす(ステップS23)。
【0085】
ステップS22の判定がYESの場合、あるいはステップS23の処理が終了した場合は、画素ブロック内の全画素の処理が終わったか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24の判定がNOの場合にはステップS22以降の処理を繰り返す。
【0086】
このステップS22〜S14の処理により、最大値MAXと最小値MINを除いた画素値の累積加算値が変数SUMに保持され、最大値MAXと最小値MINを除いた画素値の総数が変数CNTに保持される。
【0087】
ステップS24の判定がYESの場合、変数CNTがゼロか否かを判定する(ステップS25)。変数CNTがゼロの場合は、画素ブロック内の全画素が最大値MAXか最小値MINであり、中間値が存在しないことを示しており、この場合は、2レベル(あるいは1レベル)を扱う仮の処理として、最大値MAXと最小値MINの中間値を計算し、これを中間値MIDとする(ステップS26)。
【0088】
ステップS25の判定がNOの場合、最大値MAXと最小値MINが等しいか否かを判定する(ステップS27)。両者が等しい場合、中間値が存在しないことになるが、仮の処理として最大値MAXを中間値として設定する(ステップS28)。
【0089】
ステップS27の判定がNOの場合は、中間値が存在することを示しており、変数SUMを変数CNTで割った値を中間値MIDとして設定する(ステップS29)。この中間値MIDは、最大値MAXと最小値MINを除いた画素値の平均値に他ならない。このステップS29は平均値計算手段に対応する。
【0090】
ステップS26、S28またはS29の処理が終わった場合、以下の(4)(5)式に基づいて閾値を計算する(ステップS30)。このステップS30は閾値設定手段に対応する。
Th_high=ROUND((MAX+MID)/2) …(4)
Th_low=ROUND((MIN+MID)/2) …(5)
【0091】
図20のフローチャートの特徴は、最適化のために検索処理を行わないことである。決定的なアルゴリズムで処理を行うため、少ない計算量で済み、計算時間も短縮できる。したがって、図20のフローチャートによれば、図2に示すBTC符号化回路6のハードウェア構成を簡略化できる。
【0092】
このように、第1の実施形態では、画素ブロック内の画像の変化量が閾値を超えるか否かを検出し、閾値を超える場合には画像の変化が激しいと判断して、画素ブロック内の各画素を3つの代表値(色差データの場合は2つの代表値)に変換して符号化する3レベル最大最小除外BTC符号化処理を行い、変化量が閾値以下の場合には、平坦な画像と判断して、画素ブロック内の各画素を2つの代表値に変換して符号化する2レベル差分BTC符号化処理を行う。3レベル最大最小除外BTC符号化処理では、画素ブロック内の最大値MAXと最小値MINを除いた画素値の平均値に基づいて閾値を計算するため、実際の輝度および色合いに合致した3つの代表値を選択できる。3つの代表値は、それぞれ4ビットで表現するため、ビット幅の削減が図れる。2レベル差分BTC符号化処理では、420間引き処理を利用して2つの代表値を選定し、各代表値を8ビットで表現するため、8ビット精度が得られる。
【0093】
このような処理により、3レベル最大最小除外BTC符号化処理と2レベル差分BTC符号化処理のいずれでも、画質を劣化させずに、符号化データのビット幅をより削減できる。
【0094】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、3レベル最大最小除外BTC符号化処理が第1の実施形態と異なることを特徴とする。この他は第1の実施形態と同様であるため、以下では、相違点を中心に説明する。
【0095】
図21は第2の実施形態による3レベル最大最小除外BTC符号化処理の概要を説明する図である。図21(a)は画素ブロック内の各画素を3つの代表値で表現した場合のビットマップの一例を示す図である。
【0096】
画素ブロック内の3画素からなるグループを考えると、このグループ内の代表値の組み合わせとして、3×3×3=27通りが考えられる。したがって、各グループを表現するには、5ビット(2の5乗=32>27)があれば足りる。したがって、各グループを2×3=6ビットで表現するよりも1ビット削減できる。
【0097】
図21(a)では、隣接する3画素を一つのグループとして、破線で図示している。画素ブロック内に、5個のグループと残りの1画素ができる。各グループは、図21(b)に示すように、5ビットで表現される。したがって、ビットマップは、図21(c)に示すように、5×5+2=27ビットで表現でき、図7等のように32ビットのビットマップに比べて5ビットの削減になる。
【0098】
なお、図21では3画素を一つのグループにする例を説明したが、3画素以外の複数画素でグループを構成してもよい。ただし、ビットマップのビット幅をできるだけ削減するようなグループ分けが望ましい。ビット幅削減の観点からは、グループの数を増やすのが望ましい。したがって、ビットマップのビット幅を考慮しながらグループ分けを行うのが望ましい。
【0099】
図22は第2の実施形態にて生成した符号化データの一例を示す図である。図22の符号化データは、圧縮形式を示すフラグ情報が0の場合の符号化データが図17と異なる。より具体的には、ビットマップを構成するビット列が異なっており、フラグ情報が0の場合の総ビット幅は64ビットであり、図17に比べて5ビット削減されている。
【0100】
図21では、6ビットを5ビットに変換する手法について説明したが、ビットを削減する他の手法を採用してもよい。具体的には、3進表示での値を2進表示の値に変換する手法がある。例えば000101は、0×9+1×3+1=4であるため、3進表示では、011となる。したがって、2進表示に変換すると、00100になり、1ビット減って5ビットになることがわかる。なお、この手法も一例にすぎず、他の手法を採用してもよい。
【0101】
このように、第2の実施形態では、3レベル最大最小除外BTC符号化処理を行う際に、ビットマップを表すビット幅をより削減できるため、符号化データのよりいっそうのビット幅削減が図れる。
【0102】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、2レベル差分BTC符号化処理の内容が第1および第2の実施形態とは異なることを特徴とする。
【0103】
上述したように、2レベル差分BTC符号化処理では、画素ブロックの平均値と、この平均値からの差分値とを符号化データに含めている。差分値は、値が小さいものほど出現頻度が高い。したがって、出現頻度の高い差分値を表すビット列にできるだけ多くの0を含ませて、出現頻度の高い差分値ほど、ビットの遷移確率が低くなるようにする。これにより、BTC符号化回路6から符号化データメモリ7に符号化データを転送する際の消費電力削減を図る。
【0104】
例えば、差分値0には符号00000を割り当て、発生頻度が最も低い差分値31には符号11111を割り当てる。これにより、符号化データメモリ7に格納されるデータが0に偏る。ビットが0から1、あるいは1から0に遷移すると、符号化データメモリ7には電流が流れて消費電力が増大する。したがって、ビットの遷移回数を減らすことにより、符号化データメモリ7の消費電力削減が図れる。
【0105】
図23は差分値に対応する符号化データの一例を示す図である。ここで、遷移とは、符号化データメモリ7の同一の記憶領域にてビット値がフレーム間で変化することを意味し、差分値を表すビット列の0と1が変化するという意味ではない。したがって、ビットの遷移が少ないビット列よりも、ビット列中に0が多いビット列が優先的に選択される。
【0106】
上記では、差分値の符号化について説明したが、ビットマップを表すビット列にも同じ原理を適用することができる。ビットマップ中の隣接する画素は同じ画素値を取ることが多い。そこで、第2の実施形態で説明した6ビットから5ビットへの変換の代わりに、ビット列の発生頻度を考慮に入れて5ビットへの変換を行ってもよい。
【0107】
図24は画素ブロックのビットマップに対応する符号化データの一例を示す図である。図24の「組み合わせ」の欄では、ビットマップ値00を値0、ビットマップ値01を値1、ビットマップ値10を値2としている。例えば、「00」「01」「01」なるビットマップの組み合わせは011である。
【0108】
図21(a)のグループは全部で27種類あり、各グループを3ビット幅で表している。図21(a)では、グループを構成する3画素は隣接している必要はなかったが、本実施形態では、隣接する3画素にて一つのグループが構成されている。
【0109】
グループを構成する3画素同士の変化量が少ないものは、3画素とも同じ値を取る組み合わせ”000”、”111”、”222”である。したがって、これらの組み合わせについては、1を最大一つしか含まない符号化データを割り当てる。
【0110】
逆に、組み合わせ”020”は最も変化量が大きい。0から2に変化して、また0に戻るため、変化量は2+2=4である。したがって、組み合わせ”020”には、すべてが1の符号化データを割り当てる。
【0111】
図25は第3の実施形態によるBTC符号化回路6の内部構成を示すブロック図、図26は第3の実施形態によるBTC復号化回路8の内部構成を示すブロック図である。図25および図26では、図2および図3と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0112】
図25のBTC符号化回路6は、図2になかった構成として、第1の遷移最小符号化回路31と、第2の遷移最小符号化回路32とを有する。第1の遷移最小符号化回路31は、図23に示すように、差分値に対応する符号化データを生成する。第2の遷移最小符号化回路32は、図24に示すように、ビットマップに対応する符号化データを生成する。
【0113】
第1および第2の遷移最小符号化回路31,32で生成された符号化データを用いて最終的な符号化データが生成されて、圧縮データ保存レジスタ18に保存される。
【0114】
図26のBTC復号化回路8は、図3になかった構成として、第1の遷移最小復号化回路33と、第2の遷移最小復号化回路34とを有する。第1の遷移最小復号化回路33は、図23の符号化データを元の差分値に復号する。第2の遷移最小復号化回路34は、図24の符号化データを元のビットマップデータに復号する。
【0115】
第1および第2の遷移最小復号化回路33,34で復号された差分値およびビットマップデータは、16画素保存レジスタ12に保存されて、16画素分の輝度データYおよび色差データが生成される。
【0116】
このように、第3の実施形態では、画像の相関が高いことを利用して、2レベル差分BTC符号化処理と3レベル最大最小除外BTC符号化処理にチャネル符号化技術を適用し、これにより符号化データメモリ7の消費電力(電流)の削減を図っている。より具体的には、出現頻度の高い差分値を表すビット列にできるだけ多くの0を割り当てるため、符号化データメモリ7でのビット遷移確率を削減でき、符号化データメモリ7の消費電力をより削減できる。また、ビットマップを構成するビット列についても、変化の少ない画素を表すビット列にできるだけ多くの0を割り当てるため、同様に符号化データメモリ7の消費電力の削減が図れる。
【0117】
可変長符号を利用して符号化処理を行うと、符号化データメモリ7へのランダムアクセスが困難になる。そこで、本実施形態では、符号長(ビット幅)は共通にして符号化データメモリ7へのランダムアクセスを可能としている。図24の遷移最小符号化処理は可逆変換であり、この符号化により情報は失われないため、画質への影響はない。
【0118】
(第4の実施形態)
上述した2レベル差分BTC符号化処理では、420間引き処理を採用したが、3レベル最大最小除外BTC符号化処理と2レベル差分BTC符号化処理の少なくとも一方は、以下に説明する422間引き処理を行ってもよい。
【0119】
図27は画素ブロックの一例を示す図である。図28は図27の画素ブロックを縦方向に隣接する2画素で422間引きを行った例を示す図である。図28では、縦方向に隣接する2画素の平均値を、その2画素の値として設定する。例えば、左上隅から縦方向に2画素の平均値は、(128+0)/2=64であり、これら2画素の値はいずれも64に設定される。
【0120】
図29は図28の処理結果を8画素で表現した図である。なお、縦方向に隣接する2画素の代わりに、横方向に隣接する2画素単位で422間引きを行ってもよい。
【0121】
図30は2レベル差分BTC符号化処理の中で422間引き処理を行う例を示す図である。図30の場合、ビットマップが図13のような4ビットから8ビットに増加することで、空間的な解像度の向上が図れ、420間引きよりも元の画像に近い画像が得られる。
【0122】
図30の符号化データは、2つの代表値をそれぞれ4ビット幅とし、データ圧縮による調整値として8を各代表値に加算する。
【0123】
図31は縦方向および横方向の422間引きを行う場合の水平変化量と垂直変化量を説明する図である。水平方向の画素同士の変化量の総和が水平変化量であり、垂直方向の画素同士の変化量の総和が垂直変化量である。
【0124】
図31の場合、水平方向変化量=0で、垂直変化量=4×5+4×20+4×5=120である。水平変化量と垂直変化量を比較して、変化量の小さい水平方向を選択して、422間引きを行う。
【0125】
図32は図31の例について水平方向の422間引きを行って生成した符号化データの一例を示す図である。図32(a)は、BTCモード選択フラグが0の場合(輝度データYについて3レベル最大最小除外BTC符号化処理を行う場合)を示しており、一方の色差データCbだけを422間引きし、色差データCrは図17(a)と同様に420間引きをする例を示している。色差データCrに対しては、水平または垂直方向に変化量を計算したことを示すHV選択フラグが設けられる。このフラグが0であるので、水平方向に変化量を計算したことを示している。
【0126】
色差データCrではなく、色差データCbについて422間引きを行う理由は、CrはCbよりも画素間の相関が強いためであり、色差データCrについて422間引きを行っても、さほど画質は改善しないためである。
【0127】
一方、図32(b)は、BTCモード選択フラグが1の場合(輝度データYについて2レベル差分BTC符号化処理を行う場合)を示しており、色差データCb,Crともに422間引きを行う例を示している。
【0128】
図32(a)で、色差データCbしか422間引きを行わない理由は、BTCモード選択フラグが0の場合と1の場合で、符号化データの総ビット数を同じにするためである。
【0129】
なお、この第4の実施形態を第3の実施形態と組み合わせてもよい。
【0130】
このように、第4の実施形態では、色差データについて422間引き処理を行うため、420間引き処理を行うよりも、画質向上が図れる。
【0131】
上述した各実施形態では、変化量が閾値よりも大きい場合には、輝度データYについては3つの代表値、色差データCb,Crについてはそれぞれ2つの代表値を設け、変化量が閾値以下の場合には、輝度データYと色差データCb,Crについていずれも2つの代表値を設ける例を説明したが、代表値の数には特に制限はない。代表値の数について一般化すると、変化量が閾値よりも大きい場合にはn(nは2以上の整数)個の代表値を設け、変化量が閾値以下の場合にはn個以下の代表値を設けることになる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本実施形態による画像処理回路を内蔵した液晶表示装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1のBTC符号化回路6の内部構成の一例を示すブロック図。
【図3】図1のBTC復号化回路8の内部構成の一例を示すブロック図。
【図4】図1のBTC復号化回路8の内部構成の変形例を示すブロック図。
【図5】本実施形態による画像処理回路の概略的な処理手順の一例を示すフローチャート。
【図6】4×4画素からなる画素ブロックの一例を示す図。
【図7】図6の画素ブロックに対応する符号化データを示す図。
【図8】画素ブロックの他の例を示す図。
【図9】図8の画素ブロックに対応する符号化データを示す図。
【図10】画素ブロックの一例を示す図。
【図11】図10の画素ブロックを2×2画素のサブブロックごとに間引いた例を示す図。
【図12】画素ブロックを4つのサブブロックの値だけで表した図。
【図13】420間引きを行った後の符号化処理を示す図。
【図14】画素ブロック内の画像が平坦な場合の符号化処理の一例を示す図。
【図15】画素ブロックの変化量Δが閾値Δthよりも大きい場合の輝度データYと色差データCb,Crの符号化データの一例を示す図。
【図16】画素ブロックの変化量Δが閾値Δthよりも小さい場合の輝度データYと色差データCb,Crの符号化データの一例を示す図。
【図17】(a)(b)は図15および図16の符号化データの先頭ビットに圧縮形式を示すフラグ情報を追加した符号化データの一例を示す図。
【図18】図5で説明した閾値の決め方を説明する図。
【図19】画素ブロックの各画素を3つの代表値で表す処理手順の一例を示すフローチャート。
【図20】図19のステップS18の詳細な処理手順の一例を示すフローチャート。
【図21】(a)(b)(c)は第2の実施形態による3レベル最大最小除外BTC符号化処理の概要を説明する図。
【図22】(a)(b)は第2の実施形態にて生成した符号化データの一例を示す図。
【図23】差分値に対応する符号化データの一例を示す図。
【図24】画素ブロックのビットマップに対応する符号化データの一例を示す図。
【図25】第3の実施形態によるBTC符号化回路6の内部構成を示すブロック図。
【図26】第3の実施形態によるBTC復号化回路8の内部構成を示すブロック図。
【図27】画素ブロックの一例を示す図。
【図28】図27の画素ブロックを縦方向に隣接する2画素で422間引きを行った例を示す図。
【図29】図28の処理結果を8画素で表現した図。
【図30】2レベル差分BTC符号化処理の中で422間引き処理を行う例を示す図。
【図31】縦方向および横方向の422間引きを行う場合の水平変化量と垂直変化量を説明する図。
【図32】図31の例について水平方向の422間引きを行って生成した符号化データの一例を示す図。
【符号の説明】
【0133】
1 液晶パネル
2 LCDソースドライバ
3 RGBデータ送信回路
4 RGBデータ受信回路
5 RGB/YCC変換回路
6 BTC符号化回路
7 符号化データメモリ
8 BTC復号化回路
9 YCC/RGB変換回路
10 LCD駆動回路
11 4Hラインメモリ
12 16画素保存レジスタ
13 変化量計算部
14 最大最小計算部
15 閾値計算部
16 代表値計算部
17 ビットマップ計算部
18 圧縮データ保存レジスタ
21 圧縮データ保存レジスタ
22 フラグ抽出部
23 代表値抽出部
24 ビットマップ抽出部
25 16画素保存レジスタ
26 4Hラインメモリ
27 1Hラインメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数画素からなる画素ブロックのそれぞれごとに、前記画素ブロック内の複数画素の画素値同士の差分が所定の閾値を超えたか否かを判定する活動量検出手段と、
前記画素ブロックのそれぞれごとに、前記所定の閾値を設定する閾値設定手段と、
前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えたと判定された前記画素ブロック内の各画素値をn(nは2以上の整数)個の代表値に変換してビット圧縮する第1の符号化処理を行い、前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えなかったと判定された前記画素ブロック内の各画素値を前記n個以下の代表値に変換してビット圧縮する第2の符号化処理を行う符号化手段と、を備え、
前記閾値設定手段は、
前記画素ブロック内の各画素値の最大値および最小値を除いた残りの画素値に基づいて、前記画素ブロック内の各画素値の平均値を計算する平均値計算手段と、
前記画素ブロック内の各画素値の最大値および最小値と、前記平均値計算手段で計算された平均値と、に基づいて、前記閾値を計算する閾値計算手段と、を有することを特徴とする画像処理回路。
【請求項2】
前記第1の符号化処理は、前記第1の符号化処理を行ったことを示すフラグ情報と、前記n個の代表値をビット圧縮処理したビット列と、前記画素ブロック内の各画素に対応する代表値の割り当てを示すビットマップ情報と、を含む第1の符号化データを生成し、
前記第2の符号化処理は、前記第2の符号化処理を行ったことを示すフラグ情報と、前記n個以下の代表値をビット圧縮処理したビット列と、前記画素ブロック内の各画素に対応する代表値の割り当てを示すビットマップ情報と、を含む第2の符号化データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項3】
前記第1の符号化データは、前記n個の代表値をビット圧縮したビット列に対応する値に共通の値を足し合わせた値であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理回路。
【請求項4】
前記第2の符号化処理は、
前記画素ブロックを縦長または横長の複数のサブブロックに分割した後、前記複数のサブブロックのそれぞれに前記n個以下の代表値のいずれかを割り当てて、前記第2の符号化データを生成することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理回路。
【請求項5】
複数の色情報からなる画像データを輝度データと色差データとに変換する色情報変換手段を備え、
前記活動量検出手段は、前記画素ブロックのそれぞれごとに、前記画素ブロック内の複数画素の輝度データの差分と色差データの差分とのそれぞれが所定の閾値を超えたか否かを判定し、
前記第1の符号化処理は、
前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えたと判定された前記画素ブロック内の複数画素の輝度データを3個の代表値に変換してビット圧縮する第3の符号化処理と、
前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えたと判定された前記画素ブロック内の複数画素の色差データを2個の代表値に変換してビット圧縮する第4の符号化処理と、を含み、
前記第2の符号化処理は、
前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えなかったと判定された前記画素ブロック内の複数画素の輝度データを中央値と差分値とに変換してビット圧縮する第5の符号化処理と、
前記活動量検出手段により前記所定の閾値を超えなかったと判定された前記画素ブロック内の複数画素の色差データを中央値と差分値とに変換してビット圧縮する第6の符号化処理と、を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−27556(P2009−27556A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190007(P2007−190007)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】