説明

画像処理方法および画像処理システム

【課題】画像出力装置より以前に出力された画像を再現するために、該画像処理装置のデバイス特性を考慮して、出力画像に対する適切な補正を容易に可能とする。
【解決手段】特定画像データに基づいてプリンタより出力された特定出力画像を再現するために、特定出力画像における画素ごとの色再現情報を示すターゲットデータを取得する(S204またはS205)。そして、前記特定画像データを、出力対象である出力画像データとして取得し(S206)、これをプリンタにより記録用紙上に出力し(S207)、さらに該出力画像をスキャンして読取画像データを取得する(S208)。そして、前記出力画像データに対し、前記ターゲットデータおよび前記読取画像データに基づく補正を施し(S209)、該補正された前記出力画像データを、プリンタより記録用紙上に出力する(S210)。なお、ターゲットデータは、特定出力画像をスキャンしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像出力装置におけるデバイス特性を考慮した画像処理を行う画像処理方法および画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ並びにその周辺機器であるカラープリンタの普及に加え、デジタルカメラやデジタルビデオ、あるいはスキャナといった画像デジタル機器の普及が著しい。さらに、このようなデジタル機器の高機能化、高精度化が進む中、ユーザの色再現に対する要求レベルは近年急速に高まり、ハイエンドユーザからローエンドユーザまで幅広い層において、高精度カラーマッチングの実現が求められている。
【0003】
例えばスキャナにおいては、読み取り部におけるCCDイメージセンサの高精度化に伴い、精細なスキャニングが可能となり、フィルムスキャンや、紙焼き写真のデジタルデータ保存、また焼き増し等に利用されている。一方、プリンタにおいては、ハイエンドユーザからローエンドユーザまで幅広いユーザ層に使用されるケースが増え、様々な分野に応用したビジネスが急成長を遂げている。例えばPOD市場においては、カタログ等を大量に印刷して在庫を抱えてしまうことを回避するために、オンデマンドで必要に応じて出力する手法が増えている。また、ポスター等の大判印刷を行う市場においても色再現の安定した出力物の供給は極めて重要であり、特に企業の製品カタログや広告用ポスター等には、非常に高精度な色再現が求められる。このように特にプリンタにおいては、いつでも、どこでも、何度でも同様の品質で出力できることが極めて重要であり、以前出力した写真やカタログを、もう一度同じ品質で出力したいといったユーザニーズは高い。
【0004】
このように、デジタル機器の表現力の向上に伴い、ユーザの望む色再現要求レベルは急激に高まり、様々なユーザ層において、高精度な色再現が要求されている。しかしながらプリンタにおいては、温度、湿度といった環境変動、また、インク、トナーの交換といったプロセス変動により、常に安定した出力結果を得ることは非常に困難である。それらの問題を解決するために、キャリブレーションといった技術分野の開発も進められているが、高精度なキャリブレーションには専用のソフトウェアや測色機の導入が必要であり、多くの金銭的コストが必要となる。さらには、プリンタから出力されたカラーパッチを測色する等、種々の煩雑な操作を必要とするため、ユーザの時間的コストも非常に大きい。
【0005】
このようなキャリブレーションに関する課題を解決するために、対象プリンタからテストパターンを出力してスキャナ等で読み取り、所望の色再現となるよう補正データを更新する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−253268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術においては、補正対象となる画像の特徴によらず、所定のテストパターンデータを用いて補正を行っていた。そのため、テストパターンにはユーザが補正したい画像には不要なパターンのデータも含まれており、、ユーザはその測定にも時間的コストを要してしまう。
【0007】
上記技術においてはまた、面内むらを考慮するため、画像の異なる位置に同パターンデータを複数回配置し、該複数のパターンデータの平均値に基づいて補正を行っていた。しかし、ユーザが出力する画像がどのような画像であるかについては考慮しておらず、面内むら情報を正確に出力画像に反映することはできない。
【0008】
さらに、上記技術におけるキャリブレーションは、出力装置をある一定の状態に校正するものであった。従って、ユーザ自身が出力画像に満足できない場合には、別途ICCプロファイルの作成や、所望の色再現が得られるまで市販のアプリケーションの編集機能等を用いて画像自体の色調補正を行わなければならなかった。このようなICCプロファイルの作成や画像の色調補正は、高度なカラーマッチングに関する知識や、経験、スキルが要求され、たとえ熟達したユーザであっても非常に多くの時間的コストを要する。
【0009】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、以下のような特徴を有する画像処理方法および画像処理システムを提供することを目的とする。すなわち、画像出力装置より以前に出力された画像を再現するために、該画像出力装置のデバイス特性を考慮して、出力画像に対する適切な補正を容易に可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一手法として、本発明の画像処理方法は以下の工程を備える。
【0011】
すなわち、画像読取装置および画像出力装置を有する画像処理システムにおいて、特定画像データに基づいて前記画像出力装置より出力された特定出力画像を再現する画像処理方法であって、前記特定出力画像における画素ごとの色再現情報を示すターゲットデータを取得するターゲットの取得ステップと、前記特定画像データを、出力対象である出力画像データとして取得する出力画像の取得ステップと、前記出力画像データが表す画像を前記画像出力装置により記録用紙上に出力する出力ステップと、該出力ステップにおいて記録用紙上に出力された画像を前記画像読取装置で読み取って読取画像データを取得する読取ステップと、前記出力画像データに対し、前記ターゲットデータおよび前記読取画像データに基づく補正を施す補正ステップと、前記補正ステップにおいて補正が施された前記出力画像データが表す画像を、前記画像出力装置により記録用紙上に出力する補正出力ステップと、を有し、前記ターゲットデータは、前記特定出力画像を前記画像読取装置で読み取ることによって作成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の工程からなる本発明によれば、画像出力装置のデバイス特性を考慮して、出力画像に対する適切な補正を容易に可能とすることにより、該画像出力装置より以前に出力された画像を再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0014】
<第1実施形態>
●システム概要
図1は、本実施形態における画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態のシステムは、画像処理装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、PC)101と、カラーモニタ110、画像読取装置としてのスキャナ111、画像出力装置としてのプリンタ112、からなる。
【0015】
PC101において、102はアプリケーション格納部、103は画像情報保存部、104は補正画像算出部である。また、105はターゲット画像格納部、106は出力画像格納部、107は読み込み画像格納部、108は補正画像格納部であり、これらは画像情報保存部103に接続されている。また、109は補正計算データ格納部であり、補正画像算出部104に接続されている。
【0016】
以下、上記構成における画像処理動作について、その概要を説明する。本実施形態においてはまず、過去に所定の画像ファイル(オリジナルファイル)が表す画像を記録用紙に印刷出力したターゲット画像が存在する。そして、オリジナルファイルを再度印刷した際に、このターゲット画像と同等の画質を得ることを目的とする。そのために、オリジナルファイルデータに対し、現在のプリンタ112におけるデバイス特性に基づく補正を施すことにより、再度の印刷結果が、あたかもターゲット画像を再現したかのように、ターゲット画像とほぼ同等となるように制御することを特徴とする。
【0017】
まず、アプリケーション格納部102に格納されている画像処理アプリケーションが、ユーザの指示を受けたOSプログラムに基づいて起動され、カラーモニタ110に表示される。
【0018】
起動されたアプリケーション上で、以下の操作が行われる。
【0019】
最初に、ユーザは再現したいターゲット画像を、スキャナ111を用いてスキャンする。なお、上述したように本実施形態におけるターゲット画像は、既に記録媒体上に印刷出力されているものとする。該スキャンにより得られたターゲット画像データは、その画素データの位置情報と共に、ターゲット画像格納部105にターゲットファイルとして記憶される。
【0020】
次にユーザは、ターゲット画像のオリジナル画像ファイルを、出力画像データとして選択する。ここで選択された出力画像データは出力画像格納部106に記憶され、プリンタ112を用いて記録媒体上に印刷出力される。これにより、プリンタ112の現在のデバイス状態を反映した出力画像が得られる。
【0021】
該印刷された出力画像は、スキャナ111を用いてスキャンされ、これにより、プリンタ112の現在のデバイス状態を反映した出力画像スキャンデータが取得され、該出力画像データは読み込み画像格納部107に格納される。
【0022】
読み込み画像格納部107に格納された出力画像スキャンデータと、ターゲット画像格納部105に格納されたターゲット画像データの情報は、補正計算データ格納部109にも記憶される。
【0023】
補正画像算出部104では、補正計算データ格納部109に記憶された各画像データに基づいて、出力画像格納部106に格納された出力画像データを、プリンタ112の現在のデバイス状態においてターゲット画像を再現可能とするように補正する。ここで作成された補正画像は、補正画像格納部108に格納される。
【0024】
●画像処理動作
以下、本実施形態における画像処理について、図2のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0025】
まずステップS201において、アプリケーション格納部102に保持された画像補正アプリケーションが起動する。これにより、図3に示すような該画像補正アプリケーションのUI画面が表示される。
【0026】
図3において、301は、記録用紙に印刷されているターゲット画像をスキャナ111で読み込むことを指示するターゲットスキャンボタンであり、302は該ターゲット画像のスキャンデータを表示するターゲット画像ビューである。303は、該ターゲット画像のスキャンデータをターゲット画像格納部105にターゲットファイルとして保存することを指示するターゲット保存ボタンである。
【0027】
304は、ターゲット画像格納部105に保存されているターゲットファイルを呼び出すためのターゲットリストボックスである。
【0028】
305は、プリンタ112における現在のデバイス状態を取得するために印刷出力するオリジナル画像(出力画像)を選択する出力画像選択ボタンである。306は、出力画像選択ボタン305で選択されたオリジナル画像(出力画像)のファイルパスを表示するエディットボックスである。307は、出力画像選択ボタン305で選択されたオリジナル画像(出力画像)を、プリンタ112より印刷出力することを指示する画像出力ボタンである。
【0029】
308は、画像出力ボタン307の押下により印刷出力された出力画像を、スキャナ111でスキャンする旨を指示する出力画像スキャンボタンであり、309は、該スキャンした出力画像データを表示する出力画像ビューである。
【0030】
310は、出力画像選択ボタン305で選択したオリジナル画像(出力画像)に対して、本実施形態の特徴である補正処理を施した結果として得られる補正画像の印刷出力を指示する補正画像出力ボタンである。この補正は、スキャンあるいは選択されたターゲット画像データと、出力画像スキャンボタン308の押下によりスキャンされた出力画像データに基づいて行われるが、その詳細は後述する。
【0031】
311は、当該アプリケーションの終了を指示するボタンである。
【0032】
図2に戻り、次にステップS202では、ターゲット画像格納部105に格納する対応表(以下、ターゲットファイル)が存在するか否かを判定する。ここでターゲットファイルとは図5Bに示すように、ターゲット画像のスキャンデータから作成された画像位置情報と、当該位置情報におけるRGB色信号値で構成される。このターゲットファイルは、後述する画像補正処理(S209)において補正の目標値として用いられる。なお、本実施形態ではターゲットファイルのRGB色信号値をスキャナ111より取得する例を示すが、このデータ形式はRGB色信号値に限らず、任意の形式を用いても良い。
【0033】
ターゲット画像格納部105にターゲットファイルが存在しなかった場合、ステップS203でターゲットスキャンボタン301を押下して、スキャナ111からターゲット画像を読み込む。ここで、スキャナ111でスキャンを行う際には、スキャナ原稿台の正確な位置に画像をセットすることが重要となる。図7は、スキャナ原稿台の外観例を示す図である。同図に示すように、画像を正確にスキャンするため、予め原稿台に備えられている矢印や目盛線に合わせて、画像を所定の場所に正確に置く。スキャンされた画像データは、スキャナ111に付属するソフトウェア等で利用されている一般的な画像認識技術を用い、適切に画像情報を位置情報と共に取得でき、得られる画像ピクセル数は元データと同じ結果が得られるものとする。無論、異なるサイズの画像データを所定の方法により補間計算を行い、解像度変換を行ってもよい。
【0034】
次にステップS204においては、ステップS203で読み込まれたターゲット画像のスキャンデータから、ターゲットファイルを作成する。ここで作成されたターゲットファイルは、ターゲット画像格納部105における格納位置情報と、ターゲット画像のスキャンデータを保持し、ターゲットリストボックス304で選択できるようにアプリケーション格納部102と関連付けられる。作成されたターゲットファイルは、ターゲット画像格納部105に格納される。また、作成されたターゲットファイルを用いて、ターゲット画像ビュー302上にターゲット画像が表示される。
【0035】
一方、ステップS202においてターゲット画像格納部105にターゲットファイルが存在した場合には、ステップS205において、ターゲットリストボックス304からターゲット画像格納部105に格納されているターゲットファイルを選択する。該選択されたターゲットファイルの画像データを用いて、ターゲット画像ビュー302上にターゲット画像が表示される。
【0036】
以上説明したステップS204またはS205によって、処理対象となるターゲットファイルが決定される。すなわち、処理対象となるターゲットファイルとは、ステップS204で作成されてターゲット画像格納部105に格納されたファイルか、またはステップS205でターゲット画像格納部105から読み出されたファイルである。
【0037】
ステップS206では、処理対象となっているターゲットファイルを作成する際に用いられた、オリジナルの画像ファイル(以下、オリジナルファイルと称する)を、出力画像選択ボタン305より出力画像ファイルとして選択する。本実施形態におけるターゲットファイルはすなわち、オリジナルファイルに基づいて印刷出力されたターゲット画像を、スキャナ111で読み込んで得られた画像ファイルである。ここで選択されたオリジナルファイルのパスが、出力画像ファイルのパスとしてエディットボックス306に表示される。また同時に、出力画像格納部106にオリジナルファイルの画像データが格納される。ここで、出力画像格納部106に格納される画像データは、図5Cに示すように、オリジナルファイルにおけるRGB信号値を有する。
【0038】
次にステップS207では、ステップS206で選択した出力画像としてのオリジナルファイルを、プリンタ112より記録用紙上に印刷出力する。この出力処理は、エディットボックス306に表示されているファイルパスを参照し、画像出力ボタン307の押下に応じて行われる。
【0039】
次にステップS208では、ステップS207で記録用紙上に出力された出力画像を、スキャナ111でスキャンする。このスキャン処理は、出力画像スキャンボタン308の押下に応じて行われる。ここでのスキャン処理についてもステップS203と同様に、図7に示すスキャナ原稿台の矢印や目盛線に合わせ、かつ、ステップS203で読み込んだ画像と方向を合わせて、読み込み処理を行う。スキャナ111でスキャンされた出力画像データ(以下、スキャンファイル)は、出力画像ビュー309に表示され、読み込み画像格納部107に格納される。読み込み画像格納部107に格納されるスキャンファイルは、図5Aに示すように、オリジナルファイルの出力画像をスキャンすることによって得られるRGB信号値を有する。スキャンファイルはすなわち、ターゲットファイルに対し、プリンタ112の現在のデバイス状態を反映しているものである。
【0040】
次にステップS209では、本実施形態の特徴である画像補正処理を行う。この画像補正処理においては、出力画像格納部106に格納されたオリジナルファイルに対し、読み込み画像格納部107に格納されたスキャンファイルと、ターゲット画像格納部105に格納されたターゲットファイルを用いた補正を行う。なお、この画像補正処理の詳細については後述する。
【0041】
そしてステップS210では、ステップS209で補正され、補正画像格納部108に格納された補正画像の記録用紙への印刷出力を、補正画像出力ボタン310の押下に応じて行う。ここで補正画像格納部108に格納されるデータは、図5Dに示すように、ステップS209で補正されたRGB信号値を有する。
【0042】
●画像補正処理
以下、上述したステップS209における画像補正処理について、図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0043】
まずステップS401において、ステップS208で読み込まれ、読み込み画像格納部107に格納されたスキャンファイルについて、その先頭画素のRGB信号値を取得する。取得したRGB信号値は、補正計算データ格納部109に格納される。
【0044】
次にステップS402では、ターゲット画像格納部105に格納されたターゲットファイルにおいて、上記スキャンファイルから取得したRGB信号値と同位置画素のRGB信号値を取得する。取得したRGB信号値は、補正計算データ格納部109に格納される。
【0045】
次にステップS403では、ステップS401,S402で取得したRGB信号値を比較する。この比較により、スキャンファイルの画素値がターゲットファイルの同位置画素値と同じであるか否かの判定を行う。RGB信号値の少なくともいずれかが異なる値であった場合はステップS404へ進み、全て同じ値であった場合はステップS405へ進む。
【0046】
ステップS404では、ステップS403で比較されたRGB信号値のうち、異なると判定された信号について、以下のような補正演算を行う。まず、出力画像格納部106に格納されているオリジナルファイルのRGB信号値を、補正計算データ格納部109に格納する。そして、図6に示すように補正演算に必要となる各RGB信号値を揃えた後、下式に基づく演算を行う。
【0047】
Rx=Rdat×(Rtar/Rscan)
Gx=Gdat×(Gtar/Gscan)
Bx=Bdat×(Btar/Bscan)
上式において、Rx,Gx,Bxは補正後の各RGB信号値である。また、Rdat,Gdat,Bdatは、ステップS206で選択し、出力画像格納部106に格納されているオリジナルファイル(出力画像ファイル)のRGB信号値であり、図6の604に相当する。また、Rscan,Gscan,Bscanは、ステップS208でスキャンされ、読み込み画像格納部107に格納されているスキャンファイルの各RGB信号値であり、図6の603に相当する。また、Rtar,Gtar,Btarは、ステップS203あるいはS205で読み込まれたターゲットファイルのRGB信号値であり、図6の602に相当する。上式によればすなわち、出力対象となるオリジナルファイルデータに対し、スキャンファイルデータに対するターゲットデータの割合を乗じるように、補正が施されていることが分かる。
【0048】
ここでの補正例を、図6に示すように、各データ部の最初に格納された値、すなわち当該画像の先頭画素のRGB信号値を用いて説明する。本実施形態における各RGB信号は、通常8ビット程度のデジタル信号として表現されているため、ここでは、各信号が0〜255の整数値を有するとして説明する。なお、ここでは8ビットデータを扱う例を示すが、特にビット精度は問わない。
【0049】
補正演算は、RGB信号値の各色に対して行われる。図6によれば、現在のプリンタ112のデバイス状態の下で得られた、読み込み画像格納部107に格納されたスキャンファイルにおける先頭画素のRGB信号値は、(Rscan,Gscan,Bscan)=(17,15,14)とする。また、ターゲット画像格納部105に格納されたターゲットファイルにおける先頭画素のRGB信号値は、(Rtar,Gtar,Btar)=(15,15,15)とする。このとき、出力対象となるオリジナルファイルにおける先頭画素のRGB信号値が(Rdat,Gdat,Bdat)=(10,10,10)である。これらに基づき、現在の状態におけるプリンタ112によって、所望の出力結果が得られるような補正RGB信号値(Rx,Gx,Bx)が算出される。
【0050】
この場合、例えば先頭画素の補正後のRxは以下のように求められる。
【0051】
Rx=Rdat×(Rtar/Rscan)=10×(15/17)=9
上記演算結果は、実際には8.823・・・となるが、本実施形態においては四捨五入し、整数値にする処理を行った。整数値にする処理は任意の方法であってよいものとし、その他、小数点以下を切り捨てて整数値にしてもよい。
【0052】
他の色成分であるGx,Bxについても同様の演算を行うことにより、先頭画素についての補正後のRGB信号値が得られる。なお、本実施形態における補正演算は上述した例に限定されるものではなく、その他の任意の補正演算を行っても良い。
【0053】
ステップS405では、ステップS404で算出した補正RGB信号値を、補正画像格納部108に図5Dに示す形式で格納する。なお、ステップS403でスキャンファイルとターゲットファイルの同位置画素のRGB値が同じであった場合には、ステップS405では以下の処理を行う。すなわち、出力画像格納部106に格納されているオリジナルファイル(出力画像ファイル)における同位置画素のRGB信号値を、補正画像格納部108に格納する。
【0054】
そしてステップS406では、全ての画素に対して上述した画像補正処理を行ったか否かを判定する。全ての画素に対する補正処理が終了した場合はそのまま処理を終了するが、未処理の画素がある場合は、ステップS407に進む。
【0055】
ステップS407では、読み込み画像格納部107に格納されたスキャンファイルから、次の画素情報(RGB信号値)を取得し、ステップS402に戻って処理を継続する。
【0056】
以上説明したように本実施形態によれば、以下の手順による画像補正処理を行うことを特徴とする。
【0057】
すなわち、特定画像データ(オリジナルデータ)をプリンタ112で過去に印刷出力した特定出力画像(ターゲット画像)をスキャンすることによって、該ターゲット画像における画素ごとの色再現情報を示すターゲットデータを取得する。そして、特定画像データを、出力対象である出力画像データとして取得し、これをプリンタ112により記録用紙上に出力する。そして、該記録用紙上に出力された画像をスキャンして読取画像データ(スキャンデータ)を取得する。そして出力画像データに対し、ターゲットデータおよび読取画像データに基づく補正を施し、プリンタ112により記録用紙上に出力する。
【0058】
これにより、特定画像データに基づいてプリンタ112より出力された特定出力画像と同等の画質による補正出力が可能となり、該特定出力画像を再現することが可能となる。
【0059】
このように、プリンタ112における面内の色むらや経時変化等の現在のデバイス特性を考慮して、ユーザの所望するターゲット画像を適切に再現するような補正画像を、容易に作成することができる。すなわち、該補正画像をプリンタ112で印刷出力することにより、ターゲット画像と同等の画質による出力画像が得られる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0061】
本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したコンピュータ可読のプログラムである。
【0062】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0063】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0064】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0065】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0066】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0067】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0068】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る一実施形態における画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における画像処理を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態における画像処理アプリケーションのユーザインターフェース例を示す図である。
【図4】本実施形態における画像補正処理を示すフローチャートである。
【図5A】本実施形態におけるスキャンファイルのデータ形式を示す図である。
【図5B】本実施形態におけるターゲットファイルのデータ形式を示す図である。
【図5C】本実施形態における出力画像ファイルのデータ形式を示す図である。
【図5D】本実施形態における補正画像ファイルのデータ形式を示す図である。
【図6】本実施形態における補正演算に必要な全てのデータを示す図である。
【図7】本実施形態におけるスキャナの原稿台の様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取装置および画像出力装置を有する画像処理システムにおいて、特定画像データに基づいて前記画像出力装置より出力された特定出力画像を再現する画像処理方法であって、
前記特定出力画像における画素ごとの色再現情報を示すターゲットデータを取得するターゲットの取得ステップと、
前記特定画像データを、出力対象である出力画像データとして取得する出力画像の取得ステップと、
前記出力画像データが表す画像を前記画像出力装置により記録用紙上に出力する出力ステップと、
該出力ステップにおいて記録用紙上に出力された画像を前記画像読取装置で読み取って読取画像データを取得する読取ステップと、
前記出力画像データに対し、前記ターゲットデータおよび前記読取画像データに基づく補正を施す補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正が施された前記出力画像データが表す画像を、前記画像出力装置により記録用紙上に出力する補正出力ステップと、を有し、
前記ターゲットデータは、前記特定出力画像を前記画像読取装置で読み取ることによって作成されることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記ターゲットの取得ステップにおいては、予め保持された複数のターゲットデータから、前記特定画像データに対応するターゲットデータを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記出力画像の取得ステップにおいては、予め保持された複数の画像データから、前記特定画像データを出力画像データとして選択することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記補正ステップにおいては、前記出力画像データにおける各画素の色成分ごとに、前記ターゲットデータおよび前記読取画像データの対応する画素値に基づく補正を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記補正ステップにおいては、前記出力画像データに対し、前記読取画像データに対する前記ターゲットデータの割合を乗じるように、補正を施すことを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
画像読取装置および画像出力装置を有し、特定画像データに基づいて前記画像出力装置より出力された特定出力画像を再現する画像処理システムであって、
前記特定出力画像における画素ごとの色再現情報を示すターゲットデータを取得し、
前記特定画像データを、出力対象である出力画像データとして取得し、
前記出力画像データが表す画像を前記画像出力装置により記録用紙上に出力し、
該記録用紙上に出力された画像を前記画像読取装置で読み取って読取画像データを取得し、
前記出力画像データに対し、前記ターゲットデータおよび前記読取画像データに基づく補正を施し、
該補正が施された前記出力画像データが表す画像を、前記画像出力装置により記録用紙上に出力することを特徴とし、
前記ターゲットデータは、前記特定出力画像を前記画像読取装置で読み取ることによって作成されることを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
画像処理装置が読み込み実行することで、該画像処理装置を請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行するように制御することを特徴とするコンピュータ可読のプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ可読の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118349(P2009−118349A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291327(P2007−291327)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】