説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】濃度調整のために定型パターンを出力したきのフレア量を記憶し、記憶したフレア量を用いてフレアを補正することにより演算量を削減する。
【解決手段】スキャナ補正部104は、スキャナ103から入力した画像データ(反射率リニア)に基づきフレア補正を行い、読み取り原稿面の乱反射を補正する。テストパターンのフレア量(Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j)))を予め記憶しておき、入力画像Y(x,y)を、Y(x,y)/(1+フレア量)により補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレアの影響を抑制した画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ装置や複写機等で原稿の画像を読み取るときに、原稿を読み取る入射光の散乱や反射により、擬似信号であるフレアが生じる。
【0003】
図4(c)は、読み取り面からの反射で生じるフレアを説明する図である。光源12から出射された照明光のうち、コンタクトガラス10に載置された原稿11の撮像領域90でない領域に照射された光が原稿11から反射し、例えばリフレクター13等で反射、散乱して、撮像領域90を照射して、擬似信号であるフレアを発生させる。このフレアにより撮像領域周辺の原稿の画像濃度に変化が生じ、読取信号レベルが変化して画像の読取不良が発生する。
【0004】
従来、このようなフレアを補正する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1では、注目画素の出力と周辺画素の出力との乗算の和に、固有の係数を乗算した値を、注目画素の出力から減算することにより、原稿を照明する照り返しの影響を補正している。また、特許文献2では、フレア補正データと周辺画素値との合計値に注目画素値を乗算した値を、注目画素値から減算することにより、フレアの影響のない画像データを生成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1の方法では、固有の係数の算出方法が明らかでなく、また、実際には原稿面のランプ光量分布とそれに対する画素読取位置により照り返し条件が変動するが、この条件を考慮していないため、補正の精度が悪い。また、特許文献2の方法では、近似的にセンサー出力を使用し、近似的にフレアの影響を受けているデータを使用しているので、フレア補正の精度が落ちる。さらに、フレア量が周辺画像によって変化するので、フレア量を求めるには、画像毎にフレア量を計算し、画像毎に毎回、フレアを補正する必要があった。
【0006】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、濃度調整のために定型パターンを出力したきのフレア量を記憶し、記憶したフレア量を用いてフレアを補正することにより演算量を削減した画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、画像データを入力する画像入力手段と、テストパターンを出力する出力手段と、前記出力されたテストパターンのフレア量を算出する算出手段と、前記算出されたフレア量を記憶する記憶手段と、前記記憶されたフレア量を参照して、前記入力された画像データに対してフレアを補正するフレア補正手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予めフレア量を記憶しているので、フレア量を求めるための二次元演算が不要になり注目画素だけでフレア補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像処理装置の構成を示す。
【図2】本発明のスキャナ補正部、プリンタ補正部、コントローラの構成を示す。
【図3】自動調整機能を説明する図である。
【図4】スキャナの構成を示す。
【図5】フレア係数と画像とのマトリックス演算を説明する図である。
【図6】フレアの影響のある読み値と、フレアの影響のない理想的な値を示す。
【図7】フレア係数の作成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の画像処理装置101の構成を示す。複写機として動作する場合、スキャナ103は原稿102から画像データを読み取り、当該画像データ(アナログ信号)をデジタルデータ(600dpi)に変換して出力する。スキャナ補正部104は、後述するように、スキャナ103で読み取った画像データ(デジタルデータ)について、画像領域を文字・線画や写真などに分類したり、原稿画像の地肌画像を除去するなどの画像処理を施す。圧縮処理部105は、スキャナ補正後のYMCBk各8bitの画像データを圧縮処理して、汎用バスにデータを送出する。圧縮後の画像データは汎用バスを通って、コントローラ106に送られる。コントローラ106は図示しない半導体メモリを持ち、送られたデータを蓄積する。
【0012】
ここでは画像データに対し圧縮を施したが、汎用バスの帯域が十分に広く、蓄積するHDD107の容量が大きければ、非圧縮の状態でデータを扱っても良い。
【0013】
次に、コントローラ106はHDD107の画像データを汎用バスを介して伸張処理部110に送出する。伸張処理部110は圧縮処理されていた画像データを元のYMCK各8bitのデータに伸張し、プリンタ補正部111に送出する。プリンタ補正部111では、γ補正処理、中間調処理などが行われ、プロッタ112の明暗特性の補正処理や階調数変換処理を行う。ここでの階調数変換処理では、誤差拡散やディザ処理を用いて各色8bitから2bitへと画像データの変換を行う。プロッタ112はレーザービームの書き込みプロセスを用いた転写紙印字ユニットであり、2bitの画像データを感光体に潜像として描画し、トナーによる作像/転写処理後、転写紙にコピー画像113を形成する。
【0014】
ネットワークを介してPC109に画像データを配信する配信スキャナとして動作する場合は、画像データは汎用バスを通ってコントローラ106に送られる。コントローラ106では、色変換処理、フォーマット処理などが行われる。階調処理では配信スキャナ動作時のモードに従った階調変換処理を行う。フォーマット処理では、JPEGやTIFF形式への汎用画像フォーマット変換などを行う。その後、画像データはNIC(ネットワーク・インタフェース・コントローラ)108を介して外部PC端末109に配信される。
【0015】
また、ネットワークを介して、PC109からプリントアウトするプリンタとして動作する場合、NIC108より出力されたデータから、画像及びプリント指示するコマンド(ページ記述言語PDL)を解析し、画像データとして印刷できる状態にビットマップ展開して、展開したデータを圧縮してデータを蓄積する。蓄積されたデータは随時大容量の記憶装置であるHDD107に書き込まれる。
【0016】
次に、コントローラ106は、HDD107の画像データを、汎用バスを介して伸張処理部110に送出し、伸張処理部110は圧縮処理されていた画像データを元の8bitデータに伸張し、プリンタ補正部111に送出する。プリンタ補正部111では、YMCBkそれぞれ独立にγ補正処理、中間調処理などが行われ、プロッタ112の明暗特性の補正処理や階調数変換処理を行う。階調数変換処理では、誤差拡散やディザ処理を用いて8bitから2bitへと画像データの変換を行う。プロッタ112はレーザービームの書き込みプロセスを用いた転写紙印字ユニットであり、2bitの画像データを感光体に潜像として描画し、トナーによる作像/転写処理後、転写紙にプリント画像113を形成する。
【0017】
スキャナ補正部104を説明すると、図2(a)に示すように、フレア補正部201は、スキャナ103から入力した画像データimg(反射率リニア)に基づきフレア補正を行う。後述するフレア補正を行うことにより、読み取り原稿面の乱反射を補正する。
【0018】
次に、像域分離部202では、フレア補正された画像データを公知の像域分離手法(例えば、特許文献3を参照)により、黒文字エッジ領域、色エッジ文字領域、その他(写真領域)の3つの領域に分離する。像域分離することにより、画像データに像域分離信号(黒エッジ文字領域、色エッジ文字領域、写真領域)が画素毎に付与される。スキャナγ部203では、画像データを反射率リニアから濃度リニアのデータに変換する。
【0019】
フィルタ処理部204では、像域分離信号によりフィルタ処理を切り換える。文字領域(黒エッジ文字と色エッジ文字)では判読性を重視して鮮鋭化処理を行う。写真領域では、画像データ内の急峻な濃度変化をエッジ量として、エッジ量に応じて平滑化処理や鮮鋭化処理を行う。急峻なエッジを鮮鋭化するのは、絵の中の文字を判読しやすくするためである。色補正処理部205は、黒エッジ文字領域以外では、R、G、Bデータを一次濃度マスキング法等でC、M、Yデータに変換する。画像データの色再現を向上させるために、C、M、Yデータの共通部分をUCR(下色除去)処理してBkデータを生成し、C、M、Y、Bkデータを出力する。ここで、黒エッジ文字領域は、スキャナのRGB読み取り位置ずれにより原稿の黒文字に色が付いたり、プロッタのYMCKでプリントするときの重ね位置ずれがあると判読性がよくないので、黒文字領域のみ輝度に相当する信号である、Bk単色データで出力する。文字γ部206では、文字部のコントラストを良くするために、色文字と黒文字に対してγを立たせる。
【0020】
プリンタ補正部111は、図2(b)に示すように、圧縮処理部および伸張処理部を経た画像データに対して、プロッタの周波数特性に応じてγ補正を行うγ補正部301と、ディザ処理・誤差拡散処理などの量子化を行い、階調補正を行う中間調処理部302と、画像データ内の急峻な濃度変化をエッジ量として検出するエッジ量検出部303とを備えている。
【0021】
γ補正部301は、プロッタ112の周波数特性に応じて処理する。中間調処理部302は、プロッタの階調特性やエッジ量に応じてディザ処理等の量子化を行う。これにより、文字の判読性が向上する。
【0022】
コントローラ部106は、図2(c)に示すように、圧縮伸張部401、ページメモリ402、CPU403、出力フォーマット変換部404、入力フォーマット変換部405、データi/f406からなる。
【0023】
画像データを外部機器に出力するデータの流れを説明する。HDDまたは汎用バスの圧縮データを、圧縮伸張処理部401における伸張処理部が元の各色8bitのデータに伸張し、ページメモリ402に展開して出力フォーマット変換部404に出力する。出力フォーット変換部404では、C、M、Y、BkデータをRGBデータに色変換を行うと同時に、JPEGやTIFF形式への汎用画像フォーマット変換などを行う。データi/f406では、出力フォーマット変換部404のデータをNICに出力する。
【0024】
外部機器からの画像データをプロッタに出力するデータの流れを説明する。外部から指示するコマンドはCPU403により解析され、ページメモリ402に書き込まれる。データi/f406からの画像データを入力フォーマット変換部405によりYMCBkのビットマップデータに展開して、圧縮伸張処理部401で圧縮を行い、ページメモリ402に書き込む。
【0025】
入力フォーマットデータは、JPEGやTIFF形式の画像である。ページメモリ402に展開したYMCBk画像を汎用バスに出力して上述したように出力画像113としてプリントする。
【0026】
本発明の画像処理装置は、自動調整機能(カラーキャリブレーション:特許文献4を参照)を備えている。図3を用いて自動調整機能を説明する。自動調整機能は、図3(a)に示すように、テストパターン出力(ステップ501)、テストパターン読み取り(ステップ502)、階調補正処理(ステップ503)からなる。
【0027】
テストパターン出力(ステップ501)を説明する。自動調整をするために、画像処理装置内に記憶・設定なされている、図3(b)に示すようなテストパターン(2組の、YMCK各単色の濃度階調パターン)をページメモリに書き込む。複数セットを書き込むのは、ページ内のばらつきを考慮するためである。ページメモリに展開したYMCBk画像を汎用バスに出力して上述したようにプリントする。
【0028】
次に、テストパターン読み取り(ステップ502)、階調補正処理(ステップ503)を説明する。プリントアウトしたテストパターンを原稿として、スキャナ103は原稿102から画像データを読み取り、当該画像データ(アナログ信号)をデジタルデータ(600dpi)に変換して出力する。フレア補正部201は、スキャナから入力した画像データimg(反射率リニア)に基づきフレアを補正し、フレア補正後の出力を画像圧縮部105に送る。ここでは像域分離部202、スキャナγ部203、フィルタ処理部204、色補正処理部205、文字γ部206の処理を行わない。
【0029】
圧縮処理部105は、スキャナ補正後のRGB各8bit画像データを圧縮せずに、汎用バスにデータを送出する。画像データは汎用バスを通って、コントローラ106に送られる。コントローラ106に送られたデータは画像データとして、印刷できる状態にビットマップ展開する。展開した画像データ(プリントアウトしたテストパターンのデータ)を読み取ることにより、YMCK各色の濃度調整を行い(ステップ503)、この結果が図2(a)の文字γ部、図2(b)のプリンタγ部301に反映される。
【0030】
濃度調整を行う際に重要なことは、濃度調整の計算方式もさることながら、正確にデータを読み取ることが必要である。自動調整機能のように、固定のテストパターンを出力するのであれば、いつも周辺の画像の影響(フレア量)は同じで、相対的な変化はないので、周辺の画像の影響をさほど受けない。読み取ったパッチが濃いか薄いかを判断するデータもフレアの影響したデータ(比較基準となる電子データ)であれば、調整は可能である。ただし、本実施例のように、同じパッチを2つ(複数)出力する場合には、同じパッチのフレアの影響(フレア量)が同じになるようにレイアウトしないと、正確な補正が出来なくなるが、上記したように、フレアを補正することにより、フレア(周りの画像)の影響が補正されるので、複数のパッチでも、パッチのレイアウトの制約がなくなる。
【0031】
本実施例の自動調整機能をテストパターンで説明したが、実際に印刷する画像でテストしてもよい。印刷した紙で、ユーザーが予め位置毎の色を管理するなど指示していれば、指定された位置(座標)のメモリ画像を読み取ればよい。また、自動で色を選択できれば、ユーザーによらず検査基準が安定するので好ましい。自動で設定する方法として、メモリ画像のヒストグラムを取って出現頻度の多い色としてもよいし、NICより出力されたデータから、画像及びプリント指示するコマンドを解析し、ビットマップ展開する前に色を決めてもよい。フレア補正を行うことにより、周りの画像の影響を補正しているので、テストパターンではなく、実際に印刷する画像でも調整することが可能となる。
【0032】
以下に、本発明の特徴であるフレア補正の詳細を説明する。スキャナ103は、図4(a)の斜視図と(b)の側面図に示すように、コンタクトガラス10に載置された原稿11に読取用の光を照射する光源12とリフレクター13及びミラー14を有する第1の走行体15と、複数のミラー16を有する第2の走行体17と、駆動モータ18の回転により第1の走行体15と第2の走行体17をコンタクトガラス10と平行に移動する駆動伝達手段19と、第2の走行体17のミラー8からの光を集光するレンズ20と、レンズ20で集光した光を入射する例えばラインCCDからなる1次元撮像素子21及び出力ポート22を有する。
【0033】
前述したように、スキャナ103で原稿11の画像を読み取ったとき、光源12から出射された照明光のうち、コンタクトガラス10に載置された原稿11の撮像領域90でない領域に照射された光が原稿11から反射し、例えばリフレクター13等で反射、散乱して、撮像領域90を照射して、擬似信号であるフレアを発生させる。このフレアにより撮像領域周辺の原稿の画像濃度に変化が生じ、読取信号レベルが変化して画像の読取不良が発生する。
【0034】
このようなフレア現象は、例えば、再反射光がリフレクターもしくは照明ランプ外壁で反射して、再び原稿を再照明する光学部材からの再反射光の場合に生じる。このような原稿を再照明する光を再照明光と呼ぶ。
【0035】
具体的には、照明光が撮像領域以外の原稿面で反射し、その光が光学系に戻って、撮像領域を照明することにより発生する、原稿面反射フレアの影響により、黒い領域に挟まれた白い領域が黒くなってしまう。このような現象を補正するためにフレア補正を行う。
1.フレア補正モデルの説明
まず、フレア発生のモデルを説明する。照明光は、原稿面に到達した光が原稿面で反射してミラー、レンズを通してCCDに受光する。ところが、フレアは原稿面に到達した光が原稿面で反射して照明光内部などに戻って再度、読取位置を照明する現象であり、本来読むべき位置の明るさを大きくする。
【0036】
この現象により、照明光から直接照射される光の量を1とすると、Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j))の光量が増える。これをフレア量とする。すなわち、フレアの影響を受けた画像(反射率)Yは、式(1)で表される。
Y(x,y)=X(x,y)×(1+Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j)))
式(1)
X(x,y):フレアの影響のない画像(反射率)
Y(x,y):フレアの影響を受けた画像(反射率)
Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j)):フレア量で(フレア係数×フレアの影響のない周辺画像)の和
K(i,j):フレア係数(2次元行列)
i,j:2次元行列の要素
x,y:画素位置
【0037】
このフレア係数と画像とのマトリックス演算Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j))について、図5を用いて説明する。画像602において、注目領域X33が、領域X21から影響されるフレア量は、フレア係数601を用いると、K11×X21となり、領域X31から影響されるフレア量は、K21×X31となる。この演算を全ての領域の画像に施し、各周辺画素毎の合計した結果がフレア量となる。このようにフレアは、周辺の画像により注目画素の光量が変わる現象である。
【0038】
1+Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j))は光量であるから、画像(反射率)を掛けることにより、フレアの影響を受けた画像を得ることができる。この処理を全ての画像に施すことにより、フレアの影響を受けた画像Yを生成することができる。
【0039】
式(1)のXを求めれば、フレア補正を行うことができるが、上記の式を計算するには、逆行列の計算が必要となる。
【0040】
フレア係数K(i,j)が求まっている状態で式(1)のX(x,y)を求めれば、フレア補正を行うことができる。上記の式(1)のX(x,y)を計算するには、2次式の解を得ることが必要である。しかし、X(x+i,y+j)は2次元行列なので、2次方程式の解の公式を適用出来ないので、近似することとした。
【0041】
そこで、Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j))のX(x+i,y+j)を近似値Z(x+i,y+j)とした。近似値Z(x+i,y+j)を使うことにより、X(x,y)とY(x,y)の関係を容易に求めることができる。
【0042】
2次方程式の解の公式を適用するために、一様な画像で近似した。一様な(同じ値の)画像、例えば白紙を読み込んだときのフレア量はΣ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))となる。
【0043】
ここで、Z(x+i,y+j)は一様な(同じ値の)画像であるから、Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))の中のZ(x+i,y+j)はΣの外に出すことが可能となり、(ΣK(i,j))×Z(x,y)となり、式(1)は以下のようになる。
Y(x,y)=Z(x,y)+(ΣK(i,j))×Z(x,y)×Z(x,y)
式(2)
ΣK(i,j)はフレア係数(2次元)の総和でフレア率である。
【0044】
二次方程式の解を求めると以下のようになる。
(−b±sqrt(b×b−4×a×c))/2×a
Sqrt:平方根
a=ΣK
b=1
c=−Y
上記式の解をZとする。画像データは正であるから、解は(−b+sqrt(b×b−4ac))/2×aのみである。
【0045】
式(2)のZ(x,y)は、(−1+sqrt(1+4ΣK(i,j)×Y(x,y)))/(2×ΣK(i,j))となる。
【0046】
フレアの影響のない画像X(x+i,y+j)は近似値Z(i,j)jを使用すると、式(1)は以下のようになる。
Y(x,y)=X(x,y)×(1+Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j)))
式(3)
X(x,y)=Y(x,y)/(1+Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j)))
式(4)
X(x,y):フレアの影響のない画像(反射率)
Y(x,y):フレアの影響を受けた画像(反射率)
Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j)):フレア量で(フレア係数×フレアの影響のない周辺画像)の和
Z(x+i,y+j):全面一様な画像より求めたフレアの影響のない画像で(−1+sqrt(1+4ΣK(i,j)×Y(x,y)))/(2×ΣK(i,j))
ij:2次元行列の要素
x,y:画素位置
【0047】
2.フレア係数の作成
ΣK(フレア率)の求め方は、前掲した特許文献2のように求めてもよいが、実測値から求めたほうが正確である。以下、フレアモデルのフレア係数の求め方について説明する。
【0048】
図6は、フレアの影響の範囲より大きな面積の同じ濃度のパッチを読み取り、フレアの影響のある読み値を白の点でプロットした実線と、フレアの影響のない理想的な値を黒の点でプロットした点線を示す。実線の方が明るいのは、周辺の余分な光が回り込み明るくなったためである。
【0049】
スキャナの読み取り画像は反射率リニアであるので、パッチ番号間の反射率が等間隔であれば理想的な点線は直線になる。フレアの影響のない直線(点線)を以下のように求めた。
【0050】
フレアモデルにおいて、濃い画像はフレアの影響をほとんど受けない。そこで、実際に読み取った濃い画像(例えば、パッチ番号16、17、18)より仮に求める。この実線と点線よりΣK(i,j)(フレア率)を求めることが可能となる。
【0051】
ΣK(i,j)(フレア率)は、読み取った画像が一様な画像なので式(2)より、
Y(x,y)=X(x,y)+(ΣK(i,j))×X(x,y)×X(x,y)
式(5)
となり、以下のように求めることができる。
ΣK(i,j)=(Y(x,y)−X(x,y))/X(x,y)
式(6)
仮に求めたフレアの影響のない直線(点線)X(x,y)を式(6)で、ΣK(i,j)がばらつきの少ない値になるようにフレアの影響のない直線X(x,y)を決定する。特に薄い方がばらつかないように決める。ここで決めたX(x,y)とY(x,y)から、複数のΣK(i,j)を計算し、さらにΣK(i,j)からK(i,j)を求める。
【0052】
このフレア率から、フレア係数を以下の手順で求める。フレア係数(2次元)は、前掲した特許文献2のように求めてもよい。また、図7(a)に示すような、黒背景上のパッチ画像を読み取って、フレア係数K(i,j)を作成する。黒部分は光の反射がないので、反射率の高い白部分のパッチ幅を換えて、複数のパッチ幅のフレア率K(i,j)を求める。複数のパッチ幅のフレア率ΣK(i,j)から、係数を作成する。主走査と副走査を独立に、パッチ幅を変えて画像を読み取って線形補間することにより、二次元のフレア係数K(i,j)の作成が可能となる。
【0053】
フレア係数の作成例を、図7(b)を用いて説明する。図7(b)において、K00〜K40(列方向)、K04〜K44(列方向)は黄色背景、K01〜K41(列方向)、K03〜K43(列方向)はシアン背景、K02〜K42(列方向)は白背景である。
【0054】
白背景部分を白で、白背景部分以外を黒画像として、画像を読み取ると、白画像は一様な画像なので、フレア率は、K02+K12+K22+K32+K42となる。
【0055】
次に、黄色背景部分を黒、黄色背景部分以外を白として画像を読み取ると、フレア率は、K01+K11+K21+K31+K41+K02+K12+K22+K32+K42+K03+K13+K23+K33+K43となる。
【0056】
さらに、5×5全てが白として画像を読み取ると、フレア率は、K01+K11+K21+K31+K41+K01+K11+K21+K31+K41+K02+K12+K22+K32+K42+K03+K13+K23+K33+K43+K03+K13+K23+K33+K43となる。
【0057】
上記した3つのフレア率から、複数の列単位(白背景、シアン背景、黄色背景)のフレア率を求めることができる。
【0058】
このように、白画像と黒画像の組み合わせで白画像の幅を変えることにより、最終的に複数のフレア率から行列の要素(フレア係数)を求めることが可能となる。
【0059】
本実施例では、K×Zと画像データが1対1に対応して説明したが、K×Zは変化量が少ないのでK×Zの画素密度を落として、K×Zの1画素に対して画像データ16画素を割り当ててもよい。
3.フレア補正の実施
式(4)に示したように、フレアの補正を行う。具体的に計算するときは、上記式(4)を計算すればよいが、先に、Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))を全画像分、計算し記憶し、その後に、残り部分を計算してもよい。
【0060】
本実施例の自動調整のように、スキャナを計測器として使用する場合は、高精度に画像を読み取る必要がある。図2(a)のように、フレア補正部として専用のハードウェア(モジュール)を実装するのが困難な場合は、スキャナ補正部(図2(a))でフレア補正を行わずに、ビットマップ展開した画像データを使用して、コントローラがフレア補正を実施してもよい。
【0061】
また、ビットマップデータからフレアを補正するのが困難な場合は、工場出荷時にあらかじめΣ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))の値を記憶しておき、ユーザーは使用する前(例えば毎朝の自動調整時)に、記憶したデータを読み出して計算してもよい。Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))を記憶しておけば、周辺画素を参照せずに注目画素のみで計算ができるので、参照するメモリ(画素)が少なくてすむ。
【0062】
Σ(K(i,j)×Z(x+i,y+j))は、画像密度と同じであれば、画像サイズと同じとなるが、画像密度を荒くして記憶すれば、その分、画像サイズが小さくなる。また、自動調整機能のように、いつも固定のテストパターンを出力するような場合は、フレアの影響(フレア量)は一定である。テストパターンのフレアの影響(フレア量)、つまりΣ(K(i,j)×X(x+i,y+j))を記憶しておけば、計算が容易になる。
【0063】
本実施例では、原稿面からの反射(影響)を説明したが、原稿端部からの反射もある。原稿面からの光の反射は一様であっても、原稿端部は読み取り領域からフレアの影響を受けるので、フレア係数が異なる。図5に示すようにフレア係数601は二次元であるので、読み取り範囲の端部では、読み取り範囲外のフレア係数とは異なる。図5の黒部分の読み取り領域外は、フレア係数を切り替える必要がある。一般的には、読み取り領域外とは別のフレア係数を用意する。しかし、本実施例では、1つのフレア係数のみでフレアの補正を行う。係数を1つにした理由は、係数が2つであると切り替え部分が存在して、制御が複雑になるからである。
【0064】
本実施例では、フレア係数を1つにするために、画像データの初期値を、フレア読み取り領域外のフレア係数に応じた初期値として設定する。具体的には、読み取り領域外からの反射がなければ、0(黒)にし、例えば白紙に相当する反射率ならば、白紙に相当するデータに初期値を決めればよい。
本実施例の応用例として、例えば印刷前の電子データと印刷した紙を読み取ったデータを比較する際には、印刷した紙を読み取ったデータを補正して比較する。しかし、電子データと印刷した紙の比較であれば、印刷した紙は複数ある場合がある。このような場合は、印刷した紙をフレア補正するのではなく、逆に電子データに対してフレア処理を施して比較すれば、複数部数でも1部だけ処理を行うことで全数の比較が可能となる。
【0065】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0066】
101 画像処理装置
102 原稿
103 スキャナ
104 スキャナ補正部
105 圧縮処理部
106 コントローラ
107 HDD
108 NIC
109 外部PC端末
201 フレア補正部
202 像域分離部
203 スキャナγ部
204 フィルタ処理部
205 色補正処理部
206 文字γ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開平7−23226号公報
【特許文献2】特許第4159867号公報
【特許文献3】特開2003−259115号公報
【特許文献4】特開2004−32815号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを入力する画像入力手段と、テストパターンを出力する出力手段と、前記出力されたテストパターンのフレア量を算出する算出手段と、前記算出されたフレア量を記憶する記憶手段と、前記記憶されたフレア量を参照して、前記入力された画像データに対してフレアを補正するフレア補正手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記フレア量は、2次元空間Σ(K(i,j)×X(x+i,y+j))の行列で表されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
ここで、K(i,j)はフレア係数、X(x+i,y+j)はフレアの影響のないテストパターンの画像データ、i,jは2次元行列の要素、x,yは画素位置
【請求項3】
前記フレア補正手段は、前記入力画像データY(x,y)を、Y(x,y)/(1+フレア量)
により補正することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記テストパターンは、濃度調整用のパターンであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記フレア係数は、黒背景上の白画像を読み取ることにより作成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記白画像のパッチ幅を変えて、複数のパッチ幅のフレア係数を作成することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像データを入力する画像入力工程と、テストパターンを出力する出力工程と、前記出力されたテストパターンのフレア量を算出する算出工程と、前記算出されたフレア量を記憶する記憶工程と、前記記憶されたフレア量を参照して、前記入力された画像データに対してフレアを補正するフレア補正工程を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項7記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項7記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191918(P2011−191918A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56296(P2010−56296)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】